説明

ドアクローザ

【課題】ハウジング内部の作動油が高温となったドアに付着することを防止する。
【解決手段】ドアクローザ1は、ドア104の開操作によりその回転動作を上記リンク機構29、回転軸24及びラック・ピニオン機構21を介してピストン15の直線動作に変換して該ピントン15を上記ピストン付勢手段16の付勢力に抗してハウジング4の密閉空間4aで移動させ、ドア104から手を離すことにより上記ピストン15を上記ピストン付勢手段16の付勢力によりハウジング4の密閉空間4aで移動させてドア104をゆっくりと自動的に閉めるように構成されている。密閉空間4aと外部とを連通する作動油排出路41を備え、該作動油排出路41が該速度調整弁37よりも低い融点を有する樹脂製部材39によって閉鎖されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、開いたドアをゆっくりと自動的に閉めるドアクローザ(ドア自閉装置)の改良に関し、特に発火抑制対策に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ドアクローザは、作動油が充填された密閉空間を有するハウジングを備え、該ハウジングの密閉空間には、コイルスプリングにより付勢されたピストンが往復移動可能に配置されている。また、上記ピストンにはラック・ピニオン機構が組み付けられ、該ラック・ピニオン機構のピニオンには、回転軸が上記ハウジングを上下に貫挿するように回転一体に連結されている。さらに、この回転軸の上端には、リンク機構の一端が連結され、該リンク機構の他端は建物のドア開口部の上枠側に連結されている。
【0003】
そして、ドアを開操作すると、その回転動作が上記リンク機構を介して回転軸に伝達され、さらに上記ラック・ピニオン機構を介してピストンの直線動作に変換される。これにより、上記ピストンがハウジングの密閉空間を移動することでコイルスプリングを圧縮し、ドアから手を離すと、この圧縮されたコイルスプリングの反発力によりドアがゆっくりと自動的に閉まるようになっている。このドアの閉速度は、ピストンの移動に連動して流動する作動油の流量を速度調整弁で制御することで調整される。
【0004】
ところで、この種のドアクローザとして、特許文献1には、ハウジングをカバー部材で覆って熱伝導を遮断することにより、ハウジング内部(密閉空間)に充填された作動油の粘性変化を抑制してドアの閉速度を安定させるようにしたドアクローザが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−348652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の特許文献1では、カバー部材は、上面壁、下面壁、正面壁及び両側面壁で箱状に構成されてハウジングを室内側から覆って該ハウジング及びドアに密接してはいるものの、上記上面壁及び下面壁には回転軸との干渉を避けるための切欠部が形成され、上記回転軸は下面壁の切欠部から下方に突出しているため、何らかの要因によりドアの温度が特許文献1が想定しないような高温となると、ハウジング内部の作動油の内圧が上がり、作動油が部品接合箇所や回転軸周り等から溢れ出すおそれがある。そして、溢れ出した作動油が上記下面壁の切欠部を経て高温となったドアに付着すると、場合によっては発火するおそれがある。また、速度調整弁は樹脂製とされることもあり、樹脂製の速度調整弁が熱で溶けてしまい、当該箇所から吹き出した作動油が同様に下面壁の切欠部を経てドアに付着して同様に発火するおそれもある。
【0007】
この発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ハウジング内部の作動油が高温となったドアに付着することを原因とする発火を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであって、作動油が充填された密閉空間4aを有するハウジング4と、上記密閉空間4aにピストン付勢手段16により付勢された状態で往復移動可能に配置されたピストン15と、該ピストン15に組み込まれたラック・ピニオン機構21と、該ラック・ピニオン機構21のピニオン23に上記ハウジング4を上下に貫挿するように回転一体に連結された回転軸24と、一端が上記回転軸24の上端24aに連結されるとともに、他端が建物のドア開口部101の上枠102側に連結されたリンク機構29と、上記ハウジング4の側面壁10に挿着され、上記ピストン15の移動に連動して上記密閉空間4aを流動する作動油の流量を制御することでドア104の閉速度を調整する速度調整弁37とを備え、ドア104の開操作によりその回転動作を上記リンク機構29、回転軸24及びラック・ピニオン機構21を介してピストン15の直線動作に変換して該ピントン15を上記ピストン付勢手段16の付勢力に抗してハウジング4の密閉空間4aで移動させ、ドア104から手を離すことにより上記ピストン15を上記ピストン付勢手段16の付勢力によりハウジング4の密閉空間4aで移動させてドア104をゆっくりと自動的に閉めるように構成されたドアクローザ1であって、該ハウジング4が高温となった際に該密閉空間4aから作動油を排出する為の作動油排出路38、41、45、50を備え、該作動油排出路38、41、45、50が該速度調整弁37よりも低い融点を有する樹脂製部材39、46、51によって閉鎖されていることを特徴とするドアクローザ。
【0009】
ここで、該密閉空間4aは該ピストン15により高圧室2aと低圧室2bとに分けられており、該作動油排出路38、41、45、50は該低圧室2bに連通していることが好ましい。
【0010】
また、該作動油排出路38、41が該ハウジング4の側面壁10に嵌着されたエンドプラグ17に形成されていることが好ましい。
【0011】
また、該作動油排出路45が該ハウジング4の正面壁6、下面壁9又は側面壁10のいずれかに形成されていることが好ましい。
【0012】
また、該作動油排出路41は該ドア104から離れる方向に延びるように形成されていることが好ましい。
【0013】
また、該ハウジング4には該作動油排出路38、41、45から排出された作動油が該ドア104に付着することを防ぐ為の作動油誘導手段40、42、43、47が設けられていることが好ましい。
【0014】
また、該作動油排出路50が該ハウジング4の側面壁10に嵌着された収容タンク49に形成されていることが好ましい。
【0015】
また、該収容タンク49の内部空間Sは真空状態とされていることが好ましい。
【0016】
また、該収容タンク49は上部に孔を備え、該収容タンク49の内部空間Sと外部とは該孔を介して連通していることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のドアクローザによれば、何らかの要因によりドアの温度が高温となると作動油排出路を閉鎖している樹脂製部材が溶けて作動油がハウジング内部(密閉空間)から専用の作動油排出路によって排出されるので、ハウジング内部の作動油が高温となったドアに付着することを原因とする発火を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態に係るドアクローザをドアに取り付けた状態の平面図である。
【図2】図1のA―A線における正面図である。
【図3】図1のB−B線における側面図である。
【図4】第1実施形態に係るドアクローザにおけるドアクローザ本体の内部構造を示す横断平面図である。
【図5】図4のC−C線における断面図である。
【図6】図4のD−D線における側面図である。
【図7】第1実施形態の変形例1示す図4相当図である。
【図8】第1実施形態の変形例2を示す図1相当図である。
【図9】第1実施形態の変形例2を示す図2相当図である。
【図10】第1実施形態の変形例2を示す図3相当図である。
【図11】第1実施形態の変形例3を示す図1相当図である。
【図12】第1実施形態の変形例3を示す図2相当図である。
【図13】第1実施形態の変形例3を示す図3相当図である。
【図14】第1実施形態の変形例4を示す図1相当図である。
【図15】第1実施形態の変形例4を示す図2相当図である。
【図16】第1実施形態の変形例4を示す図3相当図である。
【図17】第2実施形態の図4相当図である。
【図18】第3実施形態の図3相当図である。
【図19】第4実施形態の図4相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1〜図3において、101は建物のドア開口部を示し、該ドア開口部101は、上枠102、左右の一対の竪枠103及び下枠(図示せず)で矩形に囲まれた空間で構成され、ドア104が上記ドア開口部101を開閉可能にヒンジ105を介して一方の竪枠103に取り付けられている。上記ドア104はドアクローザ1により開状態からゆっくりと自動的に閉まるようになっている。
【0021】
上記ドアクローザ1は、左開き(左勝手)のパラレル形タイプであり、ドアクローザ本体2を備えている。上記ドアクローザ本体2は、作動油(図示せず)が充填された密閉空間4a(図4参照)を有するハウジング4を備え、該ハウジング4は、図4に示すように、取付金具5を介して上記ドア104上端に取り付けられている。
【0022】
上記取付金具5は、図4に示すように、一端(図4左端)にU字状引掛部5aが形成されているとともに、他端(図4右端)に斜めに起き上がった取付片部5bが形成され、該取付片部5bには、上記ハウジング4を取り付けるためのネジ孔(図示せず)が上下に2個貫通形成されている。また、この取付金具5の両端寄りには、ネジ挿通孔(図示せず)が上下に2個ずつ貫通形成されている。
【0023】
上記ハウジング4は、正面壁6、背面壁7、上面壁8、下面壁9及び左右一対の側面壁10の6面で直方体形状に形成され、上記背面壁7側には、上面壁8、下面壁9及び左右の側面壁10で囲まれた凹陥部11が形成されている。また、該凹陥部11の一端側(図4左端側)には、掛止ピン12が上面壁8と下面壁9とに上下に橋絡されて配設されている。さらに、上記一方(図4右側)の側面壁10には、ネジ挿通孔(図示せず)が上下に2個貫通形成されている。
【0024】
そして、上記ドアクローザ本体2をドア104上端の内側に取り付けるには、先ず、ネジ13(図2参照)を取付金具5の4個のネジ挿通孔に挿通してドア104内部の取付板106にねじ込むことで、取付金具5をドア104上端に取り付ける。
【0025】
次いで、ドアクローザ本体2を上記取付金具5の正面に配置し、取付金具5の引掛部5aをハウジング4の掛止ピン12に引っ掛けて取付金具5をハウジング4の凹陥部11に配置する。この状態から、ネジ14(図3参照)をハウジング4の2個のネジ挿通孔と取付金具5の2個のネジ孔に螺合させることで、ドアクローザ本体2を取付金具5を介してドア104上端に取り付ける。
【0026】
上記ハウジング4内部(密閉空間4a)には、図4に示すように、ピストン15がピストン付勢手段としてのコイルスプリング16のバネ力により図4左方向に付勢された状態で往復移動可能に配置され、密閉空間4aがピストン15により高圧室2a(図4左側の小領域)と低圧室2b(図4右側の大領域)とに分けられている。図4中、17は上記両側面壁10の嵌合孔10bに嵌着されたエンドプラグである。
【0027】
上記ピストン15の内部には空洞部15aが形成され、該空洞部15aは第1通路18を介して上記高圧室2aに連通しているとともに、第2通路19を介して上記低圧室2bに連通している。また、上記第1通路18には逆止弁20が介設され、ドア閉状態では高圧室2a側の作動油の内圧で上記逆止弁20を弁座に押し付けて第1通路18を閉じ、高圧室2a側の作動油が低圧室2b側に流入しないようにしている。
【0028】
上記ピストン15の空洞部15aには、ラック・ピニオン機構21が組み込まれている。該ラック・ピニオン機構21は、空洞部15a内壁に形成されたラック22と、該ラック22に噛合するピニオン23とで構成され、該ピニオン23には、図5にも示すように、回転軸24が上記ハウジング4を上下に貫挿するように回転一体に連結されている。図5中、25は上記回転軸24の上端24a側及び下端24b側の外周の配置されたベアリング、26は回転軸24の軸心方向でベアリング25の外側に配置されたOリング、27はこれらベアリング25及びOリング26を内包するブッシュ、28は回転軸24の下端24bを覆い隠す円筒形のカップである。
【0029】
上記回転軸24の上端24aには、リンク機構29の一端が連結されるとともに、該リンク機構29の他端は建物のドア開口部101の上枠102側に連結されている。具体的には、上記リンク機構29は、メインアーム30と連結アーム31とからなり、上記メインアーム30の一端が上記回転軸24の上端24aに軸32により連結され、該メインアーム30の他端には、連結アーム31の一端が軸33周りに回転自在に連結されている。一方、上記ドア開口部101の上枠102には、ステー(三角板)34の基端が4個のネジ35を上枠102内部の取付板107にねじ込むことにより取り付けられており(図1及び図3参照)、該ステー34の先端には上記連結アーム31の他端が軸36周りに回転自在に連結されている。
【0030】
ハウジング4の他方(図1左側)の側面壁10には、金属製の3個の速度調整弁37がエンドプラグ17の外側で上側に1個、下側に2個位置するように挿着され(図6参照)、密閉空間4aの高圧室2aと低圧室2bとの間を繋ぐ図示しない流路に臨んでいて、上記ピストン15の移動に連動して上記密閉空間4aを流動する作動油の流量を制御することでドア104の閉速度を調整するようにしている。
【0031】
そして、ドア104を図4で矢印X1方向(反時計回り)に開操作すると、その回転動作がリンク機構29を介して回転軸24に伝達されて該回転軸24が図1及び図4で矢印X2方向(時計回り)に回転する。これにより、ピニオン23が図1及び図4で矢印X2方向(時計回り)に回転し、ピストン15がラック・ピニオン機構21を介してコイルスプリング16のバネ力に抗して該コイルスプリング16を圧縮しながらハウジング4の密閉空間4aで図4で矢印X3方向(右方向)に直線移動する。これにより、低圧室2bの作動油が第2通路19及び空洞部15aを経て逆止弁20を動かして第1通路18を開き、高圧室2aに流出する。そして、ドア104が閉方向に移動する力を蓄積しながら開かれる。
【0032】
ドア104から手を離すと、上記圧縮されたコイルスプリング16がその反発力により伸長し、ピストン15がハウジング4の密閉空間4aで図4で矢印Y3方向(左方向)に直線移動する。この際、第1通路18は逆止弁20で閉じられているので、高圧室2aの作動油は第1通路18を経て低圧室2bに流入せず、図示しない流路及び速度調整弁37を経て低圧室2bに流入する。これにより、ピニオン23が図1及び図4で矢印Y2方向(反時計回り)に回転し、この回転力がリンク機構29に伝達されてドア104が図1及び図4で矢印Y1方向(時計回り)にゆっくりと自動的に閉まる。
【0033】
ハウジング4の一方(図1右側)の側面壁10に嵌着されているエンドプラグ17は作動油排出路としてのネジ孔38を備えている。該ネジ孔38は低圧室2bと外部とを連通するようにエンドプラグ17の軸心位置に形成されている。該ネジ孔38には接着剤を塗布した樹脂製ネジ39が外部からねじ込まれており、低圧室2b内の作動油が外部に流出しないようにネジ孔38を閉鎖している。樹脂製ネジ39は、頭部39aと軸部39bとを備え、頭部39aはエンドプラグ17の表面に当接している。樹脂製ネジ39は、何らかの要因によりハウジング4の温度が120〜200℃になった場合には熔解して作動油の圧力によりネジ孔38から外部に押し出されるようになっている。樹脂性ネジ39がネジ孔38から押し出されると、低圧室2b内の作動油がネジ孔38を介して外部に排出されるようになっている。樹脂製ネジ39は本発明の樹脂製部材に相当する。
【0034】
上面壁8と下面壁9は、上記ネジ孔38とドア104の間の位置に一体又は別体として立設される壁部40(図1乃至図3参照)を備えている。壁部40はハウジング4の一方(図1右側)の側面壁10の位置から図1の左側に向かって延びて所定範囲に立設されている。上記ネジ孔38から排出された作動油は、側面壁10と下面壁9を経て高温となったドア104に付着する可能性があるが、壁部40によって下方(床)に落下するように誘導し、ドアへの付着を防止するようになっている。壁部40は上面壁8にも設けられているので、左右逆向きにすることで、右開き(右勝手)タイプのドア104にも適用することができるようになっている。壁部40は本発明の作動油誘導手段に相当する。
【0035】
このように、第1実施形態では、密閉空間4aと外部とを連通するネジ孔38を設け、このネジ孔38を速度調整弁37よりも融点が低い樹脂製ネジ39により閉鎖している。したがって、何らかの理由によりドア104の温度が高温となったとしても、作動油がエンドプラグ17周りや回転軸24の下端24bを覆うカップ28等から溢れ出たり、速度調整弁37の箇所から作動油が吹き出したりする前のハウジング4が120〜200℃になったタイミングにおいて、専用の排出路として形成したネジ孔38から作動油を外部(床)に排出することができる。
【0036】
しかも、第1実施形態では、ネジ孔38はハウジング4の一方(図1右側)の側面壁10に嵌着されるエンドプラグ17に低圧室2bと外部とを連通するように形成されているので、仮にネジ孔38から作動油が吹き出したとしても作動油が竪枠103を介してドア104に付着することがない。さらに、第1実施形態では、ネジ孔38から排出された作動油は壁部40によって床に落下するように誘導されるので、ネジ孔38から排出される作動油が高温となったドア104に付着することを防ぐことができる。
【0037】
(変形例1)
図7は第1実施形態のネジ孔38の変形例を示す図4相当図であり、この変形例では、ネジ孔が形成される位置と向きが第1実施形態と異なっている。つまり、この変形例のネジ孔41は、ドア104から離れる方向に傾斜して延びるように形成されることにより、低圧室2bと外部とを連通している。その他は第1実施形態と同様に構成されているので、第1実施形態と同じ構成箇所には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。この変形例は、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができるものである。加えて、この変形例は、作動油を排出する位置をドア104からより離れた位置とすることができるというメリットや、ネジ孔41から作動油が吹き出した場合であっても作動油がドア104に直接付着することを確実に防ぐことができるというメリットを有する。
【0038】
(変形例2)
図8乃至図10は第1実施形態の壁部40の変形例を示す図1乃至図3相当図である。この変形例では、壁部40に変えて溝部42を設けたことが第1実施形態と異なっている。つまり、この変形例の溝部42は、ハウジング4の一方(図8右側)の側面壁10の位置から図8の左側に向かって延びて所定範囲に形成されている。作動油は側面壁10と下面壁9を経て高温となったドア104に付着する可能性があるが、溝部42によって下方(床)に落下するように誘導し、ドア104への付着を防止するようになっている。その他は第1実施形態と同様に構成されているので、第1実施形態と同じ構成箇所には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。この変形例は、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができるものである。
【0039】
(変形例3)
図11乃至図13は第1実施形態の壁部40の変形例を示す図1乃至図3相当図である。この変形例では、壁部40に変えて断面コ字状の金具43を取り付けることが第1実施形態と異なっている。この変形例の金具43は三箇所にネジ挿通孔を有している。樹脂製ネジ39は真中のネジ挿通孔を挿通してネジ孔38にねじ込まれており、樹脂製ネジ39の頭部39aは側面壁10に当接している。側面壁10にはネジ穴が2つ形成されており、金具43の上下のネジ挿通孔を挿通してネジ44をねじ込むことにより金具43が側面壁10に固定されている。図12及び図13に示すように、金具43の上端は上面壁8よりも上方に位置しており、金具43の下端は下面壁9よりも下方に位置するようになっている。ネジ孔41から排出される作動油は作動油は側面壁10と下面壁9を経て高温となったドア104に付着する可能性があるが、金具43によって下方(床)に落下するように誘導し、ドア104への付着を防止するようになっている。その他は第1実施形態と同様に構成されているので、第1実施形態と同じ構成箇所には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。この変形例は、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができるものである。
【0040】
(変形例4)
図14乃至図16は第1実施形態の壁部40の変形例を示す図1乃至図3相当図である。この変形例では、壁部40に変えて中空管47を取り付けることが第1実施形態と異なっている。この変形例の中空管47は、側面壁10との当接面の三箇所にネジ挿通孔を有している。側面壁10にはネジ穴が2つ形成されており、前記当接面に対向する中空管47の面にはネジ44を挿入する為の孔48(図16参照)が上下の二箇所に形成されている。ネジ挿通孔を挿通してネジ穴にネジ44をねじ込むことにより中空管47が側面壁10に固定されている。樹脂製ネジ39は真中のネジ挿通孔内に位置しており、樹脂製ネジ39の頭部39aは側面壁10に当接している。図15及び図16に示すように、中空管47の上端は上面壁8よりも上方に位置して開口しており、中空管47の下端は下面壁9よりも下方に位置して開口している。ネジ孔41から排出される作動油は側面壁10と下面壁9を経て高温となったドア104に付着する可能性があるが、中空管47によって作動油が下方(床)に落下するように誘導し、ドア104への付着を防止するようになっている。また、ネジ孔41から作動油が吹き出した場合であっても中空管47の内壁によって作動油を下方(床)に落下するように誘導し、作動油がドア104に直接付着することを防ぐことができるというメリットを有する。その他は第1実施形態と同様に構成されているので、第1実施形態と同じ構成箇所には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。この変形例は、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができるものである。
【0041】
(第2実施形態)
図17は第2実施形態に係るドアクローザ1を示す。この第2実施形態では、ハウジング4の正面壁6と、ハウジング4の一方(図1右側)の側面壁10に嵌着されるエンドプラグ17が第1実施形態と異なっている。
【0042】
つまり、図17に示すように、ハウジング4の一方の側面壁10に嵌着されたエンドプラグ17にはネジ孔38と樹脂製ネジ39は設けられていない。ハウジング4の正面壁6は作動油排出路としての貫通孔45を備えている。該貫通孔45は低圧室2bと外部とを連通するようにエンドプラグ17の近傍に形成されている。該貫通孔45には樹脂製ボール46が外部から圧入され、貫通孔45内には接着剤が注入されている。樹脂製ボール46は、低圧室2b内の作動油が外部に流出しないように貫通孔45を閉鎖している。樹脂製ボール46は、何らかの要因によりハウジング4の温度が120〜200℃になった場合には熔解して作動油の圧力により貫通孔45から外部に押し出されるようになっている。樹脂性のボール46が貫通孔45から押し出されると、低圧室2b内の作動油が貫通孔45を介して外部に排出されるようになっている。その他は第1実施形態と同様に構成されているので、第1実施形態と同じ構成箇所には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。樹脂製ボール46は本発明の樹脂製部材に相当する。
【0043】
このように、第2実施形態では、密閉空間4aと外部とを連通する貫通孔45を正面壁6に設け、この貫通孔45を速度調整弁37よりも融点が低い樹脂製ボール46により閉鎖している。したがって、何らかの理由によりドア104の温度が高温となったとしても、作動油がエンドプラグ17周りや回転軸24の下端24bを覆うカップ28等から溢れ出たり、速度調整弁37の箇所から作動油が吹き出したりする前のハウジング4が120〜200℃になったタイミングにおいて、専用の排出路として形成した貫通孔45から作動油を外部(床)に排出することができる。
【0044】
しかも、第2実施形態では、貫通孔45は低圧室2bと外部とを連通するように正面壁6に形成されているので、仮に貫通孔45から作動油が吹き出したとしても作動油が直接又は竪枠103を介してドア104に付着することがない。さらに、第2実施形態では、貫通孔45から排出された作動油は壁部40によって床に落下するように誘導されるので、貫通孔45から排出される作動油が下面壁9を経て高温となったドア104に付着することを防ぐことができる。
【0045】
(第3実施形態)
図18は第3実施形態に係るドアクローザ1を示す。この第3実施形態では、ハウジング4の形状が第1実施形態と異なっている。
【0046】
つまり、図18に示すように、上面壁8と下面壁9は壁部40を備えておらず、上面壁8と下面壁9とがドア104側に向かってその間隔を狭くするように傾斜する傾斜面として形成されている。その他は第1実施形態と同様に構成されているので、第1実施形態と同じ構成箇所には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。傾斜面として形成された下面壁9が本発明の作動油誘導手段に相当する。
【0047】
このように、第3実施形態では、密閉空間4aと外部とを連通するネジ孔38を設け、このネジ孔38を速度調整弁37よりも融点が低い樹脂製ネジ39により閉鎖している。したがって、何らかの理由によりドア104の温度が高温となったとしても、作動油がエンドプラグ17周りや回転軸24の下端24bを覆うカップ28等から溢れ出たり、速度調整弁37の箇所から作動油が吹き出したりする前のハウジング4が120〜200℃になったタイミングにおいて、専用の排出路として形成したネジ孔38から作動油を外部(床)に排出することができる。
【0048】
しかも、第3実施形態では、側面壁10を経て下面壁9に至った作動油は、傾斜面として形成された下面壁9により正面壁6側に誘導されて床に落下するので、ネジ孔38から排出される作動油が高温となったドア104に付着することを防ぐことができる。
【0049】
(第4実施形態)
図19は第4実施形態に係るドアクローザ1を示す。この第4実施形態では、作動油収容用の収容タンク49をハウジング4に付設することが第1実施形態と異なっている。
【0050】
つまり、ハウジング4の低圧室2b側のエンドプラグ17の代わりに、収容タンク49を側面壁10の嵌合孔10bに嵌着している。収容タンク49は作動油排出路としてのネジ孔50を備えている。該ネジ孔50には接着剤を塗布した樹脂製ネジ51がねじ込まれており、低圧室2b内の作動油が収容タンク49の内部空間S(密閉空間)に流入しないようにネジ孔50を閉鎖している。樹脂製ネジ51は、頭部51aと軸部51bとを備え、頭部51aは収容タンク49の表面に当接し、低圧室2b内に位置している。樹脂製ネジ51は、何らかの要因によりハウジング4の温度が120〜200℃になった場合には熔解し、低圧室2bと収容タンク49内の内部空間Sとを連通させるように構成されている。その他は第1実施形態と同様に構成されているので、第1実施形態と同じ構成箇所には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。樹脂製ネジ51は本発明の樹脂製部材に相当する。
【0051】
このように、第4実施形態では、収容タンク49にネジ孔50を設け、このネジ孔50を速度調整弁37よりも融点が低い樹脂製ネジ51により閉鎖している。したがって、作動油がエンドプラグ17周りや回転軸24の下端24bを覆うカップ28等から溢れ出たり、速度調整弁37の箇所から作動油が吹き出したりする前のハウジング4が120〜200℃になったタイミングにおいて、ネジ孔50から作動油を収容タンク49の内部空間Sに排出してハウジング4内部の作動油の内圧を降下させることができる。
【0052】
本発明のドアクローザは、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、上述した実施形態において速度調整弁37は金属製とされていたが、樹脂製部材としての樹脂製ネジ39や樹脂製ボール46よりも融点が十分に高いことを条件に速度調整弁37は樹脂製であってもよい。
【0053】
また、第1実施形態においてネジ孔38はエンドプラグ17に形成されていたが、ネジ孔38を正面壁6、下面壁9又は側面壁10に形成するようにしてもよい。
【0054】
また、第2実施形態において貫通孔45は正面壁6に形成されていたが、下面壁9、側面壁10又はエンドプラグ17に形成してもよい。
【0055】
また、第2実施形態における樹脂製ボール46は樹脂製ピンとしてもよい。
【0056】
また、第1実施形態の変形例1乃至4を第2実施形態に組み合わせて用いてもよく、第2実施形態と第3実施形態を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
また、第4実施形態において収容タンク49の内部空間Sは密閉空間とされていたが、収容タンク49の上部に内部空間Sと外部(大気)とを連通する孔が形成されていてもよい。収容タンク49の上部に孔を形成しておくことにより、作動油の収容タンク49の内部空間Sへの排出により一旦降下したハウジング4内部の作動油の内圧が再び上昇することを防止することができる。
【0058】
また、第4実施形態において収容タンク49の内部空間Sは密閉空間とされていたが、内部空間Sが所定の真空度に脱気されることで真空状態とされていてもよい。収容タンク49の内部空間Sを真空状態としておくことにより、低圧室2bと収容タンクの内部空間Sとが連通した際に作動油を収容タンク49内に迅速に排出させてハウジング4内部の作動油の内圧を降下させることができる。また、一旦降下したハウジング4内部の作動油の内圧が上昇することを遅延させることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 ドアクローザ
2a 高圧室
2b 低圧室
4 ハウジング
4a 密閉空間
6 正面壁
9 下面壁
10 側面壁
15 ピストン
16 コイルスプリング(ピストン付勢手段)
17 エンドプラグ
21 ラック・ピニオン機構
22 ラック
23 ピニオン
24 回転軸
24a 回転軸の上端
24b 回転軸の下端
29 リンク機構
37 速度調整弁
38 ネジ孔(作動油排出路)
39 樹脂製ネジ(樹脂製部材)
40 壁部(作動油誘導手段)
41 ネジ孔(作動油排出路)
42 溝部(作動油誘導手段)
43 金具(作動油誘導手段)
45 貫通孔(作動油排出路)
46 樹脂製ボール(樹脂製部材)
47 中空管(作動油誘導手段)
49 収容タンク
50 ネジ孔(作動油排出路)
51 樹脂製ネジ(樹脂製部材)
101 ドア開口部
102 上枠
104 ドア
S 内部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油が充填された密閉空間を有するハウジングと、
上記密閉空間にピストン付勢手段により付勢された状態で往復移動可能に配置されたピストンと、
該ピストンに組み込まれたラック・ピニオン機構と、
該ラック・ピニオン機構のピニオンに上記ハウジングを上下に貫挿するように回転一体に連結された回転軸と、
一端が上記回転軸の上端に連結されるとともに、他端が建物のドア開口部の上枠側に連結されたリンク機構と、
上記ハウジングの側面壁に挿着され、上記ピストンの移動に連動して上記密閉空間を流動する作動油の流量を制御することでドアの閉速度を調整する速度調整弁とを備え、
ドアの開操作によりその回転動作を上記リンク機構、回転軸及びラック・ピニオン機構を介してピストンの直線動作に変換して該ピントンを上記ピストン付勢手段の付勢力に抗してハウジングの密閉空間で移動させ、ドアから手を離すことにより上記ピストンを上記ピストン付勢手段の付勢力によりハウジングの密閉空間で移動させてドアをゆっくりと自動的に閉めるように構成されたドアクローザであって、
該ハウジングが高温となった際に該密閉空間から作動油を排出する為の作動油排出路を備え、
該作動油排出路が該速度調整弁よりも低い融点を有する樹脂製部材によって閉鎖されていることを特徴とするドアクローザ。
【請求項2】
該密閉空間は該ピストンにより高圧室と低圧室とに分けられており、該作動油排出路は該低圧室に連通していることを特徴とする請求項1に記載のドアクローザ。
【請求項3】
該作動油排出路が該ハウジングの側面壁に嵌着されたエンドプラグに形成されていることを特徴とする請求項2に記載のドアクローザ。
【請求項4】
該作動油排出路が該ハウジングの正面壁、下面壁又は側面壁のいずれかに形成されていることを特徴とする請求項2に記載のドアクローザ。
【請求項5】
該作動油排出路は該ドアから離れる方向に延びるように形成されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のドアクローザ。
【請求項6】
該ハウジングには該作動油排出路から排出された作動油が該ドアに付着することを防ぐ為の作動油誘導手段が設けられていることを特徴とする請求項3乃至請求項5に記載のドアクローザ。
【請求項7】
該作動油排出路が該ハウジングの側面壁に嵌着された収容タンクに形成されていることを特徴とす請求項2に記載のドアクローザ。
【請求項8】
該収容タンクの内部空間は真空状態とされていることを特徴とする請求項7に記載のドアクローザ。
【請求項9】
該収容タンクは上部に孔を備え、該収容タンクの内部空間と外部とは該孔を介して連通していることを特徴とする請求項7に記載のドアクローザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−11054(P2013−11054A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141882(P2011−141882)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)