説明

ドット結合型パターン磁気記録媒体

【課題】
ビットパターン磁気記録媒体で,面記録密度1 Tbit/in以上を実現するには,磁性ドット寸法を小さくすることなしに磁性ドット間の静磁気相互作用の増大を抑制する手段の導入が必要である。本発明は,高密度配置をしても磁性ドット間の静磁気相互作用の増大を実効的に抑制できるビットパターン磁気記録媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
本発明は,垂直方向に磁気異方性を持ち,ドット状にパターン化された磁性膜を含むパターン磁気記録媒体においてドット間の一部がトラック長手方向で結合されていることを特徴とするビットパターン磁気記録媒体を提供する。さらに,前記磁性ドット間の結合部断面積がドットのトラック幅方向最大断面積の30 %以下であることを特徴とするビットパターン磁気記録媒体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,記録ビットがパターン化された磁性膜を有するパターン磁気記録媒体に関する。このようなビットパターン磁気記録媒体は,コンピュータ,ビデオレコーダ等の各種記録機器に搭載される磁気記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録装置の記録密度を高める技術として,垂直磁気記録方式が注目されている。この方式では垂直方向に磁気異方性を持つ微粒子構造の磁性薄膜が記録媒体として用いられ,情報が磁気ヘッドにより微小な磁化パターンとして記録される。
垂直磁気記録方式は,磁化転移を境に隣接する磁化が反平行に結合するため,面内磁気記録方式と比較すると,熱磁気緩和に対してより安定な記録状態を維持することが可能となり,高密度化に適している。
【0003】
しかし,垂直磁気記録方式といえども面内磁気記録方式と同様に,記録ビット長が小さくなるのに対応して,記録媒体の微粒子の寸法もその1/10ほどに小さくする必要があり,記録ビット長の減少に伴い磁性粒子が保持する磁気エネルギーが低下し熱磁気緩和の影響が現れてくる。
磁性粒子の磁気エネルギーを大きくするには磁性体の磁気異方性を大きくすることが有効であるが,記録の際の磁化反転に必要な磁界強度も大きくなってしまい,磁気ヘッドでの記録が出来なくなってしまうという問題があった。
【0004】
この磁気記録媒体の熱磁気緩和現象による限界をブレークスルーする方法として,磁性ドットの面積をビットの大きさとするビットパターン磁気記録媒体が提案されている(非特許文献1および非特許文献2参照)。
ビットパターン磁気記録媒体は,磁性ドットの面積をビットの大きさとすることで,磁性粒子の体積を増して磁気エネルギーを飛躍的に大きくでき,磁気異方性を大きくすることなしに熱磁気安定性を確保できるようになる。
ビットパターン磁気記録媒体に関して,面記録密度1 Tbit/inを目指した熱磁気安定性を持った記録媒体の提案はすでにされている(本多直樹,「1 Tbit/in記録用パターンドメディアの設計」,電子情報通信学会技術研究報告,vol.105,no.115,pp.51−56,2005年参照)。
しかし,より高密度の,例えば2 Tbit/inの記録を実現するためにはビットパターンを2倍の密度で配置する必要がある。この場合,単に磁性ドット間の距離を小さくすると,ドット間の静磁気相互作用が増大し,磁性ドットアレーの磁化反転開始磁界の低下と飽和磁界の上昇が生じる。
このため,熱磁気安定性を確保するためには磁化反転開始磁界の低下を補うため,より大きな磁気異方性を持たせる必要がある。しかし,このようにすると,静磁気相互作用により増加した飽和磁界がさらに上昇してしまい,記録に必要な磁界強度が極端に大きくなってしまう。このため,磁気ヘッドでは実現不可能な記録磁界が必要となってしまう。
また,磁化反転開始磁界と飽和磁界の差も大きくなるため,磁化反転ができても,意図した記録が得られるヘッド磁界のトラック長手方向のずれ許容量がビット長の減少に比べ極端に小さくなってしまう。
一方,磁性ドット間の距離を大きく保つため,磁性ドットの寸法を小さくすることも考えられるが,これもドット体積が小さくなった分,磁気異方性を増して磁気エネルギーを大きくして熱磁気安定性を確保する必要がある。このため,磁性ドット寸法を小さくしても,記録できなくなるという問題の解決策とはならない。
【0005】
【非特許文献1】Robert L. White, Richard M. H. New, and R. Fabian W. Pease, “Patterned Media: A Viable Route to 50 Gbit/in2 and up for Magnetic Recording?,” IEEE Trans. Magn., vol. 33, no. 1, pp. 990−995, Jan. 1997年。
【0006】
【非特許文献2】Gordon F. Hughes, “Patterned Media Write Designs,” IEEE Trans. Magn., vol. 36, no. 2, pp. 521−526, March 2000年。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように,ビットパターン磁気記録媒体で,面記録密度1 Tbit/in以上を実現する場合には,磁性ドット寸法を小さくすることなしに磁性ドット間の静磁気相互作用の増大を抑制する手段の導入が必須である。
【0008】
本発明の目的は,1 Tbit/in以上の記録密度を実現するため,高密度配置をしても磁性ドット間の静磁気相互作用の増大を実効的に抑制できるビットパターン磁気記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の本発明は,垂直方向に磁気異方性を持ち,ドット状にパターン化された磁性膜を含むパターン磁気記録媒体においてドット間の一部がトラック長手方向で結合されていることを特徴とするビットパターン磁気記録媒体である。
さらに,請求項2の本発明は 垂直方向に磁気異方性を持つ磁性ドットがパターン化され,かつドット間の一部がトラック長手方向で結合されている請求項1に記載の磁気記録媒体であって,前記磁性ドット間の結合部断面積がドットのトラック幅方向最大断面積の30 %以下であることを特徴とするビットパターン磁気記録媒体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば,垂直方向に磁気異方性を持ち,ドット状にパターン化された磁性膜を含むビットパターン磁気記録媒体において,ドット間をドット端のトラック長手方向で一部結合することにより,実効的にドット間の静磁気相互作用を抑制する方法が提供され,1 Tbit/in以上の記録密度を持つ磁気情報記録装置が十分なヘッドずれ許容度を持って実現可能となる。
【0011】
本発明のドット結合型パターン磁気記録媒体において,前記ドット結合部断面積は,交換結合の影響による記録特性の劣化を回避するため,ドットのトラック幅方向最大断面積の30%以下とする必要があり,10−25%で大きな効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下,本発明をより詳細に説明する。
本発明に係る結合型ビットパターン磁気記録媒体は,垂直磁気異方性を持つ磁性ドットが非磁性中間層を設けた軟磁性裏打層上に高密度に配置されており,かつ,磁性ドット間に交換結合が働くようにドットの記録トラック長手方向端の一部が結合されている。
この結合断面積はドットのトラック幅方向断面積に対して30 %以下に設定されている。望ましくは10−25 %の間に設定する。
ビットパターン媒体では,ドット間の間隔が小さくなるとドット間に働く静磁気相互作用が大きくなる。このため,磁性ドットの磁化反転開始磁界の低下と飽和磁界の上昇が生じ,大きな記録磁界が必要となるだけでなく,これらの差である磁化反転磁界幅が大きくなり,記録磁界のスイッチングタイミングの長手方向でのずれに対して許容幅がドット間隔の減少に比べ極端に小さくなってしまう。
しかし,ドット間に結合を持たせることによりドット間に働く静磁気相互作用が交換結合により実効的に抑制され,磁性ドットの磁化反転磁界幅が狭くなる。このため,必要な記録磁界強度が小さくなることの他に,記録磁界のスイッチングタイミングの長手方向でのずれに対してより大きな許容幅を持つようにできる。
さらに,トラック長手方向への異方性が付与されるため,記録磁界がトラック幅方向にずれても隣接トラックへの記録が抑制され,より大きなずれ許容量を持つようになる。
このため,本発明を適用すれば,1 Tbit/in2の以上の高密度配置のパターン媒体に対して,トラック長手および幅方向への十分なシフトマージンが確保され,高密度磁気記録システムを実現することが可能となる。
【実施例1】
【0013】
磁性ドット間が結合することにより磁化反転磁界幅が小さくなることを確認した結果について説明する。
DCマグネトロンスパッタリング堆積により,ガラス基板上に膜厚50 nmのCo−Zr−Nb合金軟磁性膜を形成し,その上にカーボン膜を5 nm,さらにPtを10 nm形成後,垂直磁気異方性を持つCo80Pt20合金膜を20 nm形成した。このCo80Pt20合金層の1 μm四方の領域をFIB(集束イオンビーム)加工装置でドット寸法70 nm角,ドット間スペーシングを20 nmに設定して10×10個のドットを作製した。このとき,ドット間の磁性体高さが25 %残るようにエッチング深さを制御して試料Aを作製した。また,比較としてドット間の磁性体を全て除去した比較試料Bも作製した。
これら試料に最初に垂直方向に15 kOeの磁界を印加して磁化を飽和させ,この後逆向きに磁界を印加し,磁界をゼロとして残留状態での磁化反転ドット数NrevをMFM(磁気力顕微鏡)で調べ,全ドット数Ntotとの比[1−2(Ntot−Nrev)/Ntot]を規格化残留磁化とした。さらに,1 kOeステップで逆向き磁界の強度を増加させ,印加磁界強度に対する反転ドット数を調べた。
図1に示すように,試料Aの印加磁界強度に対する規格化残留磁化曲線は,比較試料Bに比べゼロ磁化近傍での傾きが大きい。即ち,ドット間の一部を結合した試料Aでは反転磁界幅が小さくなったことを示している。
これは磁性ドット間の分離が十分な試料Bの場合には,ドット間のスペーシンが20 nmと小さいため,ドット間の静磁気相互作用により磁化曲線の傾きが小さくなったと解釈できる(近藤祐治,経徳敏明,高橋慎吾,本多直樹,大内一弘,「軟磁性裏打ち層を有する磁気ドットアレイの磁気特性」,日本応用磁気学会誌,vol.30,No.2,ページ112−115,2006年参照)。
また,一部が結合した試料Aでは,ドット間に交換結合が働き,これがドット間の静磁気相互作用を打ち消す向きに働くため,同図に見られるように残留磁化曲線の傾きが大きくなったと解釈できる。即ち,ドット間の結合により,静磁気相互作用の影響を緩和し,残留磁化曲線の傾きを大きくできる。これにより,反転磁界幅を小さくできることを示している。
【実施例2】
【0014】
面記録密度2 Tbit/inビットパターン磁気記録媒体について,ビット間のトラック長手方向端の一部を結合した場合の,媒体の膜面垂直方向に測定した残留磁化曲線の変化をマイクロマグネティックシミュレーションにより調べた例について説明する。
【0015】
図11に検討したビットパターン媒体の諸元を示す。図2にビットパターン媒体のモデルを媒体C2の場合について示す。媒体1Tを除き,各トラックは51個のドットを持ち,トラックピッチが25 nmの3本の記録トラックを持つ。ドット間の結合は,一辺2.5 nmの立方体要素を1〜4個ドット間に挿入することで行った。
また,比較のためドットの長手方向の数を半分とした1 Tbit/inの媒体1Tも用いた。結合部を含む各磁性ドットを一辺2.5nmの立方体要素に分割し,各立方体要素間には交換スティフネス定数A=4.9×10−7erg/cmで交換結合が働くとした。これにより,ドット内やドット結合部で磁化の向きが異なる非一斉磁化回転モードも含んだ非常に現実的なシミュレーションモデルとなっている。
各立方体要素のパラメーターは,飽和磁化Ms=1000emg/cm,平均垂直異方性磁界H=18 kOeとし,要素間で異方性分散(標準偏差)σH=15%,異方性軸の垂直方向からの配向分散σθ=2度を導入した。
膜厚1 nmの非磁性中間層を介して設けた軟磁性裏打層はミラーイメージ層として計算に取り込んだ。また,計算はエネルギー平衡法で行い,時間依存性は考慮していない。したがって,得られた残留磁化曲線は記録過程に相当する短時間での磁化挙動と見做すことができる。
これらの条件の下で垂直方向残留磁化曲線をシミュレーションで得た。シミュレーションソフトとしてEuxine Technologies社(Dayton,Ohio,USA)の「Advanced Recording Model,ver.6」を使用した。
図3は得られた残留磁化曲線を示す。ここでは残留磁化を飽和値で規格化して示してある。媒体1Tはビット間隔の広い1 Tbit/in密度相当の媒体(この媒体のみH=16 kOe)の曲線,また媒体C0はビット間隔の狭い2 Tbit/in密度相当の媒体の曲線,また,媒体C1〜C4はそれぞれドット間を1〜4個の立方体要素で結合した媒体の曲線を示す。
それぞれの残留磁化反転開始磁界Hnrと残留飽和磁界Hsrの差である反転磁界幅は,ドット間隔の広い媒体T1が4.2 kOeであるのに対し,ドット間隔を狭めた媒体C0では7.8 kOeと倍ほどに広がっている。これは先にも述べたように,ドット間の静磁気相互作用によるものである。
しかし,媒体C0と同一のドット配置で,ドット間を立方要素1つで結合した媒体C1では反転磁界幅は6.0 kOeと減少した。さらに,立方要素2つおよび4つで結合した媒体C2およびC4ではそれぞれ3.6 kOe,0.3 kOeと大幅に減少した。これらはドット間の交換結合が静磁気相互作用と丁度逆の働きをすることを示している。
【比較例】
【0016】
実施例2で示したビットパターン媒体より,面記録密度1 Tbit/inと2 Tbit/inに相当する媒体1Tと媒体C0について,記録におけるヘッド磁界の長手方向およびトラック幅方向のシフトマージンをシミュレーションにより調べた例について説明する。
実施例2と同様に,シミュレーションソフトとしてEuxine Technologies社(Dayton,Ohio,USA)の「Advanced Recording Model,ver.6」を使用した。記録ヘッド磁界として,シールドプレーナーヘッド(K. Ise, S. Takahashi, K. Yamakawa, and N. Honda,“New Shielded Single−Pole Head with Planar Structure,” IEEE Transactions on Magnetics, vol.42,No.10,pp.2422−2424,2006参照)を電磁界解析ソフト(Ansoft社(Pittsburgh, PA,USA)の「Maxwell 3D」)により解析して得た磁界分布を用いた。
図4に磁極トラック幅14 nm,磁極厚45 nm,シールドギャップ長12 nm,シールド高さ25 nm,磁極先端面−軟磁性層面間距離12 nmとした時の,媒体磁性ドット位置でのトラック長手方向(Down track方向)および幅方向(Cross track方向)の垂直方向磁界分布を示す。図ではヘッドの起磁力が60 mATの場合について示す。
図5は媒体1TとC0について,ヘッド磁極先端面−媒体磁性ドット表面間スペーシングを6 nmとして,それぞれ1016 kFCI(磁束反転/インチ)と2032 kFCIの矩形波信号をヘッド磁界のスイッチングタイミングをトラック長手方向にずらして記録し,記録パターンが正常に行われなかったエラーレートを調べた結果を示す。
媒体1Tでは20.5 nmの範囲でタイミングがずれても正常な記録パターンが得られたが,倍のドット密度とした媒体C0では媒体1Tの半分よりも遥かに狭い2.5 nmのシフトマージンとなった。これは実施例2の図3で示したように,媒体C0ではドット間の静磁気相互作用が大きくなり,反転磁界幅が大きくなったためである。
さらに,ヘッド磁界のトラック幅方向のずれによる隣接トラックへの書き込み率を調べたところ,図6に示すように,トラック幅方向シフトマージンも媒体1Tの6.5 nmから5.0 nmへと減少した。これもドット間隔が狭くなり,ドット間の静磁気相互作用が増加したことによると考えられる。
いずれにしても,ドット間隔を面記録密度1 Tbit/inよりも大きくするとトラック長手および幅方向のヘッド磁界のシフトマージンが減少し,高密度記録システムの実現は不可能となってしまう。
【実施例3】
【0017】
比較例と同様に,面記録密度2 Tbit/inに相当するビットパターン媒体について,磁性ドット間を一部結合した場合について,記録におけるヘッド磁界の長手方向およびトラック幅方向のシフトマージンをシミュレーションにより調べた例について説明する。
比較例と同様に,シミュレーションソフトとしてEuxine Technologies社(Dayton,Ohio,USA)の「Advanced Recording Model,ver.6」を,記録ヘッド磁界として,シールドプレーナーヘッド(K. Ise, S. Takahashi, K. Yamakawa, and N. Honda,“New Shielded Single−Pole Head With planar structure,” IEEE Transactions on Magnetics, vol.42,No.10,pp.2422−2424,2006)を有限要素法解析して得た磁界分布を用いた。
ヘッドは比較例と同様に,磁極トラック幅14 nm,磁極厚45 nm,シールドギャップ長12 nm,シールド高さ25 nm,磁極先端面−軟磁性層面間距離12 nmとし,ヘッドの起磁力も同様に60 mATとした。
ドット間を部分的に結合した媒体C1〜C4について,ヘッド磁極先端面−媒体磁性ドット表面間スペーシングを6 nmとして,2032 kFCIの矩形波信号をヘッド磁界のスイッチングタイミングをトラック長手方向にずらして記録し,記録パターンが正常に行われなかったエラーレートを調べた。
結果を図7に示す。結合個数が1〜3の媒体C1〜C3では比較例の媒体C0よりも大きなタイミングずれマージンが得られた。これは,実施例2の図3に示したように,ドット間の結合の導入により反転磁界幅が減少することによる。ただし,あまり結合が大きくなると磁性ドットの磁化が同一方向を向き易くなるため,タイミングシフトマージンは減少してしまう。
さらに,ヘッド磁界のトラック幅方向のずれによる隣接トラックへの書き込み率を調べたところ,図8に示すように,ドットを結合した媒体では全て媒体C0よりも大きなトラック幅方向シフトマージンが得られた。これはドットのトラック長手方向での結合により長手方向に磁気異方性が誘起されることによっていると考えられる。
図9に示すように,ドット間の結合を持つパターン媒体C2での,残留磁化抗磁力(スイッチング磁界)の印加磁界角度依存性の印加方向による違いからもトラック長手方向に異方性が誘起されることを確認している。
図10に2 Tbit/in2配置のパターン媒体(媒体C0−C4)での,トラック長手方向タイミングシフトマージンおよびトラック幅方向シフトマージンのドット間結合断面積比による変化を示す。トラック幅方向シフトマージンはドット間の結合が大きくなっても減少しないが,トラック長手方向シフトマージンは結合断面積比がドット断面積の30 %以下で大きくなることがわかる。
特に,面積比10−25 %で大きな効果が得られた。このように磁性ドット間を部分的に結合することによりトラック長手および幅方向のシフトマージンを大きくすることができることが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】垂直磁気異方性ドットパターン膜の垂直方向残留磁化曲線のドット結合による変化を示す図。媒体A:面積比25 %が結合,媒体B:完全分離。
【図2】垂直磁気異方性ビットパターン媒体の構造を示す図(媒体C2)。磁性ドットと軟磁性裏打層との間に膜厚1 nmの非磁性中間層を持つ。
【図3】計算機シミュレーションにより得た,垂直磁気異方性ビットパターン膜の垂直方向残留磁化曲線のドット間結合面積よる変化を示す図。
【図4】記録シミュレーションに用いた磁気ヘッドの断面構造と発生磁界のトラック長手および幅方向分布を示す図。
【図5】1 Tbit/in2配置と2 Tbit/in2配置のパターン媒体での,矩形波信号記録磁界のスイッチングタイミングをトラック長手方向にずらした時の,中央トラックでの記録エラー率のタイミングシフト量依存性を示す図。
【図6】1 Tbit/in2配置と2 Tbit/in2配置のパターン媒体での,記録磁界をトラック幅方向にずらした時の,隣接トラックへの書き込み率のシフト量依存性を示す図。
【図7】2 Tbit/in2配置のパターン媒体での,矩形波信号記録磁界のスイッチングタイミングをトラック長手方向にずらした時の,中央トラックでの記録エラー率のタイミングシフト量依存性のドット間結合面積による違いを示す図。
【図8】2 Tbit/in2配置のパターン媒体での,記録磁界をトラック幅方向にずらした時の,隣接トラックへの書き込み率のシフト量依存性のドット間結合面積による違いを示す図。
【図9】トラック長手方向にドット間の結合を持つビットパターン媒体での,残留磁化抗磁力(スイッチング磁界)の印加磁界角度依存性の印加方向による違いを示す図。
【図10】2 Tbit/in2配置のパターン媒体での,トラック長手方向タイミングシフトマージンおよびトラック幅方向シフトマージンのドット間結合断面積比による変化を示す図。
【図11】実施例および比較例で用いた媒体の諸元を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直方向に磁気異方性を持ち,ドット状にパターン化された磁性膜を含むパターン磁気記録媒体においてドット間の一部がトラック長手方向で結合されていることを特徴とするビットパターン磁気記録媒体。
【請求項2】
垂直方向に磁気異方性を持つ磁性ドットがパターン化され,かつドット間の一部がトラック長手方向で結合されている請求項1に記載の磁気記録媒体であって,前記磁性ドット間の結合部断面積がドットのトラック幅方向最大断面積の30 %以下であることを特徴とするビットパターン磁気記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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