説明

ドライアイスブロックの製造方法および製造装置

【課題】貯蔵や輸送の際に相互に貼付くことのないドライアイスブロックをドライアイスペレットから製造するドライアイスブロックの製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】ドライアイスブロックの製造方法は、成形室に所定量のドライアイスペレットを収容し、当該ドライアイスペレットをシリンダー装置により圧縮する方法であり、成形室に収容前のドライアイスペレットに予め水を噴霧する。また、ドライアイスブロックの製造装置は、ドライアイスペレットを収容する成形室30、当該成形室に所定量のドライアイスペレットを供給するペレット供給機構2、成形室30内のドライアイスペレットを圧縮するシリンダー装置4、成形室30からドライアイスブロックを取り出すブロック排出機構5を備えており、ペレット供給機構2には、遊動状態のドライアイスペレットに水を噴霧する噴霧ノズル7が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライアイスブロックの製造方法および製造装置に関するものであり、詳しくは、ドライアイスペレットを原料として例えば直方体のドライアイスを製造するドライアイスブロックの製造方法および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドライアイスペレット(以下、適宜「ペレット」と言う。)は、直径が6mm程度、長さが10〜50mm程度のチョーク状のドライアイスであり、食品などの被冷却物の保管や輸送の際の蓄冷材として使用される。また、板状、直方体、立方体などのドライアイスブロック(以下、適宜「ブロック」と言う。)に比べて質量に対する表面積が大きいため、食品などの急速冷却にも適している。ペレットは、コンテナ内で液化炭酸ガスを断熱膨張させ、得られた粉体状ドライアイスをチョーク状に押出成形する製造装置(ペレタイザー)により製造されるが、当該製造装置は、比較的小型で且つ断熱膨張で発生する炭酸ガスの回収が容易なため、回収した炭酸ガスを再利用することにより、歩留まりを向上でき、製造コストを低減できる。
【0003】
一方、食品の小口の輸送などにおいては、昇華時間の長さの点から、例えば200〜500g程度の薄板状または角柱状の比較的小さな塊のブロックも多く使用される。斯かるブロックは、一般的には、大型のプレス成型方式の製造装置で得られた10〜25kgの塊状のブロックを切断して製造されるが、切断ロスや切断に要する労力の問題から、製造コストが高くなる傾向にある。そこで、比較的安価な前述のペレットを更に圧縮成形し、薄板状や角柱状のブロックを必要に応じて製造することが考えられる。
【0004】
ペレットからブロックを製造する装置としては、例えば、底部が開閉可能なチャンバ(成形室)と、チャンバにペレットを供給する投入装置と、チャンバのペレットを圧縮する加圧装置(シリンダー装置)と、成形されたブロックをチャンバから取り出す排出装置とを備えた「ブロック状ドライアイスの製造装置」が提案されている。
【特許文献1】特開2007−254253号公報
【0005】
更に、同様の装置として、一定量のペレットを収容する計量升が設けられた移動可能な計量板と、計量されたペレットを収容する成形室が設けられた移動可能な成形板と、成形室のペレットをブロックに加圧成形するシリンダー装置と、成形室からブロックをコンベヤに排出する排出機構とを備えた「固形二酸化炭素の製造装置」が提案されている。
【特許文献2】米国特許第6,244,069号公報
【0006】
また、大形の塊状ブロックの切断時に発生したドライアイス 細片(切り屑)からブロックを製造する装置として、昇降可能な成形枠(成形室)と、下降状態の成形枠の下端を閉じる底板と、成形枠にドライアイス細片を供給する原材料投入用バケットと、成形枠のドライアイス 細片を圧縮するシリンダー装置とを備え、圧縮成形して得られたブロックを成形枠の上昇により取り出す様にした「ドライアイス再生成形機」が提案されている。
【特許文献3】特開平11−157823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、薄板状や角柱状の比較的小さなブロックは、製造効率を考慮して多量に製造されるが、取扱性を高るため、所定量を纏めて1つに梱包した後、使用場所まで配送され、あるいは、使用時まで保冷庫などに貯蔵される。しかしながら、ペレットから製造されたブロックは、上記の様に1つに梱包した場合、貯蔵や輸送中にドライアイス同士が相互に貼り付いて一体化し易く、使用時に個々に分割できなくなると言う現象が見られる。
【0008】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ペレットからブロックを製造する方法および装置であって、貯蔵や輸送の際に貼付き現象の少ないドライアイスを製造できるドライアイスブロックの製造方法、および、ドライアイスブロックの製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明においては、原料であるドライアイスペレットに水を噴霧し、得られるドライアイスブロックに微細な氷粒を混入させることにより、ドライアイスブロックの表面に現れる前記の氷粒によってドライアイス同士の界面の結合、一体化を抑制する様にした。
【0010】
すなわち、本発明の第1の要旨は、成形室に所定量のドライアイスペレットを収容し、当該ドライアイスペレットをシリンダー装置により圧縮してドライアイスブロックを製造する方法であって、成形室に収容前のドライアイスペレットに予め水を噴霧することを特徴とするドライアイスブロックの製造方法に存する。
【0011】
また、本発明の第2の要旨は、ドライアイスペレットからドライアイスブロックを製造する装置であって、ドライアイスペレットを収容する成形室と、当該成形室に所定量のドライアイスペレットを供給するペレット供給機構と、前記成形室内のドライアイスペレットを圧縮するシリンダー装置と、前記成形室で成形されたドライアイスブロックを取り出すブロック排出機構とを備え、前記ペレット供給機構には、前記成形室に供給される前の遊動状態のドライアイスペレットに水を噴霧する噴霧ノズルが設けられていることを特徴とするドライアイスブロックの製造装置に存する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、原料であるドライアイスペレットに水を噴霧することにより、ドライアイスブロック中に微細な氷粒を混入させ、ドライアイスブロックを隣接させた際のドライアイスの界面における結合力を低減できるため、貯蔵や輸送中のドライアイスブロック同士の貼付き現象を低減でき、使用時の取扱性を向上させることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明に係るドライアイスブロックの製造方法および製造装置は、ペレットからブロックを製造する方法および装置であり、図1は、ブロックの製造装置を示し、図2〜図5は、ブロックの製造工程を示す。なお、以下の説明においては、適宜、ドライアイスブロックの製造方法を「製造方法」、ドライアイスブロックの製造装置を「製造装置」とそれぞれ略記する。
【0014】
本発明において、ペレットとは、直径が3〜20mm程度の長軸または短軸の棒状固形ドライアイスであって、ペレット状ドライアイス、ペレットドライアイス、チョーク状ドライアイス或いは粒状ドライアイスとも称されるものを言う。また、ブロックとは、従来から固形ドライアイスと称するドライアイスであって、例えば10〜30kgの塊状のもの、0.1〜5kg程度の薄板状のものを含む直方体あるいは立方体に成形されたものを言う。以下の実施形態においては、各辺の長さが5cm×5cm×12cm、質量が約450gの角柱状(直方体)のブロックを上記のペレットから製造する場合を例示する。
【0015】
先ず、本発明の製造装置について説明する。本発明の製造装置は、図1に示す様に、支柱と横架材を組み合せて成る枠組構造の架台を利用して組み立てられており、ペレットを収容する成形室(30)と、当該成形室に所定量のペレットを供給するペレット供給機構(2)と、成形室(30)内のペレットを圧縮するシリンダー装置(4)と、成形室(30)で成形されたブロックを取り出すブロック排出機構(5)とを備えている。
【0016】
本発明の製造装置においては、上記のペレット供給機構(2)にペレットを安定供給し、連続してブロックを製造するため、多量のペレットを予め貯蔵するペレット貯蔵装置(1)が設けられている。斯かるペレット貯蔵装置(1)は、主要な部材を支える架台の一部である水平な支持フレーム(81)の一端側(図1における右側)に配置された枠組(82)を利用して構成されている。ペレット貯蔵装置(1)は、電磁方式などのバイブレーターに供給皿(1p)を組み合せて成る振動フィーダー(12)と、当該振動フィーダーの上方に配置され且つ下端が開放された貯蔵容器(11)とから成る。
【0017】
振動フィーダー(12)の供給皿(1p)の先端(図1における左側の端部))には、供給皿(1p)から後述するペレット供給機構(2)のホッパー(21)へ向けてペレットを供給するシューター(13)が付設されている。そして、振動フィーダー(12)は、ホッパー(21)のセンサー信号に基づいて作動する様になされている。すなわち、振動フィーダー(12)は、ホッパー(21)側のセンサーの信号に基づいて供給皿(1p)上のペレットを放出し、シューター(13)によってホッパー(21)にペレットを投入する様になされている。
【0018】
主要な部材を支える架台の支持フレーム(81)には、ペレット圧縮時にシリンダー装置(4)の加圧力を支える支持台(6)が配置されている。支持台(6)は、平面形状を長方形に形成され、その前端部(図1において左側の部位)には、平面視して成形室(30)と同一形状またはこれよりも僅かに大きな形状に形成され且つ鉛直方向に貫通するブロック排出穴(60)が設けられている。ブロック排出穴(60)は、ブロック排出機構(5)の構成要素の一部であり、製造されるブロックの形状の応じて、例えば平面形状を長方形に形成される。また、図示を省略するが、平面視して長辺部に相当する支持台(6)の両側には、当該支持台上において後述する成形板(3)及び計量板(25)を進退させるため、長さ方向に直交する断面が2段の逆L字状に形成され且つ成形板(3)及び計量板(25)の両側上縁部に係合するガイドレールが設けられている。
【0019】
支持台(6)の上面には、平面形状を方形に形成され且つ上記の成形室(30)を構成する成形板(3)が当該支持台の長さ方向に沿って進退可能に配置されている。成形板(3)は、その両側縁を上記のガイドレールの下段に係合させて摺動自在に配置され、支持フレーム(81)上の支持ブロック(83)に取り付けられたシリンダー装置(36)の進退により、支持台(6)上の一定距離範囲を往復移動する様になされている。そして、成形板(3)の前端部(図1において左側の部位)には、鉛直方向に貫通する穴が成形室(30)として設けられている。すなわち、成形室(30)は、上記の穴と支持台(6)の盤面で構成され且つ水平方向に移動可能になされている。
【0020】
成形板(3)の成形室(30)は、製造されるブロックと同一の平面形状を備え、その深さ(成形板(3)の厚さ)は、製造されるブロック厚さに応じて所要量のペレットを収容可能な深さに設計される。例えば、上記の角柱状のブロックを製造する場合、成形室(30)は、各辺の長さが12cm×5cm程度の長方形の平面形状を備え、かつ、シリンダー装置(4)による圧縮代を考慮して、深さを8cm程度に設計される。そして、成形板(3)の上面には、上記のペレット供給機構(2)の一部である計量升(20)を構成する計量板(25)が配置されている。
【0021】
支持台(6)の基端側(図1において右側)の上方には、ペレット供給機構(2)が配置されている。ペレット供給機構(2)は、前述のシューター(13)を介してペレットを受け入れるホッパー(21)と、当該ホッパーから落下供給されるペレットを所定量収容して成形室(30)に搬送する計量升(20)とを備えている。
【0022】
ホッパー(21)は、その形状には特に制限はないが、後述する回転ブレード(23)の効果を高めるため、通常は、円筒状に形成され且つ上部に例えば逆円錘台状のペレット受入口を開口して構成されている。ホッパー(21)の下端には、上記の計量升(20)と同一平面形状に開口された落下口(24)が設けられ、後退端に位置する計量升(20)に重畳する様に構成されている。すなわち、ホッパー(21)は、当該ホッパー底部の落下口(24)を通じて、所定位置にある計量升(20)にペレットを投入する様になされている。
【0023】
ホッパー(21)の内部には、ペレット同士の固着を防止し且つ計量升(20)へペレットを擦切り状態で定量装填するため、回転ブレード(23)が設けられている。回転ブレード(23)は、ホッパー(21)の上部に設置されたギヤードモーター(22)からホッパー(21)の中心線に沿って垂直に伸長された軸の先端部に取り付けられ且つホッパー(21)底部に近接する状態で配置されており、例えば40rpm程度で回転可能に構成されている。回転ブレード(23)は、2〜4枚、通常は2枚の帯状の薄板(ブレード)を軸周りに均等配置して構成される。そして、各ブレードは、回転方向後方側の一方の長辺部が回転方向前方側の他方の長辺部よりもホッパー(21)の底部に接近する傾斜状態で軸に取り付けられていることにより、計量升(20)へペレットを確実に投入する様になされている。
【0024】
前述した様に、ホッパー(21)は、シューター(13)を介してペレットが供給される構造を備えており、また、当該ホッパー内のペレットの貯留量を検出するセンサー(図示省略)を有している。そして、前述のペレット貯蔵装置(1)においては、上記のセンサーの信号に基づいて振動フィーダー(12)が作動し、供給皿(1p)からペレットをシューター(13)に放出する様になされている。すなわち、本発明の製造装置においては、ホッパー(21)内のペレットの量が予め設定された下限量よりも少なくなった場合、センサーの信号に基づいてペレット貯蔵装置(1)からホッパー(21)へペレットを供給し、また、ホッパー(21)内のペレットの量が予め設定された上限量を超えた場合、センサーの信号に基づいてペレット貯蔵装置(1)からホッパー(21)へのペレットの供給を停止し、ホッパー(21)におけるペレットの貯留量を一定範囲に保持する様になされている。
【0025】
本発明においては、製造されるブロックに水を添加するため、上記のペレット貯蔵装置(1)には、成形室(30)に供給される前の遊動状態のペレットに水を噴霧する噴霧ノズル(7)が設けられている。上記の遊動状態とは、所定領域において個々のペレットが不規則な動きを伴って入れ替わる状態を言う。具体的には、ペレット貯蔵装置(1)のシューター(13)上のペレットに水を噴霧可能に噴霧ノズル(7)が設けられている。
【0026】
噴霧ノズル(7)は、ペレット貯蔵装置(1)の枠組(82)等を利用して、例えばシューター(13)の側方から水平方向へ水を噴霧する様に設置される。通常、噴霧ノズル(7)としては、水をミスト状に噴霧し得る各種の構造のスプレーノズルが使用される。噴霧ノズル(7)は、上水道管などの水供給源から伸長され且つ圧力調整弁が介装された管路(図示省略)の先端に取り付けられている。また、噴霧ノズル(7)の基端部には、制御信号により前記の管路を開閉する開閉弁が配置されている。そして、上記の噴霧ノズル(7)は、ペレット貯蔵装置(1)のペレット放出操作、すなわち、振動フィーダー(12)の作動に同期して水を噴霧可能に構成されている。なお、ペレットに対する水の噴霧量は、通常、噴霧ノズル(7)のオリフィスサイズ、水圧調整などにより調節される。
【0027】
成形板(3)の上面側の計量板(25)は、上記の計量升(20)を構成する板状部材であり、成形板(3)と略同一形状に形成され且つ支持台(6)の長さ方向に沿って成形板(3)の上面を進退可能に配置されている。具体的には、計量板(25)は、その両側縁を上記のガイドレールの上段に係合させて摺動自在に配置され、支持ブロック(83)に取り付けられたシリンダー装置(26)の進退により、成形板(3)上の一定距離範囲を往復移動する様になされている。
【0028】
計量板(25)の前端部には、所定量のペレットを計量して成形室(30)へ移送するため、成形室(30)と同一形状の穴が計量升(20)として設けられている。計量升(20)は、鉛直方向に貫通する穴と成形板(3)の盤面で構成され、そして、上記の計量板(25)の可動構造により、水平方向に移動可能になされている。なお、例えば、上記のブロックを製造する場合、計量升(20)の深さ(計量板(25)の厚さ)は6cm程度に設計される。
【0029】
支持台(6)の上方には、成形室(30)内のペレットを圧縮する成形用のシリンダー装置(4)が設けられている。シリンダー装置(4)は、架台の一部である水平なフレーム(85)に対して鉛直に配置されており、そのロッド先端には、成形室(30)内のペレットを圧縮するための例えばブロック状の加圧板(41)が取り付けられている。加圧板(41)は、その少なくとも下端面が成形室(30)に嵌合する形状に形成され、成形室(30)に対して進入可能に構成されている。
【0030】
シリンダー装置(4)としては、ペレットを崩壊させた後に更に高密度のブロックに圧縮成形するため、上記の加圧板(41)(加圧面)において4〜6MPaの圧力で加圧可能なシリンダー装置、一般的には油圧方式のシリンダー装置が使用される。換言すれば、シリンダー装置(4)の総出力は、加圧板(41)の面積に上記の圧力を乗じた値に相当する出力とされている。
【0031】
また、支持台(6)の先端側には、製造されたブロックを成形室(30)から取り出すブロック排出機構(5)が設けられている。斯かるブロック排出機構(5)は、支持台(6)先端部の上方に設けられた押出し用のシリンダー装置(50)、支持台(6)の先端部に設けられた前述のブロック排出穴(60)、および、支持台(6)先端部の下方に配置された取出し用のコンベヤ(52)から構成されている。
【0032】
上記のシリンダー装置(50)は、前述の成形用のシリンダー装置(4)と同様に、架台の一部である水平なフレーム(86)に対して鉛直に配置されており、そのロッド先端には、成形室(30)からブロックを下方へ押し出すための例えばブロック状の加圧板(51)が取り付けられている。加圧板(51)は、その少なくとも下端面が成形室(30)に嵌合する形状に形成され、重畳した状態の成形室(30)とブロック排出穴(60)に対して進入可能に構成されている。
【0033】
シリンダー装置(50)としては、成形室(30)からブロックを押し出し得る程度の出力のものでよく、通常、加圧板(51)(加圧面)において2〜4MPaの圧力で加圧可能な油圧方式のシリンダー装置が使用される。換言すれば、シリンダー装置(50)の総出力は、加圧板(51)の面積に上記の圧力を乗じた値に相当する出力とされている。また、支持台(6)のブロック排出穴(60)は、その平面形状を成形室(30)と同一か又は成形室(30)よりも僅かに大きな形状に形成される。
【0034】
取出し用のコンベヤ(52)は支持台(6)のブロック排出穴(60)の直下に位置する様に、架台または支持台(6)を利用して水平に取り付けられる。斯かるコンベヤ(52)としては、耐低温性を有する樹脂製のベルトコンベヤ又は金属製もしくは樹脂製のローラーコンベヤが使用される。すなわち、ブロック排出機構(5)は、支持台(6)のブロック排出穴(60)に重畳した状態で位置する成形室(30)に対し、シリンダー装置(50)の前進(下降)によりその加圧板(51)を進入させ、成形室(30)内のブロックをブロック排出穴(60)から排出し、コンベヤ(52)によって装置外へ取り出す様になされている。
【0035】
次に、上記の製造装置の運転方法と共に、本発明に係るブロックの製造方法について図2〜図5を参照して説明する。ブロックの製造においては、予め、ペレット貯蔵装置(1)の貯蔵容器(11)へ十分な量のペレットを貯蔵しておく。
【0036】
図2に示す様に、ペレット貯蔵装置(1)においては、貯蔵容器(11)から供給皿(1p)上に供給されるペレットを振動フィーダー(12)の振動によって一様に均しながら供給皿(1p)の前方側へ順次に移動させ、そして、シューター(13)を通じてホッパー(21)へペレットを投入する。通常、ホッパー(21)へのペレットの供給量、換言すれば、シューター(13)におけるペレットの落下量は、例えば330〜430g/secに設定される。斯かる落下量は、振動フィーダー(12)の出力、シューター(13)の幅、シューター(13)の傾斜角度の設定により調節できる。
【0037】
なお、ホッパー(21)のセンサーは、ペレットの貯留量(上限量・下限量)をセンサーで検出し、ペレット貯蔵装置(1)の振動フィーダー(12)は、上記のセンサーに応じて作動するため、ホッパー(21)においては、ペレットの貯留量を常に一定範囲に保持することが出来る。
【0038】
本発明においては、上記の様にシューター(13)によりホッパー(21)へペレットを供給する際、噴霧ノズル(7)を使用し、シューター(13)を落下するペレットに対して水を噴霧する。すなわち、本発明では、成形室(30)に収容前の遊動状態のペレットに予め水を噴霧する。例えば、シューター(13)からペレット供給機構(2)のホッパー(21)へ上記の量のペレットを受け入れる場合、噴霧ノズル(7)からの水の噴霧量を0.3〜1.0g/secに設定する。これにより、部材に付着したり、装置外へ飛散する水を除き、実質的に、ペレット1gに対して5.7×10−5〜3.5×10−4gの水を担持させることが出来る。
【0039】
ペレットにおける水の担持量を上記の範囲に設定する理由は次の通りである。すなわち、ペレット1gに担持させる水の量が5.7×10−5g未満の場合は、ブロック中に分散する微小氷粒が少なく、ブロック同士の貼付き現象を十分に抑制する効果が得られない。一方、ペレット1gに担持させる水の量が3.5 10−4gを超えた場合は、目視し得る程度の大きな粒径の氷粒がブロック中に混入し、ブロックの硬度低下などによる品質劣化を惹起し、また、噴霧量の増大によるシューター(13)やホッパー(21)内での氷結が発生する。
【0040】
上記の様にペレット供給機構(2)によりペレットが供給されると、ペレット供給機構(2)のホッパー(21)においては、回転ブレード(23)がペレットを撹拌し、ペレット同士が固着するのを防止する。そして、回転ブレード(23)の回転により、ホッパー(21)底部の落下口(24)からペレットを落下させ、後退端(図1において右側端部)に位置する計量板(25)の計量升(20)へペレットを投入する。また、その際、回転ブレード(23)の回転により、計量升(20)に対してペレットを擦り切りの状態までに装填することが出来る。
【0041】
一定時間停止する間にペレットが満杯状態に収められた計量升(20)は、図3に示す様に、シリンダー装置(26)の作動により前進端の位置まで移動し、成形板(3)の成形室(30)に重畳する。その結果、計量升(20)のペレットは、下方の成形室(30)に移し替えられる。すなわち、計量升(20)は、一定量のペレットを成形室(30)に移送して供給する。
【0042】
成形室(30)にペレットが装入されると、図4に示す様に、シリンダー装置(4)が作動して加圧板(41)が下降し、計量升(20)を介して加圧板(41)が成形室(30)内のペレットを圧縮する。その結果、成形室(30)内のペレットは一旦その形状が崩壊し、ブロックとして再成形される。通常、加圧板(41)の下降端における加圧保持時間は2秒以下に設定される。
【0043】
上記の様に成形室(30)においてブロックが成形されると、図5に示す様に、シリンダー装置(4)の作動により加圧板(41)が原位置まで上昇し、次いで、シリンダー装置(26)の作動により計量板(25)が後退して計量升(20)がホッパー(21)の下方の原位置に復帰する。一方、成形板(3)は、シリンダー装置(36)の作動により前進端まで前進し、ブロックを収容した成形室(30)は、支持台(6)のブロック排出穴(60)に重畳する。
【0044】
成形室(30)が上記の位置に移動すると、ブロック排出機構(5)のシリンダー装置(50)が作動し、加圧板(51)が下降して成形室(30)及びブロック排出穴(60)に進入する。その結果、成形室(30)内のブロックがブロック排出穴(60)を通じてコンベヤ(52)の上に排出される。そして、排出されたブロックは、コンベヤ(52)により装置外へ搬出される。
【0045】
また、ブロック排出後は、シリンダー装置(50)が作動し、加圧板(51)が原位置まで上昇した後、シリンダー装置(26)の作動により成形板(3)が原位置まで後退する。そして、上記の一連の動作を繰り返すことにより、ペレットから例えば角柱状(直方体)のブロックを連続的に製造することが出来る。
【0046】
本発明においては、上記の様に水の噴霧により、多量に積み重ねた状態で貯蔵などした場合でも相互に貼付くことのないブロックを製造することが出来る。すなわち、本発明によれば、原料であるペレットに水を噴霧することにより、ブロック中に微細な氷粒を混入させ、ブロックを隣接させた際のドライアイスの界面における結合力を低減できるため、貯蔵や輸送中におけるブロック同士の貼付き現象を低減でき、使用時の取扱性を向上させることが出来る。
【0047】
ちなみに、ペレットから製造されたブロックの貼付き現象については、種々解析の結果、次の様な要因が推定される。すなわち、上記のブロックは、成形室(30)でペレットの圧縮崩壊により一時的に生成されるドライアイスの粉体や粒子の性状を表面に残しており、これを多数纏めて貯蔵等した場合、比較的小さな外圧によりドライアイス同士の界面が結合、一体化し易いと考えられる。一方、例えば25kgの塊を切断して製造されるブロックは、原料の液化炭酸ガス又はこれから生成された圧縮成形前のドライアイス粉体にバインダーとして水分を水蒸気などの形態で添加しているのに対し、意外にも、ペレットから製造されるブロックにおいては、水の噴霧によって微細な氷粒として混入させることにより、氷粒がドライアイス同士の界面の結合を阻害すると考えられる。
【0048】
なお、本発明の製造装置においては、ペレット供給機構(2)のホッパー(21)に上記の様な回転ブレード(23)が設けられている場合、噴霧ノズル(7)は、ホッパー(21)内に付設され、回転ブレード(23)によって撹拌されるペレットに水を噴霧する様に構成されていてもよい。また、図示しないが、計量升(20)、成形室(30)及びブロック排出穴(60)がそれぞれ複数並列に設けられ、1基の共通のシリンダー装置(4)で昇降する複数の加圧板(41)により、各成形室(30)のペレットを同時に処理する様に構成されていてもよい。
【実施例】
【0049】
図1に示す製造装置を使用し、約470gのペレットを圧縮成形して、各辺の長さが5cm×5cm×12cm、質量が約450gの角柱状のブロックを製造した。その際、シューター(13)を落下するペレットに対し、噴霧ノズル(7)から噴霧する水の量を調節した。そして、得られたブロックについて、ペレットに噴霧した水の量、実際にペレットに担持させた水の量、および、水分量の違いによる貯蔵時の貼付き現象の違いについて確認した。なお、ペレットを圧縮する際のシリンダー装置(4)の加圧力は、加圧板(41)において5MPaであった。
【0050】
上記の貼付き現象の確認では、各条件ごとに、得られたブロックの25個を1梱包としてクラフト紙で包装し、40梱包を保冷庫に24時間保管した後、全ての梱包を開梱し、手作業で分割できないブロック同士の貼付きの数量を確認した。また、水の噴霧量については、供給したペレットの量と水の供給量とから算出し、ブロックの含水率については、カールフィッシャー法による水分測定によって求めた。そして、ペレットに担持させた水分量については、ペレットが当初から含有していた水分(液化炭酸ガス製造時に添加された水分ならびにペレット製造時およびブロック製造時に空気中から取り込まれた水分)の比率(平均含水率125ppm)を上記の含水率から差し引いて求めた。その結果、以下の表に示す結果が得られた。
【0051】
表中に実施例1,2として示す様に、ペレットに所定量の水を噴霧した場合には、得られるブロックにおいて貼付き現象を低減することが出来た。これに対し、比較例1,2として示す様に、水を噴霧しなかった場合には、貯蔵の際に貼付き現象が多く発生した。また、表中には示さないが、ペレット1g当たり4.0×10−4g以上の水を担持させた場合には、成形前に粒径の大きな氷粒を含むペレットの塊状物が生成され、装置内での引掛りや成形不良が発生した。一方、ペレット1g当たりの水の担持量が5.0×10−5g以下の場合には、貼付き現象の発生が高くなる傾向が見られた。
【0052】
なお、表中、試料3,4(比較例1,2)に関して、ブロックの含水率が示されているが、斯かる値は、ペレットが当初から含有していた水分の値と考えられる。また、試料1,2(実施例1,2)に関しても、ブロックの含水率は、ペレットが当初から含有していた水分を含む値である。
【0053】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係るドライアイスブロックの製造装置の主要部の構造を一部破断して示す側面図である。
【図2】図1の製造装置によるドライアイスブロックの製造におけるペレット供給機構でのペレット計量工程を模式的に示した側面図である。
【図3】図1の製造装置によるドライアイスブロックの製造における成形室へのペレット供給工程を模式的に示した側面図である。
【図4】図1の製造装置によるドライアイスブロックの製造におけるシリンダー装置による圧縮工程を模式的に示した側面図である。
【図5】図1の製造装置によるドライアイスブロックの製造におけるブロック排出機構による取出し工程を模式的に示した側面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 :ペレット貯蔵装置
11:貯蔵容器
12:振動フィーダー
1p:供給皿
13:シューター
2 :ペレット供給機構
20:計量升
21:ホッパー
23:回転ブレード
25:計量板
3 :成形板
30:成形室
4 :シリンダー装置
41:加圧板
5 :ブロック排出機構
50:シリンダー装置
51:加圧板
52:コンベヤ
6 :支持台
60:ドライアイス排出穴
7 :噴霧ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形室に所定量のドライアイスペレットを収容し、当該ドライアイスペレットをシリンダー装置により圧縮してドライアイスブロックを製造する方法であって、成形室に収容前のドライアイスペレットに予め水を噴霧することを特徴とするドライアイスブロックの製造方法。
【請求項2】
ドライアイスペレット1gに対して5.7×10−5〜3.5×10−4gの水を担持させる請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ドライアイスペレットからドライアイスブロックを製造する装置であって、ドライアイスペレットを収容する成形室と、当該成形室に所定量のドライアイスペレットを供給するペレット供給機構と、前記成形室内のドライアイスペレットを圧縮するシリンダー装置と、前記成形室で成形されたドライアイスブロックを取り出すブロック排出機構とを備え、前記ペレット供給機構には、前記成形室に供給される前の遊動状態のドライアイスペレットに水を噴霧する噴霧ノズルが設けられていることを特徴とするドライアイスブロックの製造装置。
【請求項4】
ペレット供給機構は、シューターを介してドライアイスペレットを受け入れるホッパーと、当該ホッパーから供給されるドライアイスペレットを所定量収容して成形室に搬送する計量升とを備え、噴霧ノズルは、前記シューター上のドライアイスペレットに水を噴霧可能に設けられている請求項3に記載のドライアイスブロックの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−126407(P2010−126407A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303752(P2008−303752)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(591107034)日本液炭株式会社 (17)
【Fターム(参考)】