説明

ドラムスクリーンとこれを備えた濃縮機

【課題】消費電力が少なく、全体の機構が簡素で保守に多大なコストをかける必要がなく、更には、小〜大規模処理量の処理が可能でかつ装置全体をコンパクトにできるドラムスクリーンとこれを備えた濃縮機を提供する。
【解決手段】多数の排液部が形成された略円筒状のドラム本体1aの内周側に、このドラム本体1a内周面の一部または全周と対向するスパイラルが配置されている。ドラム本体1aの外周面の排液部を構成する開孔が、上流側から下流側に向けて粗くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドラムスクリーンとこれを備えた濃縮機に関し、詳しくは、多数の排液部が形成された略円筒状のドラム本体の内周側に、このドラム本体内周面の一部または全周と対向するスパイラルが配置されているドラムスクリーンとこれを備えた濃縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥などを処理する場合、水分がかなりの量含まれているため、予め下水汚泥から水分を効果的に除去する汚泥濃縮工程は、処理効率を高めるなどのため、極めて重要である。
【0003】
すなわち、濃縮工程は、水処理施設で発生した低濃度の汚泥を固液分離することにより濃縮し、処理汚泥量の減量を図ると共に、後段の脱水工程を効果的に機能させる。濃縮工程を一層効率よくすることにより、脱水装置の小型化や省エネルギーを達成できると共に、脱水性能をより向上させることができる。
【0004】
例えば、下水汚泥の濃縮工程では、遠心効果で固液分離を行う遠心分離機が多く採用されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開平7−232200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術のように、遠心分離機を用いる濃縮方法では、装置本体を高速で回転させるため、大容量の電動機を用いる必要があり、その消費電力が大きく、騒音・振動も大きいこと、更には設置スペースも大きくならざるを得ないだけでなく、保守に要する費用も少なくないため、全体としての処理コストが高騰するという問題がある。
【0007】
そのため、消費電力がより少なく、全体の機構が簡素で保守に多大なコストをかける必要がない濃縮機の要請は強く、更には、小〜大規模処理量の処理が可能でかつ装置全体がコンパクトであり、大きなスペースを要しない濃縮機に対する要請は強いものがある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の有する問題点に鑑みて、消費電力が少なく、全体の機構が簡素で保守に多大なコストをかける必要がなく、更には、小〜大規模処理量の処理が可能でかつ装置全体をコンパクトにできるドラムスクリーンとこれを備えた濃縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、各請求項記載の発明により達成される。すなわち、本発明に係るドラムスクリーンの特徴構成は、多数の排液部が形成された略円筒状のドラム本体の内周側に、このドラム本体内周面の一部または全周と対向するスパイラルが配置されていて、前記ドラム本体の外周面の排液部を構成する開孔が、上流側から下流側に向けて粗くなっていることにある。
【0010】
この構成によれば、略円筒状のドラム本体内に投入された被処理物がドラム本体の回転に伴い、スパイラルとの接触によって固液分離するに際して、投入された被処理物は比較的小さなフロックとなっているため、細かい開孔で小さなフロックの漏洩を防止し、高いSS回収率を確保すると共に、下流側に搬送され大きく成長したフロックに対しては、粗い開孔から効率的に水切りが行われて、上流側から下流側にいたるまで、高い濃縮性能、処理量、固形物回収率を確保できることになる。そのため、従来と同じ薬剤の使用量でも従来の装置より被処理物の固液分離処理量を多くすることができるので、装置容量を小型にすることが可能になり、消費電力を少なくでき、占有スペースも小さくできることになる。のみならず、ドラム本体の規模を変えるだけで、小〜大規模処理量の処理が可能になり、それでいて装置構成をコンパクトにできることから、保守作業が楽であり、洗浄作業に使用する水量なども少なくできて、処理コストの低減を図ることができる。
【0011】
その結果、消費電力が少なく、全体の機構が簡素で保守に多大なコストをかける必要がなく、更には、小〜大規模処理量の処理が可能でかつ装置全体をコンパクトにできるドラムスクリーンとこれを備えた濃縮機を提供することができた。
【0012】
前記ドラム本体の外周面は、ウエッジワイヤーが多数配列されて構成されていて、前記ウエッジワイヤー間の間隙が上流側から下流側に向けて粗くなっていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、ドラム本体の外周面の排液部を構成する開孔を変化させるのに、ウエッジワイヤー間の間隙を変えるだけであり、上流側から下流側に向けて、排液部を構成する開孔を容易に粗くすることができる。
【0014】
前記ドラム本体の外周面がパンチングメタルから構成されていて、パンチングされた開孔が上流側から下流側に向けて大きくなっていることが好ましい。
【0015】
この構成によっても、パンチングメタルの打抜き孔径を変えるだけであり、上流側から下流側に向けて、排液部を構成する開孔を容易に粗くすることができる。
【0016】
更に、本発明に係る濃縮機の特徴構成は、前記ドラム本体の外周面がパンチングメタルから構成されていて、パンチングされた開孔が上流側から下流側に向けて大きくなっていることにある。
【0017】
この構成によれば、消費電力が少なく、全体の機構が簡素で保守に多大なコストをかける必要がなく、更には、小〜大規模処理量の処理が可能でかつ装置全体をコンパクトにできるドラムスクリーンを備えた濃縮機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る濃縮機Aの左側面内部構造を示し、図2は正面構造を示す。
【0019】
この濃縮機Aは、図1,2に示すように、フレーム3に載置・固定されて、ケーシング2の内部に、ドラムスクリーン1を構成するドラム本体1aが回転可能に配置された回転ドラム型の濃縮機である。この濃縮機Aは、遠心濃縮機に比べて、回転速度が遅くて済むため、消費電力は少なく、騒音・振動も少なく、しかもスペースも小さくて済む。ドラム本体1aは略円筒状をしており、その外周面はウエッジワイヤーが多数配列されたドラムスクリーンが形成されて、ウエッジワイヤー間に多数の間隙(開孔。排液部に相当)が形成された状態になっており、被処理物である下水汚泥(以下、単に汚泥ということがある)の液体部分が下方に排出可能に構成されている。通常、下水汚泥の濃縮処理をする場合、ドラム本体1aでの目幅(ウエッジワイヤー間の間隙)は、0.1〜0.5mm程度が好ましい。
【0020】
ドラム本体1aは、ドラム本体1aを支持するため前後左右に設けられた回転支持部10を、プーリー(図示略)等の伝達手段を用いて回転させるドラム用電動機M1により回転駆動される。
【0021】
汚泥は、ドラムスクリーン1の長手方向一端側に形成された汚泥投入口4から投入されるようになっており、投入された汚泥中の水分など液体部分は、ドラム本体1aの下流側の下方の分離液排出口5から排出され、濃縮された固体部分は下流側の汚泥排出口6から搬出される。
【0022】
ケーシング2の内側上部には、洗浄水ノズル7がケーシング2の長手(軸)方向にわたり複数個設けられていて、ドラムスクリーン1に対して目詰まりを防止すべく洗浄水を噴射するようになっている。もっとも、洗浄水ノズル7を複数配置する代りに、1個のノズルをケーシング2の長手方向に走行させるようにしてもよい。
【0023】
略円筒状をしたドラム本体1aの内周面側には、略円筒状をしたスパイラル8が同心円状に配置されており、ドラム本体1aが回転するのに対して、スパイラル8は回転することなく固定されている。
【0024】
更に、ドラム本体1aの外周面側には、その外周面を洗浄可能な回転ブラシ9が設けられていてもよい。この回転ブラシ9は、その先端が、回転するドラム本体1aの外周面と接触し、ウエッジワイヤー間に付着した毛髪や繊維などのし渣、スクリーンかすその他の汚れを機械的に除去可能になっている。ブラシ9は、金属製、樹脂製その他で構成されており、軸(図示略)周りに回転可能に遊嵌されていてもよいし、固定軸に取り付けられていてもよく、更にはその固定軸を電動機により回転駆動可能になっていてもよい。
【0025】
次に、本濃縮機Aによる下水汚泥処理について説明する。ドラムスクリーン1を構成するドラム本体1aの側面全周にわたり、多数の間隙が形成されているが、この間隙は、図3に示すように、ドラム本体1aの上流側から下流側に向けて間隙が粗くなっていて、排液部の開孔率が変化している特徴を有する。
【0026】
濃縮処理は、予め濃縮しようとする汚泥に高分子凝集剤のような処理剤を添加して、凝集混和槽(図示略)にて汚泥のフロック化を行い、フロック化した汚泥を濃縮機Aの汚泥投入口4より投入する。
【0027】
投入された汚泥は、ドラム本体1a内を回転されながら、ドラム本体1a内に設置されたスパイラル8に沿って出口側に搬送されながら、フロック化した汚泥はスクリーン上に残り、水分のみがウエッジワイヤーで形成されたスクリーンの間隙から排出され、固液分離がなされる。このように、汚泥は回転されながら出口側に搬送されるので、その間に汚泥の反転と滞留時間が確保され、固液分離が促進される。
【0028】
ドラム本体1aでの目幅(ウエッジワイヤー間の間隙)は、濃縮性能、処理量、固形物回収率(SS回収率)に大きく影響し、目幅が広いほど水切りし易いことから、濃縮性能、処理量は向上するが、固形物回収率は、目幅が狭いほど微細な固形物まで補足できるので優れる。そこで、目幅の広いドラム本体1aを使用する場合、固形物回収率を高めるには、より大きなフロックを形成する必要があり、そのためにより多くの高分子凝集剤を投入することが必要となり、処理コストの上昇を招くことになる。
【0029】
かかる問題を解消するため、図3に示すように、本実施形態のドラム本体1aの外周面の目幅を、汚泥入口側の目幅1a1は最も狭くし、これに隣接する中間の目幅1a2はより粗くし、出口側の目幅1a3を最も粗くする構成としてある。図3では、3段階で順次目幅が粗くなる略等長の構成を示しているが、2段階に変化させていてもよく、より多段に変化させてもよく、各目幅を構成するドラム本体1aの長さを変化させてもよい。更には、上流側から下流側に向けて、図3に示したように断続的ではなく、連続的に目幅が粗くなっている構成としてもよい。
【0030】
一般に、投入された初期の汚泥は小さなフロックとなっているため、目幅を狭くして、小さなフロックの漏洩を防止し、高い固形物回収率を確保する。そして、出口側に搬送されるほどフロック化した汚泥どうしが結合して、より大きなフロックになり易いため、下流側では目幅を広くしても確実に捕集され、有効に水切りが行われて、高い濃縮性能、処理量、固形物回収率を確保できることになる。
【0031】
ドラム本体1aをこのように構成することにより、殊更多量の高分子凝集剤を投入することなく、濃縮性能、処理量、固形物回収率のいずれをも高くすることができる。
【実施例】
【0032】
ウエッジワイヤータイプの濃縮機(ドラム径600mm、長さ1,200mm)として、ドラム本体1aの目幅を、図3に示すように、入口側から出口側にかけて、0.15mm,0.3mm,0.5mmの3段階に変化させたドラムスクリーンを用いた。この濃縮機を用いて、下水汚泥投入量(15〜29m3 /h)、ドラム本体回転速度(10〜25rpm)の条件で、高分子凝集剤(カチオン系)を投入して、濃縮汚泥濃度、固形物回収率を測定した。なお、同条件下で、ドラム本体1aの目幅が0.15mmおよび0.5mmの2種類の濃縮機を用いて処理した場合を比較例とした。それぞれの測定結果を表1に示す。
【表1】

【0033】
実施例1では、比較例1,2に比べて、薬注率をそれほど高くすることなく、高い固形物回収率と濃縮汚泥濃度の両方を確保できていることがわかる。
【0034】
〔別実施の形態〕
(1)上記実施形態では、ウエッジワイヤーが多数配列されドラムスクリーンを用いた例を挙げて説明したが、ドラムスクリーンとしては、これに限定されるものではなく、その外周面がパンチングメタルのような多孔体で構成されていてもよく、その形式は種々のものを採用できる。要は、上流側から下流側に向けてドラムスクリーンの開孔率が変化しており、開孔が粗になっていればよい。
【0035】
(2)上記実施形態では、下水汚泥処理用として使用した例を示したが、本発明に係る濃縮機は、これに限定されるものではなく、固液分離装置として各種用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係る濃縮機の左側面図
【図2】図1の濃縮機の正面図
【図3】ドラム本体の外周面を表す模式的側面図
【符号の説明】
【0037】
1 ドラムスクリーン
1a ドラム本体
8 スパイラル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の排液部が形成された略円筒状のドラム本体の内周側に、このドラム本体内周面の一部または全周と対向するスパイラルが配置されているドラムスクリーンにおいて、
前記ドラム本体の外周面の排液部を構成する開孔が、上流側から下流側に向けて粗くなっていることを特徴とするドラムスクリーン。
【請求項2】
前記ドラム本体の外周面は、ウエッジワイヤーが多数配列されて構成されていて、前記ウエッジワイヤー間の間隙が上流側から下流側に向けて粗くなっている請求項1のドラムスクリーン。
【請求項3】
前記ドラム本体の外周面がパンチングメタルから構成されていて、パンチングされた開孔が上流側から下流側に向けて大きくなっている請求項1のドラムスクリーン。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項のドラムスクリーンを内部に備え、投入された被処理物の液体部分を排出すると共に、固体部分を濃縮する濃縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−330920(P2007−330920A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167591(P2006−167591)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(506208816)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】