説明

ドラムリフター、ドラム着脱構造および送線機、並びにドラム取付け方法及びドラム取り外し方法

【課題】線材を巻き付けるドラムを、これを用いる機器に簡単に取付け、取り外しするために、ドラムを支持し上下左右に移動させるドラムリフターを提供すること。
【解決手段】側方移動を可能にするローラー25が取り付けられ、ドラム10を載置するスライドベース20と、ローラー25の軌道となる傾斜面16bを有するスローブブロック16が取り付けられた固定ベース13と、スライドベース20を側方に押し引きする空気圧シリンダー31を有するベースリフター30と、を備える。ベースリフター30による側方移動のみでスライドベース20を側方のみならず上下方向に移動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材を巻き付けるドラムを、送線機などのドラム利用機器へ取付け、またはドラム利用機器から取り外すためにこのドラムを支持し移動することが可能なドラムリフターに関し、さらには、このドラムリフターと一体となって機能するドラム着脱構造と、ドラムリフターやドラム着脱構造を備えた送線機に関する。
さらに、こうしたドラムを送線機等に取付け、取り外しする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の素線が撚り合わされた電線などの撚り線を製造するための撚り線製造システムには、素線を撚り合わせる撚り線機や、撚り線機に素線を送り出して供給する送線機が備えられている。この送線機は、素線が巻かれたドラム(ボビン)を回転自在に支持している。
電線の製造工場においては、電線の製造による素線の消費に伴って素線の無くなったドラムを送線機から取り外し、また新たな素線が巻かれたドラムを送線機に取り付ける作業を行う必要がある。ところが、電線にはその各種用途から大小様々な種類の電線が存在し、太く長い金属素線を巻いたドラムには、その重量が1000Kg以上もあるものがあり、その取扱いが困難である。
【0003】
従来より、こうしたドラムの交換作業を自動化する技術が知られており、例えば特開平7−187508号公報(特許文献1)には、リフトや支持ロールを供えたボビンドラム送り出しスタンドの発明が記載されている。
しかしながら、このボビンドラム送り出しスタンドはドラムと接合し軸支する支持軸が無く、ドラムを回転自在に軸支する支持軸を備えた送線機等の機器についての適用は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−187508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、ドラムの両側に設けた支持軸の端部でドラムを挟み込んで支持する従来からの送線機には、次のようなドラムの取付け技術が採用されている。
まず第1の技術は、支持軸の端部であるドラムと接合する部分にテーパー状のドラム接合部が形成されており、単に支持軸をドラムに対して押圧することでドラムの中心孔の端部を送線機のドラム接合部でせり上がらせて固定するものである。
また、第2の技術は、ドラム自体を支持軸の中心までモータで上昇させるリフターを備えたものであり、ドラムの中心と支持軸の中心が揃う位置までリフターでドラムを持ち上げ、その後、支持軸をドラムに押圧して固定するものである。
【0006】
ところが第1の技術では、支持軸先端の面取部とドラムの中心孔の端部とのせり上げでドラムを装着しているため、ドラムが装着された後のドラムと送線機のフレームとの間隔を広くとることができない。そのため、ドラムの安定的な回転がドラムの寸法精度に多大に影響される。即ち、ドラムの鍔径(外径)が大きい場合にはドラムのせり上がりが少なく、運転時にドラムの鍔が送線機のフレームに接触してしまう恐れがある。また、ドラム支持軸の押圧のみで重いドラムをせり上げるため、ドラム支持軸への負担が大きくなり故障し易く送線機の寿命が短くなる恐れがある。
【0007】
そこで、本願発明は、こうした問題点を解決すべく、大きさに寸法差があるような重いドラムであっても、このドラムを用いる機器に簡単に取付け、取り外しを行うことができる技術を提供することを目的とする。
また、ドラムを用いる機器にこうした技術を備えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成すべく以下のような構成を提供する。
線材を巻き付けるドラムを機器に取付けまたは取り外すためにこのドラムを支持し上下左右に移動させるドラムリフターであって、側方移動を可能にするローラーが取り付けられ、ドラムを載置するスライドベースと、前記ローラーの軌道となる傾斜面を有するスロープブロックが取り付けられた固定ベースと、スライドベースを側方に押し引きする駆動シリンダーを有するベースリフターと、を備えるドラムリフターを提供する。
【0009】
側方移動を可能にするローラーが取り付けられ、ドラムを載置するスライドベースを設けたため、ローラーの回転で簡単にスライドベースを側方移動させることができる。そのため、このスライドベースに載置するドラムも簡単に側方移動させることができる。
そして、このローラーの軌道となる傾斜面を有するスロープブロックが取り付けられた固定ベースを設けたため、ローラーがこの傾斜面を転がることで、即ち後するベースリフターがスライドベースを側方へ押圧するだけで、固定ベースに対してスライドベースを上方に持ち上げることができる。
さらに、スライドベースを側方に押し引きする駆動シリンダーを有するベースリフターを備えるため、側方向きの力を加えることができる。また、許容以上の外圧がかかった場合にも動作部品へかかる負荷を軽減することができる。即ち、個々のドラムの寸法差によって側方への移動量が一義的に確定できない状態で、駆動シリンダーがその移動量の差によって生じる外圧を吸収することができる。したがって、例えばモータを用いて側方移動させる場合には、移動量の差によって生じるモータやその隣接部品にかかる過負荷がこれらの部品に損傷を起こしやすく、モータを用いる場合と比較して優れている。
こうしたドラムリフターは、特開平7−187508号公報(特許文献1)に記載された発明のような複雑な構造をとることなく、簡単な構造であり、部品点数も少なくてすむという利点も有している。
【0010】
また、ドラムを支持軸から取り外すためにドラムの側面を押圧するドラムプッシャーをさらに有するドラムリフターである。
ドラムを支持軸から取り外すためにドラムの側面を押圧するドラムプッシャーをさらに有するため、ドラム支持軸に接触したドラムを、支持軸の軸方向に押圧することで、簡単容易にドラム支持軸との接続からドラムを離すことができる。このため、ドラム支持軸に過度な負荷をかけずにドラムを取り外すことができる。
【0011】
上記ドラムリフターにおいて、ベースリフターが、駆動シリンダーから突出して押し引きされるBBホルダーを有しており、さらにそのBBホルダーにスライドベースに接触して押圧するボールベアリングと、駆動シリンダーとスライドベースとを繋ぐ引張コイルばねとを有するものとすることができる。
ベースリフターが、駆動シリンダーから突出して押し引きされるBBホルダーを有しているため、回転自在なボールベアリングをBBホルダーに取り付けることができる。こうしたBBホルダーは、駆動シリンダーから突出し引き戻されるピストン部に固定することができる。
【0012】
さらにそのBBホルダーにスライドベースに接触して押圧するボールベアリングを設けたため、側方への直線運動を行うBBホルダーに対して、上方への移動も行うスライドベースに接触させても過度な摩擦を起こすことなくBBホルダー側からスライドベース側へ押圧力を伝達することができる。
そして、駆動シリンダーとスライドベースとを繋ぐ引張コイルばねを有するため引張コイルばねの弾性力で押し込んだスライドベースを元位置に戻すことができる。また、引張コイルばねが長さ方向だけでなく曲げ方向にも変形容易であるため駆動シリンダーに対して斜め上方にあるスライドベースと無理なく連結し、引き戻すことができる。
【0013】
また、スライドベースが、ドラムとの接触面を該スライドベースの水平面から低くした低段面として形成しているものとすることができる。
スライドベースが、ドラムとの接触面を該スライドベースの水平面から低くした低段面として形成しているため、ドラムのスライドベースとの接触点の前後に段差を設けることができる。そのため、ドラムリフターの操作中にドラムに対して前後方向の不測の力が加わっても、この段差に当たることでベースリフターから落ちることを防止することができる。また、この段差内にドラムを載置することで位置決めでき機器へのドラムの取付けを確実に行うことができる。
そして、低段部を設けたことで水平面とは別部材を低段部に置くことができる。そのため、ドラムと接触して擦れる低段部用の部材を取替可能として、ドラムとの摩擦による傷が生じても簡単に不具合の無い新品に代えることができる。
【0014】
さらに、スライドベースが、ドラム側面に接触してドラムを側方に押圧するストッパーをベースリフター上にさらに有するものとすることができる。
スライドベースが、ドラム側面に接触してドラムを側方に押圧するストッパーをベースリフター上にさらに有するものとしたため、ドラムの側面からドラムを押圧することができる。また、ストッパーを設けることで、ストッパー以外の部位であるローラーやローラーを保持するローラーブロックにドラムが接触することを回避することができる。従ってこれらの部位がドラムと接触して損傷することを未然に防止することができる。
さらに、ドラムがスライドベース上を過度に滑ることを防止してドラムとスライドベースとの一体化を図りスライドベースの動きにドラムの動きを追随させることができる。
さらにまた、ストッパーを外付けとすることができ、交換が容易であるため、大きさの異なるストッパーを適宜用いることができる。したがって、ドラムの種類によって大きさが異なってもストッパーを交換することで、ドラムの種類によらない同様の操作で取付け、取り外しを行うことができる。
【0015】
あるいは、上記何れかのドラムリフターと、ドラムを取付ける機器に設ける支持軸であって、ドラムの両端から挟み込んでこのドラムを支持し回転させる支持軸と、を備えるドラム着脱構造を提供する。
上記ドラムリフターと、ドラムを取付ける機器に設ける支持軸であって、ドラムの両端から挟み込んでこのドラムを支持し回転させる支持軸と、を備えるドラム着脱構造は、ドラムの両端から挟み込む支持軸に過大な負荷をかけずにドラムを取付け、取り外しすることができる。
即ち、一方の支持軸とドラムが適正に接触する位置までドラムリフターによってドラムを移動させることができるため、他方の支持軸がドラムを押圧支持する際にも、この他方の支持軸とドラムが適正位置で接触し押圧することができる。そのため、両支持軸に過大な負荷がかかることを防止し、安全で、簡単に、無理なくドラムの取付け、取り外しを行うことができる。
【0016】
あるいはまた、上記何れかのドラムリフター、または上記ドラム着脱構造を備える送線機を提供する。
上記ドラムリフターまたは上記ドラム着脱構造を備える送線機であるため、作業者にとってドラムの取付け、取り外しが簡単にでき、また、支持軸に過度な負荷がかからないため故障が少なく、高寿命の送線機である。
【0017】
そしてまた、上記目的を達成するために次の構成も提供する。
即ち、線材を巻き付けるドラムを駆動側支持軸とスライド側支持軸とで挟んで取扱う機器に対し、このドラムを取付けるドラム取付け方法であって、ドラムを載置したドラムリフターを傾斜面に沿って斜め方向に上昇させ、前記駆動側支持軸にドラムの中心孔の端部を接近させ、接触させるステップと、スライド側支持軸をドラムの前記中心孔の反対側の端部に接近させ、接触させて押圧し、ドラムを両支持軸間に挟み込み装着するステップと、ドラムリフターを前記傾斜面に沿って斜め方向に下降させ装着したドラムからドラムリフターを引き離すステップと、を実行する機器へのドラム取付け方法である。
【0018】
ドラムリフターでドラムを傾斜面に沿って斜め上方へ持ち上げるステップを実行するため、駆動側支持軸とドラムの接触位置まで、左右方向の押圧力のみでドラムを無理なく持ち上げることができる。
駆動側支持軸とスライド側支持軸とで押圧してドラムを挟み込むステップを実行するため、支持軸の中心とドラムの中心とを合わせて、ドラムを確実に危機に装着することができる。
【0019】
また、線材を巻き付けるドラムを駆動側支持軸とスライド側支持軸とで挟んで取扱う機器から、このドラムを取り外すドラム取り外し方法であって、ドラムリフターを傾斜面に沿って斜め方向に上昇させ、装着したドラムの底部にこのドラムリフターを接触させ、ドラムをドラムリフターで支持するステップと、スライド側支持軸を引き戻し、接触したドラムの中心孔の端部から引き離すステップと、ドラムの側面を押圧して駆動側支持軸に接触したドラムをこの駆動側支持軸から引き離すステップと、ドラムリフターを前記傾斜面に沿って斜め方向に下降させドラムを下ろすステップと、を実行する機器からのドラム取り外し方法を提供する。
【0020】
ドラムリフターを傾斜面に沿って斜め方向に上昇させ、装着したドラムの底部にこのドラムリフターを接触させたため、ドラムに対するドラムリフターの接触をスフトに行うことができる。
また、ドラムをドラムリフターで支持した状態でスライド側支持軸、または駆動側支持軸からドラムを引き離すこととしたため、両支持軸に過負荷をかけずにドラムを取り外すことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のドラムリフターやドラム着脱構造によれば、線材を巻き付けるドラムを用いる機器に対して、そのドラムの取付け、取り外しが容易である。
また、本発明の送線機によれば、ドラムの取付け取り外しが容易であり、ドラム取付け、取り外し時に支持軸に加わる過負荷の発生を抑えて故障が少なく、信頼性が高い。
さらに、本発明のドラム取付け方法やドラム取り外し方法によれば、ドラム装着機器の支持軸に過度な負担をかけることなく、ドラムの取付け、取り外しを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】送線機の斜視図である。
【図2】ドラムリフターの斜視図である。
【図3】スライドベースの斜視図である。
【図4】図2のドラムリフターの部分拡大斜視図である。
【図5】ベースリフターの斜視図である。
【図6】ドラムプッシャーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明についてさらに詳細に説明する。
図1は金属素線を巻かつけるドラム10から、電線製造用の撚り線機(図示せず)へ金属素線を供給する送線機11の斜視図を示す。この送線機11には、ドラム10を固定ベース13の位置から支持軸12の位置まで持ち上げるドラムリフター15が備えられている。
【0024】
図2にはこのドラムリフター15の外視図を示す。
ドラムリフター15には、固定ベース13に対して上方向及び左右方向(側方)に移動可能なスライドベース20と、スライドベース20を左右方向へ移動させるベースリフター30と、送線機11の支持軸12からドラム10を外す際にドラム10を押圧するドラムプッシャー40と、を有している。
【0025】
スライドベース20は、図3の斜視図で示すように、水平方向に対して平板状の平板部21を水平面として、その中央には平板部21よりも一段低くなった低段部22を有している。また、スライドベース20の左端には駆動側ローラーブロック23、右端にはスライド側ローラーブロック24がそれぞれ設けられ、この両ローラーブロック23,24にはローラー25が取り付けられている。スライド側ローラーブロック24に隣接する平板部21上にはストッパー26を設けている。
【0026】
スライド側ローラーブロック24も駆動側ローラーブロック23もローラー25を回転自在に保持する部材であるが、特にスライド側ローラーブロック24は、ベースリフター30のボールベアリング34に接触して押圧を受けるので、このスライド側ローラーブロック24が上方へ移動してもボールベアリング34と接触している必要がある。そのため、スライドベース20の移動高さ以上の高さを有している。また、スライド側ローラーブロック24に対してボールベアリング34が正対せずボールベアリング34からの力の伝達が適度に行われなくなることを防ぐように、ボールベアリング34の回り止めのため、スライド側ローラーブロック24にはボールベアリング34との接触部分が凹んだベアリング受け部24aを設けている。低段部22はドラム10との接触面となりドラム10を直接的に載置する部位である。低段部22は、取替が可能である。
【0027】
図2の部分拡大図である図4と図2で示すように、固定ベース13にはスロープブロック16がネジ16aで固定されている。スロープブロック16は、スライドベース20に設けたローラー25(図4では手前側のローラー25の記載を省略している)の軌道となる傾斜面16bを有しており、傾斜面16bをローラー25が転がることでスライドベース20が左方向に移動するときに上方向に持ち上がるようになっている。ストッパー26は、スライド側ローラーブロック24が直接的にドラム10と接触するのを防ぐとともに、スライド側ローラーブロック24とドラム10との左右方向の位置を調整している。
【0028】
図5で示すベースリフター30は、図2、図4で示すスライド側ローラーブロック24を固定するスライドベース20を左右方向に移動させる部材である。
ベースリフター30は、駆動シリンダーとしての空気圧シリンダー31と、BBホルダー33、ボールベアリング34、引張コイルばね35を有しており、シリンダーベース36で送線機11に固定されている。
空気圧シリンダー31は、BBホルダー33を押圧してボールベアリング34の先端に接触するスライド側ローラーブロック24を左側に移動させる。BBホルダー33は空気圧シリンダー31のピストン部(図示せず)に接続されるとともにボールベアリング34を軸支している。ボールベアリング34は、BBホルダー33に回転可能に軸支されBBホルダー33の左右方向(側方)への移動にともなって左右方向に移動する。引張コイルばね35は、一方端を空気圧シリンダー31に固定し、他方端をスプリングフックプレート24bを通じてスライド側ローラーブロック24に固定している(図4参照)。
【0029】
図6で示すドラムプッシャー40は、ネジ40aで送線機11に取り付けられ、駆動シリンダーとしての空気圧シリンダー41を有し、その空気圧シリンダー41から出たピストン部42がドラム10の側面10aを押すことでドラム10を支持軸12から外す部材である。ドラムプッシャー40はスライドベース20とは別に作動するため、スライドベース20には固定されていない。
ドラムプッシャー40は、ドラム10の側面10aを押圧するので、ドラム10の乗ったベースリフター30を持ち上げるだけの押圧力は不要であるため、ベースリフター30に用いる空気圧シリンダー31よりも低パワーの空気圧シリンダー41を用いることができる。
【0030】
次に、ドラムリフター15の作用について、ドラム10を送線機に取り付ける場合と取り外す場合の手順に従って説明する。
先ずドラム10を送線機11に取り付ける場合は次のように行う。
送線機11の支持軸12,12のうち、左側の駆動側支持軸12aに対して右側のスライド側支持軸12bをドラム10の横幅よりも大きく離しておき、ドラム10を受入可能にしておく。送線機11の近くまで運んできたドラム10は、傾斜台17に置かれたガイド18に沿うように転がしてドラムリフター15の上に置く。ガイド18,18の間隔は、ドラム10を左右方向に微調整させる必要がない程度にドラム10の横幅よりも広くしておくことができる。
ドラムリフター15には、中央部が一段低くなった低段部22を備えているため、ドラム10は低段部22に収まり、前後方向(ドラム10の挿入、引き出し方向)に遊びがあるだけ前後することはあっても平板部21に当たる段差部分を超えないようにしている。
【0031】
ドラム10がドラムリフター15のスライドベース20に乗った状態で、ベースリフター30を駆動する。ベースリフター30の空気圧シリンダー31から押圧を受けたBBホルダー33およびボールベアリング34は、ボールベアリング34の先端が当たるスライド側ローラーブロック24を押圧する。押圧を受けたスライド側ローラーブロック24は取り付けられたローラー25が固定ベース13上のスロープブロック16の傾斜面16bを左側へ転がり、スライドベース20が左方へ移動するとともに上方に持ち上がる。このときベースリフター30のBBホルダー33やボールベアリング34は上方へは移動しないが、スライド側ローラーブロック24とはボールベアリング34で接触しているため、上方へ移動するスライド側ローラーブロック24に対して過度な抵抗を与えることなく押圧することができる。
【0032】
スライドベース20上にあるドラム10はスライドベース20の左上方移動に伴って同様に左上方へ移動することで、ドラム10の中心孔の端部が駆動側支持軸12aの端部近傍まで接近し、そして接触する。駆動側支持軸12aの端部はテーパー状に面取りされており、これに接合するドラム10の中心孔の端部もこのテーパー状に対応する形状に面取りされているので、この両面取り部が接触するようになる。そして、駆動側支持軸12aにドラム10の中心孔の端部を接触させたところでスライドベース20は停止する。
駆動側支持軸12aとドラム10の接触時に、ドラム10とスライドベース20との間で側方への相対的な滑りが生じようとしても、スライドベース20にはストッパー26を設けているため、ストッパー26を超えて滑ることはない。また、ベースリフター30に空気圧シリンダー31を採用しているため、ドラム10が駆動側支持軸12aに接触した際にそれ以上の力が加わっていても空気圧シリンダー31のクッション力でこれを和らげることができる。よって、ドラム10の面取り部が、取り付けるドラム10ごとに寸法差を有していても、ベースリフター30に過度の負担をかけずに済ますことができる。
【0033】
そして、送線機11のスライド側支持軸12bをドラム10側に移動させ、スライド側支持軸12bの端部をドラム10の中心孔の端部に接触させた後さらに押圧し、ドラム10とスライド側支持軸12bの面取り部分でせりながら、駆動側支持軸12aとスライド側支持軸12bとの間にドラム10を挟み込む。
最後にベースリフター30のピストン部(図示せず)を空気圧で引っぱると、引張コイルばね35の復元力でスライド側ローラーブロック24が右下側に引き戻され、ローラー16がスロープブロック16の傾斜面16bを右下方向に下降してスライドベース20が初期位置に戻る。
スライドベース20を持ち上げてドラム10を送線機11に取り付けているため、ドラム10の下端と、下ろされたスライドベース20との間に所望の間隔を取ることができる。そのため、ドラム毎にドラム口径に寸法差があってもその寸法差を問題にしない程度に十分な間隔を設定することができる。
【0034】
また、スライドベース20をスライドさせるとともに持ち上げる操作を、スライドリフター30での側方への押圧のみで行うことができ、側方への押圧手段とは異なる上方への押圧手段を別途設ける必要がない。そして、ベースリフター30の動作を空気圧シリンダー31で行っているため、ドラム間寸法差があっても側方および上方の双方への遊びを設けることができるので、従来のようにドラム10をスライドベース20上の厳密な位置に載置する必要がない。
【0035】
次にドラム10を送線機11から取り外す場合を説明する。
ドラム10がスライドベース20から浮いているため、最初にスライドベースをドラム10に接触する程度まで持ち上げ、スライドベース20を停止する。この持ち上げもベースリフター30によってスライドベース20を押圧することで行う。この場合においても空気圧シリンダー31を採用しているため、スライドベース20がドラム10の下端に接触したときに過度な力が加わればそれを和らげることができる。
そして、スライド側支持軸12bを右側にスライドさせてドラム10からスライド側支持軸16bを取り外す。スライド側支持軸12bが取り外されてもドラム10がスライドベース20で支持されているため、駆動側支持軸12aにはドラム10の重みによる過度な力は加わらない。
【0036】
スライド側支持軸12bが取り外された後、ドラムプッシャー40によって、その空気圧シリンダー41から押し出されたピストン部42がドラム10の側面10aを押圧し、ドラム10を右方向にスライドさせて駆動側支持軸12aから取り外す。
最後にベースリフター30のピストン部を引くと引張コイルばね35の復元力でスライド側ローラーブロック24が右下側に引き戻され、ドラム10の乗ったスライドベース20が下降して初期位置に戻る。
ドラム10の取り外しの際は、スライドベース20を右方に移動させるとともに下方に移動させる動作を行うが、駆動原としてベースリフター30を用いて右方への引きを行うだけでスライドベース20の下降操作を行うことができる。
【0037】
上記実施形態は本発明の一例であり種々の変形形態を採用することができる。例えば、ドラムプッシャー40を用いることなく人力でドラム10を押圧し駆動側支持軸12aからドラム10を取り外すこともできる。
また、駆動シリンダーとして空気圧シリンダーを用いているが、油圧シリンダーを用いることができる。しかしながら、空気圧シリンダーは油圧シリンダーに比べてクッション性(被圧縮性)が優れており、また、油を用いていないことなどからメンテナンス性にも優れている。そして、引火性が無い点で安全性にも優れている。こうした理由から空気圧シリンダーの方が油圧シリンダーよりも好ましい。
さらに、ドラム10を取り外す際には、ドラムプッシャー40でドラム10を押圧するが、そのときのドラム10はベースリフター30からの押圧力を受けた状態にあるため、ドラムプッシャー40とベースリフター30との互いの押圧力がバランスした中でドラム10が駆動側支持軸12aから取り外される。したがって、こうした力の衝突を利用しながら所望の作動を行わせるためには空気圧シリンダーを採用することが望まれる。
【0038】
スライドベース20に設けた4つのスロープブロック16は、スライドベース20を水平に持ち上げるように、傾斜面16bが全て同様の傾斜をしたものを用いたが、駆動側ローラーブロック23側のローラー25の軌道となる傾斜面16bをスライド側ローラーブロック24側のローラー25の傾斜面16bよりも急になるように変化させることで、ドラム10をやや傾斜させて駆動側支持軸16aにドラム10の中心孔の端部を接触させることができる。こうすることにより、駆動側支持軸16aとドラム10端部の接触時の衝撃をより緩和できる場合がある。
このように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態で用いた部品の変更、置換、組み合わせ等が適用可能であり、こうした変更等も本発明の技術的思想の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0039】
10 ドラム(ボビン)
10a 側面
11 送線機
12 支持軸
12a 駆動側支持軸
12b スライド側支持軸
13 固定ベース
15 ドラムリフター
16 スロープブロック
16a ネジ
16b 傾斜面
17 傾斜台
18 ガイド
20 スライドベース
21 平板部
22 低段部
23 駆動側ローラーブロック
24 スライド側ローラーブロック
24a ベアリング受け部
24b スプリングフックプレート
25 ローラー
26 ストッパー
30 ベースリフター
31 空気圧シリンダー(駆動シリンダー)
33 BBホルダー
34 ボールベアリング
35 引張コイルばね
36 シリンダーベース
40 ドラムプッシャー
40a ネジ
41 空気圧シリンダー(駆動シリンダー)
42 ピストン部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材を巻き付けるドラムを機器に取付けまたは取り外すためにこのドラムを支持し上下左右に移動させるドラムリフターであって、
側方移動を可能にするローラーが取り付けられ、ドラムを載置するスライドベースと、
前記ローラーの軌道となる傾斜面を有するスローブブロックが取り付けられた固定ベースと、
スライドベースを側方に押し引きする駆動シリンダーを有するベースリフターと、を備えるドラムリフター。
【請求項2】
ドラムを支持軸から取り外すためにドラムの側面を押圧するドラムプッシャーをさらに有する請求項1記載のドラムリフター。
【請求項3】
ベースリフターが、駆動シリンダーから突出して押し引きされるBBホルダーを有しており、さらにそのBBホルダーにスライドベースに接触して押圧するボールベアリングと、駆動シリンダーとスライドベースとを繋ぐ引張コイルばねとを有する請求項1または請求項2記載のドラムリフター。
【請求項4】
スライドベースが、ドラムとの接触面を該スライドベースの水平面から低くした低段面として形成している請求項1〜請求項3何れか1項記載のドラムリフター。
【請求項5】
スライドベースが、ドラム側面に接触してドラムを側方に押圧するストッパーをベースリフター上にさらに有する請求項1〜請求項4何れか1項記載のドラムリフター。
【請求項6】
請求項1〜請求項5何れか1項記載のドラムリフターと、
ドラムを取付ける機器に設ける支持軸であって、ドラムの両端から挟み込んでこのドラムを支持し回転させる支持軸と、を備えるドラム着脱構造。
【請求項7】
請求項1〜請求項5何れか1項記載のドラムリフター、または請求項6記載のドラム着脱構造を備える送線機。
【請求項8】
線材を巻き付けるドラムを駆動側支持軸とスライド側支持軸とで挟んで取扱う機器に対し、このドラムを取付けるドラム取付け方法であって、
ドラムを載置したドラムリフターを傾斜面に沿って斜め方向に上昇させ、前記駆動側支持軸にドラムの中心孔の端部を接近させ、接触させるステップと、
スライド側支持軸をドラムの前記中心孔の反対側の端部に接近させ、接触させて押圧し、ドラムを両支持軸間に挟み込み装着するステップと、
ドラムリフターを前記傾斜面に沿って斜め方向に下降させ装着したドラムからドラムリフターを引き離すステップと、を実行する機器へのドラム取付け方法。
【請求項9】
線材を巻き付けるドラムを駆動側支持軸とスライド側支持軸とで挟んで取扱う機器から、このドラムを取り外すドラム取り外し方法であって、
ドラムリフターを傾斜面に沿って斜め方向に上昇させ、装着したドラムの底部にこのドラムリフターを接触させ、ドラムをドラムリフターで支持するステップと、
スライド側支持軸を引き戻し、接触したドラムの中心孔の端部から引き離すステップと、
ドラムの側面を押圧して駆動側支持軸に接触したドラムをこの駆動側支持軸から引き離すステップと、
ドラムリフターを前記傾斜面に沿って斜め方向に下降させドラムを下ろすステップと、を実行する機器からのドラム取り外し方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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