ドラム式洗濯機
【課題】本体前方への大きなスペースを要することなく扉体を開閉操作することができるドラム式洗濯機を提供する。
【解決手段】扉体3を投入口5に対して接離し且つ上下方向に回動可能に支持する連結アーム42を設け、扉体3の裏面側は、水槽6側から延出されたベローズ11と接離可能とするとともに、扉体3の開放時には、該扉体3は連結アーム42により投入口5より下方位置に移動され、本体1の前面下部に沿って起立した開放状態に保持される構成とする。
【解決手段】扉体3を投入口5に対して接離し且つ上下方向に回動可能に支持する連結アーム42を設け、扉体3の裏面側は、水槽6側から延出されたベローズ11と接離可能とするとともに、扉体3の開放時には、該扉体3は連結アーム42により投入口5より下方位置に移動され、本体1の前面下部に沿って起立した開放状態に保持される構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯物を出し入れするための投入口を本体前面に備えたドラム式洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来側方に開口するドラム型の水槽を備えたドラム式洗濯機は、製品本体の前面に洗濯物を出し入れするための投入口が設けられ、この投入口には、該投入口を開閉するドア(扉体)が設けられている。このドアの開き方式としては、例えば、ドアが前方に大きく開放動作する横開きタイプ(例えば、特許文献1参照)と、ドアが上下に平行移動するスライドタイプ(例えば、特許文献2参照)などがある。
【0003】
図11、12は、上記横開きタイプの従来例を示したものである。図11、12に示すように、本体100の前面に設けた前面板の中央部に、洗濯物を出し入れするための円形の投入口101を開口させている。この投入口101の前面には、この投入口101を開閉可能に閉塞するドア102を配置している。ドア102は円形状に形成されているとともに、ドア102は、その左右のどちらか一方側をヒンジ部材103で横方向に回動自在に支持され、投入口101を開閉自在に本体100に取り付けられている。
【0004】
図11(a)は、横開きタイプのドラム式洗濯機の本体100を、その左側に位置する左側壁104に隣接するように設置した状態を示している。このような設置条件の場合は、左側にヒンジ部材103を設け、左側に開放する左開きタイプのドア102構成のドラム式洗濯機が選択される。なぜならば、この設置条件で右側にヒンジ部材103を設け右側に開放する右開きタイプのドア102構成である場合、投入口101の前方のスペースは、左側壁104と開放したドア102とに挟まれた幅狭なスペースとなり、洗濯物の出し入れ操作が困難になるからである。
【0005】
これに対し図11(b)は、本体100の右側に右側壁105が隣接する設置条件の場合を示している。この設置条件では、右開きタイプのドア102を有するドラム式洗濯機が選択される。なぜならば、左開きタイプのドア102構成では、投入口101の前方のスペースが右側壁105と開放したドア102とに挟まれた幅狭なスペースとなり、結果的に上記図11(a)の場合と同様に、洗濯物の出し入れ操作が困難になるからである。
【0006】
一方、ドアをスライドタイプとするドラム式洗濯機は、図示しないが本体の前面板に、投入口を形成している。そして、このドアは、該投入口に対して平行に上下スライド移動し、該投入口を開閉させる構成としている。該ドアは、両側でガイドレールに支持されるとともに、洗濯水や飛散した水飛沫などが水槽外に漏れないように、水槽側に支持されたベローズを設け、該ベローズの先端は、スライドするドア裏面に摺接可能に密着する構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−244469号公報
【特許文献2】特開2006−230496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ドアが横開きタイプでは、図11(a)、(b)に示したように、ドア102の右開き用と左開き用とのドラム式洗濯機を用意する必要があり、従って、生産性や製造コストについて不利であった。また、ユーザも当該ドラム式洗濯機の設置環境に応じて右開き用および左開き用のいずれかの当該ドラム式洗濯機を選択し購入せねばならず、依然として設置条件に制約を受けるなどの不具合があった。
【0009】
しかも横開きタイプの構成では、ドア102は、ドア102の左右側部に設けられたヒンジ部材103を中心に前方に向かって回動するため、該本体100の前方には比較的大きなスペースが必要であった。従って、ユーザが本体100前面に位置してドア102の開閉をする時には、ユーザがドア102開放の邪魔になるなど、ドア102の開閉操作は必ずしも容易ではない。特に、図12に示すように車椅子を利用したユーザにあっては、一層ドア102の開閉操作が困難となり、延いては洗濯物の出し入れ操作も面倒となる不具合を有していた。
【0010】
一方、スライドタイプのドラム式洗濯機では、上記横開きタイプのドラム式洗濯機の上述のような問題は生じない。それは、洗濯物の出し入れをする投入口を開閉するドアが、該投入口に平行に上下スライド移動して開閉するため、当該ドラム式洗濯機の前方にドアの開閉のための大きなスペースを必要としないからである。
【0011】
また、スライドタイプは、横開きタイプのようにドア102の左開き、右開きの両タイプを用意する必要もない。
ところが、このスライドタイプは、ドアを上下スライドするため扁平板状にする必要がある。このため、該ドアの裏面に水槽内に突出する膨出部を設けることができない。従って、洗濯運転中の洗濯物が上記ベローズに当たるのを該膨出部によって防ぐことができず、該ベローズに穴が開く虞がある。しかも、ベローズはドアの開閉の都度、ドア裏面と摺接するため、ベローズが摩耗し易い難点を有する。
【0012】
その他、ドアを本体の上部に位置させる開放手段も考えられる。しかし、例えば、図12に示すように、当該ドラム式洗濯機を壁の凹所に収納する構成(所謂ビルトイン)にあっては、ドアの開放ができずビルトインには適用できない問題も生じた。
【0013】
本発明は、上記問題を解消するため、本体前方への大きなスペースを要することなく扉体を開閉操作することができるドラム式洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明のドラム式洗濯機は、外郭を形成する本体内に、側方に開口するドラム型の水槽を設け、前記水槽の開口側と対応する前記本体の前面に洗濯物を出し入れするための投入口を設け、前記投入口を開閉する扉体を設けるとともに、該扉体を前記投入口に対して接離し且つ上下方向に回動可能に支持する支持手段を設け、前記扉体の裏面側は、前記水槽側から延出された密閉部材と接離可能とするとともに、前記扉体の開放時には、該扉体は前記支持手段により前記投入口より下方位置に移動され、且つ前記本体前面下部に沿って起立した開放状態に保持されることを特徴とする(請求項1の発明)。
【発明の効果】
【0015】
上記手段によれば、扉体の開放は、投入口より下方に移動して本体の前面下部に沿って起立した開放状態に保持される。このため本体の前方に対し大きなスペースを必要としないし、また、扉体を左開き、右開きの両タイプを用意する必要がないため、生産性や製造コストについても有利であるとともに、使い勝手も良好なドラム式洗濯機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る図2中のX−X線に沿って切断して示すドラム式洗濯機の縦断側面図
【図2】扉体閉塞時のドラム式洗濯機の外観斜視図
【図3】扉体開放状態のドラム式洗濯機の外観斜視図
【図4】図2中のW−W線に沿って切断して示すドラム式洗濯機の縦断側面図
【図5】図3中のV−V線に沿って切断して示すドラム式洗濯機の縦断側面図
【図6】図2中のY−Y線に沿って切断し拡大して示す横断平面図
【図7】図3中のZ−Z線に沿って切断し拡大して示す縦断側面図
【図8】ドラム式洗濯機の扉体の開閉動作を説明するためのモデル図
【図9】本発明のドラム式洗濯機(a)と、従来の横開きタイプのドラム式洗濯機(b)とを比較した作用説明図
【図10】本発明の第2の実施形態に係る図8相当図
【図11】従来例を示す横開きタイプのドア左開き用ドラム式洗濯機(a)と、同ドア右開き用ドラム式洗濯機(b)の使用状態を示す図
【図12】従来の異なる使用状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、本発明を乾燥機能付きドラム式洗濯機に適用して示す第1の実施形態について、図1から図8を参照して説明する。
図2は、ドラム式洗濯機の外観斜視図で、当該洗濯機の外郭を形成する矩形箱状の本体1は、当該本体1の正面を形成する前面板1a、同左右を形成する側面板1b、1c(1bは図6参照)、後面板1d(図1参照)、上面の天面板1e、底部を形成する台板1f、および後述する前面下板1g等を組み立て結合して構成されている。
【0018】
前面板1aは、全体に後方へ傾斜するように本体1を構成しているとともに、後述する各構成部材からなる外表面は略面一となるように、整合した形状をなしている。この前面板1aの上部には、洗濯運転コースなどを選択設定するための操作パネル2が配設され、操作パネル2の下位に扉体3を有している。また、前面板1aと台板1fとの間には、前面下板1gが取付け固定されている。前面下板1gは、前面板1aの下辺より寸法N(図4参照)後退した位置に直立状態に設けてあり、つまり本体1の前面全体の下部に凹所を形成した形態となる。
【0019】
図3は、扉体3が全開状態にあるドラム式洗濯機の外観斜視図である。
図3に示すように、上記本体1の内部には、側方に開口し実質的に無孔状で円筒状をなすドラム型の水槽6が配設されている。水槽6の内部には、洗濯物の洗い、脱水、乾燥運転等に用いられるドラム7が配設されている。ドラム7は、周壁に多数の透孔8aを有し横軸周りに回転可能に支持されている。これら水槽6およびドラム7は、ともに側方たる前面側(図3中左側)が大きく開口した有底筒状をなしている。前面板1aの中央部分には、洗濯物を出し入れするための円形の投入口5が設けられている。投入口5は、水槽6およびドラム7の開口と対向配置するように形成されている。水槽6およびドラム7は、これらの回転中心が前方に進むにつれて除々に前上がりの傾斜状に軸支され、水槽6が弾性支持装置9(図4参照)を介して本体1の台板1f上に弾性支持されている。
【0020】
図4は、図2中のW−W線に沿って切断した縦断側面図であり、扉体3が、前面板1aに形成された投入口5を閉塞した最上位置の状態にあることを示している。
この図4を主に参照して、ドラム式洗濯機の内部構造について説明する。ドラム7の内側胴部には洗濯物をかき上げるための複数のバッフル12を備えていて、このバッフル12は、ドラム7の回転駆動に伴い洗いや乾燥運転時等に洗濯物を攪拌する。また、ドラム7の底部である背面側には、後述する循環路20に接続された給気口22から供給される循環空気の入口8bが形成されている。
【0021】
このドラム7は、水槽6の背面に設けられたモータ13により、所謂ダイレクトドライブにより回転駆動される。このモータ13は、例えばアウターロータ形のDCブラシレスモータからなり、そのロータ13aに連結された回転軸14は、水槽6を貫通してドラム7に直結されている。また、水槽6の後方最下部には排水口15が形成されている。排水口15には途中に排水弁16を介した排水管17が連通接続され、所定の排水場所(図示せず)に排水する排水手段を構成している。
【0022】
一方、水槽6には互いに離間した位置に空気の給排気口が設けられ、この給排気口に連通接続され、水槽6内の空気を循環可能にする循環路20を備えている。例えば、本実施形態における排気口21は水槽6の前面側の上方部分に形成され、上記給気口22は水槽6の背面側の上方部分に形成されている。循環路20は、その一端を排気口21に連通接続され、水槽6の下方を迂回して、その他端は給気口22に連通接続されている。
【0023】
この循環路20は、具体的には、水槽6、該水槽6の排気口21に一端を接続された蛇腹状の伸縮継手23、伸縮継手23の他端に接続された排気ダクト25、排気ダクト25の他端に接続された中間ダクト27と、他方水槽6の給気口22に接続された給気ダクト24、給気ダクト24の他端に接続された蛇腹状の伸縮継手26と、上記中間ダクト27と伸縮継手26との間に接続された熱交換ダクト28とを備えた構成としている。
【0024】
上記の循環路20中の熱交換ダクト28の内部には、蒸発器31および凝縮器32が循環路20を流れる後述する循環空気の上流側から順に配置されている。これら蒸発器31および凝縮器32は、いずれも詳しくは図示しないが、冷媒流通パイプに伝熱フィンが短い間隔で多数貫通されてなるもので、これを熱交換ダクト28内に配置し、循環空気がこれらの伝熱フィンの隙間を流れることで熱交換が行われるようにしている。
【0025】
また、蒸発器31および凝縮器32は、図示しない圧縮機および膨張弁(例えば、電子式の絞り弁若しくはキャピラリーチューブでも可)とともに、ヒートポンプを構成するものである。このヒートポンプは、冷媒流通パイプによって、圧縮機、凝縮器32、膨張弁、蒸発器31および圧縮機の順に接続されている(冷凍サイクル)。この冷凍サイクルは、該圧縮機が動作することによって冷媒が該冷媒流通パイプ内を循環し、循環路20内の洗濯物乾燥用の空気を温風化する加熱手段として機能する。
【0026】
そして、循環路20を構成する給気ダクト24の下端部で熱交換ダクト28の後端部に、循環ファン37が配設されている。循環ファン37は、給気ダクト24から水槽6の方向に流れる循環空気を生成し、以って循環路20内の空気を図4中に示す実線矢印方向に循環させるもので、水槽6内に空気を循環供給する。
【0027】
また、排気ダクト25と中間ダクト27との間にフィルタ装置38が備えられている。フィルタ装置38は、循環路20内を循環するうちの排気側の空気中から糸屑などのリントを捕獲するために着脱可能に設けられたフィルタ部材39と、該フィルタ部材39の一端を本体1の天板面1eの外部まで延出して一体的に形成されたフィルタパネル40とから構成されている。このフィルタパネル40は、天面板1eの表面と略面一にあって、これに手を掛けて容易に引き出せる構成をなしている。
【0028】
次に、主に図1、5、6を参照して扉体3の回動機構の構造について詳細に説明する。図1は、図2中のX−X線に沿って切断した縦断側面図であり、図5は図3中のV−V線に沿って切断して示す縦断側面図である。そのうち、図1は、扉体3が、前面板1aに形成された投入口5を閉塞し、前面板1aの傾斜角度に合わせた傾斜角度を維持しつつ最上位置にあることを示しており、一方図5は、該投入口5を開放した、扉体3が、略鉛直に起立し最下位置にある開放状態を示している。図6は、図2中のY−Y線に沿って切断した横断平面図であり、特に扉体3周辺部分を拡大して示している。なお、扉体3の回動機構の構造は左右対称であり、図1、5には本体1を正面から見た右側の扉体3の回動機構のみ図示し、以下、右側の扉体3の回動機構のみ詳述することとし、左側の扉体3の回動機構は、右側の扉体3の回動機構と左右対称である以外は同一構造でるため、その詳細な説明は省略する。
【0029】
扉体3は、例えば矩形状をなすとともに、前面板1aの投入口5に対応する位置に透明部3aを形成し、さらに扉体3の裏面側には円形で深皿容器状の膨出部3bを一体的に形成している。膨出部3bは、上記透明部3aと併せてドラム7内部を透視できるように、洗剤などに対して耐薬品性に優れた透明樹脂、あるいはガラスで形成されている。膨出部3bは、前面板1aの投入口5の形状に合わせた径寸法をなし、そして水槽6側に例えば約70〜100mm程度突出するように形成されている。
扉体3裏面の左右両側には、後述する支持手段41(図3参照)が夫々設けられており、扉体3は、支持手段41により前面板1aに形成された投入口5に対し、前方から接離可能に設けられている。
【0030】
水槽6内に供給貯留された洗濯水や飛散した水飛沫などが水槽6外に漏れないように、該水槽6の前面開口部と投入口5間に亘り水封する屈曲自在なベローズ11が設けられていて、扉体3が閉塞状態にあるとき、扉体3の裏面たる膨出部3bにベローズ11が密着して、投入口5から本体1外への水の漏洩も防止している。また、膨出部3bは投入口5より内方に入り込んでいる。これにより、例えば乾燥運転中などに洗濯物が膨出部3bでベローズ11内に進入するのを阻止されてベローズ11に当たったり、擦れたりすることを防止することができ(図4、6参照)、ベローズ11が洗濯物との摩耗によって穴が開く虞はない。
【0031】
ここで、扉体3の支持手段41について具体的に説明する。支持手段41は、本実施形態では後述するように、主に連結アーム42、回動アーム44、45、支持板47、揺動板49、および引っ張りバネ50、51を備える。
まず、扉体3の裏面上部の左右両側には、夫々逆L字状の連結アーム42の一端が取り付けられている。この連結アーム42の他端は、前面板1aの投入口5の両側に形成されたスリット開口部43(図3参照)に貫通させて本体1内に収納されている。
【0032】
本体1内において、扉体3裏面の左右上部に夫々取り付けられた連結アーム42の他端には、夫々上下に2本の回動アーム44、45の一端が上下に並んで回動可能にピン46、46により枢支連結されている。連結アーム42と回動アーム44との枢支連結点を回動可能な可動支点Aとし、連結アーム42と回動アーム45との枢支連結点を回動可能な可動支点Bとする。
【0033】
図1、4に示す支持板47は、本体1の左右の側面板1b(図6参照)、1c(図2参照)に夫々内側から取り付けられている。
回動アーム44は、略中間部から斜め上方に屈曲された延設部44aを一体に有しており、該屈曲部にてピン48により支持板47に回動自在に枢支連結されている。他方回動アーム45の他端は、ピン48により支持板47に回動自在に枢支連結されている。回動アーム44と支持板47との枢支連結点を回動可能な固定支点Cとし、回動アーム45と支持板47との枢支連結点を同じく固定支点Dとする。
【0034】
回動アーム44は、その下端部にピン53を備えている。ピン53には、一端を支持板47の下辺前部に固定された引っ張りバネ50の他端が連結されている。ピン53は連結された引っ張りバネ50により常に下方に付勢されており、回動アーム44は固定支点Cを回動中心として常に時計回り方向に付勢されている。このため、回動アーム44は固定支点Cを中心に常に連結アーム42および扉体3を前面板1a側に接合する方向に付勢している。引っ張りバネ50の付勢力は、扉体3の重量と略均衡を保つように作用しており、扉体3は軽い操作力で開閉操作できるようにしている。
【0035】
揺動板49は、その下端部において支持板47にピン52により回動自在に枢支連結されている。揺動板49は、一端が支持板47の後方の略中央部に連結されている引っ張りバネ51により、ピン52を回動中心にして常に時計回りの方向に引っ張られるように付勢されている。揺動板49は、その長手方向に形成されるスリット穴54を備えるとともに、スリット穴54に沿ってピン53が摺動自在に嵌合されている。扉体3が閉塞状態の最上位置にあるとき、ピン53はスリット穴54の最下端に位置し(図1参照)、扉体3が開放状態の最下位置にあるとき、ピン53はスリット穴54の最上端に位置する(図5参照)。扉体3が、最上位置から最下位置に移動するとき、扉体3の急激な動きを抑制するために、引っ張りバネ51は揺動板49を常に時計回りの方向に引っ張るように付勢している。
【0036】
図6に示すように、脱水運転時等の振動により水槽6が揺れた場合、水槽6が、回動アーム44、45、揺動板49、引っ張りバネ50、51に衝突しないように、これらは本体1の側面板1cと支持板47との間に配置されている。
なお、引っ張りバネ50、51は、これに限ることはなく、引っ張りバネに代えてねじりコイルバネを用いてもよい
【0037】
図7は、図3中のZ−Z線に沿って切断し拡大して示す扉体3の手掛け部55、57の縦断側面図である。図7に示すように、扉体3の前面には手掛け部55を設けるとともに、上端部に凹状の手掛け部57を設けており、手掛け部55は、手掛けカバー56をねじりコイルバネ等の弾性体(図示せず)で付勢することにより、通常は扉体3の表面と手掛けカバー56の表面とが面一になるようにしている。更に、前面板1aの投入口5の下方に周知のドアロック手段58(図3参照)を設け、扉体3の裏面下部には、閉塞時に該ドアロック手段58と係合するラッチ59(図5参照)を設けている。このドアロック手段58のロック解除ボタン60を操作パネル2の右横に設けている(図3参照)。
【0038】
次に、本実施形態に係るドラム式洗濯機の、動作、作用について説明する。
まず、扉体3を開放させるときは、操作パネル2右横のドアロック解除ボタン60を押して、ドアロック手段58による係合を解除させた後、前面板1aより若干前方に突出状態にある扉体3上端部の凹状の手掛け部57に指を掛けて下方へ押し下げるようにする。このとき、図1に示すピン48、48を回動支点にして回動アーム44、45が反時計方向である下方に回動し、これに連結された連結アーム42および扉体3が下方に円弧を描くように回動する。この回動によって、前面板1aの傾斜角度に対応した傾斜状態の扉体3は、膨出部3bが前面板1aの表面に接触しないように投入口5からやや前方に離れて下方に移動し、扉体3が略鉛直の状態で前面下板1gの前面に接近し、膨出部3bは前面下板1gの表面でもある凹所に位置する。扉体3は、引っ張りバネ50、揺動板49、引っ張りバネ51により、開き方向のスピードを抑制されるとともに、緩やかに開放動作される。
【0039】
また、図5に示す扉体3の開放状態から閉塞するときは、扉体3前面に設けた手掛けカバー56を手で押して手掛け部55に指を掛けて上方に持ち上げる。このとき、ピン48、48を回動中心にして回動アーム44、45が時計方向である上方に回動し、これに連結された連結アーム42および扉体3が上方に円弧を描くように回動する、この回動の際、膨出部3bが前面板1aの表面に接触しないように上方に移動して投入口5に入り込み、扉体3の裏面たる膨出部3bがベローズ11に密着するとともに、ドアロック手段58にラッチ59が係合してロックされ、扉体3が完全に閉塞される。このドアロック手段58と上部左右の連結アーム42の3点支持によって、扉体3は、均一且つ確実に閉塞保持され、水槽6からの水漏れを防止することができる。
【0040】
扉体3が開閉動作するときの回動する際、扉体3(膨出部3b)が本体1の前面板1aに接触しないでスムーズに回動するには、以下に示す条件が必要となる。
図8は、扉体3の開閉動作を説明するためのモデル図で、扉体3の開閉状態を示す最上位置および最下位置にある状態を示している。扉体3は、閉塞状態の最上位置にあるときは傾斜状態にあり、開放状態の最下位置にあるときは略直立の起立状態にある。なお、図8では、扉体3の最上位置にあるときの可動支点A、Bを、以下点A1、点B1として説明し、扉体3の最下位置にあるときの可動支点A、Bを、以下点A2、点B2として説明する。
【0041】
点A1と点A2とを結ぶ円弧の中心を固定支点Cとし、この円弧の半径を半径Ra1とする。点B1と点B2とを結ぶ円弧の中心を固定支点Dとし、この円弧の半径を半径Rb1とする。このような前提のもと、半径Ra1は半径Rb1より大きいか若しくは等しいことが必要である(Ra1≧Rb1)。
【0042】
扉体3が開閉(回動)動作する際、扉体3(膨出部3b)が本体1の前面板1aに接触しないためには、点B1と点B2とを結ぶ円弧の高さFは、点A1と点A2とを結ぶ円弧の高さEより大きいか若しくは等しくなることが必要だからである(F≧E)。
このため、回動アーム44の可動支点Aと固定支点Cとの距離が、回動アーム45の可動支点Bと固定支点Dとの距離以上になることが必要であり、この条件のもと固定支点Cと固定支点Dを支持板47上にて位置決めすることが必要である。
【0043】
以上のことから、本実施形態に係るドラム式洗濯機は、以下の効果が得られる。
扉体3は、投入口5の開放動作をする際、下方向に回動する。そして、投入口5の開放時には、扉体3は、膨出部3bを本体1(前面板1a)の下部に設けられた前面下板1gの表面である寸法N(図4参照)後退した凹所に収納され、本体1の前面下部に沿って起立した状態に保持される。図9(a)は、本実施形態に係るドラム式洗濯機の奥行き設置サイズを示し、同図(b)は、ドア108が従来の横開きタイプのドラム式洗濯機の奥行き設置サイズを示している。図9に比較して示すように、本実施形態では、横開きタイプのドラム式洗濯機に比較して、奥行き設置寸法H(=奥行き設置寸法G(従来の横開きタイプ)−奥行き設置寸法F(本実施形態))の減少が可能となる(H=G−F)。
【0044】
従って、本体1の前方に扉体3の開閉動作を許容するための大きなスペースを必要としない。このため、ユーザが本体1前面に位置して扉体3の開閉操作をする際、扉体3が邪魔になることはなく、扉体3の開閉操作を容易に行うことができ、さらには、投入口5の近い位置で洗濯物の出し入れ操作も容易にすることができて使い勝手が良い。
特に、図12において開示したようにユーザが車椅子を使用されている場合であっても、上記同様に、扉体3が邪魔になることなく扉体3の開閉操作ができ、さらには、洗濯物の出し入れをすることができる。
【0045】
また、本実施形態に係るドラム式洗濯機は、開放動作時の扉体3は下方向に回動動作し、閉塞動作時の扉体3は上方に回動動作する。従って、本体1両側のいずれに室壁が隣接していても、扉体2の開放時に投入口5の前方のスペースは幅狭になることはない。以って、従来の横開きタイプのドラム式洗濯機と比較して、左開き用と右開き用との両横開きタイプを用意する必要はなく、生産性や製造コストについて有利である。
【0046】
扉体3の閉塞時には、扉体3の膨出部3bはベローズ11内に収納され水槽6側に突出した状態に配置されるため、洗濯や乾燥運転中などに洗濯物のベローズ11内への侵入は膨出部3bで抑えられ、該ベローズ11が摩耗により穴が開いたりする虞がない。
【0047】
扉体3の支持手段41は、本体1を構成する両側面たる側面板1b、1cの内側に配置されていることで、扉体3の閉塞状態では、扉体3の支持手段41を構成する連結アーム42等は外部に露出しない。このため、良好な外観が得られ、且つ手指が直接触れるおそれもない。
支持手段41は、夫々本体1側に回動可能に支持された2本の回動アーム44、45から構成されている。このような回動動作する支持手段41は、従来例として述べた、スライドタイプのドラム式洗濯機のスライド移動される扉体と違って、摩擦抵抗が少なく、扉体3をスムーズに開閉できる。
【0048】
回動アーム44、45は、扉体3の左右両側に一体的に設けられた連結アーム42、42を介して、扉体3を回動支持している。扉体3が開閉動作する際、回動アーム44、45と連結アーム42、42との枢支連結部は、本体1外部に出ることはない。このため、ユーザが、この枢支連結部に触って怪我等をするといった虞はなく、また、この枢支連結部に外力が加わり、この枢支連結部が破損等するといった虞もない。
【0049】
本体1の内側面である前面板1aに連結アーム42の軌跡に対応する上下に延びたスリット開口部43を設けた。このため、前面板1aに設けた上下に延びたスリット開口部43、連結アーム42は、通常扉体3が閉塞状態のとき、これらスリット開口部43、連結アーム42は外側に露出しないため、本体1は良好な外観を得ることができる。
【0050】
本体1の内側面である側面板1b、1cに回動アーム44、45を支持する支持板47を固定して設け、該支持板47と側面板1b、1cとの間に回動アーム44、45を配した。このため、脱水運転時に水槽6が振動した場合でも、支持板47により、回動アーム44、45、揺動板49等の可動部に水槽6が直接当たることはないので、これら可動部を水槽6の衝突から保護することができる。
【0051】
回動アーム44、45には、扉体3を常時上方に付勢する弾性体として引っ張りバネ50を設けた。このため、引っ張りバネ50により、常時、扉体3を上方向に引っ張るように付勢し、扉体3の重量と引っ張りバネ50の付勢力との均衡により、扉体3を軽く開閉でき、操作性が向上する。また、扉体3開放時に下方に降下する際の急な動きや衝撃を引っ張りバネ50の付勢力により低減でき、本体1にかかる応力を小さくすることができる。このため、本体1の耐久性向上や本体1の小型化などに寄与する。更に、扉体3は閉塞位置近傍では略引っ張りバネ50の付勢力のみで閉塞し、逆に開放位置近傍では扉体3は扉体3の略重力のみで開放するので、より快適な操作性が得られ使い勝手が良い。
【0052】
扉体3の上部両側に回動アーム44、45と連結される連結アーム42を備えるとともに、投入口5を閉塞する位置における扉体3を係止するドアロック手段58を投入口5の下側に設けた。このため、扉体3を閉塞したとき、扉体3は上部両側の支持手段41と、下部のドアロック手段58の3点(三角形が描かれる)で支持されているため、投入口5に対する扉体3の密閉が堅固で確実に行われて、信頼性の高い水漏れ防止構造が得られる。
【0053】
(第2の実施形態)
図10は、本発明の第2の実施形態に係る図8相当図である。上記第1の実施形態と実質的に同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる点について詳細に述べる。この第2の実施形態では、扉体3が閉塞状態にある最上位置にあるとき、略直立状態にある点が、上記第1の実施形態と異なる。
【0054】
本実施形態においては、図10からも明らかなように扉体3が閉塞した最上位置にあるとき略直立状態にあるが、開放状態の最下位置にあるときも略直立状態となる。連結アーム42と回動アーム44との枢支連結点を回動可能な可動支点Aとし、連結アーム42と回動アーム45との枢支連結点を回動可能な可動支点Bとする。回動アーム44と支持板47との枢支連結点を回動可能な固定支点Cとし、回動アーム45と支持板47との枢支連結点を同じく固定支点Dとする。
ただ具体的には、扉体3の最上位置にあるときの可動支点A、Bを、以下点A3、点B3とし、扉体3の最下位置にあるときの可動支点A、Bを、以下点A4、点B4として説明する。
【0055】
点A3と点A4とを結ぶ円弧の中心を固定支点Cとし、この円弧の半径を半径Ra2とする。点B3と点B4とを結ぶ円弧の中心を固定支点Dとし、この円弧の半径を半径Rb2とする。この条件のもと、半径Ra2は半径Rb2より大きいか若しくは等しいことが必要である(Ra2≧RB2)。
【0056】
扉体3が開閉(回動)動作する際、扉体3(膨出部3b)が本体1の前面板1aに接触しないためには、点B3と点B4とを結ぶ円弧の高さKは、点A3と点A4とを結ぶ円弧の高さJより大きいか若しくは等しくなることが必要であるからである(K≧J)。
このため、回動アーム44の可動支点Aと固定支点Cとの距離が、回動アーム45の可動支点Bと固定支点Dとの距離以上になることが必要であり、この条件のもと固定支点Cと固定支点Dを支持板47上にて位置決めすることが必要である。
【0057】
尚、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、例えば、乾燥機能を有さないドラム式洗濯機にも適用できることはもとより、扉体は、矩形状のものに限定されるものではなく、円形または半円形状であっても適用可能であり、また扉体の形状に応じた凹所を形成すればよいなど、本願発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0058】
図面中、1は本体、1aは前面板(前面)、1bは側面板(側面)、1cは側面板(側面)、1gは前面下板(凹所)、3は扉体、3bは膨出部、5は投入口、6は水槽、7はドラム、11はベローズ(密閉部材)、41は支持手段、42は連結アーム、43はスリット開口部、44は回動アーム、45は回動アーム、47は支持板、49は揺動板、50は引っ張りバネ(弾性体)、および58はドアロック手段を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯物を出し入れするための投入口を本体前面に備えたドラム式洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来側方に開口するドラム型の水槽を備えたドラム式洗濯機は、製品本体の前面に洗濯物を出し入れするための投入口が設けられ、この投入口には、該投入口を開閉するドア(扉体)が設けられている。このドアの開き方式としては、例えば、ドアが前方に大きく開放動作する横開きタイプ(例えば、特許文献1参照)と、ドアが上下に平行移動するスライドタイプ(例えば、特許文献2参照)などがある。
【0003】
図11、12は、上記横開きタイプの従来例を示したものである。図11、12に示すように、本体100の前面に設けた前面板の中央部に、洗濯物を出し入れするための円形の投入口101を開口させている。この投入口101の前面には、この投入口101を開閉可能に閉塞するドア102を配置している。ドア102は円形状に形成されているとともに、ドア102は、その左右のどちらか一方側をヒンジ部材103で横方向に回動自在に支持され、投入口101を開閉自在に本体100に取り付けられている。
【0004】
図11(a)は、横開きタイプのドラム式洗濯機の本体100を、その左側に位置する左側壁104に隣接するように設置した状態を示している。このような設置条件の場合は、左側にヒンジ部材103を設け、左側に開放する左開きタイプのドア102構成のドラム式洗濯機が選択される。なぜならば、この設置条件で右側にヒンジ部材103を設け右側に開放する右開きタイプのドア102構成である場合、投入口101の前方のスペースは、左側壁104と開放したドア102とに挟まれた幅狭なスペースとなり、洗濯物の出し入れ操作が困難になるからである。
【0005】
これに対し図11(b)は、本体100の右側に右側壁105が隣接する設置条件の場合を示している。この設置条件では、右開きタイプのドア102を有するドラム式洗濯機が選択される。なぜならば、左開きタイプのドア102構成では、投入口101の前方のスペースが右側壁105と開放したドア102とに挟まれた幅狭なスペースとなり、結果的に上記図11(a)の場合と同様に、洗濯物の出し入れ操作が困難になるからである。
【0006】
一方、ドアをスライドタイプとするドラム式洗濯機は、図示しないが本体の前面板に、投入口を形成している。そして、このドアは、該投入口に対して平行に上下スライド移動し、該投入口を開閉させる構成としている。該ドアは、両側でガイドレールに支持されるとともに、洗濯水や飛散した水飛沫などが水槽外に漏れないように、水槽側に支持されたベローズを設け、該ベローズの先端は、スライドするドア裏面に摺接可能に密着する構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−244469号公報
【特許文献2】特開2006−230496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ドアが横開きタイプでは、図11(a)、(b)に示したように、ドア102の右開き用と左開き用とのドラム式洗濯機を用意する必要があり、従って、生産性や製造コストについて不利であった。また、ユーザも当該ドラム式洗濯機の設置環境に応じて右開き用および左開き用のいずれかの当該ドラム式洗濯機を選択し購入せねばならず、依然として設置条件に制約を受けるなどの不具合があった。
【0009】
しかも横開きタイプの構成では、ドア102は、ドア102の左右側部に設けられたヒンジ部材103を中心に前方に向かって回動するため、該本体100の前方には比較的大きなスペースが必要であった。従って、ユーザが本体100前面に位置してドア102の開閉をする時には、ユーザがドア102開放の邪魔になるなど、ドア102の開閉操作は必ずしも容易ではない。特に、図12に示すように車椅子を利用したユーザにあっては、一層ドア102の開閉操作が困難となり、延いては洗濯物の出し入れ操作も面倒となる不具合を有していた。
【0010】
一方、スライドタイプのドラム式洗濯機では、上記横開きタイプのドラム式洗濯機の上述のような問題は生じない。それは、洗濯物の出し入れをする投入口を開閉するドアが、該投入口に平行に上下スライド移動して開閉するため、当該ドラム式洗濯機の前方にドアの開閉のための大きなスペースを必要としないからである。
【0011】
また、スライドタイプは、横開きタイプのようにドア102の左開き、右開きの両タイプを用意する必要もない。
ところが、このスライドタイプは、ドアを上下スライドするため扁平板状にする必要がある。このため、該ドアの裏面に水槽内に突出する膨出部を設けることができない。従って、洗濯運転中の洗濯物が上記ベローズに当たるのを該膨出部によって防ぐことができず、該ベローズに穴が開く虞がある。しかも、ベローズはドアの開閉の都度、ドア裏面と摺接するため、ベローズが摩耗し易い難点を有する。
【0012】
その他、ドアを本体の上部に位置させる開放手段も考えられる。しかし、例えば、図12に示すように、当該ドラム式洗濯機を壁の凹所に収納する構成(所謂ビルトイン)にあっては、ドアの開放ができずビルトインには適用できない問題も生じた。
【0013】
本発明は、上記問題を解消するため、本体前方への大きなスペースを要することなく扉体を開閉操作することができるドラム式洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明のドラム式洗濯機は、外郭を形成する本体内に、側方に開口するドラム型の水槽を設け、前記水槽の開口側と対応する前記本体の前面に洗濯物を出し入れするための投入口を設け、前記投入口を開閉する扉体を設けるとともに、該扉体を前記投入口に対して接離し且つ上下方向に回動可能に支持する支持手段を設け、前記扉体の裏面側は、前記水槽側から延出された密閉部材と接離可能とするとともに、前記扉体の開放時には、該扉体は前記支持手段により前記投入口より下方位置に移動され、且つ前記本体前面下部に沿って起立した開放状態に保持されることを特徴とする(請求項1の発明)。
【発明の効果】
【0015】
上記手段によれば、扉体の開放は、投入口より下方に移動して本体の前面下部に沿って起立した開放状態に保持される。このため本体の前方に対し大きなスペースを必要としないし、また、扉体を左開き、右開きの両タイプを用意する必要がないため、生産性や製造コストについても有利であるとともに、使い勝手も良好なドラム式洗濯機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る図2中のX−X線に沿って切断して示すドラム式洗濯機の縦断側面図
【図2】扉体閉塞時のドラム式洗濯機の外観斜視図
【図3】扉体開放状態のドラム式洗濯機の外観斜視図
【図4】図2中のW−W線に沿って切断して示すドラム式洗濯機の縦断側面図
【図5】図3中のV−V線に沿って切断して示すドラム式洗濯機の縦断側面図
【図6】図2中のY−Y線に沿って切断し拡大して示す横断平面図
【図7】図3中のZ−Z線に沿って切断し拡大して示す縦断側面図
【図8】ドラム式洗濯機の扉体の開閉動作を説明するためのモデル図
【図9】本発明のドラム式洗濯機(a)と、従来の横開きタイプのドラム式洗濯機(b)とを比較した作用説明図
【図10】本発明の第2の実施形態に係る図8相当図
【図11】従来例を示す横開きタイプのドア左開き用ドラム式洗濯機(a)と、同ドア右開き用ドラム式洗濯機(b)の使用状態を示す図
【図12】従来の異なる使用状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、本発明を乾燥機能付きドラム式洗濯機に適用して示す第1の実施形態について、図1から図8を参照して説明する。
図2は、ドラム式洗濯機の外観斜視図で、当該洗濯機の外郭を形成する矩形箱状の本体1は、当該本体1の正面を形成する前面板1a、同左右を形成する側面板1b、1c(1bは図6参照)、後面板1d(図1参照)、上面の天面板1e、底部を形成する台板1f、および後述する前面下板1g等を組み立て結合して構成されている。
【0018】
前面板1aは、全体に後方へ傾斜するように本体1を構成しているとともに、後述する各構成部材からなる外表面は略面一となるように、整合した形状をなしている。この前面板1aの上部には、洗濯運転コースなどを選択設定するための操作パネル2が配設され、操作パネル2の下位に扉体3を有している。また、前面板1aと台板1fとの間には、前面下板1gが取付け固定されている。前面下板1gは、前面板1aの下辺より寸法N(図4参照)後退した位置に直立状態に設けてあり、つまり本体1の前面全体の下部に凹所を形成した形態となる。
【0019】
図3は、扉体3が全開状態にあるドラム式洗濯機の外観斜視図である。
図3に示すように、上記本体1の内部には、側方に開口し実質的に無孔状で円筒状をなすドラム型の水槽6が配設されている。水槽6の内部には、洗濯物の洗い、脱水、乾燥運転等に用いられるドラム7が配設されている。ドラム7は、周壁に多数の透孔8aを有し横軸周りに回転可能に支持されている。これら水槽6およびドラム7は、ともに側方たる前面側(図3中左側)が大きく開口した有底筒状をなしている。前面板1aの中央部分には、洗濯物を出し入れするための円形の投入口5が設けられている。投入口5は、水槽6およびドラム7の開口と対向配置するように形成されている。水槽6およびドラム7は、これらの回転中心が前方に進むにつれて除々に前上がりの傾斜状に軸支され、水槽6が弾性支持装置9(図4参照)を介して本体1の台板1f上に弾性支持されている。
【0020】
図4は、図2中のW−W線に沿って切断した縦断側面図であり、扉体3が、前面板1aに形成された投入口5を閉塞した最上位置の状態にあることを示している。
この図4を主に参照して、ドラム式洗濯機の内部構造について説明する。ドラム7の内側胴部には洗濯物をかき上げるための複数のバッフル12を備えていて、このバッフル12は、ドラム7の回転駆動に伴い洗いや乾燥運転時等に洗濯物を攪拌する。また、ドラム7の底部である背面側には、後述する循環路20に接続された給気口22から供給される循環空気の入口8bが形成されている。
【0021】
このドラム7は、水槽6の背面に設けられたモータ13により、所謂ダイレクトドライブにより回転駆動される。このモータ13は、例えばアウターロータ形のDCブラシレスモータからなり、そのロータ13aに連結された回転軸14は、水槽6を貫通してドラム7に直結されている。また、水槽6の後方最下部には排水口15が形成されている。排水口15には途中に排水弁16を介した排水管17が連通接続され、所定の排水場所(図示せず)に排水する排水手段を構成している。
【0022】
一方、水槽6には互いに離間した位置に空気の給排気口が設けられ、この給排気口に連通接続され、水槽6内の空気を循環可能にする循環路20を備えている。例えば、本実施形態における排気口21は水槽6の前面側の上方部分に形成され、上記給気口22は水槽6の背面側の上方部分に形成されている。循環路20は、その一端を排気口21に連通接続され、水槽6の下方を迂回して、その他端は給気口22に連通接続されている。
【0023】
この循環路20は、具体的には、水槽6、該水槽6の排気口21に一端を接続された蛇腹状の伸縮継手23、伸縮継手23の他端に接続された排気ダクト25、排気ダクト25の他端に接続された中間ダクト27と、他方水槽6の給気口22に接続された給気ダクト24、給気ダクト24の他端に接続された蛇腹状の伸縮継手26と、上記中間ダクト27と伸縮継手26との間に接続された熱交換ダクト28とを備えた構成としている。
【0024】
上記の循環路20中の熱交換ダクト28の内部には、蒸発器31および凝縮器32が循環路20を流れる後述する循環空気の上流側から順に配置されている。これら蒸発器31および凝縮器32は、いずれも詳しくは図示しないが、冷媒流通パイプに伝熱フィンが短い間隔で多数貫通されてなるもので、これを熱交換ダクト28内に配置し、循環空気がこれらの伝熱フィンの隙間を流れることで熱交換が行われるようにしている。
【0025】
また、蒸発器31および凝縮器32は、図示しない圧縮機および膨張弁(例えば、電子式の絞り弁若しくはキャピラリーチューブでも可)とともに、ヒートポンプを構成するものである。このヒートポンプは、冷媒流通パイプによって、圧縮機、凝縮器32、膨張弁、蒸発器31および圧縮機の順に接続されている(冷凍サイクル)。この冷凍サイクルは、該圧縮機が動作することによって冷媒が該冷媒流通パイプ内を循環し、循環路20内の洗濯物乾燥用の空気を温風化する加熱手段として機能する。
【0026】
そして、循環路20を構成する給気ダクト24の下端部で熱交換ダクト28の後端部に、循環ファン37が配設されている。循環ファン37は、給気ダクト24から水槽6の方向に流れる循環空気を生成し、以って循環路20内の空気を図4中に示す実線矢印方向に循環させるもので、水槽6内に空気を循環供給する。
【0027】
また、排気ダクト25と中間ダクト27との間にフィルタ装置38が備えられている。フィルタ装置38は、循環路20内を循環するうちの排気側の空気中から糸屑などのリントを捕獲するために着脱可能に設けられたフィルタ部材39と、該フィルタ部材39の一端を本体1の天板面1eの外部まで延出して一体的に形成されたフィルタパネル40とから構成されている。このフィルタパネル40は、天面板1eの表面と略面一にあって、これに手を掛けて容易に引き出せる構成をなしている。
【0028】
次に、主に図1、5、6を参照して扉体3の回動機構の構造について詳細に説明する。図1は、図2中のX−X線に沿って切断した縦断側面図であり、図5は図3中のV−V線に沿って切断して示す縦断側面図である。そのうち、図1は、扉体3が、前面板1aに形成された投入口5を閉塞し、前面板1aの傾斜角度に合わせた傾斜角度を維持しつつ最上位置にあることを示しており、一方図5は、該投入口5を開放した、扉体3が、略鉛直に起立し最下位置にある開放状態を示している。図6は、図2中のY−Y線に沿って切断した横断平面図であり、特に扉体3周辺部分を拡大して示している。なお、扉体3の回動機構の構造は左右対称であり、図1、5には本体1を正面から見た右側の扉体3の回動機構のみ図示し、以下、右側の扉体3の回動機構のみ詳述することとし、左側の扉体3の回動機構は、右側の扉体3の回動機構と左右対称である以外は同一構造でるため、その詳細な説明は省略する。
【0029】
扉体3は、例えば矩形状をなすとともに、前面板1aの投入口5に対応する位置に透明部3aを形成し、さらに扉体3の裏面側には円形で深皿容器状の膨出部3bを一体的に形成している。膨出部3bは、上記透明部3aと併せてドラム7内部を透視できるように、洗剤などに対して耐薬品性に優れた透明樹脂、あるいはガラスで形成されている。膨出部3bは、前面板1aの投入口5の形状に合わせた径寸法をなし、そして水槽6側に例えば約70〜100mm程度突出するように形成されている。
扉体3裏面の左右両側には、後述する支持手段41(図3参照)が夫々設けられており、扉体3は、支持手段41により前面板1aに形成された投入口5に対し、前方から接離可能に設けられている。
【0030】
水槽6内に供給貯留された洗濯水や飛散した水飛沫などが水槽6外に漏れないように、該水槽6の前面開口部と投入口5間に亘り水封する屈曲自在なベローズ11が設けられていて、扉体3が閉塞状態にあるとき、扉体3の裏面たる膨出部3bにベローズ11が密着して、投入口5から本体1外への水の漏洩も防止している。また、膨出部3bは投入口5より内方に入り込んでいる。これにより、例えば乾燥運転中などに洗濯物が膨出部3bでベローズ11内に進入するのを阻止されてベローズ11に当たったり、擦れたりすることを防止することができ(図4、6参照)、ベローズ11が洗濯物との摩耗によって穴が開く虞はない。
【0031】
ここで、扉体3の支持手段41について具体的に説明する。支持手段41は、本実施形態では後述するように、主に連結アーム42、回動アーム44、45、支持板47、揺動板49、および引っ張りバネ50、51を備える。
まず、扉体3の裏面上部の左右両側には、夫々逆L字状の連結アーム42の一端が取り付けられている。この連結アーム42の他端は、前面板1aの投入口5の両側に形成されたスリット開口部43(図3参照)に貫通させて本体1内に収納されている。
【0032】
本体1内において、扉体3裏面の左右上部に夫々取り付けられた連結アーム42の他端には、夫々上下に2本の回動アーム44、45の一端が上下に並んで回動可能にピン46、46により枢支連結されている。連結アーム42と回動アーム44との枢支連結点を回動可能な可動支点Aとし、連結アーム42と回動アーム45との枢支連結点を回動可能な可動支点Bとする。
【0033】
図1、4に示す支持板47は、本体1の左右の側面板1b(図6参照)、1c(図2参照)に夫々内側から取り付けられている。
回動アーム44は、略中間部から斜め上方に屈曲された延設部44aを一体に有しており、該屈曲部にてピン48により支持板47に回動自在に枢支連結されている。他方回動アーム45の他端は、ピン48により支持板47に回動自在に枢支連結されている。回動アーム44と支持板47との枢支連結点を回動可能な固定支点Cとし、回動アーム45と支持板47との枢支連結点を同じく固定支点Dとする。
【0034】
回動アーム44は、その下端部にピン53を備えている。ピン53には、一端を支持板47の下辺前部に固定された引っ張りバネ50の他端が連結されている。ピン53は連結された引っ張りバネ50により常に下方に付勢されており、回動アーム44は固定支点Cを回動中心として常に時計回り方向に付勢されている。このため、回動アーム44は固定支点Cを中心に常に連結アーム42および扉体3を前面板1a側に接合する方向に付勢している。引っ張りバネ50の付勢力は、扉体3の重量と略均衡を保つように作用しており、扉体3は軽い操作力で開閉操作できるようにしている。
【0035】
揺動板49は、その下端部において支持板47にピン52により回動自在に枢支連結されている。揺動板49は、一端が支持板47の後方の略中央部に連結されている引っ張りバネ51により、ピン52を回動中心にして常に時計回りの方向に引っ張られるように付勢されている。揺動板49は、その長手方向に形成されるスリット穴54を備えるとともに、スリット穴54に沿ってピン53が摺動自在に嵌合されている。扉体3が閉塞状態の最上位置にあるとき、ピン53はスリット穴54の最下端に位置し(図1参照)、扉体3が開放状態の最下位置にあるとき、ピン53はスリット穴54の最上端に位置する(図5参照)。扉体3が、最上位置から最下位置に移動するとき、扉体3の急激な動きを抑制するために、引っ張りバネ51は揺動板49を常に時計回りの方向に引っ張るように付勢している。
【0036】
図6に示すように、脱水運転時等の振動により水槽6が揺れた場合、水槽6が、回動アーム44、45、揺動板49、引っ張りバネ50、51に衝突しないように、これらは本体1の側面板1cと支持板47との間に配置されている。
なお、引っ張りバネ50、51は、これに限ることはなく、引っ張りバネに代えてねじりコイルバネを用いてもよい
【0037】
図7は、図3中のZ−Z線に沿って切断し拡大して示す扉体3の手掛け部55、57の縦断側面図である。図7に示すように、扉体3の前面には手掛け部55を設けるとともに、上端部に凹状の手掛け部57を設けており、手掛け部55は、手掛けカバー56をねじりコイルバネ等の弾性体(図示せず)で付勢することにより、通常は扉体3の表面と手掛けカバー56の表面とが面一になるようにしている。更に、前面板1aの投入口5の下方に周知のドアロック手段58(図3参照)を設け、扉体3の裏面下部には、閉塞時に該ドアロック手段58と係合するラッチ59(図5参照)を設けている。このドアロック手段58のロック解除ボタン60を操作パネル2の右横に設けている(図3参照)。
【0038】
次に、本実施形態に係るドラム式洗濯機の、動作、作用について説明する。
まず、扉体3を開放させるときは、操作パネル2右横のドアロック解除ボタン60を押して、ドアロック手段58による係合を解除させた後、前面板1aより若干前方に突出状態にある扉体3上端部の凹状の手掛け部57に指を掛けて下方へ押し下げるようにする。このとき、図1に示すピン48、48を回動支点にして回動アーム44、45が反時計方向である下方に回動し、これに連結された連結アーム42および扉体3が下方に円弧を描くように回動する。この回動によって、前面板1aの傾斜角度に対応した傾斜状態の扉体3は、膨出部3bが前面板1aの表面に接触しないように投入口5からやや前方に離れて下方に移動し、扉体3が略鉛直の状態で前面下板1gの前面に接近し、膨出部3bは前面下板1gの表面でもある凹所に位置する。扉体3は、引っ張りバネ50、揺動板49、引っ張りバネ51により、開き方向のスピードを抑制されるとともに、緩やかに開放動作される。
【0039】
また、図5に示す扉体3の開放状態から閉塞するときは、扉体3前面に設けた手掛けカバー56を手で押して手掛け部55に指を掛けて上方に持ち上げる。このとき、ピン48、48を回動中心にして回動アーム44、45が時計方向である上方に回動し、これに連結された連結アーム42および扉体3が上方に円弧を描くように回動する、この回動の際、膨出部3bが前面板1aの表面に接触しないように上方に移動して投入口5に入り込み、扉体3の裏面たる膨出部3bがベローズ11に密着するとともに、ドアロック手段58にラッチ59が係合してロックされ、扉体3が完全に閉塞される。このドアロック手段58と上部左右の連結アーム42の3点支持によって、扉体3は、均一且つ確実に閉塞保持され、水槽6からの水漏れを防止することができる。
【0040】
扉体3が開閉動作するときの回動する際、扉体3(膨出部3b)が本体1の前面板1aに接触しないでスムーズに回動するには、以下に示す条件が必要となる。
図8は、扉体3の開閉動作を説明するためのモデル図で、扉体3の開閉状態を示す最上位置および最下位置にある状態を示している。扉体3は、閉塞状態の最上位置にあるときは傾斜状態にあり、開放状態の最下位置にあるときは略直立の起立状態にある。なお、図8では、扉体3の最上位置にあるときの可動支点A、Bを、以下点A1、点B1として説明し、扉体3の最下位置にあるときの可動支点A、Bを、以下点A2、点B2として説明する。
【0041】
点A1と点A2とを結ぶ円弧の中心を固定支点Cとし、この円弧の半径を半径Ra1とする。点B1と点B2とを結ぶ円弧の中心を固定支点Dとし、この円弧の半径を半径Rb1とする。このような前提のもと、半径Ra1は半径Rb1より大きいか若しくは等しいことが必要である(Ra1≧Rb1)。
【0042】
扉体3が開閉(回動)動作する際、扉体3(膨出部3b)が本体1の前面板1aに接触しないためには、点B1と点B2とを結ぶ円弧の高さFは、点A1と点A2とを結ぶ円弧の高さEより大きいか若しくは等しくなることが必要だからである(F≧E)。
このため、回動アーム44の可動支点Aと固定支点Cとの距離が、回動アーム45の可動支点Bと固定支点Dとの距離以上になることが必要であり、この条件のもと固定支点Cと固定支点Dを支持板47上にて位置決めすることが必要である。
【0043】
以上のことから、本実施形態に係るドラム式洗濯機は、以下の効果が得られる。
扉体3は、投入口5の開放動作をする際、下方向に回動する。そして、投入口5の開放時には、扉体3は、膨出部3bを本体1(前面板1a)の下部に設けられた前面下板1gの表面である寸法N(図4参照)後退した凹所に収納され、本体1の前面下部に沿って起立した状態に保持される。図9(a)は、本実施形態に係るドラム式洗濯機の奥行き設置サイズを示し、同図(b)は、ドア108が従来の横開きタイプのドラム式洗濯機の奥行き設置サイズを示している。図9に比較して示すように、本実施形態では、横開きタイプのドラム式洗濯機に比較して、奥行き設置寸法H(=奥行き設置寸法G(従来の横開きタイプ)−奥行き設置寸法F(本実施形態))の減少が可能となる(H=G−F)。
【0044】
従って、本体1の前方に扉体3の開閉動作を許容するための大きなスペースを必要としない。このため、ユーザが本体1前面に位置して扉体3の開閉操作をする際、扉体3が邪魔になることはなく、扉体3の開閉操作を容易に行うことができ、さらには、投入口5の近い位置で洗濯物の出し入れ操作も容易にすることができて使い勝手が良い。
特に、図12において開示したようにユーザが車椅子を使用されている場合であっても、上記同様に、扉体3が邪魔になることなく扉体3の開閉操作ができ、さらには、洗濯物の出し入れをすることができる。
【0045】
また、本実施形態に係るドラム式洗濯機は、開放動作時の扉体3は下方向に回動動作し、閉塞動作時の扉体3は上方に回動動作する。従って、本体1両側のいずれに室壁が隣接していても、扉体2の開放時に投入口5の前方のスペースは幅狭になることはない。以って、従来の横開きタイプのドラム式洗濯機と比較して、左開き用と右開き用との両横開きタイプを用意する必要はなく、生産性や製造コストについて有利である。
【0046】
扉体3の閉塞時には、扉体3の膨出部3bはベローズ11内に収納され水槽6側に突出した状態に配置されるため、洗濯や乾燥運転中などに洗濯物のベローズ11内への侵入は膨出部3bで抑えられ、該ベローズ11が摩耗により穴が開いたりする虞がない。
【0047】
扉体3の支持手段41は、本体1を構成する両側面たる側面板1b、1cの内側に配置されていることで、扉体3の閉塞状態では、扉体3の支持手段41を構成する連結アーム42等は外部に露出しない。このため、良好な外観が得られ、且つ手指が直接触れるおそれもない。
支持手段41は、夫々本体1側に回動可能に支持された2本の回動アーム44、45から構成されている。このような回動動作する支持手段41は、従来例として述べた、スライドタイプのドラム式洗濯機のスライド移動される扉体と違って、摩擦抵抗が少なく、扉体3をスムーズに開閉できる。
【0048】
回動アーム44、45は、扉体3の左右両側に一体的に設けられた連結アーム42、42を介して、扉体3を回動支持している。扉体3が開閉動作する際、回動アーム44、45と連結アーム42、42との枢支連結部は、本体1外部に出ることはない。このため、ユーザが、この枢支連結部に触って怪我等をするといった虞はなく、また、この枢支連結部に外力が加わり、この枢支連結部が破損等するといった虞もない。
【0049】
本体1の内側面である前面板1aに連結アーム42の軌跡に対応する上下に延びたスリット開口部43を設けた。このため、前面板1aに設けた上下に延びたスリット開口部43、連結アーム42は、通常扉体3が閉塞状態のとき、これらスリット開口部43、連結アーム42は外側に露出しないため、本体1は良好な外観を得ることができる。
【0050】
本体1の内側面である側面板1b、1cに回動アーム44、45を支持する支持板47を固定して設け、該支持板47と側面板1b、1cとの間に回動アーム44、45を配した。このため、脱水運転時に水槽6が振動した場合でも、支持板47により、回動アーム44、45、揺動板49等の可動部に水槽6が直接当たることはないので、これら可動部を水槽6の衝突から保護することができる。
【0051】
回動アーム44、45には、扉体3を常時上方に付勢する弾性体として引っ張りバネ50を設けた。このため、引っ張りバネ50により、常時、扉体3を上方向に引っ張るように付勢し、扉体3の重量と引っ張りバネ50の付勢力との均衡により、扉体3を軽く開閉でき、操作性が向上する。また、扉体3開放時に下方に降下する際の急な動きや衝撃を引っ張りバネ50の付勢力により低減でき、本体1にかかる応力を小さくすることができる。このため、本体1の耐久性向上や本体1の小型化などに寄与する。更に、扉体3は閉塞位置近傍では略引っ張りバネ50の付勢力のみで閉塞し、逆に開放位置近傍では扉体3は扉体3の略重力のみで開放するので、より快適な操作性が得られ使い勝手が良い。
【0052】
扉体3の上部両側に回動アーム44、45と連結される連結アーム42を備えるとともに、投入口5を閉塞する位置における扉体3を係止するドアロック手段58を投入口5の下側に設けた。このため、扉体3を閉塞したとき、扉体3は上部両側の支持手段41と、下部のドアロック手段58の3点(三角形が描かれる)で支持されているため、投入口5に対する扉体3の密閉が堅固で確実に行われて、信頼性の高い水漏れ防止構造が得られる。
【0053】
(第2の実施形態)
図10は、本発明の第2の実施形態に係る図8相当図である。上記第1の実施形態と実質的に同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる点について詳細に述べる。この第2の実施形態では、扉体3が閉塞状態にある最上位置にあるとき、略直立状態にある点が、上記第1の実施形態と異なる。
【0054】
本実施形態においては、図10からも明らかなように扉体3が閉塞した最上位置にあるとき略直立状態にあるが、開放状態の最下位置にあるときも略直立状態となる。連結アーム42と回動アーム44との枢支連結点を回動可能な可動支点Aとし、連結アーム42と回動アーム45との枢支連結点を回動可能な可動支点Bとする。回動アーム44と支持板47との枢支連結点を回動可能な固定支点Cとし、回動アーム45と支持板47との枢支連結点を同じく固定支点Dとする。
ただ具体的には、扉体3の最上位置にあるときの可動支点A、Bを、以下点A3、点B3とし、扉体3の最下位置にあるときの可動支点A、Bを、以下点A4、点B4として説明する。
【0055】
点A3と点A4とを結ぶ円弧の中心を固定支点Cとし、この円弧の半径を半径Ra2とする。点B3と点B4とを結ぶ円弧の中心を固定支点Dとし、この円弧の半径を半径Rb2とする。この条件のもと、半径Ra2は半径Rb2より大きいか若しくは等しいことが必要である(Ra2≧RB2)。
【0056】
扉体3が開閉(回動)動作する際、扉体3(膨出部3b)が本体1の前面板1aに接触しないためには、点B3と点B4とを結ぶ円弧の高さKは、点A3と点A4とを結ぶ円弧の高さJより大きいか若しくは等しくなることが必要であるからである(K≧J)。
このため、回動アーム44の可動支点Aと固定支点Cとの距離が、回動アーム45の可動支点Bと固定支点Dとの距離以上になることが必要であり、この条件のもと固定支点Cと固定支点Dを支持板47上にて位置決めすることが必要である。
【0057】
尚、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、例えば、乾燥機能を有さないドラム式洗濯機にも適用できることはもとより、扉体は、矩形状のものに限定されるものではなく、円形または半円形状であっても適用可能であり、また扉体の形状に応じた凹所を形成すればよいなど、本願発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0058】
図面中、1は本体、1aは前面板(前面)、1bは側面板(側面)、1cは側面板(側面)、1gは前面下板(凹所)、3は扉体、3bは膨出部、5は投入口、6は水槽、7はドラム、11はベローズ(密閉部材)、41は支持手段、42は連結アーム、43はスリット開口部、44は回動アーム、45は回動アーム、47は支持板、49は揺動板、50は引っ張りバネ(弾性体)、および58はドアロック手段を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外郭を形成する本体内に、側方に開口するドラム型の水槽を設け、
前記水槽の開口側と対応する前記本体の前面に洗濯物を出し入れするための投入口を設け、
前記投入口を開閉する扉体を設けるとともに、該扉体を前記投入口に対して接離し且つ上下方向に回動可能に支持する支持手段を設け、
前記扉体の裏面側は、前記水槽側から延出された密閉部材と接離可能とするとともに、
前記扉体の開放時には、該扉体は前記支持手段により前記投入口より下方位置に移動され、且つ前記本体前面下部に沿って起立した開放状態に保持されることを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項2】
扉体の裏面側には、水槽側に突出する膨出部を備え、
該扉体が開放状態にあるときの前記膨出部と対応する本体前面下部に凹所が形成されていることを特徴とする請求項1記載のドラム式洗濯機。
【請求項3】
扉体の支持手段は、前記本体を構成する両側面の内側に配置される構成としたことを特徴とする請求項1または2記載のドラム式洗濯機。
【請求項4】
支持手段は、夫々本体側に回動可能に支持された複数の回動アームから構成されていることを特徴とする請求項3記載のドラム式洗濯機。
【請求項5】
回動アームは、扉体の左右両側に一体的に設けられた連結アームを介して、前記扉体を回動可能に支持していることを特徴とする請求項4記載のドラム式洗濯機。
【請求項6】
連結アームは扉体の上部両側に位置し、
前記本体の前面には前記連結アームの軌跡に対応する上下に延びたスリット開口部を設けたことを特徴とする請求項5記載のドラム式洗濯機。
【請求項7】
前記本体の内側面に回動アームを支持する支持板を固定して設け、該支持板と本体内側面との間に前記回動アームを配したことを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載のドラム式洗濯機。
【請求項8】
回動アームには、扉体を常時上方向に付勢する弾性体を設けたことを特徴とする請求項4ないし7のいずれかに記載のドラム式洗濯機。
【請求項9】
扉体の上部両側に回動アームと連結される連結アームを備えるとともに、投入口を閉塞する位置における扉体を係止するドアロック手段を前記投入口の下側に設けたことを特徴とする請求項4ないし8のいずれかに記載のドラム式洗濯機。
【請求項1】
外郭を形成する本体内に、側方に開口するドラム型の水槽を設け、
前記水槽の開口側と対応する前記本体の前面に洗濯物を出し入れするための投入口を設け、
前記投入口を開閉する扉体を設けるとともに、該扉体を前記投入口に対して接離し且つ上下方向に回動可能に支持する支持手段を設け、
前記扉体の裏面側は、前記水槽側から延出された密閉部材と接離可能とするとともに、
前記扉体の開放時には、該扉体は前記支持手段により前記投入口より下方位置に移動され、且つ前記本体前面下部に沿って起立した開放状態に保持されることを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項2】
扉体の裏面側には、水槽側に突出する膨出部を備え、
該扉体が開放状態にあるときの前記膨出部と対応する本体前面下部に凹所が形成されていることを特徴とする請求項1記載のドラム式洗濯機。
【請求項3】
扉体の支持手段は、前記本体を構成する両側面の内側に配置される構成としたことを特徴とする請求項1または2記載のドラム式洗濯機。
【請求項4】
支持手段は、夫々本体側に回動可能に支持された複数の回動アームから構成されていることを特徴とする請求項3記載のドラム式洗濯機。
【請求項5】
回動アームは、扉体の左右両側に一体的に設けられた連結アームを介して、前記扉体を回動可能に支持していることを特徴とする請求項4記載のドラム式洗濯機。
【請求項6】
連結アームは扉体の上部両側に位置し、
前記本体の前面には前記連結アームの軌跡に対応する上下に延びたスリット開口部を設けたことを特徴とする請求項5記載のドラム式洗濯機。
【請求項7】
前記本体の内側面に回動アームを支持する支持板を固定して設け、該支持板と本体内側面との間に前記回動アームを配したことを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載のドラム式洗濯機。
【請求項8】
回動アームには、扉体を常時上方向に付勢する弾性体を設けたことを特徴とする請求項4ないし7のいずれかに記載のドラム式洗濯機。
【請求項9】
扉体の上部両側に回動アームと連結される連結アームを備えるとともに、投入口を閉塞する位置における扉体を係止するドアロック手段を前記投入口の下側に設けたことを特徴とする請求項4ないし8のいずれかに記載のドラム式洗濯機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−240014(P2010−240014A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89015(P2009−89015)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】
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