説明

ドラム缶

【課題】 ドラム缶を移動させるときの作業性および安全性の向上を図る。
【解決手段】 上下両端が開口した円筒状の胴体2と、該胴体の上側開口部に取り付けた天板2と、胴体の下側開口部に固定した地板3とからなるドラム缶1において、胴体における天板側および地板側の少なくともいずれか一方の外周部に、表面を粗くした滑止部8を設ける。滑止部は、粉末を添加した滑止塗料9を塗布してなる。あるいは、表面加工を施した滑止シート12を貼着してなる。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、内部に油等の液体を充填するドラム缶に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図8に示すように、この種のドラム缶1は鋼製で、内部に油等の液体を充填するものであり、上下両端が開口した円環状の胴体2と、該胴体2の上側開口部を閉鎖する天板3と、前記胴体2の下側開口部を閉鎖する地板4とを備えている。
なお、前記ドラム缶1としては、200,120,80,60,50(リットル)等、種々の容量のものがある。また、前記天板3は、前記胴体2に接合された所謂クローズドタイプものや、締輪を介して胴体2に着脱可能に取り付けられる所謂オープンタイプのものがある。これらうち、前記クローズドタイプの天板3には、図示のように対向する側部に抽出口3aと通気口3bとが設けられ、これらにそれぞれ口栓5,6が着脱可能に取り付けられている。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、前記ドラム缶1のうち、特に、200リットル容量のドラム缶1は、空の状態で近距離移動させるときには、図示のように、作業者が両手で天板2側の胴体2の上端縁を把持し、地面に対して傾斜させた状態で両方の手で胴体2の上端縁を回転させることにより移動させるが、その把持部分が雨等により濡れている場合には、塗装した面の表面粗さが約5μm以下(JIS−0601により測定)と平滑であるため滑り易く、必要以上の労力や時間を要していた。
また、前記ドラム缶1の内部に所謂満タン状態で液体が充填されている時に前記移動作業を行うと、この状態のドラム缶1は200Kg以上の重量物であるため、前述のように手が滑ると最悪の場合には作業者が怪我をする恐れがあった。
【0004】
従って、本考案は、ドラム缶を移動させるときの作業性および安全性の向上を図ることを課題とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するため、本考案のドラム缶は、上下両端が開口した円筒状の胴体と、該胴体の上側開口部に取り付けた天板と、前記胴体の下側開口部に固定した地板とからなるドラム缶において、前記胴体における前記天板側および地板側の少なくともいずれか一方の外周部に、表面を粗くした滑止部を設けたものである。
【0006】
前記ドラム缶では、前記滑止部を、前記天板または地板と胴体との接合部分を含む範囲に設けることが好ましい。
また、前記滑止部は、粉末を添加した滑止塗料を塗布して形成することが好ましい。
あるいは、前記滑止部は、表面加工を施した滑止シートを貼着して形成してもよい。
【0007】
【考案の実施の形態】
以下、本考案の実施の形態を図面に従って説明する。
図1は本考案の第1実施形態のドラム缶1を示す。該ドラム缶1は所謂クローズドタイプであり、前記天板3側において、図2(A),(B)に示すように、該天板3と胴体2との接合部分を含むの胴体2の外周部に滑止部8を設けた点でのみ従来例と相違している。
【0008】
具体的には、前記滑止部8は、胴体2、天板3および地板4の外周面全体を所定の色の塗料で塗装し、防錆性を有する塗装部7を形成した後に、該塗装部7の表面における滑止部8の形成範囲Hの全面に滑止塗料9をスプレーにより吹き付けて形成している。前記滑止塗料9は、前記塗装部7の表面を補修するための所謂補修用塗料に粒状の微粉末を添加したものを使用している。なお、滑止部8の形成範囲H以外の箇所は、微粉末を添加していないものを使用する。
【0009】
ここで、前記塗装部7の表面粗さRzは約5μm以下であり、前記滑止部8の表面粗さRzは30〜200μmとなるように前記微粉末を添加している。該滑止部8の表面粗さRzは、前記微粉末の粒径を大きくする程大きくなり、滑止作用が向上するが、粒径が大き過ぎると、ノズル等による塗料を吹き付ける時にノズルが詰まりやすくなる等の不都合が生じる一方、粒径が小さ過ぎると良好な滑止作用を得ることができないため、前記範囲内とすることが好ましい。なお、滑止部8は、はけやローラ等によって塗布して形成してもよい。
【0010】
本実施形態では、前記形成範囲Hはドラム缶1の上端から約5cmとし、また、前記滑止塗料9は粒径が約40μmの6−6ナイロン等の微粉末を塗料に添加して表面粗さRzが約40μmとなるように形成している。
【0011】
前記滑止部8を形成したドラム缶1では、該ドラム缶1が所謂満タン状態および空の状態のいずれでも、作業者が天板3側の上端部を把持して転がり移動させようとすると、その手が滑止部8に位置するため、ドラム缶1が雨等により濡れていても手が滑るのを防止することができる。そのため、ドラム缶1を移動させるときに、作業者の力を十分に伝達でき、その結果、余分な労力や時間が不要であり、作業性の向上を図ることができるとともに、作業者自身の安全性も向上することができる。
【0012】
図3(A),(B),(C),(D)は第1実施形態のドラム缶1の変形例を示す。図3(A)では、形成範囲Hにおいて、滑止塗料9を周方向に所定間隔をもって上下方向に延びる直線状に塗布して滑止部8を形成している。図3(B)
では、滑止塗料9を上下方向に所定間隔をもって円環状に塗布して滑止部8を形成している。図3(C)では、滑止塗料9を内部に菱形状の非塗布部分が形成されるように格子状に塗布して滑止部8を形成している。なお、正方形状の非塗布部分が形成される格子状に形成してもよい。図3(D)では、滑止塗布9を所謂水玉模様のように塗布して滑止部8を形成している。
前記各変形例に示すように、前記滑止部8は、形成範囲H内にどの様な形状で設けてもよく、これらの場合、微粉末を添加するため高価な滑止塗料9の塗布量を低減できるという利点を有する。
【0013】
図4は第2実施形態のドラム缶1を示す。該ドラム缶1は、表面加工を施した滑止シート12を塗装部7の表面に貼着することによって滑止部8を形成した点で第1実施形態と相違している。
【0014】
前記滑止シート12は、前記塗装部7と同色で防錆性を有するシート材13の一面をエンボス加工またはプリント加工等により、微小な凹凸を刻設または印刷して表面粗さRzを30〜200μmとしている。また、シート材13の他面には接着剤14が塗布されている。前記シート材13は、硬質塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ペントン、ポリカーボネート、テフロン、耐熱塩化ビニル、メチルメタアクリレート、ポリ塩化ビニリデンあるいはポリイソブチレン等からなる。また、接着剤14は、ニトリルゴム、ネオプレンゴム系のエラストマー接着剤等の種々の接着剤を使用することができる。
【0015】
前記第2実施形態のドラム缶1では、シート材13を表面加工することによって表面を粗くしているため、該滑止部8の表面粗さRzを所要の粗さで形成することができ、その結果、確実な滑止作用を得ることができる。なお、前記第2実施形態においても、前記滑止シート12を所定箇所にのみ貼着することにより、図3(A),(B),(C),(D)の変形例に示すように、所定パターンで滑止部8を形成することができる。
【0016】
なお、本考案のドラム缶1は前記構成に限られるものではない。
例えば、前記滑止部8は地板4側に設けてもよく、また、図5に示すように、天板2側と地板3側の両方に設けてもよい。また、前記滑止部8は、その形成範囲Hをドラム缶1の全面としてもよいが、この場合、ドラム缶1のコストが高くなるため、前記各実施形態のように作業者が手で触れる部分にのみ形成することが好ましい。
【0017】
さらに、前記各実施形態では、前記滑止部8は、塗装部7の表面に塗布あるいは貼着して設けたが、図6に示すように、鋼板からなる胴体2、天板3または地板4の表面に直接塗布あるいは貼着して形成してもよい。かつ、ドラム缶1の胴体2に所有者等の表示を形成しなければならず、その表示が滑止部8の形成箇所に位置するときには、前記滑止塗料9または滑止シート12を透明材により構成することが好ましい。または、滑止部8の表面に表示を設けてもよい。
【0018】
さらにまた、前記各実施形態では、所謂クローズドタイプのドラム缶1に適用したが、図7に示すように、天板3を締輪15によって胴体2の上端開口部に着脱可能に取り付けるようにした所謂オープンタイプのドラム缶1’に適用しても、同様の作用、効果を得ることができる。かつ、図7に示すように、胴体2との接合部分である天板3の内周面には必ずしも滑止部8を形成する必要はない。
【0019】
【考案の効果】
以上の説明から明らかなように、本考案のドラム缶では、作業者が把持する天板側または地板側の少なくともいずれか一方の外周部に、表面を粗くした滑止部を設けているため、雨等によってドラム缶が濡れている場合にも手が滑るのを防止することができ、その結果、作業性の向上を図ることができる。また、作業中に手が滑ってドラム缶が横倒しになる危険性がなくなるため、安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本考案の第1実施形態のクローズドタイプのドラム缶を示す正面図である。
【図2】 (A)は図1の要部断面図、(B)は(A)のB部分の拡大断面図である。
【図3】 (A),(B),(C),(D)はそれぞれ第1実施形態の変形例を示す正面図である。
【図4】 第2実施形態のドラム缶を示す断面図である。
【図5】 ドラム缶の変形例を示す正面図である。
【図6】 ドラム缶の他の変形例を示す断面図である。
【図7】 オープンタイプのドラム缶を示す断面図である。
【図8】 ドラム缶を移動させる場合の作業状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1…ドラム缶、2…胴体、3…天板、3a…抽出口、4…地板、5…口栓、7…塗装部、8…滑止部、9…滑止塗料、12…滑止シート。

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 上下両端が開口した円筒状の胴体と、該胴体の上側開口部に取り付けた天板と、前記胴体の下側開口部に固定した地板とからなるドラム缶において、前記胴体における前記天板側および地板側の少なくともいずれか一方の外周部に、表面を粗くした滑止部を設けたことを特徴とするドラム缶。
【請求項2】 前記滑止部を、前記天板または地板と胴体との接合部分を含む範囲に設けたことを特徴とする請求項1に記載のドラム缶。
【請求項3】 前記滑止部は、粉末を添加した滑止塗料を塗布してなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のドラム缶。
【請求項4】 前記滑止部は、表面加工を施した滑止シートを貼着してなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のドラム缶。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図3】
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【登録番号】第3043662号
【登録日】平成9年(1997)9月10日
【発行日】平成9年(1997)11月28日
【考案の名称】ドラム缶
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平9−4168
【出願日】平成9年(1997)5月22日
【出願人】(391018019)川鉄コンテイナー株式会社 (15)