説明

ドリップ吸収用シート

【課題】表示部と非表示部とを有するドリップ吸収用シートの提供
【解決手段】ドリップ吸収用シート100が透液性の上層シート2と、上層シート2の下面に接合する吸液性の下層シート3とを含む。上層シート2は、熱可塑性プラスチックフィルムで形成され、上層シート2の上面6の面積の70〜99%を占める非表示部10と30〜1%を占める表示部11とを有する。非表示部10は通気透液性開孔8が一様に分布している部分であって、表示部11は開孔8を複数形成することができるだけの面積を有するとともに非表示部10によって囲まれていて、文字、図形、模様のいずれかを成している。表示部11の上面には、凹部21と凸部22とが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、魚肉の切り身等の食肉を載せて、前記食肉から滲出するドリップを吸収させるのに好適なドリップ吸収用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
魚肉や牛肉等の食肉を店頭で販売するときに、その食肉の小片を載せて、食肉から滲出するドリップを吸収させるためのシートは従来よく知られている。例えば、実用新案登録第3094586号公報(特許文献1)にはこの種のシートである吸液性マットが開示されている。この吸液性マットは、複数の貫通孔を有するフィルム層とそのフィルム層に接着された吸液層とを有するもので、フィルム層は上層フィルムと下層フィルムとからなる2枚の合成樹脂フィルムをラミネートすることによって形成されている。上層フィルムは無色透明のものであって、下層フィルムと向き合っている面には文字や図形が印刷されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3094586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記吸液性マットによれば、フィルム層の上に食肉を載せても印刷インクは食肉と接触することがなく、印刷インクに起因する衛生上の問題を生じることがない。しかし、前記吸液性マットがそのようなものであっても、食品衛生上において問題のない印刷インクを選択しなければならないという技術上の制約が生じることは避け難い。
【0005】
そこで、この発明では、印刷インクを使用することなく文字や図形等が形成されているドリップ吸収用シートの提供を課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明が対象とするのは、上下面を有する透液性の上層シートと、前記上層シートの前記下面に接合する吸液性の下層シートとを含み、前記上層シートの前記上面に食肉を載せて前記食肉から滲出するドリップを前記下層シートによって吸収可能なドリップ吸収用シートである。
【0007】
かかるドリップ吸収用シートにおいて、この発明が特徴とするところは、以下のとおりである。前記上層シートは、厚さ0.01〜0.1mmの熱可塑性プラスチックのフィルムで形成されていて、前記上面の面積の70〜99%を占めている非表示部と前記上面の面積の30〜1%を占めている表示部とを有し、前記非表示部は複数の通気透液性開孔が一様に分布している部分であって、前記表示部は前記通気透液性開孔を複数形成することができるだけの面積を有するとともに前記非表示部によって囲まれている無開孔部であって前記表示部の個体および集合体のいずれかが文字、図形および模様のいずれかを成し、前記表示部における前記上面には凹部と凸部が形成されている。
【0008】
この発明の好ましい実施態様の一つにおいて、前記表示部は、幅が0.3〜3mmの範囲にある帯状の前記無開孔部によって形成されている。
【0009】
この発明の好ましい実施態様の他の一つにおいて、前記通気透液性開孔のそれぞれが前記上層シートから前記下層シートへ向かう方向に延びて前記下層シートに届く管状部を有している。
【0010】
この発明の好ましい実施態様の他の一つにおいて、前記下層シートから前記上層シートへ向かう方向では、前記非表示部で最上部を成している第1部分に対して、前記表示部で最上部を成している第2部分が下記a,b,cいずれかの態様にある;
a.同じ高さに形成されている態様、
b.高く形成されている態様、
c.低く形成されている態様。
【0011】
この発明の好ましい実施態様のさらに他の一つにおいて、前記凹部が前記表示部の縁部にまで延びる溝である。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係るドリップ吸収用シートでは、透液性の上層シートが熱可塑性プラスチックのフィルムで形成され、そのフィルムには、通気透液性開孔が一様に形成されている非表示部と、通気透液性開孔を複数形成することができるだけの面積を有していて非表示部によって囲まれている表示部とが形成されており、その表示部の個体および集合体のいずれかが文字、図形および模様のいずれかを成している。それゆえ、このドリップ吸収用シートでは、文字や図形が印刷インクを使用することなく形成される。また、その表示部の上面には凹部と凸部とが形成されている。食肉が凹部の上に置かれると、食肉は空気との接触の機会が増す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ドリップ処理用シートの平面図。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図。
【図3】図1の部分IIIの拡大図。
【図4】図3のIV−IV線に沿う断面図。
【図5】この発明に係るドリップ吸収用シートについての図4と同様な図。
【図6】発明の一実施形態であるドリップ吸収用シートについての図5と同様な図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付の図面を参照して、この発明に係るドリップ吸収用シートの詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0015】
図1,2は、この発明を適用するのに好適なドリップ処理用シート1の平面図とその平面図におけるII−II線に沿う断面図である。ドリップ処理用シート1は、0.01〜0.1mmの厚さを有する熱可塑性プラスチックフィルム、より好ましくはポリエチレン等のポリオレフィン系の熱可塑性プラスチックフィルムで形成された上層シート2と、坪量20〜200g/mの熱可塑性合成繊維の不織布で形成された下層シート3と、これら両シート2,3を接合するホットメルト接着剤で形成された中間層4とを含んでいる。
【0016】
上層シート2は、上面6と、下面7と、上下面6,7間を貫通する複数の通気透液性開孔8とを有し、上面6には魚肉や牛肉等の食肉が載せられて、その食肉から滲出するドリップ(図示せず)が開孔8を通って下層シート3へと向かう。かような上層シート2はまた、複数の開孔8が一様に分布していて上面6の面積の30〜99%を占めている非表示部10と、F,i,s,hの文字のいずれかを成すように非表示部10によって囲まれている無孔部と呼ぶことのできる表示部11とを有する。表示部11は、上面6の面積の30〜1%の範囲を占めるように形成されていて、ドリップ処理用シート1の使用者が看取できる図示例の如き文字の他に、円形や矩形、三角形等の各種の図形、波状の連続線や格子状に交差した連続線等によって形成される各種の模様の形をとることができる。なお、図1ではそれぞれの文字F,i,s,hの存在を明示するために文字の輪郭が実線で示されている。
【0017】
下層シート3は、ドリップを吸収し保持するためのものであって、下層シート3を形成する不織布には、エアレイド不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布等を使用することができる。不織布は、親水化処理を施されるとかレーヨン繊維やパルプ繊維等の吸水性繊維を含むとかということによって、吸水性能を向上させることができる。
【0018】
中間層4は、上層シート2と下層シート3とを接合する手段であって、図示例ではホットメルト接着剤が1〜5g/mの割合で使用されている。ホットメルト接着剤は、上層シート2の通気透液性を極力阻害することがないように、上層シート2または下層シート3に対して間欠的に塗布するものであるが、図2では中間層4の存在を容易に確認することができるように、図の横方向に連続して延びる層として図示されている。
【0019】
図3は、図1において仮想線IIIで囲まれた部分の拡大図である。図1の上層シート2において、個体としての文字F,i,s,hの一つずつが表示部11であって、これら個体の集合体がFishという一語を形成している。図3は、その表示部11の一部分とその近傍の非表示部10とを拡大して示すものである。非表示部10は、複数の円形の開孔8が上層シート2の上面6に一様に形成されている部分であって、隣り合う開孔8と開孔8との間には仕切り部13が形成されている。ここで、開孔8が上面6に一様に形成されているとは、複数の開孔8どうしを比較したときに開孔8の平面形状が図示例の如く一種類であるか、それとも図示例とは異なっていて複数種類であるかのいかんにかかわらず、上面6において任意に選んだ1cm×1cmの広さの中におさまる開孔8の面積の和が一定の範囲内にあることを意味している。上層シート2は、非表示部10の存在によって、通気透液性のものになるのであるが、それを可能にする開孔8の平面形状には格別の規定がない。表示部11は、そのような非表示部10によって囲まれていて、複数の開孔8を形成することができるだけの面積を有している無開孔部であって、非表示部10とは目視によって識別可能な部分である。表示部11と非表示部10との境界は、図3に示された鎖線15である。鎖線15は、隣り合う開孔8の周縁8aに順次外接して延びている。表示部11が文字であれば、ドリップ処理用シート1の用途や性能、商品名等を表示することができ、図形であればドリップ処理用シート1の使用方法等を図示することができ、模様であればドリップ処理用シート1を装飾性のあるものにすることができる。
【0020】
図3において、ドリップ処理用シート1は、互いに直交する縦方向Aと横方向Bとを有し、非表示部10には、孔径Dを有する開孔8が縦方向Aと横方向Bとに等しい間隔Pで形成されている。この間隔Pは、隣り合う開孔8の周縁8aと周縁8a(図4参照)との間に形成されている仕切部13の幅の最小値である。図示されている表示部11の一部分は、縦方向Aへ帯状に延びていて、互いに平行する鎖線15と15との間に横方向Bへ延びる幅Qを有する。
【0021】
図4は、図3のIV−IV線に沿う断面図である。上層シート2と下層シート3とは、接合手段である中間層4として間欠的に塗布されているホットメルト接着剤を介して接合している。上層シート2における開孔8は、その周縁8aから延びて下層シート3に届く管状部16を有し、その管状部16の長さLは0.2〜2mmの範囲にあることが好ましい。管状部16の上端は、開孔8の周縁8aであって、孔径Dを有し、管状部16の下端は孔径Dを有する。孔径Dは孔径Dと同じであるか、または孔径Dよりも小さくなるように作られている。孔径Dが孔径Dよりも小さい管状部16は、仮想線17で示す形状のもので、下層シート3に近づくほど毛管作用が顕著になるから、開孔8に進入したドリップはその毛管作用によって速やかに下層シート3へ移動する。好ましい上層シート2において、孔径D,Dは0.1〜1.6mmの範囲にある。隣り合う開孔8と開孔8との間に形成されている仕切り部13は、上層シート2の下面7から上面6へ向かう方向においての最上部である頂部14を有し、図ではその頂部14が平坦に形成されている。仕切り部13のうちの間隔Pは、非表示部10における通気透液性を高めることができるように、0.01〜1mmの範囲にあることが好ましい。
【0022】
表示部11は、上層シート2のうちでの非通気性かつ非透液性の部分である。このような表示部11は、上層シート2に例えば牛肉を載せたときに、牛肉と空気中の酸素との接触を困難にするので、牛肉が酸素と接触することによって赤く発色することの妨げになることがある。そこで、本発明者は、図1に基づいて、図3に寸法Qとして示されている表示部11の文字の幅を様々に変化させたドリップ処理用シート1を用意し、そのシート1に牛のもも肉を載せて冷蔵庫で12時間保管し、その後にもも肉のうちで表示部11に当接していた部分の発色状態を観察した。その結果、表示部11の寸法Qが3mm以下であるときには、表示部11に当接していた部分が赤く発色して非表示部10に当接していた部分と大差のない良好な結果を示した。また、寸法Qが3.5mm以上であるときには、表示部11に当接していた部分が茶色に発色して、非表示部10に当接していた部分との間に明らかな差を有し、この場合の寸法Qが好ましい値ではないとの結果を示した。なお、この観察において、表示部11の縦方向Aの寸法を30〜80mmで変化させてみたが、この寸法が発色に与える影響を確認することはできなかった。かような観察結果から、表示部11の寸法Qは3mmを超えないことが好ましいと考えられる。ただし、表示部11は、それが非表示部10と識別できることによって表示部11としての目的を達成するものであるから、個々の表示部11は複数の開孔8を形成することができるだけの面積を有していなければならない。それゆえ、図3の場合の寸法Qの上限は3mmである。寸法Qの下限は、ドリップ処理用シート1の実用上0.3mmであることが好ましい。
【0023】
図5は、この発明に係るドリップ吸収用シート100の一例を示す図4と同様な図である。図5におけるドリップ吸収用シート100では、表示部11においての最上部である頂部11aが非表示部10においての最上部である頂面14よりも上方にあるか、または仮想線で示されているように頂面14よりも下方にあって、非表示部10と表示部11との間に段差が生じている。このようなドリップ吸収用シート100では、そのような段差のない図4のドリップ処理用シート1と比べると、それに載せた食肉と上層シート2との間に段差の近傍で間隙が生じ易く、その間隙において食肉と空気との接触が可能になる。なお、図5では管状部16の孔径Dが孔径Dよりも小さい場合が示されている。
【0024】
図6もまた、この発明に係るドリップ吸収用シート100の一例を示す図5と同様な図である。図6におけるドリップ吸収用シート100では、表示部11の上層シート2に凹部21と凸部22とが形成されている。その凹部21は、表示部11の縁部にまで延びる溝形状のものに変えることができる。このようなドリップ吸収用シート100では、食肉が凹部21またはそれによって形成される溝の上に置かれると、空気との接触の機会が増すという効果が得られる。また、不透液性である表示部11において滲出したドリップが溝形状の凹部21の中を流れて開孔8へ向かうことによって、ドリップがドリップ吸収用シート100に滞溜して食肉の外観が悪くなるということを防ぐことができたり、ドリップに起因する菌の増殖を抑えたりすることができる。
【0025】
この発明において、開孔8を有する上層シート2は、熱可塑性プラスチックフィルムを加熱して真空圧の作用下に所要形状の金型になじませることによって得ることができる。その際に、真空圧を利用してフィルムを破裂させることで開孔8を形成することができる。上層シート2と下層シート3とは、ホットメルト接着剤で接合することに代えて、加熱したエンボッシングロールを使用して接合することもできる。
【符号の説明】
【0026】
2 上層シート
3 下層シート
6 上面
7 下面
8 開孔
8a 周縁
10 非表示部
11 表示部
16 管状部
21 溝(凹部)
100 ドリップ吸収用シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下面を有する透液性の上層シートと、前記上層シートの前記下面に接合する吸液性の下層シートとを含み、前記上層シートの前記上面に食肉を載せて前記食肉から滲出するドリップを前記下層シートによって吸収可能なドリップ吸収用シートであって、
前記上層シートは、厚さ0.01〜0.1mmの熱可塑性プラスチックのフィルムで形成されていて、前記上面の面積の70〜99%を占めている非表示部と前記上面の面積の30〜1%を占めている表示部とを有し、
前記非表示部は複数の通気透液性開孔が一様に分布している部分であって、前記表示部は前記通気透液性開孔を複数形成することができるだけの面積を有するとともに前記非表示部によって囲まれている無開孔部であって前記表示部の個体および集合体のいずれかが文字、図形および模様のいずれかを成し、
前記表示部における前記上面には凹部と凸部とが形成されていることを特徴とする前記ドリップ吸収用シート。
【請求項2】
前記表示部は、幅が0.3〜3mmの範囲にある帯状の前記無開孔部によって形成されている請求項1記載のドリップ吸収用シート。
【請求項3】
前記通気透液性開孔のそれぞれが前記上層シートから前記下層シートへ向かう方向に延びて前記下層シートに届く管状部を有している請求項1または2記載のドリップ吸収用シート。
【請求項4】
前記下層シートから前記上層シートへ向かう方向では、前記非表示部で最上部を成している第1部分に対して、前記表示部で最上部を成している第2部分が下記a,b,cいずれかの態様にある請求項1〜3のいずれかに記載のドリップ吸収用シート;
a.同じ高さに形成されている態様、
b.高く形成されている態様、
c.低く形成されている態様。
【請求項5】
前記凹部が前記表示部の縁部にまで延びる溝である請求項1〜4のいずれかに記載のドリップ吸収用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−10569(P2013−10569A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−228431(P2012−228431)
【出願日】平成24年10月15日(2012.10.15)
【分割の表示】特願2008−22573(P2008−22573)の分割
【原出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】