説明

ドリリングネジ

【目的】 強化石膏ボード等の硬質ボードを薄手の下地合板に確実に接合できるドリリングネジを提供する。
【構成】 ドリリングネジ11のトランペット形ネジ頭13の上端部の開き角度を80度以下に成形する。ネジ軸部12の2条右雄ネジ15の上部には、弛緩防止のため左雄ネジ16を約1周程度形成する。従来のトランペット形ドリリングネジよりもトランペット形ネジ頭13の開き角度を狭めたことによってトランペット形ネジ頭13の貫入抵抗が減少し、強化石膏ボード18等の硬質ボードを薄手の下地合板17に接合する際に、下地合板17にタッピングされる雌ネジ部19が破壊される現象が発生しない。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、ネジに関するものであり、特に石膏ボード等の建築用ボードを下地合板に取り付ける際に使用するトランペット形ドリリングネジに関するものである。
【0002】
【従来の技術】プレハブ建築等において石膏ボードを下地合板にネジ止めする際は、ネジ締め機によって下地合板に締結したネジ頭の高さが石膏ボードの表面と同一になることが理想とされる。そして、この仕上がり状態は皿ネジよりもトランペット形ドリリングネジの方が安定していることが知られている。即ち、ネジ頭が石膏ボードの表面よりも沈みこむ現象は、皿ネジを使用した場合よりもトランペット形ドリリングネジを使用した場合には比較的少なく、安定した仕上がりが得られる。
【0003】図4は従来のトランペット形のドリリングネジ1を示し、ネジ軸部2の上部には指数関数的に拡大するトランペット形ネジ頭3が設けられている。トランペット形ネジ頭3の上面には十字穴4が設けられ、ネジ軸部2には2条雄ネジ5が形成されている。トランペット形ネジ頭3の上端部の開き角度α1は百度乃至百数十度程度であり、ネジ締め機によってドリリングネジ1を下地合板上の石膏ボードに締め込むと、ネジ先が石膏ボード及び下地合板を貫通し、2条雄ネジ5が下地合板にねじ込まれるとともに、トランペット形ネジ頭3が石膏ボードに貫入して石膏ボードが下地合板に接合される。
【0004】
【解決しようとする課題】トランペット形のドリリングネジによって石膏ボードを下地合板にネジ止めする際は、下地合板に螺合したドリリングネジの軸方向の推進力によってトランペット形ネジ頭が石膏ボードの孔壁を圧壊しつつ石膏ボード内に貫入する。しかしながら、ガラス繊維等の強化材料を混入した強化石膏ボードを4mm程度の薄手下地合板にネジ止めする場合は、強化石膏ボードの硬度が高いため、トランペット形ネジ頭が強化石膏ボードへ貫入する際の抵抗が、下地合板に螺合したドリリングネジの推進力を上回り、下地合板に形成された雌ネジ部が破壊されてネジが効かず接合不良となることがある。そこで、強化石膏ボード等の硬質ボードを下地合板にネジ止めする際の雌ネジ部の破壊を防止して、確実に硬質ボードと下地合板を接合できるようにするために解決すべき技術的課題が生じており、本発明は上記課題を解決することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】この発明は上記課題を解決するために提案するものであり、ネジ軸部から上方へトランペット形に拡大するネジ頭を有するドリリングネジに於て、前記トランペット形ネジ頭の外周面上端部における開き角度を80度以下としたことを特徴とするドリリングネジを提供するものである。
【0006】
【作用】ネジ締め機によってドリリングネジを下地合板上の強化石膏ボード等のボードに締め込むと、ネジ先がボード及び下地合板へ貫入し、ドリリングネジの雄ネジによって下地合板に雌ネジ部がタッピング成形される。この雌ネジ部に噛み合う雄ネジの推進力によってドリリングネジがボード及び下地合板を貫通し、トランペット形ネジ頭はボードの孔壁を圧壊しつつボードに貫入する。
【0007】本発明のドリリングネジのトランペット形ネジ頭は、開き角度が最大で80度以内に成形されており、ボードへ貫入する際の抵抗が低いため、強化石膏ボード等の硬質ボードをネジ締めする際においてもトランペット形ネジ頭の貫入抵抗が下地合板に形成される雌ネジ部の耐力を上回ることがなく、雌ネジ部が破壊されることがない。
【0008】
【実施例】以下、この発明の一実施例を図1及び図2に従って詳述する。図1は、トランペット形のドリリングネジ11を示し、ネジ軸部12の上部から上方へ向かって拡大するトランペット形ネジ頭13が設けられている。図1(b)に示すように、トランペット形ネジ頭13の上端部の開き角度α2は80度以下であって、従来のトランペット形ドリリングネジの開き角度よりも狭角とし、平坦に形成された上面には、同図(a)に示すように十字穴14が設けられている。
【0009】木ネジ形状のネジ軸部12には上端のやや下方からネジ先まで2条右雄ネジ15が刻設され、2条右雄ネジ15の上部には2条右雄ネジ15よりもネジ山高さが低い左雄ネジ16が約1周に亘って形成されている。図2に示すように、このドリリングネジ11をネジ締め機によって下地合板17上の強化石膏ボード18に締め込むと、ネジ先のきり作用によってネジ軸部12が強化石膏ボード18及び下地合板17へ貫入し、ネジ軸部12の2条右雄ネジ15によって下地合板17に雌ネジ部19がタッピング成形される。この雌ネジ部19に噛み合う2条右雄ネジ15の推進力によってネジ軸部12が強化石膏ボード18及び下地合板17を貫通し、トランペット形ネジ頭13は強化石膏ボード18の孔壁を圧壊しつつ強化石膏ボード18に貫入する。
【0010】トランペット形ネジ頭13は、開き角度が最大で80度以内に成形されているので、従来のドリリングネジと比較して軸方向の貫入量に対する外径の拡大度が小であり、貫入抵抗が従来のトランペット形ドリリングネジよりも減少している。よって、トランペット形ネジ頭13の上面が強化石膏ボード18の表面と同一高さとなるように、ネジ締め機のトルクを調節してこのドリリングネジ11を締結する実験を反復した結果、薄手の下地合板17に形成された雌ネジ部19が破壊される現象は発生しないことが確認された。
【0011】また、締結後は、2条右雄ネジ15の上部の左雄ネジ16が強化石膏ボード18及び下地合板17に螺合し、ドリリングネジ11の回転を制動して弛緩が防止され、強化石膏ボード18と下地合板17とが強固に接合される。尚、本発明は上記一実施例に限定するものではなく、本発明の技術的範囲内において種々の改変をなすことができ、例えば、図3に示すようにトランペット形ネジ頭13の外周部に軸方向のリブ20,20,… を設けてネジ頭貫入時のボード掘削作用を向上させる等種々の改変ができ、本発明がそれらの改変されたものに及ぶことは当然である。
【0012】
【発明の効果】本発明のドリリングネジは、上記一実施例において詳述したように、トランペット形ネジ頭の開き角度を最大で80度以内としてネジ頭が石膏ボード等へ貫入する際の抵抗を可及的に減少させつつ締結強度を確保している。従って、下地合板に形成される雌ネジ部が、トランペット形ネジ頭の貫入抵抗によって破壊されることが防止され、ネジ締め機によって強化石膏ボード等の硬質ボードを薄手の下地合板に確実に接合できるドリリングネジを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示し、(a)はドリリングネジの平面図、(b)はドリリングネジの正面図である。
【図2】図1のドリリングネジを使用して強化石膏ボードを下地合板に接合した状態を示す断面図。
【図3】本発明の他の実施例を示し、ドリリングネジの正面図である。
【図4】従来例を示し、(a)はドリリングネジの平面図、(b)はドリリングネジの正面図である。
【符号の説明】
11 ドリリングネジ
12 ネジ軸部
13 トランペット形ネジ頭
15 2条右雄ネジ
16 左雄ネジ
17 下地合板
18 強化石膏ボード
19 雌ネジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ネジ軸部から上方へトランペット形に拡大するネジ頭を有するドリリングネジに於て、前記トランペット形ネジ頭の外周面上端部における開き角度を80度以下としたことを特徴とするドリリングネジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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