説明

ドリル位置決め用リングの挿着装置

【課題】ドリルの刃のチッピングを防止できると共に、刃部がホルダ部よりも大きな径を有するドリルに対してもドリル位置決め用リングを挿入可能とすること。
【解決手段】ドリル位置決め用リング4を、ドリル2に挿着させるドリル位置決め用リングの挿着装置1において、ドリル設置部8と、ドリル位置決め用リング4を配置させるリング配置部13と、リング配置部13に配置されたドリル位置決め用リング4に向かってドリル2を移動させる移動ユニット20とを備え、ドリル2は、ホルダ部3がリング配置部13と対向する側に位置するように、ドリル設置部8に設置され、移動ユニット20は、ホルダ部3を保持し、該移動ユニット20がドリル位置決め用リング4に向かうように相対移動することで、ドリル2がホルダ部3の側からドリル位置決め用リング4に圧入されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドリル位置決め用リングの挿着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリント基板等に穴あけ加工を行う際にはドリル等の治具が用いられ、その際、ドリルのホルダ部には、ドリル位置決め用リングが挿着される(たとえば、特許文献1参照)。このドリル位置決め用リングは、ドリルを機器に対して正確に位置決めするために挿着される。また、ドリル位置決め用リングの挿着は、手動もしくは自動の挿着装置を用いて行われる。
【0003】
特許文献2には、ドリル位置決め用リングを窪部内に収容させ、ドリルを刃の先端部側から該ドリル位置決め用リングに圧入させるといった構成を有するドリル位置決め用リングの挿着装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−90784号公報(要約書)
【特許文献2】特開昭59−227307号公報(発明の詳細な説明)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に開示されているドリル位置決め用リングの挿着装置は、ドリルを刃の先端部側からドリル位置決め用リングに圧入させるため、圧入の際に、ドリルの刃部がドリル位置決め用リングと接触してチッピングを起こし、不良品が生産されるおそれがある。さらに、ドリルを刃の先端部側からドリル位置決め用リングに圧入するため、刃部がホルダ部よりも大きな径を有するドリルに対しては、当該装置を用いてドリル位置決め用リングを挿着することができない。
【0006】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところはドリルの刃のチッピングを防止できると共に、刃部がホルダ部よりも大きな径を有するドリルに対してもドリル位置決め用リングを挿着可能なドリル位置決め用リングの挿着装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、ドリルを機器に取り付ける際に使用するドリル位置決め用リングを、ドリルに挿着させるドリル位置決め用リングの挿着装置において、ドリルを設置位置に設置させるドリル設置部と、ドリル位置決め用リングを配置させるリング配置部と、ドリル設置部に設置されたドリルを保持し、該ドリルをドリル設置部から離間させて、リング配置部に配置されたドリル位置決め用リングに向かって該ドリルを相対移動させる移動ユニットと、を備え、ドリルは、刃部と、機器に取り付けられる部分となるホルダ部と、を有し、ドリルは、ホルダ部がリング配置部と対向する側に位置するように、ドリル設置部に設置され、移動ユニットは、ホルダ部を保持し、該移動ユニットがドリル位置決め用リングに向かうように相対移動することで、ドリルがホルダ部の側からドリル位置決め用リングの内部に圧入されるものである。
【0008】
また、リング配置部は、ドリル位置決め用リングを、ドリル設置部に設置されたドリルと同一軸線上に配置させるための配置位置を有し、移動ユニットは、ドリルをホルダ部の横方向外方から挟み込んで保持し、該移動ユニットがドリルの軸方向に沿って移動することで、該ドリルが配置位置に配置されるドリル位置決め用リングの方向に移動するものとするのが好ましい。
【0009】
また、ドリル設置部には永久磁石が配設されており、該永久磁石の磁気吸引力を利用してドリルの刃部の先端部側をドリル設置部に吸着させるものとするのが好ましい。
【0010】
また、移動ユニットは、ドリルの中心軸線に直交する方向に該ドリルを跨いで対向配置され、ドリルに対して接離可能な2つのクランプ部材を有し、該クランプ部材がドリルのホルダ部に接近して該ホルダ部を外側から狭持することによって、ドリルが移動ユニットに保持されるものとするのが好ましい。
【0011】
また、各クランプ部材におけるドリルの中心軸線を挟んだ外側の側面には、奥側から手前側に向かって徐々に幅が広くなるようなテーパ状のテーパ面が形成されており、移動ユニットは、さらに、両クランプ部材を、ドリルから離間する方向に付勢する付勢部材と、両クランプ部材の両側方に一定の間隔を有して対向配置され、テーパ面と摺接しながら手前奥方向に向かって直線的に移動する2つのカムフォロワと、を備え、カムフォロワが手前側に移動すると、テーパ面が該カムフォロワによって内側に押圧され、両クランプ部材が付勢部材の付勢力に抗してドリルに接近する方向に移動し、カムフォロワが奥側に移動すると、テーパ面が該カムフォロワからの押圧から解放され、両クランプ部材が付勢部材の付勢力によってドリルから離間する方向に移動するものとするのが好ましい。
【0012】
また、リング配置部は、手前側から奥側に向かって下方に傾斜するように配置されており、該リング配置部は、上方に向かって幅広の形態で開口し、ドリル位置決め用リングを複数収納可能な収納部と、該収納部から奥側に向かって細長状に切り欠かれた導入部と、を備え、収納部および導入部のいずれか一方もしくは双方の壁面から内側に向かって空気を供給することにより、ドリル位置決め用リングを導入部の先端部となる配置位置まで移動させるのが好ましい。
【0013】
また、移動ユニットの下端部には、ドリル設置部に設置されたドリルの中心軸線方向に沿って凹状に切り欠かれた当接溝を有し、かつ永久磁石から形成される当接部が配設され、該当接部は、ドリル設置部に設置されたドリルを永久磁石の磁気吸引力によって当接溝に当接させて支持するものとするのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、ドリルの刃のチッピングを防止できると共に、刃部がホルダ部よりも大きな径を有するドリルに対してもドリル位置決め用リングを挿着可能なドリル位置決め用リングの挿着装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態に係るドリル位置決め用リングの挿着装置の斜視図であり、ドリルがドリル設置部に設置された直後の初期状態を示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係るドリル位置決め用リングの挿着装置の斜視図であり、ドリル設置部に設置されたドリルがクランプ部材によってクランプされた状態を示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係るドリル位置決め用リングの挿着装置の斜視図であり、ドリルにドリル位置決め用リングが挿着された状態を示す図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係るドリル位置決め用リングの挿着装置の正面図であり、図1に示す状態において上カバーを外した状態を示す図である。
【図5】図4におけるドリル位置決め用リングの挿着装置の側面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係るドリル位置決め用リングの挿着装置を側面から透過的に見た図である。
【図7】図4中のガイド付シリンダの正面図である。
【図8】図4中の移動ユニットを斜め上方から見た斜視図である。
【図9】図4中の移動ユニットを斜め下方から見た斜視図である。
【図10】図8中の移動ユニットからクランプ動作を行う機構を抜き出して示す斜視図である。
【図11】本発明の一実施の形態に係るドリル位置決め用リングの挿着装置の正面図であり、図2に示す状態において上カバーを外した状態を示す図である。
【図12】図11に示すドリル位置決め用リングの挿着装置の側面図である。
【図13】図11中の移動ユニットを斜め上方から見た斜視図である。
【図14】図11中の移動ユニットを斜め下方から見た斜視図である。
【図15】図13中の移動ユニットからクランプ動作を行う機構を抜き出して示す斜視図である。
【図16】本発明の一実施の形態に係るドリル位置決め用リングの挿着装置の正面図であり、図3に示す状態において上カバーを外した状態を示す図である。
【図17】図16に示すドリル位置決め用リングの挿着装置の側面図である。
【図18】図16中の移動ユニットを斜め上方から見た斜視図である。
【図19】図16中の移動ユニットを斜め下方から見た斜視図である。
【図20】図1中のリング配置部の構成を示す斜視図である。
【図21】図4中の駆動機構およびリング配置部に空気の供給を行うための構成を説明するための概略図であり、ドリル位置決め用リングの挿着装置の奥側から収納空間の内部を見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態に係るドリル位置決め用リングの挿着装置(以下、単に、「挿着装置」という。)1について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、図1〜図21に示す矢示X方向を「手前」、矢示X方向を「奥」、X方向とX方向の両方向に対し水平方向で直交する方向となる矢示Y方向を「左」、矢示Y方向を「右」、XY平面と直交し、設置されるドリルの軸線方向に沿う方向となる矢示Z方向を「上」および矢示Z方向を「下」とそれぞれ規定する。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態に係る挿着装置1の斜視図であり、ドリル2がドリル設置部8に設置された直後の初期状態を示す図である。図2は、本発明の一実施の形態に係る挿着装置1の斜視図であり、ドリル設置部8に設置されたドリル2がカムフォロワ66を利用したクランプ部材15によってクランプされた状態を示す図である。図3は、本発明の一実施の形態に係る挿着装置1の斜視図であり、ドリル2にドリル位置決め用リング4が挿着された状態を示す図である。
【0018】
本発明の一実施の形態に係る挿着装置1は、ドリル2のホルダ部3側から該ドリル2にドリル位置決め用リング4を挿着させるための装置である。具体的には、図1の状態からドリル2を降下させて、下方に配置されているドリル位置決め用リング4にドリル2を圧入させるための装置である。図1に示すように、挿着装置1は、下方において手前側に向かって突出する基部5と、基部5の奥側から上方に向かって立ち上がる立設部6と、立設部6の手前側に設けられる駆動部7と、を有する。駆動部7は上カバー16によって覆われており、その内部にはドリル2を上下方向へ移動させるための駆動機構9が備えられている。
【0019】
図1に示すように、ドリル位置決め用リング4に挿着される前のドリル2は、駆動部7を構成するドリル設置部8に設置される。ドリル2は、刃部11がホルダ部3の上方に位置する状態でドリル設置部8に設置される。具体的には、ドリル2における刃部11の上端部、すなわち刃部11の先端側がドリル設置部8の下端部において保持される。より具体的には、ドリル設置部8の内側には不図示の永久磁石が配設されており、該永久磁石の磁気吸引力を利用して、刃部11の上端部をドリル設置部8の下端部に吸着させる。なお、該永久磁石として、ネオジウム磁石を採用することが可能である。また、ドリル設置部8に設置されたドリル2は、その奥側においてドリル支持部12に支持される。本実施の形態では、図1に示すように、ドリル設置部8にドリル2が設置された直後の状態を初期状態とする。ドリル2は、たとえば、硬度Hvが約90のステンレススチールから形成することができる。なお、ホルダ部3の直径は、たとえば、3.175mmに形成することができる。また、ドリル位置決め用リング4の内径は、たとえば、ホルダ部3の直径よりも0.2mm小さく形成することができる。
【0020】
一方、基部5の上端面5aには、複数のドリル位置決め用リング4を収納可能なリング配置部13が設けられている。図1に示すように、初期状態においては、1つのドリル位置決め用リング4が、ドリル2の中心軸線と同一軸線上に位置する配置位置14に配置される。また、図1の初期状態においては、ドリル2は、ドリル設置部8およびドリル支持部12によって支持されているのみで、駆動機構9に対して強固に固定されていない。なお、図1に示すように、駆動機構9の下方以外の部分は上カバー16によって覆われている。
【0021】
図2に示すように、ドリル設置部8に設置されたドリル2は、後述する、クランプ部材15,15によってクランプされて、駆動機構9に対して強固に固定される。その後、図3に示すように、後述する移動ユニット20とともにドリル2が下方に移動することによって、該ドリル2にドリル位置決め用リング4が挿着される。
【0022】
図4は、本発明の一実施の形態に係る挿着装置1の正面図であり、初期状態において上カバー16を外した状態を示す図である。図5は、図4の挿着装置1の側面図である。図6は、本発明の一実施の形態に係る挿着装置1を側面から透過的に見た図である。図7は、図4中のガイド付シリンダ21の正面図である。
【0023】
図4に示すように、駆動機構9は、ドリル2と共に上下に移動する移動ユニット20と、該移動ユニット20を上下に駆動させるガイド付シリンダ21と、ドリル設置部8の位置を測定するためのマイクロメータ22と、を主に有する。ガイド付シリンダ21およびマイクロメータ22は、ドリル設置部8に設置されるドリル2の中心軸線に沿うように、すなわち、Z軸方向に沿うように配設されている。
【0024】
図4から図6に示すように、ガイド付シリンダ21は、立設部6と駆動部7とを手前側と奥側とに仕切る内壁19に固定されている。この内壁19の下端部近傍は上方に向かって略矩形状に切り欠かれた切欠部19aが形成されており、この切欠部19aを塞ぐように下目隠し板29が配設されている(図4、図5参照)。該下目隠し板29の上端部における左右両側には手前側に向かって折り曲げられた折曲部29aが形成されおり、該折曲部29aが移動ユニット20の下端に固定されている(図4から図6参照)。具体的には、折曲部29aは後述する、固定台部51の下端面に固定されている。なお、下目隠し板29の下端は、基部5側に挿入された状態にあり、自由端となっている。
【0025】
図7に示すように、ガイド付シリンダ21は、上下方向にスライドするスライド部23と、スライド部23に係合し、スライド部23をスライド可能に保持するシリンダ部24とを有する。該シリンダ部24は、内壁19に固定されている。また、シリンダ部24には、圧縮空気が供給され、該圧縮空気がシリンダ部24内を通過することによって、スライド部23が上下にスライドする。
【0026】
スライド部23は正面から見て矩形状の形態を有しており、シリンダ部24の両側方に、上下方向にスライド可能に係合している。スライド部23の右側面からは、上方に向かって略逆L字状に延出するL字延出部25が設けられている(図4、図7参照)。また、スライド部23の下端には、ガイド付シリンダ21を移動ユニット20に固定するための固定部26が設けられている。固定部26は、スライド部23よりも奥側に突出するように設けられている(図5および図6等参照)。
【0027】
図7に示すように、シリンダ部24は、正面から見て奥側に配置される矩形状の形態を有する矩形部27と、矩形部27の上端に設けられ、スライド部23の上方への移動を規制するための上方規制部28と、矩形部27の内部から下方に向かって突出するピストン軸48(図17参照)とを有する。図7等に示すように、上方規制部28は、スライド部23の上方への移動を規制すべく矩形部27よりも手前側に突出するように設けられている。ピストン軸48は、矩形部27内を往復運動可能であり、その移動量に応じてピストン軸48の矩形部27からの突出量が変位するように構成されている。また、ピストン軸48の先端は、固定部26の奥側に突出した部分に固定されている(図17参照)。このため、ピストン軸48が下方へ変位すると、それに伴って固定部26も下方へ移動する。その結果、スライド部23が下方に移動する。一方、ピストン軸48が上方に変位すると、それに伴って固定部26も上方に移動する。その結果、スライド部23が上方に移動する。
【0028】
また、図7に示すように、矩形部27および上方規制部28の左側面には、シリンダ部24における空気の通過を可能とする上接続管30および下接続管31がそれぞれ設けられている。上接続管30からシリンダ部24内に空気が供給されると共に、下接続管31からシリンダ部24内の空気が外部に排出されることによって、スライド部23が下方にスライドする。一方、下接続管31からシリンダ部24内に空気が供給されると共に、上接続管30からシリンダ部24内の空気が外部に排出されることによって、スライド部23が上方にスライドする。
【0029】
図4および図5に示すように、マイクロメータ22は、ガイド付シリンダ21の手前側に配設されている。マイクロメータ22は、主に、表示部32と、表示部32の下方に設けられたヘッド部33(図4参照)とから構成される。表示部32の外周部には不図示の目盛りが表記されており、この不図示の目盛りによってドリル設置部8の位置を確認することができる。ヘッド部33は、大径の基軸部34と、基軸部34の下端に設けられ、基軸部34に対して上下方向に相対移動可能な小径のスピンドル部35と、スピンドル部35の基軸部34からの突出量を調節するための調節部35aとを有する。調節部35aは、基軸部34の外周部に全周にわたって設けられており、該調節部35aを周方向に回動させることにより、基軸部34に対するスピンドル部35の突出量を調節することができる。また、スピンドル部35の先端には、ドリル設置部8が配設されていることから、調節部35aを回動させることによって、スピンドル部35の突出量を変位させてドリル設置部8の高さ方向の位置を調節することが可能となる。
【0030】
図4および図5に示すように、マイクロメータ22は、保持枠36に保持されている。保持枠36は中央に略矩形状の開口部37を有し、その左右両側には内側に向かって略矩形状に切り欠かれた一対の矩形切欠部38,38が形成されている(図4参照)。また、保持枠36の四隅には、奥側に向かって突出する略円柱状の合計4本のシャフト53が固定されている(図5等参照)。シャフト53の先端が内壁19に固定されることで、保持枠36がガイド付シリンダ21よりも手前側の位置にて固定される。
【0031】
図4に示すように、表示部32は、保持枠36の上端部における左右方向略中央に固定されている。すなわち、表示部32は保持枠36から上方に突出する形態で保持枠36に保持されている。一方、ヘッド部33は、保持枠36を上下方向に突っ切るように開口部37の内部に配置されている。すなわち、ヘッド部33の両端部近傍は保持枠36に保持されていることになる。具体的には、保持枠36において開口部37の下側を囲う下壁部36aには、基軸部34の下端から延出するスピンドル部35が略筒形状のブッシュ部材40,40を介して嵌挿されている。また、矩形切欠部38,38の内部には、クランプ部材15を作動させるためのクランプスイッチ39がそれぞれ配設されている。さらに、下壁部36aにおいて基軸部34を中心とした左右両側の位置には、略筒形状を有するブッシュ部材40,40が埋設されている。
【0032】
図4および図5に示すように、保持枠36の下方には、略直方体形状のブロック部材41が配設されている。該ブロック部材41の左右両端部には、上方に向かって突出する略円柱状の棒状シャフト42,42が固定されている。この棒状シャフト42は、上述したブッシュ部材40の内部に挿入されている。この棒状シャフト42はブッシュ部材40の内部を上下方向にスライド可能となっている。そして、棒状シャフト42においてブッシュ部材40から上方に突出する部分の外周にバネ部材43を配設すると共に、棒状シャフト42の上端にバネ部材43が当接する当接部44を設けることによって、ブロック部材41が保持枠36に対して保持される。なお、当接部44は、バネ部材43が当接可能なように、棒状シャフト42よりも大径に形成されている。このため、ブロック部材41はバネ部材43によって上方向に付勢された状態を維持する。
【0033】
また、ブロック部材41の左右方向中央には、略円柱状の形態で上下に貫通する貫通孔45が設けられている。この貫通孔45の内部には、ドリル設置部8の上端部が嵌め込まれている。スピンドル部35の先端はドリル設置部8の上端に固定されている。このため、調節部35aを回動させて、スピンドル部35の基軸部34からの突出量を調整すると、その変位に伴いブロック部材41の上下方向に移動する。上述したように、棒状シャフト42の上方にはバネ部材43が介在されていることから、ブロック部材41には、常時、上方に向かう付勢力が作用している。このため、この付勢力をスピンドル部35が受け止めている状態となっている。これより、調節部35aの調節により、スピンドル部35が下方に向かって変位すると、ブロック部材41はバネ部材43の付勢力に抗して下方に移動する。一方、調節部35aの調節により、スピンドル部35が上方に向かって変位すると、ブロック部材41はバネ部材43に作用する付勢力によって上方に移動する。
【0034】
図8は、図4中の移動ユニット20を斜め上方から見た斜視図である。図9は、図4中の移動ユニット20を斜め下方から見た斜視図である。図10は、図8中の移動ユニット20からクランプ動作を行う機構を抜き出して示す斜視図である。図11は、本発明の一実施の形態に係る挿着装置1の正面図であり、図2に示す状態において上カバー16を外した状態を示す図である。図12は、図11に示す挿着装置1の側面図である。図13は、図11中の移動ユニット20を斜め上方から見た斜視図である。図14は、図11中の移動ユニット20を斜め下方から見た斜視図である。図15は、図13中の移動ユニット20からクランプ動作を行う機構を抜き出して示す斜視図である。図16は、本発明の一実施の形態に係る挿着装置1の正面図であり、図3に示す状態において上カバー16を外した状態を示す図である。図17は、図16に示す挿着装置1の側面図である。図18は、図16中の移動ユニット20を斜め上方から見た斜視図である。図19は、図16中の移動ユニット20を斜め下方から見た斜視図である。なお、図8、図9、図13および図14では、説明の便宜上、ドリル2、ドリル設置部8、ヘッド部33およびブロック部材41を図示するものとし、固定平板50の図示は省略するものとする。
【0035】
図4から図6に示すように、移動ユニット20は、ガイド付シリンダ21の下方に配置される。具体的には、移動ユニット20は、スライド部23の下端に設けられる固定部26の下側に固定されている。また、図6に示すように、後述するシリンダ54は駆動部7の内側の空間となる収納空間49内に配置される。具体的には、移動ユニット20は、内壁19を手前から奥方向に横切るように配設されている。
【0036】
図4から図6および図8から図10に示すように、移動ユニット20は、固定部26の下側に固定される略平板状の固定平板50と、固定平板50の下側に固定される固定台部51と、固定台部51の内側に配置される略コの字状の形態を有するクランプ移動体52と、固定台部51の下側に配置される上述した2つのクランプ部材15,15と、クランプ部材15,15の下側に配置される上述したドリル支持部12と、固定台部51の奥側に配置され、クランプ移動体52を手前奥方向に移動させるシリンダ54と、を主に有する。
【0037】
図4および図5等に示すように、固定平板50は固定部26よりも面積が大きな矩形状の形態を有している。上述したように、固定平板50は固定部26に固定されている。また、固定平板50における手前側の左右方向略中央には、上下方向に貫通する円形の円形貫通孔55が形成されている(図4参照)。この円形貫通孔55は、ドリル設置部8の直径よりもやや大径に形成されている。このため、移動ユニット20が上限位置にある初期状態では、ドリル設置部8は、円形貫通孔55内にその内周面と隙間を有する状態で挿入される。
【0038】
上述したように、固定台部51は、固定平板50の下方に固定される。また、図8および図9に示すように、固定台部51には略コの字状の形態で下方に向かって窪むコ字状凹部56が形成されている。このため、固定台部51の手前側における略中央には上方に向かって突出する凸板部57が形成されることになる。すなわち、この凸板部57は固定台部51において一体的に形成されている。凸板部57は、その奥側部分に、左右両側に向かって幅広となるように略凸状に突出する幅広凸部57a,57aを有している。また、凸板部57は、幅広凸部57a,57aの手前側に、左右両側に向かって鍔状に突出する前鍔部57b,57bを有している。この前鍔部57b,57bは、後述する鍔部62と対向するように設けられている。また、コ字状凹部56の手前側に開放する2つの開放端部56a,56aには、奥側に向かって略U字状に切り欠かれたU字切欠部60,60が形成されている。
【0039】
また、図9に示すように、固定台部51の裏側には、U字切欠部60の外縁部に沿って上方に向かって段差状に切り欠かれたU字段差部61,61が形成されている。これにより、U字切欠部60の外縁部にはU字状に沿って内側に向かって突出する鍔部62が形成される。さらに、凸板部57における左右方向略中央には手前側から奥側に向かって略矩形状に切り欠かれた前矩形切欠部63が形成されている(図8参照)。一方、固定台部51の奥側における左右方向略中央部には、奥側から手前側に向かって切り欠かれた後矩形切欠部64(図8において一部のみ図示する。)が形成されている。後矩形切欠部64は前矩形切欠部63よりも深い深さに切り欠かれている。なお、固定台部51は、たとえば、アルミニウム等の非磁性の金属から形成することができる。
【0040】
クランプ移動体52はコ字状凹部56の内部に配置されている。クランプ移動体52は、左右方向においてほぼ隙間なくコ字状凹部56内に配置されているものの、手前奥方向においては奥側の奥壁56bと、凸板部57との間に隙間を有する。このため、クランプ移動体52はコ字状凹部56内を手前奥方向に移動することが可能である。略コ字状の形態を有するクランプ移動体52における2つの脚部における先端部52a,52aは斜め内側に傾斜するように延出している。この先端部52aは凸板部57における幅広凸部57aの手前側に位置している。このため、クランプ移動体52が奥側に移動した場合、先端部52aが幅広凸部57aに当接することによって、クランプ移動体52の奥側への移動が規制される。
【0041】
また、各先端部52aの下方には、軸65を介してカムフォロワ66がそれぞれ取り付けられている。軸65の軸径の大きさはカムフォロワ66の直径よりも小さく形成されている。このため、カムフォロワ66と先端部52aとの間であって軸65の外側に鍔部62が係合した状態となる。すなわち、軸65を介してカムフォロワ66と先端部52aとがU字切欠部60に係合した状態となる。換言すれば、カムフォロワ66と先端部52との間に、鍔部62と前鍔部57bとが入り込むことで、その鍔部62と前鍔部57bがクランプ移動体52のガイドの役割を果たしている。このため、クランプ移動体52は、ガタツクことなくコ字状凹部56内を手前奥方向に移動することが可能となる。
【0042】
シリンダ54は、固定台部51の後方に配置されている。シリンダ54は本体部67と、本体部67に対して手前奥方向に往復運動するピストン部68とを有する。ピストン部68は、後矩形切欠部64内に配置され、大径に形成された先端68aがクランプ移動体52に形成される係合溝部70に嵌まり込んでいる。シリンダ54には、シリンダ54への空気の供給/排出を可能とする奥接続管71および前接続管72がそれぞれ設けられている。奥接続管71からシリンダ54内に空気を供給すると共に、前接続管72からシリンダ54内の空気を排出すると、ピストン部68が手前側に移動する。一方、前接続管72からシリンダ54内に空気を供給すると共に、奥接続管71からシリンダ54内の空気を排出すると、ピストン部68が奥側に移動する。そして、該ピストン部68の手前と奥方向への往復運動に伴い、クランプ移動体52も手前と奥方向へ往復動する。
【0043】
図8から図10に示すように、固定台部51の下側には一対のクランプ部材15が配置されている。クランプ部材15は、手前側の端面が凸板部57の手前側の端面と面一となると共に、ドリル設置部8の中心軸線に対して左右対称となるように配置されている。また、2つのクランプ部材15,15は、両者の間を通る線を中心として左右対称形状を有している。さらに、クランプ部材15,15は、互いに向き合う内側が手前奥方向に沿って段差状に切り欠かれることにより、厚みが薄くなるクランプ部73と、このクランプ部73の外側に配置される厚みの大きい摺動部74を有している(図10参照)。クランプ部73の手前側の内側面には、内側から外方に向かって略半円状に切り欠かれた半円凹部75が形成されている。この半円凹部75も両クランプ部材15において両者の間を通る線を中心として左右対称に形成されている。このため、クランプ部材15が内側において合わさると、両半円凹部75によって円形の孔が形成される。
【0044】
また、摺動部74の外側面76には奥側から手前側に向かって徐々に左右方向の幅が大きくなるように形成されたテーパ状のテーパ面77が形成されている。該テーパ面77は、摺動部74の手前と奥方向の略中央部分に形成されている。このため、外側面76は、テーパ面77以外にも、テーパ面77よりも奥側に位置する奥側面76aと、テーパ面77よりも手前側に位置する前側面76bとを有する(図10参照)。奥側面76aおよび前側面76bはXZ平面に平行な面となっており、前側面76bの方が奥側面76aよりも左右それぞれ外側に位置している。図10に示すように、両クランプ部材15,15は、円柱状の連結シャフト78を介して両者の間隔が変位可能に連結されている。すなわち、連結シャフト78の両端は、各摺動部74の内側面74aに、両クランプ部材15の間隔が可変できるように、両クランプ部材15に嵌挿されている。また、連結シャフト78の外周にはクランプ部材15を外側に付勢する付勢部材となる付勢バネ80が取り付けられている。なお、クランプ部材15は、たとえば、アルミニウム等の硬度Hvが約40〜50の範囲となる非磁性の金属から形成することができる。このように、クランプ部材15を非磁性の金属から形成することにより、後述する永久磁石からなる当接部84からの磁束が該クランプ部材15を通過しやすい構成となる。
【0045】
また、クランプ部材15は、図10に示すガイド部材81を介して、固定台部51の下側に取り付けられている。ガイド部材81は、縦長状のガイドレール82と、ガイドレール82と係合して、該ガイドレール82に対して左右方向にスライド可能な2つのスライダ83と、を有する。このうち、ガイドレール82は固定台部51の下側面に左右方向に沿って固定され、スライダ83は各クランプ部材15の摺動部74の上端面に固定されている。さらに、スライダ83の上端面には左右方向に沿って奥側に向かって切り欠かれた不図示の溝が形成され、この不図示の溝に、ガイドレール82の下方に手前側と奥側に鍔状に形成されるガイド鍔部82aが係合している。このため、クランプ部材15は、ガイド部材81を介して、固定台部51に対して左右方向に相対移動可能な構成となっている。また、各クランプ部材15における摺動部74の外側面76には、クランプ移動体52に取り付けられたカムフォロワ66が接触するような構成となっている。すなわち、クランプ部材15を左右方向外方に向かって移動させようとする付勢バネ80の付勢力をカムフォロワ66が受け止めている。このため、両クランプ部材15,15間の間隔はカムフォロワ66の位置によって決定される。
【0046】
図8から図10に示す状態では、クランプ移動体52は奥側に位置している。この状態では、カムフォロワ66は、テーパ面77における奥側の部分に接触している。すなわち、カムフォロワ66は、クランプ部材15において左右方向の幅寸法が小さい部分において接触している。したがって、図8から図10に示すように、クランプ部材15は付勢バネ80の付勢力によって所定の間隔だけ離間した状態を維持する。
【0047】
シリンダ54に空気が供給され、クランプ移動体52が、図8から図10に示す状態から、手前側に向かって前進すると、カムフォロワ66はテーパ面77と摺動しながら手前側に移動する。この際、テーパ面77には、カムフォロワ66から内側に向かう押圧力が加えられるため、クランプ部材15は付勢バネ80の付勢力に抗して内側に押しやられていく。当該クランプ部材15を内側に押圧する圧力は、たとえば、100kgf/mmとすることができる。さらに、クランプ移動体52が前進し、カムフォロワ66が前側面76bと接触する位置まで移動すると、図13から図15に示すように、クランプ部材15は、クランプ部73同士が互いに接触して完全に閉じた状態となる。このように、クランプ部材15が閉じた状態では、ドリル2は半円凹部75に納まる形でクランプ部材15によって両側からクランプされる。
【0048】
図9に示すように、ドリル支持部12は、固定台部51の下側に固定されている。ドリル支持部12は、ドリル2に当接する当接部84と、当接部84を動作させるシリンダ部85と、ドリル支持部12を固定台部51に固定する略平板状の固定板部86と、を有する。該固定板部86は、固定台部51の下側面においてクランプ部材15と奥側に隣接する位置に固定される。また、固定板部86は左右に円形の円孔86aを有する。固定板部86は、該円孔86aに固定台部51から下方に向かって突出する2つの突出軸87を挿通させた状態で固定台部51の下側に固定される。
【0049】
シリンダ部85には、該シリンダ部85への空気の供給/排出を可能とする奥接続管90および前接続管91がそれぞれ設けられている。奥接続管90からシリンダ部85内に空気が供給されると共に、前接続管91からシリンダ部85内の空気が排出されると、当接部84が手前側に移動する。一方、前接続管91からシリンダ部85内に空気を供給すると共に、奥接続管90からシリンダ部85内の空気が排出されると、当接部84が奥側に移動する。
【0050】
当接部84は略板状の形態を有しており、その前端面には上下方向に沿って、奥側に向かって半円状に切り欠かれた当接溝92が形成されている。また、当接部84の材料として永久磁石が用いられている。また、永久磁石としては、ネオジウム磁石を採用するのが好ましい。ドリル2をドリル設置部8に設置させる際、該当接溝92には、ドリル2のホルダ部3が当接する。上述したように、当接部84の材料として永久磁石が用いられているため、鋼などで形成されるドリル2のホルダ部3は永久磁石の磁気吸引力によって当接溝92内に嵌まり込んだ状態を維持することが可能である。このため、当接部84によってドリル2を奥側から支持することが可能となる。
【0051】
当接部84の奥側の端部には、突出軸87と当接して当接部84の前方への移動を規制する当接板93が設けられている。さらに、当接部84の奥側でありかつ上側面において略段差状に切り欠かれた部分には、側面視して略L字状の形態を有するL字板94が固定されている。該L字板94において上方に立ち上がる立設部94aが、シリンダ部85の手前側の面となる前面85aと当接することで、当接部84の後方への移動が規制される。なお、当接部84は、シリンダ部85に対して手前や奥方向にスライド可能に取り付けられている。このような構成により、シリンダ部85への空気の供給/排出によって、当接部84は手前と奥方向に往復運動する。
【0052】
図13等に示すように、クランプ部材15によってドリル2をクランプした状態で、移動ユニット20は下方に移動する。図16等に示すように、この移動ユニット20の下方への移動は、ガイド付シリンダ21におけるスライド部23の下方への移動に伴って行われる。この際、ドリル2は、ドリル設置部8から離間し、移動ユニット20と共に下方に移動する(図17参照)。また、移動ユニット20が下方に移動する際、前接続管91からシリンダ部85内に空気を供給されると共に、奥接続管90からシリンダ部85内の空気が排出されることで、当接部84が奥側に移動する(図19参照)。移動ユニット20が下限位置まで移動すると、ドリル2のホルダ部3にドリル位置決め用リング4が挿着される(図17参照)。なお、移動ユニット20が下方に移動する際、当接部84が奥側に移動する。これにより、当接部84がリング配置部13と当接することがなくなり、移動ユニット20が下限位置まで移動することが可能となる。また、ドリル2がドリル位置決め用リング4に圧入する際に、ドリル2に加えられる圧力は、たとえば、30kgf/mmとすることができる。
【0053】
図20は、図1中のリング配置部13の構成を示す斜視図である。
【0054】
図1等に示すように、基部5の上部には、ドリル位置決め用リング4を配置位置14に配置するためのリング配置部13が配設されている。また、図1等に示すように、基部5の手前側には、挿着装置1の電源のON/OFF動作を切り替える電源スイッチ95が設けられている。さらに、電源スイッチ95の上部には、挿着装置1の各種調節を行うための操作スイッチ96が設けられている。
【0055】
リング配置部13は、略直方体の箱形状を有するボックス部100とボックス部100の上方の一部を覆う上板101とを有する。基部5の上端面5aは手前側から奥側に向かって高さが低くなるように傾斜しているため、リング配置部13も手前側から奥側に向かって下方に傾いた状態で配置されている。ボックス部100の手前側には、上方に向かって幅広の形態で開口する収納部となるリング収納部102が設けられている。また、リング収納部102の左右方向中央からは、奥側に向かって上方に開口する形態で細長状に切り欠かれた導入部となるリング導入部103が設けられている。
【0056】
リング収納部102は幅広の略直方体形状にくり抜かれており、該リング配置部13には複数のドリル位置決め用リング4を収納することが可能である。リング導入部103はリング収納部102に収納されている複数のドリル位置決め用リング4から、1つのドリル位置決め用リング4のみを、先端の配置位置14まで導くために幅細に形成されている。リング導入部103の根元部近傍における両壁面には、リング導入部103内に空気を供給するための空気孔104が設けられている。該空気孔104はリング導入部103の両壁面に一対に設けられている。また、ボックス部100の内部には、空気孔104に連通するような不図示の空気供給路が形成されている。このため、後述する空気制御装置112から供給された空気を不図示の空気供給路および空気孔104を介してリング導入部103に送り込むことが可能となる。空気孔104からは図20中の矢示A方向に向かって、すなわちリング導入部103側に空気が向かうように、空気が送り込まれる。この結果、リング導入部103の配置位置14に向かって空気が送り込まれることになる。また、リング収納部102およびリング導入部103の底面は手前側から奥側に向かって下方に傾斜している。このため、および空気孔104からリング導入部103内に送り込まれた空気によって、リング収納部102に収納されているドリル位置決め用リング4をリング導入部103内に導入させ、配置位置14まで導くことが可能となる。
【0057】
また、配置位置14の両側には、ドリル位置決め用リング4が配置位置14に存在するか否かを検知するためのセンサとなる検知センサ105が配設されている。なお、検知センサ105としては、たとえば、フォトダイオード等を用いた光センサを採用することができる。また、配置位置14の両壁面には検知センサ105からの光を透過させるための透過孔106が設けられている。このため、配置位置14に、ドリル位置決め用リング4が存在するか否かを検知することが可能となる。
【0058】
図20に示すように、上板101はボックス部100の奥側を除いた部分を覆うように配置されている。また、上板101にはリング収納部102に対応する形状の窓部107が設けられている。このため、窓部107を介してリング収納部102にドリル位置決め用リング4を多数配置することができる。また、上板101は透明な部材によって形成されているため、リング導入部103内に導入されたリング用位置決め部材4を目視することができる。また、上板101は、リング導入部103のうち配置位置14を除いた部分を覆っているため、リング導入部103内に導入されたドリル位置決め用リング4がリング導入部103から外側に飛び出すのを防止できる。配置位置14に配置されたドリル位置決め用リング4の中心軸線は、ドリル設置部8に設置されたドリル2の中心軸線と同軸上にある。このため、ドリル位置決め用リング4が配置位置14に設置された状態で、移動ユニット20を下方へ移動させると、ドリル2のホルダ部3がドリル位置決め用リング4の中央の円孔4aに圧入される。
【0059】
図6に示すように、立設部6の内側の収納空間49には、電源110と、圧力の調節を行うレギュレータ111と、空気の供給の主な制御を行う空気制御装置112と、ドリル支持部12への空気の供給方向を切り替えるための切替スイッチ113と、作動中の音を消音するためのサイレンサー114と、ドリル支持部12への空気の供給に関する制御を行う切替制御装置115を、主に、有する。また、固定平板50における収納空間49内に突出する部分と切替スイッチ113との間には上目隠し板116が配設されている。ここで、移動ユニット20が下方に向かって移動すると、下目隠し板29も下方に向かって移動し、収納空間49内に入り込む。これに伴い、上目隠し板116が移動ユニット20と共に下方に向かってスライドする。このため、移動ユニット20の位置よりも上方部分における内壁19の切欠部19aが下目隠し板116によって塞がれる。また、立設部6の奥側には、空気を挿着装置1の内部へ供給するか否かのON/OFF動作を行う空気供給スイッチ117が設けられている。
【0060】
図21は、駆動機構9およびリング配置部13に空気の供給を行うための構成を説明するための概略図であり、挿着装置1の奥側から収納空間49の内部を見た図である。
【0061】
図21に示すように、空気を挿着装置1内に供給するための空気供給装置120が挿着装置1の外部に配置されている。そして、空気供給装置120と立設部6の奥側に配置されている空気供給スイッチ117とが空気供給チューブ121によって接続されている。これにより、空気供給スイッチ117がONの状態で空気供給装置120から空気供給チューブ121に空気が圧送されると、該空気は挿着装置1の内部に供給される。また、電源110は収納空間49内の右下方(図21では左下)に配置され、外部の交流電源と接続されている。さらに、レギュレータ111と、空気供給スイッチ117とは空気供給チューブ122を介して接続されている。また、レギュレータ111には空気供給チューブ123の一端が接続されており、その他端は収納空間49内の左方(図21では右方)に配置され、三方に分岐する分岐管124の一端に接続されている。さらに、分岐管124の他端には空気供給チューブ125の一端が接続され、その他端は、空気制御装置112を構成する空気導入部136に設けられているL字管127に接続されている。分岐管124は空気供給チューブ128を介して、収納空間49内の右方に配置される分岐管130に接続されている。
【0062】
このような構成により、空気供給装置120から空気供給チューブ121に圧送された空気は、空気供給スイッチ117のON動作により、空気供給チューブ122を介してレギュレータ111に供給される。レギュレータ111では供給された空気の圧力が、たとえば、0.6MPaに調節される。また、レギュレータ111に下方には、空気中内の水分を分離して貯留するためのフィルタ131が設けられている。レギュレータ111で圧力調節された空気は分岐管124で分岐して、空気導入部136と、分岐管130に導入される。具体的には、分岐管124の他端から圧送される空気は空気供給チューブ125およびL字管127を介して空気制御装置112の空気導入部136に供給される。一方、分岐管124の上端から圧送される空気は、空気供給チューブ128を介して、分岐管130内に導入される。
【0063】
空気制御装置112は、空気の供給方向や供給量の制御を行う制御部132と、ガイド付シリンダ21のシリンダ部24との間で空気の供受給を行うガイド供給部133と、シリンダ54との間で空気の供受給を行うシリンダ供給部134と、リング配置部13に向けて空気を圧送するリング供給部135と、L字管127から供給された空気を、ガイド供給部133、シリンダ供給部134およびリング供給部135に導入する空気導入部136とを有する。制御部132はCPU(Central Processing Unit)などからなる電子回路にて構成されている。空気導入部136の下端には、上述したように、消音の機能を果たすサイレンサー114が設けられている。
【0064】
ガイド供給部133の下端部の手前側と奥側には、前側接続管133aと奥側接続管133bとが設けられている。また、シリンダ供給部134の下端部の手前側と奥側にも、前側接続管134aと奥側接続管134bとが設けられている。リング供給部135の下端部には接続管135aが設けられている。ガイド供給部133の前側接続管133aは不図示のチューブを介して、ガイド付シリンダ21のシリンダ部24に設けられる上接続管30に接続されている。また、ガイド供給部133の奥側接続管133bは不図示のチューブを介して、シリンダ部24に設けられる下接続管31に接続されている。シリンダ供給部134の前側接続管134aは不図示のチューブを介して、シリンダ54に設けられる奥接続管71に接続されている。また、シリンダ供給部134の奥側接続管134bは不図示のチューブを介して、シリンダ54に設けられる前接続管72に接続されている。リング供給部135に設けられている接続管135aは不図示のチューブを介してリング配置部13内の不図示の空気供給路に接続されている。
【0065】
このような構成により、制御部132の制御によりガイド供給部133の前側接続管133aから空気が圧送されると、該空気は上接続管30からシリンダ部24内に供給され、一方、シリンダ部24内の空気が下接続管31を介して奥側接続管133bに戻される。その結果、スライド部23が下方にスライドする。逆に、奥側接続管133bから空気が圧送されると、該空気は下接続管31からシリンダ部24内に供給され、一方、シリンダ部24内の空気が上接続管30を介して奥側接続管133bに戻される。その結果、スライド部23が上方にスライドする。
【0066】
また、制御部132の制御によりシリンダ供給部134の前側接続管134aから空気が圧送されると、該空気は奥接続管71からシリンダ54内に供給され、一方、シリンダ54内の空気が前接続管72を介して奥側接続管134bに戻される。その結果、シリンダ54のピストン部68が手前側に移動する。逆に、奥側接続管134bから空気が圧送されると、該空気が前接続管72からシリンダ54内に供給され、一方、シリンダ54内の空気が奥接続管71を介して奥側接続管134bに戻される。その結果、シリンダ54のピストン部68が奥側に移動する。
【0067】
また、制御部132の制御により、リング供給部135の接続管135aから空気が圧送されると、リング配置部13内の不図示の空気供給路に該空気が導入される。そして、該空気が不図示の空気供給路を通って空気孔104からリング導入部103内に供給される。その結果、リング収納部102に収納されているドリル位置決め用リング4を配置位置14に導くことが可能となる。
【0068】
ここで、分岐管130の一端には、空気供給チューブ140の一端が接続され、空気供給チューブ140の他端は切替制御装置115の上端115aに接続されている。また、分岐管130の他端には、空気供給チューブ141の一端が接続され、空気供給チューブ141の他端は切替スイッチ113の左端113aに接続されている。また、切替スイッチ113の右端113bと、切替制御装置115の右下端部に設けられるL字管115bとは、空気供給チューブ142を介して接続されている。また、切替制御装置115の中央下端部に設けられる中央接続管115cは、空気供給チューブ143を介してドリル支持部12のシリンダ部85の奥接続管90に接続されている。さらに、切替制御装置115の左下端部に設けられる左接続管115dは、空気供給チューブ144を介してドリル支持部12のシリンダ部85の前接続管91に接続されている。
【0069】
切替スイッチ113には上目隠し板116の押圧および解放によって、ON/OFFされるスイッチ部113cが設けられている。そして、上目隠し板116が上限に位置してスイッチ部113cを押圧している状態では、切替スイッチ113に供給されてくる空気は、右端113bから空気供給チューブ142を介して切替制御装置115内に供給される。一方、上目隠し板116が下方に移動し、スイッチ部113cが押圧されていない状態では、切替スイッチ113に供給されてくる空気は、右端113bから空気供給チューブ142内に圧送されない。なお、分岐管130の一端からは、挿着装置1の内部に空気が供給される限り、切替制御装置115の上端115aを介して切替制御装置115内に空気が供給される。切替制御装置115は、空気供給チューブ142を介してL字管115bからその内部に供給される空気を利用して空気の供給方向の切替制御を行っている。すなわち、中央接続管115cからの供給と、左接続管115dからの供給の切替を行っている。
【0070】
具体的には、空気供給チューブ142を介してL字管115bから切替制御装置115の内部に空気が供給される場合、空気供給チューブ140を介してその上端115aから切替制御装置115内に供給される空気は、中央接続管115cと空気供給チューブ143を介してシリンダ部85の前接続管91に供給され、一方、シリンダ部85内の空気は奥接続管90から空気供給チューブ144を介して切替制御装置115に戻される。その結果、当接部84は前方に移動する。一方、L字管115bに空気が供給されない場合、空気供給チューブ140を介してその上端115aから切替制御装置115に供給される空気は、左接続管115dと空気供給チューブ144を介してシリンダ部85の前接続管91に供給され、一方、シリンダ部85内の空気は奥接続管90から空気供給チューブ143を介して切替制御装置115に戻される。その結果、当接部84は奥側に後退する。すなわち、移動ユニット20が下方に移動し、それに伴い上目隠し板116も下方に移動すると、当接部84は奥側に後退することとなる。
【0071】
次に、挿着装置1を用いてドリル2にドリル位置決め用リング4を挿着させる動作について説明する。
【0072】
まず、電源スイッチ95をONにして電源110に電力を供給する。電源スイッチ95をONにした状態では、図1、図4および図5等に示すように、初期状態が維持されている。電源スイッチ95がONになると、空気供給スイッチ117がONに切り替わり、空気供給装置120から空気が圧送される。この圧送された空気は、空気供給チューブ121,122を介してレギュレータ111に供給される。一方、初期状態では、ドリル支持部12は手前側に位置している。このため、ドリル2のホルダ部3をドリル支持部12に当接させながら、ドリル2をドリル設置部に8に設置させる。具体的には、ホルダ部3を当接部84の当接溝92に当接させながら、刃部11の端部をドリル設置部8の先端に吸着させるすなわち、ドリル支持部12の当接部84とドリル設置部8内の永久磁石の磁気吸引力を利用してドリル2が設置位置に設置される。また、リング配置部13のリング収納部102に複数のドリル位置決め用リング4を配置させる。
【0073】
レギュレータ111に供給された空気は、該レギュレータ111において0.6MPaの圧力に調節される。また、空気中内の水分が分離されてフィルタ131に貯留される。レギュレータ111において圧力調節が行われた空気は、空気供給チューブ123を通過し、分岐管124で分岐され、さらに、空気供給チューブ125およびL字管127を介して空気制御装置112に供給される。空気制御装置112に空気が供給されるとサイレンサー114が作動して、空気制御装置112にて発生する音の消音がなされる。さらに、空気供給チューブ123を通過した空気は、分岐管124で分岐され、空気供給チューブ128を介して分岐管130にも導入される。そして、分岐管130で一端側に分岐した空気は空気供給チューブ140を介して切替制御装置115にその上端115aから供給される。一方、分岐管130で他端側に分岐した空気は切替スイッチ113内に供給される。図1、図4および図5等の初期状態では上目隠し板116がスイッチ部113cを押圧しているため、右端113bからは空気が送出されない。
【0074】
L字管127を介して空気制御装置112に供給された空気は、空気導入部136に導入され、制御部132の制御により、ガイド供給部133、シリンダ供給部134およびリング供給部135に供給される。ガイド供給部133に供給された空気は、奥側接続管133bから圧送され、下接続管31からガイド付シリンダ21のシリンダ部24内に供給され続ける。そして、シリンダ部24内の空気が上接続管30を介して前側接続管133aに戻される。このため、初期状態では、図4に示すように、スライド部23は上限位置に位置し、移動ユニット20は上限位置に維持される。
【0075】
一方、シリンダ供給部134に供給された空気は、奥側接続管134bから圧送され、前接続管72からシリンダ54内に供給され続ける。そして、シリンダ54内の空気が奥接続管71を介して奥側接続管134bに戻される。このため、シリンダ54のピストン部68は奥側に位置し続ける。したがって、図8から図9等に示すように、クランプ移動体52は奥側の位置に維持され、カムフォロワ66がテーパ面77における奥側の部分に接触した状態を維持する。このため、初期状態では、クランプ部材15は付勢バネ80の付勢力によって所定の間隔だけ離間した状態(開状態)を維持する。
【0076】
他方、上述したように、初期状態では、切替スイッチ113の右端113bからは空気が送出されないため、切替制御装置115内にはL字管115bを介して空気は供給されない。このため、切替制御装置115の中央接続管115cから送出された空気は、空気供給チューブ143を介して奥接続管90からシリンダ部85内に供給され続ける。一方、ドリル支持部12のシリンダ部85内の空気は、前接続管91から空気供給チューブ144を介して左接続管115dから切替制御装置115に戻される。このため、初期状態では、当接部84は手前側の位置に維持される。この状態では、ドリル支持部12の当接板93が突出軸87に当接している(図9参照)。
【0077】
また、リング供給部135に空気が供給されると、接続管135aからリング配置部13内に該空気が供給される。リング配置部13に供給された空気は、不図示の空気供給路に導入され、該空気供給路を通って空気孔104からリング導入部103内に供給される。該空気は、図20の矢示A方向に向かって供給されるため、リング収納部102に収納されているドリル位置決め用リング4は配置位置14に導かれる。ドリル位置決め用リング4が配置位置14に配置されると、該ドリル位置決め用リング4は検知センサ105によって検知される。すると、リング供給部135からリング配置部13内への空気の供給が停止する。
【0078】
次に、クランプスイッチ39を押して、図2、図11〜図15に示すように、ドリル2をクランプ部材15によってクランプさせる。具体的には、クランプスイッチ39を押すと、制御部132の制御により、シリンダ供給部134の前側接続管134aから空気が圧送され、該空気が奥接続管71からシリンダ54内に供給され続ける。一方、シリンダ54内の空気は前接続管72を介して奥側接続管134bに戻される。その結果、シリンダ54のピストン部68が手前側に移動し始め、それに伴い、クランプ移動体52も手前側に移動し始める。
【0079】
クランプ移動体52が、手前側に向かって前進すると、カムフォロワ66はテーパ面77と摺動しながら手前側に移動する。その結果、クランプ部材15は付勢バネ80の付勢力に抗して内側に押しやられていく。さらに、クランプ移動体52が前進し、カムフォロワ66が前側面76bと接触する位置までくると、図13から図15に示すように、クランプ部材15は、完全に閉じ状態になり、ドリル2がクランプ部材15によってクランプされる。
【0080】
さらに、クランプスイッチ39を押すと、制御部132の制御により、ガイド供給部133の前側接続管133aから空気が圧送され、該空気が上接続管30からシリンダ部24内に供給され続ける。一方、シリンダ部24内の空気は下接続管31を介して奥側接続管133bに戻される。その結果、スライド部23が下方にスライドし始める。このスライド部23の下方へのスライドに伴い、移動ユニット20が下方に向かって移動していく。この際、ドリル2はドリル設置部8から離間し、移動ユニット20と共に下方に移動する。
【0081】
一方、移動ユニット20が下方に移動すると、上目隠し板116も伴に下方に移動する。そのため、スイッチ部113cは上目隠し板116の押圧から解放される。すると、空気供給チューブ142を介して切替スイッチ113の右端113bから切替制御装置115に空気が供給される。このため、切替制御装置115の左接続管115dから空気が送出され、該空気は空気供給チューブ144を介して前接続管91からシリンダ部85内に供給され続ける。一方、ドリル支持部12のシリンダ部85内の空気は、奥接続管90から空気供給チューブ143を介して中央接続管115cから切替制御装置115に戻される。このため、ドリル支持部12の当接部84は奥側に移動し始める。当接部84は立設部94aがシリンダ部85の前面85aに当接するまで奥側に移動する(図19参照)。
【0082】
このように、ドリル支持部12が奥側に移動することで、移動ユニット20がリング配置部13に当接することなく、下限位置まで移動することか可能となる。移動ユニット20が下限位置まで移動すると、ドリル位置決め用リング4の中央の円孔4aにドリル2の円柱状のホルダ部3が圧入される(図17参照)。すなわち、ドリル2の外周にドリル位置決め用リング4が挿着される。
【0083】
さらに、クランプスイッチ39を押すと、制御部132の制御により、ガイド供給部133の奥側接続管133bから空気が圧送され、該空気が下接続管31からシリンダ部24内に供給され続ける。一方、シリンダ部24内の空気は上接続管30を介して前側接続管133aに戻される。その結果、スライド部23が上方にスライドし、当該スライド部23のスライドに伴い、移動ユニット20が上方に向かって移動していく。ドリル2はクランプ部材15によってクランプされた状態を維持しているため、ドリル2も移動ユニット20とともに上方に移動する。移動ユニット20が上限位置まで移動すると、ドリル2の刃部11の上端がドリル設置部8に吸着される。すなわち、ドリル位置決め用リング4が挿着されたドリル2がクランプ部材15によってクランプされた状態で、設置部8に設置された状態となる。
【0084】
さらに、クランプスイッチ39を押すと、制御部132の制御により、シリンダ供給部134の奥側接続管134bから空気が圧送され、該空気が前接続管72からシリンダ54内に供給され続ける。一方、シリンダ54内の空気は、奥接続管71を介して前側接続管134aに戻される。このため、シリンダ54のピストン部68は奥側に移動し始める。したがって、クランプ移動体52も奥側に向かって移動し、カムフォロワ66が前側面76bからテーパ面77における奥側の部分まで摺動する。このため、クランプ部材15は付勢バネ80の付勢力によって所定の間隔だけ離間した(開いた)状態となる。すなわち、ドリル位置決め用リング4が挿着されたドリル2が、クランプ部材15によってクランプされていない状態でドリル設置部8に設置された状態となる。
【0085】
以上のように構成された挿着装置1では、ドリル2をホルダ部3側からドリル位置決め用リング4に圧入することができる。このため、ドリル2の刃部11はドリル位置決め用リング4に接触することがなくなり、ドリル2の刃部11にチッピングが発生してしまい、不良品が生産されるという不具合を防止できる。また、ドリル2はホルダ部3側からドリル位置決め用リング4に圧入されるため、刃部11がホルダ部3よりも大きな径を有するドリルにも容易にドリル位置決め用リング4を挿着することができる。
【0086】
また、挿着装置1では、ドリル2をクランプ部材15によって横方向からクランプしているため、ドリル2の中心軸線がドリル位置決め用リング4の中心軸線と一致した状態でドリル2を確実に保持することが可能となる。また、挿着装置1では、一対のクランプ部材15,15の両外側面76に形成されるテーパ面77にカムフォロワ66を摺動させることで、該クランプ部材15,15に対して外側から力を加えてドリル2をクランプする構成としている。このため、カムフォロワ66が固定されているクランプ移動体52を手前側に向かって移動させるといった単純な動作でドリル2を移動ユニット20に対して強固に保持することが可能となる。
【0087】
また、クランプ部材15を連結する連結シャフト78の外周には付勢バネ80が取り付けられている。このため、クランプ移動体52を奥側に移動させ、クランプ部材15をカムフォロワ66の押圧から解放した状態にすると、付勢バネ80の付勢力によってクランプ部材15が外方に移動する。このため、付勢バネ80の付勢力を利用してクランプ部材15を開状態とすることが可能となる。
【0088】
また、挿着装置1では、ドリル設置部8の内部には永久磁石が配設されている。このため、永久磁石の磁気吸引力を利用して、刃部11の先端をドリル設置部8の下端面に吸着させることが可能となる。したがって、ドリル2の側方に保持部材を配置することなく、簡易な構成でドリル2を刃部11が上方を向く状態で位置保持できる。
【0089】
また、挿着装置1では、リング配置部13は奥側に向かって下方に傾くように配置されると共に、リング導入部103の両壁面に設けられる空気孔104からリング導入部103内に空気が供給されるような構成となっている。このため、リング収納部102に配置されるドリル位置決め用リング4を配置位置14まで容易に導くことが可能となる。
【0090】
また、挿着装置1では、配置位置14の両側方には、ドリル位置決め用リング4の存在を検知するための検知センサ105が配設されている。このため、ドリル位置決め用リング4が配置位置14に配置されているか否かを知ることができる。
【0091】
また、挿着装置1では、クランプ部材15の下方に、ドリル支持部12が設けられている。このため、ドリル設置部8に設置されたドリル2を奥側から支持することが可能となる。また、ドリル支持部12の当接部84は永久磁石から形成されているため、ドリル2のホルダ部3を該当接部84に吸着させて、奥側から支持することが可能となる。また、当接部84には当接溝92が形成されているため、ドリル2のホルダ部3を当接溝92に当接させることでより正確な位置にて、ドリル2を保持することが可能となる。
【0092】
また、挿着装置1では、ドリル設置部8の上部にはマイクロメータ22が設けられており、該マイクロメータ22の調節部35aを周方向に回動させることにより、ドリル設置部8の位置を調節することができる。このため、容易にドリル2の設置位置の位置決めを行うことが可能となる。
【0093】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は上述の形態に限定されることなく、種々変形した形態にて実施可能である。
【0094】
上述の実施の形態では、クランプ部材15のテーパ面77にカムフォロワ66を摺動させることによって、クランプ部材15を内側に向かって押さえつけて、ドリル2を移動ユニット20の中央に保持する構成となっているが、保持する構成は、当該構成に限定されるのもではなく、たとえば、クランプ部材15の両側にシリンダを設け、該シリンダのピストンの往復運動を利用してドリル2を移動ユニット20の中央に保持するようにしても良い。
【0095】
また、上述の実施の形態では、ドリル設置部8の内部に永久磁石を配設し、該永久磁石の磁気吸引力を利用して、ドリル2をドリル設置部8に保持させているが、ドリル設置部8はこのような構成に限定されるのもではなく、例えば、ドリル2の刃部11の先端部をドリル設置部8の下端に係合させることで、ドリル2をドリル設置部8に保持する構成としても良い。
【0096】
また、上述の実施の形態では、クランプ部材15によってドリル2をクランプする動作、移動ユニット20を下方に移動させる動作、移動ユニット20を下限位置から上方に移動させる動作およびクランプ部材15を開状態にさせる動作の各動作を行う毎に、クランプスイッチ39を押すような構成とされているが、最初のドリル2をクランプする動作の際に、クランプスイッチ39を押せば、上述の一連の動作が自動的に行われるような構成としても良い。
【0097】
また、上述の実施の形態では、リング配置部13におけるリング導入部103の側方から空気を供給するような構成としたが、このような構成に限定されるものではなく、リング収納部102の外周部から内側に向かって空気を供給するようにしても良いし、リング導入部103およびリング収納部102の双方に空気を供給するような構成としても良い。
【0098】
また、上述の実施の形態では、付勢部材として付勢バネ80が採用されているが、付勢部材としては、ゴムなどバネ部材以外の他の弾性部材を採用しても良い。
【0099】
また、上述の実施の形態では、ドリル設置部8に設置されたドリル2をその下方に配置されたドリル位置決め用リング4に向かって上方から圧入させる構成とされているが、圧入の動作はこのような構成に限定されるものではなく、たとえば、ドリル位置決め用リング4をドリル2の上方に配置し、ドリル2をドリル位置決め用リング4の下方から圧入するような構成としても良いし、ドリル位置決め用リング4をドリル2の左方に配置し、ドリル2をドリル位置決め用リング4の右方から圧入するような構成としても良い。また、ドリル位置決め用リング4をドリル2の中軸線と一致しない下方の位置に配置し、ドリル2を横方向に移動させた後、ドリル位置決め用リング4に向かって上方から圧入させる構成としても良い。
【0100】
また、上述の実施の形態では、ドリル位置決め用リング4をリング収納部102から配置位置14まで、供給される空気を利用して自動的に移動させているが、このような構成に限定されず、ドリル位置決め用リング4を配置位置14に手動で配置するような構成としても良い。また、ドリル位置決め用リング4をドリル2に挿着させているが、たとえば、切削刃等のドリル以外の工作刃にドリル位置決め用リング4を挿着させても良い。また、ドリル位置決め用リング4の外形は円形形状を呈しているが、当該外形形状を六角形等の他の形状としても良い。また、ドリル2の外周およびドリル位置決め用リング4の孔の形状は、それぞれ円形状に形成されているが、当該形状に限定されず、たとえば、それぞれの形状を楕円や六角形等の他の形状としても良い。
【符号の説明】
【0101】
1…ドリル位置決め用リングの挿着装置
2…ドリル
3…ホルダ部
4…ドリル位置決め用リング
8…ドリル設置部
11…刃部
13…リング配置部
14…配置位置
15…クランプ部材
20…移動ユニット
52…クランプ移動体
66…カムフォロワ
76…外側面(外側の側面)
77…テーパ面
80…付勢バネ(付勢部材)
84…当接部
92…当接溝
102…リング収納部(収納部)
103…リング導入部(導入部)
105…検知センサ(センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリルを機器に取り付ける際に使用するドリル位置決め用リングを、上記ドリルに挿着させるドリル位置決め用リングの挿着装置において、
上記ドリルを設置位置に設置させるドリル設置部と、
上記ドリル位置決め用リングを配置させるリング配置部と、
上記ドリル設置部に設置された上記ドリルを保持し、該ドリルを上記ドリル設置部から離間させて、上記リング配置部に配置された上記ドリル位置決め用リングに向かって該ドリルを相対移動させる移動ユニットと、
を備え、
上記ドリルは、刃部と、機器に取り付けられる部分となるホルダ部と、を有し、上記ドリルは、上記ホルダ部が上記リング配置部と対向する側に位置するように、上記ドリル設置部に設置され、
上記移動ユニットは、上記ホルダ部を保持し、該移動ユニットが上記ドリル位置決め用リングに向かうように相対移動することで、上記ドリルが上記ホルダ部の側から上記ドリル位置決め用リングの内部に圧入されることを特徴とするドリル位置決め用リングの挿着装置。
【請求項2】
請求項1記載のドリル位置決め用リングの挿着装置において、
前記リング配置部は、前記ドリル位置決め用リングを、前記ドリル設置部に設置された前記ドリルと同一軸線上に配置させるための配置位置を有し、
前記移動ユニットは、前記ドリルを前記ホルダ部の横方向外方から挟み込んで保持し、
該移動ユニットが前記ドリルの軸方向に沿って移動することで、該ドリルが前記配置位置に配置される前記ドリル位置決め用リングの方向に移動することを特徴とするドリル位置決め用リングの挿着装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のドリル位置決め用リングの挿着装置において、前記ドリル設置部には永久磁石が配設されており、該永久磁石の磁気吸引力を利用して前記ドリルの刃部の先端部側を前記ドリル設置部に吸着させることを特徴とするドリル位置決め用リングの挿着装置。
【請求項4】
請求項2または3記載のドリル位置決め用リングの挿着装置において、前記移動ユニットは、前記ドリルの中心軸線に直交する方向に該ドリルを跨いで対向配置され、前記ドリルに対して接離可能な2つのクランプ部材を有し、該クランプ部材が前記ドリルの前記ホルダ部に接近して該ホルダ部を外側から狭持することによって、前記ドリルが前記移動ユニットに保持されることを特徴とするドリル位置決め用リングの挿着装置。
【請求項5】
請求項4記載のドリル位置決め用リングの挿着装置において、
前記各クランプ部材における前記ドリルの中心軸線を挟んだ外側の側面には、奥側から手前側に向かって徐々に横方向の幅が広くなるようなテーパ状のテーパ面が形成されており、
前記移動ユニットは、さらに、
前記両クランプ部材を、前記ドリルから離間する方向に付勢する付勢部材と、
前記両クランプ部材の両側方に一定の間隔を有して対向配置され、上記テーパ面と摺接しながら手前奥方向に向かって直線的に移動する2つのカムフォロワと、
を備え、
上記カムフォロワが手前側に移動すると、上記テーパ面が該カムフォロワによって内側に押圧され、前記両クランプ部材が上記付勢部材の付勢力に抗して前記ドリルに接近する方向に移動し、上記カムフォロワが奥側に移動すると、上記テーパ面が該カムフォロワからの押圧から解放され、前記両クランプ部材が上記付勢部材の付勢力によって前記ドリルから離間する方向に移動することを特徴とするドリル位置決め用リングの挿着装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項記載のドリル位置決め用リングの挿着装置において、
前記リング配置部は、手前側から奥側に向かって下方に傾斜するように配置されており、
上方に向かって幅広の形態で開口し、前記ドリル位置決め用リングを複数収納可能な収納部と、
該収納部から奥側に向かって細長状に切り欠かれた導入部と、
を備え、
上記収納部および上記導入部のいずれか一方もしくは双方の壁面から内側に向かって空気を供給することにより、前記ドリル位置決め用リングを上記導入部の先端部となる配置位置まで移動させることを特徴とするドリル位置決め用リングの挿着装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項記載のドリル位置決め用リングの挿着装置において、前記移動ユニットの下端部には、前記ドリル設置部に設置された前記ドリルの中心軸線方向に沿って凹状に切り欠かれた当接溝を有し、かつ永久磁石から形成される当接部が配設され、該当接部は、前記ドリル設置部に設置された前記ドリルを永久磁石の磁気吸引力によって上記当接溝に当接させて支持することを特徴とするドリル位置決め用リングの挿着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−253662(P2010−253662A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109990(P2009−109990)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(509122441)有限会社モモセ治工具 (1)
【Fターム(参考)】