説明

ナットランナ装置及びプログラマブル表示器ユニット

【課題】ナットランナ装置のコストの低減及び作業効率の向上を、簡単な構成で実現する。
【解決手段】PLC用プログラマブル表示器41とNRコントローラ20とを相互通信可能に接続する通信器42を設けた。これにより、NRコントローラ20及びPLC30に関するデータを1台のプログラマブル表示器41で表示することができるため、コストの低減及び作業効率の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナットランナ装置及びこれに用いられるプログラマブル表示器ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、ナットランナと、ナットランナの回転を制御するナットランナコントローラ(以下、NRコントローラ)と、NRコントローラに指令を与えるラインコントローラと、NRコントローラに接続された表示器とを有するナットランナ装置が示されている。NRコントローラから出力されたデータは表示器の画面上に表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−90362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなナットランナ装置のラインコントローラとして、例えばPLC(プログラマブルロジックコントローラ)が使用されることがある。このPLCにプログラマブル表示器(例えばタッチパネル式表示器)を接続すれば、画面に表示される情報を見ながら表示器上でPLCの設定変更等を行うことができる。このようなナットランナ装置の一例を図4に示す。このナットランナ装置は、ナットランナ110と、NRコントローラ120と、NRコントローラ120に指令を与えるPLC130と、NR用表示器141と、PLC用プログラマブル表示器142とを有する。NR用表示器141は、ナットランナ110に関する情報(例えば回転数や回転トルク、締付の良否結果等)を表示するものである。また、PLC用プログラマブル表示器142は、PLC130と相互通信可能に接続され、PLC30に関する情報を表示する。作業者は、NR用表示器141及びPLC用プログラマブル表示器142の画面の表示を見ながら、ナットランナ110やPLC130の設定変更等を行う。このように2台の表示器141,142を用いると、装置が複雑になってコストアップを招くだけでなく、ユーザは別々に配置された2台の表示器141,142を確認しながら作業しなくてはならないため作業効率も悪い。
【0005】
例えば、NR用表示器141及びPLC用プログラマブル表示器142の一方に、他方の表示器の機能を持たせれば、一台の表示器でNRコントローラ120及びPLC130に関する情報を表示することができる。すなわち、(1)NR用表示器141にPLC130との相互通信機能を持たせるか、(2)PLC用プログラマブル表示器142にNRコントローラ120との相互通信機能を持たせれば良い。
【0006】
上記(1)の場合、NR用表示器141にプログラマブル表示器の機能を持たせる必要があるため、改良に要するコスト及び工数が膨大となる。
【0007】
一方、上記(2)の場合、PLC用プログラマブル表示器142に、NRコントローラ120との相互通信を可能にするアクセスプログラム(以下、NR通信用アクセスプログラム)を組み込めばよい。このとき、例えばPLC用表示器142のメモリにNR通信用アクセスプログラムを格納すると、ナットランナ装置の使用時にユーザがNR通信用アクセスプログラムを変更する恐れがあるため、好ましくない。また、PLC用表示器142のCPUにNR通信用アクセスプログラムを格納すれば、ユーザにより変更される恐れはないが、CPUにNR通信用アクセスプログラムを格納するためにはCPUのソフトウエアを変更する必要があるため容易ではなく、特に、市販の表示器を用いる場合はCPUのソフトウエアを変更ことは現実的に不可能である。
【0008】
本発明の解決すべき課題は、ナットランナ装置のコストの低減及び作業効率の向上を、簡単な構成で実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、ナットランナと、ナットランナの運転を制御するNRコントローラと、NRコントローラに指令を与えるPLCと、PLCと相互通信可能なPLC用プログラマブル表示器と、PLC用プログラマブル表示器をナットランナコントローラと相互通信可能に接続する通信器とを備えたナットランナ装置を提供する。
【0010】
このように、本発明のナットランナ装置では、PLC用プログラマブル表示器を、通信器を介してNRコントローラと相互通信可能に接続している。これにより、NRコントローラ及びPLCに関するデータを1台のプログラマブル表示器で表示することができるため、コストの低減及び作業効率の向上を図ることができる。また、PLC用プログラマブル表示器とNRコントローラとを相互通信可能とする機能(NR通信用アクセスプログラム)を通信器に格納することができるため、PLC用プログラマブル表示器のソフトウエアを変更する必要はなく、NRコントローラとの相互通信機能を簡単に搭載することができる。
【0011】
上記のようなナットランナ装置は、通信器に、ユーザアクセス可能エリアとユーザアクセス不可能エリアとを設けることができる。この場合、ユーザが自由にアクセスできる状態にしておくことが好ましい情報(例えばNRコントローラの目標トルク値等)をユーザアクセス可能エリアに格納すれば、組付現場でナットの締め付け状態を確認しながら目標トルク値を変更することができる。また、ユーザのアクセスを制限することが好ましい情報(例えば、NR通信用アクセスプログラムやナットランナのトルク設定プログラム等)をユーザアクセス不可能エリアに格納すれば、ユーザによってNR通信用アクセスプログラムが変更されてNRコントローラとの通信に不具合が生じたり、ユーザによってトルク設定プログラム等が変更されてナットランナの締め付け精度が低下する事態を防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明のナットランナ装置によれば、コストの低減及び作業効率の向上を、簡単な構成で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ナットランナ装置のブロック図である。
【図2】プログラマブル表示器ユニットのブロック図である。
【図3】ナットランナ装置の他の実施形態を示すブロック図である。
【図4】ナットランナ装置の参考例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
本願発明の一実施形態に係るナットランナ装置は、図1に示すように、ナットランナ10と、NRコントローラ20と、PLC30と、プログラマブル表示器ユニット40とを備える。
【0016】
ナットランナ10は、モータ11と、減速機12と、トルクセンサ13とを有し、モータ11及びトルクセンサ13がそれぞれケーブルを介してNRコントローラ20に接続される。ナットランナ10の運転時には、トルクセンサ13からナットランナ10へトルク信号がフィードバックされ、このトルク信号に基づいてモータ11の駆動力や駆動時間等が設定される。
【0017】
NRコントローラ20はPLC30により制御される。PLC30は、NRコントローラ20だけでなく他の機器も制御し、例えば、NRコントローラ20の昇降及び水平移動や、ワーク載置台(図示省略)の昇降を制御する。
【0018】
プログラマブル表示器ユニット40は、PLC用プログラマブル表示器41と、通信器42とを有する。PLC用プログラマブル表示器41は、PLC30と相互通信可能に接続され、例えば市販のプログラマブル表示器を使用することができる。通信器42は、PLC用プログラマブル表示器41とNRコントローラ20とを相互通信可能に接続するものである。PLC用プログラマブル表示器41とPLC30とは例えばイーサネットあるいはシリアル通信により接続され、PLC用プログラマブル表示器41とNRコントローラ20とは、通信器42を介して例えばシリアル通信により接続される。NRコントローラ20はPLC30からの指令に基づいてナットランナ10の運転を制御し、NRコントローラ20及びPLC30から出力された情報がPLC用プログラマブル表示器41に表示される。
【0019】
PLC用プログラマブル表示器41は、図2に示すように、本体部41aと表示部41bとを有する。本体部41aは、メモリやCPUが搭載され、PLC通信用アクセスプログラムを含むPLC30に関する情報が格納される。PLC通信用アクセスプログラムによりPLC用プログラマブル表示器41とPLC30とが相互通信可能とされる。通信器42は、メモリやCPUが搭載され、NR用アクセスプログラムを含むNRコントローラ20に関する情報が格納される。NR用アクセスプログラムにより、PLC用プログラマブル表示器41とNRコントローラとが相互通信可能とされる。以上により、プログラマブル表示器ユニット40は、NRコントローラ20及びPLC30の双方と相互通信可能とされる。
【0020】
表示部41bは、PLC用プログラマブル表示器41の本体部41aに接続され、NRコントローラ20及びPLC30に関する情報を表示する。表示部41bはタッチパネル式であり、表示部41bに表示されるNRコントローラ20及びPLC30の情報を見ながら、タッチパネル操作によりNRコントローラ20及びPLC30とデータ及び信号の相互のやりとりを行うことで、これらに関する設定変更を行うことができる。尚、表示部41bはタッチパネル式に限らず、表示画面と操作ボタンとを別々に設けた構成であってもよい。
【0021】
プログラマブル表示器ユニット40がNRコントローラ20と相互通信可能であることにより、具体的に以下のような機能を有する。尚、以下の機能は例示であって、これらに限定されるわけではない。
・ナットランナの締め付けデータの表示
・ナットランナの締め付け設定
・ナットランナに発生した異常履歴の記憶及び表示
・締め付けデータの履歴の記憶及び表示
・ナットランナの締め付け設定値のパックアップの記憶
・ナットランナのトルク及び角度チェック、I/Oチェック等のメンテナンス機能
【0022】
さらに、プログラマブル表示器ユニット40はPLC30と相互通信可能であるため、上記機能に加えてPLC30との間で相互のデータ及び信号のやりとりを行うことができる。これにより、PLC30に関するデータの表示やPLC30の制御あるいは設定変更をプログラマブル表示器ユニット40で行うことができる。ユーザはプログラマブル表示器ユニット40の表示部41bに表示されているデータや設定値を見ながら、タッチパネル操作でPLC30の制御や設定変更を行うことができるため、別途パソコン等の接続を要することなく容易に作業することができる。
【0023】
PLC用プログラマブル表示器41には、ユーザアクセス可能エリア41a1と、ユーザアクセス不可能エリア41a2とが設けられる。同様に、通信器42には、ユーザアクセス可能エリア42aと、ユーザアクセス不可能エリア42bとが設けられる。ユーザアクセス可能エリア41a1,42a及びユーザアクセス不可能エリア41a2,42bは、例えばメモリを複数の領域に分割し、ある領域をユーザにより自由にアクセスできる状態とし、他の領域にプロテクトをかけて管理者以外が閲覧あるいは編集できないようにすることにより設けることができる。あるいは、通常、CPUに格納された情報はユーザにより閲覧あるいは編集ができないため、CPUをユーザアクセス不可能エリア41a2,42bとみなすと共に、メモリをアクセスフリーとしてユーザアクセス可能エリア41a1,42aとみなすこともできる。
【0024】
ユーザアクセス可能エリア41a1,42aには、ユーザが自由にアクセスできることが好ましい情報が格納され、ユーザアクセス不可能エリア41a2,42bには、ユーザのアクセスを制限することが好ましい情報が格納される。例えば、NRコントローラ20に関する情報のうち、目標トルクや上下限判定値、動作プログラム、回転速度などは、通信器42のユーザアクセス可能エリア42aに格納してユーザによって自由に変更可能としておくことが望ましい。一方、表示部41bのタッチパネルで入力した目標トルクをトルク信号に演算してNRコントローラ20の設定を行うプログラムなどは、ユーザによって変更されるとナットランナの出力トルクと表示データとが合わなくなり、ナットランナの締め付け精度の低下を招く恐れがある。また、上記プログラムのような情報は、ナットランナの締め付け精度等を決定付ける重要な情報であるため、不正な複製を防止する必要がある。従って、上記プログラムのような情報は、通信器42のユーザアクセス不可能エリア42bに格納してユーザによるアクセスを制限することが望ましい。
【0025】
プログラマブル表示器ユニット40とNRコントローラ20とを相互通信可能にすると、表示部41bの画面上にはユーザアクセス可能エリア41a1,42aに格納された情報のみが示され、ユーザアクセス不可能エリア41a2,42bに格納された情報は画面に表示されない。このように、ユーザによってアクセスされたくない情報を、単にアクセスを制限するだけでなく表示部41bに表示されないようにすることで、ユーザによる係る情報の変更や不正な複製を確実に防止できる。
【0026】
また、表示部41bの画面は、プログラマブル表示器ユニット40の接続状態の切り替えと共に自動的に切り替わるようにすることもできる。例えば、通常は表示部41bの画面にPLC30に関する情報を表示し、ナットランナ10の締め付け完了と同時に表示部41bの画面が自動的に切り替わってNRコントローラ20に関する情報(例えばナットの締め付け状態の良否判定や締め付けトルク値など)を表示し、さらに、締め付けを終えたワークが搬送されると、表示部41bの画面が自動的に切り替わって再びPLC30に関する情報を表示するようにすることができる。尚、このように表示部41bの画面表示を自動的に切り替える他、表示部41bの画面表示を切り替える切り替えスイッチをプログラマブル表示器ユニット40に設けたり、あるいは、NRコントローラ20及びPLC30に関する情報を同時に表示部41bの画面に表示できるようにしてもよい。
【0027】
本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、図3に示す実施形態に係るナットランナ装置は、ナットランナ10及びNRコントローラ20が複数設けられ、各NRコントローラ20の上位ユニットとしてマルチコントローラ60が設けられる。マルチコントローラ60は、各NRコントローラ20と接続されると共にPLC30と接続され、PLC30からの指令に基づいて各NRコントローラ20及びナットランナ10を制御する。プログラマブル表示器ユニット40は、PLC用プログラマブル表示器41が、PLC30と相互通信可能に接続されると共に、通信器42を介してマルチコントローラ50と相互通信可能に接続され、PLC30及びNRコントローラ20から出力された情報を画面上に表示する。
【0028】
また、上記の実施形態では、ユーザアクセス不可能エリア41a2,42bに格納された情報を表示部41bに表示されないようにしているが、これを表示部41bに表示するようにしてもよい。この場合、例えばPLC用プログラマブル表示器41の画面表示ソフトを変更し、表示器41上に表示された情報のうち、ユーザアクセス不可能エリア41a2,42bに格納された情報を部分的にプロテクトし、タッチパネル操作ができないようにすることで、ユーザによる変更や不正な複製を防止することができる。
【符号の説明】
【0029】
10 ナットランナ
20 NRコントローラ
30 PLC
40 プログラマブル表示器ユニット
41 PLC用プログラマブル表示器
41a 本体部
41a1 ユーザアクセス可能エリア
41a2 ユーザアクセス不可能エリア
41b 表示部
42 通信器
42a ユーザアクセス可能エリア
42b ユーザアクセス不可能エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナットランナと、ナットランナの運転を制御するナットランナコントローラと、ナットランナコントローラに指令を与えるPLCと、PLCと相互通信可能なPLC用プログラマブル表示器と、PLC用プログラマブル表示器をナットランナコントローラと相互通信可能に接続する通信器とを備えたナットランナ装置。
【請求項2】
通信器に、ユーザアクセス可能エリアとユーザアクセス不可能エリアとを設けた請求項1記載のナットランナ装置。
【請求項3】
ユーザアクセス不可能エリアに、PLC用プログラマブル表示器をナットランナコントローラと相互通信可能にするためのナットランナ通信用アクセスプログラムを格納した請求項2記載のナットランナ装置。
【請求項4】
PLCと相互通信可能なPLC用プログラマブル表示器と、プログラマブル表示器をナットランナコントローラと相互通信可能に接続する通信器とを備えたプログラマブル表示器ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−143505(P2011−143505A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6067(P2010−6067)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(000177128)三洋機工株式会社 (35)