説明

ナノサイズの結晶粒を有する金属酸化物粒子の製造方法

【課題】結晶粒が極微細な粒子材料を製造するための方法を提供する。
【解決手段】(a)1以上の金属カチオンを含有する溶液を調製するステップ;(b)界面活性剤ミセルが前記溶液中で生成されて、その結果、ミセル液が生成され固体物の沈殿が妨げられるように、界面活性剤の量及び温度を主要な可変因子とする条件下で、ステップ(a)の溶液を界面活性剤と混合するステップ;および(c)ステップ(b)で生成されたミセル液を加熱して、金属酸化物を生成するステップであって、この加熱ステップは、界面活性剤を除去し、その結果、不規則な多孔性構造を有する金属酸化物粒子が生成される温度及び時間で行われるステップ;を含む、ナノサイズの結晶粒を有する金属酸化物粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶粒が極微細な粒子材料およびそうした結晶粒が極微細な粒子材料を製造するための方法に関する。好ましい態様において、本発明は、結晶粒が極微細な粒子材料の酸化物材料およびそうした材料を製造するための方法に関する。最も適切には、粒子材料は、ナノメートルスケールの粒度を有する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物は、広範な用途に用いられる。例えば、金属酸化物は、
・固体酸化物燃料電池(陽極、陰極、電解質および相互接続);
・触媒材料(自動車排出ガス、排気ガスコントロール、化学合成、石油精製、廃棄物管理);
・磁気材料;
・超伝導セラミックス;
・光電子材料;
・センサー(例えば、ガスセンサー、エンジンのための燃料制御);
・構造用セラミック(例えば、人工関節)
に用いることができる。
従来型の金属酸化物は、マイクロメートル値域内の粒度を典型的には有し、多くの場合、マイクロメートル値域より大きい粒径を有する粒子の形態で供給される。ナノメートルサイズの結晶粒から成る金属酸化物は、従来型の金属酸化物を超える重要な利点を有するであろうと考えられる。これらの利点には、より低い焼結温度、潜在的に非常に大きい表面積、および時として、改善されたまたは並外れた物理的特性が挙げられる。しかし、ナノメートルサイズの結晶粒を有する有用な金属酸化物材料を経済的に製造できるということが材料科学に対する大きな挑戦であることは、証明されている。こうした微細なスケールの金属酸化物、特に、
(a)正確な化学組成;
(b)異なる原子種の均一な分布;
(c)正確な結晶構造;および
(d)低コスト
を伴う多成分金属酸化物を製造することが難しいことは、証明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5698483号公報
【特許文献2】米国特許第5338834号公報
【特許文献3】米国特許第5093289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多くの重要な金属酸化物、特に、多成分金属酸化物は、極微細な結晶粒では未だ製造されたことがない。これは、酸化物中の異なる元素の数が増すにつれて、ナノメートルサイズの結晶粒に求められる超微細なスケールで異なる元素を均一に分散させることが益々難しくなるからである。本発明者らが行った文献調査は、非常に小さな粒度(20nm未満)が限られた数の金属酸化物についてしか達成されていないことを示した。微細な粒度を達成するために用いられる報告されている方法は、非常に高価であり、低収率であるとともに、規模を拡大することが難しいこともあり得る。製造されてきた、結晶粒が微細な材料の多くは、あまり大きな表面積を示さず、これは、粒の充填が劣ることを示している。
【0005】
この段階で、材料の粒子は、典型的には多数の結晶粒の凝集体であることがわかるであろう。各結晶粒は、他の結晶粒に接合した別個の結晶性領域と見なすことができる。結晶粒が他の粒界に隣接する粒界を有することもある。あるいは、その結晶粒とは異なる組成(例えば、金属、合金または非晶質材料)を有する領域によって包囲され、他の結晶粒と凝集している結晶粒もある。
【0006】
ナノ材料を合成するための先行技術において記載された方法には、気相合成法、ボールミリング法、共沈法、ゾルゲル法、およびマイクロエマルジョン法が挙げられる。これらの方法は、金属、合金、金属間化合物、酸化物および非酸化物などの異なる材料群に対して典型的に適用される。各々の簡単な論議を続ける:
【0007】
気相合成法
気相でのナノ粒子の合成については、幾つかの方法が存在する。そうしたものには、気体凝縮処理、化学的気相凝縮、マイクロ波プラズマ処理および燃焼フレーム合成(H.Hahn,「ナノ結晶材料の気相合成(Gas Phase Synthesis of Nanocrystalline Materials)」,Nano Structured Materials,Vol 9,pp 3−12,1997)が挙げられる。これらの方法では、出発原料(金属、合金または無機材料の適する前駆体)は、ジュール加熱耐火るつぼ、電子ビーム気化装置、スパッタリング源、ホットウォール反応器、その他などのエネルギー減を用いて気化される。次に、均一核形成によって、エネルギー源の付近の蒸気から、ナノサイズのクラスタが凝縮される。クラスタは、その後、メカニカルフィルタまたはコールドフィンガーを用いて回収される。これらの方法によって、生産速度における有意な達成として引き合いに出される数十グラム/時で、少量の非凝集材料が製造される。
【0008】
ボールミリング法
機械的摩砕またはボールミリングは、ナノ結晶材料を製造するために用いることができるもう一つの方法である(C.C.Koch,「メカニカルミリングによるナノ構造材料の合成:問題と可能性(Synthesis of Nanostructured Materials by Mechanical Milling: Problems and Opportunities)」,Nano Structured Materials,Vol 9,pp 13−22,1997)。前述の方法とは異なり、機械的摩砕は、クラスタの集合によってではなく、苛酷なプラスチック分解の結果としての、結晶粒がより粗い材料の構造分解によって、ナノ材料を生じる。最終生成物の質は、ミリングのエネルギー、時間および温度で決まる。直径数ナノメートルの粒度を達成するには、比較的長い処理時間(小さなバッチで数時間)が必要である。この方法のもう一つの主要な欠点は、ミリングされた材料が、ミリング媒体から深刻な汚染を受けやすいことである。
【0009】
共沈法
一部の特別なケースでは、反応条件および事後処理条件を注意深く制御すれば、沈殿または共沈によってナノ結晶材料を製造することができる(L.V.Interrante and M.J.Hampden−Smith,Chemistry of Advanced Materials − An Overview,Wiley−VCH(1998))。沈殿反応は、工業規模で無機材料を製造するために用いられる最も一般的で効率的なタイプの化学反応の中の一つである。沈殿反応では、一般的に、二つの均質溶液を混合し、その結果として不溶物(固体)が生成される。従来的には、一つの溶液を第二の溶液のタンクに注入して沈殿を誘導するが、二つの溶液を同時に注入することも可能である。生成される固体(沈殿と呼ばれる)は、濾過などの方法によって回収することができる。
【0010】
その後、この前駆物質は、最終段階の純粋な材料を得るために焼成しなければならない。これには、例えば部分融解などの処理中の種の分離を誘導する現象を回避することが特に必要である。安定な中間体の生成も、そうした場合、最終ステップの純粋な材料への変換がほぼ不可能になるので、回避しなければならない。単一の酸化物の表面積についての典型的な結果は、数十m/gでありうる。しかし、多カチオン化合物については、10m/g未満の値がより一般的になる。
【0011】
ゾル−ゲル合成
ゾル−ゲル合成も沈殿をベースにした方法である。前駆体を先ず加水分解し、その後、これらの加水分解した前駆体を重合させて粒子または三次元網目構造にすることを含む「加水分解−縮合反応」によって、粒子またはゲルが生成される。加水分解−縮合反応を制御することによって、非常に均一なサイズ分布を有する粒子を沈殿させることができる。ゾル−ゲル法の短所は、前駆体が高価であること、加水分解−縮合反応の注意深い制御が必要であること、および反応が遅いこともあることである。
【0012】
マイクロエマルジョン法
マイクロエマルジョン法は、無機反応を油中に存在するナノメートルサイズの水性領域に制限することによって、ナノメートルサイズの粒子を生じる。油中水型マイクロエマルジョンまたは逆マイクロエマルジョンと呼ばれるこれらの領域は、一定の界面活性剤/水/油の組合せを利用して生じさせることができる。
【0013】
ナノメートルサイズの粒子は、二つの異なる逆マイクロエマルジョン(例えば、(a)および(b))を調製することによって製造することができる。各マイクロエマルジョンは、水性領域に溶解した特定の反応体を有する。これらの逆マイクロエマルジョンを混合し、(a)中の水性領域が(b)中の水性領域に衝突すると、粒子を生成する反応が起こる。反応容積が小さいので、得られる粒子も小さい。一部のマイクロエマルジョン技術は、「マイクロエマルジョン中でのナノ粒子およびポリマーの合成(Nanoparticle and Polymer Synthesis in Microemulsion)」,J.Eastoe and B.Warne,Current Opinion in Colloid and Interface Science,vol.1(1996),p800−805、および「ナノスケールの磁性粒子:合成、構造および動力学(Nanoscale Magnetic Particles: Synthesis,Structure and Dynamics)」,同書,vol.1(1996),p806−819に概説されている。
【0014】
この技術にともなう大きな問題は、収率(生成物の重量/溶液の重量)が低いことである。大部分のマイクロエマルジョン系は、〜20容積%未満の水性領域を含み、このことが、水性相反応からの収率を、〜5分の1に低下させる。多くの水性相反応は、それ自体、すでに低収率であり、従って、さらに重大な収率低下は、非常に望ましくない。この方法では、油からの粒子の除去も必要である。これは、界面活性剤によって包囲されているナノサイズの粒子には非常に難しいことでありうる。これらの粒子は、溶液に懸濁したままであることもあり、サイズが小さいため濾過が非常に難しいからである。粒子を分離したら、残留する油と界面活性剤をさらに除去する必要がある。もう一つの深刻な短所は、反応時間がかなり長いことがあることである。これらの態様が併わさって、あらゆる工業生産施設のサイズ、複雑さおよびコストを大幅に増大させることとなる。
【0015】
界面活性剤の使用
近年、「界面活性剤の鋳型」を用いて大きな表面積の金属酸化物を製造する研究および開発が少なからず行われている。界面活性剤は、有機(炭素ベースの)分子である。前記分子は、親水性(すなわち、水に対して親和性を有する)部分と疎水性(すなわち、水に対して親和性を有さない)部分を有する。
界面活性剤は、界面活性剤のタイプ、界面活性剤の濃度、温度、イオン種などに依存して、水溶液(および他の溶液)中で様々な構造を形成することができる。最も単純な配列は、溶液に分散された個々の界面活性剤分子である。これは、典型的には、非常に低い濃度の界面活性剤について発生する。より高濃度の界面活性剤については、界面活性剤が合体して、「ミセル」を生成することができる。ミセルは、球形または円筒形でありうる。ミセルの直径は、界面活性剤の鎖長により主として制御され、〜20Åと〜300Åの間の範囲でありうる。
【0016】
もっと高濃度の界面活性剤は、「液晶」と呼ばれるより規則的に配列された構造を生じる。液晶は、溶媒、通常は水の中での界面活性剤の規則的に配列されたミセル(例えば、ミセル立方構造、六方構造)または規則的な配列(例えば、層状構造、共連続立方構造)からなる。
規則的に配列された空孔を有する無機材料の製造を記載した論文、「液晶の鋳型メカニズムによって合成された規則的に配列されたメソポーラスモレキュラーシーブ(Ordered Mesoporous Molecular Sieves Synthesized by a Liquid Crystal Template Mechanism)」,Nature,vol 359(1992),P710−P712が、CT Kresge,ME Leonowicz,WJ Roth,JC VartuliおよびJS Beckが発表されている。この論文に記載されている方法では、規則的な配列の界面活性剤分子が、無機材料を構成するための「鋳型」を提供するために用いられた。この方法の基本前提は、骨格として界面活性剤を用い、無機材料を界面活性剤構造上または周囲に析出させることであった。その後、界面活性剤を除去して(通常は、焼損または溶解による)、元の界面活性剤構造に似た多孔性網目構造を残す。この方法を図1に図示する。界面活性剤ミセルの直径は、極めて小さいこともあるので、この方法を用いて作ることができる細孔のサイズも極めて小さく、そのため最終製品における表面積は、非常に大きくなる。
【0017】
上記のような界面活性剤鋳型法を用いて製造された材料には、幾つかの固有の特徴がある:
(a)規則的に配列された細孔構造
図1に示すように、界面活性剤鋳型法では、規則的に配列された界面活性剤構造を用いて、無機材料の析出物を鋳型成形する。その後、その規則的な構造を壊さずに界面活性剤を除去する。その結果、界面活性剤に似た規則的に配列された細孔網目構造が生じる。
細孔のサイズ、細孔間の間隔、および規則的に配列された細孔のパターンは、界面活性剤のタイプ、界面活性剤の濃度、温度および他の溶液可変因子に依存する。〜20オングストロームと〜300オングストロームの間の細孔径は、達成されている。細孔の間隔もほぼこの範囲内である。
このスケールでの周期的な規則的配列は、X線回折(XRD)を用いて検出することができる。XRDスキャンでは、シグナル強度がサンプルへの入射X線ビームの角度に対してプロットされる。周期的構造は、XRDスキャン上にピークを発生させる。周期間隔の長さは、ピークが発生する角度に逆符合する。間隔が非常に小さい原子の周期的配列(結晶)は、いわゆる「高角」(典型的には、>5°)でピークを生じる。界面活性剤を鋳型にした材料における規則的に配列された細孔構造は、さらにずっと大きい間隔を有し、従って、低角(典型的には、5°よりずっと低い)でピークを生じる。小角X線散乱(SAXS)機と呼ばれる特別なXRD機を通常用いて、界面活性剤を鋳型にした材料における細孔構造を試験する。界面活性剤を鋳型にした材料からのXRDスキャンを図2に示す。
【0018】
(b)均一な細孔径
所定のタイプの界面活性剤については、界面活性剤ミセルは、本質的に同じサイズである。故に、細孔径は非常に均一である。細孔は、ミセルによって占有された空間で作られるからである。材料における細孔径分布は、窒素ガス吸収機を用いて得ることができる。界面活性剤を鋳型にした材料からの細孔径分布の一例を図3に示す。この分布は極めて狭く、界面活性剤ミセルの直系のほぼ中央に位置する。こうした分布は、界面活性剤を鋳型にした材料には典型的である。
【0019】
(c)原子結晶性の不在(すなわち、非常に規則的に配列された原子構造の不在)
最も従来的な無機材料は、結晶である。すなわち、それらの原子は、非常に規則的に配列された周期的な構造に構成されている。無機材料における結晶のタイプ、量および配向は、多くの重要な物理的性質に重大な影響を及ぼす。大多数の界面活性剤を鋳型にした材料の大きな欠点は、通常、その無機材料が高結晶性ではないということである。実際、ほとんどの場合、界面活性剤を鋳型にした材料は、非晶質と考えられる。
高結晶性材料を製造する難しさは、まさにその界面活性剤の鋳型の本質によって負わされる制限に由来する。これらの制限は、無機材料を形成するために用いることができる反応のタイプを大幅に制限する。明らかに、無機材料は、界面活性剤構造が保たれている間に成形されなければならない。界面活性剤構造は、通常、水性系溶液中に存在するため、無機反応は、水性系でなければならず、且つ、100℃未満の温度で発生しなければならない。この制限は苛酷である。多くの従来型の金属酸化物材料、特に、複合多成分系酸化物は、正確な結晶構造および元素の均一な分散を達成するために、非常に高温(1200℃以下)の熱処理を必要とする。
【0020】
(d)長い反応時間
ほとんどの界面活性剤鋳型法は、界面活性剤−無機構造を形成するために長い反応時間を要する。この後、界面活性剤を除去するために、長時間の注意深い熱処理を、通常、必要とする。長い反応時間は、実施スケールで処理の費用および不便さを大幅に加算する。この長い反応時間の原因は、重ねて、界面活性剤鋳型合成に用いなければならない無機反応のタイプにあると考えられる。
【0021】
上記の界面活性剤鋳型法の一つの変形は、自己組立による界面活性剤を鋳型にした構造の製造として説明することができる。この方法の詳細なメカニズムの多くは明確ではないが、基本原理は、界面活性剤−無機構造が、基質または核に集合し、そこから成長するということである。この方法の一般概要は、Aksay−IA;Trau−M;Manne−S;Honma−I;Yao−N;Zhou−L;Fenter−P;Eisenberger−PM;Grune−SM「無機薄膜を組み立てるための生体模倣経路(Biomimetic pathways for assembling inorganic thin films)」,Science vol.273(1996),p 892−898によって与えられている。
【0022】
自己組立では、無機物の析出が、集合している界面活性剤構造上でのみ発生するように、溶液を注意深く制御しなければならない。無機相の形成が速すぎると、界面活性剤を含まない大きな無機沈殿物が形成し、溶液から降下するだろう。これは、明らかに、無孔性構造になるだろう。
自己組立に(および他の界面活性剤鋳型法にも)最も多く用いられてきた無機反応は、「加水分解−縮合」反応と呼ばれている。加水分解−縮合反応は、「無機前駆体」を含み、これが最初に溶液に溶解される。反応の第一ステップは、この前駆体の加水分解である。この後、加水分解された前駆体を重合(縮合)して、無機相を生成する。加水分解−縮合反応は、一般に、下記のように表すことができる:
M−OR + HO ⇒ M−OH + ROH 加水分解
M−OH + M−OR ⇒ M−O−M + ROH 縮合
M = 金属イオン
R = 有機配位子、例えば、CH
M−OR = 無機前駆体、通常はアルコキシド
【0023】
これらの反応の重合特性によって、高い原子の規則的配列度を有さないガラス様材料が生じる。前で論議したように、これは、界面活性剤を鋳型にした大多数の材料の大きな限界である。高温での熱処理によって無機材料の規則的配列を増すことができるが、これを行うほぼ全て試みは、結晶化前に多孔構造が崩壊する結果となった。
水溶液中でのほとんどの加水分解−縮合反応は速すぎて、界面活性剤鋳型法には有用でない。シリカ系の反応は例外であり、非常によく制御することができる。製造された唯一の界面活性剤を鋳型にした材料が、長い間、シリカまたはシリカ系のいずれかであった理由は、このことで説明することができる。
【0024】
水溶液中での加水分解縮合反応を遅速させる添加剤を用いることによって、多数の他の材料で幾つかの成功が成し遂げられている。例は、「改良ゾル−ゲル法による六方充填メソ多孔質TiOの合成(Synthesis of Hexagonal Packed Mesoporous TiO by a Modified sol−gel Method)」Agnew,Chem.Int.Edition English,vol.34(1995),p2014−2017、D.M.Antonelli and J.Y.Ying,同書,vol.35(1996)p426、M.Froba,O.Muth and A.Reller,「メソ構造TiO: 配位子安定化合成および特性決定(Mesostructured TiO: Ligand−stabilised Synthesis and Characterisation)」,Solid State Ionic,vols.101−103(1997),p249−253である。関連特許は、米国特許第5,958,367号(J.Y.Ying,D.M.Antonelli,T.Sun)である。
【0025】
大きな進歩は、水溶液ではなくアルコール系溶液を用いて界面活性剤を鋳型にした構造を形成したStuckeyら(「半結晶性骨格での細孔が大きいメソ多孔質金属酸化物の一般化合成(Generalised Syntheses of Large−pore Mesoporous Metal Oxides with Semicrystalline Frame works)」,P.Yang,D.Zhao,D.I.Margolese,B.F.Chmelka and G.D.Stucky,Nature,vol.396(1998),p152−155)によって達成された。水溶液中よりアルコール溶液中のほうが、加水分解−縮合反応をずっと容易に制御することができる。故に、Stuckyらは、ある範囲の無機金属酸化物で界面活性剤を鋳型にした構造を製造することができた。Stuckyらは、彼らの材料が、有機相において多少の結晶性を示すことも報告している。しかし、その結晶性の量はまだ少なく、無機相は、非晶質無機材料によって包囲された非常に小さな結晶領域から成るものだった。
【0026】
液晶中でのインサイチュー反応による界面活性剤を鋳型にした構造
この方法では、水と無機前駆体の溶液を適切な量の界面活性剤と混合し、界面活性剤が組織化して液晶を生成する温度で、この混合物を保持する。その時、無機前駆体が反応して、界面活性剤ミセル間の空間を占有する無機材料を生成する。最終的に、焼損または他の方法によって、界面活性剤および残存する水が除去される。
界面活性剤構造を組み立てるためのケースと同様に、無機反応は、界面活性剤構造が保たれている間に起こらなければならない。これは、重ねて、反応の温度を制限し、反応は、水溶液中で起こらなければならない。また、反応は、界面活性剤と混合する前または混合中に進行してはならない。
大多数の研究は、自己組立法において記載したものと同じシリケート加水分解−縮合反応を用いている。小角XRDピークまたはTEM、いずれかによって証明されるように、液晶構造は、最終生成物中に保持されている。原子結晶構造を示す高角XRDピークは存在しない。
【0027】
「分子集合体により鋳型成形された半導体規則格子(Semiconducting Superlattices templated by Molecular Assemblies)」,P.Braum,P.Osenar and S.I.Stupp,Nature vol.380(1996)p325−327、および「ナノ構造CdSの液晶の鋳型における反作用(Countering Effects in Liquid Crystal Templating of Nanostructured CdS)」,V.Tohverら,Chemistry of Materials Vol 9,No.’7(1997),p1495に概説されているように、異なる反応法を用いて、硫酸カドミウムは生成されてきた。硫酸カドミウム、塩化カドミウム、過塩素酸カドミウムおよび硝酸カドミウム水溶液を界面活性剤と混合して、液晶を生成した。その構造にH2Sガスを吹き込み、これが溶解したカドミウムイオンと反応して、CdSを生成した。液晶構造は、最終生成物中に保持されていた。重要なことは、良好な原子結晶性を示す有意な高角X線ピークが存在することである。
【0028】
液晶における電着による界面活性剤を鋳型にした構造
この方法は、上記の界面活性剤鋳型法に類似した原理を用いる。水性系電気めっき溶液を適切な濃度の界面活性剤と混合して、液晶を生成する。この混合物を二電極間に配置し、界面活性剤が組織化して液晶を生成する温度で保持する。電極の一方は、被覆すべき基板である。適切な電圧をかけることによって、無機材料を一方の電極で析出させる。この材料は、界面活性剤の間の空間にのみ析出する。電着が完了したら、加熱によって、または無機材料を攻撃しない溶媒に溶解することによって界面活性剤を除去することができる。
この方法では組織化された細孔構造が維持される。析出した材料は、ほぼ常に金属であり、これは非常に容易に結晶化するため、強い高角XRDピークが観察される。白金およびスズは、この技法によって製造されてきた。
【0029】
上述のように、非常に狭い細孔径分布(すなわち、細孔が本質的に同じ直径である)を有する細孔構造で規則的な配列の細孔を有する固体材料を生成することが、上に記載した界面活性剤鋳型法の目的である。文献に記載された界面活性剤鋳型法のほとんどが、1マイクロメートルより大きい粒径を有する無機粒子を生じる結果となっている。結晶性を得ることは難しい。溶液中で界面活性剤−無機構造を生成するために相当な時間が必要とされるため、反応時間は長い。実際、発表された多数の論文では、所望の界面活性剤−無機構造を発生させるために1日から7日の範囲の時間を必要とする。さらに、界面活性剤構造内に無機材料を析出させるために用いられる条件は、界面活性剤構造の崩壊を回避するために「温和」でなければならない。
【0030】
ナノ粉末を製造するためのもう一つのアプローチは、Ongらの米国特許第5698483号公報に記載されている。この特許では、水性連続相と親水性有機ポリマー分散相を混合することによって、金属カチオン塩/ポリマーのゲルが生成される。親水性有機ポリマーが溶液に添加されると、親水性有機ポリマーは、化学親和性によりその構造に前記液体を吸着する。その生成物は、分散されたポリマーの網目構造内に「凍結された」金属塩溶液を伴うゲルである。この塩/ポリマー網目構造を焼成して、その粉末を分解し、表面積が大きい金属酸化物粉末を残す。焼成温度は、300℃から1000℃、好ましくは450℃から750℃に指定されている。
この特許は、親水性有機ポリマーを金属酸化物粉末の製造法に用いることを求めている。
ナノメートルサイズの粉末の製造を記載した他の特許には、米国特許第5338834号公報(金属塩溶液をポリマーフォームに組み込み、そのフォームを焼成して有機物を除去し、粉末を残す)および米国特許第5093289号公報(フォームマトリックスをケイ素粉末、合成樹脂および溶媒の懸濁液で被覆して、熱処理に付し、その間にフォームが放出されて、ケイ素が安定化される)が挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0031】
(発明の簡単な説明)
今般、本発明者らは、粒子、特に、金属酸化物粒子を製造するための方法を開発した。
一つの態様において、本発明は、
(a)1以上の金属カチオンを含有する溶液を調製するステップ;
(b)界面活性剤ミセルが溶液中で生成されて、その結果としてミセル液が生成されるような条件下で、ステップ(a)の溶液を界面活性剤と混合するステップ;および
(c)ステップ(b)で生成されたミセル液を加熱して、金属酸化物を生成するステップであって、この加熱ステップは、金属酸化物の粒子を生成する。
好ましくは、ステップ(b)は、界面活性剤を除去し、その結果、不規則な多孔性構造を有する金属酸化物粒子が生成される温度及び時間で行われるステップ;
から本質的になる、ナノサイズの結晶粒を有する金属酸化物粒子の製造方法を提供する。
好ましくは、金属酸化物は、少なくとも2以上の金属イオンからなり、前記粒子中の異なる原子種は、前記粒子中に均等に分散されている。本方法は、ステップ(c)の前に、ステップ(b)で生成されたミセル液を処理して、ゲルを生成するステップを場合によっては含み、この場合、ゲルは、界面活性剤ミセル又は界面活性剤分子が規則的に配列されることにより生成される。
粒子は、好ましくは、結晶粒の凝集体である。この実施態様における結晶粒は、共に、適切に、軽度に焼結される。
本方法は、ステップ(b)からの混合物を処理してゲルを生成し、そのゲルを加熱して金属酸化物の粒子を生成するステップを場合によってはさらに含むことができる。
【0032】
本発明の方法のステップ(a)は、1以上の金属カチオンを含有する溶液の調製を含む。前記金属カチオンは、求められる金属酸化物粒子組成に従って選択される。前記1つ以上の金属カチオンの溶液は、好ましくは、濃厚溶液である。本発明者らは、生成物の最高収率を達成するには、溶解されている金属が高濃度であることが好ましいと、現在、考えている。
非常に多数の金属カチオンを本発明に用いることができる。例には、周期表の1A、2A、3A、4A、5Aおよび6A族、遷移金属、ランタニドおよびアクチニドからの金属カチオン、ならびにそれらの混合物が挙げられる。このリストが網羅的であるとは考えないでいただきたい。前記混合物は、1以上の異なる金属カチオンを含むことができる。
金属カチオン溶液は、所望の金属(複数を含む)を含む1つまたは複数の塩を溶媒と混合することによって、適切に製造される。特定の溶媒に可溶なあらゆる塩を用いることができる。金属カチオン溶液は、1つもしくは複数の金属酸化物または1つもしくは複数の金属を適切な溶媒(複数を含む)と混合することによって製造することもできる。
多数の溶媒を用いて、金属カチオン溶液を調製することができる。溶媒は、好ましくは、水性系溶媒である。適する溶媒の例には、水、硝酸、塩酸、硫酸、フッ化水素酸、アンモニア、アルコール、およびそれらの混合物が挙げられる。このリストは、網羅的と考えないでいただきたく、本発明は全ての適する溶媒の使用を包含すると考えていただきたい。
【0033】
本発明の方法のステップ(b)は、界面活性剤を混合物に添加して、界面活性剤/液体混合物を生成することを含み、界面活性剤は、ミセル液が生成されるように、溶液中でミセルが生成される条件下で溶液に添加される。
ミセル液は、界面活性剤分子が集合してミセルを生成するような充分な量で界面活性剤が添加されたときに生成される。ミセル液の場合、ミセルは、有意な規則的配列度を示さず、従って、その液の粘度は、より規則的に配列された液晶相(一般には、ゲル様である)のものより、通常はずっと低い。従って、液晶とは対照的に、ミセル液の使用は、溶液と界面活性剤の簡単、迅速、且つ、徹底的な混合を可能にし、このことは、工業生産プロセスには重要である。一部の実施態様において、溶液と混合される界面活性剤の量は、ミセルの間隔が詰まっているミセル液を生成するために充分な量である。ミセル液が生成される条件は、用いられる特定の界面活性剤(複数を含む)に依存するだろう。実際、制御するために必要な主要な可変因子は、添加される界面活性剤の量および温度である。温度が高温でなければならない界面活性剤もあれば、室温以下を必要とする界面活性剤もある。
【0034】
ミセルを生成することができるあらゆる界面活性剤を本発明に用いることができる。非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤および双性イオン性界面活性剤を含む非常の多数の界面活性剤を本発明に用いることができる。一部の例には、BRIJ C1633(OCHCHOH、呼称C16EO(Aldrich);BRIJ 30、C12EO(Aldrich);BRIJ 56、C16EO10(Aldrich);BRIJ 58、C16EO20(Aldrich);BRIJ 76、C18EO10(Aldrich);Brij 78、C16EO20(Aldrich);BRIJ 97、C1835EO10(Aldrich);BRIJ 35、C12EO23(Aldrich);TRITON X−100、CHC(CHCHC(CH(OCHCHOH,x=10(平均)(Aldrich);TRITON X−114、CHC(CHCHC(CH(OCHCHOH(Aldrich);TWEEN 20、ポリ(エチレンオキシド)(20)ソルビタンモノカイレート(Aldrich);TWEEN 40、ポリ(エチレンオキシド)(20)ソルビタンモノパルミテート(Aldrich);TWEEN 60、ポリ(エチレンオキシド)(20)ソルビタンモノステアレート(Aldrich);TWEEN、ポリ(エチレンオキシド)(20)ソルビタンモノオレエート(Aldrich);およびSPAN 40、ソルビタンモノパルミテート(Aldrich);TERITAL TMN 6、CHCH(CH)CH(CH)CHCHCH(CH)(OCHCHOH(Fulka);TERGITAL TMN 10、CHCH(CH)CH(CH)CHCHCH(CH)(OCHCH)C10OH(Fuluka);二つの第一ヒドロキシル基が末端を成す(疎水性)ポリ(プロピレングリコール)核の中心に位置するポリ(エチレンオキシド)−ポリ(プロピレンオキシド)−ポリ(エチレンオキシド)(EO−PO−EO)配列を有するブロックコポリマー;PLURONIC L121(平均分子量=4400)、EOPO70EO(BASF);PLURONIC L64(平均分子量=2900)、EP13PO30EO13(BASF);PLURONIC P65(平均分子量=3400)、EP20PO30EO20(BASF);PLURONIC P85(平均分子量=4600)、EO26PO39EO26(BASF);PLURONIC P103(平均分子量=4950)、EO17PO56EO17(BASF);PLURONIC P123(平均分子量=5800)、EO20PO70EO20(Aldrich);PLURONIC F68(平均分子量=8400)、EO80PO30EO80(BASF);PLURONIC F127(平均分子量=12600)、EO106PO70EO106(BASF);PLURONIC F88(平均分子量=11400)、EO100PO39EO100(BASF);PLURONIC 25R4(平均分子量=3600)、PO19EO33PO19(BASF);エチレンジアミン核に結合し、第二ヒドロキシル基が末端を成す4つのEOn−POm鎖(または逆に、4つのPOn−EOm鎖)を有するスター2ブロックコポリマー;TETRONIC 908(平均分子量=25000)、(EO113PO22NCHCHN(PO113EO22)2(BASF);TETRONIC 901(平均分子量=4700)、(EOPO18NCHCHN(PO18EO(BASF);およびTETRONIC 90R4(平均分子量=7240)、(PO19EO16NCHCHN(EO16PO19(BASF)が挙げられる。
【0035】
本明細書中の次の記号は、商標として用いられている:PLURONIC界面活性剤、BRIJ界面活性剤、TRITON界面活性剤、TWEEN界面活性剤、SPAN界面活性剤、TERITAL界面活性剤、及びTETRONIC界面活性剤。
上記の界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である。用いることができる他の界面活性剤には次のものが挙げられる:
アニオン性界面活性剤:
ドデシル硫酸ナトリウム CH(CH11OSONA
幾つかの製造業者があるようだ。一例は、Sigmaである。
カチオン性界面活性剤:
塩化セチルトリメチルアンモニウム CH(CH15N(CHCl Aldrich
臭化セチルトリメチルアンモニウム CH(CH15N(CHBT Aldrich
塩化セチルピリジニウム C2138NCl Sigma。
このリストが網羅的であると考えないでいただきたい。
【0036】
本発明の方法のステップ(c)は、ステップ(b)からの混合物を高温に加熱して、その結果、金属酸化物を生成するステップを含む。この加熱ステップは、界面活性剤を除去し、その結果、不規則な多孔性の構造を有する金属酸化物粒子が生成される温度及び時間で行われる。場合によっては、このステップは、界面活性剤/液体混合物を処理してゲルを生成するステップの後であってもよい。一般に、ゲルは、ミセルが規則的に配列されて液晶を生成することに起因して生成する。典型的には、ゲルを生成するために、混合物の温度を変化させれば充分である。冷却によってゲルが生成することとなる混合物もあるし、加熱によってゲルを生成することとなる混合物もある。これは、用いられる界面活性剤(複数を含む)によるように思われる。
ゲルを生成する任意のステップが、本方法において用いられる場合、ステップ(c)の加熱は、ゲルの加熱を含む。
【0037】
加熱ステップによって、金属酸化物およびその粒子の細孔構造が生成されることとなる。複合金属酸化物を製造するための先行技術の方法とは異なり、本発明の方法は、比較的低い適用温度しか必要としない。実際、今まで行った実験作業では、約300℃未満の適用温度が適することがわかった。好ましくは、ステップ(c)において達する最高適用温度は、約600℃、さらに好ましくは約450℃、最も好ましくは約300℃を超えない。本発明者らは、本発明の方法は、局所的な発熱反応を含み、これが非常に局所的な温度を導くと考える。しかし、本発明者らが知る先行技術の方法と比較して適用温度が比較的低いという本発明の有意な利点は残る。
【0038】
加熱ステップは、望ましい最高温度への急速な加熱を含むこともできるし、またはさらにずっと綿密に制御された加熱処理計画を含むこともできる。例えば、加熱ステップは、制御された雰囲気のもとで行うことができる。この加熱ステップは、乾燥温度(一般に、混合物の沸点より下)に加熱して、混合物を乾燥させ、その後、最高適用温度までゆっくりと上昇させるか、または中間温度への上昇を連続的に進めて最終的に最高適用温度にすることを含むことができる。加熱ステップの継続時間は広範に変化しうるが、ステップ(c)における好ましい時間は、15分から24時間、さらに好ましくは15分から2時間、さらになお好ましくは15分から1時間である。ステップ(c)が、金属酸化物の粒子の生成をもたらす全ての加熱プロフィールを包含するためのものであることは、ご理解いただけよう。
【0039】
本発明の加熱ステップ(c)は、所望の金属酸化物の生成をもたらすような全ての加熱ステップを包含する。この加熱ステップは、そうした目的に適する、当業者に知られている加熱装置を用いて行うことができる。例としては、ホットプレートまたは他の加熱基板、オーブン、固定テーブル炉、回転テーブル炉、誘導電気炉、流動層炉、浴式炉、フラッシュ炉、管状炉、赤外炉、マッフル炉、ドロップ炉、ベルト炉、回転炉、ロータリーキルン、回転乾燥機、噴霧乾燥器、スピンフラッシュ乾燥機、ドラム乾燥機、反応器、およびフラッシュか焼炉が挙げられる。
本発明者らは、本発明の加熱ステップが、界面活性剤/液体混合物中に存在するあらゆる規則的配列を破壊すること、および本発明の方法の結果が、有意な結晶化量、不規則細孔構造、広い細孔径分布および全体にわたり本質的に均一な組成のナノサイズの結晶粒を有する金属酸化物の粒子であることを示した。本発明は、ミセルまたは液晶構造を反応ステップ(加熱ステップを含んでもよいし、含まなくともよい)全体にわたって維持し、その結果、非常に狭い細孔分布および規則的に配列された細孔構造を有する金属酸化物材料の生成をもたらすことに拠る先行技術の界面活性剤鋳型法とは、区別することができる。こうした先行技術の方法は、遅い、制御された加水分解−縮合反応の伝播に依存して所望の細孔構造を得る。本発明者らは、本発明の方法において発生する正確な反応を断定できないが、これらの反応は、加水分解−縮合反応のみではないと考える。本発明にうまく用いられた広範な元素、高度に制御された液相反応ステップの不在、金属酸化物粒子において得られた高結晶度、および短い処理時間は、制御された加水分解−縮合反応が本発明の方法において必須でなことを示しており、実際、そうした反応が全く発生しないこともありうる。
【発明の効果】
【0040】
本方法の好ましい実施態様によって製造された金属酸化物粒子は、ナノサイズの結晶粒を有する。好ましくは、粒度は、1〜100nm、さらに好ましくは1〜50nm、さらにいっそう好ましくは1〜20nm、さらにいっそう好ましくは2〜10nm、最も好ましくは2〜8nmの範囲内である。
粒度は、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて粒子のサンプルを試験し、粒度を視覚的に評価して、そこから平均粒度を計算することによって決定した。粒子は、非常に細かい結晶粒が互いに集合または凝集するため、可変的な粒径を有しうる。粒径は、ナノメートル範囲からマイクロメートル範囲またはそれ以上まで変化しうる。粒子は、大きな比表面積(特定の金属酸化物について。それらの粒子を製造するための先行技術の方法と比較した時)を有することができ、広い粒度分布を示す。
【0041】
本発明は、金属酸化物粒子も包含する。第二の態様において、本発明は、実質的に1〜100nmの範囲の粒度を有することを特徴する金属酸化物粒子を提供する。
好ましくは、粒度は、1〜50nm、さらに好ましくは1〜20nm、さらにいっそう好ましくは2nm〜10nm、最も好ましくは2nm〜8nmの範囲内である。
これらの粒子は、好ましくは、実質的に結晶性であり、少量または無視できる量の非晶質を含む。
これらの粒子は、好ましくは、本発明の第一の態様に関して記載した粒子に関して記載したような他の特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】規則的に配列された配列の界面活性剤粒子を用いて粒子を生成するための先行技術の方法の略図を示す。
【図2】図1に図示されている先行技術の方法を用いて製造した粒子の典型的なX線回折パターンを示す。
【図3】図1に図示されている先行技術の方法を用いて製造した粒子の典型的な細孔径分布を示す。
【図4】実施例1を用いた加熱プロフィールを示す。
【図5】本発明の方法により製造した粒子の略図を示す。
【図6】実施例2に記載されている幾つかの金属酸化物についてのX線回折トレースを示す。
【図7】実施例2に記載されている幾つかの金属酸化物についてのX線回折トレースを示す。
【図8】実施例2に記載されている粒子を製造するための方法の間に得られたゲルについての小角X線散乱データを示す。
【図9】実施例2に記載されている粒子を製造するための方法の間に得られたゲルについての小角X線散乱データを示す。
【図10】実施例2に記載されている粒子を製造するための方法の間に得られたゲルについての小角X線散乱データを示す。
【図11】Brij 35界面活性剤を用いて製造したCeO粉末の細孔径分布を示す。
【図12】先行技術の界面活性剤鋳型法に従って製造した粒子についての典型的な細孔径分布を示す。
【図13】実施例3に従って製造した金属酸化物粉末についてのX線回折トレースである。
【図14】実施例3において製造した粉末についての小角X線散乱データを示す図である。
【図15】本発明に従って酸化セシウム粉末を製造するために用いたいくつかの典型的な加熱プロフィールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
(発明の好ましい実施態様の詳細な説明および実施例)
本発明の好ましい実施態様は、
(a)少なくとも一つの金属の金属カチオンを含有する濃厚水溶液を調製するステップ(「濃厚溶液」とは、金属カチオンが、用いられる特定の溶液/溶質系中に溶解限度の60%以上の量で存在することを意味する);
(b)ミセル液生成ステップ − ステップ(a)からの溶液を、その混合物がミセル液を生成する温度で界面活性剤と混合するステップ;
(c)(任意の)ゲル生成ステップ − ミセル液の温度を変化させて、ゲルを生成するステップ。ゲルは、界面活性剤分子または界面活性剤ミセルが規則的に配列されることにより生成する;および
(d)加熱処理ステップ − この加熱処理によって、金属酸化物が生成され、全ての界面活性剤が除去され、細孔構造が生成する
を含む。
【0044】
実施例1 − CeOの製造
本発明の方法を実証するために、CeOの粒子を製造した。下記の手順を用いた:
ステップ1: 2.5mol/Lの硝酸セリウムを含有する硝酸セリウム溶液を調製した。
ステップ2: 16gのBRIJ 56界面活性剤および20mLの硝酸セリウム溶液を〜80℃に加熱した。この温度で界面活性剤は液体である。その溶液を攪拌しながらゆっくりと界面活性剤液に添加して、ミセル液を生成した。
ステップ3: ミセル液を室温に冷却した。冷却中にその液は透明なゲルになった。
ステップ4: 図4に呈示した温度履歴に従って、ゲルを加熱処理した。この実施例では、83℃での長時間の乾燥ステップを用いた後、さらに加熱した。
得られたCeO粉末は、〜253m/gの表面積を有し、直径が〜2nmと〜8nmの間の範囲の結晶粒から成るものだった。透過型電子顕微鏡(TEM)は、最終粉末が、軽度に焼結された極めて微細な結晶粒の集合体から成ることを示唆している。これを図5に図示する。
【0045】
さらなる実施例
幾つかのターゲット金属酸化物材料を選択して、本方法の能力を試験した。これらの材料の一部は、従来の方法を用いて生成することが非常に難しい多成分複合金属酸化物である。
実施例2: 酸化セリウム系化合物
CeO、およびセリウムとサマリウム、銅およびジルコニウムのうちの一つ以上とを含有する他の混合酸化物(Ce0.6Sm0.4、Ce0.65Sm0.2Cu0.15、およびCe0.6Zr0.2Sm0.1Cu0.1)を製造した。酸素含量は、その正確な含量が組成に依存し、このステップでは正確にわからないため、xで表す。これらの材料は、触媒用途のための卓越した候補であり、固体酸化物燃料電池の陰極に対して使用することもできる。これらは、多成分酸化物を製造する本発明の能力の非常に有用な試薬でもある。異なる金属成分が材料全体にわたって均等に分散されている場合、これらの組成物のすべてが、CeOの基本結晶構造を示すはずである。これは、追加の元素をCeO結晶構造に組み込むことができるためである。しかし、元素の不均一な分散によって、さらにずっと高濃度の特定の元素を一つ以上有しうる材料のポケットが生じることもある。こうしたポケットによって、異なる結晶構造(または相)が形成されうる。
【0046】
X線回折を用いて、材料が単相CeO結晶構造(均等に分散された元素)であるのか、または劣悪な元素の混合を示す追加の結晶構造を含むのかを判定した。幾つかの材料の表面積および粒度も測定した。
図6,7は、本発明者らの方法を用いて製造したCeO、Ce0.6Sm0.4、Ce0.65Sm0.2Cu0.15、およびCe0.6Zr0.2Sm0.1Cu0.1からのXRDトレースを示す。このXRDトレースは、たとえ四成分系であっても正確なCeO結晶構造がすべての材料で得られることを示した。これは、元素の非常に均一な分布を強く示唆している。そのピークの幅は、これら全ての材料において粒度が極めて小さいことを示している。
【0047】
BRIJ 56界面活性剤および最適でない加熱温度を用いて得られたCeO、Ce0.6Sm0.4、Ce0.65Sm0.2Cu0.15についての表面積は、それぞれ219m/g、145m/gおよび171m/gであった。Ce0.6Sm0.4粉末およびCe0.65Sm0.2Cu0.15粉末は、SmおよびCuにより褐色を帯びた黄色であった。それらをCeOより長く300℃で保持して、確実にすべての界面活性剤を除去した(CeOでは、界面活性剤除去は褐色から黄色への色の変化によって明瞭に観察することができる)。このより長い300℃での時間は、おそらく、CeOと比較してこれらの材料の表面積が小さいせいであった。
CeO材料の細孔構造、およびその細孔構造とゲル状態での界面活性剤の規則的配列との関係をさらに調査した。図8−図10は、硝酸セリウム溶液とBRIJ 35界面活性剤、BRIJ 56界面活性剤およびPLURONIC F127界面活性剤とから成るゲルについての小角X線散乱(SAXS)データを示す。これらのゲルから製造した粉末についてのSAXSデータも示す。これらすべてのゲルからのデータにおける有意なピークは、規則的に配列された界面活性剤構造の存在を示す。この規則的配列は、最終粉末中には明らかに存在しない。
【0048】
窒素吸収を利用して、細孔径分布を判定した(図11)。この分布は非常に広く、このことは、この細孔構造が、細孔が単に界面活性剤ミセルに置き換わることによって生じたのではないことを示している。その結果を、図12におけるZhaoら(J.Am.Chem.Soc.vol.120(1998)p6024−6036)によって得られた界面活性剤を鋳型にしたシリカの細孔径分布(同じ界面活性剤を用いる)と比較する。シリカとCeOの密度の違いを考慮に入れると、全細孔量は類似している。しかし、細孔径分布は、CeO材料の方が明らかにずっと広い。これは、界面活性剤を鋳型にした材料とは対照的に、CeOの細孔が、単に界面活性剤ミセルと同じ空間を占有することよって生じたのではないことを示している。
CeO材料の透過型電子顕微鏡(TEM)は、その粒度が極めて小さいことを示している。結晶粒は、直径〜2nmと〜6nmの間の範囲である。これは、材料の原子の「単位格子」によって決定される限界粒度に近い。典型的に、金属酸化物の単位格子の寸法は、1nmと2nmの間の範囲である。
【0049】
実施例3:La0.6Ca0.2Nd0.2Mn0.9Ni0.1の調製
固体酸化物燃料電池における陽極材料としてLa0.6Ca0.2Nd0.2Mn0.9Ni0.1が用いられる。La0.6Ca0.2Nd0.2Mn0.9Ni0.1は、このターゲット「マンガン酸ランタン」結晶構造が化学組成に対して極めて敏感であるため、本発明のための卓越した試験材料でもある。組成が少し変化しただけでも、異なる結晶構造が生成される。従って、正確な結晶構造を有する小さな結晶粒を生成するために、この五つの異なる金属元素を極めて微細なスケールで均等に分散する必要がある。
この組成に対する敏感さのため、共沈および他の従来的は方法を用いて、以前の研究者たちが正確な結晶構造を得ることは、相当むずかしかった。先行技術において正確な結晶構造を獲得するためには、注意深い共沈、その後の高温(800℃〜1000℃)での長時間(10時間〜48時間)の加熱処理が必要であった(化学組成の変化は、これらの高温での原子成分の拡散によって緩和することができる)。この高温処理の一つの結果は、有意な結晶粒の成長および結晶粒の焼結が起こって、得られる表面積が非常に小さく、粒度が比較的大きくなるとである。
【0050】
図13は、本発明の方法を用いて生成したLa0.6Ca0.2Nd0.2Mn0.9Ni0.1材料からのXRDトレースを示す。PLURONIC F127 − 金属硝酸塩のゲルを用い、加熱処理は、100℃で1時間、その後、300℃で0.5時間であった。このトレースは、この材料が、ターゲットのマンガン酸ランタン結晶構造であることを示している。これは、加熱処理に用いた非常に低い温度がもたらした驚くべき結果である。〜30m/gの表面積がこの材料について得られた。30m/gは、CeO系材料についての値よりずっと低いが、この材料にとっては非常に高いと考えられる。最近、本発明の方法により、金属硝酸塩の代わりに金属酢酸塩溶液を用いて、55m/gの表面積を達成した。このことは、有意な改善をさらに達成できることを示している。この結果は、異なる塩、すなわち、硝酸塩、酢酸塩などの使用によって、異なる表面積の結果を得ることができることも示している。
この材料についてのSAXSデータを図14に示す。CeO材料に関するかぎり、SAXSデータにおいてピークは無く、このことは、細孔構造における規則的配列の欠如を示している。
【0051】
本発明者らが今まで行った実験作業は、高濃度の溶解金属を有する金属カチオン溶液を用いている。今まで行った実験では、最高収率を獲得するために溶解度限度に近い金属塩溶液を用いている。しかし、本発明が金属カチオンの濃厚溶液を用いるものに限定されるものとはみなさないでいただきたい。
【0052】
本発明の方法を用いて調製した材料の他の例
上記のものと類似の手順を用い、本発明の方法を用いて、次の材料も合成した。Mn(表面積 〜120m/g)、LiMn(〜14m/g)、LiCoO(〜10m/g)、La0.6Sr0.4MnO(〜30m/g)、NiO(〜200m/g)、ZrO(〜100m/g)、CuO/ZnO/ZrO(〜180m/g)およびCo(〜80m/g)。〜170m/gから〜250m/gの表面積を有する広範なCeO系化合物も合成した。例には、Ce0.62Zr0.280.11(表面積 〜200m/g)およびCe0.46Zr0.210.1(表面積 〜170m/g)が挙げられる。他のCeO系材料も調製した。
【0053】
ステップ2における実験: 溶液と界面活性剤の混合
BRIJタイプの界面活性剤を、それらがミセル液を生成する高温で、水溶液と混合した。これを冷却して、ゲルを生成することができる。これらの界面活性剤を用いて、ゲルを生成することなくミセル液のステップからいきなり加熱処理することが可能である。対照的に、PLURONIC界面活性剤は、低温(〜0℃)で水溶液中にてミセル液を生成し、加熱するとゲルを生成する。従って、最初にゲルを生成することなくPLURONIC F127混合物を加熱処理することは不可能である。
CeO材料について、BRIJ 30界面活性剤、BRIJ 35界面活性剤およびBRIJ 56界面活性剤は、PLURONIC F127界面活性剤(〜30m/gよりずっと大きい表面積(>200m/g)を生じた。本発明者らは、この理由を判定できない。BRIJ 56は、BRIJ 35より大きな表面積を生じることができるが、これを確認するためには一定範囲の加熱処理を用いるさらなる調査が必要であるようだ。
La0.6Ca0.2Nd0.2Mn0.9Ni0.1材料については、状況が反転した。金属硝酸塩溶液を用いて、PLURONIC F127は、〜30m/gの表面積を生じ、一方、BRIJ界面活性剤は、<10m/gの表面積を生じた。
【0054】
表面積の違いを得る理由は未だわかっていないが、本発明は、異なる表面積を有する材料を生じる能力をもたらすようである。これは、本発明のさらなる利点でありうる。例えば、多数の金属酸化物の用途について、最小気孔率の固体セラミック装置を製造する必要がある(例えば、固体酸化物燃料電池における固体電解質)。これらの用途において、大きな表面積は、重要ではなく、望ましいことさえある。しかし、微細な結晶粒は、焼結温度を低下させ、改善された物理的特性をもたらしうるため、なお有利である。本発明の方法は、これらの用途、ならびに多孔性で表面積が大きい材料を必要とする用途に合うように適用できると思われる。
本発明者らは、界面活性剤の濃度が、本発明の方法によって製造される生成材料に間違いなく影響を及ぼすであろうとも考える。今までのところ、これを確認する実験作業は行っていない。
【0055】
本発明の加熱処理ステップでは、このステップの間に生成される金属酸化物と細孔構造の両方が見られる。
主として硝酸塩溶液からの金属酸化物の生成に関する、本発明者らが今まで行った実験において、本発明者らは、ミセル液中に存在する高密度で間隔が細かいミセルがおそらく沈殿の成長を妨げると仮定した。得られた非常に小さな粒度をこれで説明することができる。ミセル間の限られた空間は、異なる金属元素の一切の大規模な分離を防止することもできる。亜酸化窒素(NOx)ガスの放出によって証明されるように、金属硝酸塩が分解すると考えられる。加熱処理の後半のステップには、生成物から界面活性剤の少なくとも一部を焼損させることができる燃焼反応が含まれる。
上記のメカニズムは、仮説のメカニズムでしかなく、本発明をこの特定のメカニズムに限定されるものと考えるべきではないということは、ご理解いただけよう。
【0056】
本発明者らは、大きな表面積または細孔構造の生成を導くメカニズムに関しても断定できない。非常に広い細孔度分布は、細孔が、ミセルによって占有された空間において単に生成されるのではないことを示している。本発明者らは、液体と沈殿した硝酸塩をミセル間の限られた空間に分離すること、および硝酸塩の分解および/または界面活性剤の分解によって放出されたガスが協力して、大きな表面積の細孔構造を生成することが可能であると考える。重ねて、本発明者らは、このメカニズムを単に仮定したのであって、本発明をこの特定のメカニズムに限定されるものと考えないでいただきたい。
一定範囲の加熱処理を硝酸セリウム溶液/界面活性剤のゲルに適用して、様々な加熱処理パラメータが最終粉末の表面積にいかに影響を及ぼすかについてなんらかの理解を得ることを試みた。これらの加熱処理計画を図15に示す。
【0057】
加熱処理番号1は、乾燥したゲルを製造し、この乾燥したゲルを非常に急速に燃焼させるよう設計した。加熱処理番号2でも乾燥したゲルを製造したが、燃焼は、加熱処理番号1での燃焼よりさらにずっと制御されるように設計した。加熱番号3は、さらなる加熱の前に乾燥したゲルを製造せず、三つの加熱処理の中で最も簡単で速かった。従って、工業プロセスとして特に魅力的である。
加熱処理番号1では、長い低温ステップの間にゲルが乾燥して硬く黄色い塊になった。有意な数の泡が発生し、このステップではその塊に捕捉された。300℃のホットプレート上に配置すると、乾燥したゲルは直ちに激しく発火して、黄色の粉末を生成した。その粉末は、170m/gの表面積を有する酸化セシウムであった。
【0058】
加熱処理番号2では、乾燥したゲルは、約100℃で軟化し、一部は液体に変わり、その後、有意なNOxガスを放出し、最終的にはゆっくりとした燃焼反応が起こった。この燃焼反応は、赤い表面のゆっくりとした動きによって証明された。燃焼後に、褐色を帯びた黄色の粉末が存在した。約200℃での時間が終わった時、この粉末は、いっそう黄色く変わっていた。おそらく、残留する界面活性剤が焼損したためである。最終酸化セシウム粉末は、253m/gの表面積を有した。
【0059】
加熱処理番号3 − ゲルは、ホットプレート上に配置後、ゆっくりと液体に変わった。その後、水が蒸発し、NOxガスが放出された。灰色−褐色−黄色の塊が生じる。最終的に、ゆっくりとした燃焼反応が赤い表面に沿って再び進行し、その結果、混合物が黒色に変わり、その後、褐色を帯びた黄色に変わった。約300℃での時間が終わった時、この粉末はいっそう黄色く変わっていた。おそらく、残留する界面活性剤が焼損したためである。この加熱処理によって、219m/gの表面積を有する酸化セシウム粉末が生じた。
【0060】
これらの実験は、粉末の最終的な特性の決定における加熱処理の重要性を明確に示している。非常に急速な燃焼によって、最小の表面積がもたらされた。よりゆっくりと乾燥ゲルを加熱および燃焼することによって、最大の表面積がもたらされた。湿潤したゲルをホットプレートに単に配置するだけでも、非常に大きな表面積が生じた。これらの一般的な傾向は、異なる界面活性剤および異なる材料での他の実験においても観察された。
【0061】
本発明は、本発明者らが知る先行技術を超える下記の利点を提供する:
(a)生成される金属酸化物は、極めて小さな粒度を有する。例えば、二酸化セシウム材料は、約2nmと約10nmの間の範囲の粒度を有する;
(b)生成される金属酸化物は、高結晶性であり、すなわち、高い原子の規則的配列度を有する。これは、原子結晶性をほとんど有さない大多数の界面活性剤を鋳型にした材料に対して重要な利点である。
(c)一部の金属酸化物について、(先行技術の方法と比較して)極めて大きな表面積を得ることができる。得られた粉末の表面積は、用いられる界面活性剤のタイプ、金属イオンのタイプ、および加熱処理に依存する。塩(例えば、硝酸塩、酢酸塩、塩化物など)のタイプが表面積に影響を及ぼしうるようでもある。
(d)本発明を用いて、非常に複雑な多成分金属酸化物を製造することができる。これは、異なる原子種が材料全体にわたって均等に分散されることを示す;
(e)多成分金属酸化物を生成するためでさえ、低い適用温度(約300℃未満)で充分である。実際、本発明は、ホットプレートを用いて今までの実験のほとんどを実際に行った。これは、他の技術、特に、正確な金属酸化物相を得るために長時間の高い適用温度(約1,000℃)での加熱処理を通常必要とする多成分金属酸化物を製造するための他の技術を超える大きな利点である。特に、本発明は、炉のための資本費用の低下、運転費用の低下、および高温で発生しうる望ましくない焼結および結晶粒の成長の回避の点で、明らかな利点を有する;
(f)本方法は、極めて迅速である。無機反応および全加熱処理を30分という短さで行うことができる。これは、長い加熱処理(場合によっては、数日までの)を必要とする従来の技術と対照的である。界面活性剤鋳型法の特徴である長い無機反応を用いず、それ故、本発明は、界面活性剤鋳型法よりずっと迅速である。
(g)本方法は、低コストの原料および簡単な処理技術を用いる。それ故、本方法は、極めて安価である。
(h)ゲルの加熱を行う場合、そのゲルは、規則的に配列された界面活性剤構造から成る。しかし、この規則構造は、最終材料には全く存在しない。加えて、細孔径分布が非常に広く、これは、細孔が界面活性剤ミセルを単に焼損して得られたものではないことを示している。従って、細孔構造は、以前に説明された界面活性剤を鋳型にした材料におけるものとはかなり異なる。
【0062】
特に記載したもの以外の変形および変更を本発明に施すことが可能であることは、当業者にはご理解いただけよう。本発明が、本発明の精神および範囲に入るこうした変形および変更のすべてを包含することは、ご理解いただけよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1以上の金属カチオンを含有する溶液を調製するステップ;
(b)界面活性剤ミセルが前記溶液中で生成されて、その結果、ミセル液が生成され固体物の沈殿が妨げられるように、界面活性剤の量及び温度を主要な可変因子とする条件下で、ステップ(a)の溶液を界面活性剤と混合するステップ;および
(c)ステップ(b)で生成されたミセル液を加熱して、金属酸化物を生成するステップであって、この加熱ステップは、界面活性剤を除去し、その結果、不規則な多孔性構造を有する金属酸化物粒子が生成される温度及び時間で行われるステップ;
を含む、ナノサイズの結晶粒を有する金属酸化物粒子の製造方法。
【請求項2】
前記金属酸化物粒子が、少なくとも2以上の金属イオンからなり、前記粒子中の異なる原子種が、前記粒子中に均一に分散されている請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(c)の前に、ステップ(b)で生成されたミセル液を処理して、ゲルを生成する段階をさらに含み、このとき、前記ゲルは、界面活性剤ミセルが規則的に配列されることにより生成される請求項1又は2に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−229161(P2012−229161A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−187031(P2012−187031)
【出願日】平成24年8月27日(2012.8.27)
【分割の表示】特願2002−544345(P2002−544345)の分割
【原出願日】平成13年11月21日(2001.11.21)
【出願人】(506250033)ベリー スモール パーティクル コンパニー リミテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】VERY SMALL PARTICLE COMPANY LTD
【住所又は居所原語表記】31 Westgate Street, Wacol, QLD 4076 (AU)
【Fターム(参考)】