説明

ナノシリンダー構造薄膜及びそれを有する構造体並びにそれらの製造方法

【課題】 規則性の高い配列のナノシリンダーを備えたナノシリンダー構造薄膜及びそれを有する構造体並びにそれらを低コストにて製造するための方法を提供する。
【解決手段】 基板2上に、互いに異なる誘電率を持つ第1及び第2のセグメント4−1,4−2からなり且つ主表面が矩形状をなすブロックポリマー薄膜4を形成する工程と、このブロックポリマー薄膜4にその矩形状縁辺を構成する4つの縁辺のうちの互いに平行な1対の縁辺に対して大略直交する方向の電場を印加して、第1のセグメント4−1により主表面内での形状が細長い複数のパターンを形成する工程と、しかる後に電場の印加を停止することで、細長い複数のパターンを変形させて第1のセグメント4−1により主表面内における配列が矩形状縁辺に沿った碁盤目状をなす複数のナノシリンダーを形成する工程とを含む、ナノシリンダー構造薄膜を有する構造体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックポリマーを用いて形成されるナノシリンダー構造薄膜及びそれを有する構造体並びにそれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノシリンダー構造薄膜は、径がナノメーターオーダーの複数のシリンダー[ナノシリンダー]が膜面に垂直な方向を向いてほぼ等間隔に配列された構造[ナノシリンダー構造]を有する薄膜である。このナノシリンダー構造薄膜は、多方面にわたる各種デバイスへの応用が期待されている。
【0003】
ナノシリンダー構造薄膜を形成する系としては、ブロックポリマー系や、相分離薄膜系或いは陽極酸化アルミナ系が知られている。特許文献1においては、アルミニウムとシリコンとの相分離薄膜系であって、準安定状態において直径が10nm以下のナノシリンダーを形成するナノシリンダー構造薄膜の製造方法が提案されている。また、特許文献2においては、ブロックポリマーを用いてかなりの規則性をもったナノメーターオーダーのパターンを形成する方法が提案されている。
【特許文献1】特開2003−266400号公報
【特許文献2】特開2001−151834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ナノシリンダー構造薄膜については、ディスプレイ等の上記特許文献2に記載されるような各種デバイスへの応用を考えた場合、ナノシリンダーの径の均一性ができるだけ高く且つ膜面内におけるナノシリンダー配列の規則性ができるだけ高いものの方が望ましい。
【0005】
特許文献2には、複数のナノシリンダーがハニカム状(ヘキサゴナル状即ち最密充填状)に配列されているナノシリンダー構造薄膜が開示されている。ハニカム状配列は、ある程度の規則性を有する。
【0006】
しかるに、二次元直交座標系において記述される更に規則性の高い配列として、碁盤目状配列がある。上記各種デバイスへの応用に際しては、碁盤目状配列の方が一層好ましい場合がある。
【0007】
また、特許文献2には、ナノシリンダーを規則的に配列するために、孔の規則的配列等からなる基板表面構造を利用することが開示されている。
【0008】
しかるに、このような基板表面構造の形成は、コスト高をもたらす。
【0009】
上記の技術的課題を考慮して、本発明は、より規則性の高い配列のナノシリンダーを備えたナノシリンダー構造薄膜及びそれを有する構造体並びにそれらを低コストにて製造するための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、上記の目的を達成するものとして、
ポリマー薄膜にその主表面と大略直交する方向に延びた複数のナノシリンダーが形成されてなるナノシリンダー構造薄膜であって、前記ポリマー薄膜の主表面は矩形状をなしており、前記ナノシリンダーは前記主表面内における配列が前記ポリマー薄膜の矩形状縁辺に沿った碁盤目状をなしていることを特徴とするナノシリンダー構造薄膜、
が提供される。
【0011】
本発明の一態様においては、前記ポリマー薄膜の矩形状縁辺を構成する4つの縁辺のうちの互いに平行な1対の縁辺に対応する前記ポリマー薄膜の1対の端面には1対の電極が付されている。本発明の一態様においては、前記ポリマー薄膜は互いに異なる誘電率を持つ2種のセグメントからなるブロックポリマー薄膜であり、前記2種のうちの1種のセグメントにより前記ナノシリンダーが構成されている。
【0012】
また、本発明によれば、上記の目的を達成するものとして、上記ナノシリンダー構造薄膜を基板上に形成してなることを特徴とする構造体、が提供される。本発明の一態様においては、複数の前記ナノシリンダー構造薄膜を前記ポリマー薄膜の矩形状縁辺同士が互いに平行または直交するように配列してなる。
【0013】
また、本発明によれば、上記の目的を達成するものとして、
上記ナノシリンダー構造薄膜を製造する方法であって、
互いに異なる誘電率を持つ2種のセグメントからなり且つ主表面が矩形状をなすブロックポリマー薄膜を形成する工程と、
該ブロックポリマー薄膜にその矩形状縁辺を構成する4つの縁辺のうちの互いに平行な1対の縁辺に対して大略直交する方向の電場を印加して、前記2種のうちの1種のセグメントにより前記主表面内での形状が細長い複数のパターンを形成する工程と、
しかる後に前記電場の印加を停止することで、前記細長い複数のパターンを変形させて前記1種のセグメントにより前記主表面内における配列が前記矩形状縁辺に沿った碁盤目状をなす複数のナノシリンダーを形成する工程と、
を含むことを特徴とする、ナノシリンダー構造薄膜の製造方法、
が提供される。
【0014】
また、本発明によれば、上記の目的を達成するものとして、
上記構造体を製造する方法であって、
基板上に、互いに異なる誘電率を持つ2種のセグメントからなり且つ主表面が矩形状をなすブロックポリマー薄膜を形成する工程と、
該ブロックポリマー薄膜にその矩形状縁辺を構成する4つの縁辺のうちの互いに平行な1対の縁辺に対して大略直交する方向の電場を印加して、前記2種のうちの1種のセグメントにより前記主表面内での形状が細長い複数のパターンを形成する工程と、
しかる後に前記電場の印加を停止することで、前記細長い複数のパターンを変形させて前記1種のセグメントにより前記主表面内における配列が前記矩形状縁辺に沿った碁盤目状をなす複数のナノシリンダーを形成する工程と、
を含むことを特徴とする、構造体の製造方法、
が提供される。
本発明の一態様においては、前記ブロックポリマー薄膜を形成する工程において、前記基板上に複数の前記ブロックポリマー薄膜をその矩形状縁辺同士が互いに平行または直交するように配列して形成し、複数の前記ブロックポリマー薄膜のそれぞれにつき前記細長い複数のパターンを形成する工程と前記複数のナノシリンダーを形成する工程とを実行する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ブロックポリマー薄膜における電場によるブロックポリマーの配向制御と構造相転移とを利用することにより、規則性の高い碁盤目状のナノシリンダー配列を持つナノシリンダー構造薄膜及び構造体を得ることができる。また、これにより、低コストで広範囲にわたり規則性の高い碁盤目状のナノシリンダー配列を作成することが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明のナノシリンダー構造薄膜及びそれを有する構造体並びにそれらの製造方法の実施の形態を説明する。
【0017】
図1は、本発明によるナノシリンダー構造薄膜及びそれを有する構造体の製造方法並びにそれにより得られたナノシリンダー構造薄膜及び構造体の一実施形態を説明するための模式的平面図である。図2はその模式的斜視図であり、図3はその模式的断面図である。
【0018】
ナノシリンダー構造薄膜及びそれを有する構造体の製造に際しては、先ず、図2に示されているように、基板2の表面上に、互いに異なる誘電率を持つ2種のセグメントからなり且つ主表面(図における上下面即ち膜面)が矩形状をなすブロックポリマー薄膜4及び1対の電極6,6’を形成する。
【0019】
基板2としては、ブロックポリマー薄膜4の相構造形成に対して悪影響を与えないものが好ましく、例えば酸化シリコン、窒化シリコン、シリコン、石英、ガラス等の絶縁基板を用いることができる。
【0020】
ブロックポリマー薄膜4を構成するブロックポリマーとしては、例えば、上記特許文献2に記載のようなものを使用することができる。
【0021】
即ち、例えば、第1に、芳香環含有ポリマー鎖とアクリル系ポリマー鎖とを有するブロックポリマーが挙げられる。具体的には、芳香環含有ポリマー鎖が、ビニルナフタレン、スチレンおよびこれらの誘導体から選択される少なくとも1種のモノマーを重合することにより合成されたポリマー鎖であり、アクリル系ポリマー鎖が、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸およびこれらの誘導体から選択される少なくとも1種のモノマーを重合することにより合成されたポリマー鎖であるものである。典型的には、ポリスチレン(PS)−ポリメチルメタクリレート(PMMA)ブロックポリマーである。
【0022】
第2に、主鎖がエネルギー線の照射により切断されるポリマー鎖とエネルギー線に対して難分解性のポリマー鎖とを有するブロックポリマーが挙げられる。エネルギー線は、電子線、γ線、X線から選択され、典型的には電子線が用いられる。エネルギー線照射によって主鎖が切断されるポリマー鎖は、典型的にはα位がメチル基やハロゲンで置換されたアクリル鎖またはポリシラン鎖である。
【0023】
第3に、ポリシラン鎖、ポリシロキサン鎖、ポリアクリロニトリル誘導体鎖、ポリアミド酸鎖、ポリイミド鎖、ポリアニリン誘導体鎖からなる群より選択されるポリマー鎖と、ポリエチレンオキシド鎖、ポリプロピレンオキシド鎖、ポリアクリル酸誘導体鎖、ポリメタクリル酸誘導体鎖、ポリα−メチルスチレン鎖からなる群より選択される他のポリマー鎖を有するものとを有するブロックポリマーが挙げられる。
【0024】
ブロックポリマーを構成する2種のセグメント(モノマー単位に相当)のうち、1種はナノシリンダーとなるセグメント(第1のセグメント)であり、他の1種はナノシリンダー以外の部分となるセグメント(第2のセグメント)である。第1のセグメントの誘電率と第2のセグメントの誘電率との比は、好ましくは1.2以上であり、更に好ましくは1.5以上である。誘電率の比が前者の範囲内であれば、適度な強さの電場の印加で良好なラメラ構造[後述する]を形成することができる。
【0025】
以上のようなブロックポリマーの原料を適宜の溶剤に溶解してなる塗材を基板2の表面に塗布し、溶剤を気化させる。溶剤としては、上記特許文献1に記載のように、当該ブロックポリマーを構成する2種のポリマーに対して良溶媒であるものが好ましく用いられる。塗布方法としては、スピンコートが好ましく用いられる。
【0026】
電極6,6’は、例えば金またはアルミニウムなどの金属からなる膜である。電極6,6’は、ブロックポリマー原料塗材の塗布に先立ち、基板2上に形成しておくことができる。電極6,6’は、ポリマー薄膜4の矩形状縁辺を構成する4つの縁辺のうちの互いに平行な1対の縁辺に対応して、ポリマー薄膜4の1対の端面に付されている。電極6,6’は、メッキまたは無電解メッキにより膜形成を行い、エッチングによりパターニングすることで形成することができる。これらの1対の電極6,6’にはそれぞれ不図示の電源の正極及び負極が接続される。
【0027】
ブロックポリマー薄膜4を、その主表面が矩形状をなすように形成するには、レジストを用いたリフトオフを利用することができる。即ち、電極6,6’の形成された領域及びブロックポリマー薄膜4を形成する領域以外に予めレジストを塗布しておき、ブロックポリマー原料塗材の塗布及び溶剤気化後に、レジストによるリフトオフを行うことができる。
【0028】
ブロックポリマー薄膜4の厚さは、好ましくは20〜50nmであり、更に好ましくは30〜50nmである。ブロックポリマー薄膜4の厚さが前者の範囲内であれば、ラメラ構造の形成及び該ラメラ構造からナノシリンダーの碁盤目状配列構造[後述する]への構造相転移を良好に行うことができる。ブロックポリマー薄膜4の主表面の形状は、矩形状であり好ましくは正方形状である。主表面の寸法は、好ましくは縦100〜2000nm及び横100〜2000nmであり、更に好ましくは縦200〜1000nm及び横200〜1000nmである。ブロックポリマー薄膜4の主表面の寸法が前者の範囲内であれば、配列されるナノシリンダーの数が適宜なものとなり、デバイス構成の際に必要となるナノシリンダー構造薄膜の数が多くなりすぎることはなく且つナノシリンダーが良好な碁盤目状に配列される。
【0029】
次に、1対の電極6,6’間に直流電圧を印加することで、ブロックポリマー薄膜4内に主表面に沿って電極6から電極6’に向けて大略一様な電場を形成する。この電場の強さは、好ましくは40〜200V/μmであり、更に好ましくは40〜100V/μmである。電場の強さが前者の範囲内であれば、ラメラ構造の形成を良好に行うことができる。これにより、図1(a)に示されているように、ブロックポリマー薄膜4の第1のセグメント部分4−1により、第2のセグメント部分4−2から分離して電場方向に沿って配向した細長い複数のパターンが形成される。このような第1のセグメント部分4−1によりパターンの形成された構造は、ラメラ構造と呼ばれる。
【0030】
以上のような電圧印加(電場印加)を行いながら、第1のセグメント部分4−1の配向が十分になされたかどうかの確認を顕微鏡観察により行う。くびれのない所要幅(例えば最小幅が最大幅の1.7倍以上)の第1のセグメント部分4−1が形成されたことを確認した後に、電場印加を停止する。これにより、ラメラ構造から、電場不存在下でのより安定な状態であるナノシリンダー構造への移行即ち構造相転移が開始される。即ち、図1(b)に示されている状態を経て、図1(c)に示されているように、第1のセグメント部分4−1からなるナノシリンダーが碁盤目状に配列された構造が得られる。この移行により、ブロックポリマー薄膜4の4つの縁辺に近接する領域において、該縁辺に沿って複数個(図1(c)では12個)のナノシリンダーが配列された形態が得られる。そして、これらの最外周配列のナノシリンダーにより形成される矩形の内部において、更に同様にして矩形を形成するようにして複数個(図1(c)では4個)のナノシリンダーの配列が形成される。図1(c)に示されているようにナノシリンダーが縦4個且つ横4個の合計16個の配列の場合には、最外周配列12個で最内周配列4個のナノシリンダーからなる碁盤目状配列の構造が得られる。
【0031】
尚、ブロックポリマー薄膜4の主表面の正方形状の1つの縁辺に近接する最外周配列のナノシリンダーの個数が奇数の場合には、最内周に配列されるナノシリンダーの個数が1個となる。また、ブロックポリマー薄膜4の主表面の形状が長方形状の場合には、最内周に配列されるナノシリンダーが複数個(例えば2〜4個)の一列配置からなることもある。
【0032】
図4は、以上のような本実施形態のナノシリンダー構造薄膜の製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。ステップS11は、ブロックポリマー薄膜4に電場を印加する工程である。ステップS12は、電場による第1のセグメント部分4−1の配向が十分になされたかどうかを確認する工程である。ステップS13は、電場による第1のセグメント部分4−1の配向が十分になされ、規則的なラメラ構造が形成された形態が実現する工程である。以上のステップS11〜S13は、上記図1(a)に関し説明した工程である。ステップS14は、ブロックポリマー薄膜4への電場の印加を停止する工程であり、上記図1(b)に関し説明した工程である。ステップS15は、規則的な碁盤目状配列構造が形成された形態が実現する工程であり、上記図1(c)に関し説明した工程である。
【0033】
以上のようにして碁盤目状配列構造が形成される理由は、次の通りである。即ち、本発明は、互いに異なる誘電率を持つ2種のセグメントからなるブロックポリマー薄膜においては、その主表面内における各セグメント部分のパターンを電場により配向制御することが可能であることを利用している。電束密度についてのガウスの法則から、ブロックポリマーを構成する各セグメントの誘電率が異なる場合には、一様電場を印加した環境下においては、各セグメント部分の境界面が電場の方向に平行となるような構造が安定に存在する。十分に電場による配向が行われた後に電場の印加を停止すると、ブロックポリマーによる相分離構造は、電場が存在しない状態で到達しうる安定構造に到達しようとする。このとき以上のような電場による配向制御を行わない場合には、最安定構造に到達する以前に、図5に示されるように第1のセグメント部分4−1が不規則に配置された準安定構造に落ち着いてしまうことが多い。しかし、本実施形態のように電場による配向制御を適切に行うことで、規則的な碁盤目状配列の最安定構造もしくは準安定構造への構造相転移が生じる。これは、配向制御により複数の第1のセグメント部分4−1の端部をブロックポリマー薄膜4の主表面の正方形状の縁辺に近接して一列状に揃えて配置したことにも基づいている。本発明は、こうしたブロックポリマーの性質を利用している。
【0034】
このように碁盤目状配列構造が良好に形成される条件として、ブロックポリマー薄膜4の矩形状縁辺に近接して最外周に配列されるナノシリンダーの縦配列の個数及び横配列の個数が多すぎないことである。この個数が多すぎると、最外周より内方に配列されるナノシリンダーに多様な配列自由度が生じて、良好な碁盤目状配列が形成されにくくなる。良好な碁盤目状配列の実現のためには、ブロックポリマー薄膜4にナノシリンダーが縦6個以下及び横6個以下で配列されるようにするのが好ましい。更に好ましくは、縦5個以下及び横5個以下で配列されるようにする。一方、この最外周に配列されるナノシリンダーの縦配列の個数及び横配列の個数の下限は2個である。
【0035】
本発明においては、以上のようにして形成されたナノシリンダー構造薄膜及びそれを有する構造体において、第1のセグメント部分4−1を除去することで空孔を形成することも可能である。このような空孔には、必要に応じて、磁性体や導電体等の適宜の材料を充填して所望のデバイスを形成することができる。
【0036】
同様に、以上のようにして形成されたナノシリンダー構造薄膜及びそれを有する構造体において、第2のセグメント部分4−2を除去することでナノシリンダーを柱状体として残存させることも可能である。このようにして除去された領域部分には、必要に応じて、磁性体や導電体等の適宜の材料を充填して所望のデバイスを形成することができる。
【0037】
以上のような第1または第2のセグメント部分4−1,4−2の除去は、使用されるブロックポリマー薄膜4に応じて、ドライエッチング、エネルギー線照射または加熱などによりなされる。
【0038】
図6は、本発明によるナノシリンダー構造薄膜を有する構造体の製造方法及びそれにより得られた構造体の一実施形態を説明するための模式的平面図である。図7はその模式的斜視図である。
【0039】
本実施形態においては、基板2上に、上記図1〜図4に関し説明した実施形態におけると同様なナノシリンダー構造薄膜を4個形成する。その際、ブロックポリマー薄膜4A,4B,4C,4Dの矩形状縁辺同士が互いに平行または直交するように、ナノシリンダー構造薄膜を田の字形状に配列する。各ブロックポリマー薄膜4A,4B,4C,4Dには、上記図1〜図4に関し説明した実施形態におけると同様な1対の電極6A,6A’;6B,6B’;6C,6C’;6D,6D’が付されている。
【0040】
各ブロックポリマー薄膜4A,4B,4C,4Dについて、上記図1〜図4に関し説明した実施形態と同様な処理を行い、同様なナノシリンダー構造を形成する。互いに隣接するナノシリンダー構造薄膜の間の間隙を適宜に設定することで、全体として構造体を見た場合において、縦及び横に隣接するナノシリンダーの配列間隔をほぼ均等なものとすることが可能となる。
【0041】
本実施形態では、ナノシリンダー構造薄膜を縦2個且つ横2個の合計4個配列してなる構造体を形成した例が示されているが、このナノシリンダー構造薄膜の個数については特に制限がなく、所望のデバイスに応じて、適宜、使用するナノシリンダー構造薄膜の数を選定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のナノシリンダー構造薄膜を有する構造体の製造方法の一実施形態を示す模式的平面図である。
【図2】本発明のナノシリンダー構造薄膜を有する構造体の製造方法の一実施形態を示す模式的斜視図である。
【図3】本発明のナノシリンダー構造薄膜を有する構造体の製造方法の一実施形態を示す模式的断面図である。
【図4】本発明のナノシリンダー構造薄膜の製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【図5】第1のセグメント部分が不規則に配置されたナノシリンダー構造薄膜を示す模式的平面図である。
【図6】本発明のナノシリンダー構造薄膜を有する構造体の製造方法の一実施形態を示す模式的平面図である。
【図7】本発明のナノシリンダー構造薄膜を有する構造体の製造方法の一実施形態を示す模式的斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
2 基板
4,4A,4B,4C,4D ブロックポリマー薄膜
4−1 第1のセグメント部分
4−2 第2のセグメント部分
6,6’,6A,6A’,6B,6B’,6C,6C’,6D,6D’ 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー薄膜にその主表面と大略直交する方向に延びた複数のナノシリンダーが形成されてなるナノシリンダー構造薄膜であって、
前記ポリマー薄膜の主表面は矩形状をなしており、前記ナノシリンダーは前記主表面内における配列が前記ポリマー薄膜の矩形状縁辺に沿った碁盤目状をなしていることを特徴とするナノシリンダー構造薄膜。
【請求項2】
前記ポリマー薄膜の矩形状縁辺を構成する4つの縁辺のうちの互いに平行な1対の縁辺に対応する前記ポリマー薄膜の1対の端面には1対の電極が付されていることを特徴とする、請求項1に記載のナノシリンダー構造薄膜。
【請求項3】
前記ポリマー薄膜は互いに異なる誘電率を持つ2種のセグメントからなるブロックポリマー薄膜であり、前記2種のうちの1種のセグメントにより前記ナノシリンダーが構成されていることを特徴とする、請求項1〜2のいずれかに記載のナノシリンダー構造薄膜。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のナノシリンダー構造薄膜を基板上に形成してなることを特徴とする構造体。
【請求項5】
複数の前記ナノシリンダー構造薄膜を前記ポリマー薄膜の矩形状縁辺同士が互いに平行または直交するように配列してなることを特徴とする、請求項4に記載の構造体。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載のナノシリンダー構造薄膜を製造する方法であって、
互いに異なる誘電率を持つ2種のセグメントからなり且つ主表面が矩形状をなすブロックポリマー薄膜を形成する工程と、
該ブロックポリマー薄膜にその矩形状縁辺を構成する4つの縁辺のうちの互いに平行な1対の縁辺に対して大略直交する方向の電場を印加して、前記2種のうちの1種のセグメントにより前記主表面内での形状が細長い複数のパターンを形成する工程と、
しかる後に前記電場の印加を停止することで、前記細長い複数のパターンを変形させて前記1種のセグメントにより前記主表面内における配列が前記矩形状縁辺に沿った碁盤目状をなす複数のナノシリンダーを形成する工程と、
を含むことを特徴とする、ナノシリンダー構造薄膜の製造方法。
【請求項7】
請求項4または5に記載の構造体を製造する方法であって、
基板上に、互いに異なる誘電率を持つ2種のセグメントからなり且つ主表面が矩形状をなすブロックポリマー薄膜を形成する工程と、
該ブロックポリマー薄膜にその矩形状縁辺を構成する4つの縁辺のうちの互いに平行な1対の縁辺に対して大略直交する方向の電場を印加して、前記2種のうちの1種のセグメントにより前記主表面内での形状が細長い複数のパターンを形成する工程と、
しかる後に前記電場の印加を停止することで、前記細長い複数のパターンを変形させて前記1種のセグメントにより前記主表面内における配列が前記矩形状縁辺に沿った碁盤目状をなす複数のナノシリンダーを形成する工程と、
を含むことを特徴とする、構造体の製造方法。
【請求項8】
前記ブロックポリマー薄膜を形成する工程において、前記基板上に複数の前記ブロックポリマー薄膜をその矩形状縁辺同士が互いに平行または直交するように配列して形成し、複数の前記ブロックポリマー薄膜のそれぞれにつき前記細長い複数のパターンを形成する工程と前記複数のナノシリンダーを形成する工程とを実行することを特徴とする、請求項7に記載の構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−70475(P2007−70475A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259214(P2005−259214)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】