説明

ナノチューブのバッキング層をもつ画像形成ベルト及びそのベルトを含む画像形成装置

【課題】ベルト式感光体においてカールを防止する能動的電荷中和装置の必要性をなくすること。
【解決手段】画像形成装置200の画像形成ベルト100は、基層20と、外側の画像形成層30と、1つ又はそれ以上のカーボン・ナノチューブ5が内部に配置された内側のバッキング層10とを含む。更に、バッキング層が、抗カール性バッキング層をさらに含むのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成のための画像形成ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
有機的なベルト式感光体が、競合業者によって、モノクロ及びカラーの電子写真印刷製品に用いられている。ベルト式感光体の前面の能動的輸送層の溶液コーティングは、溶媒が蒸発するときにベルトにカール(曲がりぐせ)を引き起こす。抗カール性(anti-curl:カールになりにくくする性質)のバックコーティングがカール問題を低減するが、バックコーティングは、感光体の電気的消去のために透明であることを要する。典型的な導電性物質(例えばカーボンブラック)は光学的に吸収性があるため、バックコーティングに導電性充填材は用いられない。従って、能動的電荷中和装置が用いられて、バックコーティング上の電荷を取り除く(この電荷は、取り除かなければベルトの引きずりを増加させる)。こうした装置の必要性をなくすためには、透明で導電性の複合物がバックコーティングに望まれる。従って、本明細書での提案は、ゼロックス社及び競合業者の両方にとって価値あるものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7060241号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
Xerox iGen3(商標)及びNuvera(商標)プリンタ内の感光体に用いられる裏面の透明なコーティングは絶縁性であるため、能動的電荷中和装置が、駆動ロール及びアイドラロールに接するベルト裏面の摩擦による静電荷蓄積を防ぐために必要であり、また、種々の電子写真用サブシステムのための重要なギャップを維持するバッカーバーに接するベルト裏面の摩擦に起因する静電荷蓄積を防ぐために必要である。
【0005】
モノクロ及びフルカラーの電子写真印刷機内で用いられるベルト式の有機感光体の裏面は、駆動ロール及びアイドラロールによって絶えず接触されて擦られ、また、感光体と種々の電子写真サブシステムとの間の重要なギャップを維持するバッカーバーによって絶えず接触されて擦られている。感光体表面の能動層は、典型的には、高分子溶媒溶液によりコーティングされている。このコーティングは、透明な導電性の膜が基層の上面に付着している高分子基層に施される。溶剤がコーティングから蒸発するときに、ベルトに望ましくないカールを引き起こす応力がベルトに誘起される。カールする傾向に対抗するため、溶液コーティングが基層の裏に施される。これは抗カール性のバックコーティングと称される。バックコーティングは、裏面コーティングが正孔輸送分子の添加を必要としない場合を除いて、典型的には、前面コーティングのための輸送層ポリマーと同様なポリカーボネートから成る。従って、バックコーティングの厚さは、例えば約15mm対約30mmというように、典型的には、表面コーティングのおよそ半分に過ぎない。
バッカーバーを押すように移動するベルトの裏面に作用するひきずり力を低減するために、通常は、添加剤が、潤滑性を増加させるように抗カール性のバックコーティング内に含まれる。典型的には、2〜4添加%の範囲内のシリカ又はテフロン(登録商標)等の添加剤が用いられる。マトリクスの高分子材料及び添加剤は絶縁性である傾向にあるため、抗カール性のバックコーティングは摩擦帯電による電荷であろう。帯電は、ベルトの裏面とバッカーバー等の固定部材との間の静電気の引きずり力を増加させる。帯電は、実際に駆動ロール上でのベルトのスリップを実際に引き起こすのに十分なものとなる。こうした問題を最小限にするために、能動的電荷中和装置が、抗カール性のバックコーティングの帯電レベルを減少させるために用いられる。iGen3(商標)製品のために、抗カール性のバックコーティングと摩擦接触状態にある炭素繊維ブラシが、望ましくない摩擦電気の帯電を減少させるために電源と接続される。Nuvera(商標)製品のためには、清掃することもできる導電性ロールが抗カール性のバックコーティングに接触している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
バックコーティング材料を十分に導電性にすることにより、抗カール性のバックコーティング上の電荷蓄積を最小限にする。このことにより、システムのコスト全体を増加させる能動的電荷中和装置の必要性をなくす。しかし、導電性のための従来の添加剤は光学的に吸収性(不透明)である傾向にある。さらに、導電性の浸透極限を実現するための添加%は、複合材料の機械的特性が損なわれるほど高い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】基層20と、外側画像形成層30と、内側バッキング層10とを含む画像形成ベルト100の立面斜視図である。
【図2】図1の矢印2の方向から見た画像形成ベルト100の立面鳥瞰図である。
【図3A】図2の線3に沿った、画像形成ベルト100の断面図である。バッキング層10を表わす。
【図3B】図3A内の参照番号3Bで表わされるバッキング層10の一部の拡張又は拡大図である。
【図4】画像形成ベルト100を含む画像形成装置200の画像形成ベルト100の部分立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
従って、本発明によれば、画像形成ベルト100は、基層20と、外側画像形成層画像形成層30と、抗カール性の内側バッキング層10とを含む。次いで、抗カール性の内側バッキング層10には、剥き出しのバッキング層表面11と併せて、1つ又はそれ以上のカーボン・ナノチューブ5が配置されている。画像形成装置200は画像形成ベルト100を含む。画像形成装置200は、1つ又はそれ以上に含まれる導電性バッカーバー40(図4)、1つ又はそれ以上に含まれる接地ブラシ50(図4)、又は導電性バッカーバー40及び接地ブラシ50のいずれかの組み合わせを用いて、バッキング層表面11を接地源9(図4)に導電的に結合するように配置される。
【0009】
ここで図1を参照すると、基層20と、外側画像形成層30と、内側バッキング層10とを含む画像形成ベルト100の独立した立面斜視図がある。外側画像形成層30は、剥き出しの外部画像形成層表面31を形成する。バッキング層10は、次いで、剥き出しの内側バッキング層表面11を形成する。バッキング層表面11は、次いで、ベルト内側の中空部1を取り囲んで定める。さらに、画像形成ベルト100の上に矢印2が示され、ベルトの中空部1に向かって下方を指している。
【0010】
ここで図2を参照すると、図1の参照矢印2の方向から見た、画像形成ベルト100の独立したトップダウンの立面鳥瞰図がある。図示されるように、参照線3が画像形成層表面31及びバッキング層表面11を横切っている。
【0011】
ここで図3Aを参照すると、図2の線3に沿った、画像形成ベルト100の断面図がある。画像形成層30と、基層20と、バッキング層10とが表わされる。図示されるように、バッキング層10の一部が、参照番号3Bによって表わされる。
【0012】
ここで図3Bを参照すると、図3A内の参照番号3Bで表わされるバッキング層10の一部の拡張又は拡大図がある。図示されるように、バッキング層10には、1つ又はそれ以上のカーボン・ナノチューブ5が含まれている。
【0013】
ここで図4を参照すると、画像形成ベルト100を含む画像形成装置200が表わされる。処理方向が矢印4により表わされる。処理方向4における画像形成ベルト100の移動は、参照番号101で表わされる。図示されるように、画像形成装置200は接地源9を含む。
【0014】
1つの実施形態においては、画像形成装置200はコピー機を含む。
【0015】
別の実施形態においては、画像形成装置200は印刷機を含む。
【0016】
さらに別の実施形態においては、画像形成装置200はファクシミリ機を含む。
【0017】
さらに図4を参照すると、1つの実施形態において、画像形成装置200は、1つ又はそれ以上に含まれる導電性のバッカーバー40により、接地源9を画像形成ベルト100のバッキング層表面11に結合するように配置される。図示されるように、接地源9は第1接地パス9.1によりバッカーバー40に結合される。バッカーバー40は、次いで、バッキング層表面11に接するように配置される。図4では、バッキング層表面11とバッカーバー40との接触は参照番号49で表わされる。こうしたバッカーバー40とバッキング層表面との接触49の結果として、接地源9が画像形成ベルト100のバッキング層表面11に結合される。
【0018】
さらに図4を参照すると、別の実施形態においては、画像形成装置200は、1つ又はそれ以上に含まれる導電性の接地ブラシ50により、接地源9を画像形成ベルト100のバッキング層表面11に結合するように配置される。図示されるように、接地源9は、第2接地パス9.2により接地ブラシ50に結合される。接地ブラシ50は、次いで、バッキング層表面11に接するように配置される。図4では、バッキング層表面11と接地ブラシ50との接触は参照番号59で表わされる。こうした接地ブラシ50とバッキング層表面との接触59の結果として、接地源9が画像形成ベルト100のバッキング層表面11に結合される。
【0019】
さらに図4を参照すると、さらに別の実施形態においては、画像形成装置200は、1つ又はそれ以上に含まれる導電性の接地装置60により、接地源9を画像形成ベルト100のバッキング層表面11に結合するように配置される。図示のように、接地源9は、第3接地パス9.3により接地装置60に結合される。接地装置60は、次いで、バッキング層表面11に接するように配置される。図4では、バッキング層表面11と接地装置60との接触は参照番号69で表わされる。こうした接地装置60とバッキング層表面との接触69の結果として、接地源9が画像形成ベルト100のバッキング層表面11に結合される。
【0020】
このようにして、電気的導電性及び光学的透明性の両方を有する複合材料内の高分子充填材としてカーボン・ナノチューブ5を内蔵する、有機的なベルト式感光体100のための抗カール性のバックコーティング層10が提示される。低い割合のカーボン・ナノチューブ5で得られた導電性は、バックコーティングが絶縁材料であるときに用いられる能動的電荷中和装置の必要性を排除する。光学的透明性は、サイクル処理の間、感光体100を電気的に消去するためのバッキング層10からの露光を可能にする。
【0021】
ここで説明される通り、カーボン・ナノチューブ5が抗カール性のバックコーティング層10に導電性を与えるために充填材として用いられる。カーボン・ナノチューブ(「CNTと略称することもある」)5は、原子の単層が、1〜10ナノメートルまでのオーダーの直径で、数百マイクロメートルの長さの継ぎ目のない管の中に巻き込まれる新しいカーボンの分子形態を表わす。多層ナノチューブ(「MWNT」)は、1991年に、NEC研究室のイイジマ氏により最初に発見された。2年後、彼は単一壁ナノチューブ(「SWNT」)を発見した。それ以来、ナノチューブは、世界中の研究者達の注目を集めてきた。ナノチューブは、並外れた電気的、機械的及び熱的な伝導特性を示す。ナノチューブは、ナノチューブのカイラリティ(chirality:ねじれ(ツイスト))に応じて、導電性又は半導電性のいずれかになり得る。それらは、鋼よりも遙かに高い降伏応力を有し、永久的な損傷を受けないでねじることができる。CNTの熱伝導率は銅よりも遙かに高く、ダイアモンドに匹敵する。ナノチューブは、炭素アーク放電、パルス化・レーザ蒸発、化学蒸着気相堆積(「CVD」)及び高圧COを含む多数の方法により製造することができる。カーボンのみを含むナノチューブの変形体は、等量のホウ素及び窒素を有するナノチューブを含む。
【0022】
カーボン・ナノチューブのアスペクト比(直径に対する長さの比)は非常に高いため、電気的導電性のための浸透極限(おおよそアスペクト比の逆数)は、カーボン・ブラック等の典型的な導電性充填材よりも遙かに低い。エポキシにSWNTを添加することに対する浸透上限は、0.1wt%から0.2wt%までに過ぎない。このレベルの添加では、マトリクス材料の他の特性に影響を及ぼさない。より高い添加になると、導電性は104倍に増加する。マサチューセッツ州02138 ケンブリッジ スミス・プレイス38所在のHyperion Catalysis International社が、導電性の高分子材料を必要とする種々の用途のために、MWNTの複合材料を生産する。
【0023】
マサチューセッツ州02038 フランクリン マスター・ドライブ2所在のEikos社のPaul J. Glatkowski氏による論文「Carbon nanotube based transparent conductive coatings」の開示は、文字通りに、同じ開示が十分にかつ完全にここで説明されているのと同じ効果をもって、引用によりここに組み込まれており(http://www.eikos.com/articles/conductive_coatings.pdfを参照されたい)、カーボン・ナノチューブ系の透明な導電性コーティングのためのNanoshield(登録商標)技術を説明する。Eikos社は、95%の光学的透過率において、105オーム/スクエアの抵抗をもつコーティングを実証している。
【0024】
注記:用語「NANOSHIELD」は、前述のEikos社の登録商標である。
【0025】
さらに、2006年6月13日に同じPaul J. Glatkowski氏に付与された「Coatings comprising carbon nanotube and methods for forming same」という名称の米国特許第7,060,241号を参照されたいが、この特許の開示は、文字通りに、同じ開示が十分にかつ完全にここで説明されるのと同じ効果で、引用によりここに組み込まれる。
【0026】
カーボン・ナノチューブ5を含む抗カール性のバックコーティング複合層10を、コーティングと接触する導電性の接地ブラシ50であるか、或いは、十分な導電性を有することができるバッカーバー40等の接地された構成要素のいずれかにより接地して、バックコーティング層10上のどのような電荷蓄積も継続的に放散することができる。
【0027】
このように、本発明の第1の態様、即ち、基層20と、外側画像形成層30と、内側バッキング層10とを含む画像形成ベルト100が説明され、このバッキング層10には、1つ又はそれ以上のカーボン・ナノチューブ5が配置されている。
【0028】
画像形成ベルト100の1つの実施形態においては、バッキング層10の画像形成ベルト100は、さらに抗カール性バッキング層を含む。
【0029】
さらに、本発明の第2の態様、即ち、画像形成ベルト100を含む画像形成装置200が説明されており、この画像形成ベルト100は、基層20と、外側画像形成層30と、内側バッキング層10とを含み、このバッキング層10には、1つ又はそれ以上のカーボン・ナノチューブ5が配置されている。
【0030】
画像形成装置200の1つの実施形態においては、画像形成ベルト100のバッキング層10は、さらに抗カール性バッキング層10を含む。
【0031】
画像形成装置200の更なる実施形態においては、画像形成ベルト100の内側バッキング層10はバッキング層表面11を含み、画像形成装置200は、1つ又はそれ以上に含まれる導電性のバッカーバー40により、バッキング層表面11を接地源9に結合するように配置される。
【0032】
画像形成装置200の別の実施形態においては、画像形成ベルト100の内側バッキング層10はバッキング層表面11を含み、画像形成装置200は、1つ又はそれ以上に含まれる導電性の接地ブラシ50により、バッキング層表面11を接地源9に結合するように配置される。
【0033】
画像形成装置200のさらに別の実施形態においては、画像形成ベルト100の内側バッキング層10はバッキング層表面11を含み、画像形成装置200は、少なくとも1つの含まれる導電性バッカーバー40を少なくとも1つの導電性接地ブラシ50と併せて用いて、バッキング層表面11を接地源9に結合するように配置される。
【0034】
画像形成装置200のさらに別の実施形態においては、画像形成装置200はコピー機を含む。
【0035】
画像形成装置200のさらに別の実施形態においては画像形成装置200は印刷機を含む。
【0036】
画像形成装置200のさらに別の実施形態においては、画像形成装置200はファクシミリ機を含む。
【符号の説明】
【0037】
1:ベルト内側の中空部
5:カーボン・ナノチューブ
9:接地源
9.1、9.2、9.3:接地パス
10:内側バッキング層
11:バッキング層表面
20:基層
30:外側画像形成層
31:画像形成層表面
40:バッカーバー
50:接地ブラシ
60:接地装置
100:画像形成ベルト
200:画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成ベルトを含む画像形成装置であって、
前記画像形成ベルトが、基層と、外側の画像形成層と、1つ又はそれ以上のカーボン・ナノチューブが内部に配置された内側のバッキング層とを含む、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成ベルトの前記バッキング層が、抗カール性バッキング層をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像形成ベルトの前記内側バッキング層はバッキング層表面を含み、前記画像形成装置は、1つ又はそれ以上含まれる導電性のバッカーバーにより、前記バッキング層表面を接地源に結合するように配置されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成ベルトの前記内側バッキング層はバッキング層表面を含み、前記画像形成装置は、1つ又はそれ以上含まれる導電性の接地ブラシにより、前記バッキング層表面を接地源に結合するように配置されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記画像形成ベルトの前記内側バッキング層はバッキング層表面を含み、前記画像形成装置は、少なくとも1つ含まれる導電性のバッカーバーを、少なくとも1つ含まれる導電性接地ブラシと併せて用いて、前記バッキング層表面を接地源に結合するように配置されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−247802(P2012−247802A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−194682(P2012−194682)
【出願日】平成24年9月5日(2012.9.5)
【分割の表示】特願2007−192068(P2007−192068)の分割
【原出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】