説明

ニ―ドル組立装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えばニードルローラベアリングのような針状コロ軸受において、転動体としてのニードルローラを組み付ける装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、例えばプラネタリーギアの一部を構成するピニオンギアは、転動体にニードルローラを用いたラジアル軸受として構成されている。そしてかかるニードルローラの組付は、例えば特開昭56―76353号のようにニードルを横向きにして自動的に組み付ける装置や、特開昭60―6313号に示すようにニードルを縦向きにして組み付ける装置が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし従来の自動組付は、例えば前者の特開昭56―76353号のように横向きで組み付ける場合にあっては、挿入の初期、或いは供給フィーダ内のニードル数が少なくなった場合とかにおいてニードルが傾いて挿入されやすく、いずれか1本でも傾いて挿入されると爾後のニードルが正規に挿入出来なくなるという問題があった。又、後者の特開昭60―6313号の場合は、ワーク上に仮組付した複数の縦向きニードルがすべて均一に落下しないと円滑に挿入されず、又、ニードルとダミーシャフトを別個の治具で整合する必要があることから作業が複雑になるという問題があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】かかる課題を解決するため、本発明は外周に複数のニードル保持溝を備えた保持軸をインデックス軸を介して回転させ、この保持軸に向けてニードルプッシャーを進退動させてニードル保持溝内にニードルを押し込むようにしたニードル組立装置において、前記インデックス軸に連結し且つ揺動によって該インデックス軸を回転せしめる揺動部材を連結するとともに、駆動部によって進退動自在な押圧部材を設けた。そして、この押圧部材の一端側に挟持爪を設けて、該挟持爪によって前記ニードルプッシャーを保持せしめるとともに、押圧部材の他端側にスライダー部材を設け、押圧部材が所定ストローク長だけ前進すると、挟持爪が開いてニードルプッシャーの保持を解放し且つスライダー部材が前記揺動部材に当接して該揺動部材を揺動させるようにした。そして、前記スライダー部材と揺動部材の当接は、ニードルプッシャーの前進ストローク端となるようにした。
【0005】
【作用】1つの駆動部によってニードルプッシャーの進動とニードル保持部材のインデックス回転の両者を行わしめることが出来る。すなわち、駆動部によって押圧部材が前進すると、挟持爪によって保持されるニードルプッシャーも前進し、その後挟持爪によるニードルプッシャーの保持を切り離して更に押圧部材を前進させればスライダー部材のみが前進する。そしてこのスライダー部材で揺動部材を揺動させてニードル保持部材をインデックス回転させる。この際、スライダー部材と揺動部材の当接を、ニードルプッシャーの前進ストローク端とすることで、ニードルがニードルプッシャーによって確実にニードル保持溝に押し込まれた後、インデックス回転させることが出来る。
【0006】
【実施例】本発明のニードル組立装置の実施例について添付した図面に基づき説明する。図1は本発明の組立装置の全体斜視図、図2は一部を断面とした正面図、図3は本装置の要部の内部構造を示す斜視図である。
【0007】まず装置の全体構成の概要について図1から図3に基づき説明する。組立装置1は、底板2上に取り付けられた下部支柱3と、この下部支柱3上に取り付けられた中間プレート4と、この中間プレート4に立設される上部支柱5と、この上部支柱5上に取り付けられる上部プレート6を備え、底板2上には、図2、図3に示すようなプッシャー7が設けられるとともに、このプッシャー7を挟んで一対のレール8、8が設けられている。
【0008】そしてこのレール8、8には、後述するワーク載置台10の係合部11が係合して摺動自在とされ、ワーク載置台10に取り付けられたハンドグリップ部12によって、下方の底板2と上方の中間プレート4の間の空間部に抜き差し自在とされている。
【0009】そしてこのワーク載置台10は、ワークWをセットする際外方に引き出されて、上方に突出する位置決めピン13まわりに筒状ワークWをセットし、再び押し込んでその位置でニードルを組み付ける。
【0010】中間プレート4上には、後述する押圧機構14が設けられている。そしてこの押圧機構14の前面側には、上方から垂下する保持軸15が臨んで、押圧機構14によって押し出された縦向きニードルN(図2に示す)をこの保持軸15の外周に沿って配列するようにしている。このためこの保持軸15は上方のインデックス軸21の下端に取り付けるとともに、外周面には後述するニードル保持溝15aが周方向に沿って設けられている。又、配列されたニードルNを下方に向けて押し込むため、保持軸15の外周には挿入筒16が設けられている。
【0011】この挿入筒16は保持軸15の外周に沿って上下動自在としている。つまり、この挿入筒16には連結部材17が取り付けられるとともに、この連結部材17は、上部プレート6に固着される昇降シリンダユニット18のロッド下端に結合されており、この昇降シリンダユニット18の作動によって、昇降動する。
【0012】又、上部プレート6の上部には、前述のインデックス軸21を軸まわりの一方向側にのみ回転させるワンウェイクラッチ19が設けられている。そしてこのワンウェイクラッチ19の上部にはインデックス盤20が設けられており、このインデックス盤20に、後述するインデックス機構22を連結している。そしてインデックス機構22によってインデックス軸21を回転させながら保持軸15の外周まわりにニードルNを仮組付けし、そのまま下方の筒状ワーク内に挿入し組み付ける。
【0013】それでは、各構成の細部について順次説明する。ワーク載置台10は、既述のように位置決めピン13まわりにワークWが位置決め載置されるが、この位置決めピン13は、中空部材23の上部に設けられている。そしてこの中空部材23の中空内にはスプリング24で下方に付勢される支持板25が昇降自在に設けられている。
【0014】そして、位置決めピン13は、この支持板25に支えられるスプリング26によって上方に付勢されており、又、この位置決めピン13の外周部には、支持板25に取り付けられたスリーブ状のロケーター27が配設されている。そしてこのロケーター27は、支持板25が降下した位置で上端部を僅かに筒外に突出させるとともに、支持板25が上昇する際は、位置決めピン13の外周部に沿って上方に摺動し得るようにしている。又、このロケーター27の外径は、筒状ワークWの内径に略等しい径として、筒状ワークWの筒内を挿嵌するようにしている。そして支持板25の下方には、既述のプッシャー7が臨むこととなる。
【0015】このため、このプッシャー7が上昇して支持板25を持ち上げると、位置決めピン13及びロケーター27もワークW筒内を挿通して上昇し、位置決めピン13の上端が前記保持軸15の下端に当接し、ロケーター27の上端が保持軸15の下端部附近に臨むようにしている。
【0016】次に押圧機構14について、図4に基づき説明する。尚、図4は図2のA方向から見た押圧機構の平面図である。
【0017】押圧機構14は、中間プレート4に固着された取付台30と、この取付台30に取り付けられた駆動部としてのエアシリンダユニット31と、このエアシリンダユニット31のシリンダロッド先端に取り付けられた押圧部材32を備え、この押圧部材32の一端側には挟持爪33が設けられるとともに、他端側には筒状のスライダー部材34が設けられている。そしてこのスライダー部材34は、取付台30に取り付けられたガイドシャフト35に対して摺動自在とされている。
【0018】挟持爪33は、一対の爪を各揺動ピン36、36で枢着して、他端側をスプリング37によって閉側に付勢している。つまり、押圧部材32はエアシリンダユニット31の作動によって図4中左右方向に進退動することとなるが、前進ストローク(図4の左方)の前方側に揺動ピン36を設け、進行方向の後方側が開閉するようにしている。そしてこの挟持爪33によって、以下に述べるニードルプッシャー38の基端部を挟持している。
【0019】ニードルプッシャー38は、取付台30に固着したガイドブロック40内を摺動自在に設けられている。つまり、ガイドブロック40の側面部にはニードルプッシャー38のロッド部38aを挿通せしめる筒状ガイド孔41が設けられるとともに、上部には、筒状ガイド孔41の先端に連通するニードル供給孔42が設けられている。そしてこのニードル供給孔42の前方側には、縦向きのニードルNをガイドするため、ニードル直径に略等しい幅でニードル長よりやや高い高さを有する幅狭な偏平状ガイド孔43が設けられて、前記筒状ガイド孔41に連通している。そしてニードルプッシャー38のロッド部38a先端には、偏平状ガイド孔43内を摺動自在に進退動するプレート部38bが突出している。そしてこの偏平状ガイド孔43の先端出口に、保持軸15が臨むこととなる。又、ロッド部38aの基端側にはピン部38cが設けられて、このピン部38cが既述のように挟持爪33によって挟持されている。
【0020】一方、押圧部材32の他端側のスライダー部材34は、既述のようにガイドシャフト35に沿って前後に摺動するが、このスライダー部材34の前方には、揺動部材44が設けられている。すなわちこの揺動部材44は、ガイドシャフト35に沿って摺動自在な摺動筒45と、この摺動筒45に枢着される揺動アーム46と、摺動筒45を原位置に復帰させるためのスプリング47からなり、摺動筒45の摺動によって揺動アーム46を揺動させるようにしている。
【0021】このため、スライダー部材34が所定ストローク分前進すると摺動筒45に突き当たり、スプリング47力に抗して摺動筒45を摺動させることとなるが、スライダー部材34と摺動筒45の間の間隔tは、前述のニードルプッシャー38のプレート部38b先端と保持軸15の間の間隔tと略一致させている。
【0022】押圧機構14は以上のような構成であるが、次にインデックス機構22について図3に基づき説明する。インデックス機構は、下端を揺動アーム46に連結せしめた垂直軸50と、この垂直軸50上端に連結アーム51を介して連結する水平アーム52を備え、この水平アーム52が前述のインデックス盤20に連結している。そして揺動アーム46の揺動は、このインデックス機構22を介してインデックス盤20の回転に変換されるようにしている。
【0023】ところで、このインデックスは、ワンウェイクラッチ19によって、摺動筒45がスライダー部材34に押される方向に揺動アーム46が揺動する際は、インデックス盤20側のみが回転してインデックス軸21に回転力が伝達されず、逆に摺動筒45がスプリング47力で復帰する方向に揺動アーム46が揺動すると、インデックス軸21に回転が伝達されるようにしている。これは、ニードルNを保持軸15のニードル保持溝15a内に確実に押し込んだ後、インデックスするためである。
【0024】又、インデックスを更に確実にするため、インデックス軸21には図5に示すような割出し部材53を設けている。つまり、インデックス軸21に取り付けた割出し盤54の外周に、前述の保持軸15のニードル保持溝15aと等間隔ピッチの溝54aを刻設し、この溝54aにスプリング55で付勢される係合部材56を係合させて、確実に1ピッチづつ割り出そうとするものである。
【0025】次に保持軸15について説明する。保持軸15は、上方から垂下するインデックス軸21の下端に取り付けられているが、この保持軸15の下端側は、筒状ワークWの内筒径と略一致する軸径にされるとともに、この軸部外周面に複数のニードル保持溝15aが円周方向に沿って設けられている。そしてインデックス軸21が既述の要領で順次1クリックづつ回転すると、保持軸15のニードル保持溝15aが、1ピッチごと割り出されて前記偏平状ガイド孔43の前面に臨んでゆく。そして縦向きのニードルNが、このニードル保持溝15a内に保持される。
【0026】次に挿入筒16は、既述のように昇降シリンダユニット18の作動によって、昇降自在とされているが、保持軸15下端部の外周に沿って昇降するような筒径を選定している。このため、縦向きニードルNは保持軸15外周に保持された後、挿入筒16の降下によってその上端部が下方に向けて押圧されることになる。
【0027】ニードル供給装置は、前述のニードル供給孔42に向けて順次ニードルを供給すべく構成されている。すなわち、図1に示すように、例えばエア圧送装置を備えたストッカー59から延出するフィーダ管は、上部プレート6のフィーダ筒60に接続され、このフィーダ筒60とニードル供給孔42が連結されている。そして、このフィーダラインを通って、ニードルNが1本づつ供給される。
【0028】本組立装置1は以上のような構成であるが、次にこの装置による組立方法について説明する。まず、筒状ワークWをワーク載置台10にセットする。すなわち一旦ワーク載置台10を外方に引き抜いた後、ワークWの筒内に位置決めピン13を挿入せしめた状態で載置する。そして、その後ワーク載置台10を押し込む。
【0029】次に、下方のプッシャー7が上昇して支持板25を押上げる。このためロケーター27はワーク筒内を挿嵌してワークWを定位置に位置決めしつつ、上端はワークWより上方の位置、つまりニードルプッシャー38によって押し込まれたニードルNの下端を支持し得る位置に臨むこととなる。又この際、スプリング26を介して上昇する位置決めピン13が、まず保持軸15の下端に突き当たり、更にロケーター27が上昇するストローク間、スプリング26が縮むような逃がし機構を採用している。
【0030】そしてかかる状態でニードルNを順次1本づつ供給してゆく。つまり、図4に示すニードル供給孔42からニードルNが供給されると、エアシリンダユニット31によって押圧部材32が前進する。このため、ニードルプッシャー38前面のニードルNは、プレート部38bの前面で押されて図6に示すようにニードル保持溝15a内に押し込まれ、同時にニードルN下端がロケーター27の上面で支えられる。又、この際、スライダー部材34の前面は摺動筒45に当接した状態となる。
【0031】次に押圧部材32が更に前進すると、挟持爪33はスプリング37力に抗して開き始め、図7の状態となる。すなわち、ニードルプッシャー38はそれ以上前進することが出来ず停止したままであるため、挟持爪33はニードルプッシャー38の保持を解放して前進することとなり、同時にスライダー部材34は摺動筒45を摺動させつつ前進する。
【0032】このため、インデックス機構22を介して図3のインデックス盤20が空周りの方向に回転する。そして、前進ストローク後、エアシリンダユニット31の後退作動によって、摺動筒45も原位置に復帰し、揺動アーム46が復帰側に揺動すると、インデックス軸21が所定角回転する。
【0033】そしてかかる操作を何回も繰り返して、保持軸15外周の全ニードル保持溝15a内にニードルNを仮組み付けする。
【0034】次に挿入筒16を降下させて、ニードルNの上下を該挿入筒16とロケーター27で挟み込む状態とする。そして挟み込んだ後、そのまま挿入筒16とロケーター27を降下させれば、全ニードルNが一斉にワークWの筒内に挿入される。又、挿入は確実である。そしてニードルNの組み付けが終えると、再びワーク載置台10が引き出されて、ワークWが取り出される。
【0035】
【発明の効果】以上のように、本発明のニードル組立装置は、1つの駆動部によってニードルプッシャーによるニードルの押し込みとニードル保持軸のインデックス回転の両者を行わせることが出来るので、予めニードルを仮組みしてその後一斉に組み付けるような装置を簡素に構成することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の組立装置の全体斜視図
【図2】組立装置の正面図
【図3】本装置の要部の内部構造を示す斜視図
【図4】図2のA方向から見た押圧機構の平面図
【図5】図2のB一B線断面図
【図6】押圧機構の作用図でニードルプッシャーのストローク端まで前進した状態図
【図7】押圧機構の作用図で更に前進した状態図
【符号の説明】
1 組立装置
15 保持軸
15a ニードル保持溝
21 インデックス軸
32 押圧部材
33 挟持爪
34 スライダー部材
38 ニードルプッシャー
44 揺動部材
N ニードル
W 筒状ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】 外周に複数のニードル保持溝を備えた保持軸をインデックス軸を介して回転させ、この保持軸に向けてニードルプッシャーを進退動させてニードル保持溝内にニードルを押し込むようにしたニードル組立装置において、この装置は前記インデックス軸に連結し且つ揺動によって該インデックス軸を回転せしめる揺動部材と、駆動部によって進退動自在な押圧部材を備え、この押圧部材の一端側に挟持爪を設けて、該挟持爪によって前記ニードルプッシャーを保持せしめるとともに、押圧部材の他端側にスライダー部材を設け、押圧部材が所定ストローク長だけ前進すると、挟持爪が開いてニードルプッシャーの保持を解放し、且つスライダー部材が前記揺動部材に当接して該揺動部材を揺動させるようにしたことを特徴とするニードル組立装置。
【請求項2】 前記スライダー部材と揺動部材の当接は、ニードルプッシャーの前進ストローク端であることを特徴とする請求項1に記載のニードル組立装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図4】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【特許番号】第2502855号
【登録日】平成8年(1996)3月13日
【発行日】平成8年(1996)5月29日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−231010
【出願日】平成3年(1991)8月19日
【公開番号】特開平5−50341
【公開日】平成5年(1993)3月2日
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【参考文献】
【文献】特開昭56−76351(JP,A)
【文献】特開昭60−76922(JP,A)