説明

ニオブ原料又はタンタル原料を得るための処理方法、ニオブ又はタンタルの分離精製方法、酸化ニオブ又は酸化タンタルの製造方法。

【課題】ニオブ又はタンタルのいずれかを含むガラススクラップから、リン低減ニオブ原料又はリン低減タンタル原料を得るための処理方法を提供する。
【解決手段】本発明は、ニオブ又はタンタル及びリンを含有するガラススクラップから、リン低減ニオブ原料又はタンタル原料を得る処理方法であり、ガラススクラップと水酸化ナトリウム水溶液とを混合し、50℃以上の加熱処理をしてアルカリ疎解スラリーを得るアルカリ疎解工程と、アルカリ疎解スラリー又はアルカリ疎解スラリーを水で希釈した水希釈スラリーを固液分離しするアルカリ疎解スラリー固液分離工程と、アルカリ疎解ケーキを水洗して水洗ケーキを得る水洗工程と、水洗ケーキと、水及びフッ化水素酸以外の無機酸とを混合して、酸性の混合スラリーを作製し、混合スラリーを固液分離して酸洗浄ケーキを得る無機酸処理工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニオブ原料又はタンタル原料を得るための処理方法に関し、特に、リンが低減されたニオブ原料又はタンタル原料を得るための処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ニオブ(以下、場合によりNbと記載する)は、鋼中の炭素を安定化し、粒間腐食を防ぐ効果があるので鉄鋼添加材として使用されており、また、酸化ニオブは、ニオブ酸リチウム(LN)のようなニオブを含有する単結晶、スパッタリングターゲットまたは蒸着用ペレット等の薄膜形成材料、光学ガラス製品やファインセラミックなどの原料として広く用いられている。
【0003】
タンタル(以下、場合によりTaと記載する)は、耐食性、耐熱性に優れているため化学工業用として蒸留塔、オートクレーブ、熱交換器、化学繊維用紡糸ノズルなど各種化学装置に用いられている。また、酸化タンタルは、電解コンデンサの電極材料として使用され、搬送機器、電子機器、電子制御機器などに採用されている。そして、携帯電話のノイズ除去用の表面弾性波(SAW)フィルターとしてタンタル酸リチウム単結晶ウェハが使用されており、移動体通信市場の拡大に伴い、その需要も大幅に拡大している。さらに、酸化タンタルは、酸化ニオブと同様に、スパッタリングターゲットまたは蒸着用ペレット等の薄膜形成材料、光学ガラス製品やファインセラミックなどの原料として広く用いられている。
【0004】
ところで、このようなタンタルやニオブは、希少品であるにも係わらず、上述したように、その用途が多く、需要は著しく増加しており、タンタル原料やニオブ原料の供給が需要に追いつかない状況下にある。そのため、原料として、タンタルやニオブの製造工程で生じる廃棄物や、不要になった製品を再利用することが試みられている。
【0005】
この再利用の一例として、酸化ニオブ(以下、場合によりNbと記載する)や酸化タンタル(以下、場合によりTaと記載する)を含有するガラスを製造、加工する段階で発生するガラススクラップを利用することが知られている。そして、このようなガラススクラップあるいはその他のスクラップから、原料となるニオブやタンタルを取り出す技術としては、次のような先行技術が知られている。
【0006】
例えば、特許文献1においては、Ta含有ガラススクラップを塩酸にて処理してLa等の不純物を除去して、Ta品位を高めたものを、フッ化水素酸を用いて溶解後、溶媒抽出にて分離精製してTa精製液を得て、アンモニア水にて沈殿を生成し、ろ過、乾燥後、焼成して高純度酸化タンタルを得ることが記載されている。
【0007】
また、特許文献2では、金属不純物及びフッ素不純物を含有するTa/Nb含有原料を水酸化ナトリウム溶液により100℃以下で疎解して疎解スラリーを得て、疎解スラリーを水で洗浄後ろ別し、残留物をフッ酸以外の鉱酸により洗浄して、濾別することにより、不純物が低減されたTa/Nb含有原料を得るTa/Nb含有原料の処理方法及びさらに、フッ酸溶解、溶媒抽出による分離精製、アンモニア添加による沈殿生成、ろ過、乾燥、焼成して酸化ニオブ、酸化タンタルを得る方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許3586104号公報
【特許文献2】特許3641190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ニオブやタンタルを含有するガラススクラップでは、酸化ニオブや酸化タンタルの他、酸化ランタン(La)や酸化ガドリニウム(Gd)等を主成分とする場合がある。このようなガラススクラップの場合は、上記した特許文献1のように酸処理を行うことにより、ニオブやタンタルの品位を高めて回収することができる。しかし、ガラススクラップにリン(以下場合によりPと記載する)が含有されている場合、酸処理を行ってもリンの除去は困難である。
【0010】
また、特許文献2の処理方法では、ガラススクラップにリンが含有されている場合に、そのリンを除去対象としていなかったため、回収したニオブやタンタルに、どの程度のリンが含まれるか否かについては、具体的な検討がされていない。
【0011】
そのため、ガラススクラップを処理して得られたニオブ原料やタンタル原料には、リンが多く含有されている場合がある。この原料に含有されたリンは溶媒抽出や活性炭による吸着にて除去するのが困難なため、リンを多く含有するタンタル/ニオブ原料をそのままフッ化水素酸等による溶解に供用すると、製品である酸化ニオブ/酸化タンタル等にもリンが混入してしまうため、溶解に供用する前にリンを除去することが必要となる。
【0012】
そこで、本発明はニオブ又はタンタルの少なくとも一方及びリンを含有するガラススクラップ(例えば、リン酸塩系Ta/Nbガラススクラップ)から、リンが低減されたニオブ又はタンタルの少なくとも一方の原料を得るための処理方法を提供すること、及び前記処理方法に得られたリンが低減されたニオブ又はタンタルの少なくとも一方の原料を用いてニオブ精製液又はタンタル精製液の少なくとも一方を得る分離精製方法、さらには、前記分離精製方法で得られたニオブ精製液又はタンタル精製液の少なくとも一方からニオブ製品或いはタンタル製品を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明は、ニオブ又はタンタルの少なくとも一方及びリンを含有するガラススクラップから、リンが低減されたニオブ又はタンタルの少なくとも一方の原料を得るための処理方法であって、前記ガラススクラップと、水酸化ナトリウム水溶液とを混合し、50℃以上の加熱処理をしてアルカリ疎解スラリーを得るアルカリ疎解工程と、アルカリ疎解スラリー又はアルカリ疎解スラリーを水で希釈した水希釈スラリーを、固液分離してアルカリ疎解ケーキを得るアルカリ疎解スラリー固液分離工程と、アルカリ疎解ケーキを水洗して水洗ケーキを得る水洗工程と、水洗ケーキと、水及びフッ化水素酸以外の無機酸とを混合して、酸性の混合スラリーを作製した後、混合スラリーを固液分離して酸洗浄ケーキを得る無機酸処理工程、を備えることを特徴とする、リン低減ニオブ原料又はリン低減タンタル原料の少なくとも一方を得るための処理方法とした。
【0014】
本発明におけるアルカリ疎解スラリー固液分離工程は、アルカリ疎解スラリーを水で希釈しない場合、アルカリ疎解工程で使用する水酸化ナトリウム水溶液の濃度(CNa)が200g/L以下であることが好ましく、アルカリ疎解スラリーを水で希釈する場合、アルカリ疎解工程で使用する水酸化ナトリウム水溶液の濃度(CNa)と水酸化ナトリウム水溶液の液量(VNa)、及びアルカリ疎解スラリーの希釈に使用した水の液量(V)から得られる次式 CNa=CNa×VNa/(VNa+V)(式1)で計算される仮想水酸化ナトリウム水溶液の濃度(CNa)が200g/L以下であることが好ましい。
【0015】
また、本発明におけるアルカリ疎解スラリー固液分離工程の固液分離は、50℃以下の温度にて行うことが好ましい。
【0016】
本発明におけるガラススクラップは、ニオブ又はタンタルを合計して五酸化物換算(Nb+Ta)で5〜70質量%、リンをP換算で3〜60質量%含有するものが好ましい。
【0017】
また、本発明におけるガラススクラップは、目開き500μmの試験用金属製網ふるいを用いた乾式ふるい分け試験において、ふるい上の割合が5質量%以下になるまで粉砕しておくことが好ましい。
【0018】
そして、本発明のガラススクラップは、含有するリンのP換算モル量をPmol、使用する水酸化ナトリウムのモル量をNamolとしたとき、Na/6P≧1.0であることが好ましい。
【0019】
さらに、本発明のガラススクラップがケイ素を含む場合、含有するリンのP換算モル量をPmol、ケイ素のSiO換算モル量をSimol、使用する水酸化ナトリウムのモル量をNamolとしたとき、Na/(6P+2Si*)≧1であることが好ましい。
【0020】
本発明における水洗工程で使用する水の量は、ガラススクラップ1kg当たり0.5L〜10Lであることが好ましい。
【0021】
本発明における無機酸処理工程で使用する無機酸は、フッ化水素酸以外の塩酸又は硫酸の少なくとも一方であり、混合スラリーのpHをpH0.5〜4.0になるように無機酸水溶液の使用量を調整することが好ましい。
【0022】
本発明は、上記した処理方法により得られた、リン低減ニオブ原料又はリン低減タンタル原料の少なくとも一方を、フッ化水素酸又はフッ化水素酸及び無機酸にて溶解した液を溶媒抽出にて分離精製を行い、ニオブ精製液又はタンタル精製液の少なくとも一方を得る、ニオブ又はタンタルの少なくとも一方の分離精製方法に関する。
【0023】
本発明は、本発明に係る分離精製方法により得られたニオブ精製液と、アンモニア、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウムから選択される少なくとも一種の沈澱剤とを混合し、生成した沈殿物を焼成して酸化ニオブ(Nb)を製造する酸化ニオブの製造方法に関する。
【0024】
また、本発明は、本発明に係る分離精製方法により得られたタンタル精製液と、アンモニア、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウムから選択される少なくとも一種の沈澱剤とを混合し、生成した沈殿物を焼成して酸化タンタル(Ta)を製造する酸化タンタルの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ニオブまたはタンタルの少なくともいずれかを含むガラススクラップから、リン低減ニオブ原料又はリン低減タンタル原料を容易に得ることができる。また、本発明によれば、リンの含有量が低減された酸化ニオブや酸化タンタル、ならびに、フッ化ニオブ酸カリウム結晶やフッ化タンタル酸カリウム結晶を、ガラススクラップから容易に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ガラススクラップの処理方法に関する工程フロー図。
【図2】溶媒抽出(抽出、洗浄、逆抽出)に関する概念図(実施例32のTa分離精製)。
【図3】酸化ニオブ/酸化タンタルに関する製造フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明における実施形態について説明する。
【0028】
本発明に係る処理方法は、リン(P)、及びニオブまたはタンタルの少なくとも一方を含有するガラススクラップを処理対象とする。このようなガラススクラップは、ニオブまたはタンタルを含有するリン酸塩系ガラスやフツリン酸塩系ガラス等のスクラップであり、リン及び、酸化ニオブまたは酸化タンタルを含有するガラスの製造、加工工程において生じる失敗品、端材等が該当する。
【0029】
本発明に係る処理方法において使用するガラススクラップは、P含有量がP換算で、3質量%〜60質量%であることが好ましい。P含有量が3質量%未満の場合、P含有量の少ない別の原料と混合して再生処理した方が効率的だからである。また、P含有量が、60質量%超えると、Pの除去が不十分になりやすい傾向となる。
【0030】
また、本発明に係る処理方法において使用するガラススクラップは、NbとTaとの合計の含有量が、Nb及びTaの換算で、5質量%〜70質量%であることが好ましい。5質量%未満であると、処理コスト高となり、70質量%を超えるものは、通常入手できないからである。
【0031】
そして、本発明に係る処理方法において使用するガラススクラップは、処理前に予め粉砕しておくことが好ましい。一般的に、ガラススクラップは塊状のため、効率的な処理が行えないためである。ガラススクラップの粉砕は、ジョークラッシャー等の粗粉砕装置にて粗粉砕を行った後、ボールミル等の微粉砕装置にて微粉砕することが好ましい。ガラススクラップからPを効率的に除去するためには、レーザー回折法粒度分布測定による体積メジアン径(D50)が50μm以下になるまで粉砕することが好ましく、30μm以下になるまで粉砕することがより好ましく、20μm以下になるまで粉砕することがさらに好ましい。また、粒子径500μm以上の粗大粒子からはPが除去されにくいため、目開き500μmの試験用金属製網ふるいを用いた乾式ふるい分け試験において、ふるい上(ふるい残分)の割合が5質量%以下となるように粉砕することが好ましい。2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
【0032】
本発明に係る処理方法では、アルカリ疎解工程、アルカリ疎解スラリー固液分離工程、水洗工程と、無機酸処理工程の順でガラススクラップを処理するものであるが、各工程について以下に詳説する。
【0033】
本発明に係る処理方法におけるアルカリ疎解工程は、ガラススクラップと水酸化ナトリウム水溶液とを混合するものである。この時の混合方法としては、特に制限はないが、例えば、次のような手法がある。まず、水酸化ナトリウム水溶液を撹拌しているところにガラススクラップまたはガラススクラップスラリーを添加して混合する方法である。また、他の方法としては、ガラススクラップスラリーを撹拌しているところに水酸化ナトリウム水溶液を添加して混合する方法である。さらに、別の方法としては、必要があれば始液として水を使用し、水酸化ナトリウム水溶液とガラススクラップまたはガラススクラップスラリーを同時に添加して混合する。
【0034】
そして、本発明に係る処理方法のアルカリ疎解工程の水酸化ナトリウム水溶液濃度(CNa g/L)は、200g/L以下が好ましく、150g/L以下がより好ましく、100g/L以下がさらに好ましい。なお、この水酸化ナトリウム水溶液濃度は、このガラススクラップを水と混合したスラリーとして供用する場合や、混合する際の始液として水を含む場合はそれらが含む水も計算に入れた濃度とする。また、あまり高濃度であるとPと反応してPのナトリウム含有化合物となっても、溶解度の関係でPが固形分中に留まりやすい傾向がある。ただし、高濃度の場合は、後のアルカリ疎解スラリー固液分離工程において固液分離前に、水を加えて十分撹拌・混合すれば溶出することができる。また、溶解度は水酸化ナトリウム使用量や、疎解時に溶出する成分によって変化するので、留意する必要がある。そして、この水酸化ナトリウム水溶液濃度10g/L以上が好ましく、15g/L以上がより好ましく、20g/L以上がさらに好ましい。あまり低濃度であると、水使用量と排水量が多くなるからである。
【0035】
そして、本発明に係る処理方法のアルカリ疎解工程の水酸化ナトリウム使用量は、ガラススクラップが含有するリンのP換算モル量をPmol、使用する水酸化ナトリウムのモル量をNamolとしたとき、P除去率の点から、Na/6P≧1.0が好ましく、Na/6P≧1.1がより好ましく、Na/6P≧1.2がさらに好ましい。Na=6Pは、P+6NaOH→2NaPO+3HOの反応の計算量に相当する。
【0036】
本発明に係る処理方法において、処理対象のガラススクラップがケイ素(Si)を含有する場合は、ケイ素に対応する水酸化ナトリウムを使用することが好ましい。ガラススクラップが含有するリンのP換算モル量をPmol、含有するケイ素(Si)のSiO換算モル量をSimol、使用する水酸化ナトリウムのモル量をNamolとしたとき、P除去率の点から、Na/(6P+2Si)≧1.0が好ましく、Na/(6P+2Si)≧1.1がより好ましく、Na/(6P+2Si)≧1.2がさらに好ましい。Na=6P+2Siは、P+6NaOH→2Na3PO4+3HO及びSiO+2NaOH→NaSiO+HOの反応における合計の計算量に相当する。ただし、ガラススクラップがケイ素を含有していても、その含有量がSiO換算で5質量%未満であり、P/Siが5を超える場合は、2Siを上記式の計算に入れなくても実質上問題ない。逆に言えば、ガラススクラップのケイ素含有量がSiO換算で5質量%以上であるか、P/Si≦5の少なくとも一方に該当する場合は、2Siを上記式の計算に入れた方が好ましい。
【0037】
処理対象のガラススクラップがタングステン(W)を含有する場合は、上記したケイ素(Si)を含有する場合と同様に、タングステンに対応する水酸化ナトリウムを使用することが好ましい。ガラススクラップが含有するリンのP換算モル量をPmol、含有するタングステン(W)のWO換算モル量をWmol、使用する水酸化ナトリウムのモル量をNamolとしたとき、P除去率の点から、Na/(6P+2W)≧1.0が好ましく、Na/(6P+2W)≧1.1がより好ましく、Na/(6P+2W)≧1.2がさらに好ましい。Na=6P+2Wは、P+6NaOH→2Na3PO4+3HO及びWO+2NaOH→NaWO+HOの反応における合計の計算量に相当する。ただし、ガラススクラップがタングステンを含有していても、その含有量がWO換算で5質量%未満であり、P/Wが5を超える場合は、2Wを上記式の計算に入れなくても実質上問題ない。逆に言えば、ガラススクラップのケイ素含有量がWO換算で5質量%以上であるか、P/Si≦5の少なくとも一方に該当する場合は、2Wを上記式の計算に入れた方が好ましい。
【0038】
処理対象のガラススクラップに、ケイ素とタングステンの両方が含有されている場合には、上記条件に関して、両元素の含有量を考慮して、使用する水酸化ナトリウムの量を決定することが好ましい。
【0039】
ガラススクラップが含有するニオブ又はタンタルの五酸化物換算(Nb+Ta)モル量をMmolとしたとき、コストの点から、Na/(6P+6M)≦2が好ましく、Na/(6P+6M)≦1.5がより好ましく、Na/(6P+6M)≦1がさらに好ましい。Na=6P+6Mは、P+6NaOH→2NaPO+3HO及びM+6NaOH→2NaMO+3HO(この反応式におけるMは、ニオブ(Nb)またはタンタル(Ta)である)の反応における合計の計算量に相当する。
【0040】
ガラススクラップがケイ素を含有する場合は、ガラススクラップが含有するニオブ又はタンタルの五酸化物換算(Nb+Ta)モル量をMmolとしたとき、コストの点から、Na/(6P+2Si+6M)≦2が好ましく、Na/(6P+2Si+6M)≦1.5がより好ましく、Na/(6P+2Si+6M)≦1がさらに好ましい。Na=6P+2Si+6Mは、P+6NaOH→2NaPO+3HO、SiO+2NaOH→NaSiO+HO及び、M+6NaOH→2NaMO+3HO(この反応式におけるMは、ニオブ(Nb)またはタンタル(Ta)である)の反応における合計の計算量に相当する。ただし、ガラススクラップがケイ素を含有していてもSiO換算で5質量%未満であり、P/Siが5を超える場合は、2Siを上記式の計算に入れなくても実質上問題ない。逆に言えば、ガラススクラップのケイ素含有量がSiO換算で5質量%以上であるか、P/Si≦5の少なくとも一方に該当する場合は、2Siを上記式の計算に入れた方が好ましい。
【0041】
ガラススクラップがタングステン(W)を含有する場合は、上記したケイ素の場合と同様に、ガラススクラップが含有するニオブ又はタンタルの五酸化物換算(Nb+Ta)モル量をMmolとしたとき、コストの点から、Na/(6P+2W+6M)≦2が好ましく、Na/(6P+2W+6M)≦1.5がより好ましく、Na/(6P+2W+6M)≦1がさらに好ましい。Na=6P+2W+6Mは、P+6NaOH→2NaPO+3HO、WO+2NaOH→NaWO+HO及び、M+6NaOH→2NaMO+3HO(この反応式におけるMは、ニオブ(Nb)またはタンタル(Ta)である)の反応における合計の計算量に相当する。ただし、ガラススクラップがタングステンを含有していてもWO換算で5質量%未満であり、P/Wが5を超える場合は、2Wを上記式の計算に入れなくても実質上問題ない。逆に言えば、ガラススクラップのタングステン含有量がWO換算で5質量%以上であるか、P/Si≦5の少なくとも一方に該当する場合は、2Wを上記式の計算に入れた方が好ましい。
【0042】
処理対象のガラススクラップに、ケイ素とタングステンの両方が含有されている場合には、上記条件に関して、両元素の含有量を考慮することが好ましい。
【0043】
本発明に係る処理方法におけるアルカリ疎解工程では、ガラススクラップと水酸化ナトリウム水溶液とを混合する際の処理温度を、ガラススクラップとの反応性、特にP除去効果を考慮すると、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、70℃以上がさらに好ましい。上限は、その混合液系の沸点(この沸点は、水酸化ナトリウム濃度や、反応の進行により溶出する元素により変化する)であるが、設備のコスト及び安全性の観点から、100℃以下が好ましく、98℃以下がより好ましく、96℃以下がさらに好ましい。
【0044】
本発明に係る処理方法におけるアルカリ疎解工程では、ガラススクラップと水酸化ナトリウム水溶液とを混合する際の処理時間を、ガラススクラップの反応性、特にP除去効果とコストの観点から、1〜96時間にすることが好ましく、2〜72時間がより好ましく、3〜48時間がさらに好ましい。この処理時間は、処理対象となるガラススクラップの全量とそれに必要となる水酸化ナトリウム水溶液の全量とをすべて混合した時点からの経過時間を意味する。
【0045】
本発明に係る処理方法のアルカリ疎解工程における、ガラススクラップと水酸化ナトリウム水溶液との混合処理では、その混合処理時の圧力については、特に加圧することなく大気圧下で実施可能なのである。本発明に係る処理方法では、加圧・耐圧設備が必要なく設備のコストを抑えることができる。
【0046】
本発明に係る処理方法においては、アルカリ疎解工程の後に、固液分離工程を行うものである。この固液分離工程では、前工程のアルカリ疎解スラリーを固液分離する場合、アルカリ疎解スラリーをそのまま使用する方法と、水で希釈して行う方法とがある。
【0047】
本発明に係る処理方法における固液分離工程では、アルカリ疎解スラリーを水で希釈しない場合、上記したアルカリ疎解工程のところで説明したように、アルカリ疎解工程で使用する水酸化ナトリウム水溶液の濃度(CNa)が200g/L以下とすることが好ましく、150g/L以下がより好ましく、100g/L以下がさらに好ましい。アルカリ疎解工程で使用する水酸化ナトリウム濃度が高いと、疎解工程で生成したPのナトリウム含有化合物が水溶液に全量溶解していない恐れがあり、希釈しないで固液分離すると固液分離後のアルカリ疎解ケーキ中にPが多く残留する場合がある。
【0048】
本発明に係る処理方法における固液分離工程では、アルカリ疎解スラリーを水で希釈する場合、アルカリ疎解工程で使用する水酸化ナトリウム水溶液の濃度(CNa g/L)と水酸化ナトリウム水溶液の液量(VNa L)、及びアルカリ疎解スラリーの希釈に使用した水の液量(VL)、仮想水酸化ナトリウム水溶液の濃度CNa(g/L)とした場合、次式
Na=CNa×VNa/(VNa+V
から得られる仮想水酸化ナトリウム水溶液の濃度CNa(g/L)が200g/L以下になるように希釈することが好ましい。150g/L以下まで希釈することがより好ましく、100g/L以下まで希釈することがさらに好ましい。この仮想水酸化ナトリウム水溶液の濃度が高いと、疎解工程で生成したPのナトリウム含有化合物が水溶液に全量溶解していない恐れがあり、固液分離後のアルカリ疎解ケーキ中にPが多く残留する場合がある。ただし、水使用量と排水量の観点から10g/L以上が好ましく、15g/L以上がより好ましく、20g/L以上がさらに好ましい。
【0049】
尚、本発明に係る処理方法における固液分離工程で、仮想水酸化ナトリウム水溶液の濃度を採用しているのは次の理由による。まず、水酸化ナトリウムの少なくとも一部は、疎解により、Pを含有するガラススクラップと反応するため、実際の水酸化ナトリウム濃度を指標とすることが難しい。また、ナトリウム濃度を指標とすることも考えられるが、ガラススクラップにナトリウムが含まれている場合は、ナトリウムが溶出する可能性があり採用することができない。そこで、固液分離工程において、固液分離前に希釈に使用する水を、疎解時の水酸化ナトリウムの希釈に使用した水と仮定した仮想水酸化ナトリウム水溶液の濃度を採用することが合理的であると判断したためである。このような仮想水酸化ナトリウム水溶液の濃度を指標とすることにより、疎解に使用する水酸化ナトリウムを希釈することは、疎解後に水で希釈する場合と同一の効果が得られるものと見なすことができる。固液分離工程において水で希釈しない場合は、CNaを用いればよく、水で希釈する場合は仮想水酸化ナトリウム水溶液の濃度(CNa)を使用することで、同一の基準により工程管理が行える。つまり、固液分離工程で希釈しない場合、V=0となるので、上記の式CNa=CNa×VNa/(VNa+V)はCNa=CNa×VNa/VNa=CNaとなる。
【0050】
本発明に係る処理方法における固液分離工程では、その固液分離方法としては、各種ろ過装置によるろ過や上澄液を抜き出す方法が採用できる。上澄液抜出しの場合は、固液分離が不完全で疎解ケーキ中にPを含んだ水溶液を多く含んでいる場合があるので注意を要する。また、固液分離するときのスラリー温度は50℃以下が好ましく、40℃以下がより好ましく、30℃以下がさらに好ましい。スラリー温度が高いと、液のニオブ或いはタンタル成分の濃度が高くなって損失しやすくなるため、スラリー温度が高い場合は、自然放冷または水冷ジャケット等による強制冷却によりスラリー温度を下げてから固液分離を行うことが好ましい。ニオブやタンタルの損失を抑制する観点から、スラリー温度は低いほどよいが、コスト及び時間の点から、0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上がさらに好ましい。
【0051】
本発明に係る処理方法では、固液分離工程の後に、固液分離工程で得られたアルカリ疎解ケーキを水洗して水洗ケーキを得る水洗工程を行うものであるが、その水洗方法としては、ろ過装置にてろ過後、疎解ケーキをろ過装置に保持したまま通水する方法や、ろ過装置から取り出した又は上澄液を抜き出した疎解ケーキを水でリパルプする方法を採用することができる。疎解ケーキをろ過装置に保持したまま通水する方法が簡便である。
【0052】
本発明に係る処理方法における水洗工程では、その水使用量をガラススクラップ1kg当たり、0.5L〜10Lとすることが好ましく、0.8L〜8.0Lがより好ましく、1.0L〜6.0Lがさらに好ましい。水使用量が少なすぎると、P除去が不十分となる傾向になり、多すぎるとニオブやタンタルの水洗液中への溶出量が多くなり、ニオブやタンタルの損失が大きくなりやすい。
【0053】
本発明に係る処理方法では、水洗工程で得られた水洗ケーキを、水及びフッ化水素酸以外の無機酸とを混合して、酸性の混合スラリーを作製した後、混合スラリーを固液分離して酸洗浄ケーキを得る無機酸処理工程を行う。この無機酸処理工程では、まず、水洗ケーキと、水及びフッ化水素酸以外の無機酸とを混合する。この混合方法としては、無機酸水溶液を撹拌しているところに水洗ケーキを添加してもよいし、水洗ケーキを水でスラリー化して撹拌しているところに無機酸を添加してもよい。
【0054】
本発明に係る処理方法の無機酸処理工程に用いる無機酸としては、フッ化水素酸以外の硫酸、塩酸、硝酸等があげられる。排水処理の点からは、窒素を含まない硫酸、塩酸が好ましい。水洗ケーキが、Ca、Ba等の硫酸塩への溶解度が低い元素を含む場合は塩酸、硝酸が好ましい。尚、この無機酸処理工程における無機酸としてフッ化水素酸を用いると、フッ化水素酸がニオブやタンタルを溶解してしまうため、フッ化水素酸は無機酸処理工程では使用できない。
【0055】
本発明に係る処理方法の無機酸処理工程において、無機酸として硫酸、塩酸を使用する場合、固液分離前の混合スラリーのpHをpH0.5〜4.0とすることが好ましく、pH1.0〜3.0がさらに好ましい。このpH調整は、使用する無機酸の量により調整する。この混合スラリーのpHが低いとろ過性が悪くなりやすく、pHが高いとNaの低減が不十分となり、本発明の処理方法により得られるニオブ原料やタンタル原料をフッ化水素酸等にて溶解したとき、溶解度があまり大きくないナトリウム(Na)及びフッ素(F)を含有するニオブ化合物或いはタンタル化合物が生成して、ニオブやタンタルが損失しやすくなる。
【0056】
本発明に係る処理方法によって得られるリンが低減されたニオブ(リン低減ニオブ原料)又はタンタル(リン低減タンタル原料)の少なくとも一方の原料においては、リン含有量が、P換算量で、得られた原料の乾量換算量に対して、1.5質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。得られた原料中に、リンが多く残っていると、フッ化水素酸又はフッ化水素酸及び無機酸にて溶解した液を溶媒抽出にて分離精製を行ってもリンを十分に除去することが困難ためである。
【0057】
本発明に係る処理方法によって得られるリン低減ニオブ原料又はタンタルの少なくとも一方の原料においては、そのナトリウム含有量が、NaO換算量で、得られた原料の乾量換算量に対して、1.5質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。得られた原料中に、ナトリウムが多く残っていると、フッ化水素酸又はフッ化水素酸及び無機酸にて溶解するときニオブ或いはタンタルの溶解率が低くなる。
【0058】
本発明に係る処理方法によって得られるリン低減ニオブ原料又はタンタルの少なくとも一方の原料においては、そのカリウム含有量が、KO換算量で、得られた原料の乾量換算量に対して、0.6質量%以下が好ましく、0.4質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下がさらに好ましい。得られた原料中に、カリウムが多く残っていると、フッ化水素酸又はフッ化水素酸及び無機酸にて溶解するときニオブやタンタルの溶解率が低くなる。
【0059】
上記した本発明に係る処理方法により得られた、リン低減ニオブ原料又はリン低減タンタル原料の少なくとも一方を、フッ化水素酸或いは、フッ化水素酸及び無機酸にて溶解した液を溶媒抽出にて分離精製を行い、ニオブ精製液又はタンタル精製液の少なくとも一方を得ることができる。
【0060】
本発明に係る分離精製方法では、上記処理方法により得られたリン低減ニオブ原料又はリン低減タンタル原料を、フッ化水素酸或いは、フッ化水素酸及び無機酸にて溶解し、その溶解液をニオブまたはタンタル、或いはその両方の濃度、フッ化水素酸濃度及びフッ化水素酸以外の無機酸濃度のそれぞれを必要に応じて調整した後、溶媒抽出を施して、ニオブ精製液(フッ化ニオブ溶液)またはタンタル精製液(フッ化タンタル溶液)も少なくとも一方を得ることができる。
【0061】
この分離精製方法における、溶解時の無機酸、酸濃度調整時の無機酸、溶媒抽出に用いるフッ化水素酸以外の無機酸としては、硫酸、塩酸、硝酸等があげられる。溶解液に鉄が含まれる場合は、無機酸として塩酸を使用すると、鉄が有機溶媒に非常に抽出されやすくなってしまうため、塩酸の使用は困難である。また、排水処理の点からは、窒素を含まない硫酸、塩酸が好ましい。但し、硫酸の場合、排水処理で消石灰を使用すると、フッ化カルシウム以外に石膏が大量に発生し、廃滓処理費が高額になるため、苛性ソーダを併用して、硫酸分は芒硝(硫酸ナトリウム)とすることにより、発生する廃滓量を低減することも可能である。また、溶媒抽出の方法として、一般的な公知な方法により行うことができ、例えば、特開2005−289692号公報に記載の方法などを採用できる。
【0062】
そして、上記した本発明に係る分離精製方法により得られたニオブ精製液又はタンタル精製液と、アンモニア、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウムから選択される少なくとも一種の沈澱剤とを混合し、沈殿物を生成し、その沈殿物を焼成することにより、酸化ニオブ(Nb)酸化タンタル(Ta)を製造することができる。
【0063】
本発明に係る酸化ニオブ(Nb)又は酸化タンタル(Ta)の製造方法においては、まず、上記した分離精製方法により得られたニオブ精製液又はタンタル精製液と、アンモニア、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウムから選択される少なくとも一種の沈澱剤とを混合して沈殿物を生成させる。この沈澱剤は、アンモニア、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたは尿素が用いられるが、これらのうちアンモニアが最も一般的である。アンモニアを使用する場合、アンモニアとしては、気体状、液体状、水溶液状のものを使用できるが、取り扱い性に優れるという点でアンモニア水溶液(アンモニア水)がより好ましい。炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムまたは尿素を使用する場合、これらとしては、固形状、スラリー状、水溶液状のものを使用できるが、より均一な沈澱を生成でき、かつ洗浄によるフッ素含有量の調整がより容易である点で、水溶液状のものがより好ましい。生成された沈澱物をろ過等によって液体から分離する場合にあっては、希薄アンモニア水や水等で沈澱物を洗浄することが好ましい。なお、沈澱剤として尿素を使用すると尿素の分解反応が起こり、結局は炭酸アンモニウムを使用した場合とほぼ同じになるが、分解反応はゆっくり進行するため均一な沈澱が生成されやすいという利点がある。
【0064】
そして、生成された沈澱物をろ過等によって液体から分離し、分離された沈澱物を焼成するとニオブ酸化物又はタンタル酸化物の粉末が得られる。この焼成処理において、焼成温度は800℃〜1100℃が好ましい。800℃未満であったり、1100℃を超えると、得られるニオブ酸化物又はタンタル酸化物の粉末の流動性が悪くなる傾向となる。また、焼成時間は2時間〜72時間が好ましい。2時間未満では、流動性が悪くなる傾向となり、他方、72時間を超える焙焼を行っても、焼成で得られる72時間の焙焼を行った場合と比べて、得られる粉末の流動性がより改善されることはなく、エネルギーが無駄になり作業効率が低下する。これらの点を考慮すると、焼成時間は3時間〜48時間がより好ましい。
【0065】
また、上記した本発明に係る分離精製方法により得られたニオブ精製液と、フッ化カリウム、塩化カリウム、水酸化カリウムから選択される少なくとも一種とを混合して、オキシフッ化ニオブ酸カリウム又はフッ化ニオブ酸カリウムを析出させ、析出したオキシフッ化ニオブ酸カリウム又はフッ化ニオブ酸カリウムを、加温したフッ化水素酸に溶解し、温度を下げてフッ化ニオブ酸カリウム結晶を得ることができる。
【0066】
この場合、本発明に係る分離精製方法により得られたニオブ精製液と、所定のカリウム系電解質とを混合させることにより、オキシフッ化ニオブ酸カリウム又はフッ化ニオブ酸カリウムを析出させる。この混合するカリウム系電解質は、フッ化カリウム、塩化カリウム、水酸化カリウムから選択される少なくとも一種である。これらの中でも、塩化カリウムが、取り扱いの容易な点や低価格である点で好ましい。また、フッ化カリウムを使用すれば、フッ酸の添加量を最小限にして、フッ化ニオブ酸カリウム結晶を合成することができるので、設備面および作業面での負担が軽減されるという利点がある。
【0067】
カリウム系電解質は、固形状のまま混合してもよいし、溶液の形で混合してもよいが、固形状のまま混合する方が液量、ひいては排水を少なくすることができる点で好ましい。添加するカリウム系電解質の量は、カリウムイオンについて化学量論的に必要とされる量の1.2〜2.0倍とするのが好ましく、例えば1.5倍とする。カリウム系電解質の量が少なすぎると、フッ化ニオブ酸カリウムの結晶化率が低下してしまうことから好ましくない。また、カリウム系電解質の量が多すぎると、結晶の生成に寄与しない過剰のカリウム系電解質が多くなり、コスト的にも不利になるため好ましくない。
【0068】
そして、オキシフッ化ニオブ酸カリウム又はフッ化ニオブ酸カリウムを析出させた結晶含有液を濾過して、粗結晶を濾別する。ここで、濾別した粗結晶を少量の水または塩化カリウム水溶液にて洗浄するのが不純物低減の観点から好ましい。本発明に係るフッ化ニオブ酸カリウム結晶の製造方法においては、濾別した粗結晶のオキシフッ化ニオブ酸カリウム又はフッ化ニオブ酸カリウムを、加温したフッ化水素酸に溶解し、温度を下げてフッ化ニオブ酸カリウム(KNbF)結晶を生成する再結晶操作を行う。
【0069】
この再結晶操作に用いる溶媒であるフッ化水素酸は、50℃以上に加温することが好ましい。そして、溶解後、温度を下げるときは、20℃/h未満の降温速度で40℃以下に降温することにより、フッ化ニオブ酸カリウム結晶を析出させることが好ましい。
【0070】
同様に、上記した本発明に係る分離精製方法により得られたタンタル精製液と、フッ化カリウム、塩化カリウム、水酸化カリウムから選択される少なくとも一種とを混合して、フッ化タンタル酸カリウムを析出させ、析出したフッ化タンタル酸カリウムを、加温したフッ化水素酸又は加温したフッ化水素酸及び塩酸に溶解し、温度を下げてフッ化タンタル酸カリウム結晶(KTaF)を得ることができる。
【0071】
この場合、本発明に係る分離精製方法により得られたタンタル精製液と、所定のカリウム系電解質とを混合させることにより、フッ化タンタル酸カリウムを析出させる。この混合するカリウム系電解質は、フッ化カリウム、塩化カリウム、水酸化カリウムから選択される少なくとも一種である。これらの中でも、塩化カリウムが、取り扱いの容易な点や低価格である点で好ましい。また、フッ化カリウムを使用すれば、フッ酸の添加量を最小限にして、フッ化タンタル酸カリウム結晶を合成することができるので、設備面および作業面での負担が軽減されるという利点がある。
【0072】
このカリウム系電解質は、固形状のまま混合してもよいし、溶液の形で混合してもよいが、固形状のまま混合する方が液量、ひいては排水を少なくすることができる点で好ましい。添加するカリウム系電解質の量は、カリウムイオンについて化学量論的に必要とされる量の1.2〜2.0倍とするのが好ましく、例えば1.5倍とする。カリウム系電解質の量が少なすぎると、フッ化タンタル酸カリウムの結晶化率が低下してしまうことから好ましくない。また、カリウム系電解質の量が多すぎると、結晶の生成に寄与しない過剰のカリウム系電解質が多くなり、コスト的にも不利になるため好ましくない。
【0073】
そして、フッ化タンタル酸カリウムを析出させた結晶含有液を濾過して、粗結晶を濾別する。ここで、濾別した粗結晶を少量の水または塩化カリウム水溶液にて洗浄するのが不純物低減の観点から好ましい。本発明に係るフッ化タンタル酸カリウム結晶の製造方法においては、濾別した粗結晶のフッ化タンタル酸カリウムを、加温したフッ化水素酸又は加温したフッ化水素酸及び塩酸に溶解し、温度を下げてフッ化タンタル酸カリウム結晶(KTaF)を生成する再結晶操作を行う。
【0074】
この再結晶操作に用いる溶媒であるフッ化水素酸又はフッ化水素酸及び塩酸は、60℃以上に加温することが好ましい。そして、溶解後に温度を下げるときは、15℃/h未満の降温速度で40℃以下に降温することにより、フッ化タンタル酸カリウム結晶を析出させることが好ましい。
【実施例】
【0075】
以下、本発明の実施形態について、実施例、比較例に基づき詳説する。
【0076】
まず、以下で説明する実施例及び比較例において処理対象として使用したガラススクラップの組成を表1に示す。この表1に示す3種類のガラススクラップA〜Cを用いて、ニオブ原料及びタンタル原料を回収した。また、表2には、各ガラススクラップに関するリン、ケイ素、ニオブ及びタンタル含有量について、ガラススクラップ100kg当たりの各モルを計算した結果を示す。表2中、ガラススクラップが含有するリンのP換算モル量をP、含有するケイ素(Si)のSiO換算モル量をSi、ニオブ及びタンタルの五酸化物換算(Nb+Ta)モル量をMとして示している。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
次に、各実施例で行ったガラススクラップの処理方法について、その工程順序を図1に示す。また、各実施例、各比較例の処理条件については、表3〜表6及び表7〜表10に纏めて示す。
【0080】
【表3】

【0081】
【表4】

【0082】
【表5】

【0083】
【表6】

【0084】
【表7】

【0085】
【表8】

【0086】
【表9】

【0087】
【表10】

【0088】
実施例1:
この図1を参照しながら、ガラススクラップAを処理対象とした実施例1の処理方法について説明する。
【0089】
五酸化ニオブを多めに含有したガラススクラップAを、ジョークラッシャーの粗粉砕装置((株)前川工業所製:ファインジョークラッシャー SC−1610)にて粗粉砕を行った後、ロールクラッシャーの中粉砕装置((株)マキノ製:MRC−10)にて中粉砕を行い、そして、ボールミルの微粉砕装置(古河産機システムズ(株)製:B−913/直径10mm鋼球使用)にて微粉砕する粉砕処理を行った。この粉砕処理は、レーザー回折法粒度分布測定による体積メジアン径(D50)が18μmとなるように、そして、目開き500μmの乾式篩において、ふるい上(ふるい残分)の割合が0.8質量%となるまで粉砕処理を行った。
【0090】
この粉砕処理したガラススクラップ100kgを、50g/Lの水酸化ナトリウム溶液1500L(水酸化ナトリウム 75kg)に投入し、80℃に加熱して、24時間、撹拌しながら、アルカリ疎解処理を行った。このアルカリ疎解、真空ろ過することにより、固液分離をしてアルカリ疎解ケーキを得た。アルカリ疎解処理工程における条件については、表3に纏めて示す。
【0091】
24時間のアルカリ疎解処理後、自然放冷で30℃にまで冷却した後、真空ろ過槽にあるアルカリ疎解ケーキに、100Lの水を3回、注水することにより、水洗処理を行い、水洗ケーキを得た。
【0092】
この水洗ケーキを300Lの水でスラリー化してから1mol/Lの硫酸を添加することにより、pHを2.0に調整した。そして、この酸性の混合スラリーを、フィルタープレスによりろ過して、固液分離処理をして、酸洗浄ケーキとする無機酸処理を行うことにより、Nb原料を得た。この得られたNb原料の乾量は、ウエット状態の酸洗浄ケーキから約20gをサンプリングをして、105℃、24時間の乾燥処理をし、その質量を測定することにより、乾量を換算した(以下の各原料に関する乾量換算も同様にして行った)。
【0093】
比較例1:
比較例1では、上記特許文献1の実施例1に類似の方法(塩酸洗浄処理)を実施して、Nb原料を得たものである。具体的には、実施例1と同じ条件の粉砕処理を行ったガラススクラップ100kgを、10%塩酸3600kgと混合し、60℃、24時間撹拌し、その後、真空ろ過にて固液分離を行い、真空ろ過槽に水を100L×3回注いで水洗を行なった。尚、比較例1の処理条件を記載した表7における無機酸処理のpH値については、強酸性であるため*1という表記をしている。
【0094】
比較例2:
比較例2は、上記実施例1の処理工程(図1)の中で、水洗工程を省略し、Nb原料を得た。水洗工程を省略した以外の条件は、すべて実施例1と同じとした。
【0095】
比較例3:
比較例3は、上記実施例1の処理工程(図1)の中で、無機酸処理工程を省略し、Nb原料を得た。無機酸処理工程を省略した以外の条件は、すべて実施例1と同じとした。
【0096】
実施例2〜実施例4:
実施例2〜4については、上記実施例1と基本的には同じ処理を行うものであるが、実施例1のアルカリ疎解処理後、アルカリ疎解スラリーを固液分離(ろ過)時の温度を変更した。ろ過時の各温度は表7に示す。
【0097】
実施例5〜実施例8、比較例4:
実施例5〜実施例8、比較例4については、上記実施例1と基本的には同じ処理を行うものであるが、実施例1のアルカリ疎解処理時の処理温度を変更した。その各処理温度については、表3に示す。
【0098】
実施例9、実施例10、比較例5:
実施例9、実施例10、比較例5については、上記実施例1と基本的には同じ処理を行うものであるが、実施例1の粉砕処理における目開き500μmの乾式篩におけるふるい上(ふるい残分)の割合を変更した。ふるい上の各割合については、表4に示す。
【0099】
実施例11〜実施例14、比較例6:
実施例11〜実施例14、比較例6については、上記実施例1と基本的には同じ処理を行うものであるが、実施例1のアルカリ疎解工程で使用する水酸化ナトリウムの量を変更して行った。各水酸化ナトリウムの量については、表4に示す。
【0100】
実施例15〜実施例19、比較例7:
実施例15〜19、比較例7については、上記実施例1と基本的には同じ処理を行うものであるが、実施例1のアルカリ疎解工程で使用する水酸化ナトリウムの濃度を変更して行った。各水酸化ナトリウムの濃度については、表4に示す。ただし、実施例17については、アルカリ疎解スラリーの固液分離において、固液分離する前のアルカリ疎解スラリーに水を加えて十分撹拌・混合した後に、固液分離を行った。
【0101】
実施例20〜実施例25、比較例8、比較例9:
実施例20〜実施例25、比較例8、比較例9については、上記実施例1と基本的には同じ処理を行うものであるが、実施例1の水洗処理における水洗量を変更して行った。各水洗量は、表9に示す。
【0102】
実施例26〜実施例31:
実施例26〜実施例31については、上記実施例1と基本的には同じ処理を行うものであるが、実施例1の無機酸処理工程でpHを変更して行った。各pHは、表9に示す。
【0103】
実施例32:
この実施例32については、表1で示したガラススクラップBを用いて行ったものである。処理条件は、上記実施例1と同じである。アルカリ疎解処理の条件を表6に示す。また、この実施例32は、処理対象のガラススクラップBにニオブとタンタルとの両方が含有されていたため、処理して得られたものには、Nb原料とTa原料の双方が含まれていた。
【0104】
実施例33〜実施例38、比較例10:
この実施例33〜実施例38については、表1で示したガラススクラップCを用いて行ったものである。処理条件は、上記実施例1と同じである。アルカリ疎解処理の条件を表6に示す。この処理対象のガラススクラップCはタンタルが主に含有されていたため、処理して得られたものはTa原料であった。また、水酸化ナトリウムの使用量の影響を調べるために、その使用量を変更した。また無機酸の影響を調べるため、硫酸と塩酸を使用した(表10)。
【0105】
以上のような処理方法を実施して得られた各原料について、その成分を分析し測定した。また、その成分分析の結果から、各原料における回収率、また、リンの除去率を算出した。この回収率については、各原料
におけるニオブ又はタンタルの五酸化物換算(Nb+Ta)により算出し、リンの除去率については、リン酸化物(P)換算により算出した。各原料の成分(乾量換算量及び乾量換算量中の組成)、回収率、除去率の結果を、表11〜表14に示す。
【0106】
【表11】

【0107】
【表12】

【0108】
【表13】

【0109】
【表14】

【0110】
続いて、上記実施例1、実施例5〜実施例7、実施例32、実施例36、比較例3により得られた原料について、溶解処理、溶媒抽出による分離精製処理、さらには、酸化ニオブ、酸化タンタルを製造した結果について説明する。
【0111】
まず、各原料の溶解処理については、攪拌機付のPTFEコーティングした溶解槽に、80%フッ化水素酸を所定量投入し、撹拌しながら、各原料のウエットケーキを約6時間かけて加えた。その後、60〜70℃の温度を維持しながら12時間撹拌を続けた。
【0112】
図2には、溶媒抽出、洗浄、逆抽出に関する概念図を示す。タンタル(Ta)の抽出用の液調整として、上記した溶解液をろ過処理後、水、80%フッ化水素酸、98%硫酸により、硫酸濃度を約1mol/L、freeのフッ化水素酸濃度を約1mol/Lにした。実施例36については、Ta濃度を約250g/Lにした。その他については、Nb濃度を約250g/Lに調整した。各条件については、表15に示す。また、表15には、各原料を溶解して液調整した溶液中における、ニオブ又はタンタルの五酸化物換算(Nb+Ta)の含有量及びリン酸化物(P)換算の含有量を、処理後のリン低減ニオブ原料またはリン低減タンタル原料からの溶解率として算出した結果も示している。この溶解率の結果から、溶解、液調整によっては、ニオブ、タンタルは大部分は溶解しているが、リンも大部分が溶解しており、リンを不溶解残渣として除去できていないことが確認された。
【0113】
次に、タンタル分離精製について説明する。表16に各条件を示す。タンタルの抽出は、例えば、実施例32を例にして説明する(図2参照)と、次のよな手順で行った。抽出剤として、4−メチル−2ペンタノン(略称:MIBK)を用い、抽出5段、洗浄15段、逆抽出5段のミキサーセトラー(向流抽出タイプ)を使用した。この向流は、MIBKでは、抽出における1段目から5段目に向けて流れ、液調整液では、抽出における5段目から1段目に向けて流れるようにした。また、表16に示すように、MIBKは流量100mL/分とし、抽出→洗浄→逆抽出の順に流した。液調整液は、流量100mL/分とし、抽出に流入し、Ta抽出抽出残液として流出させた。洗浄液は、1.0mol/L硫酸を流量60mL/分として、抽出5段にのみ流入した。逆抽出は、純水を流量50mL/分とし、逆抽出5段のみに流入した。以上のような手順により、Ta精製液を得た。実施例1、実施例5〜実施例7、比較例3は、原料中にTaを少量しか含んでいないためTa抽出のみ実施した。表16に、各条件及び得られたTa精製液の成分分析の結果を示す。尚、表16において、ハイフンとしている個所は、その処理を行っていないことを示す。
【0114】
また、ニオブ(Nb)の抽出用の液調整として、上記したタンタル抽出で発生した、Ta抽出抽出残液(水相)に98%硫酸及び80%HFを添加して硫酸濃度及びfree−HF濃度を約3mol/L(2.95〜3.04mol/Lの範囲内)に調整した。Ta抽出抽出残液(水相)の成分については、表18に示す。この調整時の各液の容量比は、Ta抽出抽出残液:98%硫酸:80%HF=1000:140:53とした。
【0115】
ニオブ分離精製は、タンタル分離精製と同様に、4−メチル−2ペンタノン(略称:MIBK)を用いた。表17に各条件を示す。なお、実施例36は、原料中にNbを少量しか含んでいないため、ニオブの抽出及び分離精製は行わなかった。表17には、得られたNb精製液の成分分析の結果を示す。
【0116】
【表15】

【0117】
【表16】

【0118】
【表17】

【0119】
【表18】

【0120】
さらに、酸化ニオブ、酸化タンタルの製造について説明する。図3に、酸化ニオブ、酸化タンタルの製造フローを示す。
【0121】
上記した上記実施例1、実施例5〜実施例7、実施例32、実施例36、比較例3の各原料により得られたNb精製液またはTa精製液を用いた。実施例32のTa精製液はTa換算で2kg、その他は五酸化物換算10kg相当使用した。
【0122】
ニオブの場合、Nb換算で100g/Lの濃度となるように、また、タンタルの場合、Ta換算で50g/Lの濃度となるように、希釈した。
【0123】
そして、各希釈液を40℃になるまで昇温して、25%アンモニア水を、pH9.0になるまで添加して、沈殿生成を行った。このアンモニア水の添加速度は、ニオブの場合1L/分とし、タンタルの実施例32の場合は0.15L/分、実施例36の場合は0.6L/分とした。
【0124】
沈殿物が生成した後、上澄液抜出し、リパルプ洗浄(0.5mol/Lアンモニア水)を行った。このリパルプ洗浄は3回行った。
【0125】
このリパルプ洗浄の3回目は、上澄液を抜き出さないで、そのまま真空ろ過を行った。
【0126】
そして、ろ過により得られた固形物を、白金シートを引いた石英皿に詰めて、950℃、12時間の焼成を行った。その後、解砕処理をして、酸化ニオブまたは酸化タンタルを製造した。得られた酸化ニオブまたは酸化タンタルの不純物含有量を調べた結果を表19に示す。
【0127】
【表19】

【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明によれば、ガラススクラップから、リン低減ニオブ原料或いはリン低減タンタル原料を容易に得ることができる。そのため、希少な資源のリサイクルにより、高品位な酸化ニオブや酸化タンタル、並びに、高品位のフッ化ニオブ酸カリウム結晶やフッ化タンタル酸カリウム結晶を市場に提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニオブ又はタンタルの少なくとも一方及びリンを含有するガラススクラップから、リンが低減されたニオブ又はタンタルの少なくとも一方の原料を得るための処理方法であって、
前記ガラススクラップと、水酸化ナトリウム水溶液とを混合し、50℃以上の加熱処理をしてアルカリ疎解スラリーを得るアルカリ疎解工程と、
アルカリ疎解スラリー又はアルカリ疎解スラリーを水で希釈した水希釈スラリーを、固液分離してアルカリ疎解ケーキを得るアルカリ疎解スラリー固液分離工程と、
アルカリ疎解ケーキを水洗して水洗ケーキを得る水洗工程と、
水洗ケーキと、水及びフッ化水素酸以外の無機酸とを混合して、酸性の混合スラリーを作製した後、混合スラリーを固液分離して酸洗浄ケーキを得る無機酸処理工程、
を備えることを特徴とする、リン低減ニオブ原料又はリン低減タンタル原料の少なくとも一方を得るための処理方法。
【請求項2】
前記アルカリ疎解スラリー固液分離工程は、
アルカリ疎解スラリーを水で希釈しない場合、アルカリ疎解工程で使用する水酸化ナトリウム水溶液の濃度(CNa)が200g/L以下であり、
アルカリ疎解スラリーを水で希釈する場合、アルカリ疎解工程で使用する水酸化ナトリウム水溶液の濃度(CNa)と水酸化ナトリウム水溶液の液量(VNa)、及びアルカリ疎解スラリーの希釈に使用した水の液量(V)、仮想水酸化ナトリウム水溶液の濃度(CNa)としたときの次式
Na=CNa×VNa/(VNa+V)・・・・(式1)
で計算される仮想水酸化ナトリウム水溶液の濃度CNaが200g/L以下である請求項1に記載のリン低減ニオブ原料又はリン低減タンタル原料の少なくとも一方を得るための処理方法。
【請求項3】
前記アルカリ疎解スラリー固液分離工程の固液分離は、50℃以下の温度にて行う請求項1または請求項2に記載のリン低減ニオブ原料又はリン低減タンタル原料の少なくとも一方を得るための処理方法。
【請求項4】
前記ガラススクラップは、ニオブ又はタンタルを合計して五酸化物換算(Nb+Ta)で5〜70質量%、リンをP換算で3〜60質量%含有する請求項1〜請求項3いずれかに記載のリン低減ニオブ原料又はリン低減タンタル原料の少なくとも一方を得るための処理方法。
【請求項5】
前記ガラススクラップは、目開き500μmの試験用金属製網ふるいを用いた乾式ふるい分け試験において、ふるい上の割合が5質量%以下になるまで粉砕する請求項1〜請求項4いずれかに記載のリン低減ニオブ原料又はリン低減タンタル原料の少なくとも一方を得るための処理方法。
【請求項6】
前記ガラススクラップは、含有するリンのP換算モル量をPmol、使用する水酸化ナトリウムのモル量をNamolとしたとき、Na/6P≧1.0である請求項1〜請求項5いずれかに記載のリン低減ニオブ原料又はリン低減タンタル原料の少なくとも一方を得るための処理方法。
【請求項7】
前記ガラススクラップはケイ素を含み、含有するリンのP換算モル量をPmol、ケイ素のSiO換算モル量をSimol、使用する水酸化ナトリウムのモル量をNamolとしたとき、Na/(6P+2Si*)≧1である請求項1〜請求項5いずれかに記載のリン低減ニオブ原料又はリン低減タンタル原料の少なくとも一方を得るための処理方法。
【請求項8】
前記水洗工程で使用する水の量は、ガラススクラップ1kg当たり0.5L〜10Lである請求項1〜請求項7いずれかに記載のリン低減ニオブ原料又はリン低減タンタル原料の少なくとも一方を得るための処理方法。
【請求項9】
前記無機酸処理工程で使用する無機酸が、塩酸又は硫酸の少なくとも一方であり、混合スラリーのpHをpH0.5〜4.0になるように無機酸水溶液の使用量を調整する請求項1〜請求項8いずれかに記載のリン低減ニオブ原料又はリン低減タンタル原料の少なくとも一方を得るための処理方法。
【請求項10】
請求項1〜請求項9いずれかに記載の処理方法で得られた、リン低減ニオブ原料又はリン低減タンタル原料の少なくとも一方を、
フッ化水素酸又は、フッ化水素酸及びフッ化水素酸以外の無機酸にて溶解した液を溶媒抽出にて分離精製を行い、ニオブ精製液又はタンタル精製液の少なくとも一方を得ることを特徴する、ニオブ又はタンタルの少なくとも一方の分離精製方法。
【請求項11】
請求項10に記載の分離精製方法により得られたニオブ精製液と、
アンモニア、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウムから選択される少なくとも一種の沈澱剤とを混合し、
生成した沈殿物を焼成して酸化ニオブ(Nb)を製造すること特徴とする酸化ニオブの製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の分離精製方法により得られたタンタル精製液と、
アンモニア、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウムから選択される少なくとも一種の沈澱剤とを混合し、
生成した沈殿物を焼成して酸化タンタル(Ta)を製造することを特徴とする酸化タンタルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−254501(P2010−254501A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104615(P2009−104615)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】