説明

ニッケル構造物の製造方法

【課題】ニッケル被覆した重合体基材からニッケル構造物を製造する方法を提供する。
【解決手段】ニッケル被覆した重合体基材を少なくとも約600℃の温度に急速に露出することにより、重合体基材が熱分解し、外側ニッケル層を通して破裂し、穴が開く。熱分解した重合体基材から生じたガスが、外側ニッケル層を通る穴を通って逃げ、ニッケル構造物を残す。最後に、該ニッケル構造物を焼きなましすることにより、ニッケル構造物の強度が増加し、延性のある発泡材製品が製造される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内部にニッケル被覆した構造物から重合体基材を除去する方法に関する。特に、本発明は、ニッケル被覆した重合体基材から延性のニッケル構造物を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、「ニッケル発泡材」バッテリープラークが高性能バッテリー市場の大きな部分を占めている。一般的に製造業者は、最初にニッケルをポリウレタン発泡基材上に堆積させ、次いでその発泡材を2工程の熱処理にかけることにより、ニッケル発泡材を製造している。第一工程の目的は、ポリウレタン基材を除去することである。一般的に、製造業者はポリウレタン基材を、遊離の酸素を含む雰囲気中でそれを燃焼させることにより、除去している。この燃焼工程の際の条件が、ニッケル発泡材を汚染する残留炭素の量を決定する。第二工程では、製造業者はニッケル構造物を還元雰囲気中で焼きなまし、第一工程中に形成された酸化ニッケルをすべて延性のある金属状態に戻す。
【0003】十分な炭素を確実に除去するためには、一般的に焼結方法が重合体除去工程に最適である。例えば、Brannan らは、米国特許第5,374,491号で、ニッケル被覆した発泡材を空気中500℃で約1時間熱分解する方法を開示している。しかし、これらの長時間にわたる熱分解工程は、操業コストを増加させ、大量のニッケルを酸化させる。同様に、E. Pinkhasovは、米国特許第4,975,230号( '230号)で、ニッケル発泡材を2基の別の炉に通す方法を開示している。第一炉は重合体基材を空気雰囲気中、350℃で分解する。重合体を除去した後、発泡材は950℃〜1250℃の温度に維持されている焼なまし炉を通過する。この最終焼きなまし処理が脆いニッケル構造物を延性のあるニッケル発泡材に変換し、強度および加工性を改良する。残念ながら、この種の熱処理には、ニッケル発泡材を収縮させる傾向がある。この収縮により気孔率が減少し、バッテリープラークに装填できる活性材料の量が減少する。
【0004】2工程重合体除去および焼きなまし製法には、下記の様な欠点がある。
1)第一工程で重合体を燃焼させることにより、脆い構造物が形成され、これが、特にバッテリー業界で必要とされる連続ストリップを取り扱う際に、第二工程における取り扱いを複雑にし、2)ニッケルの酸化およびその後の還元に伴う体積変化により応力が生じ、これが新しい亀裂を発生させるか、または既存の亀裂を拡大し、3)この製法は、2基の炉を通過させるために、過度の時間および経費を必要とする。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ニッケル被覆した構造物から重合体を除去し、ニッケル構造物を焼きなますための1工程製法を提供することである。本発明の別の目的は、熱分解および焼きなましにより引き起こされるニッケル構造物の収縮を少なくすることである。本発明のもう一つの目的は、ニッケル被覆した重合体構造物から迅速に重合体を除去することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の方法により、ニッケル被覆した重合体基材からニッケル構造物が製造される。ニッケル被覆した重合体基材は、ニッケルの外側層を有し、最初は外側ニッケル層が破裂により開口部を形成しない温度を有する。このニッケル被覆した重合体基材を少なくとも約600℃の温度に急速に露出することにより、重合体基材が熱分解し、外側ニッケル層を通して破裂し、穴が開く。熱分解した重合体基材から生じたガスが、外側ニッケル層を通る穴を通って逃げ、ニッケル構造物を残す。最後に、該ニッケル構造物を焼きなましすることにより、ニッケル構造物の強度が増加し、延性のある発泡材製品が製造される。
【0007】本発明は、下記の事項をその特徴としている。
(1)下記(a)〜(d)の工程を含んでなる、ニッケル被覆した基材から重合体発泡材を除去することによりニッケル構造物を製造する方法。
(a)外側ニッケル層を有し、この外側ニッケル層が破裂により開口部を形成しない温度を有する、ニッケル被覆した重合体基材を用意する工程、(b)前記ニッケル被覆した重合体基材を少なくとも600℃の温度に、25秒間未満露出することにより、前記ニッケル被覆した重合体基材を加熱し、重合体基材を熱分解させ、前記ニッケル被覆した重合体基材の前記外側ニッケル層を通して破裂させることにより穴を開ける工程、(c)熱分解した重合体基材から生じたガスを、前記外側ニッケル層を通る前記穴を通して放出し、ニッケル構造物を残す工程、および(d)前記ニッケル構造物を焼きなまし、強度を増加させる工程。
【0008】(2)下記(a)〜(d)の工程を含んでなる、ニッケル被覆した基材から重合体発泡材を除去することによりニッケル構造物を製造する方法:(a)外側ニッケル層および200℃未満の温度を有する、ニッケル被覆した重合体基材を用意する工程、(b)前記ニッケル被覆した重合体基材を少なくとも700℃の温度に、15秒間未満露出することにより、前記ニッケル被覆した重合体基材を加熱し、重合体基材を熱分解させ、前記外側ニッケル層を通して破裂させることにより穴を開ける工程、(c)熱分解した重合体基材から生じたガスを、前記外側ニッケル層を通る前記穴を通して放出し、前記重合体基材の初期形状により決定される形状を有するニッケル構造物を残す工程、および(d)前記ニッケル構造物を焼きなまし、強度を増加させる工程。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の方法の原理は、ニッケル被覆した重合体基材を急速に加熱し、炭素を除去し易くすることにある。これらのニッケル被覆した構造物を急速に加熱することにより、重合体が気体状の分解生成物に転化される。これらのガスはニッケル構造物の内部で比較的大きな内圧を形成し、その圧力が外側のニッケル層を破裂させ、ガスが逃げる穴を形成する。これらの新しく形成された穴により、重合体が効率的に酸化され、除去される。さらに、これらの穴により、焼きなましの際のニッケル発泡材の収縮が少なくなる。
【0010】ニッケル被覆内に閉じ込められた重合体の加熱速度を増加することにより、ニッケル骨格を通して破裂する穴の数が増加する。これによって穴1個あたりに存在する分解生成物が減少し、したがってニッケル骨格を貫通するそれぞれの穴の外側表面上に堆積する炭素系堆積物が薄くなる。さらに、重合体加熱速度を増加することにより、分解生成物中のガスの画分が増加し、タール状の炭素系堆積物の量がさらに減少する。
【0011】炭素を効果的に除去し、収縮を少なくするには、急激な温度増加が不可欠である。ニッケル被覆した重合体基材を、外側ニッケル層に穴が無い状態から少なくとも約600℃の温度に急速に露出することにより、幾つかの穴を形成するのに十分な内圧が生じる。この急速な温度上昇は、ガスが少数の穴を通して徐々に放出されるのを防ぐためには、25秒間未満で起こらなければならない。同様に、ニッケル被覆が加熱前に破裂した開口部を含む場合には、急速加熱工程で形成される穴が少なくなり、効果が失われる。好ましくは、ニッケル被覆した基材を少なくとも700℃の温度に15秒間未満露出することにより、重合体の除去が促進され、収縮が少なくなる。最も好ましくは、ニッケル被覆した基材を少なくとも800℃の温度に10秒間未満露出することにより、十分な数の穴が破裂により開き、ガスを迅速に放出する。ニッケル発泡材を、発泡材の分解温度より低い温度から高温に露出する時間が短い程、本発明の方法の効果はさらに高くなる。例えば、ニッケル被覆した重合体基材を、200℃未満の温度から少なくとも900℃の温度に5秒間、2秒間、あるいは1秒間露出することにより、重合体の除去はさらに改善され、ニッケル骨格の外側表面上のタール状堆積物の量が少なくなり、ニッケル被覆した重合体基材発泡材の収縮が低減される。
【0012】下記の処置により、炉がニッケル被覆基材を加熱する速度が増加する。
1)炉の入り口で物理的なバリヤーを使用し、ニッケル被覆した重合体基材を放射熱および炉の高温ガス(伝導熱)から遮蔽する。
2)発泡材の速度を増加し、発泡材を熱分解する中間温度に対する発泡材の露出を最短に抑える。
3)炉の温度を増加し、ニッケル被覆した重合体への放射熱移動速度を増加する。
4)炉のガス流量を増加するか、または炉のガス組成を変え、ニッケル被覆した重合体への伝導熱移動速度を増加する。
【0013】炉温の上限は、ニッケルの融解温度よりも僅かに低い温度である。炉がニッケル発泡材を、1回通しでニッケル構造物を焼きなましするのに十分な温度に露出するのが最も有利である。例えば、炉を約800℃〜約1200℃の温度に設定することにより、ベルト炉がニッケル発泡材を1回通しで焼結させることができる。あるいは、急速加熱に続いて別の焼きなまし工程を採用することにより、ニッケル発泡材を形成するための妥当な方法は得られるが、この方法はそれだけ経費がかかる。
【0014】重合体構造物は、網目状の発泡材構造、閉じたセル構造、フェルトからなるか、またはそれらの組合せでよい。適当な重合体基材としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリイソシアヌレート、ポリフェノールおよびポリプロピレンがある。これらの重合体はすべて、急速加熱により熱分解し、最小限度の収縮で高純度のニッケル発泡材を残す。
【0015】図1に関して、連続式ベルト炉5がニッケル被覆した構造物を加熱するための最も効果的な手段を与える。分割部12が炉10の高温区域を、水冷ジャケット14中の冷却区域から分離している。運転中、ニッケル被覆した重合体16が、炉10の高温区域を通って冷却区域に約1m連続的に移動する。冷却挿入物18は、発泡材が徐々に加熱され、炉10の高温区域に入る前に燃焼することがない様に、発泡材を保護する。具体的には、冷却ガス20が冷却挿入物18の中の雰囲気を除去し、重合体基材をその分解温度未満に維持する。不活性な、または還元性のガスが冷却挿入物18を連続的に掃気するのが最も有利である。
【0016】発泡材が冷却挿入物18を通過した後、炉10は発泡材16を重合体の分解温度を優に超える温度に急速に加熱する。炉10の高温区域は、炭素に対して酸化性であり、ニッケルに対して還元性である水素および水蒸気の気体状混合物22を含むのが有利である。所望により、このガスは、窒素の様な不活性ガスで希釈するか、または天然ガスを部分的に燃焼させることにより得られる様な、酸素分圧の等しい雰囲気で置き換えることができる。
【0017】高温区域中で重合体基材を除去し、得られたニッケル構造物を焼きなました後、ニッケル構造物は約1mの水冷ジャケット14を通過する。水冷ジャケット14はニッケル構造物を、ニッケルが空気中で安定している温度に冷却する。冷却ジャケット14の冷却区域中に不活性または還元性ガス24を導入することにより、冷却中にニッケル構造物が酸化されるのを阻止する。窒素ガスが冷却区域の酸化性ガスを掃気するのが最も有利である。
【0018】
【実施例】下記の実施例は、炭素を除去し、収縮を最少に抑え、総処理時間を最短に抑えるのに急速な加熱が有効であることを立証する。試料はすべて、他に指示がない限り、図1に示す炉中で、冷却区域を窒素掃気して処理した。
【0019】実施例1実施例1は、炭素除去および収縮に対する急速加熱の効果を立証する。試料は、ニッケルメッキしたポリウレタン発泡材のロールから切り取った4個の、28cm×40cmの長方形の試験片である。これらの試料の総密度は597〜615 g/m2 である。ポリウレタン発泡基材は、ニッケルメッキ発泡材1m2 あたり約58gに相当し、残りがニッケルになる。試料はすべて、図1の、2つの区域に調整雰囲気を有するベルト炉で加熱した。しかし、実施例1の試験では、冷却挿入物は使用しなかった。出発ポリウレタン発泡材は厚さが約2.2mmで、1インチあたり約80個の細孔(ppi) または1センチメートルあたり31個の細孔(ppcm)を含んでいた。
【0020】炉の高温区域は、試料1を、800℃に維持した雰囲気に露出した。滑り板上に載せた試料1を炉の高温区域の中央に急速に滑り込ませ、急速に加熱した。200秒間後、試料1を炉の冷却区域に迅速に滑り込ませ、保護雰囲気中で冷却した。
【0021】試料2の試験では、炉のベルト速度は30cm/分で、高温区域中の滞留時間は約200秒間であった。したがって、この試験は、試料1および試料2を実質的に等しい雰囲気に同じ時間露出したことになる。唯一の重大なパラメータ変化は加熱速度であった。
【0022】試料3および4の試験パラメータは、炉の高温区域温度を1000℃に増加した以外は、試料1および2と同等であった。分析は、寸法変化、炭素分析、酸素分析および目視観察で行なった。下記の表1は、試験試料1〜4から得たデータを示す。
【0023】
【表1】


【0024】表1から分かる様に、試料1および3を急速に加熱することにより、特定の時間および温度に対して残留炭素が大幅に減少する。さらに、高温区域温度を1000℃に上げることにより、残留炭素はさらに減少する。目視観察からは、急速加熱により、ニッケル骨格を通して吹き抜ける穴の数が増加することが分かる。無数の小さな点が試料1を覆っていた。これらの小さな点は、噴出箇所を取り囲む炭素残留物であった。対照的に、試料2は点の密度が明らかに低かったが、これらの点は直径がより大きく、より黒く、各噴出箇所に濃度がより高いタール状の炭素系堆積物があることを示している。試料3は試料1と類似しているが、炭素点の密度がより高く、炭素点の直径がより小さく、より明るい。試料4は、大きく、黒い炭素点の密度が試料2よりも低かったが、試料1よりもはるかに悪かった。
【0025】実施例2実施例2は、本発明の焼結方法、2工程焼結方法および加熱速度を調整しない焼結方法を直接比較する。試料5〜7は、ニッケルメッキしたポリウレタン発泡材のロールから切り取った28cmx40cmの長方形の試験片である。これらの試料はすべて、切断工程により生じた細かい縁部の亀裂を有していた。これらの試料の総密度は252〜260 g/m2 である。ポリウレタン発泡基材は、ニッケルメッキ発泡材1m2 あたり約58gに相当し、残りがニッケルになる。出発ポリウレタン発泡材は、厚さが約1.7mmで、90 ppiを含んでいた。図1の調整雰囲気を有するベルト炉は、試料5および6に対しては、冷却挿入物は使用しなかった。
【0026】試料5は、従来の2工程焼結方法を模擬する条件で処理した。予備燃焼は、温度が700℃の、自由に空気が流れる雰囲気を有する炉の高温区域に試料5を急速に滑り込ませることにより模擬した。試料5の重合体は約2秒間で発火し、炎は発泡材表面上に約19秒間残った。試料5は炉の高温区域に合計120秒間滞留した。試料5は、予備燃焼の際に長さが2.8%、幅が2.9%成長した。予備燃焼の後、試料5は黒色で、脆く、縁部に幾つかの亀裂があった。予備燃焼した試料5は、Cが400 ppm、Oが6.96%と分析された。この水準の酸素はニッケルの約27.5%が酸化されていることを示している。
【0027】試料5の2工程処理の焼きなまし部分は、ベルト炉中、速度8cm/分および高温区域温度1000℃で行なった。雰囲気は、H2 15%、H2 O30%および残りがN2 からなる向流ガスを含んでいた。この雰囲気は、H2 16.7 L/分、H2 O(水)25mL/分およびN2 61 L/分の流量で構成されていた。焼結により、試料5は長さが4.3%、幅が4.9%収縮し、全体的な寸法が長さで−1.5%、幅が−2.1%変化した。焼結したCおよびOの分析は、それぞれ360 ppmおよび300 ppmであった。最終的なニッケル密度は、216 g/m2であった。ポリウレタン噴出箇所に炭素の残留物は認められなかった。しかし、予備燃焼の後に存在していた細かい縁部亀裂は、恐らく寸法変化に伴う応力のために、焼結により伸びていた。
【0028】試料6は、ゆっくりした初期加熱による1工程重合体除去および焼きなましを模擬する条件で処理した。試料6の試験には、炉の高温区域を1000℃に維持した。炉の雰囲気は、H2 15%、H2 O30%および残りがN2 からなる向流ガスであった。ベルトは4cm/分で9分間移動し、次いでベルト速度は32cm/分に増加した。これによって連続ベルト速度を8cm/分に設定した場合とほぼ同じ高温区域滞留時間が得られた。炉の前部からマッフルを、発泡材が焼結雰囲気下にあって確実に加熱されるだけ十分な距離伸ばした。
【0029】焼結により、試料6は、長さが8.2%、幅が3.2%収縮した。焼結した炭素および酸素の分析は、それぞれ360 ppmおよび400 ppmであった。試料6の最終的なニッケル密度は、220 g/m2 であった。ポリウレタン噴出箇所に炭素の残留物は認められなかった。しかし、メッキした状態で存在していた細かい縁部亀裂は焼結により伸びていた。
【0030】試料7には、急速加熱条件による1工程焼結を行なった。図1の冷却挿入物により、重合体は厳しい熱分解条件に急速にさらされ、ニッケル発泡材がベルト炉の中で徐々に加熱されることが防止された。挿入物が高温の炉ガスを発泡材表面から遠ざける様にそらし、発泡材があまり早期に放射熱に露出されるのを防止した。さらに、室温の窒素を冷却挿入物を通して掃気し、発泡材を熱分解温度より低く維持し、高温炉が酢の内側への流れを阻止した。試料7の試験には、炉の温度は1000℃で、焼結雰囲気は、H2 15%、H2 O30%および残りがN2からなる向流であり、ベルト速度は20cm/分であった。冷却挿入物が挿入物の内側の温度を150℃未満に維持したのに対し、挿入物のすぐ向こう側では炉の温度は1000℃であった。移行区域の長さは約1.5cmで、ベルト移動時間約4.5秒間に相当した。
【0031】焼結による寸法変化は、長さおよび幅共0.1%未満であった。焼結したCおよびOの分析は、それぞれ430 ppmおよび460 ppmであった。噴出箇所に炭素の残留物は認められなかった。重要なことに、試料7に存在していた細かい縁部亀裂は、どれも伸びていなかった。下記の表2は、3点の試料に関する寸法変化および化学的分析結果を示す。
【0032】
【表2】


【0033】実施例3実施例3は、急速加熱技術を使用し、低密度ニッケル発泡材の連続焼結を立証する。試験試料は、長さ20mのニッケルメッキしたポリウレタン発泡材である。ポリウレタン発泡材は、厚さが約1.8mmで、約100 ppi(30ppcm)を含んでいた。ニッケル密度は、最初の約18mは約300 g/m2 で、残りの2mは約200 g/m2 であった。炉の雰囲気は、H2 50%、H2 O25%およびN2 25%で構成され、1000℃に維持されていた。発泡材速度およびベルト速度は等しく、20cm/分であった。重合体を除去する前に発泡材を一様な28cm幅に裁断し、寸法変化を監視できる様にした。実施例3の1工程製法により、重合体を迅速に除去し、亀裂や炭素点を残さずにニッケル発泡材を焼きなました。
【0034】メッキした状態のポリウレタン発泡材(Ni約300 g/m2 )の同じロールから28cmx92cmの小片を切り取り、比較用試験試料とした。図1に示す炉を使用し、冷却挿入物を除去し、急速加熱しない1工程焼結を行なった。炉の雰囲気は、H2 10%、H2 O20%、残りがN2 で構成され、炉温は1000℃、ベルト速度は10cm/分であった。酸素分圧がより高く、加熱時間が長かったにもかかわらず、試料に軽度の点が生じた。さらに、試料は長さが約5.5%、幅が7.8%収縮した。上記のことは、炭素除去を改善し、収縮を少なくするには急速な加熱が有利であることを明らかに立証している。
【0035】上記の3件の実施例における試料のすべてに関して、対応する厚さの変化は長さおよび幅の変化と大体同じであった。
【0036】この新規な急速加熱方法は、従来の、先行技術による2工程による燃焼および焼きなまし製法に対して幾つかの利点を有する。急速加熱製法は、ニッケル構造物から炭素を除去する速度および効率を改良する。さらに、本発明の方法により、ニッケル被覆した構造物から延性のあるニッケル構造物を製造するための、連続した1工程による重合体除去および焼きなまし製法が得られる。最後に、ニッケル被覆した発泡材の急速加熱により、ニッケル発泡材の収縮が少なくなり、発泡材の製造効率が最大限に増加する。収縮が少なくなるために、ニッケル発泡材の高い気孔率が維持される。この高気孔率発泡材により、特定容積に対する「活性材料」の装填量が増加するので、バッテリーの容量が増加する。
【0037】法律の規定により、本明細書は発明の具体的な実施態様を例示し、説明した。当業者には明らかな様に、請求項は発明の形態の変化を含み、本発明の特定の特徴は、他の特徴を使用せず活用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】2区域調整雰囲気を有するベルト炉を図式的に示す図である。
【符号の説明】
5 連続式ベルト部
10 炉
12 分割部
14 水冷ジャケット
16 ニッケル被覆した重合体(発泡材)
18 冷却挿入物
20 冷却ガス
22 気体状混合物
24 還元性ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】(a)外側ニッケル層を有し、この外側ニッケル層が破裂により開口部を形成しない温度を有する、ニッケル被覆した重合体基材を用意する工程、(b)前記ニッケル被覆した重合体基材を少なくとも600℃の温度に、25秒間未満露出することにより、前記ニッケル被覆した重合体基材を加熱し、重合体基材を熱分解させ、前記ニッケル被覆した重合体基材の前記外側ニッケル層を通して破裂させることにより穴を開ける工程、(c)熱分解した重合体基材から生じたガスを、前記外側ニッケル層を通る前記穴を通して放出し、ニッケル構造物を残す工程、および(d)前記ニッケル構造物を焼きなまし、強度を増加させる工程を含んでなることを特徴とするニッケル構造物の製造方法。
【請求項2】(a)外側ニッケル層および200℃未満の温度を有する、ニッケル被覆した重合体基材を用意する工程、(b)前記ニッケル被覆した重合体基材を少なくとも700℃の温度に、15秒間未満露出することにより、前記ニッケル被覆した重合体基材を加熱し、重合体基材を熱分解させ、前記外側ニッケル層を通して破裂させることにより穴を開ける工程、(c)熱分解した重合体基材から生じたガスを、前記外側ニッケル層を通る前記穴を通して放出し、前記重合体基材の初期形状により決定される形状を有するニッケル構造物を残す工程、および(d)前記ニッケル構造物を焼きなまし、強度を増加させる工程を含んでなることを特徴とするニッケル構造物の製造方法。

【図1】
image rotate