説明

ヌクレアーゼ遺伝子を欠失または不活性化させたロドコッカス属細菌

【課題】ロドコッカス属細菌は、その物理的強度が強く、また、酵素等を細胞内に多量に蓄積する能力を有すること等から、産業的に有用な微生物触媒として知られており、ニトリル類の酵素的水和または加水分解によるアミドまたは酸の生産等に利用されている。形質転換効率が優れたロドコッカス属細菌の提供。
【解決手段】ロドコッカス属細菌が有するヌクレアーゼ遺伝子の少なくとも1つ以上を欠失または不活性化した遺伝子欠損宿主。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヌクレアーゼ活性が欠失または不活性化されたロドコッカス属細菌、およびこれを利用した形質転換体の作製に関する。
【背景技術】
【0002】
ロドコッカス属細菌は、その物理的強度が強く、また、酵素等を細胞内に多量に蓄積する能力を有すること等から、産業的に有用な微生物触媒として知られており、ニトリル類の酵素的水和または加水分解によるアミドまたは酸の生産等に利用されている(特許文献1および2)。例えば、ロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)J1株(J1菌)は、アクリルアミドの工業的生産に使用されている。これまでに、これらの微生物触媒の有する酵素活性を、遺伝子組換えの方法により改良する試みがなされている(特許文献3〜5)。さらに、ロドコッカス属細菌の遺伝子操作を効率的に進めるために、宿主−ベクター系の開発が進められており、新規なプラスミドの探索(特許文献6〜8および16)やベクターの開発(特許文献9〜11および非特許文献1)なども行われている。
【0003】
ロドコッカス属細菌の形質転換方法としては電気パルス法(特許文献12〜14)やプロトプラスト法(非特許文献2および3)が用いられ、これまでに、ロドコッカス ロドクロウス ATCC12674をはじめとして、多くの形質転換体が得られている。本発明者らは、形質転換対象となるロドコッカス属細菌とは異なるロドコッカス属細菌またはその類縁菌から調製したプラスミドを用いることにより、形質転換対象へのプラスミドの形質転換効率が向上することを見出している(特許文献15)。
【0004】
また本発明者らはJ1菌にGCCGGCを認識配列とするII型制限酵素(RrhJ1I)を見出し、当該制限酵素に対応する修飾酵素を使用したプラスミドの修飾により、形質転換効率が向上することを見出している(特許文献17)。しかしながら、上記手法によるロドコッカス属細菌の形質転換は煩雑であり、迅速な形質転換は困難であった。
【0005】
以上のように、ロドコッカス属細菌において、より簡便にかつ高い効率で形質転換を達成できる形質転換方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−470号公報
【特許文献2】特開平3−251192号公報
【特許文献3】特開平4−211379号公報
【特許文献4】特開平6−25296号公報
【特許文献5】特開平6−303971号公報
【特許文献6】特開平4−148685号公報
【特許文献7】特開平4−330287号公報
【特許文献8】特開平7−255484号公報
【特許文献9】特開平5−64589号公報
【特許文献10】特開平8−56669号公報
【特許文献11】米国特許4920054号公報
【特許文献12】特開平10−248578号公報
【特許文献13】特開平9−28380号公報
【特許文献14】特開平5−68566号公報
【特許文献15】特開2005−095041号公報
【特許文献16】特開2006−050967号公報
【特許文献17】特開2007−228934号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Journal of Bacteriology 170,638−645(1988)
【非特許文献2】J.Basic Microbiol.1998;38(2):101−6.
【非特許文献3】J.Bacteriol.1988 Feb;170(2):638−45
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ロドコッカス属細菌の遺伝子操作を効率的に進めるために、形質転換効率の向上したロドコッカス属細菌を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、菌体内のヌクレアーゼ活性を欠失または不活性化することにより、高効率にロドコッカス属細菌を形質転換できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、ヌクレアーゼ遺伝子が欠失または不活性化されたロドコッカス属細菌に関する。
【0010】
本発明において、用いられるロドコッカス属細菌は特に限定されないが、例えば、ロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)等を挙げることができる。
【0011】
本発明において、欠失または不活性化させるヌクレアーゼ遺伝子は、制限酵素遺伝子であることが好ましい。
【0012】
1つの実施態様において、前記ヌクレアーゼ遺伝子は、配列番号1に示される塩基配列を有するRrhJ1I制限酵素もしくはそのオーソログ、および/または配列番号3に示される塩基配列を有するRrhJ1IIヌクレアーゼもしくはそのオーソログである。
【0013】
前記ヌクレアーゼ遺伝子は、以下の(a)〜(c)に示される塩基配列を有するDNAからなる。
(a)配列番号1または3記載の塩基配列を含むDNA
(b)配列番号1または3記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつヌクレアーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号1記載の塩基配列と相同性が80%以上の塩基配列からなり、かつヌクレアーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
【0014】
1つの実施態様において、前記ロドコッカス属細菌は、ロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)J1株またはその変異株である。
【0015】
また本発明は、ヌクレアーゼ遺伝子が欠失または不活性化されたロドコッカス属細菌を作製し、該ロドコッカス属細菌を形質転換することを特徴とする、ロドコッカス属細菌の形質転換体とその製造方法も提供する。
【0016】
さらに本発明は、ヌクレアーゼ遺伝子を欠失または不活性化させることを特徴とする、形質転換効率の向上したロドコッカス属細菌の製造方法、ならびに、ヌクレアーゼ遺伝子を欠失または不活性化させることを特徴とする、ロドコッカス属細菌の形質転換効率を向上させる方法も提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、ヌクレアーゼ活性が不活性化したロドコッカス属細菌、およびその形質転換体が提供される。本発明により提供されるロドコッカス属細菌の形質転換効率は、従来のロドコッカス属細菌よりも大幅に向上したものであり、これにより簡便かつ高効率にロドコッカス属細菌の遺伝子操作を行うことができる。本発明により、導入したDNAの効果によりロドコッカス属細菌に新たな性質を付与し、産業上有用な微生物触媒等の開発が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ロドコッカス属細菌のゲノム上から所定の領域を欠失させる方法の一例(接合伝達による遺伝子破壊法)を説明するための模式図である。
【図2】プラスミドpK19mobSacB1の構造を示す模式図である。
【図3】プラスミドpK4の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施の形態のみに限定させるものではない。
【0020】
1.ヌクレアーゼ遺伝子が欠失または不活性化されたロドコッカス属細菌
本発明に係るヌクレアーゼ遺伝子が欠失または不活性化されたロドコッカス属細菌(以下、「本発明のロドコッカス属細菌」ということがある)は、前述した通りヌクレアーゼ活性を有するロドコッカス属細菌において、ヌクレアーゼ遺伝子が欠失または不活性化したロドコッカス属細菌である。
【0021】
1.1.ロドコッカス属細菌
本発明で用いられるロドコッカス属細菌は、ヌクレアーゼ活性を有するロドコッカス属細菌(対象微生物)であって、ヌクレアーゼを産生し、その活性を示す限り、特に限定はされない。例えば、ロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)およびロドコッカス エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)、ロドコッカス ピリジノボランス(Rhodococcus pyridinivorans)、ロドコッカス オパカス(Rhodococcus opacus)、ロドコッカス ジョスティ(Rhodococcus jostii)、ロドコッカス エクイ(Rhodococcus equi)等が好ましく挙げられる。特に好ましくはロドコッカス ロドクロウスである。
【0022】
ロドコッカス ロドクロウスとしては、例えば、ロドコッカス・ロドクロウスATCC999株、ATCC12674株、ATCC17895株、ATCC15998株、ATCC33275株、ATCC184、ATCC4001株、ATCC4273株、ATCC4276株、ATCC9356株、ATCC12483株、ATCC14341株、ATCC14347株、ATCC14350株、ATCC15905株、ATCC15998株、ATCC17041株、ATCC19149株、ATCC19150株、ATCC21197株、ATCC21243株、ATCC29670株、ATCC29672株、ATCC29675株、ATCC33258株、ATCC13808株、ATCC17043株、ATCC19067株、ATCC21999株、ATCC21291株、ATCC21785株、ATCC21924株、 IFO14894株、IFO3338株、NCIMB11215株、NCIMB11216株、JCM3202株のほか、ロドコッカス ロドクロウスNCIMB41164(国際公開第05/054456号)、ロドコッカス ロドクロウスJ1(FERM BP−1478)、ロドコッカス ロドクロウスM8(SU1731814)、ロドコッカス ロドクロウスM33(VKM Ac−1515D)等が好ましく挙げられ、特に好ましくはロドコッカス ロドクロウスJ1である。
【0023】
ロドコッカス エリスロポリスとしては、例えばロドコッカス エリスロポリスPR4,ロドコッカス エリスロポリスSK121等が好ましく挙げられる。
ロドコッカス オパカスとしては、例えばロドコッカス オパカスB4が好ましく挙げられる。
ロドコッカス ジョスティとしては、例えばロドコッカス ジョスティRHA1が好ましく挙げられる。
ロドコッカス エクイとしては、例えばロドコッカス エクイATCC33737が好ましく挙げられる。
【0024】
1.2.ヌクレアーゼ遺伝子
本発明において欠失または不活性化するヌクレアーゼ遺伝子としては、特に限定されないが、形質転換の対象となるロドコッカス属細菌が有するヌクレアーゼ遺伝子のオーソログ、またはそのヌクレアーゼの認識するDNA配列と同じDNA配列を認識するヌクレアーゼの遺伝子が好ましい。
【0025】
欠失または不活性化するヌクアーゼの一例として、RrhJ1IおよびRrhJ1IIを挙げることができる。なお、RrhJ1IとRrhJ1IIは、いずれも制限酵素活性を有するヌクレアーゼであるが、本明細書中では、両者の混同を避けるために、前者を「RrhJ1I制限酵素」および後者を「RrhJ1IIヌクレアーゼ」と記載することとする。
【0026】
「RrhJ1I制限酵素」(「J1菌制限酵素」ともいう)は、ロドコッカス ロドクロウスJ−1株から単離された制限酵素であり、GCCGGCの6塩基配列を認識し、DNAを切断する活性(「RrhJ1I制限酵素活性」ともいう)を有するヌクレアーゼである(特開2007−259853号参照)。RrhJ1I制限酵素は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有し、その遺伝子は配列番号1に示される塩基配列を含む(配列番号1:ORF(cDNA配列)、配列番号21:ゲノム配列)。
【0027】
「RrhJ1IIヌクレアーゼ」(「J1菌ヌクレアーゼ」ともいう)は、ロドコッカス ロドクロウスJ−1株から単離されたヌクレアーゼであり、pBR322のclosed circularをopen circularにするnicking活性(「RrhJ1IIヌクレアーゼ活性」ともいう)を有するヌクレアーゼである。RrhJ1IIヌクレアーゼは、配列番号4に示されるアミノ酸配列を有し、その遺伝子は配列番号3に示される塩基配列を含む(配列番号3:ORF(cDNA配列)、配列番号18:ゲノム配列)。
【0028】
J1菌以外のロドコッカス属細菌については、上記J1菌のRrhJ1I制限酵素およびRrhJ1IIヌクレアーゼに対応するオーソログを欠失または不活性化させることができる。
【0029】
ここで、「オーソログ」とは、異なる生物に存在する相同な機能を有するタンパクをコードする類縁遺伝子であって、RrhJ1I制限酵素遺伝子の場合であれば、そのオーソログとはJ1菌以外の生物においてRrhJ1I制限酵素活性を有するタンパクをコードする遺伝子であり、RrhJ1IIヌクレアーゼ遺伝子の場合であれば、そのオーソログは、J1菌以外の生物においてRrhJ1IIヌクレアーゼ活性を有するタンパクをコードする類縁遺伝子である。
【0030】
上記したRrhJ1I制限酵素遺伝子およびRrhJ1IIヌクレアーゼのオーソログは、RrhJ1I制限酵素遺伝子およびRrhJ1IIヌクレアーゼ遺伝子と高い配列相同性を有する。それゆえ、上記配列番号1および配列番号3の塩基配列を有する遺伝子に加えて、これらの配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、さらに特に好ましくは約95%以上の相同性(同一性)を有する塩基配列を有するDNAも本発明のヌクレアーゼ遺伝子に含まれる。
【0031】
また、配列番号1および配列番号3に記載の塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAも、これがそれぞれRrhJ1I制限酵素やRrhJ1IIヌクレアーゼのようなヌクレアーゼ活性を有するタンパク質をコードする限り、本発明のヌクレアーゼ遺伝子に含まれる。
【0032】
なお、ストリンジェントな条件としては、例えばDNAを固定したナイロン膜を、6×SSC(1×SSCは塩化ナトリウム8.76g、クエン酸ナトリウム4.41gを1リットルの水に溶かしたもの)、1%SDS、100μg/mlサケ精子DNA、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%フィコールを含む溶液中で65℃にて20時間プローブとともに保温してハイブリダイゼーションを行う条件を挙げることができるが、これに限定されるわけではない。当業者であれば、このような緩衝液の塩濃度、温度等の条件に加えて、その他のプローブ濃度、プローブの長さ、反応時間等の諸条件を加味し、ハイブリダイゼーションの条件を設定することができる。
【0033】
1.3.ヌクレアーゼ遺伝子が欠失または不活性化されたロドコッカス属細菌
本発明に係るロドコッカス属細菌は、上述したようなヌクレアーゼ遺伝子のうち1つが欠失または不活性化されたものであっても良いし、複数のヌクレアーゼ遺伝子が欠失または不活性化されたものであってもよい。
【0034】
なお、「欠失」とは、ヌクレアーゼ遺伝子の一部または全部が欠失し、その結果として当該遺伝子がコードするタンパクのヌクレアーゼ活性の一部または全部が失われることを意味する。また、「不活性化」とは、ヌクレアーゼ遺伝子の欠失以外の理由(例えば、後述する調節領域の修飾など)により、当該遺伝子がコードするタンパクのヌクレアーゼ活性の一部または全部が失われることを意味する。
【0035】
ここで、「ヌクレアーゼ活性」とは、DNAを切断する活性を意味する。切断するDNAは二本鎖DNAでも一本鎖DNAでも良く、また切断する場所は内部でも末端から順次切断するものも含まれる。さらに、本発明のヌクレアーゼ活性には、二本鎖DNAの一方の鎖を切断するnicking活性を含む。
【0036】
本発明のロドコッカス属細菌のヌクレアーゼ活性の測定方法としては、例えば、該ヌクレアーゼをDNAと接触させ、接触後のDNAの分子量またはDNA断片数を測定することにより評価することができる。当業者であれば、基質DNA,接触時の酵素量、温度、溶液組成または接触時間などの条件を設定することができる。DNAの分子量は、例えばアガロースゲル電気泳動によって測定することができる。接触前のDNAの分子量と接触後のDNAの分子量、または接触前のDNAの断片数と接触後のDNAの断片数を比較することで、ヌクレアーゼ活性を評価することができる。
【0037】
RrhJ1I制限酵素活性は、RrhJ1I制限酵素をDNAと接触させ、接触後のDNAの分子量またはDNA断片数を測定することにより評価することができる。また、GCCGGCを認識する既知の制限酵素を対照として使用してもよい。
【0038】
またRrhJ1IIヌクレアーゼ活性は、RrhJ1IIヌクレアーゼをDNAと接触させ、接触後のDNAの分子量またはDNA断片数を測定することにより評価することができる。
【0039】
2.ヌクレアーゼ遺伝子が欠失または不活性化されたロドコッカス属細菌の製造
2.1.ヌクレアーゼ遺伝子の欠失または不活性化
本発明のロドコッカス属細菌は、本来有するヌクレアーゼ遺伝子が欠失または不活性化されたものである。ここで、遺伝子(標的遺伝子)の欠失または不活性化とは、当該遺伝子がコードするタンパク質のヌクレアーゼ活性の一部または全部を失わせるような、対象微生物のゲノムDNAにコードされるヌクレアーゼ遺伝子の一部または全部の欠失、置換、付加;プロモーター配列の一部または全部が欠失、置換、付加;発現調節に関連する遺伝子の一部または全部が欠失、置換、付加等が挙げられる。これらの欠失、置換、付加等された領域は単独でもよいし複数を組み合わせたものでもよい。
【0040】
例えば、上記対象ロドコッカス属細菌がロドコッカス ロドクロウスJ1株の場合は、ヌクレアーゼ遺伝子RrhJ1IおよびRrhJ1II(cDNA配列は配列番号1および3,ゲノム配列は配列番号21および18、アミノ酸配列は配列番号2および4)を有しているため、標的遺伝子としては、これらのいずれか一方でもよいし、両方でもよく、限定はされない。
【0041】
ヌクレアーゼ遺伝子を特異的に欠失または不活性化する手法としては、特に限定されず、従来公知の遺伝子組換技術を適用することができる。
【0042】
上記のとおり、ヌクレアーゼ遺伝子の欠失または不活性化は、目的とするヌクレアーゼ遺伝子をゲノムから削除する、目的とするヌクレアーゼ遺伝子内に他のDNA断片を挿入する、または当該遺伝子の転写・翻訳開始領域に変異を与えることにより達成される。
【0043】
本発明に係るロドコッカス属細菌は、目的とするヌクレアーゼ遺伝子を計画的に欠失または不活性化したものであってもよいし、遺伝子にランダムに変異を与えた結果、上述したヌクレアーゼ遺伝子を欠失または不活性化したものであってもよい。
【0044】
ヌクレアーゼ遺伝子を欠失または不活性化する方法としては、例えば、相同組換え(Homologous recombination)を利用する方法が挙げられる。
【0045】
具体的には、標的遺伝子の塩基配列中に薬剤耐性マーカー遺伝子等を相同組換えにより挿入し、当該遺伝子が機能発現しない状態にする、または(標的遺伝子を当該遺伝子の一部または全部を含まない配列に置換することにより)標的遺伝子自体を欠失させて、その発現そのものを阻害する方法である。
【0046】
2.2.接合伝達による遺伝子破壊法
以下にヌクレアーゼ遺伝子を欠失または不活性化する方法の一例として、接合伝達による遺伝子破壊法について図1を参照して説明する。本方法はすなわち、ドナー微生物からヌクレアーゼ活性を有するレシピエント微生物(ロドコッカス属細菌)への接合伝達を利用した形質転換方法を用いることを含む、ヌクレアーゼ遺伝子の欠失または不活性化方法であって、以下の工程(a)〜(d)を含むものである。
【0047】
(a)レシピエント微生物として、前述接合伝達に供するドナー微生物が感受性を示す薬剤への耐性が強化されたロドコッカス属細菌を作製する工程;
(b)ドナー微生物として、下記(i)〜(v):
(i)レシピエント微生物中のヌクレアーゼ遺伝子(標的遺伝子)とその周辺の塩基配列とを含む塩基配列において当該耐性遺伝子を欠失または不活性化させた配列、
(ii)当該ドナー微生物において機能する接合伝達開始領域、
(iii)当該ドナー微生物において機能する複製開始領域、
(iv)レシピエント微生物が感受性を示す薬剤に対する耐性遺伝子、および、
(v)レシピエント微生物に対する致死遺伝子
を含む、遺伝子改変用プラスミドを用いて形質転換された微生物を作製する工程;
(c)工程(b)で作製されたドナー微生物から工程(a)で作製されたレシピエント微生物への接合伝達を行うことにより、当該レシピエント微生物の形質転換体を作製する工程;並びに
(d)工程(c)で作製された形質転換体を、前述致死遺伝子が機能し得る培養条件で培養する工程。
【0048】
上記欠失または不活性化方法において用いるレシピエント微生物としては、ヌクレアーゼ遺伝子を有するロドコッカス属細菌であれば限定されない。ロドコッカス属細菌等の具体例については、前述と同様のものが挙げられる。
【0049】
一方、ドナー微生物としては、上記レシピエント微生物と接合伝達可能な微生物であれば限定はされない。例えば、大腸菌が好ましい。
【0050】
工程(a)
工程(a)では、接合伝達に供するレシピエント微生物として、接合伝達に供するドナー微生物が感受性を示す薬剤への耐性を強化したロドコッカス属細菌を作製する。「薬剤への耐性を強化する」とは、レシピエント微生物が薬剤耐性を有していない場合には、薬剤耐性を付与することをいい、レシピエント微生物が薬剤耐性の乏しい場合には、当該耐性をより強くすることをいう。
【0051】
接合伝達法を使用する場合、レシピエント微生物となるロドコッカス属細菌には薬剤耐性マーカーが必要である。よって、薬剤耐性を有していないロドコッカス属細菌、または薬剤耐性の乏しいロドコッカス属細菌をレシピエント微生物として使用する場合、薬剤選択可能な程度の十分な薬剤耐性を有する株の作製が必要となる。ここで、薬剤としては、接合伝達法を使用することを考慮し、接合伝達に供するドナー微生物が感受性を示す薬剤が好ましい。当該薬剤としては、クロラムフェニコール、アンピシリン、カナマイシン、トリメトプリム、ゲンタマイシン、ナルジクス酸、カルベニシン、チオストレプトン、テトラサイクリン、ストレプトマイシン等が好ましく、クロラムフェニコール、アンピシリンがより好ましい。
【0052】
上述のように薬剤耐性を強化したレシピエント微生物を作製する方法としては、特に限定はされない。例えば、自然変異誘発法、紫外線照射や変異誘発剤を用いる突然変異誘発法、EZ−TN5(Epicentre社製)のようなランダム変異導入ツール等を用いることにより、本来レシピエントが持たない薬剤耐性遺伝子を人為的に当該微生物ゲノム上に導入する方法、あらかじめ遺伝子改変用プラスミドとは別の、抗生物質耐性獲得用のプラスミドを導入する方法等が好ましい。これらの中でも自然変異誘発法がより好ましい。
【0053】
自然変異誘発法は、所望の薬剤を含有する培地中で対象とする微生物を継代培養等することにより、もともとは当該培地中で生育不可または困難な微生物に自然変異を誘発させて、より高濃度の薬剤を含有する当該培地中でも生育し得る株を取得する方法である。どの程度まで薬剤耐性を強化するかは、使用するレシピエント微生物、ドナー微生物、選択する薬剤により異なるが、レシピエント微生物の生育が抑制されない、且つ、ドナー微生物の生育が阻害される薬剤濃度を選ぶことが好ましい。例えば、レシピエント微生物としてロドコッカス属細菌を、ドナー微生物として大腸菌を、選択用薬剤としてクロラムフェニコールを用いる場合、自然突然変異によりクロラムフェニコール1〜200mg/l,好ましくは10〜100mg/lを含有する培地において生育可能なレシピエント微生物(クロラムフェニコール耐性強化株)を得ることが望ましい。
【0054】
工程(b)
工程(b)では、接合伝達に供するドナー微生物として、所定の遺伝子改変用プラスミドを用いて形質転換された微生物を作製する。遺伝子改変用プラスミド、すなわちレシピエント微生物中のヌクレアーゼ遺伝子を改変するためのプラスミドDNAとしては、前述の(i)〜(v)の構成(遺伝子・塩基配列)を含むものを用いる。
【0055】
ここで、前述(i)の配列は、改変の対象とするレシピエント微生物中のヌクレアーゼ遺伝子と当該遺伝子の周辺の塩基配列とを含む塩基配列において当該ヌクレアーゼ遺伝子を欠失または不活性化させた配列である。当該配列の作製は、レシピエント微生物のゲノムから、ヌクレアーゼ遺伝子と当該遺伝子の周辺の塩基配列とを含む塩基配列の単離(クローニング)、遺伝子ライブラリ作製やPCR等の公知技術を用いて行うことができる。
【0056】
なお、ヌクレアーゼ遺伝子の周辺の塩基配列としては、限定はされない。例えば、当該遺伝子に加え、発現調節に関連する遺伝子の上流および下流の相同領域が両端からそれぞれ100〜3000bpの塩基配列を含む配列であることが好ましい。より好ましくは500〜2000bpの塩基配列を含む配列である。単離した塩基配列を用いて、前述(i)を作製する方法は特に限定されず、PCR法や制限酵素を用いた標的遺伝子部分の切除もしくは置換等の公知技術を用いて行うことができる。
【0057】
前述(ii)の接合伝達開始領域は、使用するドナー微生物中において接合伝達の開始点となる塩基配列を含む領域であれば、限定はされない。例えば、プラスミドPR4由来のoriTが好ましい。
【0058】
前述(iii)の複製開始領域は、使用するドナー微生物中において前述遺伝子改変用プラスミドの自己複製起点として機能し得る塩基配列を含む領域であれば、限定はされない。例えば、oriVが好ましい。
【0059】
前述(iv)の薬剤耐性遺伝子は、前述工程(a)で作製した、接合伝達に供するレシピエント微生物が感受性を示す薬剤に対する耐性遺伝子であれば、限定はされない。例えば、アンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、トリメトプリム耐性遺伝子、ゲンタマイシン耐性遺伝子、ナルジクス酸耐性遺伝子、カルベニシン耐性遺伝子、チオストレプトン耐性遺伝子等が好ましく挙げられる。
【0060】
前述(v)の致死遺伝子は、レシピエント微生物のゲノム上に導入された場合に、当該微生物を死に至らしめる作用を有し得る遺伝子であれば、限定はされない。例えば、sacB遺伝子、rpsL遺伝子、ccdB遺伝子等が挙げられるが、sacB遺伝子が好ましい。sacB遺伝子は、当該遺伝子を保有し発現する微生物(例えばロドコッカス属細菌)をスクロース含有培地で培養した場合に、スクロースを基質とし当該微生物に対して致死作用を有する有害物質を産生する酵素(レバンスクラーゼ)をコードする遺伝子である。
【0061】
接合伝達に用いる前述遺伝子改変用プラスミドは、如何なるベクターをベースとして構築されたものであってもよく、限定はされない。例えば、レシピエント微生物がロドコッカス属細菌の場合は、pK19mobベクター(Schaefer et al,Genel,vol.45,p.69−73(1994))等を用いることが好ましい。
【0062】
前述遺伝子改変用プラスミドにおける(i)〜(v)の構成は、例えば、上流から順に、前述(i)の配列、前述(iv)の耐性遺伝子、前述(v)の致死遺伝子、前述(ii)の接合伝達開始領域、前述(iii)の複製開始領域の順で配されていることが好ましい。前述(i)〜(v)の構成を含む遺伝子改変用プラスミドの構築は、公知の遺伝子組換え技術を用いて実施することができる。
【0063】
上述の各構成を有する遺伝子改変用プラスミドをドナー微生物内に導入して形質転換し、接合伝達に供するドナー微生物を作製する。その際、形質転換の方法としては、微生物の形質転換方法として公知の方法を用いることができる。例えば大腸菌をドナー微生物とする場合は、エレクトロポレーション法やカルシウム法等を用いることができる。
【0064】
工程(c)
工程(c)では、工程(b)で作製されたドナー微生物から工程(a)で作製されたレシピエント微生物への接合伝達を行う。通常は、ドナー微生物およびレシピエント微生物のそれぞれの細胞懸濁液を混合し、適当なプレート培地(LB培地等)上に均一に広げて、両微生物の接合を行わせる。
【0065】
当該接合においては、ドナー微生物中の遺伝子改変用プラスミドがレシピエント微生物内に移動し、レシピエント微生物のゲノムと上記プラスミドとの相同配列で二重交叉が起こり当該ゲノム中のヌクレアーゼ遺伝子が欠失される。この接合により、レシピエント微生物の形質転換体が作製される。すなわち、当該形質転換体は、ドナー微生物中の遺伝子改変用プラスミドの一部が相同組換えによりレシピエント微生物のゲノム上に導入されたものである。
【0066】
所望の形質転換体であるかどうかの確認は、レシピエント微生物自体の薬剤耐性、および前述遺伝子改変用プラスミド由来の薬剤耐性を利用して行うことができる。具体的には、両薬剤を含む培地(例えば、カナマイシンおよびクロラムフェニコール含有培地等)において上記接合後の微生物を培養することにより、所望の形質転換体を選択することができる。
【0067】
工程(d)
工程(d)では、工程(c)で作製されたレシピエント微生物の形質転換体(形質転換微生物)を、前述遺伝子改変用プラスミド由来の致死遺伝子が機能し得る培養条件で培養(継代培養)する。致死遺伝子が機能し得る培養条件としては、限定はされないが、例えば致死遺伝子がsacB遺伝子の場合は、スクロース含有培地を用いた培養が好ましく挙げられる。
【0068】
当該培養においては、上記致死遺伝子を有する形質転換微生物は生育困難であるため、継代培養により、自然誘発的に、当該微生物のゲノム上から相同組換えにより上記致死遺伝子を含む塩基配列領域が除かれた(脱落した)形質転換微生物を得ることができる。
【0069】
ただし、当該得られた微生物の中には、レシピエント微生物中のヌクレアーゼ遺伝子が、当初の目的通り欠失または不活性化しているものと、そうでないもの(上記脱落の際の相同組換えにより元のヌクレアーゼ遺伝子の機能が復活したもの)が含まれている。
【0070】
よって、通常は、当該得られた微生物のゲノムDNAを抽出し、例えばPCR法などによりヌクレアーゼ遺伝子が、当初の目的どおり欠失していることを確認し、所望の形質転換微生物を選択することがより好ましい。
【0071】
3.ヌクレアーゼ遺伝子が欠失または不活性化されたロドコッカス属細菌の形質転換方法
本発明のロドコッカス属細菌に導入するためのプラスミドは、ロドコッカス(Rhodococcus)属細菌で複製増殖可能なDNA領域を有するプラスミドであれば良い。
【0072】
例えば、ロドコッカス属細菌で複製増殖可能なDNA領域としては、プラスミドpAN12,pNC903,pFAJ2600,pRC10,pRC20,pRC001,pRC002,pRC003またはpRC004等に含まれる複製増殖可能なDNA領域が挙げられる。好ましくは、プラスミドpRC001,pRC002,pRC003またはpRC004に含まれる複製増殖可能なDNA領域が挙げられる。プラスミドpRC001,pRC002,pRC003またはpRC004は、各々ロドコッカス ロドクロウスATCC4276,ATCC14349,ATCC14348,IFO3338株由来のプラスミドであり、特開平2−84198号公報、特開平4−148685号公報、特開平5−64589号公報、特開平5−68566号公報に記載されている。
【0073】
また、上記pRC004を含むベクターであるpSJ023(特開平10−337185号)およびpSJ034も使用することができる。
【0074】
当該プラスミドは、アルカリ−SDS法で調製したものが使用でき、好ましくは不純物の少ない高純度なDNAを使用する。ベクターを高純度に精製する方法としては、密度勾配遠心法、市販精製キットを使用することができる。密度勾配遠心法は、例えばCsClやCF3COOCsを使用して、100000Gで2〜48時間遠心した後、目的とするDNAのバンドを抽出することにより、ベクターを精製することができる。
【0075】
プラスミドの調製に使用する宿主は、特に限定されず、例えば、大腸菌(エシェリヒア・コリ)、枯草菌(バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis))、放線菌などの細菌、酵母、カビ、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞などが挙げられる。プラスミドの調製の好ましい宿主は大腸菌である。
【0076】
形質転換に使用する宿主細菌は、上記2の方法で調製したヌクレアーゼ欠失または不活性化ロドコッカス属細菌である。宿主細菌は培養液を洗浄してそのまま使用したり、または細胞壁の構造を変化させたりすることにより、プラスミドDNAの導入効率を高めることが可能である。細胞壁の構造を変化させる方法としては、培養時にグリシン、ペニシリンGまたはイソニコチン酸ヒドラジドで処理する方法が好ましい。また、培養液の10%から20%のショ糖を添加して培養する方法も用いることができる。このようにして調製した宿主細菌はコンピテントセルと呼ばれる。
【0077】
以上のように調製したプラスミドDNAと宿主細菌を使用して形質転換を行う。形質転換手法は、当業者に公知の形質転換手法であれば特に限定されず、エレクトロポレーション法、カルシウムイオンを用いる方法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等を利用することができる。
【0078】
例えば、電気パルス法を使用し、適量のプラスミドDNAとコンピテントセルを混合してキュベットに入れ、電気パルスを印加する。電気パルスの印加条件は、電圧として10〜25KV/cm、好ましくは20KV/cm、抵抗値として50〜400Ω、好ましくは100−200Ωを使用する。電気パルスを印加した後、37℃で数分ヒートショックを行い、その後、適当な培地を適量加え、約30℃にて数時間培養を行う。この培養を行うことにより、上述のように薬剤添加によって変化した細胞壁が正常な構造に回復すると共に、プラスミド由来の薬剤耐性遺伝子の発現が起こる。この培養時間は、1時間以上が好ましく、12時間以上がより好ましい。
【0079】
形質転換を確認するためのマーカー薬剤または選択培地の薬剤としては、形質転換体の取得が可能であり、かつ、宿主細菌と形質転換体を区別することができるものであれば特に制限されないが、例えばカナマイシン、アンピシリン、クロラムフェニコール、トリメトプリム、テトラサイクリン、ストレプトマイシン等が挙げられる。
【0080】
薬剤の濃度は、形質転換体を効率よく取得するためには、選択培地に対して必要最少量とすることが好ましい。この濃度は、各種濃度の薬剤を含む寒天培地に宿主細菌をプレートし、コロニーの生育の有無を調べることによって設定することができる。例えば、プラスミドDNAとしてpK1、pK2、pK3、pK4、pSJ023、pSJ002などを使用する場合には、カナマイシン濃度は1〜100μg/ml、好ましくは10〜50μg/mlである。
【0081】
なお、形質転換効率は、例えば、形質転換に用いたベクター量あたりの形質転換体コロニー数(cfu)(=cfu/μg)あるいは形質転換に用いた宿主の量あたりの形質転換体量などにより算出することができる。
【0082】
本発明のロドコッカス属細菌は形質転換効率が野生型に比較して顕著に高く、簡便かつ高効率に目的遺伝子を導入することができる。これにより、ロドコッカス属細菌に新たな性質を付与し、産業上有用な微生物触媒等を開発することが可能になる。
【実施例】
【0083】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0084】
[実施例1]
RrhJ1I欠失用プラスミド、RrhJ1II欠失用プラスミドの作製
(1)接合伝達プラスミドベクター(pK19mobsacB1)の作製
pDNR−1r(Clontech社製)中のsacB遺伝子を、NspV切断サイトを付加したプライマーSAC−01(配列番号5)およびSAC−02(配列番号6)を使用したPCRにより増幅し、約1.9kbのsacB遺伝子断片を得た。増幅条件は以下の通りである。
【0085】
反応液組成:
滅菌水 22μl
2×PrimeSTAR Max(タカラバイオ社製) 25μl
SAC−01(配列番号5) 1μl
SAC−02(配列番号6) 1μl
pDNR−1r(Clontech社製)(100倍希釈) 1μl
総量 50μl
【0086】
温度サイクル:
98℃:10秒、55℃:5秒および72℃:10秒の反応を30サイクル
【0087】
プライマー:
SAC−01:GGTTCGAATACCTGCCGTTCACTATTATTTAGTG(配列番号5)
SAC−02:GGTTCGAATCGGCATTTTCTTTTGCGTTTTTATTTG(配列番号6)
【0088】
PCR産物の2μlを0.7%アガロースゲル電気泳動に供して増幅を確認した後、反応液をGFX PCR DNA band and GelBand Purification kit(アマシャムバイオサイエンス社製)で精製した。
【0089】
精製したsacB遺伝子断片、およびpK19mobを制限酵素NspV(タカラバイオ社製)で消化後、それぞれの切断断片をGFX PCR DNA band and Gel Band Purification kitで精製した。
sacBのNspV切断断片とpK19mobのNspV切断断片を、DNA ligation kit<Mighty mix>(タカラバイオ社製)を用いて連結した。反応条件は以下の通りである。
【0090】
反応液組成:
ligation mighty mix(タカラバイオ社製) 5μl
sacB/NspV切断断片 4μl
pK19mob/NspV切断断片 1μl
総量 10μl
【0091】
反応:
16℃,1時間
【0092】
上記ライゲーション産物の全量を、後述の方法で調製した大腸菌JM109株コンピテントセル200μlに加え、0℃で30分放置した。続いて、前述コンピテントセルに42℃で45秒間ヒートショックを与え、0℃で2分間冷却した。その後、SOC培地(20mMグルコース、2%バクトトリプトン、0.5%バクトイーストエキス、10mM NaCl,2.5mM KCl,1mM MgSO4,1mM MgCl2)を1ml添加し、37℃にて1時間振盪培養した。培養後の培養液を200μlずつ、LB Km寒天培地(カナマイシン50mg/l,2%寒天を含有するLB培地(1%バクトトリプトン、1%NaCl,0.5%バクトイーストエキス))に塗布し、37℃で一晩培養した。寒天培地上に生育した形質転換体コロニー複数個を、1.5mlのLB Km培地(カナマイシン50mg/lを含有するLB培地)にて37℃で一晩培養した。得られた培養液を集菌後、QIAprep miniprep kit(QIAGEN社製)を用いて組換えプラスミドを回収した。キャピラリーDNAシーケンサーCEQ2000(ベックマン・コールター社製)を用いて、添付のマニュアルに従って、プラスミド中にクローニングされているPCR増幅産物の塩基配列と方向を解析した。SacB遺伝子が正方向に導入されたプラスミドベクターをpK19mobsacB1と命名した。図2にpK19mobsacB1の構造を示す。
【0093】
なお、大腸菌JM109株のコンピテントセルは以下の方法で調製した。
大腸菌JM109株をLB培地1mlに接種し、37℃で5時間好気的に前培養した。次に、前培養液0.4mlをSOB培地40ml(2%バクトトリプトン、0.5%バクトイーストエキス、10mM NaCl,2.5mM KCl,1mM MgSO4,1mM MgCl2)に加え、18℃で20時間培養した。得られた培養物を遠心分離(3,700×g,10分間、4℃)により集菌した後、冷TF溶液(20mM PIPES−KOH(pH6.0),200mM KCl,10mM CaCl2,40mM MnCl2)を13ml加え、0℃で10分間放置し、再度遠心分離(3,700×g,10分間、4℃)して上清を除いた。得られた大腸菌菌体を冷TF溶液3.2mlに懸濁し、0.22mlのジメチルスルホキシドを加え、0℃で10分間放置した後、液体窒素を用いて凍結したものをコンピテントセルとした。
【0094】
(2)J1株ゲノムDNAの調製
ロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)J1株を100mlのMYK培地(0.5%ポリペプトン、0.3%バクトイーストエキス、0.3%バクトモルトエキス、0.2%K2HPO4,0.2%KH2PO4,pH7.0)中、30℃にて72時間振盪培養した。
【0095】
培養後、集菌し、集菌された菌体をSaline−EDTA溶液(0.1M EDTA,0.15M NaCl(pH8.0))4mlに懸濁した。懸濁液に40mgのリゾチームを加えて、37℃で1〜2時間振盪したのち、−20℃で凍結した。
【0096】
次に、10mlのTris−SDS液(1%SDS,0.1M NaCl,0.1M Tris−HCl(pH9.0))を穏やかに振盪しながら加え、さらにプロテイナーゼK(メルク社)を10μl(終濃度10mg/ml)加えて37℃で1時間振盪した。
【0097】
次に、等量のTE(10mM Tris−HCl,1mM EDTA(pH8.0))飽和フェノールを加え、撹拌した後遠心した。遠心後、上層をとり2倍量のエタノールを加えた後、ガラス棒でDNAを巻きとり、90%,80%,70%のエタノールで順次フェノールを取り除いた。
【0098】
次に、DNAを3mlのTE緩衝液に溶解させ、リボヌクレアーゼA溶液(100℃,15分間の加熱処理済)を10μg/mlになるよう加え、37℃で30分間振盪した。さらに、プロテイナーゼKを加え37℃で30分間振盪した後、等量のTE飽和フェノールを加えて遠心し、上層と下層に分離させた。
【0099】
上層についてこの操作を2回繰り返した後、同量のクロロホルム(4%イソアミルアルコール含有)を加え、同様の抽出操作を繰り返した。その後、上層に2倍量のエタノールを加え、ガラス棒でDNAを巻きとり回収し、J1株ゲノムDNA溶液を得た。このゲノムDNAは、配列番号1に示すRrhJ1I遺伝子、および配列番号2に示すRrhJ1II遺伝子を有している。
【0100】
(3)RrhJ1I遺伝子欠失用プラスミドの構築
RrhJ1I遺伝子の上流域と下流域を含んだ配列を取得するため、以下に示す反応液組成およびプライマーを用いてPCRを行った。
【0101】
反応液組成:
鋳型DNA(J1株ゲノムDNA) 1μl
プライマーJ05(配列番号7) 1μl
プライマーJ06(配列番号8) 1μl
滅菌水 22μl
2×PrimeSTAR Max(タカラバイオ社製) 25μl
総量 50μl
【0102】
温度サイクル:
98℃:10秒、55℃:5秒および72℃:10秒の反応を30サイクル
【0103】
プライマー:
J05:ctcaaggcaaaggtctctcacc(配列番号7)
J06:actgcacacccaatgccgcgttcctggctg(配列番号8)
【0104】
同様にプライマーJ07(配列番号9)、J08(配列番号10)を使用し、上記と同じ条件でPCRを実施した。
J07:cgcggcattgggtgtgcagtggtgagggaa(配列番号9)
J08:gaacgccgtagtccgatgcg(配列番号10)
【0105】
PCR終了後、反応液2μlを0.7%アガロースゲル電気泳動に供し、約2kbpのPCR産物の検出を行った。PCR産物を確認した後、反応液をGFX PCR DNA band and GelBand Purification kit(アマシャムバイオサイエンス社製)で精製した。
【0106】
次に上記で増幅した2つのPCR断片を連結するため、以下の条件でAssembly PCRを行った。
【0107】
反応液組成:
鋳型DNA1(J05とJ06の増幅産物) 0.5μl
鋳型DNA2(J07とJ08の増幅産物) 0.5μl
プライマーJ05(配列番号7) 1 μl
プライマーJ08(配列番号10) 1 μl
滅菌水 22 μl
2×PrimeSTAR Max(タカラバイオ社製) 25 μl
総量 50 μl
【0108】
温度サイクル:
98℃:10秒、55℃:5秒および72℃:20秒の反応を30サイクル
【0109】
PCR終了後、約4kbpの増幅産物を0.7%アガロース電気泳動で確認し、Mighty Cloning Kit(Blunt End)(タカラバイオ社製)を使用してpUC118に連結した。このようにして得たプラスミドをpUC118/ΔRと命名した。
【0110】
続いて、上記プラスミドpUC118/ΔRおよびプラスミドベクターpK19mobsacB1を制限酵素XbaIおよびHindIIIで切断した。
【0111】
反応液組成1:
プラスミドpUC118/ΔR 20μl
XbaI(タカラバイオ社製) 1μl
HindIII(タカラバイオ社製) 1μl
10×M Buffer(酵素に添付) 5μl
10×BSA(酵素に添付) 5μl
滅菌水 18μl
総量 50μl
【0112】
反応液組成2:
プラスミドpK19mobsacB1 5μl
XbaI(タカラバイオ社製) 0.5μl
HindIII(タカラバイオ社製) 0.5μl
10×M Buffer(酵素に添付) 2μl
10×BSA(酵素に添付) 2μl
滅菌水 10μl
総量 20μl
【0113】
反応:
37℃,2.5時間
【0114】
反応終了後、プラスミドpUC118/ΔRについては反応液の全量を0.7%アガロースゲル電気泳動に供して約4kbの断片を切り出し、GFX PCR DNA band and GelBand Purification kit(アマシャムバイオサイエンス社製)で回収してΔR/XbaI−HindIIIとした。
【0115】
プラスミドベクターpK19mobsacB1については、反応液に2μlの3M酢酸ナトリウム、50μlの99.5%エタノールを加えてよく混和し、−20℃で1時間冷却した。冷却後の溶液を15,000rpm,4℃,10分遠心して上清を除去し、減圧乾燥にて溶媒を除去した。その後、乾燥させたペレットに50μlの滅菌水を加えて再度溶解させ、pK19mobsacB1/XbaI−HindIIIのベクター溶液を得た。
次に回収したΔR断片とベクターpK19mobsacB1/XbaI−HindIIIを連結した。
【0116】
反応液組成:
Ligation mighty mix(タカラバイオ社製) 5μl
ΔR/XbaI−HindIII 4μl
pK19mobsacB1/XbaI−HindIII 1μl
総量 10μl
【0117】
反応:
16℃,1時間
【0118】
反応終了後、(1)と同様にして大腸菌JM109株を形質転換し、RrhJ1I遺伝子欠失プラスミドを得た。本プラスミドをpK19ΔRと名付けた。
【0119】
(4)RrhJ1II遺伝子欠失用プラスミドの構築
RrhJ1II遺伝子の上流域と下流域を含んだ配列を取得するため、以下に示す反応液組成およびプライマーを用いてPCRを行った。
【0120】
反応液組成:
鋳型DNA(J1株ゲノムDNA) 1μl
プライマーJM56(配列番号11) 1μl
プライマーJM57(配列番号12) 1μl
滅菌水 22μl
2×PrimeSTAR Max(タカラバイオ社製) 25μl
総量 50μl
【0121】
温度サイクル:
98℃:10秒、55℃:5秒および72℃:10秒の反応を30サイクル
【0122】
プライマー:
JM56:GGtctagaCTTCTGCCAGGGCTACTCCG(配列番号11)
JM57:GCactagtGCCGAACTCGTACTCGATCG(配列番号12)
【0123】
同様にプライマーJM58(配列番号13)、JM59(配列番号14)を使用し、上記と同じ条件でPCRを実施した。
JM58:GCactagtTCGACGTCCTCGAGGAATCC(配列番号13)
JM59:GCaagcttGCTTCGGACTGACGTCCGAC(配列番号14)
【0124】
PCR終了後、反応液2μlを0.7%アガロースゲル電気泳動に供し、約2kbpのPCR産物の検出を行った。PCR産物を確認した後、反応液をGFX PCR DNA band and GelBand Purification kit(アマシャムバイオサイエンス社製)で精製した。
【0125】
次に上記で増幅した2つのPCR断片を連結するため、以下の条件でAssembly PCRを行った。
【0126】
反応液組成:
鋳型DNA1(JM56とJM57の増幅産物) 0.5μl
鋳型DNA2(JM58とJM59の増幅産物) 0.5μl
プライマーJM56(配列番号11) 1 μl
プライマーJM59(配列番号14) 1 μl
滅菌水 22 μl
2×PrimeSTAR Max(タカラバイオ社製) 25 μl
総量 50 μl
【0127】
温度サイクル:
98℃:10秒、55℃:5秒および72℃:20秒の反応を30サイクル
【0128】
PCR終了後、約4kbpの増幅産物をアガロース電気泳動で確認し、(3)と同様の手順でRrhJ1I遺伝子欠失プラスミドを得た。本プラスミドをpK19ΔRrhJ1IIと名付けた。
【0129】
[実施例2]
薬剤耐性を有するJ1株の作製
接合伝達に使用するドナーは、遺伝子欠失株のセレクションに薬剤耐性が必要である。そこで、種々の薬剤耐性株の取得を試み、クロラムフェニコール耐性を有するJ1株の変異株を下記の方法で取得した。
【0130】
2mg/lのクロラムフェニコールを含んだMYKプレート(0.5%ポリペプトン、0.3%バクトイーストエキス、0.3%マルツエキス、0.2%KH2PO4,0.2%K2HPO4,2%寒天)にJ1株をストリークし、コロニーが生育するまで30℃で保温した。約2週間後、生育してきたクロラムフェニコール耐性株を、再度2mg/lのクロラムフェニコールプレートにストリークして、30℃で保温した。
【0131】
次に、2mg/lのクロラムフェニコールプレートから生育したコロニーを、5mg/lのクロラムフェニコールプレートにストリークし、耐性株が出現するまで30℃で保温した。以下、同様の操作をクロラムフェニコール濃度10mg/lに高めて繰り返し、10mg/lのクロラムフェニコール濃度で生育するクロラムフェニコール耐性株(J1−Cm株)を得た。
【0132】
[実施例3]
接合伝達によるRrhJ1I遺伝子の欠失
(1)ドナーの調製
乾熱滅菌した試験管に大腸菌S17−1λpirのコンピテントセル20μlにプラスミドpK19ΔR 1μlを加え、氷上で30分静置した。42℃で30秒ヒートショック後、SOC培地を180μl添加し、37℃で1時間振とう培養を行った。その後、LB Kmプレートに塗布し、37℃で一晩静置した。
【0133】
翌日、プレートに生育したコロニーをLB培地1mlで回収し、遠心分離により菌体を回収し、遠心上清を除去した。同様の操作をもう一度繰り返し、最後に0.5mlのLB培地を添加し、菌体懸濁液を調製した。この菌体懸濁液をドナー溶液とした。
【0134】
(2)レシピエントの調製
J1−Cm株をMYKプレートにストリークし、30℃で2日生育させた。生育したコロニーを実施例3(1)と同様の方法で回収、洗浄し、レシピエントとなる菌体懸濁液を調製した。
【0135】
(3)接合伝達
実施例3(1)で調製したドナー溶液と、(2)で調製したレシピエント溶液を100μlずつ混合し、抗生物質を含まないMYKプレートに塗布し、30℃で一晩静置した。
【0136】
翌日、生育したコロニーを1mlのLB培地で回収し、100μlを、カナマイシン10mg/l,クロラムフェニコール10mg/lを含むMYKプレートに塗布した。塗布したプレートを組換菌コロニーが出現するまで30℃で1週間保温した。
【0137】
1週間後、プレート上に2個のコロニーが出現した。得られたコロニーの1つを#RrhJ1I−1と命名し、以後の実験に使用した。
【0138】
(4)RrhJ1I遺伝子の欠失
接合伝達により得られた組換菌#R1は、ゲノム上のRrhJ1I遺伝子の領域に相同組換えによりプラスミドが挿入されているが、RrhJ1I遺伝子を欠失するには2段階の相同組換えが必要である。そこで次に、sacB遺伝子を利用した選抜を実施した。
【0139】
10%ショ糖を含んだMYKプレートを作製し、#RrhJ1I−1のコロニーを滅菌水に懸濁した液を適度に希釈して塗布し、30℃で静置した。生育したコロニーについて10個のコロニーからゲノムDNAを調製し、PCR断片のサイズを電気泳動で調べた。
【0140】
反応液組成:
鋳型DNA(ゲノムDNA) 0.5μl
プライマーJ05(配列番号7) 0.2μl
プライマーJ08(配列番号10) 0.2μl
滅菌水 4.1μl
2×PrimeSTAR Max(タカラバイオ社製) 5 μl
総量 10 μl
【0141】
温度サイクル:
98℃:10秒、55℃:5秒および72℃:20秒の反応を30サイクル
【0142】
その結果、10個の内、4個のコロニーはRrhJ1I遺伝子が欠失していることが確認された。得られたRrhJ1I遺伝子欠失株をΔRrhJ1I−1〜4と命名した。
【0143】
[実施例4]
形質転換効率の評価
(1)ΔRrhJ1I−1株およびJ1株の培養・コンピテントセルの作製
MYKG培地(0.5%ポリペプトン、0.3%バクトイーストエキス、0.3%マルツエキス、0.2%KH2PO4,0.2%K2HPO4,1%グルコース)をΦ24mm×165mm試験管に10mlずつ分注し、各試験管にΔRrhJ1I−1株および対照とするJ1株のコロニーをそれぞれ植菌した。30℃,350rpmで1日培養した後、得られた培養液各3mlをMYKG−20%Sucrose培地(500ml三角フラスコ中の100ml)に植菌し、30℃、230rpmで20時間培養した。得られた培養液を全量50ml容のチューブに移し、遠心分離(5000rpm,10分間、4℃)により各菌体を回収した。回収した各菌体を10mlのElectroporation Buffer(2mM K2HPO4,10%スクロース、pH8.3;以降EBと省略することがある)で2回洗浄した後、菌濃度が同一となるように、それぞれEBに懸濁し、−80℃で凍結してコンピテントセルとした。
【0144】
(2)プラスミドpK4の調製
形質転換効率を評価するために使用するプラスミドpK4(図3)を下記の方法で調製した。大腸菌SCS110株(Stratagene社製)およびJM109株のコンピテントセルは実施例1(1)に記載の方法で調製した。
【0145】
次に、コンピテントセル各100μlに対してプラスミドpK4を各2μl加え、実施例1(1)に記載の方法で形質転換した。形質転換後の各培養液をLB Km寒天培地(カナマイシン50mg/l,寒天2%を含有するLB培地)に塗布し、37℃で一晩培養した。寒天培地上に出現した各形質転換体のコロニーを2ml LB Km液体培地に植菌し、37℃,180rpmにて一晩振盪培養した。培養後の各培養液全量からQIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN社製)を用いてプラスミドを回収し、それぞれを形質転換効率評価用プラスミドとした。
【0146】
(3)ΔRrhJ1I−1株への形質転換
実施例4(1)にて調製したコンピテントセル10μlに対してプラスミドpK4を2μl加え、氷上で20分間放置した。続いて、当該コンピテントセルの全量をギャップ1mmのエレクトロポレーション用キュベットに移し、印加条件1.5kV,400Ω,25μFにてエレクトロポレーションした。その後、氷上で10分間放置し、続いて37℃で10分間放置した。キュベットにMYK液体培地0.5mlを加えてよく混和し、懸濁液を全量Φ10×105mmワッセルマン試験管に移して30℃,180rpmで一晩振盪し、復帰培養を行った。復帰培養後の培養液全量をMYK寒天培地(10mg/lカナマイシン含有)に塗布し、30℃で3日間培養した。寒天培地上に出現したコロニー数を数えて算出した形質転換効率を表1に示す。
【0147】
形質転換効率は以下の式で算出した。
形質転換効率=出現コロニー数÷[添加DNA(プラスミド)量[μg]]
【0148】
【表1】

【0149】
表1に示されるように、ヌクレアーゼを欠失させたΔRrhJ1I−1株は野生型(J1)に比較して、有意に高い形質転換効率を示した。
【0150】
[実施例5]
接合伝達によるRrhJ1II遺伝子の欠失
[実施例1](4)で調製したRrhJ1II欠失用プラスミドpK19ΔRrhJ1IIを使用し、[実施例3](1)〜(4)と同様の手順で接合伝達・RrhJ1II遺伝子欠失を行った。
最終的に14個のコロニーからRrhJ1II遺伝子欠失株が4個得られた。得られたRrhJ1II遺伝子欠失株をΔRrhJ1II−1〜4と命名した。
【0151】
[実施例6]
接合伝達による、ΔRrhJ1I株からのRrhJ1II遺伝子の欠失
[実施例1](4)で調製したRrhJ1II欠失用プラスミドpK19ΔRrhJ1IIと、レシピエントとしてΔRrhJ1I−1株を使用し、[実施例3](1)〜(4)と同様の手順で接合伝達・RrhJ1II遺伝子欠失を行った。
最終的に14個のコロニーからRrhJ1II遺伝子欠失株が3個得られた。得られたRrhJ1II遺伝子欠失株をΔRrhJ1IΔRrhJ1II−1〜3と命名した。
【0152】
[実施例7]
形質転換効率の評価
[実施例5][実施例6]で作製したΔRrhJ1II−1株,ΔRrhJ1IΔRrhJ1II−1株を使用し、[実施例4](1)〜(3)と同様の手順でこれら2株の形質転換効率を評価した。[実施例4](3)に記載の式に従って算出した各株の形質転換効率を表2に示す。
【0153】
【表2】

【0154】
表2に示されるように、ヌクレアーゼを欠失させたΔRrhJ1II−1,ΔRrhJ1IΔRrhJ1II−1の両株は野生型に比較して高い形質転換効率を示した。
【0155】
[参考例1]
J1菌染色体DNAの調製
ロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)J−1株を100mlのMYKG培地中、30℃にて72時間振盪培養した。
【0156】
培養後、集菌し、集菌された菌体をSaline−EDTA溶液(0.1M EDTA,0.15M NaCl(pH8.0))4mlに懸濁した。懸濁液にリゾチーム40mgを加えて37℃で1〜2時間振盪した後、−20℃で凍結した。
【0157】
次に、10mlのTris−SDS液(1%SDS,0.1M NaCl,0.1M Tris−HCl(pH9.0))を穏やかに振盪しながら加え、さらにプロテイナーゼK(メルク社)(10mg/ml)を10μl加えて37℃で1時間振盪した。
【0158】
次に、等量のTE(10mM Tris−HCl,1mM EDTA(pH8.0))飽和フェノールを加え、攪拌後、遠心した。上層を採取し、2倍量のエタノールを加えた後、ガラス棒でDNAを巻き取り、90%,80%,70%のエタノールで順次フェノールを取り除いた。
【0159】
次に、DNAを3mlのTE緩衝液に溶解させ、リボヌクレアーゼA溶液(100℃,15分間の加熱処理済)を10μg/mlになるように加え、37℃で30分間振盪した。さらに、プロテイナーゼKを加え37℃で30分間振盪した後、等量のTE飽和フェノールを加えて遠心し、上層と下層に分離させた。
【0160】
上層についてこの操作を2回繰り返した後、同量のクロロホルム(4%イソアミルアルコール含有)を加え、同様の抽出操作を繰り返した。その後、上層に2倍量のエタノールを加え、ガラス棒でDNAを巻き取り回収し、染色体DNA標品を得た。
【0161】
[参考例2]
RrhJ1IIヌクレアーゼ遺伝子のPCR
RrhJ1IIヌクレアーゼ遺伝子をPCRで増幅するためのプライマーを以下の方法で設計した。
【0162】
ロドコッカス属細菌の産生するヌクレアーゼのアミノ酸ホモロジー解析から、特に保存されている2つの領域を選んで配列番号15および配列番号16のデジェネレイトプライマーを設計し、参考例1で調製したJ1菌ゲノムDNAを鋳型としてデジェネレイトPCRを以下の条件で実施した。その結果、約350bのバンドの増幅が確認された。
【0163】
反応液組成
鋳型DNA(J1菌染色体DNA,参考例1) 1μl
10×Ex Buffer(タカラバイオ社) 10μl
150μMプライマーDG−01(配列番号15) 1μl
150μMプライマーDG−02(配列番号16) 1μl
2.5mM dNTP 8μl
DMSO 10μl
滅菌水 18μl
ExTaq DNAポリメラーゼ(タカラバイオ社) 1μl
総量 50μl
【0164】
温度サイクル:
94℃:30秒、65℃:30秒および72℃:1分の反応を30サイクル
【0165】
プライマー
DG−01:5’−GA(T/C)CCIGCIACITCIGCICGIATG−3’(配列番号15)
DG−02:5’−CCAIACICGIACIACIGTCCA−3’(配列番号16)
【0166】
次に、増幅された配列のダイレクトシークエンシングをPCRで使用したプライマーを用いて実施した。その結果、配列番号17に示す配列が得られ、ホモロジー検索の結果、前述のエンドヌクレアーゼとの相同性が認められた。
【0167】
[参考例3]
RrhJ1IIヌクレアーゼ遺伝子のクローニング
(1)ゲノミックサザンハイブリダイゼーション
ApaLI,BamHI,ClaI,Eco52I,EcoT14I,KpnI,MluI,NcoI,NotI,PvuI,SacI,XbaI,XhoIそれぞれで消化したJ1菌ゲノムDNAに対し、後述の方法で調製したRrhJ1IIのプローブを用いてサザンハイブリダイゼーションを行ったところ、Eco52Iで消化した断片から、約1.2kbの単一シグナルが得られた。
【0168】
なお、RrhJ1IIのプローブは以下のようにして調製した。
参考例2で調製したPCR産物をGFX PCR DNA band and Gel Band Purification kit(GEヘルスケア バイオサイエンス社)を用いて精製した。精製したPCR産物に対してAlkPhos Direct Labeling kit(GEヘルスケア バイオサイエンス社)を用い、添付のマニュアルにしたがってラベリングを行い、RrhJ1IIのプローブとした。
【0169】
(2)コロニーハイブリダイゼーション
J1菌ゲノムDNAを制限酵素Eco52Iで分解して0.7%アガロースゲル電気泳動で分離し、ゲルからGFX PCR DNA band and Gel Band Purification kit(GEヘルスケア バイオサイエンス社)を使用して約1.2kbの断片を回収した。得られた断片は、pBluescriptII SK(+)ベクター(Stratagene社製)にDNA ligation kit<Mighty mix>(タカラバイオ社製)を用いて連結した。反応条件は以下の通りである。
【0170】
反応液組成:
ligation mighty mix(タカラバイオ社製) 5μl
J1菌ゲノムDNA/Eco52I切断断片 4μl
pBluescriptII SK(+)/Eco52I切断断片 1μl
総量 10μl
【0171】
反応:
16℃,1時間
【0172】
上記ライゲーション産物の全量を、後述の方法で調製した大腸菌JM109株コンピテントセル200μlに加え、0℃で30分放置した。続いて、前述コンピテントセルに42℃で45秒間ヒートショックを与え、0℃で2分間冷却した。その後、SOC培地(20mMグルコース、2%バクトトリプトン、0.5%バクトイーストエキス、10mM NaCl,2.5mM KCl,1mM MgSO4,1mM MgCl2)を1ml添加し、37℃にて1時間振盪培養した。培養後の培養液を200μlずつ、LB AIXプレート(100μg/lアンピシリン、100μM IPTG,50μg/l X−galを含むLB寒天培地)に塗布し、37℃で一晩放置した。プレート上に生育した白色の組換コロニーを新しいLB AIXプレートに、プレート1枚に付き94個、プレート10枚分単離した。各プレートにはインサートを含まないpBluescriptII SK(+)で形質転換したJM109株を2コロニー/プレート植菌した。コロニー単離したプレートを37℃で一晩放置した後、Hybond−N+(GEヘルスケア バイオサイエンス社)膜にコロニーを写し取り、参考例3(1)で調製したRrhJ1IIのプローブを用いてコロニーハイブリダイゼーションを行った。
【0173】
検出されたコロニーを培養して得られた培養液を集菌後、QIAprep miniprep kit(QIAGEN社製)を用いて組換えプラスミドを回収した。キャピラリーDNAシーケンサーCEQ2000(ベックマン・コールター社製)を用いて、添付のマニュアルに従って、プラスミド中にクローニングされているゲノムDNA断片の塩基配列を解析した。その結果、配列番号18に示される塩基配列が得られた。配列番号18に示される塩基配列中に、配列番号4に示す450bpのオープンリーディングフレーム(ORF1)を見出した。このORF1のコードするアミノ酸配列は、アライメントしたロドコッカス属細菌由来エンドヌクレアーゼに対して87%〜89%の相同性を持っていることから、ORF1はエンドヌクレアーゼをコードしていることが推定されたため、ORF1のコードするエンドヌクレアーゼをRrhJ1IIヌクレアーゼと命名した。また、本参考例3(2)で得られたORF1を含むプラスミドをpBRrhJ1IIと命名した。
【0174】
なお、大腸菌JM109株のコンピテントセルは以下の方法で調製した。
大腸菌JM109株をLB培地1mlに接種し、37℃で5時間好気的に前培養した。
次に、前培養液0.4mlをSOB培地40ml(2%バクトトリプトン、0.5%バクトイーストエキス、10mM NaCl,2.5mM KCl,1mM MgSO4,1mM MgCl2)に加え、18℃で20時間培養した。得られた培養物を遠心分離(3,700×g,10分間、4℃)により集菌した後、冷TF溶液(20mM PIPES−KOH(pH6.0),200mM KCl,10mM CaCl2,40mM MnCl2)を13ml加え、0℃で10分間放置し、再度遠心分離(3,700×g,10分間、4℃)して上清を除いた。得られた大腸菌菌体を冷TF溶液3.2mlに懸濁し、0.22mlのジメチルスルホキシドを加え、0℃で10分間放置した後、液体窒素を用いて凍結したものをコンピテントセルとした。
【0175】
[参考例4]
大腸菌組換体によるRrhJ1IIヌクレアーゼの生産
(1)RrhJ1IIヌクレアーゼ発現プラスミドの構築
RrhJ1IIヌクレアーゼを得るために、実施例1で得られたJ1菌染色体DNAを鋳型として使用し、以下に示す反応液組成およびプライマーを用いてPCRを行った。この際、RrhJ1IIヌクレアーゼをHis−tag融合タンパクとして発現させるため、RrhJ1IIヌクレアーゼ遺伝子上流にSD配列とHis−tag配列を付加した。
【0176】
反応液組成
鋳型DNA(J1菌染色体DNA) 1μl
2×PCR Buffer KOD FX(東洋紡) 25μl
10μMプライマーN(配列番号19) 1.5μl
10μMプライマーC(配列番号20) 1.5μl
2mM dNTP 10μl
KOD FX DNAポリメラーゼ(東洋紡) 1μl
総量 50μl
【0177】
温度サイクル:94℃:120秒、98℃:10秒および68℃:1分の反応を30サイクル
【0178】
プライマー
N:5'−AGTGAATTCCTTTAAGAAGGAGATATACCATGCATCATCATCATCATCACATGGCGTCGTCGGAT−3'(配列番号19)
C:5'−GCCAAGCTTTCACCCCCGCGCCGGTTT−3'(配列番号20)
【0179】
反応終了後、反応液5μlを1%アガロースゲルにおける電気泳動に供し、約0.5kbのPCR産物の検出を行った。PCR産物を確認した後、反応液からPCR産物をDNA/RNA extaction Kit(VIOGENE社)で精製した。得られたPCR産物を、制限酵素EcoRIとHindIIIで切断した。制限酵素処理を行ったPCR産物を1%アガロースゲルにおける電気泳動に供し、約0.5kb付近のバンドを回収した。回収したPCR産物をベクターpUC18のEcoRI−HindIII部位に連結し、プラスミドを作製した。得られたプラスミドをpRR01と名づけた。
【0180】
このプラスミドで大腸菌JM109を形質転換し、100μg/mlアンピシリン、1mM IPTG,50μg/ml X−galを含むLB寒天培地上でコロニーを形成させた。得られた白色のコロニーを100μg/mlアンピシリンを含むLB液体培地に植菌し、37℃で一晩培養した後Mini Plus Plasmid DNA Extraction kit(VIOGENE社)を使用してプラスミドを回収し、EcoRI−HindIIIによる切断とシークエンス解析を行って目的のDNA断片が挿入されていることを確認した。
【0181】
(2)精製酵素の調製
(1)で作製したRrhJ1IIヌクレアーゼ発現ベクターを含む大腸菌組換体(JM109/pRR01)を、100μg/mlアンピシリンを含むLB液体培地10mlで37℃,5時間培養した後、1mlを100μg/mlアンピシリン、1mM IPTGを含むLB液体培地100ml×1本に植菌し、37℃,18時間培養した。培養液を遠心分離によって回収し、回収した菌体を破砕用緩衝液(組成 20mM Sodium Phosphate,0.5M NaCl,20mM イミダゾール、10% グリセロール、pH7.4)に懸濁した後4℃で10分間超音波による破砕を行った。破砕液を遠心分離し、得られた上清を無細胞抽出液とした。この無細胞抽出液をHis−tag精製カラム(His Trap HP:GE Healthcare)を用いて精製した。精製タンパク質はElution Buffer(0.5M NaCl,0.5M イミダゾール、20mM Sodium Phosphate,10%グリセロール、pH7.4)にて溶出し、2つのフラクションに分画してフラクション1,フラクション2とした。
【0182】
得られた精製サンプルをSDS−PAGEおよびHis−tag特異的抗体(GE Healthcare)を用いたウェスタンブロッティングに供し、目的タンパク質が精製されていることを確認した。SDS−PAGEの結果、フラクション1とフラクション2で約25kDa付近にバンドが出現し、His−tag特異的抗体を用いたウェスタンブロッティングにより、目的タンパク質であることを確認した。
【0183】
(3)酵素活性の測定
(2)で調製した精製酵素を用いて、RrhJ1IIヌクレアーゼ活性を調べた。活性は片方の鎖の5'末端にビオチン標識を持ち、配列内にT/Gミスマッチを1箇所持つ二本鎖オリゴDNAを種々用いてそのニッキング活性を測定した。
【0184】
反応液組成
1.5μM基質DNA 2μl
100mM Tris−HCl(pH7.5) 2μl
100mM MgCl2 2μl
1mg/ml BSA 2μl
総量 20μl
【0185】
反応温度:20℃,60分
【0186】
反応終了後、反応液と等量のフェノールでDNAを抽出し、ホルムアミド(終濃度1M)の存在下、100℃で2分間加熱後氷上にて急冷処理し、DNAを一本鎖に変性させた。変性後の一本鎖DNAサンプルを、8M尿素を含む20%ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し、Imaging high chemilumi kit(東洋紡)を使用して化学発光による検出を行って泳動パターンを比較した結果、いくつかのオリゴヌクレオチドにおいて約20merの1本鎖が生成したことから、得られた精製酵素はDNAを切断するエンドヌクレアーゼ活性を持つことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0187】
本発明により、ロドコッカス属細菌の形質転換方法が提供される。本発明に係る形質転換方法により得られたロドコッカス属細菌の形質転換体は、導入したDNAの効果により新たな性質を付与することが可能であるため、産業上有用な微生物触媒等の開発に利用できる。
【配列表フリーテキスト】
【0188】
配列番号5:プライマーSAC−01
配列番号6:プライマーSAC−02
配列番号7:プライマーJ05
配列番号8:プライマーJ06
配列番号9:プライマーJ07
配列番号10:プライマーJ08
配列番号11:プライマーJM56
配列番号12:プライマーJM57
配列番号13:プライマーJM58
配列番号14:プライマーJM59
配列番号15:プライマーDG−01
配列番号16:プライマーDG−02
配列番号19:プライマーN
配列番号20:プライマーC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヌクレアーゼ遺伝子を欠失または不活性化させたロドコッカス属細菌。
【請求項2】
ロドコッカス属細菌が、ロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)である、請求項1記載のロドコッカス属細菌。
【請求項3】
欠失または不活性化させるヌクレアーゼ遺伝子が制限酵素遺伝子である、請求項1または2記載のロドコッカス属細菌。
【請求項4】
欠失または不活性化させるヌクレアーゼ遺伝子が、配列番号1に示される塩基配列を有するRrhJ1I制限酵素もしくはそのオーソログ、および/または配列番号3に示される塩基配列を有するRrhJ1IIヌクレアーゼもしくはそのオーソログである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のロドコッカス属細菌。
【請求項5】
欠失または不活性化させるヌクレアーゼ遺伝子が、以下の(a)〜(c)に示される塩基配列を有するDNAからなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のロドコッカス属細菌。
(a)配列番号1または3記載の塩基配列を含むDNA
(b)配列番号1または3記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつヌクレアーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号1記載の塩基配列と相同性が80%以上の塩基配列からなり、かつヌクレアーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
【請求項6】
ロドコッカス属細菌が、ロドコッカス ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)J1株またはその変異株である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のロドコッカス属細菌。
【請求項7】
請求項1〜6記載のロドコッカス属細菌を形質転換して得られる形質転換体。
【請求項8】
ヌクレアーゼ遺伝子が欠失または不活性化されたロドコッカス属細菌を作製し、該ロドコッカス属細菌を形質転換することを特徴とする、ロドコッカス属細菌の形質転換体の製造方法。
【請求項9】
ヌクレアーゼ遺伝子を欠失または不活性化させることを特徴とする、ロドコッカス属細菌の形質転換効率を向上させる方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−5792(P2013−5792A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−62458(P2012−62458)
【出願日】平成24年3月19日(2012.3.19)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】