説明

ネオテームを含有する経口製剤

【課題】薬物の不快な味が改善され、服用感が優れた経口製剤の提供。
【解決手段】
不快な味を有する薬物およびネオテームを下記含有量で含有する経口製剤:
1.製剤重量20mg〜200mgの製剤において、ネオテームを製剤重量に対して0.1重量%以上含有し、かつネオテームの含有量が製剤重量に対して5.0mg未満である、または2.製剤重量200mg〜5000mgの製剤において、ネオテームを製剤重量に対して0.1重量%〜2.5重量%未満含有する。該経口製剤は、ソーマチン、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、およびステビアからなる群から選択される1種または2種以上の高甘味度甘味剤を含有してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物の不快な味を軽減するためにネオテームを含有する経口製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の飲み易さの向上、患者特性に合わせた用量調整等のために、一般に、液剤(懸濁液剤を含む)、シロップ剤、散剤、細粒、顆粒剤、ドライシロップといった剤形が用いられている。さらに、最近では、高齢者や小児に適した剤形として、口腔内で速やかに崩壊する製剤に関する技術も多く開示されている。
【0003】
しかしながら、これらの剤形は、服用の際に口腔内で味を発現しやすいために、薬物が不快な味を有すると服用しにくく、患者の服薬コンプライアンスの低下に結びつきやすい。このために、薬物の不快な味の遮断または軽減に関する方法として、これまでに多くの方法が提案されている。例えば、固形製剤の場合には、物理的マスキング法としてマイクロカプセル化、コーティング、スプレードライ法等が用いられている。しかしながら、これらの方法では高度な製剤技術が必要となり、製造場所の確保、製造工程の複雑化によるコストの増大等が問題となってくる。一方、それらの問題がない官能的マスキング法としては甘味剤の添加があげられ、液剤、シロップ剤、散剤、細粒、顆粒剤、ドライシロップ、口腔内崩壊錠等に幅広く用いられている。一般的な甘味剤としてはショ糖があげられるが、苦味の強い薬物には添加量の増大による製剤重量の増大、ショ糖の吸湿性に由来する安定性の悪化などが問題となってくる。そこで、近年、ショ糖の100倍〜5000倍の甘味強度のある高甘味度甘味剤が使用されているが、薬物によってはその効果は十分ではないのが現状である。
【0004】
ネオテーム、すなわち、N−[N−(3,3−ジメチルブチル)−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン 1−メチルエステルは、高甘味度甘味剤であり、甘味強度はショ糖と比較して、重量比で10,000倍である(特許文献1)。
【0005】
ネオテームはその甘味強度から、タフィーガムなどの口腔用組成物として広く用いられている(特許文献2)。
【0006】
一方で、医薬品として用いられている例は少なく、不快な味を有する薬物との併用を記載した開示は特許文献3及び4などが挙げられるのみである。前者では苦味の弱い薬物あるいはコーティングして苦味を抑えた薬物にネオテームを併用することで味が改善できること、後者の開示ではアミノ酸、ミネラルなどの食品に使用されるような苦味の弱い薬物にネオテームを併用することで味が改善できることが開示されている。これらの開示では苦味が弱い薬物に対してネオテームを併用しているため、ネオテームの添加量としては極微量であり、製剤全量に対して0.2%以下に限定されている。このようにネオテームの添加量が製剤全量に対して微量であると、製剤重量が少ない場合や薬物の苦味が強い場合は必ずしも十分な効果が得られない可能性がある。
【0007】
また、ネオテームとその他の高甘味度甘味剤を併用することで呈味が改善すること、あるいは甘味度が増強することは知られているが(特許文献5)、開示されている併用による効果は甘味質の改善、甘味度の増強であり、第3成分である薬物の不快な味を軽減できるかについては全く記載されていない。つまり、経口製剤に関しては、ネオテームにその他の高甘味度甘味剤を併用することでの苦味軽減効果については全く開示がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
特許文献1:特表平8−503206
特許文献2:特表2008−515408号
特許文献3:特開平11−279081号
特許文献4:国際公開公報WO01/028590号 パンフレット
特許文献5:特許第3651162号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、薬物の不快な味が軽減された良好な服用性を有する経口製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、薬物の不快な味に対するマスキング効果は単純に甘味度に依存するものではなく、甘味度の増強効果から苦味の軽減効果の予測が困難であることを考慮し、上記課題解決につき鋭意検討を行った。その結果、ネオテームが不快な味、特に苦味の強い薬物の苦味を効果的に軽減することを見出した。加えて、ネオテームを一定以上添加すると、ネオテームの添加過剰に伴い、予想に反して苦味が発現することを見出し、不快な味を有する薬物に対してはネオテームの適切な添加量が存在することを見出した。さらに、ネオテームとその他の高甘味度甘味剤を併用させることにより、薬物の苦味が軽減されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の通りである。
項1:不快な味を有する薬物およびネオテームを含有する経口製剤であって、ネオテームを下記含有量で含有する経口製剤:
1.製剤重量20mg〜200mgの製剤において、ネオテームを製剤重量に対して0.1重量%以上含有し、かつネオテームの含有量が製剤重量に対して5.0mg未満である、または
2.製剤重量200mg〜5000mgの製剤において、ネオテームを製剤重量に対して0.1重量%〜2.5重量%未満含有する。
【0012】
項2:不快な味を有する薬物およびネオテームを下記含有量で含有する項1に記載の経口製剤:
1.製剤重量20mg〜200mgの製剤において、ネオテームを製剤重量に対して0.2重量%超えて含有し、かつネオテームの含有量が製剤重量に対して5.0mg未満である、または
2.製剤重量200mg〜5000mgの製剤において、ネオテームを製剤重量に対して0.2重量%を超えて含有し、2.5重量%未満含有する。
【0013】
項3:不快な味を有する薬物およびネオテームを下記含有量で含有する項1または項2に記載の経口製剤:
1.製剤重量20mg〜200mgの製剤において、ネオテームを製剤重量に対して少なくとも0.3重量%以上含有し、かつネオテームの含有量が製総重量に対して4.0mg以下である、または
2.製剤重量200mg〜5000mgの製剤において、ネオテームを製剤重量に対して0.3重量%〜2.0重量%含有する。
【0014】
項4:不快な味を有する薬物およびネオテームを下記含有量で含有する項1〜項3のいずれか一項に記載の経口製剤:
1.製剤重量20mg〜200mgの製剤において、ネオテームを製剤重量に対して少なくとも0.5重量%以上含有し、かつネオテームの含有量が製剤重量に対して2.0mg以下である、または
2.製剤重量200mg〜5000mgの製剤において、ネオテームを製剤重量に対して0.5重量%〜1.0重量%含有する。
【0015】
項5:製剤重量が、50mg〜2500mgである、項1〜4のいずれか一項に記載の経口製剤。
【0016】
項6:製剤重量が、50mg〜500mgである、項1〜5のいずれか一項に記載の経口製剤。
【0017】
項7:さらに、ソーマチン、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、およびステビアからなる群から選択される1種または2種以上の高甘味度甘味剤を含有する、項1〜項6のいずれか一項に記載の経口製剤。
【0018】
項8:固形状又は半固形状製剤である、項1〜項7のいずれか一項に記載の経口製剤。
【0019】
項9:ネオテームを結合液に溶解させて均一に分散させた、項1〜項8のいずれか一項に記載の経口製剤。
【0020】
項10:経口製剤が、錠剤、散剤、顆粒剤、または細粒剤である、項1〜項9のいずれか一項に記載の経口製剤。
【発明の効果】
【0021】
本発明の経口製剤は、薬物の不快な味が改善され、服用感が優れた経口製剤を提供できる。これによって、成人はもとより、高齢者、小児等あらゆる年齢層の患者にとって、不快な味を有する薬物を容易に服用することができる。
本発明は、液剤、ゼリー剤、グミ剤、シロップ剤、ドライシロップ、散剤、顆粒剤、細粒剤、チュアブル製剤、口腔内崩壊型散剤、口腔内崩壊型顆粒、口腔内崩壊型細粒、口腔内崩壊型多層錠、口腔内崩壊型有核錠、口腔内崩壊錠等の口腔内で味を発現しやすい剤形とした場合であっても、不快な味を改善することができる。従って、嚥下困難な患者、高齢者、小児等にも服用し易く、用量調整が可能であって、かつ、不快な味が改善された経口製剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明について、以下に詳細に説明する。
「不快な味を有する薬物」は、一般に経口的に投与される医薬成分の中で不快な味を有するものを意味する。不快な味とは、苦味、塩味、渋味、酸味、収斂味等を意味するが、薬物の服用性の悪化を招来する呈味であれば特にこれらに限定されることはない。
【0023】
苦味を呈する薬物としては、例えば、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン等の解熱鎮痛剤;マレイン酸クロルフェニラミン、d-マレイン酸クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミンまたはその塩類、塩酸プロメタジン、塩酸イソチペンジル、フマル酸クレマスチン、塩酸イプロヘプチン、塩酸シプロヘプタジン、ジフェニルピラリンまたはその塩類、マレイン酸ジメチンデン、塩酸トリプロリジン、塩酸ホモクロルシクリジン、塩酸アゼラスチン、イブジラスト、クロモグリク酸ナトリウムまたはその塩類、オキサトミド、アンレキサノクス、マレイン酸カルビノキサミン、メキタジン、トラニラスト、レピリナスト、フマル酸エメダスチン、塩酸オザグレル、タザノラスト、ペミロラストまたはその塩類、トシル酸スプラタスト等の抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤;塩酸フェニルプロパノールアミン等の交感神経興奮剤;ベラドンナ(総)アルカロイド、ヨウ化イソプロパミド等の副交感神経遮断剤;カフェイン、無水カフェイン等の中枢興奮薬;ファモチジン、塩酸ラニチジン、ニザチジン、塩酸ロキサチジンアセタート等のH2ブロッカー;炭酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト等の制酸剤;塩化リゾチーム、セラペプターゼ等の消炎酵素剤;トラネキサム酸等の抗炎症剤;塩酸メチルエフェドリン(d体,dl体を含む)、塩酸エフェドリン等の気管支拡張剤;コデイン、リン酸コデイン、リン酸ジヒドロコデイン、臭化水素酸デキストロメトルファン、ノスカピン、ジメモルファン、グアヤコールスルホン酸、グアイフェネシン等の鎮咳剤;グアヤコールスルホン酸カリウム、塩酸ブロムヘキシン等の去痰剤;ウルソデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸等の利胆薬;塩酸ロペラミド等の止しゃ剤;ブロムワレリル尿素等の催眠鎮静剤;ジアゼパム等の抗不安剤;ジメンヒドリナート等の乗り物酔い予防・治療薬;塩酸チアミン、硝酸チアミン、硝酸ビスチアミン、チアミンジスルフィド、チアミンジセチル硫酸エステル塩、塩酸ジセチアミン、フルスルチアミン、塩酸フルスルチアミン、オクトチアミン、シコチアミン、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、プロスルチアミン、ベンフォチアミン、ジベンゾイルチアミン、チアミンピロリン酸等のビタミンB1類;リン酸リボフラビンナトリウム等のビタミンB2類;塩酸ピリドキシン等のビタミンB6類;パントテン酸カルシウム;フィトナジオン、メナテトレノン等のビタミンK類;オウゴン、オウバクなどの生薬末及びそのエキスなどが挙げられる。
【0024】
不快な味を有する薬物は、製剤重量の全量に対して0.001重量%〜90重量%、好ましくは0.1重量%〜80重量%、さらに好ましくは1重量%〜50重量%含有する。
【0025】
「ネオテーム」は、N−[N−(3,3−ジメチルブチル)−L−α−アスパルチル]−L−フェニルアラニン 1−メチルエステルを意味する。ネオテームは、無水物であっても、水和物であってもいずれでもよい。例えば、特許第3643921号公報に記載されているように1水和物(A型結晶)または水分含量3%未満のC型結晶のいずれでもよい。
【0026】
尚、ネオテームのC型結晶とは、CuKα線を用いる粉末X線回折法で測定した場合における回折角度において、7.1°、19.8°、17.3°及び17.7°の回折角度(2θ)に回折X線の特有ピークを示す結晶を意味する。
【0027】
「製剤重量」とは、例えば、錠剤の形態を有する場合には1錠当たりの重量を意味し、散剤、顆粒剤、または細粒剤の形態を有する場合には、1包当たりの重量を意味する。また、後述する半固形状製剤および液状製剤の場合には、1回服用当たりの重量を意味する。本発明で用いられるネオテームの製剤重量における含有量は、製剤重量、苦味を有する薬物の含有量やその苦味の強さの程度、剤型によって適宜選択することができる。
【0028】
製剤重量20mg〜200mgの製剤においては、ネオテームを製剤重量に対して0.1重量%以上含有し、かつネオテームの含有量が製剤重量に対して5.0mg未満である。好ましくは、0.2重量%超えて含有し、かつ製剤重量に対して5.0mg未満である。更に好ましくは、製剤重量に対して少なくとも0.3重量%以上含有し、かつ製剤重量に対して4.0mg以下である。より好ましくは、製剤重量に対して少なくとも0.5重量%以上含有し、かつネオテームの含有量が製剤重量に対して2.0mg以下である。
【0029】
製剤重量200mg〜5000mgの製剤においては、ネオテームを製剤重量に対して0.1重量%〜2.5重量%未満含有する。好ましくは、ネオテームを製剤重量に対して0.2重量%超えて含有し、2.5重量%未満を含有する。更に好ましくは、製剤重量に対して0.3重量%〜2.0重量%含有する。より好ましくは、製剤重量に対して0.5重量%〜1.0重量%含有する。いずれの製剤重量においても、ネオテームの添加時期・方法に特に制限はない。
【0030】
製剤重量としては、20mg〜5000mgであり、好ましくは、50mg〜2500mgであり、更に好ましくは、50mg〜500mgである。
【0031】
本発明で用いられる高甘味度甘味剤であるネオテームは、甘味強度はショ糖と比較して、重量比で10,000倍であるため、添加量が非常に少量になり、均一に分散されない可能性がある。そのため、ネオテームが分散剤(エリスリトース、ラクチトール、トレハロース、デキストリン、還元パラチノースなど)で希釈されているものを用いても良く、またネオテームを結合液に溶解させ、均一に分散させて用いても良い。これらの添加時期・方法に特に制限はない。
【0032】
本発明における経口製剤は、その他の高甘味度甘味料を含有していてもよい。その他の高甘味度甘味料としては、具体的にはスクラロース、アスパルテーム、ステビア、サッカリン、グリチルリチン二カリウム、ソーマチン、アセスルファムカリウム等が挙げられる。これらの甘味料は、複数組み合わせて含有していてもよい。
【0033】
これらの高甘味度甘味剤の配合量は、苦味を有する薬物の配合量やその苦味の強さの程度、剤型、あわせて配合されてもよい香料などの配合量によって適宜選択することができる。例えば、ソーマチンを用いる場合には、ネオテーム1重量%に対してソーマチンを0.01重量%〜10重量%、好ましくは0.02重量%〜1重量%、さらに好ましくは0.05重量%〜0.25重量%用いることができる。
【0034】
スクラロースを用いる場合には、ネオテーム1重量%に対してスクラロースを0.1重量%〜100重量%、好ましくは0.2重量%〜20重量%、さらに好ましくは0.5重量%〜10重量%用いることができる。
【0035】
アスパルテームを用いる場合には、ネオテーム1重量%に対してアスパルテームを0.001重量%〜10重量%、好ましくは0.01重量%〜5重量%、さらに好ましくは0.1重量%〜2重量%用いることができる。
【0036】
アセスルファムカリウムを用いる場合には、ネオテーム1重量%に対してアセスルファムカリウムを0.001重量%〜10重量%、好ましくは0.01重量%〜1重量%、さらに好ましくは0.1重量%〜0.25重量%用いることができる。
【0037】
ステビアを用いる場合には、ネオテーム1重量%に対してステビアを0.01重量%〜100重量%、好ましくは0.1重量%〜20重量%、さらに好ましくは1〜5重量%の範囲とすることができる。また、これらの高甘味度甘味剤の添加時期・方法に特に制限はない。
【0038】
本発明の経口製剤においては、上記に記載した以外にも、製剤分野において通常使用される無毒性かつ不活性な添加剤を添加することもできる。例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、矯味剤・矯臭剤、安定化剤、界面活性剤、流動化剤、帯電防止剤、コーティング剤、滑沢剤、着色剤、香料等がその例として挙げられる。これらの添加剤の配合量は、特に限定されるものではなく、剤形に応じて自体公知の量を適宜選択すればよい。
【0039】
賦形剤としては、例えば、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、マルチトール、トレハロース、ブドウ糖、白糖、乳糖水和物、還元パラチノース、リン酸水素カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、結晶セルロース等が挙げられる。
【0040】
崩壊剤としては、例えば、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、部分α化デンプン、バレイショデンプン、コメデンプンなどのでんぷん類、カルメロースナトリウム(カルボキシメチルセルロースナトリウム)、カルボキシメチルセルロースカルシウム(カルメロースカルシウム)、クロスポビドン等が挙げられる。
【0041】
結合剤としては、例えば、アラビアゴム、アラビアゴム末、部分アルファー化デンプン、ゼラチン、カンテン、デキストリン、プルラン、ポビドン、エチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、カルメロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース等が挙げられる。
【0042】
矯味剤・矯臭剤としては、例えば、アスパラギン酸ナトリウム、アラニン、アルギニン、グリシン、グルタミン、グルタミン酸アルギニン、グルタミン酸塩酸塩、グルタミン酸ナトリウムのアミノ酸及びその塩、アジピン酸、アスコルビン酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸の有機酸、カンゾウ、クエン酸トリエチル、タウリン、タンニン酸等が挙げられる。
【0043】
安定化剤としては、エデト酸ナトリウム、トコフェロール等が挙げられる。
【0044】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート、硬化油等が挙げられる。
【0045】
流動化剤としては、例えば、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、重質無水ケイ酸、酸化チタン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム等が挙げられる。
【0046】
帯電防止剤としては、例えば、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、タルク等が挙げられる。
【0047】
コーティング剤としては、例えば、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アラビアゴム末、エチルセルロース、オパドライ、カルナバロウ、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルエチルセルロース、カルメロースナトリウム、乾燥メタクリル酸コポリマー、ステアリルアルコール、セタノール、セラック、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、プルラン、ポビドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ポリビニルアルコールコポリマー、ジメチルアミノエチルメタアクリレート・メチルメタアクリレートコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、フマル酸・ステアリン酸・ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート・ヒドロキシプロピルメチルセルロース混合物、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、メタクリル酸コポリマー、2−メチル―5−ビニルピリジンメチルアクリレート・メタクリル酸コポリマー等が挙げられる。
【0048】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、タルク、硬化油、マクロゴール等が挙げられる。ステアリン酸金属塩としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0049】
着色剤としては、例えば、食用赤色3号、食用黄色5号、食用青色1号などの食用色素、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、褐色酸化鉄、黒酸化鉄、銅クロロフィル、銅クロロフィルナトリウム、リボフラビン、抹茶末等が挙げられる。
【0050】
香料としては、例えば、オレンジエッセンス、オレンジ油、カラメル、カンフル、ケイヒ油、スペアミント油、ストロベリーエッセンス、チョコレートエッセンス、チェリーフレーバー、トウヒ油、パインオイル、ハッカ油、バニラフレーバー、ビターエッセンス、フルーツフレーバー、ヨーグルトフレーバー、ペパーミントエッセンス、ミックスフレーバー、ミントフレーバー、メントール、レモンパウダー、レモン油、ローズ油等が挙げられる。
【0051】
本発明の経口製剤は、固形状製剤または半固形状製剤が挙げられる。固形状製剤としては、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、多層錠、有核錠、チュアブル製剤、口腔内崩壊型散剤、口腔内崩壊型顆粒、口腔内崩壊型細粒、口腔内崩壊型多層錠、口腔内崩壊型有核錠または口腔内崩壊錠等が挙げられる。半固形状製剤としては、例えば、ゼリー剤、グミ剤等が挙げられる。これらの他にも液状製剤、例えば、液剤、シロップ剤、ドライシロップ等も含まれる。前記液剤には懸濁液剤が包含される。
【0052】
本発明の好ましい経口製剤としては、服用時に水を必要としないことから時間、場所を選ばすに服用できる液剤、ゼリー剤、グミ剤、チュアブル製剤、口腔内崩壊型散剤、口腔内崩壊型顆粒、口腔内崩壊型細粒、口腔内崩壊型多層錠、口腔内崩壊型有核錠または口腔内崩壊錠が挙げられる。患者特性に合わせた用量調整が可能な見地からは、液剤、シロップ剤、ドライシロップ、散剤、顆粒剤、細粒剤、口腔内崩壊型散剤、口腔内崩壊型顆粒、口腔内崩壊型細粒等が好ましい。
【0053】
より好ましくは、錠剤、散剤、顆粒剤、または細粒剤である。
【0054】
また、嚥下困難な患者、高齢者、小児にも服用がし易い見地からは、液剤、シロップ剤、ゼリー剤、グミ剤、ドライシロップ、散剤、顆粒剤、細粒剤、チュアブル製剤、口腔内崩壊型散剤、口腔内崩壊型顆粒、口腔内崩壊型細粒、口腔内崩壊型多層錠、口腔内崩壊型有核錠または口腔内崩壊錠等が好ましい。
【0055】
本発明における製剤は、含有する不快な味を有する薬物の種類によっては、健康食品として使用することも可能であり、該製剤をそれに配合することもできる。
【0056】
本発明の経口製剤の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法が挙げられるが、固形製剤の場合は、例えば、造粒方法として、押し出し造粒法、破砕造粒法、乾式圧密造粒法、流動層造粒法、転動造粒法、転動流動層造粒法、高速撹拌造粒法、練合造粒法、湿式顆粒圧縮法、直接圧縮法等が挙げられる。
【0057】
本発明の経口製剤が錠剤の場合、たとえば以下の方法により製造することができる。不快な味を有する薬物および任意の添加剤(例えば、水溶性賦形剤(例えば、D−マンニトール)、崩壊剤(例えば、クロスポビドン)、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン)、着色剤(例えば、黄色三二酸化鉄)等)を混合し、必要に応じて界面活性剤(例えば、ポリソルベート80)を含有させた結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)の水溶液で造粒し、乾燥後、ネオテームおよび任意の添加剤(例えば、高甘味度甘味剤(例えば、アスパルテーム、スクラロース)、香料(例えば、コーヒー香料、チェリー香料、グレープフルーツ香料)、有機酸(例えば、クエン酸、リンゴ酸)、滑沢剤(例えば、フマル酸ステアリルナトリウム)、流動化剤(例えば、軽質無水ケイ酸)等)を混合して、圧縮成形することで錠剤を得ることができる。
【0058】
錠剤の成形方法については、特に限定されないが、公知の打錠機、例えば、ロータリー打錠機、単発打錠機、プレス機等を用いた圧縮成形法が用いられる。
【実施例】
【0059】
以下に、実施例、比較例および試験例を挙げて、更に具体的に説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0060】
以下、試験例1及び2において、ネオテームの含有量の上限値及び下限値を算出するためにネオテーム自身の苦味の検討を行った。
試験例1:<ネオテーム自身の苦味の検討1>
表1に従いネオテーム(大日本住友製薬株式会社)を秤量し、評価例1に従って評価した。尚、表1における単位はmgである。
【0061】
【表1】

[評価例1]
各製剤(試料)を30秒間口に含んで吐き出し、口腔内保持中、吐き出し直後で感じた苦味を以下の基準でスコア化した。
0:苦味を感じない
1:苦味をほとんど感じない
2:苦味を感じる
3:強い苦味を感じる
スコアが0〜2である場合は苦味が服用に問題ない程度である。ここにおいて、0〜1は服用時に苦味を感じず、2である場合は苦味を少し感じる程度である。一方、3である場合は苦味のため服用しづらい程度である。結果を表2に示す。
【0062】
【表2】

【0063】
表2の結果より、ネオテームは5.0mg以上服用すると苦味を強く感じることが明らかとなった。
【0064】
試験例2:<ネオテーム自身の苦味の検討2>
表3に従いネオテーム(大日本住友製薬株式会社)とD-マンニトール(パーリトール50C)(ロケット社)を秤量し、乳鉢にて混合した。その後、評価例1に従って評価した。結果を表4に示す。表3における単位はmgである。
【0065】
【表3】

【0066】
【表4】

【0067】
比較例3、4の結果より、製剤全量が200mg以下の場合は服用するネオテームの絶対量を5.0mgとすると強い苦味を感じ、実施例3〜5の結果より、製剤全量に対するネオテームの割合を低くするとネオテームの苦味が減弱することが明らかとなった。一方で、実施例5〜7、比較例5の結果より、製剤全量を2500mgとすると、服用するネオテームの絶対量が5.0mgでは苦味をわずかに感じる程度であるが(実施例5)、製剤全量に対するネオテームの割合を2.5%とすると苦味を強く感じることが明らかとなった(比較例5)。
【0068】
以上、試験例1及び試験例2の結果から製剤重量におけるネオテームの含有量が、5mg以上で苦味を感じ、服用しづらくなった。その一方で、苦味を感じるネオテームの含有量の上限値は、製剤重量と関係し、製剤重量が200mgを超える場合には、全重量の2.5重量%以上で苦味を感じた。
【0069】
試験例3:<ネオテームによる苦味マスキングの検討>
苦味を有する薬物としてアセトアミノフェンを用いた。表5に従い、アセトアミノフェン(山本化学工業株式会社)、ネオテーム(大日本住友製薬株式会社)、D-マンニトール(パーリトール50C)(ロケット社)、コーンスターチ(日本食品化工株式会社)を秤量し、乳鉢にて混合した。その後、評価例2に従って評価した。結果を表6に示す。表5における単位はmgである。
[評価例2]
各製剤(試料)を30秒間口に含んで吐き出し、口腔内保持中、吐き出し直後で感じた苦味を以下の基準でスコア化した。
0:苦味を感じない
1:苦味をほとんど感じない。
2:苦味を感じるものの、強い苦味は改善され、マスキング効果が確認される。
3:強い苦味を感じる。
スコアが0〜2である場合は、苦味が改善され、ネオテームの苦味のマスキング効果が確認される程度である。一方、3である場合は苦味が強く、マスキング効果が確認できない程度である。
【0070】
【表5】

【0071】

【表6】

【0072】
この結果より、ネオテームを製剤全量に対して0.1重量%添加しただけではアセトアミノフェンの苦味を十分にマスクできておらず(実施例9)、0.5重量%添加することで苦味をほぼ完全にマスクできることがわかった(実施例8)。
【0073】
試験例4:<他の高甘味度甘味剤との併用効果>
表7に従い、アセトアミノフェン、ネオテーム、D-マンニトール、コーンスターチ、各高甘味度甘味剤を秤量し、乳鉢にて混合した。その後、評価例2に従って評価した。結果を表8に示す。表7における単位はmgである。
1.アセトアミノフェン(山本化学工業株式会社)
2.D-マンニトール(パーリトール50C)(ロケット社)
3.コーンスターチ(XX16)W(日本食品化工株式会社)
4.ネオテーム(大日本住友製薬株式会社)
5.ソーマチン(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)
6.スクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社)
7.アスパルテーム(味の素株式会社)
8.アセスルファムK(ニュートリノヴァ社)
9.ステビア(日研化学株式会社)
【0074】
【表7】

【0075】
【表8】

【0076】
この結果より、ネオテームに高甘味度甘味剤を併用することでもアセトアミノフェンの苦味をほぼ完全にマスクできることがわかった。
【0077】
試験例5:<溶解させたネオテームを用いた検討>
表9に従い、アセトアミノフェン、D-マンニトール、コーンスターチを秤量し、乳鉢にて混合した。別途、ネオテームを精製水にて約2.0mg/mLとなるように溶解させた。その後、乳鉢に表9の処方量になるようネオテーム液を添加し、造粒した。造粒品を評価例2に従って評価した。結果を表10に示す。表9における単位はmgである。
1.アセトアミノフェン(山本化学工業株式会社)
2.D-マンニトール(パーリトール50C)(ロケット社)
3.コーンスターチ(XX16)W(日本食品化工株式会社)
4.ネオテーム(大日本住友製薬株式会社)
【0078】
【表9】

【0079】
【表10】

【0080】
この結果より、ネオテームを溶解させ、均一に分散させることでもアセトアミノフェンの苦味をほぼ完全にマスクできることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の経口製剤は、薬物の不快な味が改善され、服用感が優れた経口製剤を提供できる。これによって、成人はもとより、高齢者、小児等あらゆる年齢層の患者にとって、不快な味を有する薬物を容易に服用することができる。本発明は、液剤、ゼリー剤、グミ剤、シロップ剤、ドライシロップ、散剤、顆粒剤、細粒剤、チュアブル製剤、口腔内崩壊型散剤、口腔内崩壊型顆粒、口腔内崩壊型細粒、口腔内崩壊型多層錠、口腔内崩壊型有核錠、口腔内崩壊錠等の口腔内で味を発現しやすい剤形とした場合であっても、不快な味を改善することができる。従って、嚥下困難な患者、高齢者、小児等にも服用し易く、用量調整が可能であって、かつ、不快な味が改善された経口製剤を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不快な味を有する薬物およびネオテームを含有する経口製剤であって、ネオテームを下記含有量で含有する経口製剤:
1.製剤重量20mg〜200mgの製剤において、ネオテームを製剤重量に対して0.1重量%以上含有し、かつネオテームの含有量が製剤重量に対して5.0mg未満である、または
2.製剤重量200mg〜5000mgの製剤において、ネオテームを製剤重量に対して0.1重量%〜2.5重量%未満含有する。
【請求項2】
不快な味を有する薬物およびネオテームを下記含有量で含有する請求項1に記載の経口製剤:
1.製剤重量20mg〜200mgの製剤において、ネオテームを製剤重量に対して0.2重量%超えて含有し、かつネオテームの含有量が製剤重量に対して5.0mg未満である、または
2.製剤重量200mg〜5000mgの製剤において、ネオテームを製剤重量に対して0.2重量%を超えて含有し、2.5重量%未満含有する。
【請求項3】
不快な味を有する薬物およびネオテームを下記含有量で含有する請求項1または請求項2に記載の経口製剤:
1.製剤重量20mg〜200mgの製剤において、ネオテームを製剤重量に対して少なくとも0.3重量%以上含有し、かつネオテームの含有量が製剤重量に対して4.0mg以下である、または
2.製剤重量200mg〜5000mgの製剤において、ネオテームを製剤重量に対して0.3重量%〜2.0重量%含有する。
【請求項4】
不快な味を有する薬物およびネオテームを下記含有量で含有する請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の経口製剤:
1.製剤重量20mg〜200mgの製剤において、ネオテームを製剤重量に対して少なくとも0.5重量%以上含有し、かつネオテームの含有量が製剤重量に対して2.0mg以下である、または
2.製剤重量200mg〜5000mgの製剤において、ネオテームを製剤重量に対して0.5重量%〜1.0重量%含有する。
【請求項5】
製剤重量が、50mg〜2500mgである、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の経口製剤。
【請求項6】
製剤重量が、50mg〜500mgである、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の経口製剤。
【請求項7】
さらに、ソーマチン、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、およびステビアからなる群から選択される1種または2種以上の高甘味度甘味剤を含有する、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の経口製剤。
【請求項8】
固形状又は半固形状製剤である、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の経口製剤。
【請求項9】
ネオテームを結合液に溶解させて均一に分散させた、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の経口製剤。
【請求項10】
経口製剤が、錠剤、散剤、顆粒剤、または細粒剤である、請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の経口製剤。

【公開番号】特開2010−270110(P2010−270110A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96371(P2010−96371)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】