説明

ネオフラクトオリゴ糖の製造法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規に発見した菌の菌体またはその菌が産生する酵素を用いて、フラクトオリゴ糖と共にネオフラクトオリゴ糖を同時に製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】微生物が産生する糖転移酵素または糖加水分解酵素を糖質に作用させることにより、種々のオリゴ糖を製造することがなされている。
【0003】代表的な例をあげると、シュクロースに、オウレオバシディウム(Aureobacidium) FERM P-4257 、オウレオバシディウム・プルラリア・ヴァル・メラニゲヌム(Aureobacidium pullularia var melanigenum)、オウレオバシディウム(Aureobacidium) ATCC 9348 、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger) ATCC 20611、アスペルギルス・ジャポニクス(Aspergillus japonicus) Mu-2などの微生物が産生するフラクトシルトランスフェラーゼ(フラクトース転移酵素、β-fructo-franosidase)を作用させて、シュクロースのフラクトースにフラクトースがβ−1,2結合で1分子結合した1−ケストース (GF2)、2分子結合したニストース (GF3)、3分子結合した1−フラクトシルニストース (GF4)などのフラクトオリゴ糖が工業的に生産され、機能性を有する甘味料として広く食品加工に利用されている。たとえば、本発明者の出願にかかる特開昭60−27395号公報(特公平5−4071号公報)、特開昭60−41497号公報(特公平5−4070号公報)および特開平7−31492号公報を参照。
【0004】特公昭43−19839号公報には、ペニシリウム属に属する微生物をシュクロースを含む培養液に培養するか、またはこれら菌株の菌体、または菌体押出物をシュクロース溶液に接触させるようにした、シュクロースを原料とするフラクトオリゴ糖の製造方法が示されている。特開平2−163093号公報(特公平4−41600号公報)および特開平4−235192号公報(特公平6−70075号公報)には、スコプラリオプシス属に属する微生物を用いてケストースを製造する方法が示されている。
【0005】フラクトオリゴ糖の製造技術は、(イ)フラクトシルトランスフェラーゼを効率的に産生する技術、(ロ)産生した酵素を使用してフラクトオリゴ糖を生産する技術、(ハ)フラクトオリゴ糖を分離する技術、より成り立っている。特に重要な技術は、加水分解活性が弱くかつ転移活性が強い酵素産生菌の分離と酵素産生技術であり、工業的にはオウレオバシディウム属またはアスペルギルス属の菌が使用されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ネオフラクトオリゴ糖(ネオケストース、ネオニストース、ネオフラクトシルニストース)は、植物、たとえばタマネギ、ニラ、カラスムギ等に含有されているが、微生物の産生するフラクトース転移酵素をシュクロースに作用させてネオフラクトオリゴ糖を生産する方法は確立されていない。
【0007】従来提案されているオウレオバシディウム属、アスペルギルス属、ペニシリウム属などの菌、あるいはこれらの菌の産生するフラクトシルトランスフェラーゼは、シュクロースから1−ケストース、ニストース、1−フラクトシルニストースなどのフラクトオリゴ糖への転移反応のみを触媒する酵素であり、ネオフラクトオリゴ糖を生産するものではない。
【0008】本発明は、このような背景下において、自然界から新規に分離した菌を培養して得られる菌体、またはその菌が産生するフラクトシルトランスフェラーゼをシュクロース(またはフラクトオリゴ糖)に作用させて、ネオケストース、ネオニストース、ネオフラクトシルニストースなどのネオフラクトオリゴ糖を製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明のネオフラクトオリゴ糖の製造法は、基質であるシュクロース(X1)または/およびシュクロースのフラクトースにフラクトースがβ−1,2結合した構造のフラクトオリゴ糖(X2)に、ペニシリウム・シトリヌム(Penicillium citrinum) FERM P-15944 菌の菌体(Y1)または/およびその菌が産生する菌体内または菌体外酵素であるフラクトシルトランスフェラーゼ (β-fructo-franosidase)(Y2)を作用させて、フラクトオリゴ糖と共にネオフラクトオリゴ糖を生成させることを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】以下本発明を詳細に説明する。
【0011】本発明においては、基質として、シュクロース(X1)を用いるか、シュクロースのフラクトースにフラクトースがβ−1,2結合(つまりイヌリン型に結合)した構造のフラクトオリゴ糖(X2)を用いる。両者を併用することもできる。
【0012】後者のフラクトオリゴ糖(X2)としては、従来知られている方法により得た1−ケストース、ニストース、1−フラクトシルニストースなどのフラクトオリゴ糖を用いることができる。また、本発明に従い基質としてシュクロース(X1)を用いたときの中間生成物を用いることもできる。
【0013】本発明において用いるペニシリウム属の菌は、本発明者が自然界から分離した新規な菌であり、すでにペニシリウム・シトリヌム(Penicillium citrinum) FERM P-15944 菌として受託されている。
【0014】この菌の菌学的特徴を見ると、コロニーは余り多くならず、ビロード状の暗青灰色で、狭い白色の周縁部が見える。裏面はごく淡い黄色から濃黄色にわたって変化し、ツァペック(Czapek)液、その他の液体培地で培養すると培地が黄金色に変わる。
【0015】本菌をツァペック(Czapek)−イースト(Yeast) 寒天培地(CYA)およびマルトエキス寒天培地に接種し、25℃または37℃で7日培養し、生育したカビ集落の色調、形状および分生子、さらには分生子形成構造等の形態の観察を行った。このときの本菌の菌学的性状を表1に示す。
【0016】
【表1】
項 目 性 状 生育速度(25℃/7日間) 集落の直径:30〜32mm 生育速度(37℃/7日間) 集落の直径:5〜6mm 集落表面の色 灰緑色〜暗いオレンジ色 集落裏面の色 黄色〜黄褐色 集落表面の組織 羊毛状 分生子柄 滑面 ペニシリ 複輪生〜単輪生 メトレ (12〜15)×(2.5〜3.0)μm ファライド フラスコ形、(7〜12) ×(2〜2.5)μm 分生子 球形〜亜球形、滑面、直径 2.5〜 3.0μm
【0017】上記の菌を液体培養することにより培養菌体または菌体を含む培養液が得られるが、本発明においてはその菌体(またはそれを含む培養液)自体を菌体内酵素と共にそのまま用いることできるほか、その菌から産生される菌体外酵素(フラクトシルトランスフェラーゼ)も同様に用いることができる。これらの菌体内酵素または菌体外酵素は、可溶化してあるいは固定化して使用することもできる。
【0018】液体培養を行うときの培養液の培養培地組成としては、たとえば、シュクロース10.0〜 5.0重量%、NaNO3 0.5重量%、 K2HPO4 0.1重量%、KCl 0.1重量%、 MgSO4・H2O 0.01 重量%、 FeSO4・7 H2O 0.002重量%、粉末酵母 0.1〜 0.5重量%があげられるが、他の種々の組成も採用することができる。このような培地を使用して24時間以上通気撹拌培養すると、フラクトシルトランスフェラーゼが活性な菌体含有培養液が得られる。
【0019】このとき産生される酵素は、菌体内または菌体外(主として菌体内)に含有されている酵素であり、この酵素は、オウレオバシディウム属やアスペルギルス属の菌の産生する既存のフラクトシルトランスフェラーゼと同様、シュクロースにより誘導される誘導酵素である。
【0020】基質であるシュクロース(X1)または/およびシュクロースのフラクトースにフラクトースがβ−1,2結合した構造のフラクトオリゴ糖(X2)に、上記の菌の菌体(Y1)や上記のフラクトシルトランスフェラーゼ(Y2)を作用させると、フラクトオリゴ糖と共にネオフラクトオリゴ糖を効率的に得ることができる。菌体(Y1)またはフラクトシルトランスフェラーゼ(Y2)の作用温度は40〜60℃、pHは4〜6であることが好ましい。
【0021】ここでフラクトオリゴ糖とは、先に述べたように、1−ケストース、ニストース、1−フラクトシルニストースなどであり、ネオフラクトオリゴ糖とは、ネオケストース、ネオニストース、ネオフラクトシルニストースなどである。ちなみに、1−ケストースの構造式は次の化1、ネオケストースの構造式は次の化2で示される。
【0022】
【化1】


【0023】
【化2】


【0024】オウレオバシディウム属やアスペルギルス属の菌から産生される既存のフラクトシルトランスフェラーゼは、シュクロース等の基質のフラクトースにフラクトースがβ−1,2結合したイヌリン型のフラクトオリゴ糖のみを生成する。すなわち、G-(F)n → G-(F)n+1 + G-(F)n-1の転移反応を触媒する。なお、基質(G-(F)n)のnが1の場合(シュクロースの場合)はグルコースが遊離する。この転移反応は、同一分子間のフラクトース転移反応である。
【0025】これに対し、本発明で用いているペニシリウム・シトリヌム FERM P-15944 の産生するフラクトシルトランスフェラーゼは、シュクロース等の基質から、下記の化3の反応を触媒する。なお、基質(G-(F)n)のnが1の場合(シュクロースの場合)はグルコースを遊離する。
【0026】
【化3】


【0027】そして、上記の(i) のネオフラクトオリゴ糖は、本酵素の転移反応基質にはならない。この点がこの転移反応で重要なことである。
【0028】基質からのネオフラクトオリゴ糖転移率は基質濃度に依存し、基質濃度が高いほどネオフラクトオリゴ糖の転移率が高くなる。このことは、ネオフラクトオリゴ糖生産上非常に重要なことである。後述の図2は、基質(シュクロース)濃度とネオフラクトオリゴ糖転移率との関係を示したグラフである。基質濃度は、 Brix 30以上、40以上、50以上、60以上というように、高くなるほど好ましい。基質シュクロース濃度 Brix 70の場合、フラククトオリゴ糖とネオフラクトオリゴ糖との合計転移率は55〜60%と非常に高い。
【0029】本発明の方法によれば、1−ケストース、ニストース、1−フラクトシルニストースなどのフラクトオリゴ糖と同時に、ネオケストース、ネオニストース、ネオフラクトシルニストースなどのネオフラクトオリゴ糖が得られるが、通常は生成したフラクトオリゴ糖とネオフラクトオリゴ糖とを分離するには及ばないので、そのまま種々の用途に用いる。
【0030】得られたネオフラクトオリゴ糖は、そのすぐれた保湿作用、好甘味、低カロリー性、抗う蝕作用、腸内細菌の増殖作用、腸管局所免疫増強作用などの諸機能を生かして、甘味料、機能性食品、飼料、医薬、植物の防疫促進剤をはじめ、多方面に利用することができる。
【0031】〈作用〉下記の表2は、基質がシュクロースであるときに、その基質にペニシリウム・シトリヌム FERM P-15944 菌の産生するフラクトシルトランスフェラーゼを作用させたときの転移反応をモデル的に示したものである。
【0032】
【表2】


【0033】ルートAは、既存のフラクトシルトランスフェラーゼを用いたときの一連の転移反応を示したものであり、シュクロース→1−ケストース→ニストース→1−フラクトシルニストースを経るというように、より高次のフラクトオリゴ糖が生成していく。
【0034】これに対し、本発明者が見い出したペニシリウム・シトリヌム FERM P-15944が産生するフラクトシルトランスフェラーゼは、ルートAの転移反応と共に、ルートBの転移反応も触媒する。ルートBは、シュクロース→ネオケストースの転移反応を含むが、その転移反応物であるネオケストースを新たな基質としては反応は進行しない。一段高次のネオニストースは、同時に生成した1−ケストースの転移反応により得られるのである。同様にこのときの転移反応物であるネオニストースを新たな基質としては反応は進行しない。より高次のネオフラクトシルニストースは、ニストースを経て生成した1−フラクトシルニストースの転移反応により得られるのである。
【0035】基質としてのシュクロースにペニシリウム・シトリヌム FERM P-15944 が産生するフラクトシルトランスフェラーゼを作用させたときの反応経時的な糖組成は後述の図3の通りであり、ネオフラクトオリゴ糖の転移率が高く、フラクトオリゴ糖とネオフラクトオリゴ糖との合計転移率も非常に高いのが特徴である。
【0036】
【実施例】次に実施例をあげて本発明を詳細に説明する。
【0037】実施例1、比較例1〜2予備的実験として、オウレオバシディウム FERM P-4257菌(比較例1)、アスペルギルス・ジャポニクス Mu-2 菌(比較例2)、ペニシリウム・シトリヌム FERM P-15944 菌(実施例1)がそれぞれ産生する3種のフラクトシルトランスフェラーゼをシュクロースに作用させ、生成したフラクトオリゴ糖(1−ケストース、ニトース)を高速液体クロマトグラフィー (使用カラム SCR-101N)で経時的に定量して、横軸に1−ケストースを、縦軸にニストース(いずれも重量%)をプロットしたところ、図1に示すようなフラクトオリゴ糖曲線が得られた。なおこのカラムによっては、1−ケストースとネオケストースとは分離できないので、1−ケストースにはネオケストースの分も含まれている。
【0038】オウレオバシディウム FERM P-4257菌(比較例1)、アスペルギルス・ジャポニクス Mu-2 菌(比較例2)が産生するフラクトシルトランスフェラーゼを用いた場合は、全く同じフラクトオリゴ糖曲線になるが、ペニシリウム・シトリヌムFERM P-15944 菌(実施例1)が産生するフラクトシルトランスフェラーゼを用いた場合は、異なったフラクトオリゴ糖曲線になることを見い出した。
【0039】本発明者は、図1に示されたフラクトオリゴ糖曲線の相違の原因を、1−ケストースの構造異性体が生成するためと判断して、定性および定量分析した結果、ペニシリウム・シトリヌム FERM P-15944 菌(実施例1)が産生するフラクトシルトランスフェラーゼを用いた場合には、先に述べた表1のルートBとルートAの転移反応が同時に行われていることを見い出したのである。
【0040】実施例2〈菌の培養と酵素の産生〉本発明者が土中から分離したペニシリウム・シトリヌム FERM P-15944 菌を、下記の培地で液体培養した。すなわち、1リットルの水道水に、シュクロース(グラニュー糖)100g、NaNO3 2g、 K2HPO4 1g、KCl 1g、 MgSO4・H2O1g、 FeSO4・7 H2O 0.02 g、粉末酵母5gを加え、pHを 6.4に調整することにより、培地を作った。この培地を容量 1.5リットルの培養槽に入れて115℃で20分間殺菌後、48時間培養した50mlの種菌を接種し、30℃で通気撹拌培養した。通気量は500ml/minとし、撹拌は100rpm の回転速度で行った。72時間培養後、菌体を遠心分離で分取した。得られた菌体は80g(水分80重量%)であり、1gの菌体の酵素力価は500u/gr菌体、培養ろ過液中の酵素力価は2u/mlであった。
【0041】酵素力価の測定は、結晶精製シュクロースを濃度 Brix 50(重量%)に調整し、pH 5.0にて、このシュクロース液100gに上記の菌体(水分80重量%) 0.5gを添加し、55℃、100rpm で30分間反応後、高速液体クロマトグラフィーでグルコースを定量することにより行った。液体クロマトグラフィーのカラムとしては、ダイソー株式会社製の「DAISO PAK.sp-120-5.DDS-B」を使用した。酵素力価は、1μ-molグルコース/1分=1uとした。
【0042】〈転移反応〉上記で得た菌体を、シュクロースに対して1重量%添加し(つまりシュクロース1g当り5uの酵素を添加したことになる)、pH 5.0、温度50℃で、シュクロース濃度をBrix10,20,30,50,70にして反応させた。40時間後に液体クロマトグラフィーにてネオフラクトオリゴ糖を定量したところ、図2の結果が得られた。基質のシュクロース濃度が高いほどシュクロースからのネオフラクトオリゴ糖の生成量は多くなるが、総オリゴ糖の量(ネオフラクトオリゴ糖とフラクトオリゴ糖との合計量)は、基質シュクロース固形物に対して一定(55〜60%)であることがわかる。
【0043】基質シュクロース濃度 Brix 70における反応経過時間ごとのネオフラクトオリゴ糖(ネオケストース、ネオニストース、ネオフラクトシルニストース)およびフラクトオリゴ糖(1−ケストース、ニストース、フラクトシルニストース)のシュクロースからの転移率は図3に示す通りである。また反応時間(40時間)におけるネオフラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖の糖組成は、下記の表3に示す通りである。シュクロースからのネオフラクトオリゴ糖(ネオケストース、ネオニストース、ネオフラクトシルニストース)の転移率は約20%であった。なお、酵素は菌体を直接使用し、酵素量は5(u)/grシュクロースである。
【0044】
【表3】
生 成 物 転移率(%) グルコース(G) 31.63 % シュクロース(GF) 11.62 % オリゴ糖 56.74 % ・フラクトオリゴ糖 36.85 % 1−ケストース(GF2) 21.80 % ニストース(GF3) 14.05 % 1−フラクトシルニストース(GF4) 1.00 % ・ネオフラクトオリゴ糖 19.89 % ネオケストース(FGF) 10.51 % ネオニストース(FGF2) 8.01 % ネオフラクトシルニストース(FGF3) 1.28 % 合計 100.0%
【0045】Brix 70で40時間反応後の液体クロマトグラフィー分析結果を図4に示す。P1 はネオケストース、P2 はネオニストース、P3 はネオフラクトシルニストースのピークを示している。
【0046】上記で得られたネオフラクトオリゴ糖含有液(Brix70)を100g分取して、それにメタノール100mlを添加し、30℃でよく撹拌後、0℃で24時間放置し、その間に沈澱した物質を遠心分離で分取した。分取量は20gであった。減圧乾燥後、蒸留水を加えて20%溶液とした。この20%溶液の高速液体クロマトグラフィー分析結果を図5に示す。
【0047】さらに、高速液体クロマトグラフィー(使用カラム「DAISO PAK.sp-120-5.VDS-B)で、ネオケストース、ネオニストース、ネオフラクトシルニストースをそれぞれ10mg、5mg、3mg秤取した。これら3種の粉末を各々メチル化アルジトール・アセテート分析、さらには重クロロホルム溶液13C−NMR分析した結果、シュクロース、1−ケストース、ニストースのグルコースにフラクトースが1分子、Fruct β2-6Glu に結合したネオフラクトオリゴ糖であることが明らかになった。
【0048】
【発明の効果】本発明によれば、次のようなすぐれた効果が奏される。
(a)本発明者が分離したペニシリウム・シトリヌム FERM P-15944 菌を液体培養することにより産生されるフラクトシルトランスフェラーゼを、シュクロース(またはシュクロースのフラクトースにフラクトースがβ−1,2結合した構造のフラクトオリゴ糖)に作用させると、ネオフラクトオリゴ糖を20%も含有する糖液を工業的に生産することができる。
(b)高基質濃度(たとえば Brix 70)で、ネオフラクトオリゴ糖の転移反応が最大になる転移反応であるため、工業生産上のメリットが大である。
(c)シュクロース(またはシュクロースのフラクトースにフラクトースがβ−1,2結合した構造のフラクトオリゴ糖)から、腸内有用菌の増殖作用、腸管局所免疫増強作用、植物の防疫促進作用をはじめとする特徴ある特性を持つ糖が工業的に得られるので、新しい機能をもつ食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】アスペルギルス・ジャポニクス Mu-2 菌、オウレオバシディウム FERM P-4257菌、ペニシリウム・シトリヌム FERM P-15944 菌が産生するフラクトシルトランスフェラーゼをシュクロースに作用させたときのフラクトオリゴ糖曲線を示す図である。
【図2】基質(シュクロース)濃度とネオフラクトオリゴ糖への転移率との関係を示す図である。
【図3】基質(シュクロース)濃度 Brix 70における反応経過時間ごとのネオフラクトオリゴ糖生成との関係を示す図である。
【図4】ネオフラクトオリゴ糖含有糖液の高速液体クロマトグラフィー分析表を示す図である。
【図5】図4で示した糖組成の糖液をメタノールで精製したフラクトオリゴ糖含有液の高速液体クロマトグラフィー分析表を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】基質であるシュクロース(X1)または/およびシュクロースのフラクトースにフラクトースがβ−1,2結合した構造のフラクトオリゴ糖(X2)に、ペニシリウム・シトリヌム(Penicillium citrinum) FERM P-15944 菌の菌体(Y1)または/およびその菌が産生する菌体内または菌体外酵素であるフラクトシルトランスフェラーゼ (β-fructo-franosidase)(Y2)を作用させて、フラクトオリゴ糖と共にネオフラクトオリゴ糖を生成させることを特徴とするネオフラクトオリゴ糖の製造法。
【請求項2】ネオフラクトオリゴ糖が、ネオケストース(6G-β-fructofranosyl-Sucrose)、ネオニストース(6G-β-fructofranosyl-Kestose)およびネオフラクトシルニストース(6G-β-fructofranosyl-Nystose)の少なくとも1種である請求項1記載の製造法。
【請求項3】基質濃度が Brix 30以上である請求項1記載の製造法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】特許第3058600号(P3058600)
【登録日】平成12年4月21日(2000.4.21)
【発行日】平成12年7月4日(2000.7.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−333749
【出願日】平成8年12月13日(1996.12.13)
【公開番号】特開平10−165192
【公開日】平成10年6月23日(1998.6.23)
【審査請求日】平成10年11月24日(1998.11.24)
【微生物の受託番号】 FERM P−15944
【出願人】(596180009)
【出願人】(591014581)日本オリゴ株式会社 (4)