説明

ネコ由来タンパク質のコード配列を含む外来性遺伝子を含むトランスジェニック鳥類およびその作製法

【課題】ネコ由来タンパク質のコード配列を含む外来性遺伝子を含むトランスジェニック鳥類及びその作製法を提供する。
【解決手段】鳥類の胚に形成される初期の心臓内又は血管内へ外来性遺伝子を含む複製能欠失型レトロウイルスベクターをマイクロインジェクションにより感染させ、その胚を孵化させることを特徴とする方法によって得られるトランスジェニック鳥類による、ネコ由来タンパク質の生産。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外来性遺伝子を含むトランスジェニック鳥類の作製法に関し、トランスジェニック鳥類によるネコ由来タンパク質の発現に関する。更に詳しくは、トランスジェニック鳥類による、ネコ由来エリスロポエチンの発現に関する。
【背景技術】
【0002】
近年数多くの医薬用タンパク質が利用されるようになってきた。微生物や哺乳類動物細胞に目的タンパク質の遺伝子を導入する遺伝子組換え技術が開発・応用され、これらの遺伝子組換え体を培養することでタンパク質を工業生産できるようになったためである。医薬用タンパク質が本来持っている生理活性を示す為には、タンパク質が天然に存在するのと同様に、ホールディングする必要や糖鎖付加やジスルフィド結合等の転写後修飾を受ける必要がある。
【0003】
微生物培養によりタンパク質を生産する方法は、微生物の増殖速度が早いことや、培地組成が単純であることから、低コストでタンパク質を生産することが可能である。しかし、微生物では目的タンパク質の転写後修飾が正しくおこなわれないことが多い。よって、天然型と同様の生理活性を有するタンパク質を十分量得ることが難しく、工業生産の実用化への道のりは遠いのが現状である。
【0004】
そこで、これまでは哺乳類動物細胞に目的タンパク質の遺伝子を導入し、その細胞を培養することによって生産する方法が主流となっている。血液凝固因子や血栓溶解剤や抗体医薬といった医薬品タンパク質が、遺伝子組換え哺乳類動物細胞を用いて生産され、販売、使用されている。しかし、哺乳類動物細胞を用いた方法は、専用の培養タンクや培地が必要であり生産コストが高いという問題がある。
【0005】
これらの問題を克服する為に、動物工場が注目されてきた。遺伝子導入(トランスジェニック)動物を用いて目的タンパク質を生産する技術である。ヤギやヒツジやウシ等を用いてトランスジェニック哺乳類を作製し、その乳汁中に目的タンパク質を生産させる方法が試みられてきた。目的タンパク質にもよるが、抗体が乳汁中に10mg/ml発現したという報告もある(例えば、非特許文献1参照)。しかし、この方法にもBSEの問題や利用可能な哺乳類の個体が大きく生産、飼育、管理が大変であること、性成熟の期間がヤギやヒツジで8ヶ月、ウシでは15ヶ月と長いこと等の問題がある。
【0006】
そこで、トランスジェニック鳥類を用いて卵中に目的タンパク質を発現させる方法が検討されている。この方法は、卵の生産性の高さや、BSEの問題が存在しないこと、性成熟の期間がニワトリで5ヶ月と短いこと、個体が小さいため大量の個体の飼育が可能であること、人工授精法が確立しており大規模のトランスジェニック群を急速に育成可能であること、一般に卵の中が自然に無菌であること等の利点があげられる。
【0007】
トランスジェニック鳥類を作製する方法には、レトロウイルスベクターを用いる方法、胚性幹細胞を用いる方法、始原生殖細胞を用いる方法、精子に目的遺伝子を付着させ導入する方法等が研究中であり、この中でレトロウイルスベクターを用いる方法が最も一般的である。これまでに、トリ白血病ウイルス(ALV)複製能欠失型レトロウイルスベクターを用いた研究が報告されている(例えば、特許文献1参照。)。目的タンパク質としてβラクタマーゼを用い、プロモーター遺伝子としてサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター遺伝子を用いている。放卵直後のステージXの胚盤葉にレトロウイルスベクターを導入し、トランスジェニック鳥類の作製に成功している。発現量は、ウエスタンブロットを用いた分析方法では0.33mg/ml(卵白を40mlとする)であり、βラクタマーゼ活性からの換算では0.003〜0.033mg/mlであると報告されている。また、その際のG0トランスジェニックキメラ鳥類の出現頻度は20%である。生殖細胞への導入効率を調べた結果、G0トランスジェニックキメラ鳥類オスのうち5%程度が精子中に導入遺伝子を有していた。他の報告として、同様の実験で、全身に遺伝子が導入されたG2において、多いもので卵白中に1.2μg/ml程度の発現であったという報告もなされている(例えば、非特許文献2参照)。またその際のG0からG1の出現頻度は3/422(0.71%)であった。
【0008】
他に、ヒトインターフェロンやヒト由来エリスロポエチンを発現するトランスジェニック鳥類の報告がある(例えば、特許文献2及び3参照)。インターフェロンはウイルス感染に際して、ほとんどすべての動物細胞が生産、分泌する分子量約2万の糖タンパク質であり、ウイルス抑制因子とも言う。エリスロポエチン(EPO)は、主に腎臓で産生され、造血組織の前駆細胞に作用して赤血球への分化・増殖を促進する糖鎖に富んだポリペプチドである。現在、EPOは、遺伝子組換え技術により、動物細胞を宿主として生産される組換えヒトEPOとして市販されており、腎障害に基づくEPO産生低下による腎性貧血を始め、各種の貧血症に対する治療薬として主として使用されている。ALV複製能欠失型レトロウイルスベクターと、CMVプロモーター遺伝子又はオボムコイド、オボトランスフェリン融合プロモーター遺伝子を用いて、ヒトインターフェロンは血清中に最大200ng/ml、ヒト由来エリスロポエチンは血清中、卵白中共に最大70ng/ml発現している。
【0009】
別の報告では、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)ベクターとVSV−Gエンベロープを用い、高いウイルス力価や感染性、発現性を得た報告がなされている(例えば、特許文献4参照)。更に、その報告ではレトロウイルスベクターを導入する時期を調節することによっても、高発現を実現しており、目的タンパク質として抗プリオン1本鎖抗体(scFv)を用い、卵白、卵黄中に0.5〜1mg/mlの発現を実現している。
【0010】
ネコはペットとして昔から人間に愛着のある動物であるが、最近では「伴侶、仲間、相棒としての動物」として人間社会の一員としての地位が確立しつつある。一方、医学、薬学、獣医学、心理学などで従来から実験動物として使用されており、最近では医薬品の安全性試験、効果検定にも使用されるようになってきている。このようにネコの社会的重要性が高まっている状況の中では、ネコの疾病や伝染病に対する関心が高く、その有効な治療法が望まれている。近年ネコの疾病治療においても医薬用タンパク質が注目されており、主としてヒト用の医薬用タンパク質が転用されている。しかし、ヒト用の医薬用タンパク質はネコが本来持つ生体内タンパク質とアミノ酸配列が異なるため、生体内での効果が異なる可能性がある。また、アミノ酸配列の差異により、アレルギーを起こす可能性もあり、悪くすればアナフィラキシー様症状を引き起こす。よって、高頻度の投与には耐えないため、ネコが本来もつ医薬用タンパク質の開発が求められている。
【0011】
現在までにネコ由来医薬用タンパク質として、サイトカインが多く研究されている。サイトカインとは細胞から放出され、免疫、炎症反応の制御作用、抗ウイルス作用、抗腫瘍作用、細胞増殖・分化の調節作用など細胞間相互作用を媒介するタンパク質性因子である。これまでに、ネコ由来サイトカインとして報告されているものにはエリスロポエチン(例えば、非特許文献3及び4参照)、インターロイキン12(例えば、特許文献5参照)などが挙げられる。これらの生産に関してはこれまでのところ哺乳類動物細胞を用いてなされており、トランスジェニック鳥類を用いた生産は行われていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2001−520009号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0019922号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0019923号明細書
【特許文献4】特開2002−176880号公報
【特許文献5】国際公開第97/046583号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Trends Biotechnol.1999 Sep;17(9):367−74.
【非特許文献2】Nat Biotechnol.2002 Apr;20(4):396−9.
【非特許文献3】Blood.1993 Sep 1;82(5):1507−16.
【非特許文献4】Vet Immunol Immunopathol.1986 Jan;11(1):1−19.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
これまでにネコ由来タンパク質をトランスジェニック鳥類を用いて発現させた例は報告されていない。高等生物のタンパク質は翻訳後、生理活性を有するよう特定の構造をとるようホールディングしたり、糖付加やジスルフィド結合などの種々の修飾を受ける。タンパク質の修飾は同一個体内でも組織によって異なる。その為、動物細胞内で外来遺伝子を高発現させるのは非常に難しい。例えば、医薬用タンパク質を哺乳類動物細胞の培養で生産する際には、その医薬用タンパク質の生産に適当な細胞株を種々の動物種や組織から選択する。これまでにトランスジェニック鳥類を用いて、ヒト由来タンパク質の生産がなされてきたが、ヒトとネコでは分類学上、目が異なりこれは大きな違いである。同一の活性を有するタンパク質でもヒトとネコではアミノ酸配列が異なる。エリスロポエチンにおいて、ヒトとネコのアミノ酸の相同性は83%程度である。また、ヒトとネコでは糖鎖配列が異なるため、ヒト由来タンパク質で可能であったからといってネコ由来タンパク質で可能であるとは言い難い。従って、本発明では、トランスジェニック鳥類によるネコ由来タンパク質の生産方法を示すことを課題とする。
【0015】
本発明者らは、ネコ由来タンパク質としてネコ由来サイトカインに注目し、ネコ由来サイトカインの一つであるネコ由来エリスロポエチンをターゲットとした。本発明は、特にトランスジェニック鳥類によるネコ由来エリスロポエチンの生産方法を示すことを課題とする。また、米国特許出願公開2004/0019922および2004/0019923号明細書が開示するヒト由来エリスロポエチン産生トランスジェニック鳥類は、エリスロポエチン産生量が少ないという点で問題がある。したがって、本発明は高濃度のエリスロポエチンを産生するトランスジェニック鳥類、およびその作製方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、配列表の配列番号1で示されるネコ由来エリスロポエチンのアミノ酸配列、又は配列表の配列番号1で示されるネコ由来エリスロポエチンのアミノ酸配列中の1〜10個のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする外来性遺伝子を有するトランスジェニック鳥類の卵よりネコ由来エリスロポエチンを抽出する工程、精製する工程、およびポリエチレングリコールで化学修飾する工程を含む、ネコ由来エリスロポエチンの生産方法に関する。
【0017】
ポリエチレングリコールの重量平均分子量が5〜40kDaであることが好ましい。
【0018】
ポリエチレングリコールの重量平均分子量が20kDaであることが好ましい。
【0019】
ポリエチレングリコールの付加数が1又は2以上であって、ポリエチレングリコール修飾された1分子のゲルろ過カラムクロマトグラフィーにより測定した水系溶媒中における見かけの分子量が100kDaから900kDaであることが好ましい。
【0020】
ポリエチレングリコールの付加数が1であって、ポリエチレングリコール修飾された1分子のゲルろ過カラムクロマトグラフィーにより測定した水系溶媒中における見かけの分子量が100kDaから500kDaであることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ネコ由来タンパク質を産生するトランスジェニック鳥類及びその作製方法が提供される。その結果として、ネコ由来サイトカインを産生するトランスジェニック鳥類及びその作製方法が提供される。更には、ネコ由来エリスロポエチンを産生するトランスジェニック鳥類及びその作製方法が提供される。また従来よりも高濃度のエリスロポエチンを産生するトランスジェニック鳥類およびその作製をも可能とした。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1で構築した、ネコ由来エリスロポエチン発現用ベクターpMSCVneobactfEPOの構造を示す。phi+はウイルスパッケージングシグナル配列を示す。モロニーマウス白血病ウイルスのパッケージングシグナル配列にgagの開始コドン(ATG)をTAGに変更したgagの一部が付随している。fEPOはネコ由来エリスロポエチン遺伝子を示す。5’LTR及び3’LTRはMSCVのLTR配列を示す。
【図2】実施例6で構築した、ネコ由来エリスロポエチン発現用ベクターpMSCVneobactfEPOwpreの構造を示す。phi+はウイルスパッケージングシグナル配列を示す。モロニーマウス白血病ウイルスのパッケージングシグナル配列にgagの開始コドン(ATG)をTAGに変更したgagの一部が付随している。fEPOはネコ由来エリスロポエチン遺伝子を示す。5’LTR及び3’LTRはMSCVのLTR配列を示す。WPREはウッドチャック肝炎ウイルス由来の転写後調節因子である。
【図3】実施例8で測定した、トランスジェニックニワトリの血清中及び卵白中の活性を示す。活性はエポジンを標準エリスロポエチンとし、EPO依存性細胞株であるBaF/EPORによる細胞増殖アッセイによりおこなった。雌雄不明は雌雄判定以前に殺処分したものである。(*)はpMSCVneobactfEPOベクターを用いたトランスジェニックニワトリであり、他は、pMSCVneobactfEPOwpreを用いたトランスジェニックニワトリである。発現量が最大のもの(個体番号10−1)で活性は血清中5300IU/ml、卵白中92000IU/mlであった。
【図4】実施例8で行った、トランスジェニックニワトリ(個体番号6−3)の血清及び卵白の抗ネコ由来エリスロポエチン抗体を用いたウエスタンブロットの結果を示す。個体番号6−3の発現量は血清中620IU/ml、卵白中6400IU/mlであった。マーカーは分子量マーカー(ドクターウエスタン、オリエンタル酵母社製)である。エリスロポエチンの分子量は32〜34kDa程度である。エポジンを標準サンプルとした。野生型は非トランスジェニックニワトリ由来のサンプルである。エポジンは1.2U/レーン。卵白、血清はそれぞれ0.2μl/レーン、0.4μl/レーンを電気泳動した。野生型に見られるバンドはエリスロポエチンに非特異的なバンドである。血清由来のエリスロポエチンは、わずかであるが野生型と比較するとエポジンと同じ位置にバンドを確認できる。卵白由来のエリスロポエチンは分子量が通常のものより低い泳動距離を示している。これは糖鎖の修飾パターンが異なる為であると考えられる。
【図5】実施例9で行った、トランスジェニックニワトリ(固体番号10−1)の卵白中のネコ由来エリスロポエチンの精製の各ステップにおけるSDS−PAGEの結果を示す。2μg/レーン(エポジン・10μl/レーンを除く)を電気泳動した。左から、卵白(EW)、ブルーセファロースクロマトグラフィー溶出画分(BS)、ヘパリンセクロマトグラフィー溶出画分(HE)、陰イオン交換カラムクロマトグラフィー素通り画分(DEAE)、ゲルろ過カラムクロマトグラフィー溶出画分(GPC)、エポジン(EPOGEN)を表す。分子量マーカーはPrecision Plus Protein Standards Dual Color(Bio−Rad社製)を用いた。図4のウエスタンブロットの結果と一致して、卵白より精製したネコ由来エリスロポエチンはエポジンよりも分子量が低い位置にバンドを確認できる。
【図6】実施例11で行った、ネコ由来エリスロポエチンのPEG化反応後混合物および精製後のPEG−fEPOのSDS−PAGEの結果を示す。10μl/レーンを電気泳動した。レーン1はPEG化反応混合物、レーン2は陽イオン交換結合画分、レーン3はdi−mPEG−SPA−fEPO、レーン4はmono−mPEG−SPA−fEPO、レーン5は未修飾fEPOの結果を表す。レーン1では30〜40kDa付近にCBB染色されないバンドが存在するがこれは未反応PEGであると考えられる。陽イオン交換クロマトグラフィーによりこのバンドは除去されている(レーン2)。
【図7】実施例13で行った、非PEG化ネコ由来エリスロポエチン、モノ−mPEG−SPA−fEPO及びEPOGENの投与による、ラットの網状赤血球数の変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の特徴とするところは、ネコ由来タンパク質のコード配列を含む外来性遺伝子を有するトランスジェニック鳥類及びその作製方法である。本発明は、また、ネコ由来サイトカインタンパク質及び/又はそれらと実質的に同一の生物学的活性を示すタンパク質のコード配列を含む外来性遺伝子を有するトランスジェニック鳥類及びその作製方法である点を特徴とする。本発明は、また、配列表の配列番号1で示されるネコ由来エリスロポエチン及び/又はそれらと実質的に同一の生物学的活性を示すタンパク質のコード配列の少なくとも一部を含む外来性遺伝子を有するトランスジェニック鳥類及びその作製方法である点を特徴とする。本発明は、また、配列表の配列番号1で示されるネコ由来エリスロポエチン及び/又はそれらと実質的に同一の生物学的活性を示すタンパク質のコード配列を含む外来性遺伝子を有するトランスジェニック鳥類及びその作製方法である点を特徴とする。
【0024】
本発明は、また、トランスジェニック鳥類の作製に複製能欠失型レトロウイルスベクターを用いることを特徴とする。本発明は、また、複製能欠失型レトロウイルスベクターがモロニーマウス白血病ウイルス及び/又はモロニーマウス肉腫ウイルス由来の配列を含むことを特徴とする。本発明は、また、複製能欠失型レトロウイルスベクターがマウス幹細胞ウイルス(MSCV)由来の配列を含むことを特徴とし、その点で、胚細胞や幹細胞への感染性の高いウイルスを用いることを特徴とする。本発明は、また、複製能欠失型レトロウイルスベクターがVSV−Gエンベロープを含むことを特徴とし、その点で、広範囲の哺乳類および非哺乳類の細胞に対し、形質導入が難しい細胞であっても感染可能であることを特徴とする。
【0025】
本発明は、また、組織非特異的なプロモーター遺伝子を含む複製能欠失型レトロウイルスベクターを用いてトランスジェニック鳥類を作製することを特徴とする。本発明は、また、組織非特異的なプロモーター遺伝子がニワトリβアクチンプロモーター遺伝子の一部又は全部を含むことを特徴とする。
【0026】
本発明は、また、組織特異的なプロモーター遺伝子を含む複製能欠失型レトロウイルスベクターを用いてトランスジェニック鳥類を作製することを特徴とする。本発明は、また、組織特異的の組織として卵管特異的なプロモーター遺伝子の一部又は全部を含む組織特異的なプロモーター遺伝子を含むことを特徴とする。本発明は、また、卵管特異的なプロモーター遺伝子としてオボアルブミン、オボトランスフェリン、オボムコイド、オボムチン、リゾチーム、G2グロブリン、G3グロブリン、オボインヒビター、オボグリコプロテイン、オボフラボプロテイン、オボマクログロブリン、シスタチン又はアビジンのプロモーター遺伝子の少なくとも一部若しくは全部又はその組み合わせを含むことを特徴とする。
【0027】
本発明は、また、転写エンハンサー及び/又は調節エレメントを含む複製能欠失型レトロウイルスベクターを用いてトランスジェニック鳥類を作製することを特徴とする。本発明は、また、調節エレメントがwoodchuck post−transcriptional regulatory element配列の一部又は全部を含むことを特徴とする。
【0028】
本発明は、また、鳥類の胚へ外来性遺伝子を含む複製能欠失型レトロウイルスベクターを感染させ、その胚を孵化させることを含む方法によってトランスジェニック鳥類を作製することを特徴とする。本発明は、また、鳥類受精卵を孵卵し、孵卵開始後24時間以後の胚へ外来性遺伝子を含む複製能欠失型レトロウイルスベクターを感染させ、その胚を孵化させることを含む方法によってトランスジェニックを作製することを特徴とする。より好ましくは外来性遺伝子を含む複製能欠失型レトロウイルスベクターを感染させる胚が孵卵開始後32時間以後72時間以前に形成されたものであることを特徴とする。更に好ましくは外来性遺伝子を含む複製能欠失型レトロウイルスベクターを感染させる胚が孵卵開始後48時間以後64時間以前に形成されたものであることを特徴とする。本発明は、また、外来性遺伝子を含む複製能欠失型レトロウイルスベクターの感染方法が胚に形成される心臓内又は血管内へのマイクロインジェクションであることを含む方法であることを特徴とする。
【0029】
本発明は、また、鳥類が家禽である上記のトランスジェニック鳥類であることを特徴とする。より好ましくは鳥類がニワトリである上記のトランスジェニック鳥類であることを特徴とする。
本発明は、また、トランスジェニック鳥類、その子孫、その卵及び/又はその精子であり、上記のトランスジェニック鳥類の作製法のいずれかを含むことを特徴とする。
本発明は、また、トランスジェニック鳥類の血液、その体細胞及び/又はその卵より、抽出、精製、活性化することのいずれか、またはその組み合わせを含む外来性遺伝子由来のタンパク質の生産方法であり上記のトランスジェニック鳥類の作製法のいずれかを含むことを特徴とする。
【0030】
本発明は、また、上記の方法により生産されたネコ由来タンパク質をポリエチレングリコールで化学修飾して得られるポリエチレングリコール修飾ネコ由来タンパク質に関する。
好ましくは、ネコ由来タンパク質がネコ由来サイトカインタンパク質及び/又はそれらと実質的に同一の生物学的活性を示すタンパク質である。より好ましくは、ネコ由来タンパク質が配列表の配列番号1で示されるネコ由来エリスロポエチン及び/又はそれらと実質的に同一の生物学的活性を示すタンパク質の少なくとも一部を含むタンパク質である。更に好ましくは、ネコ由来タンパク質が配列表の配列番号1で示されるネコ由来エリスロポエチン及び/又はそれらと実質的に同一の生物学的活性を示すタンパク質である。
本発明は、また、ネコ由来タンパク質の修飾に用いるポリエチレングリコールの重量平均分子量が5〜40kDaであることを特徴とする。より好ましくは、ポリエチレングリコールの重量平均分子量が20kDaである。
本発明は、また、ポリエチレングリコールの付加数が1又は2以上であって、ポリエチレングリコール修飾された1分子のゲルろ過カラムクロマトグラフィーにより測定した水系溶媒中における見かけの分子量が100kDaから900kDaであるポリエチレングリコール修飾ネコ由来タンパク質に関する。好ましくは、ポリエチレングリコールの付加数が1であって、ポリエチレングリコール修飾された1分子のゲルろ過カラムクロマトグラフィーにより測定した水系溶媒中における見かけの分子量が100kDaから500kDaである。
【0031】
本発明は、また、上記ポリエチレングリコール修飾ネコ由来タンパク質を含むポリエチレングリコール修飾ネコ由来タンパク質組成物に関する。
本発明は、また、上記ポリエチレングリコール修飾ネコ由来タンパク質、又は、ポリエチレングリコール修飾ネコ由来タンパク質組成物を有効成分として含有するネコ用医薬組成物に関する。上記医薬組成物は、ネコエリスロポエチン活性及び薬効持続性を有し、ネコの腎性貧血を治療するための用途に好適である。
本発明は、また、ネコ由来タンパク質に、ポリエチレングリコールのスクシンイミジルエステル誘導体を付加させることからなる、ポリエチレングリコール修飾ネコ由来タンパク質組成物の製造方法に関する。
【0032】
以下に本発明を詳細に説明する。
タンパク質とは2個以上のアミノ酸がペプチド結合したもので、通常ペプチドやオリゴペプチドと呼ばれる鎖長の短いものも含む。また、アミノ酸は修飾を受けていても良い。タンパク質の分泌のためにはタンパク質に分泌シグナル配列が備わっていることが好ましい。また分泌シグナルは自己の配列に限定されるものではない。
【0033】
外来性遺伝子としては特に限定されず、鳥類以外の遺伝子はもちろん、鳥類のものを含んでも良い。トランスジェニック作製に用いる個体が本来有する配列であっても、その個体が本来有する全遺伝子にあらたに遺伝子を導入するので外来性遺伝子と呼ぶ。
【0034】
本発明において、外来性遺伝子はネコ由来タンパク質のコード配列を含んでおり、コード配列の境界は5’末端の開始コドン、及び開始コドンに対応する3’末端の終始コドンにより決定される。5’末端の開始コドン近傍はコザックのコンセンサス配列を含むことが好ましい。コード配列の上流にはリボソーム結合部位が存在していることが好ましい。
外来性遺伝子は上記のネコ由来タンパク質のコード配列以外の非翻訳領域を含んでもよい。
【0035】
ネコ由来タンパク質としては特に限定されないが、ネコ由来サイトカインタンパク質及び/又はそれらと実質的に同一の生物学的活性を示すタンパク質が好ましい。
サイトカインとは、細胞から放出され、免疫、炎症反応の制御作用、抗ウイルス作用、抗腫瘍作用、細胞増殖・分化の調節作用など細胞間相互作用を媒介するタンパク質性因子であり、具体的には、各種インターロイキン、インターフェロンα、β、γ、腫瘍壊死因子、リンホトキシン、造血因子のコロニー刺激因子やエリスロポエチン、増殖因子の上皮増殖因子や繊維芽細胞増殖因子などがあげられる。本発明においては、配列表の配列番号1で示されるネコ由来エリスロポエチン及び/又はそれらと実質的に同一の生物学的活性を示すタンパク質の少なくとも一部を含むものがより好ましく、配列表の配列番号1で示されるネコ由来エリスロポエチン及び/又はそれらと実質的に同一の生物学的活性を示すタンパク質の全部が更に好ましい。
【0036】
本明細書において、「実質的に同一の生物学的活性を示すタンパク質」とは、例えばサイトカインの場合、ネコ由来サイトカインタンパク質のアミノ酸配列中の、1〜10個のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、生理作用の変わらないものを示し、生理作用が同じであれば活性の大小に関係なく実質的に同一とする。
配列番号1において、26番目のアミノ酸まではシグナルペプチドと呼ばれ分泌の際、切断を受け取り除かれる。従って、ネコ由来エリスロポエチンの生物学的活性には影響の少ない領域である。本発明で得られるネコ由来タンパク質は、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列の27番目以降のアミノ酸配列中1〜10個のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を有してもよい。
【0037】
本発明のトランスジェニック鳥類の作製には、レトロウイルスベクターを用いることが好ましい。レトロウイルスベクターは、プラスミド、ウイルス粒子、パッケージング細胞の異なる形態を含む。パッケージング細胞とはウイルス粒子の複製に必要なタンパク質の少なくとも一つをコードする遺伝子を導入した細胞である。
【0038】
本発明で使用するレトロウイルスベクターは、安全性を考慮して、複製能を欠失していることが好ましい。複製能の欠失方法としては、ウイルス粒子の複製に必要な内部コアに含まれるタンパク質(group specific antigen,gag)、逆転写酵素(polymerase,pol)及びエンベロープ糖タンパク質(envelope,env)のうちいずれか又はその組み合わせが発現しないように、コード配列または発現に必要な配列の少なくとも一部または全部を欠失するか、それらが発現不能なように置換、挿入変異を含むことが好ましい。レトロウイルスベクターは、ウイルス毎に挿入可能な遺伝子の長さが限定を受ける為、欠失変異が好ましく、安全性や挿入断片の長さを増やす観点から、gag、pol、envの複数を欠失させることが好ましい。レトロウイルスベクターはウイルス粒子にパッケージされる目印として機能するウイルスパッケージングシグナル(phi)を含んでいることが好ましい。gag領域の一部はウイルスパッケージングシグナルとして機能することもあるため、ウイルス力価向上の観点から、ウイルスベクターは発現不能としたgag領域の少なくとも一部を含んでいることが好ましい(J Virol.1987 May;61(5):1639−46.)。
【0039】
レトロウイルスとしては特に限定されないが、モロニーマウス白血病ウイルスやモロニーマウス肉腫ウイルスやトリ白血病ウイルス(ALV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)由来のウイルス等が挙げられる。モロニーマウス白血病ウイルス及び/又はモロニーマウス肉腫ウイルスが好ましいが、鳥類の胚へ感染させるため、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)やマウス胚性幹細胞ウイルス(MESV)等、胚細胞や幹細胞への感染性の高いウイルスを用いることが好ましい。より好ましくは、MSCVである。本発明の複製能欠失型レトロウイルスベクターは、これらのウイルスに由来する配列を含むものが好ましい。鳥類細胞にこのウイルスベクターを効率的に感染させるため、外皮タンパク質を人為的にウシ水疱性口内炎ウイルス由来のVSV−Gエンベロープタンパク質とすることが好ましいが、このウイルスタイプに限定されるものではない。
【0040】
本発明の複製能欠失型レトロウイルスベクターは、外来性遺伝子が鳥類細胞内で発現するために適当なプロモーター遺伝子の少なくとも一部または全部を含んでいることが好ましい。プロモーター遺伝子とは遺伝子の転写開始部位を決定し、またその頻度を直接的に調節する、DNAまたはRNA上の領域のことである。
【0041】
本発明で用いる複製能欠失型レトロウイルスベクターは、組織非特異的なプロモーター遺伝子、又は、組織特異的なプロモーター遺伝子を含むものが好ましい。
組織特異的なプロモーター遺伝子とは、鳥類の特定の組織・細胞で特別に活性の強いプロモーター遺伝子のことである。組織特異的なプロモーター遺伝子を用いることにより、目的タンパク質の発現が鳥類の発生や生存に悪影響を与える可能性を減少または排除できる利点がある。
【0042】
組織特異的なプロモーター遺伝子としては特に限定されないが、卵管特異的なプロモーター遺伝子をあげることができる。卵管組織は性成熟後に活発に活動することから性成熟後に強く誘導されることが多い。
【0043】
卵管特異的なプロモーター遺伝子として鳥類由来のオボアルブミン、オボトランスフェリン、オボムコイド、オボムチン、リゾチーム、G2グロブリン、G3グロブリン、オボインヒビター、オボグリコプロテイン、オボフラボプロテイン、オボマクログロブリン、シスタチン、アビジンのプロモーター遺伝子等をあげることができる。これらの卵管特異的なプロモーター遺伝子を用いた場合、目的タンパク質を卵白中に高発現させることができ、特に好ましい。
【0044】
組織非特異的なプロモーター遺伝子とは、組織特異的なプロモーター遺伝子でないプロモーター遺伝子のことである。組織非特異的なプロモーター遺伝子としては特に限定されないが、鳥類のほぼ全ての体細胞で活性のあるものをいう。その場合、目的タンパク質は血中にも発現するため雛の段階で発現の可否を検出できるという利点がある。
【0045】
組織非特異的なプロモーター遺伝子としては特に限定されないが、βアクチンプロモーター遺伝子、EF1αプロモーター遺伝子、チミジンキナーゼプロモーター遺伝子やシミアンウイルス40(SV40)プロモーター遺伝子、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター遺伝子、ラウスザルコーマウイルス(RSV)プロモーター遺伝子等のウイルス由来プロモーター遺伝子が挙げられる。他に、テトラサイクリン誘導型プロモーター遺伝子のような、組織非特異的な誘導型プロモーター遺伝子を用いても良い。組織非特異的なプロモーター遺伝子としては、ニワトリβアクチンプロモーター遺伝子の一部又は全部を含むことが好ましい。
【0046】
本発明で用いる複製能欠失型レトロウイルスベクターは、転写エンハンサー及び/又は調節エレメントを含んでいてもよい。転写エンハンサーはプロモーター遺伝子からの転写を促進する配列であるが、単独では転写を起こせないDNAまたはRNA上の領域のことである。本来機能しているものとは異なるプロモーター遺伝子に連結した場合にも機能することが多いのでプロモーター遺伝子との組み合わせについては限定しない。転写エンハンサーとしては、特に限定されないが、SV40、CMV、チミジンキナーゼエンハンサー、ステロイド応答エレメントやリゾチームエンハンサー等が挙げられる。調節エレメントは、転写調節や、転写後のRNAの安定化に寄与する単独では転写を起こせないDNAまたはRNA上の領域のことである。調節エレメントとしては特に限定されないが、ウッドチャック肝炎ウイルス由来調節エレメント(woodchuck post−transcriptional regulatory element:WPRE、米国特許6136597号明細書)等が挙げられる。
【0047】
レトロウイルスベクターは、5’末端、3’末端に長い反復配列(long terminal repeat,LTR)の少なくとも一部を含む。LTRは転写プロモーター遺伝子やpolyA付加シグナルを持つことから、プロモーター遺伝子やターミネーター遺伝子として利用し得る。レトロウイルスベクターにおいて、目的タンパク質のコード配列、プロモーター遺伝子、転写エンハンサー及び/又は調節エレメントは、5’LTRと3’LTRの間に含まれる。LTR以外のプロモーターを用いる際は、プロモーターの下流に目的タンパク質のコード配列を接続した構造を有することが好ましい。レトロウイルスベクターが転写され、ウイルス粒子が作製されるためには、5’LTRから3’LTRの間にターミネーターやpolyAシグナルを含まないことが好ましい。
【0048】
本発明に用いるレトロウイルスベクターには、マーカー遺伝子が含まれていてもよい。マーカー遺伝子は、正しく遺伝子導入された細胞の同定及び単離の目印となるタンパク質をコードする遺伝子である。マーカー遺伝子としては特に限定されないが、グリーン・フルオレッセント・プロテイン(GFP)やシアン・フルオレッセント・プロテイン(CFP)、ルシフェラーゼ等の蛍光タンパク質の遺伝子;ネオマイシン耐性(Neo)、ハイグロマイシン耐性(Hyg)ピューロマイシン耐性(Puro)等の薬剤耐性遺伝子;他にチミジンキナーゼ、ジヒドロフォレート・レダクターゼ、アミノグルコシド・ホスホトランスフェラーゼ、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ、β−ラクタマーゼ、β−ガラクトシダーゼ等の遺伝子が挙げられる。マーカー遺伝子は、プロモーター遺伝子や発現に必要な要素を伴っていることが好ましい。
【0049】
次に、本発明で好適に用いられる複製能欠失型レトロウイルスベクターの調製法について、好ましい一態様を説明する。
本発明で用いられる複製能欠失型レトロウイルスベクターは複製に必要とされるgag、polおよびenv遺伝子を欠失している。gag、pol遺伝子を保有するパッケージング細胞に目的タンパク質を発現可能な複製能欠失型レトロウイルスプラスミドとVSV−G発現プラスミドを共導入し、培養上清をウイルス液とする。あるいは、望ましくは、上記ウイルス液を感染させたパッケージング細胞にVSV−G発現プラスミドを導入し、培養上清をウイルス液とする。ウイルス液は、必要に応じて濃縮することが好ましい。
複製能欠失型レトロウイルスベクターの調製は、このような方法に限定されるものではない。
【0050】
上記ウイルス液において、複製能欠失型レトロウイルスベクターの力価(タイター)は、1×10〜1×1014cfu/mlが好ましく、1×10〜1×1014cfu/mlがより好ましい。
上記ウイルス液の力価は、NIH3T3細胞(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション CRL−1658)にウイルス液を添加したとき、感染した細胞の数によって定義する。具体的には、6ウェル培養プレートの各ウェル(底面積約9.4cm)に存在する5×10のNIH3T3細胞に、10から10倍の希釈率で希釈したウイルス溶液を1ml加え、マーカーであるネオマイシン耐性遺伝子を発現している細胞の割合を、G418(ネオマイシン)に対する耐性から調べることによりウイルス液の力価を測定する。
【0051】
複製能欠失型レトロウイルスベクターの鳥類胚への感染について説明する。
本発明のトランスジェニック鳥類は、鳥類の胚へ外来性遺伝子を含む複製能欠失型レトロウイルスベクターを感染させ、その胚を孵化させることを含む方法によって好適に得られる。
胚とは多細胞動物の個体発生初期のものであり、卵膜または卵殻に包まれているか、母体内にあって、独立して食物をとる以前のものである。孵化とは、卵膜または卵殻から出ること及び独立して食物をとるようになることである。
【0052】
複製能欠失型レトロウイルスベクターを感染させる胚は、孵卵開始から24時間以上経過していることが望ましい。より望ましくは孵卵開始から32時間以後72時間以前の胚である。更に望ましくは、48時間以後64時間以前の胚である。感染させる、つまりウイルス液を導入する場所としては、胚に形成される心臓内あるいは血管内が好ましい。遺伝子導入効率の高いG0トランスジェニックキメラ鳥類を作製する上で、心臓の拍動を観察することができる初期の段階(心臓が拍動を開始してから6時間以内)に、遺伝子を導入することが好ましい。それは、血流に乗せて全身に遺伝子を運ぶという観点と、細胞数が少ないという観点による。
【0053】
孵卵とは、産卵直後及び産卵直後に発生可能でない環境に保管した鳥類受精卵を発生可能な環境に保持することである。例えばニワトリならば最適な孵卵温度は立体孵卵器では37.2〜37.8℃(平面孵卵器等では卵の上端で38.9〜39.4℃)、最適な湿度は40〜70%程度の環境が発生に最適な環境であるが、この環境に限定されない。また、孵卵の際には転卵をおこなう。転卵は、角度30°以上で1日2回以上おこなうのが好ましいが、その限りではない。
【0054】
マイクロインジェクションは、顕微鏡下で先端を細くした微小ガラス管等を用い、特定の場所に直接ウイルス液を導入する方法である。本研究では、心臓や血管という特定の場所にウイルス液を導入するため、リポフェクション法やエレクトロポレーション法といった他の遺伝子導入法よりマイクロインジェクションが好ましい。
【0055】
本発明で使用する鳥類としては特に限定さないが、家畜として利用可能な家禽鳥類であることが好ましい。家禽鳥類としては、ニワトリ、七面鳥、カモ、ダチョウ、ウズラ、アヒル等を挙げることができる。なかでもニワトリは入手が容易で、産卵種としても多産であり、卵も大きく大量飼育方法が確立している点で特に好ましい。
【0056】
上述のように、鳥類の胚へ外来性遺伝子を含む複製能欠失型レトロウイルスベクターを感染させ、その胚を孵化させることによりG0トランスジェニックキメラ鳥類が得られる。
生殖細胞に外来性遺伝子を保有するG0トランスジェニックキメラ鳥類を野生型鳥類、G0トランスジェニックキメラ鳥類又はその子孫と交配させ、孵化したヒナを選別することによりG1トランスジェニック鳥類を得ることができる。G0トランスジェニックキメラ鳥類は、全ての細胞に外来性遺伝子が導入される確立は低く、ほとんどの場合外来性遺伝子が導入された細胞と野生型の細胞との異なる遺伝子型の細胞が共存しているキメラ状態である。一方で、G1トランスジェニック鳥類は、全ての体細胞に均一に導入遺伝子を保有している。体細胞や生殖細胞への遺伝子導入の確認は血液、体細胞、精子、卵由来のDNAやRNAをPCR法等によって調べることによって確認できる。また、目的タンパク質の発現からも判断できる。目的タンパク質の発現はELISA法や電気泳動法、目的タンパク質の活性測定等によって調べる事ができる。
【0057】
G2以降の世代のトランスジェニック鳥類は、G1トランスジェニック鳥類を交配させることにより作製される。交配型はG1トランスジェニックオスと野生型メス、G1トランスジェニックメスと野生型オス、G1トランスジェニックのオスとメス等が考えられ、さらに子孫とその親による戻し交配も可能である。なかでもG1オスと野生型メスの交配型は、1羽のG1オスに対し複数の野生型メスを交配させることができるため、効率の点から好ましい。
【0058】
本発明の目的タンパク質の生産方法は、前述のトランスジェニック鳥類から目的タンパク質を回収することを特徴とする。より詳細には、作製されたトランスジェニック鳥類の血液、その体細胞及び/又はその卵から目的タンパク質を抽出、精製、活性化することのいずれか又はその組み合わせにより回収することを特徴とする。抽出、精製に用いる方法としては特に限定されず、例えば、分別沈殿、遠心法、二相分離、限外濾過、膜分離、クロマトグラフィー、免疫化学的方法、結晶化することのいずれか及び/又はその組み合わせを含む方法などが挙げられる。
【0059】
本発明のトランスジェニック鳥類により生産されるネコ由来タンパク質は、後述の実施例では血清中24μg/ml、卵白中420μg/ml程度である。米国特許出願公開2004/0019922および2004/0019923が開示するヒト由来エリスロポエチン産生トランスジェニック鳥類は、エリスロポエチン産生量が10μg/ml程度であるので、本発明のトランスジェニック鳥類は、より高濃度の目的タンパク質を産出することが可能である。
【0060】
本発明は、また、上記の方法により生産されたネコ由来タンパク質をポリエチレングリコール(PEG)で化学修飾して得られるPEG修飾ネコ由来タンパク質に関する。ネコ由来タンパク質としては、上述と同様のものが挙げられる。
ネコ由来タンパク質は、PEGを付加する前に精製しておくことが好ましい。ネコ由来タンパク質の精製は、トランスジェニック鳥類の卵とくに卵白成分を純水もしくは平衡塩類溶液で希釈した溶液から、カラム法やろ過法で行うことができる。希釈は卵白の粘性を低減し、カラム法を円滑に行う目的で行われ、粘性低減のためには高倍に希釈することが望ましい反面、容積が増えると回収が困難になることから、2倍から10倍が好ましく、5倍から6倍に希釈するのがより好ましい。
【0061】
この卵白溶液から目的とするネコ由来タンパク質を回収するため、塩析法、吸着カラムクロマトグラフ法、イオン交換カラムクロマトグラフ法、ゲルろ過カラムクロマトグラフ法、抗体カラム法を単独、もしくは組み合わせて精製するが、これらのみに限定されるものではない。吸着カラムクロマトグラフ法としては、ブルーセファロースクロマトグラフィー、ヘパリンクロマトグラフィー等があり、イオン交換カラムクロマトグラフ法としては、陰イオン交換クロマトグラフィー法等がある。
【0062】
エリスロポエチンをマウス、ラット等のげっ歯類で造血効果を確認すると、血中単回投与後4日目に網状赤血球の増加が最大となり、7日目に効果がなくなることが報告されているが、長鎖分子であるポリエチレングリコール(PEG)を付加すると肝臓での代謝が阻害され、血中寿命が延びることにより薬効持続期間が延長され、ラット造血実験では2倍の14日間効果が持続することが知られている。PEGのN−ヒドロキシスクシンイミジル活性化エステル誘導体は、タンパク分子中のリジン残基及びN末端に結合させることが可能である。本発明は、ネコ由来エリスロポエチンにPEGを付加し、血中寿命を長くすることを特徴とするが、これに限定されない。
【0063】
付与されるPEGの分子量の増大に伴い、PEG−EPO複合体の血中寿命は増大する。しかし、極めて高分子のPEGを付加することはEPOの造血活性を阻害するため(WO02/032957)、PEGの重量平均分子量は、5〜40kDaがインビボ造血効果を最大にする上で好ましく、10〜30kDaがより好ましい。更に好ましくは20kDaである。PEGの重量平均分子量は、MALDI−TOFにより測定された値である。
またネコ由来エリスロポエチンには少なくとも3個所のPEG結合可能部位があり、ひとつのタンパク分子に結合するPEGは1(モノ)、2(ジ)、3(トリ)分子が可能であるが、複数箇所にPEGが結合することでEPOのレセプター結合能が阻害されインビボ活性を低下させることから、モノ体が好ましい。
【0064】
本発明のPEG修飾ネコ由来タンパク質は、PEGの付加数が1又は2以上であって、PEG修飾された1分子のゲルろ過カラムクロマトグラフィーにより測定した水系溶媒中における見かけの分子量が100kDaから900kDaであるものが好ましく、PEGの付加数が1であって、上記見かけの分子量が100kDaから500kDaであるものがより好ましい。
本明細書において、上記ゲルろ過カラムクロマトグラフィーによる見かけの分子量の測定は、低圧クロマト装置 AKTA explorer 100(アマシャム社製)及びゲルろ過カラムSuperdex 200 10/300(アマシャム社製)を用いて行う。
【0065】
本発明は、また、PEG修飾ネコ由来タンパク質組成物に関する。
本発明のPEG修飾ネコ由来タンパク質組成物は、PEGの付加数が1又は2以上であって、PEG修飾された1分子の見かけの分子量が100kDaから900kDaであるPEG修飾ネコ由来タンパク質、PEGの付加数が1であって、PEG修飾された1分子の見かけの分子量が100kDaから500kDaであるPEG修飾ネコ由来タンパク質、及び/または、上述の生産方法で得られたPEG未修飾ネコ由来タンパク質の混合物からなり、少なくとも1種のPEG修飾ネコ由来タンパク質を含む。
【0066】
本発明は、また、上記PEG修飾ネコ由来タンパク質又はPEG修飾ネコ由来タンパク質組成物を有効成分として含有するネコ用医薬組成物に関する。
本発明のネコ用医薬組成物は、ネコエリスロポエチン活性及び薬効持続性を有するので、ネコの腎性貧血を治療するために好適に用いることができる。
本発明のネコ用医薬組成物は、非経口的に投与することができる。非経口投与として、静脈内注射、点滴静脈内注射、皮下注射、経粘膜投与(例えば経肺、経鼻など)、経皮投与などの投与経路が挙げられる。
本発明のネコ用医薬組成物の投与量としては特に制限されず、個々の患蓄のエリスロポエチンに対する反応性の違い等から一義的には決められないが、例えばPEG修飾ネコ由来タンパク質に換算して、週2回静脈注射による投与でネコ1頭あたり0.5〜50μg程度を投与すればよい。
【0067】
本発明は、また、上記ネコ由来タンパク質に、PEGのスクシンイミジルエステル誘導体を付加させることからなる、PEG修飾ネコ由来タンパク質組成物の製造方法に関する。
PEGのスクシンイミジルエステル誘導体としては特に限定されず、例えば、スクシンイミジルプロピオン酸エステル、スクシンイミジルアルファメチルブタン酸エステル等が挙げられる。
PEGのスクシンイミジルエステル誘導体の添加量は、ネコ由来タンパク質に対して、(ネコ由来タンパク質):(PEGのスクシンイミジルエステル誘導体)で1:1〜1:10のモル比が好ましい。
反応温度及び反応時間は特に限定されないが、4〜37℃で0.5〜2時間が好ましい。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。遺伝子操作について特に記述のないものに関しては代表的な方法に従った(J.Sambrook,E.F.Fritsch,t.Maniatis;Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2nd Ed,Cold Spring Harbor Laboratory)。細胞培養について特に記述のないものに関しては代表的な方法に従った(小山秀機編集「細胞培養ラボマニュアル」シュプリンガー・フェアラーク東京 第1判)。商品名を記載している場合は特に記載のない限り添付の説明書の指示に従った。
【0069】
(実施例1)
ネコ由来エリスロポエチン遺伝子発現用プラスミドpMSCVneobactfEPOの構築
pMSCVneobact(配列番号2)は公知文献(Gene Ther.1994 MAR;1(2):136−8.)とインターネットの情報(http://www.ncbi.nlm.NIH.gov/他)を元に全合成し、pUC19(ジェンバンク アクセッション番号X02514)のEheI(235)〜PvuII(628)間に挿入した(東洋紡績社製)。これを、HindIII(タカラバイオ社製)で切断し、Alkaline Phosphatase BAP(タカラバイオ社製)処理後、MinElute Reaction Cleanup Kit(QIAGEN社製)により精製、回収した。これを、1%アガロースゲル電気泳動し、目的断片をMinElute Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)により精製、回収した(実施例1ベクター断片)。
【0070】
pUCfEPO(配列番号3)は911〜1489bpにネコ由来エリスロポエチンの配列をコードする。DNAポリメラーゼとしてPyrobest DNA Polymerase(タカラバイオ社製)を用い、pUCfEPOを鋳型として、2つの化学合成オリゴヌクレオチド5’−agccaagcttaccatggggtcgtgcgaatgtcctgccctgctgcttc−3’(配列番号4)及び5’−cgataagcttacgcgttcacctgtctcctcttcggcag−3’(配列番号5)(下線部はHindIII制限酵素部位)をプライマーとするPCRにより増幅した断片をMinElute PCR Purification Kit(QIAGEN社製)により精製、回収しHindIII(タカラバイオ社製)で切断した。これを、1%アガロースゲル電気泳動し、目的断片をMinElute Gel Extraction Kit(QIAGEN社製)により精製、回収した(実施例1インサート断片)。
【0071】
実施例1ベクター断片と実施例1インサート断片をDNA Ligation Kit Ver.2.1(タカラバイオ社製)を用い連結し、これをE.coli DH5alpha Competent Cells(タカラバイオ社製)を用い、形質転換した。形質転換株より図1の構造を持つプラスミドを選択し、pMSCVneobactfEPOとした。
なお、図1中のマーカー遺伝子beta−lactamase、ウイルスパッケージングシグナル配列phi+、マーカー遺伝子Neomycin resistance gene、組織非特異的なプロモーター遺伝子beta−actin promoter、並びに、長い反復配列5LTR及び3LTRはすべて、pMSCVneobactに由来するものである。
【0072】
(実施例2)
pMSCVneobactfEPOとpVSV−Gを用いたレトロウイルスベクターの調製
以後特に記述の無い限り、培地は10%の牛胎児血清(Fetal Bovine Serum,FBS)と50units/mlのペニシリン、ストレプトマイシンを含むダルベッコ変法イーグル培地(Dulbecco‘s Modified Eagle Medium,DMEM)を用いた(ギブコ社製)。培養は37℃、CO5%でおこなった。レトロウイルスベクターに用いるプラスミドDNAはEndo Free Plasmid Maxi Kit(QIAGEN社製)を用いた。
【0073】
実施例1で構築したプラスミドpMSCVneobactfEPOよりレトロウイルスベクターを調製するため、gag、pol遺伝子を持つパッケージング細胞GP293を、コラーゲンコートされた直径100mmの培養ディッシュに細胞数5×10個/ディッシュ(70%コンフルエント)となるように播種した(翌日90%コンフルエントとなるようにする)。次の日、培地を取り除き、7.2mlの培地と10μlの25mMクロロキン(シグマ社製)を加えて、更に1時間培養した。56μlのLipofectamine.2000(インビトロジェン社製)を1.4mlのOpti−MEMI培地(ギブコ社製)に懸濁し、室温で5分間おいた。12μgのpMSCVneobactfEPOと12μgのpVSV−Gを1.4mlのOpti−MEMI培地に懸濁した。Lipofectamine.2000溶液とプラスミドDNA溶液を混合し、室温で20分おいた。これを、培養ディッシュに全量加え、6時間培養した。6時間後、培地を取り除き9mlの培地と200μlの1M HEPES Buffer Solution(ギブコ社製)を加え、更に24時間培養した。
【0074】
培養上清を0.45μmのセルロースアセテートフィルター(アドバンテック社製)に通し、遠心管に集めた。超遠心機CS100GXL(日立工機社製)を用い、28000rpm(50000g)で1.5時間遠心分離した。上清を取り除き、沈殿に20μlのTNE緩衝液(50mM Tris−HCl(pH7.8)、130mM NaCl、1mM EDTA)を加え、4℃で一晩放置後、よく懸濁して小型高速遠心機で12000rpmで1分遠心分離し、上清を0.45μmのデュラポアウルトラフリーフィルター(アドバンテック社製)に通しウイルス液とした。
【0075】
(実施例3)
ウイルス力価の測定
ウイルス液の力価は、NIH3T3細胞(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション CRL−1658)にウイルス液を添加したとき、感染した細胞の数によって定義した。6ウェル培養プレートの各ウェル(底面積約9.4cm)に存在する5×10のNIH3T3細胞に、10から10倍の希釈率で希釈した実施例2のウイルス溶液を1ml加え、マーカーであるネオマイシン耐性遺伝子を発現している細胞の割合を、G418に対する耐性から調べることによりウイルス液の力価を測定した。10倍希釈で4コロニー現れた場合、ウイルス力価は、4×10cfu/mlとなる。
【0076】
具体的には、力価測定開始の前日にNIH3T3細胞を6ウェル培養プレートに5×10個/ウェルとなるよう播種し培養した。翌日、細胞の培地を9μg/mlのポリブレンを含有する培地900μg/mlと交換し、ウイルス液を培地で10−1〜10−5に希釈し、それぞれ100μlをウェルに添加して感染させた(ポリブレン終濃度8μl/ml)。4〜6時間培養後、1mlの培地を更に加えた。次の日、培地を800μg/mlのG418を含む培地と交換し、以後3〜4日おきにG418含有培地と交換した。感染から約2週間後プレートをメチレンブルー液で染色し、得られたコロニー数を測定し力価を求めた。測定の結果を表1に示す。
【0077】
(実施例4)
ネコ由来エリスロポエチン安定パッケージング細胞の選択
ウイルス感染の前日に24ウェル培養プレートにGP293細胞を1.5×10個/ウェルとなるよう播種し培養した。ウイルス感染の当日10μg/mlのポリブレンを含有する培地1mlと交換した。これに、(実施例2)で作製したウイルス液を感染させた。以後、細胞を限界希釈法によりクローン化する。具体的には、次の日、細胞を800μg/mlのG418を含む培地に懸濁し、同じ培地に10個/mlとなるように希釈した。希釈した細胞を96ウェル培養プレートに100μlずつ播種し(ウェルに一個の細胞が入るようにする)、細胞増殖速度が早く、GP293と形態の近い細胞を選択し、ネコ由来エリスロポエチン安定パッケージング細胞クローンを得た。
【0078】
(実施例5)
ネコ由来エリスロポエチン安定パッケージング細胞とpVSV−Gを用いたレトロウイルスベクターの調製
直径100mmのコラーゲンコートされた培養ディッシュに実施例4で得られたネコ由来エリスロポエチン安定パッケージング細胞を5×10個(70%コンフルエント)となるように播種した。翌日90%コンフルエントとなるようにする。次の日、培地を取り除き、7.2mlの培地と10μlの25mMクロロキンを加えて、更に1時間培養した。56μlのLipofectamine.2000を1.4mlのOpti−MEMI培地に懸濁し、室温で5分間おいた。12μgのpVSV−Gを1.4mlのOpti−MEMI培地に懸濁する。Lipofectamine.2000溶液とプラスミドDNA溶液を混合し、室温で20分おいた。これを、培養ディッシュに加え、6時間培養した。培地を取り除き、9mlの培地と200μlの1M HEPES Buffer Solutionを加え、24時間培養した。培養上清を0.45μmのセルロースアセテートフィルターに通し、遠心管に集めた。超遠心機を用い、28000rpm(50000g)で1.5時間遠心分離した。上清を取り除き、沈殿に20μlのTNE緩衝液を加え、4℃で一晩放置後、よく懸濁して小型高速遠心機で12000rpmで1分遠心分離し、上清を0.45μmのデュラポアウルトラフリーフィルターに通しウイルス液とした。このようにして、10cfu/ml以上の力価を持つウイルス液が得られた。
【0079】
(実施例6)
WPRE配列を含むネコ由来エリスロポエチン遺伝子発現用プラスミドpMSCVneobactfEPOwpreの構築とレトロウイルスベクターの調製
pMSCVneobactfEPOを、ClaI(タカラバイオ社製)で切断し、BAP処理後、精製、回収した。精製、回収には(実施例1)記載の製品を用いた。これを、1%アガロースゲル電気泳動し、目的断片を精製、回収した(実施例6ベクター断片)。2つの化学合成オリゴヌクレオチド5’−ccatcgataatcaacctctggattacaaaatttgtga−3’(配列番号6)及び5’−ccatcgatcaggcggggaggcg−3’(配列番号7)(下線部はClaI制限酵素部位)をプライマーとし、WPRE配列を含むpWHV8(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション45097)からPCRにより増幅した断片を精製、回収しClaIで切断した。これを、1%アガロースゲル電気泳動し、目的断片を精製、回収した(実施例6インサート断片)。
【0080】
実施例6ベクター断片と実施例6インサート断片を連結し、これをE.coli DH5alphaに形質転換した。形質転換株より図2の構造を持つプラスミドを選択し、pMSCVneobactfEPOwpreとした。先に述べた実施例と同様にして安定パッケージング細胞やレトロウイルスベクターを調製できる。WPRE配列を用いると高力価の安定パッケージング細胞を得やすい。WPRE配列により転写活性が増強されているためやRNAが安定化されているためだと考えられる。
【0081】
(実施例7)
ニワトリ胚へのレトロウイルスベクターのマイクロインジェクションと人工孵化
マイクロインジェクションと人工孵化は無菌条件下でおこなう。ニワトリ受精卵(城山種鶏場)の外側を消毒液(昭和フランキ社製)及びエタノールで除菌する。孵卵機P−008(B)型(昭和フランキ社製)を38℃、湿度50〜60%の環境になるようセットし、電源を入れた時刻を孵卵開始時刻(0時間)とし、以後15分毎に90°転卵しながら孵卵を行った。
【0082】
孵卵開始から約55時間経過後、孵卵機から卵を取り出し、その鋭端部を直径3.5cmの円形にダイヤモンド刃(刃先径20mm、シャフト径2.35mm)を付けたミニルーター(プロクソン社製)で切り取った。ニワトリ二黄卵(城山種鶏場)の鋭端部を直径4.5cmに切り取り、中身を捨てた卵殻に受精卵の中身を移し、注射器の内筒で胚を上方へ移動させた。実体顕微鏡システムSZX12(オリンパス社製)下で、フェムトチップII(エッペンドルフ社製)にウイルス液を注入し、フェムトジェット(エッペンドルフ社製)を用い、実施例5又は6のウイルス溶液約2μlをマイクロインジェクションした。
【0083】
卵白を糊として約8×8cmに切ったサランラップ(旭化成社製)でこの穴を塞ぎ、孵卵機に戻し孵卵を続けた。孵卵機の転卵を30分毎に30°転卵に変更した。孵卵開始から20日目にサランラップに20Gの注射針で20個程度穴を開け、孵卵機に60cc/minで酸素を供給し孵卵を行った。雛がハシ打ちを始めたら卵殻を割って孵化させた。この人工孵化による孵化率を表1に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
(実施例8)
ネコ由来エリスロポエチン発現トランスジェニックニワトリの血中、卵中の発現の確認
(実施例7)により誕生した雛を飼育して成長させた。飼料として、幼雛SXセーフティー及びネオセーフティー17(豊橋飼料社製)を用いた。トランスジェニックニワトリからの採血は翼下静脈よりおこなった。採血した血液はエッペンドルフチューブに入れ、室温で30分以上放置した後、小型高速遠心機で4℃、3000rpmで5分間遠心分離し、血清と血餅を完全に分離し、上清を血清とした。卵からの抽出の際には、卵白及び卵黄を分離した。卵黄からの抽出の際は、卵黄中央にシリンジをさし、卵白が入らないように抜き取った。卵白は、超音波や物理的手法により全体を一様となるように調製した。調製したサンプルはアッセイ時まで−80℃で凍結保存した。凍結融解を避けるため、溶解は37℃で迅速に行うことが好ましい。
【0086】
ネコ由来エリスロポエチンの活性は、EPO依存性細胞株であるBaF/EPORによる細胞増殖アッセイ(特開平10−94393)によりおこなった。細胞増殖アッセイはエポジン(中外製薬社製)を標準エリスロポエチンとして、増殖の検量線を描きそれを元に未知サンプルのエリスロポエチン活性を測った。BaF/EPOR細胞用培地として5%の牛胎児血清(Fetal Bovine Serum,FBS)と50units/mlのペニシリン、ストレプトマイシンを含むRPMI1640リキッド培地(ニッスイ社製)を用いた。通常のBaF/EPOR細胞の培養の際には終濃度1U/mlとなるようにエポジンを加えた。細胞増殖アッセイには対数増殖期にある細胞を用いた。
【0087】
BaF/EPOR細胞で細胞増殖アッセイをおこなうため、まず培地中のエポジンを除去した。培養したBaF/EPOR細胞を1000rpmで5分間遠心分離した。上清を取り除き、沈殿にエポジンを含まない培地を10ml加え懸濁した。同様の操作を3度行い培地中のエポジンを除去した。細胞を計数し、エポジンを含まない培地で55555Cells/mlの濃度になるように希釈した。96穴マイクロタイタープレートの各ウェルに90μlずつ播種した。これに、培地で25、16、10、6.4、4.0、2.5、1.6、1.0U/mlとなるよう希釈したエポジンを10μlずつ加え、一様になるよう懸濁した(エリスロポエチンの終濃度はそれぞれ2.5、1.6、1.0、0.64、0.4、0.25、0.16、0.1U/mlとなる)。アッセイに用いるサンプルは培地で2〜4倍程度ずつ段階希釈し、検量線の測定範囲内に入るようにし、播種した細胞中に10μlずつ加え、一様になるよう懸濁した。標準サンプル、未知サンプル共に同じものを3点測った。2日間培養し、Cell Counting Kit−8(同人化学研究所社製)溶液を各ウェルに10μlずつ添加した。1〜4時間呈色反応を行った後、0.1mol/lの塩酸を10μl加え反応を停止し、マイクロプレートリーダーを用い、450nmの吸光度を測定した。標準サンプルの測定結果を対数近似し、近似式を求めた。求めた近似式より未知サンプルの活性を換算した。
【0088】
発現量が最大のもの(個体番号10−1)で活性は血清中5300IU/ml、卵白中92000IU/mlであった。G0トランスジェニックの発現結果を図3に示す。インジェクション手技習熟後は、孵化したもののG0トランスジェニックの出現頻度は100%であった。但し、高発現の個体は死に至りやすい。糖鎖の付加の程度によって変わるが、エリスロポエチンの比活性は220000IU/mg(Eur J Biochem.1990 Dec 12;194(2):457−62.)程度であるので、それから換算すると血清中24μg/ml、卵白中420μg/ml程度であると推定できる。ネコとヒトのエリスロポエチンのアミノ酸配列の違いにより、RIA法を用いるリコンビジェンEPOキット(三菱化学ヤトロン社製)では正しく定量できなかった。
【0089】
次に、個体番号6−3の血中及び卵中由来のネコ由来エリスロポエチンのウエスタンブロットをおこなった。サンプルはe・パジェル12.5%(アトー社製)を用い変性条件で電気泳動し、PVDF膜に転写後、10%スキムミルク、0.05%Tween20を含むPBSでブロッキングし、一次抗体としてウサギ抗ヒトEPO抗体(G−Tリサーチ プロダクツ社製)、二次抗体としてヤギ抗ウサギIgG−HRP抗体(ザイメッド ラボラトリーズ社製)、を用い、ECL Plus Western Blotting Detection SystemとHyperfilm ECL(アマシャム社製)で検出した。ウエスタンブロットの結果を図4に示す。
【0090】
(実施例9)
卵白からのネコ由来エリスロポエチンの精製
実施例8により卵白中にネコ由来エリスロポエチン活性が確認された個体の卵を回収し、卵白よりネコ由来エリスロポエチンを回収・精製した。
カラムにアプライするサンプルは全て、使用直前に孔径0.45μmのMillex−HV(ミリポア社製)にてシリンジろ過を行った。ろ過困難な場合には、孔径2μmのプラディスク25(Whatman社製)により予めろ過した後、Millexによるろ過を行った。
精製過程でのネコ由来エリスロポエチン含有量の測定は、Bicore3000(BIACORE社製)にて行った。Sensor Chip CM5 reserch grade(BIACORE社製)に抗ヒトエリスロポエチンモノクローナル抗体(R&Dシステム社製)をアミンカップリングキット(BIACORE社製)でNHS固定化して測定用チップとし、エポジンを標準物質として、装置の定量用プログラムを用いて濃度を測定した。
【0091】
卵白をカラムにアプライするために、粘性を低下させる前処理を行った。冷蔵保存しておいた卵を室温に戻して割卵し、卵の殻等を用いて卵黄と卵白を分離した後、卵白のみを回収して重量を測定した。卵白をスターラーで攪拌して濃厚卵白を解きほぐし、5倍量の超純水を加え更に攪拌した。この時点で卵白液のpHは9.0〜9.3程度であった。これに1N HClを適宜加えてpH5.0に調整し、15分間以上攪拌した後、9,500G×30分間、4℃で遠心分離した。上清に1M NaOHを加えてpH7.0に調整し、1M Trisバッファー、pH7.0を終濃度50mMとなるよう加えた。このステップにおけるネコ由来エリスロポエチン回収率は最大95%であった。
【0092】
次いで、ブルーセファロースクロマトグラフィーを行った。前処理後の卵白液500ml(卵白2〜3個分)を、50mM Tris、pH7.0で平衡化した50mlのBlue Sepharose 6 Fast Flow カラム(アマシャム社製)にアプライした。カラムを50mM Tris、pH7.0で十分洗浄した後、200mlの1M NaCl、50mM Tris、pH7.0で溶出した。溶出画分を、4℃の低温室で20mM MES、pH6.2で常法にて一晩透析し、バッファー交換を行った。このステップにおけるネコ由来エリスロポエチン回収率は最大98%であった。
【0093】
次いで、ヘパリンクロマトグラフィーを行った。20mM MES、pH6.2で平衡化したHiPrep 16/10 Heparin FFカラム(アマシャム社製)に、ブルーセファロース溶出画分(透析後)を2回に分けてアプライし、それぞれ20mM MES、pH6.2でカラムを十分に洗浄した後、NaCl濃度を80mMまで上昇させるグラジエント溶出を行った。カラムは毎回1M NaClおよび0.1M NaOHで再生した。Biacoreにてネコ由来エリスロポエチンの存在が確認された画分を回収した。このステップでのネコ由来エリスロポエチンの回収率は最大80%であった。
【0094】
次いで、脱塩カラムによるバッファー交換を行った。ヘパリンセファロース溶出画分を分画分子量5,000のビバスピン20(ザルトリウス社製)により総量30〜40ml程度に濃縮し、25mM Tris、pH7.0で平衡化したHiPrep 26/10 Desalting(アマシャム社製)に10mlずつアプライし、同バッファーで溶出し、タンパク質を含む画分を回収した。1M NaOHでpH9.0に調整し、さらに1M NaClで電気伝導度が3.0〜3.2mS/cmとなるよう調整した。このステップにおけるネコ由来エリスロポエチン回収率は最大95%であった。
【0095】
次いで、陰イオン交換カラムクロマトグラフィーを行った。バッファー交換後のサンプルを、25mM Tris、pH9.0、電気伝導度3.0〜3.2mS/cmで平衡化した5mlのHiTrap DEAE FF カラム(アマシャム社製)に2回に分けてアプライし、それぞれ素通り画分を回収した。カラムは毎回1M NaClで再生した。分画分子量5,000のビバスピン20により、総量2〜3ml程度まで濃縮した。このステップでのネコ由来エリスロポエチン回収率は、最大92%であった。
ゲルろ過クロマトグラフィーを行った。濃縮後のサンプルを、50mM ホウ酸バッファー、pH9.0もしくは他の適当なバッファーで平衡化したSuperdex 200 10/300 GLカラム(アマシャム社製)にアプライして同バッファーで溶出した。Biacoreにてネコ由来エリスロポエチンの存在が確認された画分を回収し、分画分子量5,000のビバスピン6にて総量1〜2ml程度にまで濃縮した。このステップでのネコ由来エリスロポエチン回収率は最大93%であった。
【0096】
精製各ステップでの回収画分について、SDS−PAGEを行った。サンプルはe・パジェル12.5%を用いて、変性条件で泳動し、Bio−Safe Coomassie Stain(Bio−Rad社製)で検出した。個体番号10−1のSDS−PAGEの結果を図5に示す。
タンパク質濃度についてはDCプロテインアッセイ(Bio−Rad社製)にてBSAを標準として測定した。発現量が最大の個体(個体番号10−1)の卵白からの精製で、卵白1個分あたり約3mgのネコ由来エリスロポエチンを得た。
【0097】
(実施例10)
精製ネコエリスロポエチンのBaf/EPOR細胞増殖アッセイ
実施例9により卵白から精製したネコ由来エリスロポエチンについて、実施例8に記載の方法により、Baf/EPOR細胞増殖アッセイを行った。その結果比活性は160,000〜290,000IU/mgであった。
【0098】
(実施例11)
mPEG修飾ネコ由来エリスロポエチンの作成
卵白より精製したネコ由来エリスロポエチン溶液(pH8.0〜9.0のリン酸あるいはホウ酸バッファーに溶解)に、PEGの分子量が約20kDaのmethoxyPEG−SPA(スクシンイミジルプロピオン酸エステル)あるいはmethocyPEG−SMB(スクシンイミジルアルファメチルブタン酸エステル)(NEKTAR社製)を加え、室温で0.5〜1時間転倒混和した。100mMグリシン溶液を1/10容加え、室温でさらに0.5時間転倒混和し、活性エステルを失活させた。反応後の溶液は、Prepacked Disposable PD−10 Columns(アマシャム社製)もしくは透析によって50mM 酢酸バッファー、pH4.5にバッファー交換し、同バッファーで平衡化した1mlのHiTrap SP HPカラム(アマシャム社製)にアプライした。未反応のPEGはカラムを素通りし、mPEG−fEPO及び未反応のネコ由来エリスロポエチンがカラムに吸着したので、これを500mM NaCl、25mM 酢酸バッファー、pH4.5で溶出し、回収した。回収した画分を、150mM NaCl、20mM リン酸バッファー、pH7.5で平衡化したSuperdex 200 10/300 GLにアプライし、PEGの付加数が2以上、1、0(未反応ネコ由来エリスロポエチン)に分けて回収した。回収後の画分は分画分子量5,000のビバスピン6により適宜濃縮した。活性化PEGの種類、反応液の組成、反応時間とmPEG−fEPO生成比について表2にまとめた。また、各mPEG−fEPOについて、理論上およびSuperdex 200 10/300 GL上での分離に基づいた分子量について表3にまとめた。PEG化およびゲルろ過精製後のサンプルのSDS−PAGEを行った。サンプルはe・パジェル12.5%を用いて、変性条件で泳動し、Bio−Safe Coomassie Stain(Bio−Rad社製)で検出した。SDS−PAGEの結果を図6に示す。
【0099】
【表2】

【0100】
【表3】

【0101】
(実施例12)
モノPEG化ネコ由来エリスロポエチンのBaf/EPOR細胞増殖アッセイ
実施例11によりPEG化、精製したモノ−mPEG−fEPOについて、実施例10に記載の方法により、Baf/EPOR細胞増殖アッセイを行った。mPEG−fEPOの量はDCプロテインアッセイ(Bio−Rad社製)にてBSAを標準として、タンパク質部の重量として測定した。その結果比活性はモノ−mPEG−SPA−fEPOで3,200〜15,000IU/mg、モノ−mPEG−SMB−fEPOで4,300〜8,300IU/mgであった。
【0102】
(実施例13)
モノPEG化ネコ由来エリスロポエチンの薬効持続性の測定
ラットはCrlj:CD系の正常雄(日本チャールス・リバー社製)を用い、7週齢時に実験に用いた。モノ−PEG化ネコ由来エリスロポエチンには、(実施例11)によりPEG化、精製したモノ−mPEG−SPA−fEPO(比活性8,300IU/mg)、非PEG化ネコ由来エリスロポエチンには、実施例9の個体番号10−1より精製した非PEG化ネコ由来エリスロポエチン(比活性160,000IU/mg)、CHO産生ヒトエリスロポエチンにはエポジン(比活性180,000IU/mg:インタビューフォーム記載値)をそれぞれ用いた。これらを0.05%ヒト血清アルブミン、0.05% Tween20を含む生理食塩水に希釈して2ml/kgで単回投与した。ラットは1群5匹で12群に分け、それぞれ2群ずつ、モノ−mPEG−SPA−fEPOを25、5、1μg/ml(投与量はそれぞれ50、10、2μg/kg)、非PEG化ネコ由来エリスロポエチンまたはエポジンをそれぞれ25μg/ml(投与量は50μg/kg)となるよう希釈したものを投与した。対照群には溶媒のみを投与した。被験物質は事前に調整し、−20℃で保存した。投与直前に室温にて解凍し、体温程度になったものを27Gの注射針を用いて尾静脈内に投与した。採血は、動物の負担を軽減するため、同量の同一被験物質を投与した2群(それぞれAまたはB群とする)に対し、以下のように交互に行った。A群:被験物質投与後0、4、10、21日、B群:被験物質投与後2、7、15日。無麻酔下で総頚静脈より23G注射針により0.5ml採血した。各試料について、網状赤血球数を自動網赤血球測定装置R−3000(Sysmex社製)にて測定した。
各測定時点における網状赤血球数について、対照群とモノ−mPEG−SPA−fEPO投与群、非PEG化ネコ由来エリスロポエチン投与群及びエポジン投与群の平均値の差の優位性をSASシステム(SAS Institute社製)を用いて、Dunnett型多重比較法により検定した。有意水準は両側5%とした。
【0103】
測定の結果を図7に示した。網状赤血球数は、エポジン(50μg/kg)投与群及びモノ−mPEG−SPA−fEPO(50μg/kgおよび10μg/kg)投与群では、投与後2日目に対照群より有意に低下し、4日目では増加して最大値を示した。投与後7日目には再び対照群のレベル以下にまで低下した。モノ−mPEG−SPA−fEPO(2μg/kg)投与群及び非PEG化ネコ由来EPO(50μg/kg)投与群では、網状赤血球数の有意な増加は見られなかった。モノ−mPEG−SPA−EPOでは、非PEG化ネコ由来EPOに比べ、Baf/EPOR細胞増殖比活性は低下しているにもかかわらず(実施例10及び12)、生体内での網状赤血球増殖活性は高かった。これは、PEG化によりエリスロポエチンの生体内での安定性が改善されたためと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列表の配列番号1で示されるネコ由来エリスロポエチンのアミノ酸配列、又は配列表の配列番号1で示されるネコ由来エリスロポエチンのアミノ酸配列中の1〜10個のアミノ酸残基が欠失、付加又は置換されたアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする外来性遺伝子を有するトランスジェニック鳥類の卵よりネコ由来エリスロポエチンを抽出する工程、精製する工程、およびポリエチレングリコールで化学修飾する工程を含む、ネコ由来エリスロポエチンの生産方法。
【請求項2】
ポリエチレングリコールの重量平均分子量が5〜40kDaである請求項1に記載の生産方法。
【請求項3】
ポリエチレングリコールの重量平均分子量が20kDaである請求項1または2に記載の生産方法。
【請求項4】
ポリエチレングリコールの付加数が1又は2以上であって、ポリエチレングリコール修飾された1分子のゲルろ過カラムクロマトグラフィーにより測定した水系溶媒中における見かけの分子量が100kDaから900kDaである請求項1〜3のいずれかに記載の生産方法。
【請求項5】
ポリエチレングリコールの付加数が1であって、ポリエチレングリコール修飾された1分子のゲルろ過カラムクロマトグラフィーにより測定した水系溶媒中における見かけの分子量が100kDaから500kDaである請求項4に記載の生産方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−46639(P2013−46639A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−264675(P2012−264675)
【出願日】平成24年12月3日(2012.12.3)
【分割の表示】特願2006−234259(P2006−234259)の分割
【原出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【出願人】(000173555)一般財団法人化学及血清療法研究所 (86)
【Fターム(参考)】