説明

ネットワークにおいてパケットを通信するアンテナを選択する方法

【課題】限定された帯域幅で、高信頼度および低レイテンシを達成する、低コストで低電力消費の無線ネットワークを実装する
【解決手段】送信機110は、パケットA、Bを複製し、送信アンテナ101のサブセットを、送信アンテナ101のサブセット、受信アンテナ102間のチャネル特性と無関係に選択する。送信アンテナ101、受信アンテナ102の組合せは、送信アンテナ101のサブセットで異なる。受信機120は、受信アンテナ102のサブセットを、受信アンテナ102のサブセットと送信アンテナ101の間のチャネル特性と無関係に選択する。送信アンテナ101、受信アンテナ102の組合せは、送信アンテナ101のサブセットで異なる。選択された送信アンテナ101のサブセット、受信アンテナ102のサブセットは、パケットA、Bを送信するのに用いられ、かつ前回の送信が失敗した場合にパケットA、Bを再送信するのに用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信に関し、より詳細には、無線通信ネットワークにおいてアンテナを選択することに関する。
【背景技術】
【0002】
無線(電波)通信の信頼度は、基盤を成す無線チャネルの特性に大きく依拠する。チャネル特性が良好である場合、信頼性のある通信を達成することができるが、チャネル特性が不良であるとき、またはより具体的には、チャネル内にフェージングが生じているとき、信号対雑音比(SNR:signal to noise ratio)が低く、通信が失敗する。送信機および受信機のロケーションおよび移動性、並びにチャネルの環境に依拠して、チャネル特性は、低速に変動する可能性もあれば、迅速に変動する可能性もある。
【0003】
信頼度を改善するために、複数のダイバーシティ技法が知られている。十分な周波数帯域幅がネットワークに割り当てられているとき、互いに比較的低い相関を有する異なる周波数帯で送信を反復することによる周波数ダイバーシティ技法を用いることができる。しかしながら、周波数ダイバーシティは、許容可能な送信帯域幅と比較して高コヒーレントな帯域幅を有する或る特定のチャネル環境では不可能である。
【0004】
チャネル環境が迅速に変動する場合、チャネル実現は、互いに比較的低い相関を有するので、様々な時点で送信を反復することによる時間ダイバーシティ技法を用いることができる。しかしながら、時間ダイバーシティは、送信のレイテンシ制約と比較して低速に変動する或る特定のチャネルでは不可能である。すなわち、別々の時間間隔における無線チャネルが強力に相関している場合、或る時間間隔における送信の失敗は、近くの別の間隔における送信の失敗も意味する。換言すれば、時間ダイバーシティを達成することができない。
【0005】
送信機および受信機が複数の送信アンテナまたは受信アンテナを有するとき、異なるアンテナを介してデータを送信し、受信機においてデータを適切に結合することによって、空間ダイバーシティを達成することができる。送信アンテナと受信アンテナとが空間的に分離されている限り、信頼度を改善することができる。
【0006】
複数アンテナネットワークのコストを低減するために、送信機および受信機においてアンテナ選択ダイバーシティ技法を用いることができる。特に、従来のアンテナ選択は、様々な送信アンテナおよび受信アンテナ間のチャネル特性を推定し、最適なチャネル特性を有する利用可能なアンテナのサブセットを用いる。チャネル特性に基づくアンテナ選択ダイバーシティは、最適なアンテナのサブセットを選択するのにフィードバックを必要とし、これによってオーバヘッド、レイテンシ、および電力消費が増大する。
【0007】
自動再送要求(ARQ:automated repeat request)およびハイブリッドARQ(HARQ:hybrid ARQ)等の、送信の信頼度を改善する他の方法を、媒体アクセス制御層(MAC:medium access control)において達成することができる。これらの技法は、送信の受信に成功したか否かを示す、受信機から送信機へのフィードバックを必要とし、前の送信が失敗しているとき、再送信が実行される。しかしながら、フィードバックを用いることにより送信のレイテンシが増大する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
帯域幅が限られているが、それでも高信頼度および低レイテンシを達成する、低コストで低電力消費の無線ネットワークを実装することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施の形態は、高信頼度で、低レイテンシで、かつ低コストの無線通信を達成するために、アンテナを切り換えることによって時間ダイバーシティ再送信およびアンテナダイバーシティを組み合わせる方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
これにより、高信頼度および低レイテンシを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態によるアンテナダイバーシティおよび時間ダイバーシティを組み合わせる無線ネットワークの概略図である。
【図2】本発明の実施の形態による、アンテナダイバーシティ、空間ダイバーシティ、および時間ダイバーシティの組合せを有するデータ通信ネットワークの概略図である。
【図3】本発明の実施の形態による、アンテナダイバーシティ、空間ダイバーシティ、および時間ダイバーシティの組合せを有するデータ通信ネットワークの別の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態は、送受信機が、無線通信チャネルの観点で空間的に相関していない複数のアンテナを備える無線ネットワークにおいて動作する。パケットが送信された後、アンテナの異なるサブセットを用いて反復送信が実行される。
【0013】
フィードバックのないネットワーク
時間制約型ネットワークでは、データは、非常に短い時間量で受信機に確実に配信されなくてはならない。信頼度および低レイテンシを保証するために、パケットは、フィードバックなしで複数回反復して送信される。これは、時間ダイバーシティ技法において行なわれることに類似している。しかしながら、時間ダイバーシティとは異なり、各送信の間、パケットを送信するのに異なるアンテナまたはアンテナ組合せが自動的に用いられる。これによって、反復送信が独立した無線チャネルを介して送信されることが保証される。
【0014】
図1および図2は、各送信機110において2本の送信(Tx)アンテナ101を有し、各受信機120において2本の受信(Rx)アンテナ102を有するネットワークにおける切換えアンテナダイバーシティの一例である。
【0015】
この例では、各パケット130は、複製され(140)、2つの時間的に交わらない(temporally disjoint)フレームを介して送信される。例えば、パケットAは、ダウンリンク(DL:downlink)チャネルにおいて、ダウンリンクチャネルDL1およびDL2でノードXからノードYに送信され、パケットBは、ダウンリンクチャネルDL2およびDL3で送信される。2つの送信アンテナおよび2つの受信アンテナを用いて、合計4つのアンテナ組合せ、すなわちTx1−Rx1、Tx2−Rx2、Tx1−Rx2、およびTx2−Rx1を形成することができる。後続の送信は、異なるアンテナ組合せを用いる。アップリンク(UL:uplink)チャネル上の送信も同様に実行される。
【0016】
この例では、送信機および受信機の双方が2つのアンテナを有する。切換え回路を用いて、所与の時点において1つのアクティブなアンテナのみが選択されるので、送信ごとに1つの送受信機チェーンが用いられる。
【0017】
この例は、パケットが複製され、2つの別々のフレームを介して送信されることを示しているが、2つのTxアンテナおよび2つのRxアンテナを有する単一アンテナ送信では、レイテンシ制約を満たすことができる場合、2つのアンテナの全ての2×2個の組合せを考えることによって、独立したチャネルで合計4回の反復を達成することができる。
【0018】
切換えアンテナダイバーシティは、周波数ダイバーシティおよび空間ダイバーシティ等の、他の形態のダイバーシティとともに用いることができる。本発明の実施の形態のアンテナ選択は、チャネル特性と無関係に実行されることが留意される。このため、実施の形態は、チャネル特性を推定せず、送信機から受信機へも、受信機から送信機へもチャネル特性をフィードバックしない。これによって、オーバヘッド、レイテンシ、および電力消費が大幅に低減する。
【0019】
切換えアンテナダイバーシティが周波数ダイバーシティとともに用いられるとき、送信は、更に複製され、同時に複数の周波数帯を介して送信され、異なるアンテナ組合せを用いて異なる時点においてパケットが送信される。
【0020】
切換えアンテナダイバーシティが空間ダイバーシティとともに用いられるとき、複数のアンテナを同時に用いて所与の時点において信号が送受信され、異なる時点において複数のアンテナの異なる組合せが用いられる。例えば、ノードXが2つのアンテナを有し、ノードYが4つのアンテナを有する場合、切換えアンテナダイバーシティを用いて2×2 MIMO(Multiple Input Multiple Output)ネットワークが実装される。フレームNにおいて、ノードXは、アンテナの双方を用い、ノードYは、4つのアンテナのうちの2つを用いる。フレームN+1において、ノードXは、依然として双方のアンテナを用い、ノードYは、4つのアンテナの他方の2つを用いる。
【0021】
通常、1つのノードにN個のアンテナからなるセットが存在し、別のノードにM個のアンテナからなるセットが存在する場合、NM/PQ個のアンテナ組合せを用いて、切換えアンテナダイバーシティを有するP×Q MIMOネットワークを実装することができる。
【0022】
フィードバックを有するネットワーク
いくつかのネットワークでは、物理(PHY:physical)層または媒体アクセス制御(MAC)層におけるフィードバックは、送信の失敗を示すことができ、失敗が発生すると、自動再送要求(ARQ)を用いてパケットを自動的に再送信する。通常、ARQは、前回の送信で用いられた特定のアンテナパターンを考慮しない。切換えアンテナダイバーシティでは、再送信が必要なとき、異なるアンテナまたは別の組合せが用いられる。
【0023】
図3に示すように、パケットA301は、送信元(Src:source)320から宛先(Dest:destination)330に送信される(310)。送信元は、最初にパケットAを送信すると、パケットAのコピーを、送信アンテナの選択されたサブセットに関する情報とともにバッファー301に格納する。
【0024】
宛先は、パケットAを受信すると、選択された受信アンテナ情報をバッファー302に格納する。パケットAの復号(350)に失敗した場合、宛先は、パケットAが再送信される必要があることを示すフィードバックパケット360を送信元に送信する。
【0025】
送信元は、MAC層でフィードバックを受信すると、バッファー301からパケットAおよび送信アンテナ情報を取り出し、PHY層に、送信アンテナの別のサブセットを用いてパケットAを再送信する(370)ことを通知する。
【0026】
送信機および受信機において利用可能なアンテナ組合せの数に依拠して、送信機または受信機のアンテナパターンが変化しない。図3に示す例では、再送信の間に送信機のみがアンテナを変更する一方、受信機は、最初の送信310および再送信370の双方に同じアンテナを用いる。代替的に、受信機は、アンテナサブセット間で切り換え、送信機は切り換えない。別の実施の形態では、送信機および受信機の双方がパケットのコピーについてサブセットを切り換える。
【0027】
通常、各ノードにおいて利用可能なアンテナ数は、ネットワーク設計中に設定されて統計的に知られるか、または初期関連付けプロセス中にプロトコルを用いて知られる。順列パターンを用いて複数の送信のためにアンテナを選択することができる。例えば、2つのTx送信機および2つのRx送信機を用いて、アンテナは、切換えがTx−1,Rx−1;次にTx−2,Rx−1;次にTx−2,Rx−2;次にTx−1,Rx−2となるように切換えを行う。
【0028】
アンテナ数が知られていない場合、各再送信が高い確率で異なるアンテナ組合せを用いるように切換えメカニズムをランダムにすることが可能である。
【0029】
受信機は、複数の送受信機チェーンを有する場合、アンテナ切換えに加えてアンテナ組合せ技法を用いることが可能である。
【0030】
発明の効果
従来のアンテナ選択技法では、アンテナ選択は、選択されるアンテナの適性に大きく基づく。したがって、従来技術による技法は、全ての可能なアンテナ組合せについてチャネル特性、例えば低雑音、高信号強度、低速変動等であるチャネルを推定し、次にアンテナの最適なサブセットを選択する。上述したように、これによって、チャネル推定プロセスに必要とされるフィードバックに起因したかなりの遅延およびオーバヘッドがもたらされる。加えて、チャネル推定は電力を消費する。
【0031】
対照的に、本発明の実施の形態によるアンテナ選択は、チャネル特性と無関係にアンテナ選択を実行する。選択されたアンテナのうちのいくつかのシグナリング性能は、準最適である場合があるが、従来技術のチャネル推定プロセスに固有の追加の遅延およびオーバヘッドを一切もたらすことなく、依然として空間ダイバーシティが改善される。これは、低オーバヘッドを要する電池式送受信機、および安全システムと連動して動作するネットワーク等の遅延に敏感な時間制約型用途に重要である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークにおいてパケットを通信するアンテナを選択する方法であって、前記ネットワークは、送信機および受信機を含み、前記送信機は、送信アンテナのセットを備え、前記受信機は、受信アンテナのセットを備え、前記方法は、
前記送信機において、前記パケットを前記パケットのコピーとして複製するステップと、
前記送信機において、前記送信アンテナのセットのサブセットを、前記送信アンテナのサブセットと前記受信アンテナのセットとの間のチャネル特性と無関係に選択するステップであって、前記アンテナの組合せは、前記送信アンテナの前記サブセットで異なる、選択するステップと、
前記受信機において、前記受信アンテナのセットのサブセットを、前記受信アンテナのサブセットと前記送信アンテナのセットとの間のチャネル特性と無関係に選択するステップであって、前記アンテナの組合せは、前記受信アンテナの前記サブセットで異なる、選択するステップと、
を含む、ネットワークにおいてパケットを通信するアンテナを選択する方法。
【請求項2】
前記送信機によって、前記パケットの各コピーを、異なるフレームを用いて、かつ各フレームおよび前記パケットの前記各コピーについて前記アンテナの異なるサブセットを用いて前記送信機から前記受信機に送信するステップであって、その一方、前記受信機は、前記受信アンテナの単一のサブセットを用いて前記パケットの前記コピーを受信し、前記フレームは、前記ネットワークにおけるオーバヘッドおよび遅延を低減するために時間的に交わらない、送信するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記送信機によって、前記パケットの各コピーを、異なるフレームを用いて、かつ各フレームおよび前記パケットの前記各コピーについて前記アンテナの単一のサブセットを用いて前記送信機から前記受信機に送信するステップであって、その一方、前記受信機は、前記各フレームおよび前記パケットの前記各コピーの受信について前記アンテナの異なるサブセットを用い、前記フレームは、前記ネットワークにおけるオーバヘッドおよび遅延を低減するために時間的に交わらない、送信するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記送信機によって、前記パケットの各コピーを、異なるフレームを用いて、かつ各フレームおよび前記パケットの前記各コピーについて前記アンテナの異なるサブセットを用いて前記送信機から前記受信機に送信するステップであって、その一方、前記受信機は、前記各フレームおよび前記パケットの前記各コピーの受信について前記アンテナの異なるサブセットを用い、前記フレームは、前記ネットワークにおけるオーバヘッドおよび遅延を低減するために時間的に交わらない、送信するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記送信アンテナおよび前記受信アンテナは、無線通信チャネルの観点から空間的に相関していない、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記送信するステップは、周波数ダイバーシティおよび空間ダイバーシティを用いる、請求項2から請求項4までの何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記アンテナ選択は、順列パターンを用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記アンテナ選択は、ランダムである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記送信機は、送信に用いられる前記送信アンテナのサブセットに関する情報をバッファーに格納する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記受信機は、受信に用いられる前記受信アンテナのサブセットに関する情報をバッファーに格納する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
媒体アクセス制御層(MAC)によって、前回の送信において用いられた前記送信アンテナのサブセットに関する前記情報を取り出すステップと、
前記MAC層によって、再送信において用いられることになるアンテナパターンを物理(PHY)層に通知するステップと、
を更に含む、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−142929(P2012−142929A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−278318(P2011−278318)
【出願日】平成23年12月20日(2011.12.20)
【出願人】(597067574)ミツビシ・エレクトリック・リサーチ・ラボラトリーズ・インコーポレイテッド (484)
【住所又は居所原語表記】201 BROADWAY, CAMBRIDGE, MASSACHUSETTS 02139, U.S.A.
【Fターム(参考)】