説明

ネットワーク受信装置および受信方法

【課題】冗長構成を有する通信システムにおいて、ネットワーク側の冗長切り替えのタイミングが厳密に要求されないような通信システムを構築し、かつ装置の低コスト化を図る。
【解決手段】ネットワーク受信装置は、冗長化された通信経路ごとに設けられ、通信経路から受けた通信信号を蓄積するためのバッファ26,27と、バッファ26,27から通信信号を取り出すための取り出し部51とを備える。取り出し部51によって取り出された通信信号のために設けられたリソースは、複数のバッファ26,27から取り出された通信信号間で共有する制約がある。取り出し部51は、通信経路の切り替え状態およびバッファ26,27の状態の少なくとも一方に基づいて、優先すべきバッファである優先バッファを設定し、優先バッファからの通信信号の取り出しを、劣後するバッファからの通信信号の取り出しと比べて高速に行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク受信装置および受信方法に関し、特に、冗長化された通信経路を介して通信信号を受信するネットワーク受信装置および受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットが広く普及しており、利用者は世界各地で運営されているサイトの様々な情報にアクセスし、その情報を入手することが可能である。これに伴って、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)およびFTTH(Fiber To The Home)等のブロードバンドアクセスが可能な装置も急速に普及してきている。
【0003】
IEEE Std 802.3ah(登録商標)−2004(非特許文献1)には、複数の宅側装置(ONU:Optical Network Unit)が光通信回線を共有して局側装置(OLT:Optical Line Terminal)とのデータ伝送を行なう媒体共有形通信である受動的光ネットワーク(PON:Passive Optical Network)の1つの方式が開示されている。すなわち、PONを通過するユーザ情報およびPONを管理運用するための制御情報を含め、すべての情報がイーサネット(登録商標)フレームの形式で通信されるEPON(Ethernet(登録商標) PON)と、EPONのアクセス制御プロトコル(MPCP(Multi-Point Control Protocol))およびOAM(Operations Administration and Maintenance)プロトコルとが規定されている。局側装置と宅側装置との間でMPCPフレームをやりとりすることによって、宅側装置の加入、離脱、および上りアクセス多重制御などが行なわれる。また、非特許文献1では、MPCPメッセージによる、新規宅側装置の登録方法、帯域割り当て要求を示すレポート、および送信指示を示すゲートについて記載されている。
【0004】
なお、1ギガビット/秒の通信速度を実現するEPONであるGE−PON(Giga Bit Ethernet(登録商標) Passive Optical Network)の次世代の技術として、IEEE802.3av(登録商標)−2009として標準化が行なわれた10G−EPONすなわち通信速度が10ギガビット/秒相当のEPONにおいても、アクセス制御プロトコルはMPCPが前提となっている。
【0005】
ところで、一般的にビジネス向けのネットワークサービスでは、高品質サービスを提供するためにシステムの二重化(冗長化)が必須である。また、音声/映像配信サービスでも二重化システムを用いることにより信頼性の高いシステムを提供することができる。二重化システムでは、装置、部品およびネットワークの各々が必要に応じて運用系および待機系を有する冗長構成がとられる。運用しているシステムの一部に障害が発生した場合には、運用系から待機系への冗長切り替えを行なうことにより、障害によるシステム停止時間をできるだけ短くすることが可能となる。
【0006】
また、障害が顕在化していなくても、特性の劣化傾向および部品の寿命等を勘案して、モジュールを予防的に交換する場合がある。システムがモジュールについて冗長構成を有していれば、このような保守作業によるシステム停止時間をできるだけ短くすることが可能となる。
【0007】
ここで、局側装置および上位ネットワーク間のサービスノードインタフェース(SNI)が二重化されたPONシステムが検討されている。このようなPONシステムの一例として、たとえば、特開2009−284179号公報(特許文献1)には、以下のような技術が開示されている。すなわち、光アクセス終端装置は、電気信号と光信号を互いに変換する複数の光送受信手段と、PONの制御プロトコル情報を挿入、抽出する複数のPONプロトコル終端手段と、上位ネットワークに接続するための複数のサービスノードインタフェースとを備える。光アクセス終端装置は、さらに、上記複数のサービスノードインタフェースに係る通信の正常/異常を監視するリンク監視手段を備える。上記複数の光送受信手段と上記複数のPONプロトコル終端手段との間の上り信号経路に第1の電気回路を配置する。上記第1の電気回路は、上記複数のサービスノードインタフェースに係る通信が正常な場合には、各光送受信手段から入力される上り信号を、光送受信手段に対応する上記PONプロトコル終端手段に出力する。上記第1の電気回路は、上記複数のサービスノードインタフェースのいずれかに係る通信が異常となった場合には、異常側に対応する光送受信手段から入力される上り信号、および正常側に対応する光送受信手段から入力される上り信号のいずれかを動的に選択して、正常側に対応する上記PONプロトコル終端手段に出力する。また、上記第1の電気回路では、光送受信手段ごとに設けられたバッファにおいて上り信号を一時的に蓄積した上で、いずれかのPONプロトコル終端手段へ出力する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】IEEE Std 802.3ah(登録商標)-2004
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−284179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
SNIが冗長化されたPONシステムにおいて、上位ネットワークからの下りフレームを受信する局側装置においては、PON回線への送信の前段階で下りフレームを一時的に保存するためのメモリを設ける必要がある。このようなメモリは、通常、大容量であることが要求されるため、低コスト化の観点から各SNIで共通のメモリが設けられる。
【0011】
ここで、下りフレームを局側装置へ送信する上位ネットワーク側の装置において、冗長切り替え元の送信部および冗長切り替え先の送信部が完全に同期をとって動作の停止および開始を行なうことは困難である。このため、SNIを何らかの理由によって切り替える際、局側装置が切り替え元のSNIおよび切り替え先のSNIから同時に下りフレームを受信する瞬間があり、局側装置への下りフレームの通信速度が瞬時的に通常時の2倍になってしまう場合がある。このため、上記のように各SNIで共通のメモリを設ける構成では、下りフレームの欠損が生じてしまう可能性がある。
【0012】
また、冗長切り替え後における下りフレームの上位ネットワークから局側装置への伝達時間が冗長切り替え前と比べて短くなると、切り替え先のSNIを経由する下りフレームが、切り替え元のSNIを経由する下りフレームよりも先に局側装置に到着することになり、下りフレームの追い越しが生じてしまう場合がある。
【0013】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、冗長構成を有する通信システムにおいて、ネットワーク側の冗長切り替えのタイミングが厳密に要求されないような通信システムを構築し、かつ装置の低コスト化を図ることが可能なネットワーク受信装置および受信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わるネットワーク受信装置は、冗長化された複数の通信経路を介して通信信号を受信可能なネットワーク受信装置であって、上記通信経路ごとに設けられ、上記通信経路から受けた通信信号を蓄積するための複数のバッファと、上記バッファから上記通信信号を取り出すための取り出し部とを備え、上記取り出し部によって取り出された上記通信信号のために設けられたリソースは、上記複数のバッファから取り出された上記通信信号間で共有する制約があり、上記取り出し部は、上記通信経路の切り替え状態および上記バッファの状態の少なくとも一方に基づいて、優先すべき上記バッファである優先バッファを設定し、上記優先バッファからの上記通信信号の取り出しを、劣後する上記バッファからの上記通信信号の取り出しと比べて高速に行なう。
【0015】
このような構成により、ネットワーク側における冗長切り替えのタイミングがある程度許容されるシステムを、低コストで構築することができる。すなわち、通信経路の切り替えタイミングを、局側装置の上位装置間で厳密に制御できない場合でも、通信信号の欠損を発生させることなく冗長切り替えを実行することができる。また、いずれの通信経路からも通信信号を受信可能とし、かつ、優先すべき通信経路を決めた上で通信信号の受信を行なう構成により、異常発生のために事前の通知無しで冗長切り替えが行なわれる場合でも、劣後する待機系の通信経路経由で通信信号を受信することができる。すなわち、通信経路の切り替えを行った後でも、切り替え元の通信経路経由で通信信号を受信することができる。これにより、通信信号の欠損を最小限に抑えることができる。また、ネットワーク受信装置における通信経路を切り替えるために厳密なハンドシェークを上位装置と行なうことなく、通信信号の欠損が発生しない冗長切り替えを実行することができる。したがって、冗長構成を有する通信システムにおいて、ネットワーク側の冗長切り替えのタイミングが厳密に要求されないような通信システムを構築し、かつ装置の低コスト化を図ることができる。
【0016】
好ましくは、上記取り出し部は、切り替え先の上記通信経路に対応する上記バッファを優先バッファとして設定する。
【0017】
このような構成により、通信経路の切り替え状態に応じて適切なバッファを優先バッファとして設定することができる。
【0018】
より好ましくは、上記取り出し部は、切り替え元の上記通信経路に対応する上記バッファの状態が所定条件を満たすこと、および切り替え先の上記通信経路に対応する上記バッファの状態が所定条件を満たすことの少なくとも一方を、上記優先バッファの設定の条件とする。
【0019】
このような構成により、通信経路の切り替え状態に加えて、切り替え元のバッファまたは切り替え先のバッファの状態に応じてより適切なバッファを優先バッファとして設定することができる。
【0020】
より好ましくは、上記取り出し部は、切り替え元の上記通信経路に対応する上記バッファの蓄積量と比べて、切り替え先の上記通信経路に対応する上記バッファの蓄積量が多くなることを、上記優先バッファの設定の条件とする。
【0021】
このような構成により、切り替え元のバッファの蓄積量および切り替え先のバッファの蓄積量の比較結果に応じてより適切なバッファを優先バッファとして設定することができる。
【0022】
より好ましくは、上記取り出し部は、切り替え先の上記通信経路に対応する上記バッファの空き容量が所定値未満となることを、上記優先バッファの設定の条件とする。
【0023】
このような構成により、切り替え先のバッファの空き容量が確保されている状態において、できるだけ切り替え元のバッファから通信信号を取り出すことができるため、通信信号の欠損を最小限に抑えることができる。
【0024】
好ましくは、上記取り出し部は、上記バッファの蓄積量または空き容量に基づいて上記優先バッファを設定する。
【0025】
このような構成により、通信経路の切り替え命令が何らかの理由によって受信できない場合でも、バッファの状態に基づいて適切なバッファを優先バッファとして設定し、通信信号の欠損を最小限に抑えることができる。
【0026】
より好ましくは、上記取り出し部は、蓄積量が所定値以上の上記バッファを上記優先バッファとして設定する。
【0027】
このような構成により、各バッファの蓄積量に応じて適切なバッファを優先バッファとして設定することができる。
【0028】
好ましくは、上記リソースは、上記通信信号を他の装置へ送信するかまたは上記ネットワーク受信装置で処理する前に、上記通信信号を一時保存するためのメモリであり、上記取り出し部は、各上記バッファから取り出した上記通信信号を上記メモリに保存する。
【0029】
このような構成により、通信信号を蓄積するためのメモリの容量を低減することができるため、装置の低コスト化を図ることができる。
【0030】
好ましくは、上記取り出し部は、上記優先バッファから上記通信信号が無くなるまで、上記優先バッファから連続して上記通信信号を取り出す。
【0031】
このような構成により、優先バッファからの通信信号の取り出し速度の高速化を実現することができる。
【0032】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる受信方法は、冗長化された複数の通信経路を介して通信信号を受信可能であり、上記通信経路ごとに設けられ、上記通信経路から受けた通信信号を蓄積するための複数のバッファを備えるネットワーク受信装置における受信方法であって、上記通信経路の切り替え状態および上記バッファの状態の少なくとも一方に基づいて、優先すべき上記バッファである優先バッファを設定するステップと、上記バッファから上記通信信号を取り出すステップとを含み、上記バッファから取り出された上記通信信号のために設けられたリソースは、上記複数のバッファから取り出された上記通信信号間で共有する制約があり、上記通信信号を取り出すステップにおいては、上記優先バッファからの上記通信信号の取り出しを、劣後する上記バッファからの上記通信信号の取り出しと比べて高速に行なう。
【0033】
このような構成により、ネットワーク側における冗長切り替えのタイミングがある程度許容されるシステムを、低コストで構築することができる。すなわち、通信経路の切り替えタイミングを、局側装置の上位装置間で厳密に制御できない場合でも、通信信号の欠損を発生させることなく冗長切り替えを実行することができる。また、いずれの通信経路からも通信信号を受信可能とし、かつ、優先すべき通信経路を決めた上で通信信号の受信を行なう構成により、異常発生のために事前の通知無しで冗長切り替えが行なわれる場合でも、劣後する待機系の通信経路経由で通信信号を受信することができる。すなわち、通信経路の切り替えを行った後でも、切り替え元の通信経路経由で通信信号を受信することができる。これにより、通信信号の欠損を最小限に抑えることができる。また、ネットワーク受信装置における通信経路を切り替えるために厳密なハンドシェークを上位装置と行なうことなく、通信信号の欠損が発生しない冗長切り替えを実行することができる。したがって、冗長構成を有する通信システムにおいて、ネットワーク側の冗長切り替えのタイミングが厳密に要求されないような通信システムを構築し、かつ装置の低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、冗長構成を有する通信システムにおいて、ネットワーク側の冗長切り替えのタイミングが厳密に要求されないような通信システムを構築し、かつ装置の低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態に係るPONシステムの概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る局側装置における集線部の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る局側装置におけるOSUの構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るOSUがSNIポートを切り替える際の動作手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態に係るOSUにおける優先バッファの切り替え条件の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るOSUにおける優先バッファの切り替え条件の一例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るOSUにおける優先バッファの切り替え条件の一例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るOSUにおけるSNIポートの切り替え処理および下りフレームの受信動作の一例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係るOSUがSNIポートを切り替える際の動作手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0037】
[構成および基本動作]
図1は、本発明の実施の形態に係るPONシステムの概略構成を示す図である。
【0038】
図1を参照して、PONシステム301は、局側装置(ネットワーク受信装置)201と、光ファイバであるm本のPON回線1〜m(203−1〜203−m)と、m個の光カプラ204−1〜204−mと、複数の宅側装置(ONU)202とを備える。局側装置201は、光回線ユニット(以下、OSU(Optical Subscriber Unit)とも称する)1〜m(12−1〜12−m)と、集線部11とを含む。ここで、mは1以上の整数である。また、ONUから上位ネットワークへの方向を上り方向と称し、上位ネットワークからONUへの方向を下り方向と称する。
【0039】
PONシステム301において、たとえば、各PON回線は1ギガビット/秒の通信速度を実現するEPONであるGE−PON、および10ギガビット/秒の通信速度を実現するEPONである10G−EPONに対応しており、上位ネットワークは10ギガビット/秒の通信速度を実現するイーサネット(登録商標)に対応する。また、たとえば、MPCPフレームによってONUの登録、離脱、ONUへの帯域割り当て、ONUからの帯域要求、通信速度の切り替え指示およびONUへのスリープ(動作停止)指示などが行なわれる。
【0040】
局側装置201は、GE−PONおよび10G−EPONに対応するPON回線を複数回線収容する。1本のPON回線には1または複数のONUが接続される。局側装置201は、これらのPON回線からのデータを上位ネットワークに多重する。また、局側装置201は、上位ネットワークからのデータを振り分けて各PON回線における各ONUへ送信する。また、局側装置201は、PON回線の上り帯域を各ONUに割り当てる。
【0041】
より詳細には、局側装置201は、m本のPON回線1〜mに接続され、このm本のPON回線を終端する。各OSUは、PON回線に対応して設けられ、対応のPON回線に接続された1または複数のONUとフレームを含む通信信号を送受信する。PON回線1〜mは、光カプラ204−1〜204−mにそれぞれ接続されており、これらの光カプラを介して各ONU202に接続されている。各ONU202とOSU12とは、PON回線203および光カプラ204を介して接続され、互いに通信信号として光信号を送受信する。PONシステム301では、各ONU202からOSU12への光信号が共通のPON回線203において時分割多重される。
【0042】
集線部11は、上位ネットワークから受信した下りフレームを複数のOSU経由で各ONUへ送信する。具体的には、集線部11は、上位ネットワークからの下りフレームを適切なOSUに振り分ける処理を行なう。また、集線部11は、複数のOSU経由で各ONUから受信した上りフレームを上位ネットワークへ送信する。
【0043】
局側装置201では、SNIが多重化されている。すなわち、冗長化のためにOSUごとに複数のSNIが設けられている。
【0044】
より詳細には、OSU12は、1または複数のONU202とフレームを送受信し、冗長化された複数の通信経路すなわちSNIポートを介して集線部11から受けた下りフレームをONU202へ送信可能であり、また、各ONU202から受信した上りフレームを複数のSNIポートを介して集線部11へ送信可能である。
【0045】
また、OSU12は、上位ネットワークから受信した下りフレームを蓄積するための、SNIごとに設けられたバッファを備える。
【0046】
図2は、本発明の実施の形態に係る局側装置における集線部の構成を示す図である。
【0047】
図2を参照して、集線部11は、スイッチ部41,42を含む。
【0048】
スイッチ部41は、上位ネットワークから受信した下りフレームをSNIポートA(SNI−A)へ出力するか、スイッチ部42を介してSNIポートB(SNI−B)へ出力するかを切り替える。
【0049】
スイッチ部42は、上位ネットワークから受信した下りフレームをSNIポートB(SNI−B)へ出力するか、スイッチ部41を介してSNIポートA(SNI−A)へ出力するかを切り替える。
【0050】
たとえば、SNIポートAが運用系であり、SNIポートBが待機系である場合には、スイッチ部41が受けた下りフレームはSNIポートAへ出力され、スイッチ部42が受けた下りフレームはスイッチ部41を介してSNIポートAへ出力される。一方、SNIポートBが運用系であり、SNIポートAが待機系である場合には、スイッチ部42が受けた下りフレームはSNIポートBへ出力され、スイッチ部41が受けた下りフレームはスイッチ部42を介してSNIポートBへ出力される。
【0051】
ここで、運用系がたとえばSNIポートBからSNIポートAへ切り替えられると、スイッチ部41が受ける下りフレームは、切り替え前は経路RT2を通ってSNIポートBへ伝達されるのに対して、切り替え後は経路RT1を通ってSNIポートAへ伝達される。そうすると、切り替え前の当該下りフレームの伝送時間はスイッチ部42の内部遅延を含むが、切り替え後の当該下りフレームの伝送時間はスイッチ部42の内部遅延を含まなくなる。
【0052】
これにより、切り替え先のSNIからの下りフレームが、切り替え元のSNIからの下りフレームよりも先にOSU12に到着することになり、下りフレームの追い越しが生じてしまう場合がある。
【0053】
また、スイッチ部41およびスイッチ部42が完全に同期をとって動作の停止および開始を行なったとしても、上記のように下りフレームの伝送遅延の差異により、下りフレームの追い越しが生じてしまう場合がある。
【0054】
なお、SNIポートの切り替えは、前述のような種々の要因、たとえば、上り方向における障害、および保守作業等によって実行される。
【0055】
図3は、本発明の実施の形態に係る局側装置におけるOSUの構成を示す図である。
【0056】
図3を参照して、OSU12は、1GPON送受信部21と、10GPON送受信部22と、取り出し部51と、バッファ26,27と、MAC(Media Access Control)処理部28,29と、SNI−Aインタフェース部30と、SNI−Bインタフェース部31とを含む。取り出し部51は、バッファ制御部23と、QOS(Quality of Service)部24と、マルチプレクサ(MUX)25と、制御部32とを含む。また、局側装置201は、OSU12の外部に設けられたメモリ91を備える。なお、ここでは、OSU12が2つのSNIインタフェース部を含んでいるが、SNIインタフェース部の数は3つ以上であってもよい。また、メモリ91がOSU12の内部に設けられてもよい。
【0057】
1GPON送受信部21および10GPON送受信部22は、PON回線の親局側起点として、対応のPON回線である1本の光ファイバと接続される。この光ファイバを介して各ONUと双方向通信が行なえるように、1GPON送受信部21および10GPON送受信部22は、特定の波長、たとえば1310nm帯の上り光信号を受信して1Gbpsの電気信号または10Gbpsの電気信号に変換し、また、下りフレームを別波長の下り光信号に変換する。たとえば、1GPON送受信部21は、バッファ制御部23から受けたフレームを1Gbpsの電気信号に変換し、そして1490nm帯の下り光信号に変換する。また、10GPON送受信部22は、バッファ制御部23から受けたフレームを10Gbpsの電気信号に変換し、そして1570nm帯の下り光信号に変換する。
【0058】
OSU12において、上位ネットワークから受信した下りフレームを蓄積するためのバッファは、SNIポートごとに設けられる。たとえば、OSU12は、2系統のSNIポートすなわちSNIインタフェース部ごとに設けられた2つのバッファ26,27を備える。バッファ26,27は、たとえばFIFO(First in First Out)である。
【0059】
集線部11は、上位ネットワークにおける他の装置と所定の通信処理を行なうことにより、上位ネットワークから受けた下りフレームを振り分けてSNI−Aインタフェース部30またはSNI−Bインタフェース部31へ出力する。
【0060】
SNI−Aインタフェース部30およびSNI−Bインタフェース部31は、集線部11と所定の通信処理を行なうことにより、集線部11から受けた下りフレームをMAC処理部28およびMAC処理部29へそれぞれ出力する。
【0061】
MAC処理部28およびMAC処理部29は、それぞれSNI−Aインタフェース部30およびSNI−Bインタフェース部31から受けた下りフレームに対してMAC層の処理を行い、処理後のフレームをバッファ26およびバッファ27にそれぞれ蓄積する。
【0062】
取り出し部51は、バッファ26,27から下りフレームを取り出す。ここで、OSU12では、取り出し部51によって取り出された下りフレームのために設けられたリソースは、バッファ26,27から取り出された下りフレーム間で共有する制約がある。
【0063】
具体的には、たとえば、上記リソースは、下りフレームをONU202へ送信するかまたはOSU12で処理する前に、下りフレームを一時保存するためのメモリである。
【0064】
取り出し部51は、各バッファから取り出した下りフレームをメモリに保存する。取り出し部51は、優先バッファから集中的に下りフレームを取り出す、すなわち、優先バッファから下りフレームが無くなるまで、優先バッファから連続して下りフレームを取り出す。
【0065】
より詳細には、取り出し部51において、制御部32は、バッファ26およびバッファ27のいずれか一方を優先バッファに設定し、当該設定内容をマルチプレクサ25に通知する。マルチプレクサ25は、制御部32から通知された設定内容に従い、バッファ26およびバッファ27から下りフレームを取り出してQOS部24へ出力する。たとえば、マルチプレクサ25は、優先バッファに下りフレームが蓄積されている場合には、劣後するバッファに対してアクセスすることなく、優先バッファから連続的に下りフレームを取り出す。そして、マルチプレクサ25は、優先バッファが空になると、劣後するバッファにアクセスし、劣後するバッファに蓄積された下りフレームを取り出すとともに、優先バッファにアクセスして下りフレームが新たに蓄積されているかを確認する。
【0066】
QOS部24は、マルチプレクサ25から受けた下りフレームを解析し、解析結果および当該下りフレームを出力する。
【0067】
バッファ制御部23は、QOS部24の解析結果に基づいて、メモリ91において設定されたONU202および優先度ごとの領域に当該下りフレームを保存し、送信タイミングになると下りフレームをメモリ91から取り出して1GPON送受信部21または10GPON送受信部22へ出力する。なお、バッファ制御部23によってメモリ91から取り出された下りフレームは、たとえば制御部32において処理されてもよい。
【0068】
1GPON送受信部21および10GPON送受信部22は、バッファ制御部23から受けた下りフレームを、前述のように光信号に変換してPON回線へ出力する。
【0069】
制御部32は、MPCPおよびOAMなど、PON回線の制御および管理に関する局側処理を行なう。すなわち、PON回線に接続されている各ONUとMPCPメッセージおよびOAMメッセージをやりとりすることによって、ONUの登録、離脱および帯域割り当てを含めた上りアクセス制御、ならびにONUへのスリープ指示を含めたONUの運用管理などを行なう。制御部32は、MPCPゲートフレーム等、各種制御メッセージを含む制御フレームを1GPON送受信部21および10GPON送受信部22へ出力する。
【0070】
制御部32は、バッファ26,27の蓄積量および空き容量等の使用状態を監視する。また、制御部32は、たとえば、集線部11から受けた切り替え命令を解析し、使用すべきSNIポートを判断することにより、優先バッファを設定する。
【0071】
このように、OSU12では、たとえば集線部11からの切り替え命令に従い、任意のバッファを優先バッファとして設定することができる。なお、集線部11からの切り替え命令は、集線部11において生成されてもよいし、上位ネットワークにおける他の装置において生成されてもよい。
【0072】
[動作]
次に、本発明の実施の形態に係るOSUにおける下りフレーム受信動作について図面を用いて説明する。
【0073】
図4は、本発明の実施の形態に係るOSUがSNIポートを切り替える際の動作手順を示すフローチャートである。図4は、優先バッファがバッファ26からバッファ27へ切り替えられる一例を示している。
【0074】
取り出し部51は、SNIポートの切り替え状態およびバッファの状態の少なくとも一方に基づいて、優先すべきバッファである優先バッファを設定する。たとえば、取り出し部51は、切り替え先のSNIポートに対応するバッファを優先バッファとして設定する。そして、取り出し部51は、前述のように、優先バッファからの下りフレームの取り出しを、劣後するバッファからの下りフレームの取り出しと比べて高速に行なう。
【0075】
具体的には、図4を参照して、まず、SNIポートAが運用系であり、SNIポートBが待機系である状態を考える。この状態では、制御部32は、SNI−Aインタフェース部30に対応するバッファ26を優先バッファとして設定する。すなわち、マルチプレクサ25は、バッファ26に下りフレームが蓄積されている場合には、バッファ26から連続的に下りフレームを取り出し、バッファ26に下りフレームが蓄積されていない場合に、バッファ27から下りフレームを取り出す(ステップS1)。
【0076】
次に、制御部32は、集線部11からSNIポートBへの切り替え命令を受けると(ステップS2でYES)、バッファ26,27の状態を確認する(ステップS3)。
【0077】
制御部32は、バッファ26,27が所定条件を満たすまで待機し、バッファ26,27が所定条件を満たすと(ステップS3でYES)、優先バッファをバッファ26からバッファ27に切り替える。すなわち、制御部32は、SNI−Bインタフェース部31に対応するバッファ27を優先バッファとして設定する。マルチプレクサ25は、バッファ27に下りフレームが蓄積されている場合には、バッファ27から連続的に下りフレームを取り出し、バッファ27に下りフレームが蓄積されていない場合に、バッファ26から下りフレームを取り出す(ステップS4)。
【0078】
たとえば、取り出し部51は、切り替え元のSNIポートに対応するバッファの状態が所定条件を満たすこと、および切り替え先のSNIポートに対応するバッファの状態が所定条件を満たすことの少なくとも一方を、優先バッファの設定の条件とする。
【0079】
以下、この所定条件の具体例について説明する。
【0080】
図5は、本発明の実施の形態に係るOSUにおける優先バッファの切り替え条件の一例を示す図である。以下の図5〜図7において、Fは、下りフレームを示している。
【0081】
図5を参照して、取り出し部51は、切り替え元のSNIポートに対応するバッファの蓄積量と比べて、切り替え先のSNIポートに対応するバッファの蓄積量が多くなることを、優先バッファの設定の条件とする。
【0082】
具体的には、制御部32は、バッファ26を優先バッファとして設定している状態において、集線部11からSNIポートBへの切り替え命令を受けた後、バッファ26の蓄積フレーム数と比べてバッファ27の蓄積フレーム数が大きくなると、バッファ27を優先バッファとして設定する。
【0083】
図6は、本発明の実施の形態に係るOSUにおける優先バッファの切り替え条件の一例を示す図である。
【0084】
図6を参照して、取り出し部51は、切り替え先のSNIポートに対応するバッファの空き容量が所定値未満となることを、優先バッファの設定の条件とする。
【0085】
具体的には、制御部32は、バッファ26を優先バッファとして設定している状態において、集線部11からSNIポートBへの切り替え命令を受けた後、バッファ27の空き容量が所定の閾値Th1未満になると、バッファ27を優先バッファとして設定する。
【0086】
なお、図6は、以下のような動作と考えることもできる。すなわち、制御部32は、バッファ26を優先バッファとして設定している状態において、集線部11からSNIポートBへの切り替え命令を受けた後、バッファ27の蓄積量が所定の閾値Th1以上になると、バッファ27を優先バッファとして設定する。
【0087】
図7は、本発明の実施の形態に係るOSUにおける優先バッファの切り替え条件の一例を示す図である。
【0088】
図7を参照して、制御部32は、図6で説明した条件と並列に、以下のような条件を加えてもよい。
【0089】
すなわち、制御部32は、切り替え前のSNIポートに対応するバッファの蓄積フレーム数がゼロになることを、優先バッファの設定の条件とする。
【0090】
具体的には、制御部32は、バッファ26を優先バッファとして設定している状態において、集線部11からSNIポートBへの切り替え命令を受けた後、バッファ26が空になると、バッファ27の空き容量が所定の閾値Th1未満になっていなくても、バッファ27を優先バッファとして設定する。
【0091】
図8は、本発明の実施の形態に係るOSUにおけるSNIポートの切り替え処理および下りフレームの受信動作の一例を示す図である。
【0092】
図8を参照して、SNIポートAが運用系であり、SNIポートBが待機系である状態を考える。この状態では、制御部32は、SNI−Aインタフェース部30に対応するバッファ26を優先バッファとして設定している。
【0093】
ここで、タイミングT1において、上位ネットワークまたは集線部11においてSNIポートの切り替えが判断される。
【0094】
次に、タイミングT2において、制御部32は、集線部11からSNIポートBへの切り替え命令を受ける。これにより、制御部32は、バッファ26,27が所定条件を満たしている場合、SNI−Bインタフェース部31に対応するバッファ27を優先バッファとして設定する。このタイミングT2では、集線部11からSNIポートAへ下りフレームが引き続き送信されており、SNIポートBへは集線部11から下りフレームが未だ送信されていない。このため、マルチプレクサ25は、バッファ27が空であることから、バッファ26から下りフレームを取り出す。
【0095】
次に、集線部11において下りフレームの送信先のSNIポートが切り替えられる。
【0096】
ここで、SNI−Aインタフェース部30へ下りフレームが送信されなくなった後に、SNI−Bインタフェース部31に下りフレームが到着し始めるケース1を考える。
【0097】
ケース1では、SNIポートAへの最後の下りフレームである4番のフレームがSNI−Aインタフェース部30に到着してから時間kが経過した後に、4番のフレームの次のフレームである5番のフレームがSNI−Bインタフェース部31に到着する。
【0098】
この場合、マルチプレクサ25は、バッファ26から4番のフレームを取り出した後、バッファ27に蓄積される5番以降のフレームを問題なく取り出すことができる。
【0099】
したがって、ケース1では、OSU12は、SNIポートの切り替えの前後において、連続する下りフレームを正しく受信することができる。すなわち、OSU12は、4番のフレームがSNI−Aインタフェース部30に到着してから時間kが経過するまでの短期間において下りフレームの受信経路すなわちSNIの切り替え処理を行なうことなく、連続する下りフレームを正しく受信することができる。
【0100】
次に、SNI−Aインタフェース部30へ下りフレームが送信されなくなる前に、SNI−Bインタフェース部31に下りフレームが到着し始めるケース2を考える。
【0101】
ケース2では、SNIポートAへの最後の下りフレームである4番のフレームがSNI−Aインタフェース部30に到着する前に、4番のフレームの次のフレームである5番のフレームがSNI−Bインタフェース部31に到着する。
【0102】
この場合、マルチプレクサ25は、バッファ26から4番のフレームを取り出す前に、バッファ27に蓄積される5番以降のフレームを取り出すことになる。ここで、マルチプレクサ25は、下りフレームの通信速度よりもある程度早い速度でバッファ26,27から下りフレームを取り出すことが可能である。このため、マルチプレクサ25は、バッファ27からの下りフレームの取り出しの合間に、バッファ26から4番のフレームを取り出すことができる。また、集線部11において下りフレームの送信先のSNIポートが切り替えられた後に、バッファ26に残るフレームは少数であり、本例では1つのフレームが残るだけであるから、バッファ26において下りフレームの廃棄が発生することはなく、下りフレームの欠損は発生しない。
【0103】
なお、制御部32は、集線部11からの切り替え命令に基づいて優先バッファを設定する構成に限らず、バッファの状態に応じて優先バッファを自律的に選択する構成であってもよい。
【0104】
たとえば、取り出し部51は、バッファ26,27の蓄積量または空き容量に基づいて優先バッファを設定する。
【0105】
図9は、本発明の実施の形態に係るOSUがSNIポートを切り替える際の動作手順を示すフローチャートである。
【0106】
図9を参照して、制御部32は、バッファ26,27の状態をたとえば定期的に確認し(ステップS11)、バッファ26,27が所定の条件Aを満たすと(ステップS12でYES)、バッファ26を優先バッファとして設定する(ステップS13)。
【0107】
一方、制御部32は、バッファ26,27が所定の条件Aを満たさず(ステップS12でNO)、かつ所定の条件Bを満たす場合には(ステップS14でYES)、バッファ27を優先バッファとして設定する(ステップS15)。
【0108】
また、制御部32は、バッファ26,27が所定の条件Aを満たさず(ステップS12でNO)、かつ所定の条件Bを満たさない場合には(ステップS14でNO)、現在の優先バッファの設定を維持する。
【0109】
図9に示す所定条件の具体例として、たとえば、取り出し部51は、蓄積量が所定値以上のバッファを優先バッファとして設定する。この場合、図9に示す条件Aおよび条件Bは同じ条件となる。
【0110】
なお、制御部32は、図5〜図7で説明したものと同様のバッファ状態の条件を、図9における優先バッファの切り替え条件としてもよい。
【0111】
ところで、SNIが冗長化されたPONシステムにおいて、上位ネットワークからの下りフレームを受信する局側装置においては、SNIが何らかの理由によって切り替えられる際、切り替え元のSNIおよび切り替え先のSNIから同時に下りフレームを受信する瞬間があり、局側装置への下りフレームの通信速度が瞬時的に通常時の2倍になってしまう場合がある。このため、各SNIで共通のメモリを設ける構成では、下りフレームの欠損が生じてしまう可能性がある。また、冗長切り替え後における下りフレームの上位ネットワークから局側装置への伝達時間が冗長切り替え前と比べて短くなると、切り替え先のSNIを経由する下りフレームが、切り替え元のSNIを経由する下りフレームよりも先に局側装置に到着することになり、下りフレームの追い越しが生じてしまう場合がある。
【0112】
具体的には、OSUは、たとえば10G−EPONおよびGE−PONのインタフェースを備える。これらのインタフェースのレートは、たとえば、それぞれ9.7Gbpsおよび1Gbpsである。このため、OSUは、SNIを介して10Gbpsの下りフレームを受信できればよい。
【0113】
しかしながら、たとえば、OSUが冗長化のために2つのSNIを有し、10Gbps用のSNIが2つ設けられる構成では、上記のように瞬間的に20Gbpsのフレームを受信してしまう場合がある。
【0114】
局側装置では、たとえば、上位ネットワークからのデータの入力レートが10Gbps〜20Gbpsであるのに対し、出力レートがたとえば最大9.7Gbpsしか確保できない。このため、局側装置において下り方向のQOS機能を提供するためには、大容量の外部メモリを用いて下りフレームのバッファリングを行なう必要がある。このバッファリング用の記憶装置としては、たとえば安価なDDR(Double Data Rate)メモリを使用する。
【0115】
しかしながら、このような構成において、入力レートが20Gbps、出力レートが9.7Gbpsのメモリコントローラを実現するのは、コストの面から非常に難しい。
【0116】
これに対して、本発明の実施の形態に係るOSUは、冗長化された複数の通信経路すなわちSNIポートを介して下りフレームを受信可能である。このOSUにおいて、バッファ26,27は、SNIポートごとに設けられ、SNIポートから受けた下りフレームを蓄積する。取り出し部51は、バッファ26,27から下りフレームを取り出す。取り出し部51によって取り出された下りフレームのために設けられたリソースは、バッファ26,27から取り出された下りフレーム間で共有する制約がある。そして、取り出し部51は、SNIポートの切り替え状態およびバッファの状態の少なくとも一方に基づいて、優先すべきバッファである優先バッファを設定し、優先バッファからの下りフレームの取り出しを、劣後するバッファからの下りフレームの取り出しと比べて高速に行なう。
【0117】
具体的には、OSUにおいて、SNIインタフェース部30,31とバッファ制御部23との間において、いずれのSNIポートからも下りフレームを受信してバッファ制御部23へ出力可能とし、かつ運用系のSNIポートからの下りフレーム受信を優先させる制御を行なう。
【0118】
このような構成により、集線部におけるスイッチ、および集線部の上位装置における冗長切り替えのタイミングがある程度許容されるシステムを、低コストで構築することができる。すなわち、SNIポートの切り替えタイミングを、局側装置の上位装置間で厳密に制御できない場合でも、下りフレームの欠損を発生させることなく冗長切り替えを実行することができる。
【0119】
また、いずれのSNIポートからも下りフレームを受信可能とし、かつ、優先すべきSNIポートを決めた上でフレーム受信を行なう構成により、異常発生のために事前の通知無しで冗長切り替えが行なわれる場合でも、劣後する待機系のSNIポート経由で下りフレームを受信することができる。すなわち、SNIポートの切り替えを行った後でも、切り替え元のSNIポート経由で下りフレームを受信することができる。これにより、下りフレームの欠損を最小限に抑えることができる。
【0120】
また、OSUにおけるSNIポートを切り替えるために厳密なハンドシェークを上位装置と行なうことなく、下りフレームの欠損が発生しない冗長切り替えを実行することができる。
【0121】
したがって、本発明の実施の形態に係るOSUでは、冗長構成を有する通信システムにおいて、ネットワーク側の冗長切り替えのタイミングが厳密に要求されないような通信システムを構築し、かつ装置の低コスト化を図ることができる。
【0122】
また、本発明の実施の形態に係るOSUでは、取り出し部51は、切り替え先のSNIポートに対応するバッファを優先バッファとして設定する。
【0123】
このような構成により、通信経路の切り替え状態に応じて適切なバッファを優先バッファとして設定することができる。
【0124】
また、本発明の実施の形態に係るOSUでは、取り出し部51は、切り替え元のSNIポートに対応するバッファの状態が所定条件を満たすこと、および切り替え先のSNIポートに対応するバッファの状態が所定条件を満たすことの少なくとも一方を、優先バッファの設定の条件とする。
【0125】
このような構成により、通信経路の切り替え状態に加えて、切り替え元のバッファまたは切り替え先のバッファの状態に応じてより適切なバッファを優先バッファとして設定することができる。
【0126】
また、本発明の実施の形態に係るOSUでは、取り出し部51は、切り替え元のSNIポートに対応するバッファの蓄積量と比べて、切り替え先のSNIポートに対応するバッファの蓄積量が多くなることを、優先バッファの設定の条件とする。
【0127】
このような構成により、切り替え元のバッファの蓄積量および切り替え先のバッファの蓄積量の比較結果に応じてより適切なバッファを優先バッファとして設定することができる。
【0128】
また、本発明の実施の形態に係るOSUでは、取り出し部51は、切り替え先のSNIポートに対応するバッファの空き容量が所定値未満となることを、優先バッファの設定の条件とする。
【0129】
このような構成により、切り替え先のバッファの空き容量が確保されている状態において、できるだけ切り替え元のバッファから下りフレームを取り出すことができるため、下りフレームの欠損を最小限に抑えることができる。
【0130】
また、本発明の実施の形態に係るOSUでは、取り出し部51は、バッファ26,27の蓄積量または空き容量に基づいて優先バッファを設定する。
【0131】
このような構成により、通信経路の切り替え命令が何らかの理由によって受信できない場合でも、バッファの状態に基づいて適切なバッファを優先バッファとして設定し、下りフレームの欠損を最小限に抑えることができる。
【0132】
また、本発明の実施の形態に係るOSUでは、取り出し部51は、蓄積量が所定値以上のバッファを優先バッファとして設定する。
【0133】
このような構成により、各バッファの蓄積量に応じて適切なバッファを優先バッファとして設定することができる。
【0134】
また、本発明の実施の形態に係るOSUでは、上記リソースは、下りフレームを他の装置へ送信するかまたはネットワーク受信装置で処理する前に、下りフレームを一時保存するためのメモリである。そして、取り出し部51は、各バッファから取り出した下りフレームをメモリに保存する。
【0135】
このような構成により、下りフレームを蓄積するためのメモリの容量を低減することができるため、装置の低コスト化を図ることができる。
【0136】
また、本発明の実施の形態に係るOSUでは、取り出し部51は、優先バッファから下りフレームが無くなるまで、当該優先バッファから連続して下りフレームを取り出す。
【0137】
このような構成により、優先バッファからの下りフレームの取り出し速度の高速化を実現することができる。
【0138】
なお、本発明の実施の形態に係るOSUでは、2つのSNIポートA,Bが設けられ、SNIポートAおよびSNIポートB間の冗長切り替えが行なわれる構成であるとしたが、これに限定するものではない。OSU12において3つ以上のSNIポートが設けられる構成であってもよい。
【0139】
また、本発明の実施の形態に係る局側装置は、集線部11を備える構成であるとしたが、これに限定するものではない。集線部11は、局側装置201ではなく、上位ネットワーク側に設けられてもよい。この場合、送信停止要求は、上位ネットワークからOSU12へ直接送信される。
【0140】
また、本発明の実施の形態として、PONシステムにおける局側装置を例示したが、PONシステムにおける局側装置に限らず、ネットワークから何らかの通信信号を受信するネットワーク受信装置に本発明を適用することが可能である。
【0141】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0142】
11 集線部
12,12−1〜12−m 光回線ユニット(OSU)
21 1GPON送受信部
22 10GPON送受信部
23 バッファ制御部
24 QOS部
25 マルチプレクサ
26,27 バッファ
28,29 MAC処理部
30 SNI−Aインタフェース部
31 SNI−Bインタフェース部
32 制御部
41,42 スイッチ部
51 取り出し部
91 メモリ
201 局側装置
202 宅側装置(ONU)
203−1〜203−m PON回線
204−1〜204−m 光カプラ
301 PONシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冗長化された複数の通信経路を介して通信信号を受信可能なネットワーク受信装置であって、
前記通信経路ごとに設けられ、前記通信経路から受けた通信信号を蓄積するための複数のバッファと、
前記バッファから前記通信信号を取り出すための取り出し部とを備え、
前記取り出し部によって取り出された前記通信信号のために設けられたリソースは、前記複数のバッファから取り出された前記通信信号間で共有する制約があり、
前記取り出し部は、前記通信経路の切り替え状態および前記バッファの状態の少なくとも一方に基づいて、優先すべき前記バッファである優先バッファを設定し、前記優先バッファからの前記通信信号の取り出しを、劣後する前記バッファからの前記通信信号の取り出しと比べて高速に行なう、ネットワーク受信装置。
【請求項2】
前記取り出し部は、切り替え先の前記通信経路に対応する前記バッファを優先バッファとして設定する、請求項1に記載のネットワーク受信装置。
【請求項3】
前記取り出し部は、切り替え元の前記通信経路に対応する前記バッファの状態が所定条件を満たすこと、および切り替え先の前記通信経路に対応する前記バッファの状態が所定条件を満たすことの少なくとも一方を、前記優先バッファの設定の条件とする、請求項2に記載のネットワーク受信装置。
【請求項4】
前記取り出し部は、切り替え元の前記通信経路に対応する前記バッファの蓄積量と比べて、切り替え先の前記通信経路に対応する前記バッファの蓄積量が多くなることを、前記優先バッファの設定の条件とする、請求項3に記載のネットワーク受信装置。
【請求項5】
前記取り出し部は、切り替え先の前記通信経路に対応する前記バッファの空き容量が所定値未満となることを、前記優先バッファの設定の条件とする、請求項3に記載のネットワーク受信装置。
【請求項6】
前記取り出し部は、前記バッファの蓄積量または空き容量に基づいて前記優先バッファを設定する、請求項1に記載のネットワーク受信装置。
【請求項7】
前記取り出し部は、蓄積量が所定値以上の前記バッファを前記優先バッファとして設定する、請求項6に記載のネットワーク受信装置。
【請求項8】
前記リソースは、前記通信信号を他の装置へ送信するかまたは前記ネットワーク受信装置で処理する前に、前記通信信号を一時保存するためのメモリであり、
前記取り出し部は、各前記バッファから取り出した前記通信信号を前記メモリに保存する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のネットワーク受信装置。
【請求項9】
前記取り出し部は、前記優先バッファから前記通信信号が無くなるまで、前記優先バッファから連続して前記通信信号を取り出す、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のネットワーク受信装置。
【請求項10】
冗長化された複数の通信経路を介して通信信号を受信可能であり、前記通信経路ごとに設けられ、前記通信経路から受けた通信信号を蓄積するための複数のバッファを備えるネットワーク受信装置における受信方法であって、
前記通信経路の切り替え状態および前記バッファの状態の少なくとも一方に基づいて、優先すべき前記バッファである優先バッファを設定するステップと、
前記バッファから前記通信信号を取り出すステップとを含み、
前記バッファから取り出された前記通信信号のために設けられたリソースは、前記複数のバッファから取り出された前記通信信号間で共有する制約があり、
前記通信信号を取り出すステップにおいては、前記優先バッファからの前記通信信号の取り出しを、劣後する前記バッファからの前記通信信号の取り出しと比べて高速に行なう、受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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