説明

ネブライザ

【課題】例えばジェット式ネブライザに好適で、器体が傾倒使用されても薬液の流出の心配がなく、また薬液の所期のエアロゾル状態を維持して、使用上の安全性と信頼性を確保できるとともに、組み立てが容易で安価に製作できるネブライザを提供する。
【解決手段】ケ−スハウジング4の内部に設けた液溜室5の底部にノズル6を突設し、該ノズル6の噴口13から圧縮空気を噴出可能し、該ノズル6の外周面に吸液管7を装着し、該吸液管7の上端部に液溜室5内の液体12を吸い出し可能な吸込口21を形成し、該液管7の内面に前記吸込口21に連通可能な吸上げ溝19を形成し、前記噴口13の直上にバッフル23を配置し、該バッフル23に前記圧縮空気と液体12とを衝突させエアロゾル29を発生可能にしたネブライザ1であって、前記吸液管7の下端部内面の全周に吸上げ溝19を形成したことを特徴とするネブライザ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばジェット式ネブライザに好適で、器体が傾倒使用されても薬液の流出の心配がなく、また薬液の所期のエアロゾル状態を維持して、使用上の安全性と信頼性を確保できるとともに、組み立てが容易で安価に製作できるネブライザに関する。
【背景技術】
【0002】
喘息または肺疾患の患者に対する薬剤投与法ないし治療法として、薬液を霧化(エアロゾル)し、これを患者に吸入させて薬物を気道或いは肺内に沈着させる吸入療法があり、この吸入療法に、薬液を所定粒径に調製して霧化し、これを患者に吸入させるネブライザが使用されている。
前記ネブライザは霧化方式によって、超音波の振動を利用して霧化する超音波式ネブライザと、ノズルから噴射するジェット流を利用して霧化するジェット式ネブライザとがあり、前者は後者に比べて概して高価であるという問題がある。
【0003】
このうち、ジェット式ネブライザとして、略円錐台形状の外囲器の内部に噴霧液体を収容する貯留部を備え、該貯留部の中央に圧縮空気を供給可能なノズルを突設し、該ノズルの小孔を上方に開口し、前記ノズルの周面に複数の凹溝を軸方向に形成するとともに、前記ノズルに構体を嵌合して立設し、該構体の上端部に前記小孔に連通する開孔を形成し、前記構体の上部に第2の構体を嵌合し、該第2の構体の上部に二つの上蓋を上下位置に配置し、一方、外囲器の上部に管状部を嵌合し、該管状部の一端に患者の吸い込み用の管状出口を設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
前記ネブライザは、使用時に貯留部の空気入口から圧縮空気を供給し、これをノズル内に導いて小孔から噴出し、ノズルと構体との間に形成される負圧によって、噴霧液体を凹溝を介して吸い上げ、これを小孔に導いて前記圧縮空気で霧化し、その霧粒子を第2の構体内に移動し、これを二つの上蓋を潜らせて大きな霧粒子を除去し、小さな霧粒子を移動させて患者に吸入させていた。
【0005】
しかし、前記ネブライザは霧粒子が微細化されるため、気道の奥部に移動して肺内に沈着し気道に沈着しないため、肺疾患の患者に適するが喘息患者には不適かつ危険になり、また外囲器を傾けて使用した場合、前記凹溝が噴霧液体から離れて前記液体の吸い上げないし霧化が不可能になり、しかも噴霧液体が外囲器から漏れ出す惧れがあって、使用上の安全性が損なわれるという問題があった。
【0006】
このような問題を解決するものとして、筒体内に前記ノズルおよび構体を複数配置し、前記構体上に第2の構体を上下動可能に設け、治療目的に対応する霧粒子の沈着位置に応じて、第2の構体の位置を移動調整し、所望の霧粒子径を得られるようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
しかし、前記ネブライザは、所望の霧粒子径を得られる反面、筒体を傾けて使用した場合、前記凹溝が噴霧液体から離れて前記液体の吸い上げないし霧化が不可能になり、しかも噴霧液体が外囲器から漏れ出す惧れがあって、使用上の安全性が損なわれるという問題があった。
【0008】
このような問題を解決するものとして、ノズルと前記構体を上方に縮径する円錐台形状に形成し、ノズルから噴出した霧粒子を直上の転向部材に衝突させ、大きな霧粒子を除去し、軽量で小径の霧粒子を容器の内室へ移動し、これをマウスピ−ス側へ導くとともに、容器の上部に外気を取り入れ可能な入口弁を設け、使用者が霧粒子を吸入時に外気を取り入れ、これを気流下降管路へ導き、かつその際出口弁を閉じてマウスピ−ス側への移動を促し、霧粒子を無駄なく吸入可能にする一方、マウスピ−スの周面に呼気ガスを外部へ排出可能な出口弁を設け、使用者の呼気時に前記入口弁を閉弁し、呼気ガスを無駄なく外部へ排出するようにしたものがある(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
しかし、前記ネブライザは、容器を傾けて使用した場合、噴霧液体が容器上部またはマウスピ−スから漏れ出す惧れがあり、また前記ノズルと構体とが別設されているため、容器を傾けて使用すると構体がノズルから離間して、転向部材表面との間隔が変化し、霧粒子径と霧粒子量が変化して所期の使用を得られなくなり、使用上の安全性が損なわれるとともに、前記ノズルと構体との間隔を極めて微小かつ精密に設定しているため、精密な組み立て精度を要して、高価になる等の問題があった。
【0010】
【特許文献1】特開昭54−146008号公報
【特許文献2】特公平2−51612号公報
【特許文献3】特公表平11−506642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような問題を解決し、例えばジェット式ネブライザに好適で、器体が傾倒使用されても薬液の流出の心配がなく、また薬液の所期のエアロゾル状態を維持して、使用上の安全性と信頼性を確保できるとともに、組み立てが容易で安価に製作できるネブライザを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、ケ−スハウジングの内部に設けた液溜室の底部にノズルを突設し、該ノズルの噴口から圧縮空気を噴出可能にするとともに、前記ノズルの外周面に吸液管を装着し、該吸液管の上端部に液溜室内の液体を吸い出し可能な吸込口を形成し、前記吸液管の内面に前記吸込口に連通可能な吸上げ溝を形成する一方、前記噴口の直上にバッフルを配置し、該バッフルに前記圧縮空気と液体とを衝突させエアロゾルを発生可能にしたネブライザにおいて、前記吸液管の下端部内面の全周に吸上げ溝を形成して、ネブライザを傾倒使用する異常時においても、液溜室内の液体に吸上げ溝を没入または浸漬可能にさせて、前記液体の吸い上げとエアロゾルの発生を実現可能にし、異常使用時における安全性と信頼性を確保し得るようにしている。
【0013】
請求項2の発明は、前記吸液管の内面の平面形状を略楕円形に形成し、前記吸液管の内面とノズルの外周面との間に円周方向に増減する間隙を形成し、液溜室内の液体を確実かつ能率良く吸い出せるようにしている。
請求項3の発明は、前記吸液管の内面とノズルとの間に大間隙を複数形成し、液溜室内の液体を無駄無く確実に吸い出せるようにしている。
請求項4の発明は、前記吸液管の上端部に前記バッフルを一体に設け、それらの部品点数を低減し、構成を簡潔にするとともに、その組み付けを容易に行なえるようにしている
請求項5の発明は、前記バッフル上に通気ダクトの下端部を係合可能に配置し、ネブライザを傾倒使用する異常時においても、前記バッフルの移動や位置ずれを阻止し、安定したエアロゾルの発生を確保し得るようにしている。
【0014】
請求項6の発明は、前記通気ダクトを外気に連通可能にし、流入した外気の圧力によってエアロゾルの吸入移動を促すようにしている。
請求項7の発明は、前記吸液管の上部にガイドコ−ンを囲繞して配置し、エアロゾルの拡散を防止し、これを無駄無く利用し得るようにしている。
請求項8の発明は、前記ガイドコ−ンの内側に前記通気ダクトを配置し、エアロゾルの吸入移動を確実に増進するようにしている。
請求項9の発明は、前記通気ダクトに外気を常時導入可能にし、エアロゾルの吸入時における排気弁の故障による窒息事故や、使用者の呼気時における排気弁の故障による窒息事故を阻止し、使用上の安全性を確保するようにしている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明は、吸液管の下端部内面の全周に吸上げ溝を形成したから、ネブライザを傾倒使用する異常時においても、液溜室内の液体に吸上げ溝を没入または浸漬可能にさせて、前記液体の吸い上げとエアロゾルの発生を実現可能にし、異常使用時における安全性と信頼性を確保することができる。
請求項2の発明は、前記吸液管の内面の平面形状を略楕円形に形成し、前記吸液管の内面とノズルの外周面との間に円周方向に増減する間隙を形成したから、液溜室内の液体を確実かつ能率良く吸い出すことができる。
【0016】
請求項3の発明は、前記吸液管の内面とノズルとの間に大間隙を複数形成したから、液溜室内の液体を無駄無く確実に吸い出すことができる。
請求項4の発明は、前記吸液管の上端部に前記バッフルを一体に設けたから、それらの部品点数を低減し、構成を簡潔にするとともに、その組み付けを容易に行なうことができる。
請求項5の発明は、前記バッフル上に通気ダクトの下端部を係合可能に配置したから、ネブライザを傾倒使用する異常時においても、前記バッフルの移動や位置ずれを阻止し、安定したエアロゾルの発生を確保することができる。
【0017】
請求項6の発明は、前記通気ダクトを外気に連通可能にしたから、流入した外気の圧力によってエアロゾルの吸入移動を促すことができる。
請求項7の発明は、前記吸液管の上部にガイドコ−ンを囲繞して配置したから、エアロゾルの拡散を防止し、これを無駄無く利用することができる。
【0018】
請求項8の発明は、前記ガイドコ−ンの内側に前記通気ダクトを配置したから、エアロゾルの吸入移動を確実に増進することができる。
請求項9の発明は、前記通気ダクトに外気を常時導入可能にしたから、エアロゾルの吸入時における排気弁の故障による窒息事故や、使用者の呼気時における排気弁の故障による窒息事故を阻止し、使用上の安全性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を喘息患者向けのジェット式ネブライザに適用した図示の実施形態について説明すると、図1乃至図10において1は、収納ケ−ス(図示略)に組み付けたホルダ−2に、掛止片3を掛け止めて垂直に支持したネブライザで、該ネブライザ1は、ケ−スハウジング4と、該ハウジング4の中間部に設けた液溜室5と、該液溜室5の底部に突設したノズル6と、該ノズル6に嵌合して装着した吸液管7と、前記ケ−スハウジング4の上端部に装着したアッパ−ハウジング8と、該アッパ−ハウジング8の下端部に接続したガイドコ−ン9と、アッパ−ハウジング8の周面に回動可能に装着した霧調節キャップ10と、前記アッパ−ハウジング8の上端部に接続したマウスピ−ス11と、を備え、これらは耐熱および耐薬品性の合成樹脂で所定形状に樹脂成形されている。
【0020】
このうち、前記ケ−スハウジング4の主要部は略円筒状に樹脂成形され、その内部の中間位置に有底の液溜室5が設けられ、該室5に吸込み液体である薬液12を収容可能にしている。
前記液溜室5の底部にノズル6が上方に突設され、該ノズル6は上方に縮径する真円状の円錐ないし円錐台形状に形成され、その下端部はケ−スハウジング4の内径よりも若干小径に成形され、その上端部が液溜室5の中高部の略中央に配置され、該上端部に微小円状の噴口13が形成されている。
【0021】
前記ノズル6の下方に噴口13に連通する導管14が突設され、該管14の内径は上方の噴口13に向かって漸減していて、該管14の下端部にホ−スジョイント15の上端部が接続されている。
前記ホ−スジョイント15の下端部に送気ホ−ス16が接続され、該ホ−ス16の他端が圧縮空気源であるエア−コンプレッサ(図示略)に接続されている。図中、17はホ−スジョイント15の下端部側方に突設した摘み片である。
【0022】
前記ノズル6の外周面は平滑に形成され、その平滑面上に吸液管7が重合して取り付けられている。前記吸液管7はノズル6に嵌合可能な円錐台形状に形成され、その内側に平面楕円形状の吸液穴7aが形成され、該吸液穴7aの壁面は平滑面に形成され、該吸液管7の下端部が前記ケ−スハウジング4の内面とノズル6の下端部との間に係合可能に配置されている。
【0023】
前記吸液穴7aは図6のように、後述するバッフルの長さ方向に長径を有する平面略楕円形状に形成され、該吸液穴7aに嵌合するノズル6の外周面との間に、円周方向に増減する間隙e,e(e<e)が形成されている。すなわち、バッフルの長さ方向の間隙eがバッフルの長さ方向と直交方向の間隙eよりも大きく形成されている。
【0024】
前記吸液穴7aの略楕円形状は、吸液管7の大径側の下端部から吸液管7の高さの略2/3に亘って略相似形状に形成され、その上方から吸液穴7aの平面形状が真円状に形成されている。
前記吸液管7の下端面は環状の平滑面に形成され、その等角度位置に複数、実施形態では4個の凸部18が突設され、吸液管7の下端面と液溜室5の底部との間に微小な空隙を形成している。
【0025】
前記吸液管7の内周面は平滑に形成され、該内面の対向位置に一対の吸上げ溝19,19が対称に成形されている。前記吸上げ溝19は、吸液穴7aの内面に対向して配置された略木の葉形状の素面20,20、つまり吸上げ溝19の非形成域、を除く全域に亘って形成されている。
【0026】
すなわち、前記吸上げ溝19は、吸液穴7aの内周面の下端部では全域に形成され、下端部以外では前記略木の葉形状の前記素面20,20が略楕円形の長径側から対向して形成され、この素面20,20域を除く吸液穴7aの内周面に、吸上げ溝19が広範囲に形成されていて、その溝19の深さは、前記素面20,20の端縁部が最も深く形成され、当該部から円周方向に緩やかに浅く形成されている。
【0027】
一方、吸液管7の高さの略2/3以上では、吸上げ溝19の領域が漸減し、狭小に形成された一対の吸上げ溝19が、吸液管7の上端部に形成した吸入孔21の口縁部に連通している。
【0028】
すなわち、前記吸上げ溝19の深さと幅は、吸液穴7aの内周面に三次元的に変化し、その深さは図7乃至図10のように、吸液管7の下端部から略中高部の間は上方に向かって緩やかに深く形成され、中高部から吸入孔21の間は略一定の深さを維持して形成されている。
【0029】
また、吸上げ溝19の幅は図5および図7のように、吸液管7の下端部から略中高部の間は、吸液管7の内面全周から上方に向かって、略アステロイド曲線状に緩やかに漸減して形成され、中高部から吸入孔21の間は略一定の幅を維持して形成されている。
【0030】
前記吸液管7の上端部に、前記噴口13に臨ませて略楕円状ないし四又形状の吸入孔21が形成され、その長軸側の開口部に前記吸上げ溝19,19が連通している。
前記吸入孔21の開口縁部に一対の脚22が突設され、該脚22,22上に略矩形板状のバッフル23が掛け渡されている。
【0031】
前記バッフル23は吸液管7と一体成形されて、吸入孔21の直上に間隙24を介して配置され、該間隙24を実施形態では喘息患者向けのエアロゾル粒径形成用に比較的大きく形成している。
前記バッフル23の断面は縦長矩形に形成され、その下端部の両側に、前記吸入孔21の長軸側の開口部に臨ませてテ−パ面25が形成され、後述するエアロゾルの当接面に機能させている。
【0032】
前記アッパ−ハウジング8の下端部は、Oリング26を介してケ−スハウジング4の上端部に気密に接続され、その中間部に円錐面状のテ−パ面8aが形成されている。
前記テ−パ面8aの一部に円周方向に沿って地紙形状の空気取入口27が形成され、該取入口27に臨ませて通気ダクト28が内側へ突出成形されている。
前記通気ダクト28は略ヘ字形状に屈曲成形され、その通気路は偏平な略楕円管状に形成され、その下端部が前記バッフル23の直上に係合可能に配置されていて、前記吸液管7の移動を阻止可能にしている。
【0033】
前記ガイドコ−ン9は下方に縮径する円錐台状の管体に形成され、その上端の大径部をアッパ−ハウジング8の下端部に嵌合して連結し、その下端の小径部を前記吸液管7の上部周辺を囲繞して配置し、発生した霧状のエアロゾル29を無駄無く移動可能にしている
【0034】
前記霧調節キャップ10は前記テ−パ面8aに回動可能に装着され、その内側に前記空気取入口27を開閉可能な遮断片30が突設されていて、前記キャップ10の回動角度によって空気取入口27の開度を調節し、該入口27からの空気の取入量を加減して、エアロゾル29の移動を促進または抑制可能にしている。
【0035】
なお、実施形態の霧調節キャップ10は、その全閉時においても上部に設けた小径の通気孔(図示略)が通気ダクト28に連通し、エアロゾル29の吸入時の窒息事故を回避し、または呼気時における後述の排気弁の故障に対応可能にしている。
【0036】
図中、31は前記霧調節キャップ10の周面に設けた調節表示、32は霧調節キャップ10の直下に設けた調節操作方向表示で、該表示31の両側に調節量表示33,34が設けられ、空気取り入れ量の多少を表示している。
【0037】
前記マウスピ−ス11は略ヘ字形状に屈曲され、その上端部に吸入口35が開口され、またマウスピ−ス11の周面に排気孔36が形成され、該排気孔36の外側の開口縁部にシ−ト状の排気弁37が、基端部を支点に部開閉可能に取り付けられている。
【0038】
この他、図中38は、ケ−スハウジング4の周面に上下動可能に取り付けたスイッチレバ−で、前記エアコンプレッサ(図示略)をONN・OFF可能にされ、39は前記スイッチレバ−38の直上に取り付けたスットパで、その上下作動時に前記レバ−38に係合し、該スイッチレバ−38の変位をロック可能にしている。
40はケ−スハウジング4の周面に設けた液面表示部で透明に形成され、その周面の上下位置に複数の液面表示目盛41が表示されている。
【0039】
このように構成したネブライザ1は大別すると、ケ−スハウジング4と、吸液管7と、アッパ−ハウジング8と、霧調節キャップ10と、マウスピ−ス11とからなり、これらは不使用時に分解され、ホルダ−2、エアコンプレッサ(図示略)、送気ホ−ス16等と一緒に収納ケ−ス(図示略)に収納されて取り扱われる。
この場合、前記吸液管7はバッフル23と一体成形され、それらの間隔24を一定に形成しているから、これらを別設して組み付けるものに比べて、部品点数の低減と組み付けの手間を解消し、確実かつ安定した間隔24を得られる。
【0040】
前記吸液管7の内側に平滑な吸液穴7aを形成し、該吸液穴7aをバッフル23の長さ方向に長径を有する平面略楕円形状に形成し、該吸液穴7aに嵌合するノズル6との間に円周方向に増減する間隙e,e(e<e)を形成する。すなわち、バッフル23の長さ方向の間隙eをバッフルの長さ方向と直交方向の間隙eよりも大きく形成する
また、前記吸液穴7aに形成した吸上げ溝19,19は、吸液管7の樹脂成形時に同時に成形されるから、均質かつ安定した溝形状を得られる。
【0041】
前記ネブライザ1を使用する際は、前記構成部品を収納ケ−スから取り出して組み立てる。
すなわち、ケ−スハウジング4内のノズル6にバッフル23と一体の吸液管7を嵌合し、所定量の薬液12をスポイト等で液溜室5に注入後、ケ−スハウジング4の上端部に、予めガイドコ−ン9を取り付けたアッパ−ハウジング8を接続する。
【0042】
その際、ガイドコ−ン9の先細側の下端部をノズル6の上部の外側を囲繞して配置し、またアッパ−ハウジング8と一体の通気ダクト28の下端部を、バッフル23の直上に係合可能に近接して配置する。
そして、前記アッパ−ハウジング8のテ−パ面8aに霧調節キャップ10を組み付け、アッパ−ハウジング8の上端部にマウスピ−ス11を接続する。
【0043】
この後、導管14の下端部にホ−スジョイント15の上端部を嵌合し、該ジョイント15の下端部に送気ホ−ス16を接続し、該ホ−ス16の他端をエア−コンプレッサ(図示略)に接続する。
更に、掛止片3をホルダ−2に掛け止めてネブライザ1を垂直に支持し、またスイッチレバ−38に接続した電源コ−ド(図示略)を電源に接続する。
【0044】
こうして組み立てた後、スイッチレバ−38をON操作すると、エア−コンプレッサ(図示略)が駆動し、その圧縮空気が送気ホ−ス18から導管14に導かれて、ノズル6の噴口13から噴出する。
このため、前記噴口13と、該噴口13に臨む吸上げ溝19,19との間に負圧が形成され、該負圧によって液溜室5内の薬液12が吸上げ溝19,19に吸い上げられ、該薬液12が直上のバッフル23のテ−パ面25,25に衝突し、また圧縮空気が直上のバッフル23の平坦な下端面に衝突して、細かな霧状のエアロゾル29を発生する。
【0045】
前記エアロゾル29はガイドコ−ン9によって、その外側への拡散を阻止され、無駄無くガイドコ−ン9の内面に沿って上動する。
その際、霧調節キャップ10の空気取入口27から所定量の外気が取り入れられ、これが通気ダクト28に導かれて下降し、その大気圧によってエアロゾル29を押し上げ、その上動を促す。
【0046】
このため、エアロゾル29は図3の矢視方向に速やかに移動し、吸入口35から流出して使用者に吸入される。実施形態では、エアロゾル29の粒径は0.5〜5μmに形成され、これが喘息患者の気道に沈着して所期の薬効を得られる。
この場合、霧調節キャップ10を回動操作し、空気の取り入れ量を調量すれば、エアロゾル29の吸入量と移動速度が加減され、利用者の好みに応じた利用を図れる。
【0047】
一方、このようなエアロゾル29の吸入時には排気弁37が閉弁し、エアロゾル29を無駄無く吸入し得る。また、前記吸入時には霧調節キャップ10の全閉時でも、通気孔(図示略)から僅かな空気が流入するから、利用者の窒息事故を阻止し、使用上の安全性を確保し得る。
【0048】
更に、利用者の呼気時には、その呼気圧によって排気弁37が開弁し、呼気が排気孔36から外部へ排出し得る。その際、排気弁37が故障して開弁不可能な場合でも、通気孔(図示略)が開口され、一定の呼気を排出し得るから、利用者の窒息事故を阻止し、使用上の安全性を確保し得る。
【0049】
このようなネブライザ1の利用時、外部の振動や衝撃によってネブライザ1が傾倒し、或いは利用者の行為によって傾いて使用された場合、薬液12はガイドコ−ン9によってマウスピ−ス11側への移動を阻止または抑制するから、薬液12の漏出を阻止し、使用上の安全性を確保し得る。
【0050】
また、ネブライザ1が傾倒しても、バッフル23が通気ダクト28の下端部に係合して、吸液管7の移動ないし位置変化を阻止し、またノズル6からの離脱を阻止するとともに、バッフル23とノズル6との間隙24が変化することがないから、エアロゾル29の粒径が変化することがなく、当初のエアロゾル29の状態を維持し得る。
【0051】
しかも、吸液管7の下端部の内面全周に吸上げ溝19が形成されているから、該吸上げ溝19と液溜室5内の薬液12との間に一定の浸漬ないし没入状態が確保され、該吸上げ溝19を介して薬液12の吸い上げが可能になる。
【0052】
その際、吸液穴7aとノズル6の外周面との間の間隙e,e(e<e)が円周上で変化して形成され、吸液穴7aの内周面に形成した略木の葉形状の素面20,20の下端部のeが最も大きく形成されるから、薬液12の残量を能率良くかつ無駄無く吸い上げられ、ネブライザ1が仮に傾倒使用されても、一定のエアロゾル29の吸入が可能になり、使用上の安全性を確保し得る。
【産業上の利用可能性】
【0053】
このように本発明のネブライザは、器体が傾倒使用されても薬液の流出の心配がなく、また薬液の所期のエアロゾル状態を維持して、使用上の安全性と信頼性を確保できるとともに、組み立てが容易で安価に製作できるから、例えばジェット式ネブライザに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明を適用したジェット式ネブライザの実施形態を示す平面図ある。
【図2】図1の右側面図である。
【図3】図1のA−A線に沿う断面図で、垂直に支持してエアロゾルを発生し吸入している使用状態を示している。
【図4】本発明に適用した吸液管を拡大して示す平面図である。
【図5】図4のB−B線に沿う断面図である。
【0055】
【図6】図4の底面図である。
【図7】図4のC−C線に沿う断面図である。
【図8】図7のD−D線に沿う断面図である。
【図9】図7のE−E線に沿う断面図である。
【図10】図7のF−F線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 ネブライザ
4 ケ−スハウジング
5 液溜室
6 ノズル
7 吸液管
9 ガイドコ−ン
12 液体(薬液)
【0057】
13 噴口
19 吸上げ溝
21 吸込孔
23 バッフル
28 通気ダクト
29 エアロゾル
,e 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケ−スハウジングの内部に設けた液溜室の底部にノズルを突設し、該ノズルの噴口から圧縮空気を噴出可能にするとともに、前記ノズルの外周面に吸液管を装着し、該吸液管の上端部に液溜室内の液体を吸い出し可能な吸込口を形成し、前記吸液管の内面に前記吸込口に連通可能な吸上げ溝を形成する一方、前記噴口の直上にバッフルを配置し、該バッフルに前記圧縮空気と液体とを衝突させエアロゾルを発生可能にしたネブライザにおいて、前記吸液管の下端部内面の全周に吸上げ溝を形成したことを特徴とするネブライザ。
【請求項2】
前記吸液管の内面の平面形状を略楕円形に形成し、前記吸液管の内面とノズルの外周面との間に円周方向に増減する間隙を形成した請求項1記載のネブライザ。
【請求項3】
前記吸液管の内面とノズルとの間に大間隙を複数形成した請求項2記載のネブライザ。
【請求項4】
前記吸液管の上端部に前記バッフルを一体に設けた請求項1記載のネブライザ。
【請求項5】
前記バッフル上に通気ダクトの下端部を係合可能に配置した請求項1記載のネブライザ
【請求項6】
前記通気ダクトを外気に連通可能にした請求項5記載のネブライザ。
【請求項7】
前記吸液管の上部にガイドコ−ンを囲繞して配置した請求項1記載のネブライザ。
【請求項8】
前記ガイドコ−ンの内側に前記通気ダクトを配置した請求項5または6項記載のネブライザ。
【請求項9】
前記通気ダクトに外気を常時導入可能にした請求項5または6項記載のネブライザ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−195838(P2007−195838A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20006(P2006−20006)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(304052754)ブルークロス株式会社 (1)