説明

ノイズフィルタ装置

【課題】 筐体内の電子機器等で発生したノイズが空間伝搬等によってノイズフィルタと筐体の出口部との間の配線に伝搬するのを防止するシールド領域の構成が簡単に出来るノイズフィルタ装置を提供する。
【解決手段】 筐体(1)と、前記筐体内に収納される電子機器(2)と、前記筐体の内部と外部との間を接続する配線(3)と、前記配線の途中に設けられ、前記配線を伝搬するノイズを除去するノイズフィルタ(4)とを備え、前記配線(3)の一部は、前記電子機器(2)と前記ノイズフィルタ(4)の間に設けられていると共に、前記配線(3)の前記電子機器(2)に面する面の面積は、前記電子機器(2)における前記ノイズフィルタ(4)に面する面の面積の約0.7倍以上であるノイズフィルタ装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はノイズフィルタ装置に関し、特に筐体内に電子機器及びノイズフィルタを収納するノイズフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両内等にカーステレオやテレビ、パソコン等の電気機器が搭載されることが多くなっている。このような電気機器の電源を得るために、車載バッテリを入力電源とするDC−DCコンバータやDC−ACインバータ等の電源装置が車両に搭載される。このようなDC−DCコンバータやDC−ACインバータ等の電源装置は、スイッチング素子が高速でオン、オフされるため高周波のノイズが発生する。発生したノイズが入出力線等を介して伝搬されると、例えばラジオやテレビ放送の受信電波に影響し電波障害を起こす等のノイズ障害が発生する。このため、電源装置を収容する筐体の出口部分と電源装置との間にはノイズフィルタが設けられている。このようなノイズフィルタでは、ノイズフィルタより電源装置側に設けられている配線を伝搬するノイズはノイズフィルタで除去することができるが、電源装置で発生したノイズは筐体内を空間伝搬する。この空間伝搬によって、ノイズフィルタと筐体の出口部との間に設けられている配線にノイズが伝搬した場合には、このノイズは配線を介して筐体の外部に漏洩する。筐体の外部にノイズが漏洩すると、筐体の外部に設けられている電気機器にノイズ障害が発生する。
【0003】
そこで、筐体内には、筐体の出口部を含む領域を形成する仕切壁を備えており、ノイズフィルタと筐体の出口部との間の配線を前記領域内に設けることで、筐体内の電子機器等で発生したノイズが空間伝搬等によってノイズフィルタと筐体の出口部との間の配線に伝搬するのを防止することができ、配線を介して筐体の外部にノイズが漏洩するのを防止することができるノイズフィルタ装置が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−44685
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に示す従来技術では、筐体内の仕切壁にて形成されたシールド領域にノイズフィルタと筐体の出口部との間の出力線を配設しているが、このシールド領域を構成するため、筐体の形状が複雑になるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、その目的は、筐体の内部と外部との間を接続する配線を、電子機器とノイズフィルタの間に設け、シールド領域の構成部品として使用することにより、シールド領域の構成が簡単に出来るなどの効果を奏するノイズフィルタ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明においては、筐体と、前記筐体内に収納される電子機器と、前記筐体の内部と外部との間を接続する配線と、前記配線の途中に設けられ、前記配線を伝搬するノイズを除去するノイズフィルタとを備え、前記配線の一部が、前記電子機器と前記ノイズフィルタの間に設けられ、且つ、電子機器の面に対向しているノイズフィルタ装置を提供する。
【0007】
これによると、配線の一部が前記電子機器と前記ノイズフィルタの間に設けられていることにより、前記電子機器から空間伝搬され、ノイズフィルタと筐体の出口部との間の配線を介して外部に漏洩するノイズを低減することが出来る。
【0008】
また、請求項2に記載の発明のように、電子機器の面に対向している前記配線の一部は板状に形成されていると、板状の配線が、電子機器とノイズフィルタとの間に設けられ、前記電子機器から空間伝搬されるノイズを遮断するシールド壁として機能するため、シールド領域の構成が簡単に出来る。
【0009】
また、請求項3に記載の発明のように、前記配線の前記電子機器と前記ノイズフィルタの間部分における前記電子機器に面する面の面積は、前記電子機器における前記ノイズフィルタに面する面の面積の約0.7倍以上であると、前記電子機器から空間伝搬され、ノイズフィルタと筐体の出口部との間の配線を介して外部に漏洩するノイズをより低減することが出来る。
【0010】
また、請求項4に記載の発明のように、前記筐体内の前記電子機器と前記ノイズフィルタの間には、筐体に固定された仕切壁が設けられており、前記配線の前記電子機器と前記ノイズフィルタの間部分における前記電子機器に面する面と、前記仕切壁における前記電子機器に面する面の合計面積は、前記電子機器における前記ノイズフィルタに面する面の面積の約0.7倍以上であり、前記配線の前記電子機器と前記ノイズフィルタの間部分における前記電子機器に面する面の面積は、前記仕切壁における前記電子機器に面する面の面積の約0.5倍以上であると、電子機器の取付け位置を示すために設けられた仕切壁と、配線の一部とを組み合わせることで、電子機器から空間伝搬されるノイズを遮断することが出来る。また仕切壁のみによらず配線によって、電子機器とノイズフィル前記電子機器から空間伝搬されるノイズを遮断するため、シールド領域の構成が簡単に出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
第1の発明の実施形態の構成を図面に従って説明する。図1は、本発明のノイズフィルタ装置の1実施の形態の要部を示す構成図である。図1の(1)は、本実施形態のノイズフィルタ装置を筐体1の上部に設けられた蓋部(図示せず)を外し真上から見た場合の図であり、図1の(2)は、本実施形態のノイズフィルタ装置を筐体1の上部に設けられた蓋部を外し真上から見た場合の略図である。図2は、図1の(2)におけるA−A’及びB−B’矢視図である。図1及び図2に示すように、筐体1内には、DC−DCコンバータやDC−ACインバータ等の電子機器2が収納されている。また電子機器2の他に、ノイズフィルタ4、電子機器2とノイズフィルタ4を接続する配線3、ノイズフィルタ4から筐体1の外部へ通じる配線5、電子機器2の取付け位置を示す仕切壁6が設けられており、電子機器2で発生し、配線3を介して伝搬されるノイズはノイズフィルタ4によって除去されている。また、電子機器2で発生し、空間伝搬するノイズは、配線3及び仕切壁6からなるシールド壁によって遮断されている。これにより筐体1の外部に漏洩するノイズを低減している。以下詳細に説明する。筐体1は、金属等からなり、箱状に形成されている。また、蓋部(図示せず)を有している。(以下、蓋部も含めて筐体と呼ぶ。)筐体1の材料は、電磁波が外部へ漏れないようにシールド特性を有すると良い。なお、材料、形状については、適宜設計変更して良い。例えばアルムニウム等の合金を用いて軽量化を図っても良い。電子機器2は、例えば、DC−DCコンバータやDC−ACインバータ等であり、DC−DCコンバータは、例えば車載バッテリーの300Vの直流電力を12Vの直流電力に変換する。DC−ACインバータは、例えば車載バッテリーの12Vの直流電力を60Hz、100Vの交流電力に変換する。このような電子機器2では機器内のスイッチング素子から高周波のノイズが発生する。電子機器2には銅等からなる配線3が設けられている。配線3と配線5の間には、電子機器2等で発生したノイズが配線3、5を介して外部へ伝搬されるのを防止するためにノイズフィルタ4が設けられている。ノイズフィルタ4は、コンデンサやコイル等から構成されており、コンデンサの静電容量やコイルのインダクタンスに対応した周波数のノイズを除去する。ノイズフィルタ4には銅等からなる配線5が設けられており、配線5は筐体1の外部へ通じている。筐体1の出口部分は、配線5の周りをゴムや樹脂等の密封部材7で密封し、筐体1の外部から水等が浸入するのを防止するのが望ましい。
【0012】
以下、本発明の特徴部分について説明する。図1及び図2に示すように、電子機器2に設けられた配線3は、板状に形成されている。配線3は電子機器2及びノイズフィルタ4に図示しないビス止め等で固定され、電気的に導通している。仕切壁6は、同じく板状に形成され、筐体1に固定されており、電子機器2の取付け位置を示す役割がある。
【0013】
このように形成された配線3の面積と仕切壁6の合計面積A1は、電子機器2におけるノイズフィルタ4に面する面の面積Bの約0.7倍以上となっている。これにより、電子機器2から空間伝搬され、ノイズフィルタ4と筐体1の出口部との間の配線5を介して外部に漏洩するノイズを低減することが出来る。また、元々、電子機器2の取付け位置を示す役割を持つ仕切壁6をシールド壁として利用するため、筐体1を変更することなく、ノイズを低減することが出来る。
【0014】
図3は、本発明における他の実施形態の構成を示す構成図である。図3の(1)は、本実施形態のノイズフィルタ装置を筐体1の上部に設けられた蓋部(図示せず)を外し真上から見た場合の略図であり、図3の(2)は、図3の(1)におけるA−A’矢視図およびB−B’矢視図である。図3に示すように、配線3と仕切壁6の高さは、電子機器2の高さと異なっており、この電子機器2と高さの異なる配線3の面積と仕切壁6の合計面積A2は、電子機器2におけるノイズフィルタ4に面する面の面積Bの約0.7倍以上であっても良い。
【0015】
図4は、本発明における他の実施形態の構成を示す構成図である。図4に示すように、仕切壁6は複数あっても良い。
【0016】
図5は、本発明における他の実施形態の構成を示す構成図である。図1及至4との違いは、筐体1に仕切壁6が設けられていない点である。図5に示すように、配線3は筐体1内に収納され、電子機器2とノイズフィルタ4との間に設けられている。また配線3は板状に形成されると共に、配線3の面積は、電子機器2におけるノイズフィルタ4に面する面の面積の約0.7倍以上となっている。これにより、電子機器2から空間伝搬され、ノイズフィルタ4と筐体1の出口部との間の配線5を介して外部に漏洩するノイズを低減することが出来る。
【0017】
図6は、本発明における他の実施形態の構成を示す構成図である。図6に示すように、電子機器2の複数の面がノイズフィルタ4に臨んで構成されており、この電子機器2の複数の面とノイズフィルタ4との間に設けられた配線3の面積は、電子機器2におけるノイズフィルタ4に面する面の面積の約0.7倍以上であっても良い。
【0018】
以上述べたように本実施の形態に係わるでは、配線3の一部が前記電子機器2と前記ノイズフィルタ4の間に設けられていることにより、電子機器2から空間伝搬され、ノイズフィルタ4と筐体1の出口部との間の配線5を介して外部に漏洩するノイズを低減することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明における実施形態のノイズフィルタ装置の構成を示す構成図(1)である。
【図2】図1の(2)におけるA−A’及びB−B’矢視図である。
【図3】本発明における実施形態のノイズフィルタ装置の構成を示す構成図(2)である。
【図4】本発明における実施形態のノイズフィルタ装置の構成を示す構成図(3)である。
【図5】本発明における実施形態のノイズフィルタ装置の構成を示す構成図(4)である。
【図6】本発明における実施形態のノイズフィルタ装置の構成を示す構成図(5)である。
【符号の説明】
【0020】
1 筐体
2 電子機器
3 配線(電源装置〜フィルタ)
4 ノイズフィルタ
5 配線(フィルタ〜筐体外部)
6 仕切壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に収納される電子機器と、
前記筐体の内部と外部との間を接続する配線と、
前記配線の途中に設けられ、前記配線を伝搬するノイズを除去するノイズフィルタとを備え、
前記配線の一部が、前記電子機器と前記ノイズフィルタの間に設けられ、且つ、電子機器の面に対向しているノイズフィルタ装置。
【請求項2】
電子機器の面に対向している前記配線の一部は板状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のノイズフィルタ装置。
【請求項3】
前記配線の前記電子機器と前記ノイズフィルタの間部分における前記電子機器に面する面の面積は、前記電子機器における前記ノイズフィルタに面する面の面積の約0.7倍以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のノイズフィルタ装置。
【請求項4】
前記筐体内の前記電子機器と前記ノイズフィルタの間には、筐体に固定された仕切壁が設けられており、
前記配線の前記電子機器と前記ノイズフィルタの間部分における前記電子機器に面する面と、前記仕切壁における前記電子機器に面する面の合計面積は、前記電子機器における前記ノイズフィルタに面する面の面積の約0.7倍以上であり、
前記配線の前記電子機器と前記ノイズフィルタの間部分における前記電子機器に面する面の面積は、前記仕切壁における前記電子機器に面する面の面積の約0.5倍以上であることを特徴とする請求項1乃至3に記載のノイズフィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−245092(P2006−245092A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55518(P2005−55518)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】