説明

ノイズ抑制構造

【課題】より高周波数帯域において電磁ノイズを抑制可能なノイズ抑制構造を提供すること。
【解決手段】電気エネルギーを送るための導体線と、上記導体線の外周を被覆する軟磁性金属層と、上記軟磁性金属層の少なくとも長手方向の両端に設けられた接地部とを有するノイズ抑制構造とする。上記軟磁性金属層は、結晶粒径が0.1〜200μmの範囲内にあることが好ましい。上記ノイズ抑制構造は、上記導体線の外周を被覆し、接地された金属線層を有することが好ましい。上記ノイズ抑制構造は、上記導体線の外周を被覆し、マトリクスポリマー中に軟磁性粉末が分散されてなる軟磁性体層を有することが好ましい。上記ノイズ抑制構造において、上記導体線はモータと駆動回路との間に設けられていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズ抑制構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種分野において電気エネルギーを送る機会が増大している。例えば、自動車分野においては、駆動源にエンジンとモータとを併用するハイブリッド車が普及し始めており、また、駆動源にモータを用いた電気自動車や燃料電池自動車の実用化も進められている。これら自動車では、バッテリに蓄えられた直流電力がインバータによって交流電力に変換され、この交流電力がモータに給電される。この際、電力の給電は、通常、電力系ケーブルを介して行われる。
【0003】
上記インバータは、一般に、複数の半導体素子をスイッチング制御することにより、直流電力を交流電力に変換している。そのため、スイッチングに起因して電磁ノイズが発生する。最近では、特に、スイッチング制御を高速で行うために使用周波数が高周波化されてきており、電磁ノイズが発生しやすくなっている。
【0004】
電磁ノイズの低減を図る技術としては、例えば、上記電力系ケーブルにおける導体線の外周をアルミニウム編組(以下、「Al編組」という。)にて覆い、Al編組の片側端部を自動車のボディ等に接続して接地する方法が広く知られている。また、本発明に先行するノイズ低減技術として、以下の特許文献1、2が知られている。
【0005】
すなわち、特許文献1には、Fe−Ni系等の磁気遮蔽機能を有する合金からなり、厚さが100μm以下の柔軟性を有する磁気遮蔽用シートを各種ケーブルの表面に巻きつける点が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、電力変換装置と誘導電動機の接続にシールド線を用い、シールド線の芯線は電力変換装置の交流側出力と誘導電動機の接続に用い、シールド線のシールド部は電力変換装置の直流側負極と誘導電動機のケースとの接続の一部に用いることにより、電力変換装置と誘導電動機間の配線や誘導電動機から流出する高周波電流を抑制する点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−93284号公報
【特許文献2】特開平11−355910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した電磁ノイズは、電力系ケーブルを伝導する伝導ノイズと、電力系ケーブルの表面から放射される放射ノイズとに大別することができる。
【0009】
前者の伝導ノイズは、例えば、モータの発熱やモータ内における励磁コイル間の放電等を生じさせる。これらを防止するため、冷却方法・構造の工夫やコイル間隔の拡張等の対策が行われることがある。しかしながら、この種の対策は、モータの大型化を招く。一方、後者の放射ノイズは、例えば、ハイブリッド車や電気自動車等に用いられる通信線等、各種の制御系ケーブル内の通信信号と結合し、電気・電子機器の制御に悪影響を及ぼす。
【0010】
そのため、上記電磁ノイズはできる限り低減することが望ましい。近年では、使用周波数が高周波化されてきていることから、より高周波数帯域においても電磁ノイズを抑制することが望まれている。
【0011】
しかしながら、電磁ノイズに対する対策を何ら施さない場合はもちろんのこと、従来広く知られている、導体線の外周をAl編組にて覆ってその片側端部を接地する手法では、より高周波数帯域において電磁ノイズを抑制することが困難であった。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、より高周波数帯域において電磁ノイズを抑制可能なノイズ抑制構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明に係るノイズ抑制構造は、電気エネルギーを送るための導体線と、上記導体線の外周を被覆する軟磁性金属層と、上記軟磁性金属層の少なくとも長手方向の両端に設けられた接地部とを有することを要旨とする。
【0014】
ここで、上記ノイズ抑制構造において、上記軟磁性金属層は、結晶粒径が0.1〜200μmの範囲内にあることが好ましい。
【0015】
また、上記ノイズ抑制構造は、上記導体線の外周を被覆し、接地された金属線層を有することが好ましい。
【0016】
また、上記ノイズ抑制構造は、上記導体線の外周を被覆し、マトリクスポリマー中に軟磁性粉末が分散されてなる軟磁性体層を有することが好ましい。
【0017】
また、上記ノイズ抑制構造において、上記軟磁性金属層は、冷間加工率5%〜95%の圧延処理が施された後、700℃〜1000℃の熱処理が施されたものであることが好ましい。
【0018】
また、上記ノイズ抑制構造において、上記導体線はモータと駆動回路との間に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
従来、電気エネルギーを送る導体線の外周をAl編組にて覆った場合、その片側端部のみを接地することが通常であった。これに対し、本発明に係るノイズ抑制構造は、電気エネルギーを送る導体線と、上記導体線の外周を被覆する軟磁性金属層と、上記軟磁性金属層の少なくとも長手方向の両端に設けられた接地部とを有している。そのため、従来構造ではとりきれなかった、より高周波数帯域における電磁ノイズを抑制することが可能となる。
【0020】
ここで、上記ノイズ抑制構造において、軟磁性金属層の結晶粒径が、上述した特定範囲内にある場合には、軟磁性金属層の透磁率が大きくなる。そのため、高周波数帯域において電磁ノイズを抑制しやすくなる。
【0021】
また、上記ノイズ抑制構造が、上記導体線の外周を被覆し、接地された金属線層を有している場合には、高周波数帯域における伝導ノイズを低減することができる。また、放射ノイズのレベルを低減することができる。それ故、電磁ノイズの抑制効果が大きくなる。
【0022】
また、上記ノイズ抑制構造が、上記導体線の外周を被覆し、マトリクスポリマー中に軟磁性粉末が分散されてなる軟磁性体層を有している場合には、電磁ノイズの抑制効果がさらに大きくなる。特に、高周波数帯域における伝導ノイズをより低減することができる。
【0023】
また、上記ノイズ抑制構造において、上記軟磁性金属層が、冷間加工率5%〜95%の圧延処理が施された後、700℃〜1000℃の熱処理が施されたものである場合には、上記軟磁性金属層の透磁率が大きくなる。そのため、高周波数帯域において電磁ノイズを抑制しやすくなる。
【0024】
また、上記導体線がモータと駆動回路との間に設けられている場合には、ハイブリッド車や電気自動車、燃料電池自動車等、駆動源の一部または全部にモータを用いる自動車等の車両に好適となる。そのため、例えば、伝導ノイズの低減によるモータの小型化に寄与できる。また、放射ノイズの低減による車載機器の誤作動防止等に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施形態に係るノイズ抑制構造を模式的に示した図である。
【図2】第2の実施形態に係るノイズ抑制構造を模式的に示した図である。
【図3】第3の実施形態に係るノイズ抑制構造を模式的に示した図である。
【図4】第4の実施形態に係るノイズ抑制構造を模式的に示した図である。
【図5】第5の実施形態に係るノイズ抑制構造を模式的に示した図である。
【図6】第6の実施形態に係るノイズ抑制構造を模式的に示した図である。
【図7】第7の実施形態に係るノイズ抑制構造を模式的に示した図である。
【図8】第8の実施形態に係るノイズ抑制構造を模式的に示した図である。
【図9】第9の実施形態に係るノイズ抑制構造を模式的に示した図である。
【図10】第10の実施形態に係るノイズ抑制構造を模式的に示した図である。
【図11】第11の実施形態に係るノイズ抑制構造を模式的に示した図である。
【図12】第12の実施形態に係るノイズ抑制構造を模式的に示した図である。
【図13】第13の実施形態に係るノイズ抑制構造を模式的に示した図である。
【図14】電力系ケーブルのAl編組層をAl板に接地しなかった場合における周波数と放射ノイズとの関係を示した図である。
【図15】電力系ケーブルのAl編組層のモータ側の端部をAl板に接地した場合における周波数と放射ノイズとの関係を示した図である。
【図16】電力系ケーブルのAl編組層の駆動回路側の端部をAl板に接地した場合における周波数と放射ノイズとの関係を示した図である。
【図17】電力系ケーブルのAl編組層のモータ側の端部および駆動回路側の端部(つまり、Al編組層の長手方向の両側端部)をAl板に接地した場合における周波数と放射ノイズとの関係を示した図である。
【図18】軟磁性金属層としてのパーマロイ層の圧延処理後の熱処理温度と複素比透磁率│μ│との関係を示した図である。
【図19】周波数と伝導ノイズとの関係を示した図である(比較例1、実施例1)
【図20】周波数と伝導ノイズとの関係を示した図である(比較例1、比較例2)
【図21】周波数と伝導ノイズとの関係を示した図である(参考例1、比較例1、実施例1、実施例2)
【図22】周波数と放射ノイズとの関係を示した図である(参考例2、比較例3、実施例3、実施例4)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態に係るノイズ抑制構造について詳細に説明する。
【0027】
(第1のノイズ抑制構造)
図1は、第1の実施形態に係るノイズ抑制構造を模式的に示した図であり、(a)は断面図、(b)は正面図である。第1のノイズ抑制構造10は、導体線12と、軟磁性金属層14と、接地部16とを有している。
【0028】
導体線12は、電気エネルギーを送るためのものである。導体線12の材質としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属材料を例示することができる。好ましくは、軽量化等の観点から、アルミニウム、アルミニウム合金であると良い。導体線12の構成は、単線であっても良いし、金属素線を複数撚り合わせた撚線等であっても良い。また、導体線12は、丸線であっても、角線等であっても良い。導体線12の一端は、モータ等に接続され、導体線12の他端は、駆動回路等に接続される。詳しくは、後述する。
【0029】
軟磁性金属層14は、導体線12の外周を被覆している。軟磁性金属層14と導体線12とは非接触の状態とされている。軟磁性金属層14は、1層から構成されていても良いし、2層以上から構成されていても良い。軟磁性金属層14が2層以上から構成される場合、各層は離間されていても良いし、接していても良い。
【0030】
軟磁性金属層14の材質としては、例えば、Fe−Ni系合金、Fe−Cr−Al系合金、Fe−Co−V系合金等を例示することができる。このうち、好ましくは、ノイズ抑制に有利である等の観点から、Fe−Ni系合金であると良い。Fe−Ni系合金としては、Ni含有量が30〜85質量%のものを好適に用いることができ、具体的には、PBパーマロイ(Fe−45%Ni)、PCパーマロイ−1(Fe−80%Ni−数%Mo)、PCパーマロイ−2(Fe−78%Ni−数%Mo−数%Cu)、PDパーマロイ(Fe−36%Ni)等のパーマロイ系合金などを例示することができる。
【0031】
軟磁性金属層14の結晶粒径は、好ましくは、0.1〜200μmの範囲内、より好ましくは、1〜100μmの範囲内にあると良い。さらに好ましくは、1〜10μm、最も好ましくは、3〜6μmの範囲内にあると良い。軟磁性金属層14の透磁率が大きくなるため、高周波数帯域において電磁ノイズを抑制しやすくなるからである。軟磁性金属層14の結晶粒径は、軟磁性金属材料を圧延等により箔状等に形成した後、最適な熱処理温度で熱処理するなどすれば、調整することができる。
【0032】
なお、上記結晶粒径は、軟磁性金属層14の表面の組織観察写真を結晶粒度試験方法ASTM(E112−88)に基づき測定することができる。
【0033】
軟磁性金属層14は、圧延処理が施された後、熱処理により再結晶化されたものであることが好ましい。軟磁性金属層の薄肉化と、当該薄肉化により押し潰された結晶粒の再結晶化による透磁率の増大とのバランスに優れるからである。具体的には、上記圧延処理時の冷間加工率は、好ましくは、5%〜95%の範囲内、より好ましくは、50〜80%の範囲内、さらに好ましくは、60〜75%の範囲内にあると良い。また、熱処理温度は、好ましくは、700℃〜1000℃、より好ましくは、800℃〜900℃の範囲内にあると良い。軟磁性金属層14の透磁率が大きくなるため、高周波数帯域において電磁ノイズを抑制しやすくなるからである。
【0034】
接地部16は、軟磁性金属層14の少なくとも長手方向の両端に設けられている。接地部16は、軟磁性金属層14の少なくとも長手方向の両端に設けられておれば、軟磁性金属層14の長手方向の途中に1または2以上の接地部が設けられていても良い。接地部16は、軟磁性金属層14を接地できれば、あらゆる構成を採用することができる。例えば、軟磁性金属層14の長手方向の両端に別部材として導電性部材を接続し、これを介して接地することができる。また、軟磁性金属層14の長手方向の両端から軟磁性金属層14の一部を延設して接地することもできる。接地部16の材質としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属材料を例示することができる。また、接地の態様としては、導体線12がモータと駆動回路との間に設けられている場合、一端の接地部はモータ本体の一部に接地し、他端の接地部は、駆動回路本体の一部に接地することができる。
【0035】
第1のノイズ抑制構造10において、導体線12と軟磁性金属層14との間は、塩化ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂等の各種ポリマー、必要に応じて添加される難燃剤、酸化防止剤等の添加剤などを含む絶縁性組成物より構成される絶縁体を配置することができる。また、この種の絶縁体は、軟磁性金属層14の外周にも配置することができる。
【0036】
第1のノイズ抑制構造10は、例えば、導体線12の外周に絶縁体層が被覆された電力系ケーブルの外周に箔状の軟磁性金属材料を巻き付けて軟磁性金属層14とし、この軟磁性金属層14の長手方向の両端に接地部16を形成するなどすれば得ることができる。
【0037】
上述した第1のノイズ抑制構造10によれば、従来構造ではとりきれなかった、より高周波数帯域における電磁ノイズを抑制することができる。
【0038】
以下、本実施形態に係るノイズ抑制構造として、各種パターンについて説明するが、以下の実施形態に係るノイズ抑制構造において、上述した導体線12、軟磁性金属層14、接地部16の材質や構成は、基本的に、第1のノイズ抑制構造10と同様であるので、その説明は以下省略する。
【0039】
(第2のノイズ抑制構造)
図2は、第2の実施形態に係るノイズ抑制構造を模式的に示した図であり、(a)は断面図、(b)は正面図である。第2のノイズ抑制構造20は、第1のノイズ抑制構造10と同様に、導体線12と、軟磁性金属層14と、接地部16とを有しており、さらに、金属線層22と、接地部24とを有している。
【0040】
金属線層22は、導体線12の外周を被覆している。金属線層22と導体線12とは非接触の状態とされている。第2のノイズ抑制構造20では、金属線層22は、軟磁性金属層14よりも内側に配置されている。つまり、第2のノイズ抑制構造20は、導体線12と、導体線12の外周を被覆する金属線層22と、金属線層22の外周を被覆する軟磁性金属層14とを有している。なお、図2では、金属線層22と軟磁性金属層14とが接触していない場合を例示しているが、金属線層22と軟磁性金属層14とは接触していても構わない(不図示)。
【0041】
金属線層22としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属からなる素線が編み込まれた編組を典型的なものとして例示することができる。また、金属線層22は、導体線12を中心にして、上記素線が横捲きされたものなどであっても良い。金属線層22は、1層から構成されていても良いし、2層以上から構成されていても良い。金属線層22が2層以上から構成される場合、各層は離間されていても良いし、接していても良い。
【0042】
接地部24は、図2では、金属線層22の長手方向の両端に設けられている。もっとも、接地部24は、金属線層22の長手方向のいずれの箇所に設けられていても良い。例えば、接地部24は、金属線層22の片側端部だけに設けられていても良いし、金属線層22の中央部に設けられていても良い。好ましくは、金属線層22の長手方向の両端に接地部24を有していると良い。高周波数帯域における放射ノイズの抑制に有効だからである。なお、接地部24の材質や構成は、接地部16と同様であるので、その説明は省略する。
【0043】
第2のノイズ抑制構造20において、導体線12と金属線層22、金属線層22と軟磁性金属層14との間は、上述した絶縁体を配置することができる。また、この種の絶縁体は、軟磁性金属性層14の外周にも配置することができる。
【0044】
第2のノイズ抑制構造20は、例えば、導体線12に外周に、絶縁体層、金属線層22、シースが順に被覆された電力系ケーブルの外周に、軟磁性金属層14を形成し、軟磁性金属層14の長手方向の両端に接地部16を形成するとともに金属線層22に接地部24を形成するなどすれば得ることができる。また、例えば、導体線12の外周に絶縁体層が被覆された電力系ケーブルの外周に、金属線層22、絶縁体層、軟磁性金属層14を形成し、軟磁性金属層14の長手方向の両端に接地部16を形成するとともに金属線層22に接地部24を形成するなどすれば得ることができる。
【0045】
上述した第2のノイズ抑制構造20によれば、従来構造ではとりきれなかった、より高周波数帯域における電磁ノイズを抑制することができる。特に、導体線12の外周を被覆し、接地された金属線層22を有しているため、高周波数帯域における伝導ノイズを低減することができ、また、放射ノイズのレベルを低減することができる。それ故、電磁ノイズの抑制効果を大きくすることができる。
【0046】
(第3のノイズ抑制構造)
図3は、第3の実施形態に係るノイズ抑制構造を模式的に示した図であり、(a)は断面図、(b)は正面図である。第3のノイズ抑制構造30は、第2のノイズ抑制構造20と同様に、導体線12と、軟磁性金属層14と、接地部16と、金属線層22と、接地部24とを有している。
【0047】
第3のノイズ抑制構造30は、第2のノイズ抑制構造20における金属線層22と軟磁性金属層14との位置関係が反対になっている。つまり、第3のノイズ抑制構造30は、導体線12と、導体線12の外周を被覆する軟磁性金属層14と、軟磁性金属層14の外周を被覆する金属線層22とを有している。また、第2のノイズ抑制構造20では、金属線層22の両端部に接地部24が形成されていたのに対し、第3のノイズ抑制構造30では、金属線層22の片側端部だけに接地部24が形成されている場合を例示している(好ましくは、金属線層22の両側端部に接地部24が形成されていると良い。)。なお、図3では、軟磁性金属層14と金属線層22とが接触していない場合を例示しているが、軟磁性金属層14と金属線層22とは接触していても構わない(不図示)。また、金属線層22の材質や構成は、上述した通りである。また、接地部24の材質や構成は、接地部16と同様であるので、その説明は省略する。
【0048】
第3のノイズ抑制構造30において、導体線12と軟磁性金属層14、軟磁性金属層14と金属線層22との間は、上述した絶縁体を配置することができる。また、この種の絶縁体は、金属線層22の外周にも配置することができる。
【0049】
第3のノイズ抑制構造30は、例えば、導体線12に外周に、絶縁体層、軟磁性金属層14、シースが順に被覆された電力系ケーブルの外周に、金属線層22を形成し、軟磁性金属層14の長手方向の両端に接地部16を形成するとともに金属線層22に接地部24を形成するなどすれば得ることができる。また、例えば、導体線12の外周に絶縁体層が被覆された電力系ケーブルの外周に、軟磁性金属層14、絶縁体層、金属線層22を形成し、軟磁性金属層14の長手方向の両端に接地部16を形成するとともに金属線層22に接地部24を形成するなどすれば得ることができる。
【0050】
上述した第3のノイズ抑制構造30によれば、従来構造ではとりきれなかった、より高周波数帯域における電磁ノイズを抑制することができる。特に、導体線12の外周を被覆し、接地された金属線層22を有しているため、高周波数帯域における伝導ノイズを低減することができ、また、放射ノイズのレベルを低減することができる。それ故、電磁ノイズの抑制効果を大きくすることができる。
【0051】
(第4のノイズ抑制構造)
図4は、第4の実施形態に係るノイズ抑制構造を模式的に示した図であり、(a)は断面図、(b)は正面図である。第4のノイズ抑制構造40は、第1のノイズ抑制構造10と同様に、導体線12と、軟磁性金属層14と、接地部16とを有しており、さらに、軟磁性体層42を有している。
【0052】
軟磁性体層42は、導体線12の外周を被覆している。軟磁性体層42と導体線12とは非接触の状態とされている。第4のノイズ抑制構造40では、軟磁性体層42は、軟磁性金属層14よりも内側に配置されている。つまり、第4のノイズ抑制構造40は、導体線12と、導体線12の外周を被覆する軟磁性体層42と、軟磁性体層42の外周を被覆する軟磁性金属層14とを有している。なお、図4では、軟磁性体層42と軟磁性金属層14とが接触していない場合を例示しているが、軟磁性体層42と軟磁性金属層14とは接触していても構わない(不図示)。
【0053】
軟磁性体層42は、例えば、マトリクスポリマー中に軟磁性粉末が分散されてなる軟磁性体材料から好適に構成することができる。上記マトリクスポリマーとしては、例えば、塩素化ポリエチレン、アクリル系ゴム、エチレンアクリルゴム等を好適な材料として例示することができる。なお、マトリクスポリマーは1種または2種以上の材料を併用することも可能である。また、軟磁性粉末は、例えば、Fe−Si−Cr系合金、Fe−Si系合金、Fe−Cr系合金等より構成することができる。軟磁性粉末の形態は、扁平状であることが好ましい。軟磁性体材料中に含まれる軟磁性粉末の含有量は、透磁率の向上等の観点から、好ましくは、20〜60体積%、より好ましくは、40〜55体積%の範囲内にあると良い。この種の軟磁性材料は、例えば、大同特殊鋼株式会社から「DPR」シリーズとして上市されている。
【0054】
軟磁性体層42は、シート状部材を巻き付けたものであっても良いし、押し出し成形などにより被覆されたものであっても良い。軟磁性体層42は、1層から構成されていても良いし、2層以上から構成されていても良い。軟磁性体層42が2層以上から構成される場合、各層は離間されていても良いし、接していても良い。なお、軟磁性体層42は、接地されている必要はない。
【0055】
第4のノイズ抑制構造40において、導体線12と軟磁性体層42、軟磁性体層42と軟磁性金属層14との間は、上述した絶縁体を配置することができる。また、この種の絶縁体は、軟磁性金属性層14の外周にも配置することができる。
【0056】
第4のノイズ抑制構造40は、例えば、導体線12に外周に、絶縁体層、軟磁性体層42、シースが順に被覆された電力系ケーブルの外周に、軟磁性金属層14を形成し、軟磁性金属層14の長手方向の両端に接地部16を形成するなどすれば得ることができる。また、例えば、導体線12の外周に絶縁体層が被覆された電力系ケーブルの外周に、軟磁性体層42、絶縁体層、軟磁性金属層14を形成し、軟磁性金属層14の長手方向の両端に接地部16を形成するなどすれば得ることができる。
【0057】
上述した第4のノイズ抑制構造40によれば、従来構造ではとりきれなかった、より高周波数帯域における電磁ノイズを抑制することができる。特に、導体線12の外周を被覆し、マトリクスポリマー中に軟磁性粉末が分散されてなる軟磁性体層42を有しているため、電磁ノイズの抑制効果がさらに大きくすることができる。特に、高周波数帯域における伝導ノイズをより低減することができる。
【0058】
(第5のノイズ抑制構造)
図5は、第5の実施形態に係るノイズ抑制構造を模式的に示した図であり、(a)は断面図、(b)は正面図である。第5のノイズ抑制構造50は、第4のノイズ抑制構造40と同様に、導体線12と、軟磁性金属層14と、接地部16と、軟磁性体層42とを有している。
【0059】
第5のノイズ抑制構造50は、第4のノイズ抑制構造40における軟磁性体層42と軟磁性金属層14との位置関係が反対になっている。つまり、第5のノイズ抑制構造50は、導体線12と、導体線12の外周を被覆する軟磁性金属層14と、軟磁性金属層14の外周を被覆する軟磁性体層42とを有している。なお、図5では、軟磁性金属層14と軟磁性体層42とが接触していない場合を例示しているが、軟磁性金属層14と軟磁性体層42とは接触していても構わない(不図示)。また、軟磁性体層42の材質や構成は、上述した通りであるので、その説明は省略する。
【0060】
第5のノイズ抑制構造50において、導体線12と軟磁性金属層14、軟磁性金属層14と軟磁性体層42との間は、上述した絶縁体を配置することができる。また、この種の絶縁体は、軟磁性体層42の外周にも配置することができる。
【0061】
第5のノイズ抑制構造50は、例えば、導体線12に外周に、絶縁体層、軟磁性金属層14、シースが順に被覆された電力系ケーブルの外周に、軟磁性体層42を形成し、軟磁性金属層14の長手方向の両端に接地部16を形成するなどすれば得ることができる。また、例えば、導体線12の外周に絶縁体層が被覆された電力系ケーブルの外周に、軟磁性金属層14、絶縁体層、軟磁性体層42を形成し、軟磁性金属層14の長手方向の両端に接地部16を形成するなどすれば得ることができる。
【0062】
上述した第5のノイズ抑制構造50によれば、従来構造ではとりきれなかった、より高周波数帯域における電磁ノイズを抑制することができる。特に、導体線12の外周を被覆し、マトリクスポリマー中に軟磁性粉末が分散されてなる軟磁性体層42を有しているため、電磁ノイズの抑制効果をさらに大きくすることができる。特に、高周波数帯域における伝導ノイズをより低減することができる。
【0063】
(第6のノイズ抑制構造)
図6は、第6の実施形態に係るノイズ抑制構造を模式的に示した図であり、(a)は断面図、(b)は正面図である。第6のノイズ抑制構造60は、図2に示した第2のノイズ抑制構造20の外周に、上述した軟磁性体層42を被覆したものである。
【0064】
つまり、第6のノイズ抑制構造60は、導体線12と、導体線の12の外周を被覆する金属線層22と、金属線層22の外周を被覆する軟磁性金属層14と、軟磁性金属層14の外周を被覆する軟磁性体層42とを有している。なお、図6では、金属線層22と軟磁性金属層14、軟磁性金属層14と軟磁性体層42とが接触していない場合を例示しているが、金属線層22と軟磁性金属層14、軟磁性金属層14と軟磁性体層42とは接触していても構わない(不図示)。また、上述した各ノイズ抑制構造にて説明したように、各層間には上述した絶縁体を配置することができる。また、この種の絶縁体は、最外層の外周にも配置することができる。
【0065】
第6のノイズ抑制構造60は、例えば、導体線12に外周に、絶縁体層、金属線層22、シースが順に被覆された電力系ケーブルの外周に、軟磁性金属層14、絶縁体層、軟磁性体層42を順に形成し、軟磁性金属層14の長手方向の両端に接地部16を形成するとともに金属線層22に接地部24を形成するなどすれば得ることができる。
【0066】
上述した第6のノイズ抑制構造60によれば、第2のノイズ抑制構造20の効果を奏する。また特に、導体線12の外周を被覆し、マトリクスポリマー中に軟磁性粉末が分散されてなる軟磁性体層42を有しているため、電磁ノイズの抑制効果をさらに大きくすることができる。特に、高周波数帯域における伝導ノイズをより低減することができる。
【0067】
(第7のノイズ抑制構造)
図7は、第7の実施形態に係るノイズ抑制構造を模式的に示した図であり、(a)は断面図、(b)は正面図である。第7のノイズ抑制構造70は、図3に示した第3のノイズ抑制構造30の外周に、上述した軟磁性体層42を被覆したものである。
【0068】
つまり、第7のノイズ抑制構造70は、導体線12と、導体線の12の外周を被覆する軟磁性金属層14と、軟磁性金属層14の外周を被覆する金属線層22と、金属線層22の外周を被覆する軟磁性体層42とを有している。なお、図7では、軟磁性金属層14と金属線層22、金属線層22と軟磁性体層42とが接触していない場合を例示しているが、軟磁性金属層14と金属線層22、金属線層22と軟磁性体層42とは接触していても構わない(不図示)。また、上述した各ノイズ抑制構造にて説明したように、各層間には上述した絶縁体を配置することができる。また、この種の絶縁体は、最外層の外周にも配置することができる。
【0069】
第7のノイズ抑制構造70は、例えば、導体線12に外周に、絶縁体層、軟磁性金属層14、シースが順に被覆された電力系ケーブルの外周に、金属線層22、絶縁体層、軟磁性体層42を順に形成し、軟磁性金属層14の長手方向の両端に接地部16を形成するとともに金属線層22に接地部24を形成するなどすれば得ることができる。
【0070】
上述した第7のノイズ抑制構造70によれば、第3のノイズ抑制構造30の効果を奏する。また特に、導体線12の外周を被覆し、マトリクスポリマー中に軟磁性粉末が分散されてなる軟磁性体層42を有しているため、電磁ノイズの抑制効果をさらに大きくすることができる。特に、高周波数帯域における伝導ノイズをより低減することができる。
【0071】
(第8のノイズ抑制構造)
図8は、第8の実施形態に係るノイズ抑制構造を模式的に示した図であり、(a)は断面図、(b)は正面図である。第8のノイズ抑制構造80は、図4に示した第4のノイズ抑制構造40の外周に、上述した接地された金属線層22を被覆したものである。
【0072】
つまり、第8のノイズ抑制構造80は、導体線12と、導体線の12の外周を被覆する軟磁性体層42と、軟磁性体層42の外周を被覆する軟磁性金属層14と、軟磁性金属層14の外周を被覆する金属線層22とを有している。なお、図8では、軟磁性体層42と軟磁性金属層14、軟磁性金属層14と金属線層22とが接触していない場合を例示しているが、軟磁性体層42と軟磁性金属層14、軟磁性金属層14と金属線層22とは接触していても構わない(不図示)。また、上述した各ノイズ抑制構造にて説明したように、各層間には上述した絶縁体を配置することができる。また、この種の絶縁体は、最外層の外周にも配置することができる。
【0073】
第8のノイズ抑制構造80は、例えば、導体線12に外周に、絶縁体層、軟磁性体層42、絶縁体層、軟磁性金属層14、シースが順に被覆された電力系ケーブルの外周に、金属線層22を形成し、軟磁性金属層14の長手方向の両端に接地部16を形成するとともに金属線層22に接地部24を形成するなどすれば得ることができる。
【0074】
上述した第8のノイズ抑制構造80によれば、第4のノイズ抑制構造40の効果を奏する。また、特に、導体線12の外周を被覆し、接地された金属線層22を有しているため、高周波数帯域における伝導ノイズをより低減することができ、また、放射ノイズのレベルを低減することができる。それ故、電磁ノイズの抑制効果を大きくすることができる。
【0075】
(第9のノイズ抑制構造)
図9は、第9の実施形態に係るノイズ抑制構造を模式的に示した図であり、(a)は断面図、(b)は正面図である。第9のノイズ抑制構造90は、図5に示した第5のノイズ抑制構造50の外周に、上述した接地された金属線層22を被覆したものである。
【0076】
つまり、第9のノイズ抑制構造90は、導体線12と、導体線の12の外周を被覆する軟磁性金属層14と、軟磁性金属層14の外周を被覆する軟磁性体層42と、軟磁性体層42の外周を被覆する金属線層22とを有している。なお、図9では、軟磁性金属層14と軟磁性体層42、軟磁性体層42と金属線層22とが接触していない場合を例示しているが、軟磁性金属層14と軟磁性体層42、軟磁性体層42と金属線層22とは接触していても構わない(不図示)。また、上述した各ノイズ抑制構造にて説明したように、各層間には上述した絶縁体を配置することができる。また、この種の絶縁体は、最外層の外周にも配置することができる。
【0077】
第9のノイズ抑制構造90は、例えば、導体線12に外周に、絶縁体層、軟磁性金属層14、絶縁体層、軟磁性体層42、シースが順に被覆された電力系ケーブルの外周に、金属線層22を形成し、軟磁性金属層14の長手方向の両端に接地部16を形成するとともに金属線層22に接地部24を形成するなどすれば得ることができる。
【0078】
上述した第9のノイズ抑制構造90によれば、第5のノイズ抑制構造50の効果を奏する。また、特に、導体線12の外周を被覆し、接地された金属線層22を有しているため、高周波数帯域における伝導ノイズをより低減することができ、また、放射ノイズのレベルを低減することができる。それ故、電磁ノイズの抑制効果を大きくすることができる。
【0079】
(第10のノイズ抑制構造)
図10は、第10の実施形態に係るノイズ抑制構造を模式的に示した図であり、(a)は断面図、(b)は平面図である。第10のノイズ抑制構造100は、図1に示した第1のノイズ抑制構造10を複数(3つ)有しており、これらの外周に、上述した接地された金属線層22を被覆したものである。このように、本実施形態に係るノイズ抑制構造は、導体線12を複数用いることが可能なものである。
【0080】
この場合、複数の導体線12の外周をそれぞれ被覆する複数の軟磁性金属層14は、個別に接地部16を有していても良いし(図10(b)の左側)、複数の軟磁性金属層14の端部を繋ぐようにまとめらられた接地部16を有していても良い(図10(b)の右側)。なお、図示はしないが、複数の導体線12の外周を一括して一つの軟磁性金属層14が被覆していても良い。
【0081】
なお、導体線12と軟磁性金属層14との間、軟磁性金属層14と金属線層22との間には、上述した絶縁体を配置することができる。また、この種の絶縁体は、金属線層22の外周にも配置することができる。
【0082】
第10のノイズ抑制構造100は、例えば、絶縁被覆された導体線12の外周に軟磁性金属層14、金属線層22、シースが順に被覆された電力系ケーブルを準備し、この電力系ケーブルの軟磁性金属層14の長手方向の両端に接地部16を形成するとともに金属線層22に接地部24を形成するなどすれば得ることができる。
【0083】
(第11のノイズ抑制構造)
図11は、第11の実施形態に係るノイズ抑制構造を模式的に示した図であり、(a)は断面図、(b)は平面図である。第11のノイズ抑制構造110は、図1に示した第1のノイズ抑制構造10において、導体線12(角形状)を横に並列に複数(3つ)並べたものである。つまり、第11のノイズ抑制構造110は、複数の導体線12と、軟磁性金属層14と、接地部16とを有している。軟磁性金属層14は、複数の導体線12の外周を一括して被覆している。
【0084】
なお、導体線12と軟磁性金属層14との間には、上述した絶縁体を配置することができる。また、この種の絶縁体は、軟磁性金属層14の外周にも配置することができる。
【0085】
第11のノイズ抑制構造110は、例えば、複数の導体線12と、複数の導体線12の外周に被覆された絶縁体層とを有するフラット形態の電力系ケーブルの外周を軟磁性金属層14で被覆し、軟磁性金属層14の長手方向の両端に接地部16を形成するなどすれば得ることができる。
【0086】
(第12のノイズ抑制構造)
図12は、第12の実施形態に係るノイズ抑制構造を模式的に示した図であり、(a)は断面図、(b)は平面図である。第12のノイズ抑制構造120は、図11に示した第11のノイズ抑制構造110の外周を、上述した接地された金属線層22により被覆したものである。
【0087】
なお、導体線12と軟磁性金属層14との間には、上述した絶縁体を配置することができる。この種の絶縁体は、金属線層22の外周にも配置することができる。また、図12では、軟磁性金属層14と金属線層22とが接している場合を例示しているが、両者は、非接触とされていても良い。
【0088】
第12のノイズ抑制構造120は、例えば、複数の導体線12と、複数の導体線12の外周に被覆された絶縁体層とを有するフラット形態の電力系ケーブルの外周を軟磁性金属層14、金属線層22で被覆し、軟磁性金属層14の長手方向の両端に接地部16を形成するとともに金属線層22に接地部24を形成するなどすれば得ることができる。
【0089】
なお、図示はしないが、第12のノイズ抑制構造120において、金属線層22は、軟磁性体層42に変更しても良い。また、各層の配置は、適宜入れ替えることができる。
【0090】
(第13のノイズ抑制構造)
図13は、第13の実施形態に係るノイズ抑制構造を模式的に示した図であり、(a)は断面図、(b)は平面図である。第13のノイズ抑制構造130は、図11に示した第11のノイズ抑制構造110を横に並べ、この外周を上述した軟磁性体層42により一括して被覆したものである。
【0091】
なお、導体線12と軟磁性金属層14との間には、上述した絶縁体を配置することができる。この種の絶縁体は、軟磁性体層42の外周にも配置することができる。また、図13では、軟磁性金属層14と軟磁性体層42とが接している場合を例示しているが、両者は、非接触とされていても良い。
【0092】
第13のノイズ抑制構造120は、例えば、複数の導体線12と、複数の導体線12の外周に被覆された絶縁体層とを有するフラット形態の電力系ケーブルの外周を軟磁性金属層14で被覆し、これを2つ並べた状態で、軟磁性体層42で被覆し、軟磁性金属層14の長手方向の両端に接地部16を形成するなどすれば得ることができる。
【0093】
なお、図示はしないが、第13のノイズ抑制構造130において、軟磁性体層42は、金属線層22に変更しても良い。また、各層の配置は、適宜入れ替えることができる。
【0094】
以上、第1〜第13のノイズ抑制構造について説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、その他の各種の層構成を採用することができる。
【0095】
本実施形態に係るノイズ抑制構造は、電力系ケーブルを用いて好適に構成することができる。つまり、導体線12が電力系ケーブルの一部である場合、上述したように、軟磁性金属層14は、電力系ケーブルの外周を覆っていても良いし、電力系ケーブルの内部に設けられていても良い。
【0096】
軟磁性金属層14が電力系ケーブルの外周を覆っている場合には、従来の電力系ケーブルに軟磁性金属層14を後付けで形成するなどして、簡易に本実施形態に係るノイズ抑制構造を構成することができる。また、軟磁性金属層14が電力系ケーブルの内部に設けられている場合には、軟磁性金属層14を後付けで形成することなく、本実施形態に係るノイズ抑制構造を構成することができる。
【0097】
また、導体線12が電力系ケーブルの一部である場合、上述したように、金属線層22は、電力系ケーブルの外周を覆っていても良いし、電力系ケーブルの内部に設けられていても良い。
【0098】
金属線層22が電力系ケーブルの外周を覆っている場合には、従来の電力系ケーブルに金属線層22を後付けで形成するなどして、簡易に本実施形態に係るノイズ抑制構造を構成することができる。また、金属線層22が電力系ケーブルの内部に設けられている場合には、金属線層22を後付けで形成することなく、本実施形態に係るノイズ抑制構造を構成することができる。
【0099】
また、導体線12が電力系ケーブルの一部である場合、上述したように、軟磁性体層42は、電力系ケーブルの外周を覆っていても良いし、電力系ケーブルの内部に設けられていても良い。さらには、電力系ケーブルのシースであっても良い。
【0100】
軟磁性体層42が電力系ケーブルの外周を覆っている場合には、従来の電力系ケーブルに軟磁性体層42を後付けで形成するなどして、簡易に本実施形態に係るノイズ抑制構造を構成することができる。また、軟磁性体層42が電力系ケーブルの内部に設けられている場合には、軟磁性体層42を後付けで形成することなく、本実施形態に係るノイズ抑制構造を構成することができる。また、軟磁性体層42が電力系ケーブルのシースである場合には、軟磁性体層42を後付けで形成することなく、本実施形態に係るノイズ抑制構造を構成することができる。
【0101】
本実施形態に係るノイズ抑制構造は、例えば、ハイブリッド車や電気自動車、燃料電池自動車等、駆動源の一部または全部にモータを用いる自動車等の車両における、モータと駆動回路との間等に好適に用いることができる。この場合には、伝導ノイズの低減によるモータの小型化や、放射ノイズの低減による車載機器の誤作動防止等に寄与することができる。他にも、本実施形態に係るノイズ抑制構造は、例えば、冷蔵庫やエアコンのコンプレッサーと駆動回路との間、電気炉のカーボン電極と制御回路との間、コンセントと家電製品との間などにも適用することが可能である。
【0102】
以上、本実施形態に係るノイズ抑制構造について説明した。本実施形態に係るノイズ抑制構造は、下記の電力系ケーブルを用いると簡単に構成することができる。
【0103】
すなわち、第1の電力系ケーブルは、図4、図5を用いて説明すると、電気エネルギーを送るための導体線12を有する電力系ケーブルの外周に、機能層として、この電力系ケーブルの外周を被覆する軟磁性金属層14と、電力系ケーブルの外周を被覆し、マトリクスポリマー中に軟磁性粉末が分散されてなる軟磁性体層42とを有する機能層付き電力系ケーブルである。
【0104】
第1の電力系ケーブルにおいて、軟磁性金属層14、軟磁性体層42とは、何れが内側に配置されていても良い。また、機能層において、軟磁性金属層14と軟磁性体層42とは接していても良いし、絶縁体層等の他の機能層が1または2以上間に挟まれていても良い。
【0105】
第1の電力系ケーブルによれば、軟磁性金属層の少なくとも長手方向の両端に接地部を形成すれば、各機能層を後付け形成することなく簡易に本実施形態に係るノイズ抑制構造を構成することができる。
【0106】
また、第2の電力系ケーブルは、図4、図5を用いて説明すると、電気エネルギーを送るための導体線12と、導体線12の外周を被覆する軟磁性金属層14と、導体線12の外周を被覆し、マトリクスポリマー中に軟磁性粉末が分散されてなる軟磁性体層42とを有する電力系ケーブルである。
【0107】
第2の電力系ケーブルにおいて、軟磁性金属層14、軟磁性体層42とは、何れが内側に配置されていても良い。また、軟磁性金属層14と軟磁性体層42とは接していても良いし、絶縁体層等が1または2以上間に挟まれていても良い。なお、軟磁性金属層14および軟磁性体層42は、何れも導体線12とは非接触の状態で配置される。
【0108】
第2の電力系ケーブルによれば、軟磁性金属層の少なくとも長手方向の両端に接地部を形成すれば、軟磁性金属層や軟磁性体層を後付け形成することなく簡易に本実施形態に係るノイズ抑制構造を構成することができる。
【実施例】
【0109】
以下、本発明を実施例を用いてより具体的に説明する。
1.実験1(金属線層の接地について)
従来、編組層(金属線層)を有する電力系ケーブルを用いてモータと駆動回路等を接続する場合、電力系ケーブルの編組層の片側端部のみを接地するのが通常であった。ここでは、電力系ケーブルの編組層の接地の有無や接地方法が放射ノイズにどのような影響を与えるかを調査するため、以下の予備実験を行った。
【0110】
Al板(短辺900mm×長辺1800mm×厚み3mm)上に載置されたサーボモータ(安川電機社製、「SGMAH−02BAA6C」)と駆動回路との間を、長さ1.5mmの電力系ケーブル(日立電線社製)にて接続した。なお、サーボモータの金属部と駆動回路のGND端子はAl板に接地されている。また、電力系ケーブルは、絶縁被覆された3本の導体線と、3本の導体線の外周に被覆されたAl編組層と、Al編組層の外周に被覆されたシースとから構成されている。
【0111】
本実験では、(1)電力系ケーブルのAl編組層をAl板に接地しなかった場合、(2)電力系ケーブルのAl編組層のモータ側の端部をAl板に接地した場合、(3)電力系ケーブルのAl編組層の駆動回路側の端部をAl板に接地した場合、(4)電力系ケーブルのAl編組層のモータ側の端部および駆動回路側の端部(つまり、Al編組層の長手方向の両側端部)をAl板に接地した場合につき、オシロ測定器(テクトロニクス社製、「TPS2024」)を用いて、放射ノイズを測定した。図14〜図17に、その結果を示す。
【0112】
図14〜図17によれば、電力系ケーブルのAl編組層を接地しなかった場合(図14)、電力系ケーブルのAl編組層の片側端部のみを接地した場合(図15、図16)は、1MHz〜20MHzの周波帯域における放射ノイズを抑制できていないことが分かる。これに対して、電力系ケーブルのAl編組層の両側端部を接地した場合(図17)には、1MHz〜20MHzの周波帯域における放射ノイズを抑制できていることが分かる。このことから、本発明において、Al編組層等の金属線層を用いる場合、金属線層の両端を接地することが電磁ノイズ抑制に有効であることが分かる。そのため、以下では、Al編組層を用いる場合、両端接地を行うこととした。
【0113】
2.実験2(軟磁性金属の熱処理温度と結晶粒径)
軟磁性金属としてPCパーマロイ材料(厚み100μm)を用い、これを圧延により箔状体(30μm、冷間加工率70%)とした。得られた箔状体を500℃〜1000℃の温度で30秒間熱処理し、各温度毎について、エッチングによりリング体(外径10mm、内径6mm)を複数作製した。各温度毎について、リング体と絶縁紙とを交互に重ねて約10層〜20層とし、各測定サンプルとした。各測定サンプルにつき、LCRメータ(アジデント・テクノロジー社製)を用いて、1MHz、5MHz、10MHzの周波数における複素比透磁率│μ│を測定した。その結果を、図18に示す。
【0114】
また、冷間加工率70%の圧延を施した後、各温度にて熱処理を施してなるPCパーマロイ層(30μm)の結晶粒径(上述の測定法による)は、700℃で0.1μm、800℃で5μm、900℃で100μm、1000℃で200μmであった。
【0115】
図18によれば、500℃を下回る熱処理温度では、圧延により押し潰されたPCパーマロイ層中の結晶粒の再結晶化が十分でない。そのため、透磁率が低くなっている。熱処理温度が500℃以上になると、再結晶化により微細な結晶粒が生じ始めるため、透磁率が大きくなる。もっとも、熱処理温度が900℃を上回ると、結晶粒の粗大化により、透磁率が低下し始める。熱処理温度が700℃〜900℃の範囲内にあると、適度な大きさの微細結晶粒となり、高い透磁率が得られることが分かる。特に、熱処理温度が800℃〜900℃の範囲内にある場合には、高周波数帯域における透磁率が高くなることが分かる。
【0116】
この結果から、熱処理温度を700℃〜1000℃の範囲内とした場合には、軟磁性金属層であるPCパーマロイ層の結晶粒径を、0.1〜200μmの範囲内に収めやすくなることが分かる。また、結晶粒径が5〜100μmの範囲内にある場合には、軟磁性金属層であるPCパーマロイ層の透磁率が大きくなるため、高周波数帯域において電磁ノイズを抑制するのに有利なことが分かる。
【0117】
3.実験3(伝導ノイズの測定)
Al板(短辺900mm×長辺1800mm×厚み3mm)上に載置されたサーボモータ(安川電機社製、「SGMAH−02BAA6C」、100V、200W、3Amax、定格0.637Nm、3000rpm)と発信器(テクトロニクス社製、「AGF3102」)との間を、長さ1.5mmの電力系ケーブル(シンコー電線社製)にて接続した。
【0118】
ここで、サーボモータの金属部はAl板に接地されている。また、電力系ケーブルは、絶縁被覆された1本の導体線と、この導体線の外周に被覆されたAl編組層と、Al編組層の外周に被覆されたシースとから構成されている。電力系ケーブルの導体線の一端は、発信器の信号出力端子に、他端はサーボモータの三相のうち一相の端子に接続されている。電力系ケーブルのAl編組層の発信器側は、発信器のGND端子に接続されるとともに、Al板に接地されている。一方、電力系ケーブルのAl編組層のモータ側は、モータの三相のうち上記以外の一相の端子に接続されるとともに、Al板に接地されている。なお、発信器を使用したのは、伝導ノイズの周波数特性を分析して測定することができるためである。
【0119】
(比較例1)
本実験3では、上述の接続状態、つまり、導体線と、導体線の外周を被覆するAl編組層とを有し、Al編組層の長手方向の両端が接地されている構造を比較例1に係る構造とした。
【0120】
(比較例2)
比較例1に係る構造において、比較例1に係る構造で用いた電力系ケーブルに代えて、電力系ケーブルとして絶縁被覆された導体線を用い、この絶縁被覆された導体線の外周に、軟磁性体層として、ゴム中に軟磁性粉末が分散されている磁性シート(大同特殊鋼(株)製、「DPR−010HV」、厚み100μm)を巻きつけ、比較例2に係る構造とした。つまり、比較例2に係る構造は、導体線と、導体線の外周を被覆し、マトリクスポリマー中に軟磁性粉末が分散されてなる軟磁性体層とを有する構造(接地無し)である。
【0121】
(実施例1)
比較例1に係る構造において、両端接地されたAl編組層の外周を、Al編組層と非接触の状態で、軟磁性金属層としてのPCパーマロイ層(厚み30μm、結晶粒径5μm:冷間加工率70%で圧延処理が施された後、800℃で熱処理が施されたもの)にて被覆するとともに、PCパーマロイ層の長手方向の両端部をAl板に接地し、実施例1に係る構造とした。つまり、実施例1に係る構造は、導体線と、導体線の外周を被覆するAl編組層(内層)と、導体線の外周を被覆するPCパーマロイ層(外層)とを有し、Al編組層の長手方向の両端部およびPCパーマロイ層の長手方向の両端部がともに接地されている構造である。
【0122】
(実施例2)
実施例1に係る構造において、両端接地されたPCパーマロイ層の外周に、PCパーマロイ層と非接触の状態で、軟磁性体層として、ゴム中に軟磁性粉末が分散されている磁性シート(大同特殊鋼(株)製、「DPR−010HV」、厚み100μm)を巻きつけ、実施例2に係る構造とした。つまり、実施例2に係る構造は、導体線と、導体線の外周を被覆するAl編組層(内層)と、導体線の外周を被覆するPCパーマロイ層(中間層)と、導体線の外周を被覆し、マトリクスポリマー中に軟磁性粉末が分散されてなる軟磁性体層(外層)(=DPR層)とを有し、Al編組層の長手方向の両端部およびPCパーマロイ層の長手方向の両端部がともに接地されている構造である。
【0123】
(参考例1)
比較例1に係る構造において、電力系ケーブルのAl編組層のモータ側を接地せず、駆動回路側のみの接地(片端接地)とした構造を参考例1に係る構造とした。
【0124】
上述した各構造を構成した後、発信器から500kHzの方形波を発信させ、オシロ測定器(テクトロニクス社製、「TPS2024」)を用いて、電力系ケーブルのモータ側端部における伝導ノイズを測定した。図19〜図21に、その結果を示す。
【0125】
図19によれば、以下のことが分かる。比較例1に係る構造は、導体線の外周を被覆する層が、Al編組層のみ(両端接地)である。上述したように、Al編組層のみ(両端接地)は、Al編組層のみ(片端接地)に比べ、電磁ノイズ抑制に有効であるものの、周波数20MHz以上における伝導ノイズのレベルが高い。つまり、より高周波数帯域になると電磁ノイズ抑制効果が不十分となることが分かる。これに対して、実施例1に係る構造は、導体線の外周に、Al編組層(内層、両端接地)とPCパーマロイ層(外層、両端接地)とを有している。そのため、例えば、周波数50MHzで約20dbの伝導ノイズ低減効果が見られる。つまり、実施例1に係る構造は、比較例1に係る構造に比べ、高周波側で伝導ノイズの抑制ができており、その結果、より高周波数帯域において電磁ノイズを抑制することが可能であるといえる。また、実施例1に係る構造からAl編組層(内層、両端接地)を除いたPCパーマロイ層(外層、両端接地)のみとした構造においても同様の効果が得られた。
【0126】
また、図20によれば、以下のことが分かる。比較例2に係る構造は、導体線の外周を被覆する層が、マトリクスポリマー中に軟磁性粉末が分散されてなる軟磁性体層のみ(接地無し)である。この比較例2に係る構造と上述した比較例1に係る構造とを比較すると、比較例2に係る構造は、周波数20MHz以上で、約10db〜20dbの伝導ノイズ低減効果を示すものの、周波数10〜20MHzで、伝導ノイズのレベルが高くなってしまう。つまり、マトリクスポリマー中に軟磁性粉末が分散されてなる軟磁性体層のみを導体線の外周に被覆しただけでは、高周波側において伝導ノイズの低減効果が認められても、従来Al編組層のみ(比較例1)で抑制できていた低周波側の伝導ノイズがかえって大きくなってしまうことが分かる。このことから比較例2に係る構造では、高周波数帯域における電磁ノイズを十分に抑制することが難しいといえる。
【0127】
また、図21によれば、以下のことが分かる。何ら対策の施されていない参考例1に係る構造は、どの周波数帯域においても伝導ノイズのレベルが高い。比較例1に係る構造(Al編組層のみ<両端接地>)は、参考例1に比べ、伝導ノイズのレベルが下がっており、ノイズ低減効果が認められる。しかしながら、より高周波数帯域になると、伝導ノイズを取りきれなくなってくる。これらに対して、実施例1に係る構造(Al編組層<内層、両端接地>+PCパーマロイ層<外層、両端接地>)は、比較例1に係る構造では取りきれない、より高周波数帯域における伝導ノイズを除去できていることが分かる。さらに、実施例2に係る構造は、実施例1に係る構造に加え、さらに、マトリクスポリマー中に軟磁性粉末が分散されてなる軟磁性体層が被覆されている(Al編組層<内層、両端接地>+PCパーマロイ層<中間層、両端接地>+軟磁性体層<外層、接地無し>)。そのため、実施例1に係る構造に比べ、さらなる電磁ノイズ抑制効果が得られていることが分かる。特に、その効果は、より高周波数帯域において大きくなっている。
【0128】
4.実験4(放射ノイズの測定)
Al板(短辺900mm×長辺1800mm×厚み3mm)上に載置されたサーボモータ(安川電機社製、「SGMAH−02BAA6C」、100V、200W、3Amax、定格0.637Nm、3000rpm)と上記モータを駆動するための駆動回路との間を、長さ1.5mmの3本の電力系ケーブル(日立電線社製)にて接続した。
【0129】
ここで、サーボモータの金属部と駆動回路のGND端子はAl板に接地されている。また、各電力系ケーブルは、絶縁被覆された1本の導体線と、この導体線の外周に被覆されたAl編組層と、Al編組層の外周に被覆されたシースとから構成されており、20cmの間隔を空けて平行に配設されている。なお、実施例、比較例の構造を構成するために使用する電力系ケーブルは、いずれか一方の縁側に配置されたケーブル(これを「電力系ケーブルS」という。)である。電力系ケーブルSの導体線の一端は、駆動回路の三相出力端子の一端子に、他端はサーボモータの出力に相当する相の一端子に接続されている。なお、電力系ケーブルSのAl編組層の駆動回路側およびモータ側は、いずれもAl板に接地されている。
【0130】
(比較例3)
本実験4では、上述の接続状態、つまり、導体線と、導体線の外周を被覆するAl編組層とを有し、Al編組層の長手方向の両端が接地されている構造を比較例3に係る構造とした。
【0131】
(実施例3)
比較例3に係る構造において、比較例3に係る構造で用いた電力系ケーブルSに代えて、電力系ケーブルとして絶縁被覆された導体線を用い、この絶縁被覆された導体線の外周を、軟磁性金属層としてのPCパーマロイ層(厚み30μm、結晶粒径5μm:冷間加工率70%で圧延処理が施された後、800℃で熱処理が施されたもの)にて被覆するとともに、PCパーマロイ層の長手方向の両端部をAl板に接地し、実施例3に係る構造とした。つまり、導体線と、導体線の外周を被覆するPCパーマロイ層とを有し、PCパーマロイ層の長手方向の両端部が接地されている構造である。
【0132】
(実施例4)
比較例3に係る構造において、両端接地されたAl編組層の外周を、Al編組層と非接触の状態で、軟磁性金属層としてのPCパーマロイ層(厚み30μm、結晶粒径5μm:冷間加工率70%で圧延処理が施された後、800℃で熱処理が施されたもの)にて被覆するとともに、PCパーマロイ層の長手方向の両端部をAl板に接地し、実施例4に係る構造とした。つまり、実施例4に係る構造は、導体線と、導体線の外周を被覆するAl編組層(内層)と、導体線の外周を被覆するPCパーマロイ層(外層)とを有し、Al編組層の長手方向の両端部およびPCパーマロイ層の長手方向の両端部がともに接地されている構造である。
【0133】
(参考例2)
比較例1に係る構造において、電力系ケーブルSのAl編組層のモータ側を接地せず、駆動回路側のみの接地(片端接地)とした構造を参考例2に係る構造とした。
【0134】
上述した各構造を構成した後、駆動回路を作動させ、オシロ測定器(テクトロニクス社製、「TPS2024」)を用いて、電力系ケーブルSから放射される放射ノイズを測定した。なお、オシロ測定器側の測定ケーブルは、長さ14cmのケーブルを用い、ケーブルの至近距離にて放射ノイズを測定した。図22に、その結果を示す。
【0135】
図22によれば、以下のことが分かる。何ら対策の施されていない参考例2に係る構造は、どの周波数帯域においても放射ノイズのレベルが高い。比較例3に係る構造<Al編組層のみ(両端接地)>は、参考例2に係る構造に比べ、放射ノイズのレベルが低くなる。また、実験3にて上述したように、Al編組層のみ(両端接地)の構造は、高周波側における伝導ノイズの低減が見られない(実験3の比較例1を参照)。そのため、全体として見れば、高周波側で電磁ノイズを低減することは難しいといえる。
【0136】
これに対して、実施例3に係る構造は、導体線の外周に、PCパーマロイ層(両端接地)を有している。そのため、参考例2及び比較例3に係る構造に比べ、放射ノイズのレベルが低くなる。また、実施例4に係る構造(Al編組層<内層、両端接地>+PCパーマロイ層<外層、両端接地>)は、比較例3に係る構造(Al編組層のみ<両端接地>)に比べ、放射ノイズの低減効果が大きいことが分かる。また、実施例4に係る構造は、Al編組層のみ(両端接地)の構造では、取りきれない高周波側の伝導ノイズを除去することができる(実験3の実施例1参照)。このことを合わせ考えてみても、実施例4に係る構造は、電磁ノイズの低減に有利であるといえる。また、(Al編組層<内層、両端接地>+PCパーマロイ層<中間層、両端接地>+軟磁性体層<外層、接地無し>)に係る構造においても同様の効果が得られた。
【0137】
以上、各実験によれば、より高周波数帯域において電磁ノイズを抑制可能なノイズ抑制構造を提供可能なことが確認できた。
【0138】
以上、本発明の実施形態、実施例について説明した。本発明は、これらの実施形態、実施例に特に限定されることなく、種々の改変を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0139】
10 第1のノイズ抑制構造
12 導体線
14 軟磁性金属層
16 接地部
20 第2のノイズ抑制構造
22 金属線層
24 接地部
30 第3のノイズ抑制構造
40 第4のノイズ抑制構造
42 軟磁性体層
50 第5のノイズ抑制構造
60 第6のノイズ抑制構造
70 第7のノイズ抑制構造
80 第8のノイズ抑制構造
90 第9のノイズ抑制構造
100 第10のノイズ抑制構造
110 第11のノイズ抑制構造
120 第12のノイズ抑制構造
130 第13のノイズ抑制構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気エネルギーを送るための導体線と、
前記導体線の外周を被覆する軟磁性金属層と、
前記軟磁性金属層の少なくとも長手方向の両端に設けられた接地部と、
を有することを特徴とするノイズ抑制構造。
【請求項2】
前記軟磁性金属層は、結晶粒径が0.1〜200μmの範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載のノイズ抑制構造。
【請求項3】
前記導体線の外周を被覆し、接地された金属線層を有することを特徴とする請求項1または2に記載のノイズ抑制構造。
【請求項4】
前記導体線の外周を被覆し、マトリクスポリマー中に軟磁性粉末が分散されてなる軟磁性体層を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のノイズ抑制構造。
【請求項5】
前記軟磁性金属層は、冷間加工率5%〜95%の圧延処理が施された後、700℃〜1000℃の熱処理が施されたものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のノイズ抑制構造。
【請求項6】
前記導体線は、モータと駆動回路との間に設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のノイズ抑制構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2011−29377(P2011−29377A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173092(P2009−173092)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】