説明

ノック式ペン

【課題】ノックに対し、上方から力が加えられた場合だけでなく、下方から力が加えられた場合においても、作用部がノック本体から脱落するおそれがないノック式ペンを提供することを課題とする。
【解決手段】ノック本体4に対する作用部5の組み付けは、作用部5のノック本体当接面側に設けられる嵌合部8をノック本体4に形成される係合用開口11に嵌合することによって行われ、嵌合部8の上面端縁に上方引掛り部9が形成されると共に、嵌合部8の下面端縁に下方引掛り部10が形成され、係合用開口11への嵌合時において、上方引掛り部9が係合用開口11の作用部当接面と反対側の上縁部12に引掛かると共に、下方引掛り部10が係合用開口11の作用部当接面と反対側の下縁部13に引掛かるようにされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はノック式ペン、より詳細には、一部(指掛部)が軸筒上側部から突出するノックを操作することによって、所望の色の芯を軸筒先端から出没させるタイプのノック式ペンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記タイプのノック式ペン(例えば、黒と赤の2色ボールペン)は、種々のデザインにて広く出回っている。そこにおけるノックは、下端に芯34が嵌め付けられ、芯34上部に巻装された押上スプリングによって常時上方に付勢されるノック本体31と、ノック本体31の上部に組み付けられる作用部32とから成る(図7、8参照)。作用部32のノック本体31に対する組み付けは、単に、作用部32の内側面に形成される嵌合部35をノック本体31に形成される係合用開口36に嵌合することによって行われる。その際、嵌合部35の先端部両側に外方に突き出るように形成されているツメ37が、係合用開口36の内方側両側縁に引っ掛かるようになっている。
【0003】
作用部32は、軸筒の上側部に縦方向に形成されるスリットから外方に突出する指掛部33を有していて、この指掛部33を押下することにより、ノック本体31が押下されて芯34を繰り出すことができるようになっている。ノックは、その押下端においてロックされて芯34を露出状態に維持し、他方のノックが押下されることによりそのロックが解除されると、押上スプリングの作用で元の位置に復帰し、それに伴って芯34が軸筒内に引き込まれるようになっている。
【0004】
従来のノックの場合、その作用部32の軸筒上側面から突出する指掛部33は、軸筒上部のスリットから少し突出するだけで(図7における仮想線の指掛部33a参照)、指先から指掛部33aにかかる力は斜め内方向に向かうものとなるため、ノック本体31と作用部32との係合関係は、上記のとおりの構成で以て特に問題はなかった。
【0005】
しかるに、近時本出願人は、上記機構のノック式ペンにおいて、一対の指掛部33を大きくして動物やキャラクター等の耳やカエルの目等に見立て、軸筒の上端部に当該動物やキャラクター等の顔をあしらったデザインの製品を企画した(図6、7に示される指掛部33参照)。
【0006】
しかし、このように指掛部33を外方に張り出すように大きく形成した場合、指先から指掛部33にかかる力は、特に押下端において外方向にかかることとなり(図7参照)、その結果、ツメ37があるにも関わらず、嵌合部35が係合用開口36から外れ、作用部33が軸筒のスリットから脱落しやすくなることが分かった。
【0007】
そこで本出願人は先に、ノック式ペンにおける作用部45の指掛部47を大きく形成した場合においても、押下操作時に指掛部47に斜め外方向の力が加わることによって作用部45が脱落するおそれのないノック式ペンを開発し(特許文献1:特開2010−12743号公報)、市場において好評を博している。
【0008】
そのノック式ペンにおけるノックにおけるノック本体44に対する作用部45の組み付けは、作用部45の内側面に設けられる嵌合部48をノック本体44に形成される係合用開口51に嵌合することによって行われ、嵌合部48の上面端縁には立上り部49が形成されていて、その係合用開口51への嵌合時において立上り部49が係合用開口51の内面側上縁部52に引っ掛かることを特徴とするものである(図8、9)。
【0009】
しかし、この改良されたノック式ペンは、そのノックが上方から押下されることを前提として構成されている。即ち、ノックが上方から押下されてノックに斜め外方向の力が作用すると、立上り部49が係合用開口51の内面側上縁部52に引掛かるため、作用部45がノック本体44から脱落するおそれはない。しかるに、ノックに対して下方から力が加わると、作用部45は逆方向に、換言すれば、立上り部49が係合用開口51の内面側上縁部52から離れる方向に変位し、係合用開口51から外れてノック本体44から脱落するおそれがあることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−12743号公報
【特許文献2】特開2001−310592号公報
【特許文献3】特開2000−233596号公報
【特許文献4】特開平5−246191号公報
【特許文献5】実用新案登録第3049666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、上記改良されたノック式ペンの場合は、ノックに対して下方から力が加えられた際に、立上り部が係合用開口から外れて作用部がノック本体から脱落するおそれがあった。そこで本発明は、ノックに対し、上方から力が加えられた場合だけでなく、下方から力が加えられた場合においても、作用部がノック本体から脱落するおそれがないノック式ペンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、ノックの押下操作によって下端から芯を選択的に出没させるタイプのペンであって、前記ノックは下端に芯が嵌め付けられてスプリングの作用で常時上方に付勢されるノック本体と、軸筒から大きく外方に張り出す指掛部を有していて前記ノック本体に組み付けられる作用部とから成り、前記ノック本体に対する作用部の組み付けは、前記作用部の前記ノック本体当接面側に設けられる嵌合部を前記ノック本体に形成される係合用開口に嵌合することによって行われ、前記嵌合部の上面端縁には上方に突き出る上方引掛り部が形成されると共に、前記嵌合部の下面端縁には下方に突き出る下方引掛り部が形成されていて、前記係合用開口への嵌合時において、前記上方引掛り部が前記係合用開口の前記作用部当接面と反対側の上縁部に引掛かると共に、前記下方引掛り部が前記係合用開口の前記作用部当接面と反対側の下縁部に引掛かることを特徴とするノック式ペンである。
【0013】
好ましい実施形態においては、前記作用部における前記嵌合部の上方部に突子が形成されると共に、前記ノック本体に前記突子が嵌入する保持孔が形成される。また、前記作用部の指掛部が、動物やキャラクター等の耳や目に見立てた形状に形成され、更に、前記軸筒の上端部に、前記動物やキャラクター等の耳や目に対応する顔部が表現される。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上述したとおりであって、ノック本体に対する作用部の組み付けは、前記作用部の前記ノック本体当接面側に設けられる嵌合部を前記ノック本体に形成される係合用開口に嵌合することによって行われ、前記嵌合部の上面端縁には上方に突き出る上方引掛り部が形成されると共に、前記嵌合部の下面端縁には下方に突き出る下方引掛り部が形成されていて、前記係合用開口への嵌合時において前記上方引掛り部が前記係合用開口の前記作用部当接面と反対側の上縁部に引掛かると共に、前記下方引掛り部が前記係合用開口の前記作用部当接面と反対側の下縁部に引掛かるため、軸筒から大きく外方に張り出す指掛部に対して斜め外方向の押下力が加わっても、あるいは、下方からの力が作用しても、嵌合部が係合用開口から抜けて作用部がノック本体から外れて脱落するおそれがないという効果がある。
【0015】
また、請求項2に係る発明においては、作用部のノック本体に対する結合が一層強固になり、請求項3又は4に係る発明においては、指掛部が動物やキャラクターの耳や目に見立てた大きな形状とされ、更に軸筒の指掛部側の端部に当該動物やキャラクターの顔が表現されることで、端部に動物やキャラクターの頭部を備えた、趣向性及び変化に富んだノック式ペンとすることができ、単なる筆記目的としてだけでなく、ファンション的要素を持った興趣的アイテムとして広く受け入れられる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態の全体外観図である。要部の断面を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態の要部の部分断面図である。
【図3】本発明の一実施形態のノックの構成を内方側から示す分解斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態のノックの構成を外方側から示す分解斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態のノックの構成を示す側面図及びその縦断面図である。
【図6】従来のノックの構成を内方側から示す分解斜視図である。
【図7】従来のノックの問題点を説明するための側面図である。
【図8】改良された従来のノックの構成を内方側から示す分解斜視図である。
【図9】改良された従来のノックのノック本体と作用部の結合時における縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態について、添付図面に依拠して説明する。図示した本発明に係るノック式ペンは、色の異なる2本の芯2のうちの1本を選択して出没させるものであって、一般のものと同様に、軸筒1と、軸筒1の先端から出没する2種類の芯2と、芯2の繰出し操作をする一対のノック3とを備えて成り、また、各ノック3は、ノック本体4に作用部5を組み付けて構成される。
【0018】
ノック本体4の下端部は従来のものと同様に細径の嵌付部4aとされ、そこに、芯2が嵌め付けられる。また、ノック本体4は、芯2の上端部に巻装された押上スプリング6の作用で、常時上方に付勢されるように支持される(図2参照)。これらの構成は、一般のものと同じである。
【0019】
作用部5はその上端に、大きく、且つ、外方に張り出す指掛部7を有する。一例として指掛部7は、動物やキャラクター等の耳や目に見立てた大きな形状とされ、左右一対の指掛部7にて耳や目が表わされるようにされる。そして、軸筒1の端部に当該動物やキャラクター等の顔を表現することにより、端部に動物やキャラクター等の頭部を備えた、趣向性に富んだ形状のノック式ペンとすることができる。
【0020】
なお、図示してないが、軸筒1の取り外し可能な先端部に嵌装される中軸部を設け、この中軸部に作用部5及び軸筒1の端部に表現された動物やキャラクター等に対応する胴部又は被服を表現することもある。その場合、中軸部における胴部又は被服と作用部5及び軸筒1の端部における耳、目又は顔との位置合わせを容易にするために、中軸部の上端にローレットが形成され、軸筒1の下端内側部のローレット当接部に、ローレットに係合するストッパーが設けられる。
【0021】
かかる構成の一対のノック3は、芯2を備えた状態で従来のものと同様にして軸筒1内に組み込まれ、その状態において作用部5が、軸筒1の上側部に形成されたスリット14に沿って上下動可能となる。このノック3の押下げによる芯2の出没操作やノック3のロック機構は、一般のものと変わりはないので、詳細な説明を省略する。
【0022】
作用部5はその内側面に、従来のものと同様に、ノック本体4に形成される係合用開口11内に嵌装される嵌合部8を有する。嵌合部8は、通例、その中程が断面V字状に抉られることにより、上下方向に若干弾性が付与される。そして、嵌合部8の上面端縁に上方に突き出る上方引掛り部9が形成されると共に、その下面端縁に下方に突き出る下方引掛り部10が形成される。
【0023】
上方引掛り部9は、嵌合部8を係合用開口11へ嵌合した際、係合用開口11の内面側上縁部12に引掛かって掛止されるものであり、下方引掛り部10は、その際に係合用開口11の内面側下縁部13に引掛かるものである。そのため、軸筒1から大きく外方に張り出す指掛部7に対して斜め外方向の押下力が加わった際だけでなく、下方からの力が作用した際においても、嵌合部8が係合用開口11から抜けて、作用部がノック本体から外れることが防止される。
【0024】
また、作用部5の内側面上部に突子15が突設され、ノック本体4の対応面に突子15が嵌入する支持孔16が穿設される。突子15は、嵌合部8を係合用開口11内に嵌装した際に支持孔16内に嵌入してそこに保持されることで、作用部5とノック本体4との一体性を増進させ、同時に、嵌合部8の係合用開口11からの抜け防止の一助となる。
【0025】
かかる構成の本発明に係るノック式ペンは、指掛部7が動物やキャラクター等の耳や目に見立てた大きな形状とされ、また、軸筒1の端部に当該動物やキャラクター等の顔が表現されるため、趣向性及び変化に富んだものとして、単なる筆記目的としてだけでなく、一種のファンショングッズとして受け入れられるものである。なお、更に、中軸部等に、軸筒1の端部に表現した動物やキャラクター等の顔に関連する、ないし、これに連続する胴部等が表現されることもある。
【0026】
本ノック式ペンの使用方法は、基本的に一般のものと変わりはなく、作用部5は、軸筒1の上側部に縦方向に形成されるスリット14から外方に大きく張り出す指掛部7の一方を押下することにより、当該側のノック本体4が押下されて当該側の芯2を繰り出すことができる。そして、ノック3は、その押下端においてロックされ、他方のノック3が押下されるまでその芯2の露出状態を維持し、他方のノックが押下されてロックが外されると、押上スプリング6の作用で元の位置に復帰し、それに伴って芯2が軸筒1内に引き込まれる。
【0027】
本発明における作用部5の指掛部7は外方に大きく張り出しているため、その押下操作に際して斜め外方向の力が加わりやすい。しかるに、作用部5は、その嵌合部8が係合用開口11内に比較的密に係合しているだけでなく、押下操作に伴って傾倒しようとすると、嵌合部8の上方引掛り部9が係合用開口11の内面側上縁部12に一層強く引っ掛かることになるため、嵌合部8が係合用開口11から抜けることがなくなり、作用部5がノック本体4から外れて脱落するおそれもなくなる。
【0028】
また、ノック3に下方からの力が作用した場合には、下方引掛り部10が係合用開口11の内面側下縁部13に一層強く引っ掛かることになるため、この場合においても、嵌合部8が係合用開口11から抜けることがなくなり、作用部5がノック本体4から外れて脱落するおそれはなくなる。
【0029】
更に、突子15が嵌入孔16内に嵌入していることにより、作用部5とノック本体4の結合関係が一層強固なものとなる。かくして、この突子15と上記上方引掛り部9及び下方引掛り部10との相乗作用により、指掛部7に上方又は下方から大きな力が加わった場合において、作用部5がノック本体4から外れて脱落することが確実に阻止される。
【0030】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
【符号の説明】
【0031】
1 軸筒
2 芯
3 ノック
4 ノック本体
5 作用部
6 押上スプリング
7 指掛部
8 嵌合部
9 上方引掛り部
10 下方引掛り部
11 係合用開口
12 上縁部
13 下縁部
15 突子
16 嵌入孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノックの押下操作によって下端から芯を選択的に出没させるタイプのペンであって、前記ノックは下端に芯が嵌め付けられてスプリングの作用で常時上方に付勢されるノック本体と、軸筒から大きく外方に張り出す指掛部を有していて前記ノック本体に組み付けられる作用部とから成り、前記ノック本体に対する作用部の組み付けは、前記作用部の前記ノック本体当接面側に設けられる嵌合部を前記ノック本体に形成される係合用開口に嵌合することによって行われ、前記嵌合部の上面端縁には上方に突き出る上方引掛り部が形成されると共に、前記嵌合部の下面端縁には下方に突き出る下方引掛り部が形成されていて、前記係合用開口への嵌合時において、前記上方引掛り部が前記係合用開口の前記作用部当接面と反対側の上縁部に引掛かると共に、前記下方引掛り部が前記係合用開口の前記作用部当接面と反対側の下縁部に引掛かることを特徴とするノック式ペン。
【請求項2】
前記作用部における前記嵌合部の上方部に突子が形成されると共に、前記ノック本体に前記突子が嵌入する保持孔が形成された、請求項1に記載のノック式ペン。
【請求項3】
前記作用部の指掛部が、動物やキャラクター等の耳や目に見立てた形状に形成された、請求項1又は2に記載のノック式ペン。
【請求項4】
前記軸筒の上端部に、前記動物やキャラクター等の耳や目に対応する顔部が表現された、請求項3に記載のノック式ペン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate