説明

ノッチチェーン式汚泥掻寄機

【課題】ノッチチェーンにアタッチメントを介して直接フライトを取り付けることができるようにした低コストで経済的なノッチチェーン式汚泥掻寄機を提供すること。
【解決手段】ノッチチェーンCに対して略垂直に取り付けるように形成したフライトFの本体片1に、その上端部の上端片2をノッチチェーンCの進行方向に対して突出した形状に、また下端部の下端片3をノッチチェーンCの進行方向に対して逆方向に向けて突出した形状に連接形成するとともに、上端片2及び下端片3を共にノッチチェーンCに対して略水平に形成するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノッチチェーン式汚泥掻寄機に関し、特に、下水道、上水道等の矩形沈殿池で使用される汚泥掻寄機のノッチチェーンに、フライトを直接取り付けられるようにしたノッチチェーン式汚泥掻寄機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下水及び上水の処理において、矩形沈殿池P内に導入される原水に含まれる砂等の無機質や有機物等の不純物を除去するため、図1に示すように、矩形沈殿池P内に汚泥掻寄機Dが設置されている。この汚泥掻寄機として、SUSチェーンを使用したものが多く使用されてきたが、特に下水道においては腐食対策、摩耗対策として、軽量で設置工事が容易なことから合成樹脂製のチェーンが使用されるようになり、さらに最近合成樹脂チェーンでも形状を工夫し、摩耗を軽減して長寿命化を図った、特に限定されるものではないが、例えば、図2に示すようなノッチチェーンCが使用されるようになった。
【0003】
ところで、従来のノッチチェーン式汚泥掻寄機Dにおいて、ノッチチェーンCに所定間隔で複数個取り付けるフライトFは、浮力を排除するため開放断面、例えば、図5及び図6に示すように、略コの字形断面のフライトFが用いられてきた。
しかし、このコの字形断面のフライトFをノッチチェーンCに取り付ける場合、フライトの反掻き寄せ方向となる背面が凹んでいるため、ノッチチェーンCに直接取り付けることができず、ノッチチェーンに取り付けるアタッチメントAに、該凹み内に収まるような形状をした取付用ブロックBを取り付け、該取付用ブロックBにフライトFをボルト止めする必要があり、このため構成部品点数が必然的に多くなり、そのため製作費、加工費、組立費が高くなるという問題があった。
【0004】
さらに、略コの字形断面を有するフライトFでは、その反掻き寄せ方向となる背面には凹みがあるため、汚泥掻き寄せ時この凹みに侵入した汚泥が固形化し、容易に剥がれ落ちにくく、フライトの重量を必要以上に増し、汚泥掻寄機の運転動力が大となるという問題があった。
【0005】
また、ノッチチェーンCに取り付けるフライトFを鋼板製とする場合、強度を確保するためには薄板を曲げ又は溶接でボックス形状にするか、使用する鋼板の板厚を大きくしたり、さらには補強用の板(リブ)を溶接等で取り付ける必要があった。
このため、フライトを薄板で製作する場合、加工工数が増えて製作コストが大きくなり、また反対にその板厚を大きくすると加工工数は減る利点はあるが、重量が増えコストが大きくなり、経済的に安価に製作することが難しいという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来のノッチチェーン式汚泥掻寄機の有する問題点に鑑み、ノッチチェーンにアタッチメントを介して直接フライトを取り付けることができるようにした低コストで経済的なノッチチェーン式汚泥掻寄機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、ノッチチェーン式汚泥掻寄機は、ノッチチェーンに対して略垂直に取り付けるように形成したフライトの本体片に、その上端部の上端片をノッチチェーンの進行方向に対して突出した形状に、また下端部の下端片をノッチチェーンの進行方向に対して逆方向に向けて突出した形状に連接形成するとともに、上端片及び下端片を共にノッチチェーンに対して略水平に形成するように構成したフライトを備えてなることを特徴とする。
【0008】
この場合において、フライトを、略Z形の形状にプレス曲加工で製作した鋼板製とすることができる。
【0009】
また、フライトに、その掻き寄せ方向に凸としたリブを設けることができる。
【0010】
また、フライトに形成するリブを、フライトの水平方向及び/又は垂直方向とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のノッチチェーン式汚泥掻寄機によれば、ノッチチェーンに対して略垂直に取り付けるように形成したフライトの本体片に、その上端部の上端片をノッチチェーンの進行方向に対して突出した形状に、また下端部の下端片をノッチチェーンの進行方向に対して逆方向に向けて突出した形状に連接形成するとともに、上端片及び下端片を共にノッチチェーンに対して略水平に形成するように構成したフライトを備えてなることから、フライトをノッチチェーンに取付用ブロックを用いることなくアタッチメントを介して直接取り付けることができるので、使用部品点数、製作費、加工費、組立費が減り、コスト低減が図れてノッチチェーン式汚泥掻寄機を経済的に製作することができるとともに、フライトの背面側に凹みが形成されないので、汚泥の侵入、固形化を防止することができる。
【0012】
また、フライトを、略Z形の形状にプレス曲加工で製作した鋼板製とすることにより、薄板で原材料が少なく、加工も同種のプレス加工で加工工数、加工費を少なくすることができるため製作費が安価となり、フライトを経済的に製作することができる。
【0013】
また、フライトに、その掻き寄せ方向に凸としたリブを設けることにより、リブの背面となる凹部に汚泥が溜まるのを防止し、該フライトによる沈殿汚泥や浮遊スカムの掻き寄せ効率を向上させることができる。
【0014】
また、フライトに形成するリブを、フライトの水平方向及び/又は垂直方向とすることにより、薄板を用いても必要な強度が簡易に確実に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のノッチチェーン式汚泥掻寄機の一実施例を示す矩形沈殿池内に設置した縦断面説明図である。
【図2】同ノッチチェーン式汚泥掻寄機のノッチチェーンの1リンクを示し、(A)は平面図、(B)は正面図である。
【図3】同ノッチチェーン式汚泥掻寄機のフライトをノッチチェーンに取り付けた状態を示す正面図である。
【図4】同側面図である。
【図5】従来ノッチチェーン式汚泥掻寄機のフライトをノッチチェーンに取り付けた状態を示す正面図である。
【図6】同側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のノッチチェーン式汚泥掻寄機の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0017】
図1〜図4に、本発明のノッチチェーン式汚泥掻寄機の一実施例を示す。
下水及び上水の処理において、矩形沈殿池P内に導入される原水に含まれる砂等の無機質や有機物等の不純物を除去するため、矩形沈殿池P内に汚泥掻寄機Dが設置される。この汚泥掻寄機Dとして、特に限定されるものではないが、ノッチチェーン式汚泥掻寄機Dが採用される場合、図1に示すように、矩形沈殿池P内の所定位置に配設される駆動軸、中間軸、テール軸、ヘッド軸の各軸に固定されるスプロケットホイールS1、S2、S3、S4間にエンドレス状で、多数のフライトFを取り付けたノッチチェーンCを張架し、かつ池上に配設した駆動装置Mにてエンドレス状のノッチチェーンCが循環駆動されるようにしている。
【0018】
そして、ノッチチェーンCには複数個のフライトFを所定間隔に配設固定しているので、ノッチチェーンCの循環移動に伴ってフライトFが図1に示すように、矢符F1方向の池底に沿って移動する際、池底に沈殿している汚泥分を汚泥ピットP1側に掻き寄せ、また水面位置で矢符F2方向に移動する際には、水面に浮遊するスカムをスカムスキマS側に掻き寄せ、排出するようにすることができる。
【0019】
この場合、ノッチチェーンCの腐食及び/又は摩耗対策として、軽量で設置工事が容易となる、特に限定されるものではないが、例えば、図2に示すような合成樹脂製のノッチチェーンが使用される。
ノッチチェーンCは、そのリンクの一端側にI部C1を形成し、他端側にクレビス部C2を形成し、隣接する一方のリンクのI部C1を、他端側リンクに形成したクレビス部C2に挿入し、かつ該挿入部にピンC3を嵌挿して、各リンクが連続するようにして所要長のノッチチェーンCを構成する。
そして、ノッチチェーンCのリンクには、凹部形状のノッチ部Nが設けられている。このノッチ部Nに、駆動軸の主務スプロケットのピン(図示省略)が噛み合い、エンドレス状のノッチチェーンCが循環駆動される。
なお、ノッチチェーンCには、フライトFをほぼ垂直方向に取り付けるためのアタッチメントAをボルト止め等にて取り付けるようになっている。
【0020】
このノッチチェーンCに取り付けるフライトFは、図3及び図4に示すように、特に限定されるものではないが、例えば、腐食に強いステンレス鋼(SUS)の鋼板を用い、プレス機による曲加工にて製作することができる。
このフライトFの長さは、矩形沈殿池Pの池底に沈殿する汚泥を汚泥ピットP1側に掻き寄せられるのに必要な長さ、例えば、矩形沈殿池Pの横幅内に収まるようにし、これにより1度の掻き寄せで矩形沈殿池Pの全幅の掻き寄せができるように設定される。
【0021】
また、このフライトFは、ノッチチェーンCにアタッチメントAを介して直接取り付ける際、その本体片1がノッチチェーンCに対して略垂直となるように平板状とし、この本体片1の上端部にほぼ90度に折れ曲がって連接される上端片2はノッチチェーンの進行方向に対して突出した形状になるように形成し、また本体片1の下端部にほぼ90度に折れ曲がって連接される下端片3をノッチチェーンの進行方向に対して逆方向に向けて突出した形状、すなわち、図3に示すような略Z形の形状に形成する。そしてこの上端片2、下端片3の形成はプレス曲加工で製作することができる。
このように形成することで、フライトFの掻き寄せ方向となる表面側及び反掻き寄せ方向となる背面側共に凹み部分が形設されないので、汚泥掻き寄せ時に該汚泥の一部が凹み部分に侵入、固形化するのを未然に防止することができる。
【0022】
なお、ノッチチェーンCに対してほぼ水平に平行して突出するように本体片1の上下端部に連接形成される上端片2、下端片3の突出長さは、フライトとしての所定の強度を保持できる程度に設定することができ、さらにはこれら上端片2、下端片3の先端部分21、31を、図3に示すように、さらに折り曲げて強度を増すようにすることができる。
【0023】
また、フライトFをSUSの薄板にてプレス加工にて形成する場合でも所要の強度を確保できるように、フライトFの本体片1にリブ4を形成することができる。このリブ4は、フライトFによる掻き寄せ方向に突出するようにした凸となるようにして形成する。
このフライトFに形成するリブ4は、図4に示すように、フライトFの水平方向となるように形成しているが、これは特に限定されるものではなく、垂直方向とすることも可能で、さらには水平、垂直両方向に形成することもでき、これはフライトFが所要の強度を有するようにして任意に設定することができる。
このようにフライトFにリブ4を設けることにより、薄板を用いても必要な強度が簡易に確実に確保することができ、さらにはリブ4の凹部に汚泥が溜まるのを防止し、該フライトによる沈殿汚泥や浮遊スカムの掻き寄せ効率を向上させることができるものとなる。
【0024】
ノッチチェーンCにフライトFを、詳しくは、フライトFの本体片1を取り付けるにはアタッチメントAを用いる。このアタッチメントAはノッチチェーンCの底部にほぼ垂直となるようにしてボルト6にて取り付け、このアタッチメントAの垂直面に、フライトFの本体片1の背面を密着するように添わせ、ボルト5及び必要に応じて当て板7を用いて固定する。これにより、フライトFを取付用ブロックを用いることなくノッチチェーンCにアタッチメントAを介して直接、かつ強固に取り付けることができる。
【0025】
なお、このボルト5によりノッチチェーンCにフライトFを取り付ける際、リブ4を避けるようにすることが望ましい。
【0026】
以上、本発明のノッチチェーン式汚泥掻寄機について、実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、実施例に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のノッチチェーン式汚泥掻寄機は、ノッチチェーンに、フライトを直接取り付けることができるという特性を有していることから、矩形沈殿池内に接する汚泥掻寄機の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0028】
A アタッチメント
C ノッチチェーン
D ノッチチェーン式汚泥掻寄機
F フライト
N ノッチ部
P 矩形沈殿池
1 本体片
2 上端片
3 下端片
4 リブ
5 ボルト
6 ボルト
7 当て板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノッチチェーンに対して略垂直に取り付けるように形成したフライトの本体片に、その上端部の上端片をノッチチェーンの進行方向に対して突出した形状に、また下端部の下端片をノッチチェーンの進行方向に対して逆方向に向けて突出した形状に連接形成するとともに、上端片及び下端片を共にノッチチェーンに対して略水平に形成するように構成したフライトを備えてなることを特徴とするノッチチェーン式汚泥掻寄機。
【請求項2】
フライトを、略Z形の形状にプレス曲加工で製作した鋼板製としたことを特徴とする請求項1記載のノッチチェーン式汚泥掻寄機。
【請求項3】
フライトに、その掻寄せ方向に凸としたリブを設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のノッチチェーン式汚泥掻寄機。
【請求項4】
フライトに形成するリブを、フライトの水平方向及び/又は垂直方向としたことを特徴とする請求項1、2又は3記載のノッチチェーン式汚泥掻寄機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−52331(P2013−52331A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190984(P2011−190984)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)