説明

ハイブリッドなアッパー構造部を有する防水性、かつ、通気性の靴

良化したブーツ全体の通気性と軽減した含浸量を示す靴製品が提供される。靴製品は、下部及び上部のコンパートメントを有するアッパー部と、上部及び下部のコンパートメントを同時に連結するための機構部と、保護カバーと、外側の足底と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
防水性、かつ、通気性の靴を得る目的で様々な試みがなされている。そのような靴を生産するための初期の試みとしては、アッパー部の材料(すなわち、レザー)を有する靴の生産が1つの例として挙げられ、そして、そのアッパー部の材料は、ラバーから作られた足底と同様に、アッパー部が水に対する耐性を有するように処理された。ところが、この種の靴構造に対して幾つかの問題が起きた。水に対する耐性を与えるように処理されると、アッパー部の材料は通気性を失うこととなり、したがって、靴を履いている人にとって、その靴は不快の状態になることとなった。さらに、防水性の足底とアッパー部との間の連結領域を防水性にするような効果的な方法が知られていないので、その連結領域は漏れの主な源となった。
【0002】
快適である防水性の靴を得る目的の代替的なアプローチとしては、防水性の挿入物又はブーティを靴の中で使用することが1つの例として挙げられていた。この防水性の挿入物の追加的な有利な点は、適切な材料から構成されるならば、靴を履いている時間にわたって靴の中の水蒸気の上昇を抑えるようにしながら水蒸気への浸透性があることであった。靴の技術分野において、防水性と水蒸気の浸透性との両方を有する材料は「機能性」材料と呼ばれていた。そのような機能性材料の例は、微多孔質の延伸ポリテトラフルオロエチレン膜材料であり、その材料は、W. L. Gore and Associates, Inc., Elkton Md.から入手可能であり、商標名がGORE-TEXTM である。他の機能性材料も開発されており、当該技術分野においては公知である。
【0003】
さらなるアプローチとしては、ラスティング方法によって、防水性、かつ、通気性のライナー材料を靴アッパー部の内側に固定することと、ライナー材料を防水性のガスケット又は中底に封印することとが含まれている。ライナー材料が防水性のガスケット又は中底と接合する領域で、耐久性があって、かつ、防水性のある封印部又は連結部を提供することの試みが数多くなされている。これらの試みの成功の度合いは多様な結果となっている。
【0004】
そのような防水性、かつ、通気性の靴を形成する際に、結果として度々問題になることは、ライナー又はブーティの挿入が度々、靴に合わないこと(すなわち、ライナーが、もうすでにサイズが決まっている靴のアッパー部により、適合度が小さいこと)であり、及び/又は、ライナー又はブーティと靴アッパー部材料との間での装着感が悪いことであり、そのことは、とりわけ、あまり望ましくない靴の内部の外観を作り出す(すなわち、ライナーにしわが寄ったり、ライナーがアッパー部から離脱したりする。)。
【0005】
結果として更に問題となることは、湿気ある状態で使用するときに、水が、ブーティの外側の層とアッパー部との間でトラップされる可能性があり、その結果として、感知できるほどに、靴の質量が増加することとなる。このことは、靴をはいている人にとって不快感を募らせ、特には、湿った靴は伝導熱の損失の結果となるので寒い天候のときに、不快感が顕著になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、軽量であって、かつ、耐久性及び通気性の程度を高くに維持することができる靴のニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ハイブリッドなアッパー部の構造を有する、防水性であって、かつ、通気性である靴が望まれている。ハイブリッドな構造は、防水性、かつ、通気性の靴製品を提供し、その靴製品は、上部のコンパートメント10と下部のコンパートメント20とを含むアッパー部を有する。アッパー部の上部のコンパートメントは、最内層12と、少なくとも1つの中間層13と、最外層14とを有する積層体11を含んでよい。下部のコンパートメントは、最内層22と、少なくとも1つの中間層23と、最外層24とを有する積層体21を含んでよい。上部のコンパートメントの最外層は、下部のコンパートメントの最外層の材料とは異なる材料から構成されてよい。靴製品は、下部のコンパートメントと上部のコンパートメントとを連結するための連結手段40と、下部のコンパートメントの最外層を覆うための通気性保護カバー50と、アッパー部と連通する外側の足底60とを含んでよい。
【0008】
1つの実施形態において、連結手段は、上部のコンパートメントの最内層と下部のコンパートメントの最内層とを連通させる。連結手段が、上部及び/又は下部のコンパートメントの外側及び中間の層と接触してもよいが、幾つかの実施形態においては、連結手段は上部及び/又は下部のコンパートメントの外側の層とは接触しなくてよい。連結手段は、テープ、シーラント、ステッチ、それらの組み合わせ等でよい。
【0009】
代替的には、連結手段は、超音波接合、シーム(縫目)封印、熱接合、それらの組み合わせ等でよい。さらに、外側の足底は、ガスケット、射出成形、接着剤、テープ等によって、アッパー部に連結されてよい。
【0010】
1つの実施形態として、上部のコンパートメントの積層体の最内層は、織物、ニット、又は不織布テキスタイルを含んでよい。上部のコンパートメントの積層体の少なくとも1つの中間層は少なくとも1つのフイルムを含む。フイルムが微多孔質ポリマーであることが好ましく、微多孔質ポリテトラフルオロエチレンであることがより好ましい。代替的には、フイルムはフルオロポリマー、ポリウレタン、ポリエステル又はそれらの組み合わせでよい。上部のコンパートメントの最外層は、織物(ウーベンファブリック)、編物(ニットファブリック)、不織布(ノンウーベンファブリック)、レザー、合成レザー、パーフォレイトラバー、ポリマーメッシュ、不連続パターンの非通気性材料、それらの組み合わせ等でよい。
【0011】
別の実施形態として、下部のコンパートメントの最内層は、織物、ニット、又は不織布テキスタイルでよい。下部のコンパートメントの積層体の少なくとも1つの中間層は少なくとも1つのフイルムを含む。フイルムが微多孔質ポリマーであることが好ましく、微多孔質ポリテトラフルオロエチレンであることがより好ましい。代替的には、フイルムはフルオロポリマー、ポリウレタン、ポリエステル又はそれらの組み合わせでよい。下部のコンパートメントの最外層は、織物(ウーベンファブリック)、編物(ニットファブリック)、不織布(ノンウーベンファブリック)、レザー、合成レザー、パーフォレイトラバー、ポリマーメッシュ、不連続パターンの非通気性材料、それらの組み合わせ等でよい。好ましくはレザーである、保護カバーが下部のコンパートメント内に含まれる。
【0012】
1つの実施形態として、上部のコンパートメントの最外層は、下部のコンパートメントの保護層よりも摩耗耐性があり、上部のコンパートメントの最外層は、下部のコンパートメントの最外層よりも摩耗耐性がある。先行技術とは対照的に重要なことには、このことは、ユーザーの快適さのために通気性を最も必要とする、下部のコンパートメントにおいて、より良好な通気性を可能とする。さらに、この構造は、最外層が曝露される上部のコンパートメントにおいて、より良好な摩耗耐性と、より抑制した通気性とを可能とする。さらに、この流線形構造はより軽量化(少ない量の材料ですむ。)が図れるので、先行技術のブーティ構造に対して有利な点を提供し、そして、層間でトラップされる水に関して材料層の層数を少なくすることができるので、余分な水分を吸収しにくくなる。この点に関して、1つの実施形態として、本発明のハイブリッド構造部は、互いに上部/下部の関係を有する2つの3層積層体を含み、上部のコンパートメントの最外層は、アッパー部の最外層であり、一方で、先行技術の靴の構造部は、多くの場合、側位の関係で、アッパー部(そのアッパー部は積層体を含む。)と、追加的なブーティとを含む。
【0013】
さらに、この目的を達成するために、本発明の実施形態において、上部のコンパートメントの積層体は、1100g/m2/24時間を超える水蒸気透過速度を有し、下部のコンパートメントの積層体は、2200g/m2/24時間を超える水蒸気透過速度を有する。さらに、ブーツ全体の水蒸気透過速度は、8.75g/hrを超えるものであり、好ましくは10g/hrを超えるものであり、より好ましくは12g/hrを超えるものである。さらに、摩耗耐性に関して、上部のコンパートメントの積層体は、摩耗耐性試験で約1500サイクルまで損傷を受けていないものであり、好ましくは、2500サイクルまで損傷を受けていないものである。そして、下部のコンパートメントの積層体は、摩耗耐性試験で約250サイクルまで損傷を受けていないものであり、好ましくは、400サイクルまで損傷を受けていないものである。含浸量試験に関して、含浸量試験を施すと、靴製品の水の含浸量は40グラム未満であり、好ましくは30グラム未満であり、より好ましくは20グラム未満である。
【0014】
本発明の別の実施態様は、アッパー部を有する、防水性、かつ、通気性の靴であり、そのアッパー部は、上部のコンパートメント10と下部のコンパートメント20とを含む。アッパー部の上部のコンパートメントは、最内層12と、少なくとも1つの中間層13と、最外層14とを有する積層体11を含んでよい。下部のコンパートメントは、最内層22と、少なくとも1つの中間層23と、最外層24とを有する積層体21を含んでよい。上部のコンパートメントの最外層は、下部のコンパートメントの最外層の材料とは異なる材料から構成されてよい。靴製品は、下部のコンパートメントを上部のコンパートメントに連結するために、テープ、シーラント、ステッチ、超音波接合、シーム(縫目)封印、熱接合等を更に含んでよく、下部のコンパートメントの最外層を覆うために通気性の保護カバー50を更に含んでよく、そして、アッパー部と連通する外側の足底60を更に含んでよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、下部と上部とのコンパートメントのハイブリッド構造を有する防水性、かつ、通気性の靴製品の斜視図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
防水性の靴−靴を一片の吸取紙の上に配置する。靴の内側が、約30mmまで室温水で満たされる(靴の中底からヒール領域まで測定される。)。水を少なくとも2時間、靴の中で放置させる。2時間経過したところで、吸取紙及び靴のアッパー部が調べられて、水が吸取紙又はアッパー部の外側に到達しているかどうかを決定する。水が吸取紙又はアッパー部の外側に到達していないならば、そのときは、靴は防水性があるということになる。
【0017】
詳細な説明
本発明は、通気性、かつ、防水性の靴製品を提供し、その靴製品は上部と下部とのコンパートメントを有する。靴製品は、比較的軽量であって、トラディッショナルなブーティ型の靴よりも水吸収をしない傾向である。
【0018】
本発明は、次の記述と図を参照しながら述べられるが、その記述と図はある1つの実施形態を示す。当業者にとって、これらの実施形態は本発明の全ての範囲を表すものではなく、本発明は、添付された特許請求の範囲の記載によって包含される均等物やバリエーションに広く適用される。さらに、1つの実施形態の一部として記述されるか、又は示された特徴は、他の実施形態と共に用いられてよく、結果的に更なる実施形態を生み出す。特許請求の範囲の記載の範囲は、全てのそのようなバリーションや実施形態まで拡張される。
【0019】
図1に戻ると、防水性、かつ、通気性の靴製品が提供される。靴は、上部のコンパートメント10と、下部のコンパートメント20とを備えるアッパー部を含む。上部のコンパートメントは積層体11を含み、その積層体11は、最内層12(足に最も近い。)と、少なくとも1つの中間層13と、最外層14(足から最も遠く、使用中、外の環境に直接的に曝される。)と、を含む。
【0020】
上部のコンパートメントの最内層は軽量材料から直接的に作製されてよく、靴製品の通常の使用及び着用時にユーザーの足が最内層と接触する場合に、軽量材料は安らぎと通気性を提供する。この材料は、特に限定されることはないが、不織布、編物(ニットファブリック)、織物等を含み、例えば、コットンレーヨン、ナイロン、ポリエステル、それらの組み合わせ等が挙げられる。
【0021】
好ましくは、上部のコンパートメントの少なくとも1つの中間層はフイルムを含む。好ましくは、フイルムは、例えばフルオロポリマー、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル等のポリマー材料を含んでよい。適切なポリマー樹脂を含んでよく、その樹脂は処理されて、多孔質又は微多孔質の膜構造を形成することができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂は処理されて伸長された多孔質構造を形成するが、そのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂は、本発明において使用に適している。例えば、PTFE樹脂は伸長されて、微多孔質の膜構造を形成することができ、フィブリルによって相互連結されるノードによって特徴付けられて、その場合、例えば、米国特許のNo. 3,953,566号、No.5,814,405号又はNo.7,306,729号のような特許に教示されている方法にしたがって延伸される。幾つかの実施形態において、延伸PTFEフルオロポリマーのフイルムは、米国特許のNo.6,541,589号にしたがってPTFE樹脂から作製されて、コモノマーユニットのポリフルオロブチルエチレン(PFBE)を有する。例えば、微多孔質の延伸PTFE(ePTFE)のフルオロポリマーは、全ポリマー質量に基づいて約0.05質量%〜約0.5質量%のコモノマーユニットのPFBEを有するPTFEを含むことができる。
【0022】
1つの実施形態として、フイルムは、フィブリルによって相互連結されるノードにしたがって特徴付けられる、微細構造を有するePTFEを含み、多孔質フイルムの細孔は、防液性を提供するには充分に緊密であり、例えば、水蒸気透過、着色剤及び油分をはじく組成物コーティングによる浸透のような性能を提供するのには充分に開口されている。例えば、いくつかの実施形態において、多孔質膜が耐水性を提供するように約400nm以下の平均メジアンの流量細孔径を有していることが好ましく、そして、カラー化のために約50nm超のメジアン流量細孔径を有することが好ましい。このことは、PTFE樹脂を組み合わせることによって完遂し、PTFE樹脂は、伸長の際にノード及びフィブリルの微細構造を作り出すのに適している。樹脂は、例えば、ミネラルスピリットのような脂肪族炭化水素の潤滑押出剤とブレンドされてもよい。混合された樹脂は円柱状のペレットに形成されてよく、公知の手順によって押出可能な望ましい形状、好ましくはテープ又は膜にペースト押出されてよい。製品はロール間で好ましい厚みにカレンダー処理されてよく、その後、熱乾燥されて潤滑剤を取り除くことができる。乾燥された製品は、機械方向及び/又は横方向に伸長することによって延伸されて、例えば、米国特許No.3.953,566、No.5,814,405又はNo.7,406,729の教示にしたがって、フィブリルによって相互連結される一連のノードによって特徴付けられる延伸PTFE構造を作り出す。その後、PTFEの結晶融点より高い温度、例えば、約343℃〜375℃で製品を加熱することによって、ePTFE製品は非晶性的に固定される。
【0023】
上部のコンパートメントの最外層14は、織物、不織布、レザー、合成レザー、パーフォレイトラバー、ポリマーメッシュ、不連続パターンの非通気性材料、それらの組み合わせ等を含んでよい。上部のコンパートメントの最外層のために利用される材料の種類にかかわらず、材料は充分な摩耗耐性を積層体に付与して、靴製品を履いている人ために適切な防御を提供することができる。積層体の適切な摩耗耐性は、ASTM D3886にしたがって、約1000サイクルまで損傷を受けない積層体を含み、好ましくは、1500サイクルまで損傷を受けない積層体を含み、より好ましくは、2500サイクルまで損傷を受けない積層体を含む。上部のコンパートメントの積層体は、好ましくは、1100g/m2/24時間を超える水蒸気透過速度を有する。
【0024】
当該技術分野では公知であるように、積層体の層は、様々な方法を利用して、同時に接合されてよい。そのような1つの方法は接着剤を利用することを含む。連続的な形態、すなわち、全体領域で適用される接着剤を用いるか、又は不連続な形態、すなわち、間欠領域で適用される接着剤を用いるかで、積層体を形成するために接着させることの効果を生じる。水-蒸気浸透性の接着剤は、連続的な接着剤層が適用される場合に用いられる。不連続的な接着剤層を使用することに対して、例えば、パウダー、ドット、ネット又はマトリックス形態で適用される場合に、本質的に、水-蒸気浸透性ではない接着剤を用いることは可能である。粉末の接着剤は、低コストあることと、接着剤地点(レイダウン)を調節しやすいことにより好ましい。この場合に、水蒸気浸透性は、接着剤で覆われているほんの少しの表面によって維持される。
【0025】
接着剤層は熱活性化接着剤の層でよい。この熱活性化接着剤が積層体を生産するために用いられて、その積層体から靴が生産されるならば、積層接着剤の活性化は、靴の内側又は外側から適用される加熱装置の影響を受けてよい。
【0026】
代替的には、当該技術分野に公知であるように、上部のコンパートメントの個々の層は、超音波接合、シーム(縫目)封印、熱接合等を用いて、同時に積層されてよい。
【0027】
図1に戻ると、防水性、かつ、通気性の靴製品はまた、下部のコンパートメントを含む。下部のコンパートメントは積層体21を含み、その積層体21は最内層22と、少なくとも1つの中間層23と、最外層24とから成る。
【0028】
上部のコンパートメントのように、下部のコンパートメントの最内層は、好ましくは、
軽量材料から作製されてよく、靴製品の通常の使用及び着用時にユーザーの足が最内層と接触する場合に、軽量材料は安らぎと通気性を提供する。この材料は、特に限定されることはないが、不織布、編物(ニットファブリック)、織物等を含み、例えば、コットンレーヨン、ナイロン、ポリエステル、それらの組み合わせ等が挙げられる。
【0029】
さらに、上部のコンパートメントのように、下部のコンパートメント積層体は、少なくとも1つのフイルムから成る少なくとも1つの中間層を含む。下部のコンパートメントのフイルムは、上部のコンパートメントに対して述べられた同一の材料を利用する。
【0030】
さらに、上部のコンパートメントのように、下部のコンパートメントは外層を含む。外層は、上部のコンパートメントの外層で用いられた、上記で述べられた任意の材料を含んでよいが、具体的なコンポーネント又は外層で用いられるコンポーネントは、上部のコンパートメント積層体と比較して、下部のコンパートメント積層体の摩耗耐性がより小さくなるように選択される。この点について、下部のコンパートメント積層体の適切な摩耗耐性は、ASTM D3886にしたがって、約200サイクルまで損傷を受けない積層体を含み、好ましくは、400サイクルまで損傷を受けない積層体を含む。下部のコンパートメントの積層体は、好ましくは、2200g/m2/24時間超の水蒸気透過速度を有する。
【0031】
さらに、当該技術分野に公知であるように、下部のコンパートメントの積層体の層は、様々な方法を用いて、同時に積層されてよい。
【0032】
下部のコンパートメントは、また、下部のコンパートメント積層体のために保護カバー50を含む。保護カバーは様々な材料から構成されてよく、特に限定されることはないが、その材料は、レザー、織物、編物(ニットファブリック)、合成レザー、パーフォレイトラバー、ポリマーメッシュ、不連続パターンの非通気性材料、不織布、それらの組み合わせ等を含んでよい。保護カバーのために利用される材料の種類にかかわらず、靴製品の通常の使用中に、下部のコンパートメントの積層体を保護するのに充分な耐久性が必要であり、靴内の快適さを維持するのに充分な通気性が必要である。
【0033】
図1を参照すると、連結手段は下部のコンパートメントを上部のコンパートメントに連結させるために利用される。連結手段は、当該技術分野で知られている任意の適切な方法でよく、例えば、テープ、シーラント、ステッチ、それらの組み合わせ等が挙げられる。代替的には、連結手段は、超音波接合、シーム(縫目)封印、熱接合、それらの組み合わせ等でよい。
【0034】
防水性、かつ、通気性の 靴製品は、また、外側の足底を含む。外側の足底は、靴の防水性に不利に影響を与えないような当該技術分野で知られている任意の適切な方法によってアッパー部に接合される。これらの方法は、特に限定されることはないが、ガスケット、射出成形、接着剤等の利用を含む。
【実施例】
【0035】
試験方法
水蒸気透過速度試験(MVTR)
各々のサンプルに対する水蒸気透過速度を、ISO15496にしたがって決定したが、サンプルの水蒸気透過率(WVP)は、水蒸気透過率(WVPapp)の装置に基づいてMVTR水蒸気透過速度(MVTR)に変換されて、次の変換式を用いた。
【0036】
【数1】

【0037】
さらに、標準は85〜95mmのカップ径であるが、64mmのカップ径を用いた。さらに、酢酸カリウムの代用として塩化ナトリウムを用いた。
【0038】
摩耗耐性試験
次の例外があるが、摩耗耐性を、ASTM D3886, Standard Test Method for Abrasion Resistance of Textile Fabricsを用いて測定をした。電気接触を用いなかった。Norton P320Jの摩耗ペーパーを0エメリーの代わりに用いた。
【0039】
ブーツ全体の水蒸気透過速度試験
各々のサンプルに対するブーツ全体の水蒸気透過速度を、Department of Defense Army Combat Boot Temperate Weather Specificationsにしたがって決定をした。
詳細な内容は以下である。
4.5.4 ブーツ全体の通気性
ブーツの通気性試験は、内部環境と外部環境の水蒸気の濃度の違いによるブーツを通過する水蒸気透過速度(MVTR)を示すように設計される。
4.5.4.1 装置
a.外部試験環境の制御システムは、試験継続時間にわたって、23(±1)℃及び50%±2%の相対湿度を維持することができる。
b.質量スケールは、(±0.01)グラムの精度によって、水で充填されたブーツの質量を決定することができる。
c.保水バッグは、ブーツの中に挿入することができるように柔らかいものであり、内側の形に適合するものである。しわがエアーギャップを作り出さないように保水バッグは充分に薄い必要がある。保水バッグは、試験がされる靴生産物よりも非常に高いMVTRを有する。そして、液体である水よりも、むしろ水蒸気だけが靴生産物の内側に接触するように保水バッグは防水性である必要がある。
d.ブーツのための内部ヒーターは、35(±1)℃まで、液体の水をブーツ内で均一に制御することができる。
e.ブーツプラグは、液体である水及び水蒸気の両方に不浸透性である。
4.5.4.2 手順
a.試験環境にブーツを配置する。
b.保水バッグをブーツの開口部から挿入して、足底の内側から測定して、12.5cm(5in)の高さまで水で充填する。
c.温水器を挿入して、ブーツプラグで開口部を封印する。
d.35℃までブーツ内の水を加熱する。
e.ブーツサンプルの質量を秤量して、Wiとして記録する。
f.秤量後、最低、6時間、ブーツ内の温度を一定に保つ。
g.6時間後、ブーツサンプルを再秤量する。Wfとして質量を記録し、試験継続時間をTdとして記録する。式:MVTR=(Wi-Wf)/Tdにより、グラム/時間単位のブーツ全体のMVTRを計算する。
4.5.4.3 検査方法
各々のブーツをパラグラフ4.5.4.2.で述べられた方法にしたがって試験をする。試験をした5ブーツによる、ブーツ全体の平均MVTRは3.5グラムs/時間であり、通気性の標準レベルを満たす。
【0040】
含浸量試験
ブーツの含浸量を以下のように決定をした。メンズサイズ9のブーツを用いて、左右各々のブーツの質量を記録した。12"のプレキシガラス壁を有する、30フィート長であって、48インチ幅である特注のトラフ(槽)内を被験者は歩行した。トラフ(槽)全体にわたって2"の深さまで室温水を満たした。被験者は30分間、容器内を歩行し、その後、容器の外側にあるラバーマット(30フィート長)を15分間歩行した。
【0041】
その後、ブーツを秤量した。トラフ(槽)内を歩いた後のブーツの秤量前と秤量後の差として、含浸量を定義した。
【0042】
実施例1
下部のコンパートメント及び上部のコンパートメントを含むアッパー部の積層体材料で、ブーツを作製した。上部のコンパートメントの積層体は3層の積層体であり、その3層の積層体は、a)8.8oz.の1000Dのナイロンウィーブと、b)延伸ポリテトラフルオロエチレン膜と、c)6ozの親水性ナイロン、嵩高加工のポリエステルニットと、d)同時に布帛を固定するためのホットメルト接着剤と、を有する。その接着剤は、Gore and Associates, Elkton, MD, Part Number EXQD102120AZ : EXQD102120AZから入手可能である。下部のコンパートメントの積層体は3層の積層体であり、その3層の積層体は、a)1.5oz.ナイロン トリコットニットと、b)延伸ポリテトラフルオロエチレン膜と、c)6ozの親水性ナイロン、嵩高加工のポリエステルニットと、d)同時に布帛を固定するためのホットメルト接着剤と、を有する。その接着剤は、Gore and Associates, Elkton, MD, Part Number EAAM120108AZ: EAAM120108AZから入手可能である。
【0043】
上部のコンパートメントと下部のコンパートメントとの両方の積層体を、上記で述べたMVTR試験方法を利用して試験をした。上部のコンパートメントの積層体は、1600g/m2/24時間のMVTRを有し、下部のコンパートメントの積層体は3200 g/m2/24時間のMVTRを有する。
【0044】
また、上部のコンパートメントと下部のコンパートメントとの両方の積層体を、上記で述べた摩耗耐性試験を利用して摩耗耐性の試験をした。下部のコンパートメント積層体は350-400サイクルで擦り切れたことを示し、上部のコンパートメント積層体は、2400-2550サイクルで擦り切れたことを示した。
【0045】
本発明の靴製品を生産する際に、上部及び下部のコンパートメントの積層体を、下部のコンパートメントの積層体の保護用のレザーカバーと共に同時に接合して、ブーツのアッパー部を形成した。アッパー部で防水性を保証するために、上部のコンパートメントと下部のコンパートメントとをステッチ縫いをして、熱可塑性接着剤テープ(Gore Seam TMテープtape、Gore and Associates, Elkton, MDから入手可能である。)を利用して、同時に接合した。
【0046】
足底ボードを、ステープルによってラストに取り付けた。アッパー部積層体をラストの周りに巻き付けて、アッパー部をつま先の領域上で引っ張った。その後、ラスティングマシンによって自動的に適用されるホットメルト接着剤を用いて、つま先領域を、ラスティングマシンを用いて、足底ボードに取り付けた。その後、第二のラスティングマシンを用いて、靴製品のサイド及びヒールの領域のラスティングを完成させた。その後、ポリウレタンポリマー樹脂をラスティングマージンに適用した。
【0047】
その後、ブーツをホットモールドに押し込んでプレスをかけた。そのモールドはホットプレート及び成形されたシリコーンラバーモールドを含んだ。シリコーンラバーモールドはブーツ底の形状にマッチした。ホットプレートを157℃まで加熱し、結果として、シリコーンラバーモールドの表面の温度分布は70〜100℃であった。一片のリリースペーパーをホットモールドの底に配置して、ブーツをソールプレスに配置した。液圧システムのソールプレスを40kg/cm2に設定した。ソールプレスを作動させ、このようにして、60秒間、ホットモールドでブーツをプレスした。その後、ブーツをモールドから取り除き、リリースペーパーをブーツの底から取り除いた。ブーツの底の形状のガスケットを、フラッシュ活性因子で加熱して、その後ブーツの底の上に配置した。ブーツを、その後ホットモールドに戻して、60秒間、ソールプレスを作動させた。当該技術分野では標準であるように、足底を生産して、その後、フラッシュ活性因子で加熱してガスケットされたブーツが得られた。足底をブーツの底に配置して、ソールプレスでブーツにプレスをかけた。ソールプレスは足底装着のために利用される標準的な設定で構成された。ソールプレスの液圧システムを10kg/cm2で設定し、15秒間作動させた。ブーツを冷却させて、ラストをブーツから取り除いた。
【0048】
その後、ブーツを上記で述べた防水性試験にしたがって防水試験をした。ブーツは試験に合格をした。
【0049】
実施例2
本発明にしたがって生産された標準的な8インチブーツについて、上記で述べた含浸量試験が施された。さらに、標準的なブーティ構造を利用した防水ブーティ(Belleville Shoe Manufacturing Company, Belleville,ILから入手可能である、商標名:Belleville 790)、及び非防水8インチブーツ(Belleville Shoe Manufacturing Company, Belleville, ILから入手可能である、商標名:Belleville DST105R)を試験した。結果は以下に示される。
【0050】
【表1】

【0051】
上記チャートで示されるように、本発明にしたがって生産されたブーツの吸水量は、防水ブーティ及び暑い天気用の非防水ブーツで生産されたブーツの吸水量よりも実質的に少なかった。
【0052】
実施例3
本発明にしたがって生産された、1セットが5個である4セット(トータル20個)の標準的な8インチブーツについて、上記で述べたブーツ全体の水蒸気透過速度試験が施された。さらに、標準的なブーティ構造(Belleville Shoe Manufacturing Company, Belleville,ILから入手可能である、商標名:Belleville 790)で生産された、1セットが5個である4セット(トータル20個)の標準的な8インチ防水ブーツの試験をした。さらに、標準的なブーティ構造(Wolverine Worldwide, Inc., Rockford, MIから入手可能である、商標名:Bates ICB)で生産された、1セットが5個である4セット(トータル20個)の標準的な8インチ防水ブーツの試験をした。各々のセットの平均値を測定した。結果は以下に示される。
【0053】
【表2】

【0054】
上記表で示されるように、本発明にしたがって生産されたブーツのブーツ全体の水蒸気透過速度は、標準的な防水ブーティ構造で生産されたブーツのブーツ全体の水蒸気透過速度よりも、より高い平均値の結果を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部コンパートメントと下部コンパートメントとを含むアッパー部であって、該上部コンパートメントが、最内層と、少なくとも1つの中間層と、最外層とを含む積層体を含み、さらに、該下部コンパートメントが、最内層と、少なくとも1つの中間層と、最外層とを含む積層体を含み、該上部コンパートメントの該最外層が、該下部コンパートメントの該最外層とは異なる材料を含む、アッパー部と、
該下部コンパートメントを該上部コンパートメントに連結するための連結手段と、
該下部コンパートメントの該積層体の該最外層を覆うための通気性保護カバーと、
該アッパー部と連通する外側の足底と、
を含む、防水性、かつ、通気性の靴製品。
【請求項2】
前記連結手段が、前記上部コンパートメントの前記最内層と前記下部コンパートメントの前記最内層とを連通させる、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記連結手段が、テープ、シーラント、ステッチ等である、請求項1に記載の製品。
【請求項4】
前記連結手段が、超音波接合、シーム封印、熱接合等である、請求項1に記載の製品。
【請求項5】
前記上部コンパートメントの前記積層体の前記最内層が、織物、ニット、又は不織布テキスタイルである、請求項1に記載の製品。
【請求項6】
前記上部コンパートメントの前記積層体の前記少なくとも1つの中間層が少なくとも1つのフイルムを含む、請求項1に記載の製品。
【請求項7】
前記少なくとも1つのフイルムが、フルオロポリマー、ポリウレタン、ポリエステル又はそれらの組み合わせである、請求項6に記載の製品。
【請求項8】
前記少なくとも1つのフイルムが微多孔質ポリマーである、請求項6に記載の製品。
【請求項9】
前記少なくとも1つのフイルムが微多孔質のポリテトラフルオロエチレンである、請求項8に記載の製品。
【請求項10】
前記上部コンパートメントの前記積層体の前記最外層が、織物、不織布、編物、レザー、合成レザー、パーフォレイトラバー、ポリマーメッシュ、不連続パターンの非通気性材料、それらの組み合わせ等である、請求項1に記載の製品。
【請求項11】
前記下部のコンパートメントの前記積層体の前記最内層が、織物、ニット、又は不織布テキスタイルである、請求項1に記載の製品。
【請求項12】
前記下部コンパートメントの前記積層体の前記少なくとも1つの中間層が少なくとも1つのフイルムを含む、請求項1に記載の製品。
【請求項13】
前記少なくとも1つのフイルムが、フルオロポリマー、ポリウレタン、ポリエステル又はそれらの組み合わせである、請求項12に記載の製品。
【請求項14】
前記少なくとも1つのフイルムが微多孔質ポリマーである、請求項12に記載の製品。
【請求項15】
前記少なくとも1つの微多孔質ポリマーが微多孔質のポリテトラフルオロエチレンである、請求項14に記載の製品。
【請求項16】
前記下部コンパートメントの前記積層体の前記最外層が、織物、編物、不織布、レザー、合成レザー、パーフォレイトラバー、ポリマーメッシュ、不連続パターンの非通気性材料、それらの組み合わせ等である、請求項1に記載の製品。
【請求項17】
前記上部コンパートメントの前記最外層の摩耗耐性が、前記下部コンパートメントの前記保護層の摩耗耐性よりも大きい、請求項1に記載の製品。
【請求項18】
前記上部コンパートメントの前記積層体の前記最外層の摩耗耐性が、前記下部コンパートメントの前記積層体の前記最外層の摩耗耐性よりも大きい、請求項1に記載の製品。
【請求項19】
前記上部コンパートメントの前記積層体が、1100g/m2/24時間を超える水蒸気透過速度を有する、請求項1に記載の製品。
【請求項20】
前記下部コンパートメントの前記積層体が、2200g/m2/24時間を超える水蒸気透過速度を有する、請求項1に記載の製品。
【請求項21】
ブーツ全体の水蒸気透過速度が8.75g/hr超である、請求項1に記載の製品。
【請求項22】
前記外側の足底が、ガスケット、射出成形、接着剤等によって、前記アッパー部に連結される、請求項1に記載の製品。
【請求項23】
吸水試験を実施した場合に、前記製品が40グラム未満の吸水量を含む、請求項1に記載の製品。
【請求項24】
前記保護カバーがレザーである、請求項1に記載の製品。
【請求項25】
前記上部コンパートメントの前記積層体が、摩耗耐性試験で約1500サイクルまで損傷を受けないものである、請求項1に記載の製品。
【請求項26】
前記下部コンパートメントの前記積層体が、摩耗耐性試験で約250サイクルまで損傷を受けないものである、請求項1に記載の製品。
【請求項27】
上部コンパートメントと下部コンパートメントとを含むアッパー部であって、該上部コンパートメントが、最内層と、少なくとも1つの中間層と、最外層とを含む積層体を含み、さらに、該下部コンパートメントが、最内層と、少なくとも1つの中間層と、最外層とを含む積層体を含み、該上部コンパートメントの該最外層が、該下部コンパートメントの該最外層とは異なる材料を含む、アッパー部と、
該下部コンパートメントを該上部コンパートメントに連結するための、テープ、シーラント、ステッチ、超音波接合、シーム封印、熱接合等と、
該下部コンパートメントの該積層体の該最外層を覆うための通気性保護カバーと、
該アッパー部と連通する外側の足底と、
を含む、防水性、かつ、通気性の靴製品。

【図1】
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【公表番号】特表2013−505809(P2013−505809A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532085(P2012−532085)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/046265
【国際公開番号】WO2011/041041
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(598123677)ゴア エンタープライズ ホールディングス,インコーポレイティド (279)
【Fターム(参考)】