ハイブリッドシステム
【課題】天候予測の精度向上及びランニングコストの低減が図れるハイブリッドシステムを提供する。
【解決手段】ハイブリッド給湯装置1の制御装置5は、大気圧を用いて翌日の天候予測結果を決定するための予め定められた演算式と、当該演算式にしたがって決定した天候予測結果と、太陽熱集熱器4によって集熱された集熱量実績及び太陽熱を集熱した熱媒体の温度実績の少なくとも一方の過去実績データと、を記憶し、さらに、演算式に含まれる定数であってその値が天候予測結果を左右する制御定数を、記憶された天候予測結果及び過去実績データに応じて更新し、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定する。
【解決手段】ハイブリッド給湯装置1の制御装置5は、大気圧を用いて翌日の天候予測結果を決定するための予め定められた演算式と、当該演算式にしたがって決定した天候予測結果と、太陽熱集熱器4によって集熱された集熱量実績及び太陽熱を集熱した熱媒体の温度実績の少なくとも一方の過去実績データと、を記憶し、さらに、演算式に含まれる定数であってその値が天候予測結果を左右する制御定数を、記憶された天候予測結果及び過去実績データに応じて更新し、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽エネルギーと深夜時間帯等の安価な電力とを使用するハイブリッドシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のハイブリッドシステムの一例であるハイブリッド給湯装置は、例えば特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1に記載の従来技術では、過去の使用実績等に基づいて翌日の使用熱量を予測するとともに、大気圧センサにより得られる大気圧の検出値、及び太陽熱集熱器による集熱量の実績値に応じて翌日の天候を予測し、予測した天候に基づき太陽熱集熱器によって得られる翌日の集熱量の予測値を求める。さらに、深夜料金時間帯のヒートポンプによる加熱量は、翌日の使用熱量予測値から、貯湯タンクの残熱量及び翌日の集熱量予測値を減算して求められる。このように大気圧の検出値と過去の集熱量の実績値とを併用することにより、天候の予測精度を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008‐64388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術の天候予測は、必ずしも高い確率で的中するわけではない。当該天候予測は、急な天候変化が起こりやすい地域、特異な天候が多く見られる地域、極端に晴れが少ない季節や地域、標高の高い地域等において外れることが想定される。天候予測が外れた場合には、以下のような問題が生じる。
【0005】
仮に天候予測が「晴」のときに実際が「雨」である場合には、翌日の集熱量の予測値が大きいにもかかわらず、実際に得られる集熱量が小さいため、ヒートポンプによって加熱した蓄熱量が不足し、給湯使用時に湯切れを起こすことがある。そして、このような湯切れを防ぐために、昼間にヒートポンプによって沸き上げ運転を実施するので、ランニングコストが増加してしまう。また、天候予測が「晴」のときに、午前中等にシャワーを使用したり、風呂に入ったりする場合には、その後の給湯使用時に湯切れを起こしてしまうことがある。
【0006】
また天候予測が「雨」のときに実際が「晴」である場合には、翌日の集熱量の予測値が小さいにもかかわらず、実際に得られる翌日の集熱量が大きいため、夜間のヒートポンプによる加熱量が過剰になり、給湯使用時の残湯量が大きくなるとともに、昼間の太陽熱を集熱することができない。このように、昼間の太陽熱を十分に活用することができず無駄な残湯量が拡大するため、年間給湯効率(1年間で使用する給湯に係る熱量を1年間で必要な消費電力で除算した値)が低下してしまう。
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、その目的は、天候予測の精度向上及びランニングコストの低減が図れるハイブリッドシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1は、太陽熱を熱媒体を介して取り入れる太陽熱集熱器(4)と、昼間の電気料金よりも安価な料金体系の電力を用いた加熱装置(2)によって生成した熱量を蓄熱する蓄熱装置(3)と、翌日の天候を予測して太陽熱集熱器(4)により翌日集熱できる予測集熱量を算出し、当該算出した予測集熱量と翌日に使用が予測される使用熱量とに応じて蓄熱装置(3)に安価な料金体系の電力を用いて蓄熱する必要な蓄熱量を算出する制御装置(5)と、を備えるハイブリッドシステムに係る発明であって、
制御装置(5)は、
大気圧を用いて翌日の天候予測結果を決定するための予め定められた演算式と、当該演算式にしたがって決定した天候予測結果と、太陽熱集熱器(4)によって集熱された集熱量実績及び太陽熱を集熱した熱媒体の温度実績の少なくとも一方の過去実績データと、を記憶し、
さらに、演算式に含まれる定数であってその値が天候予測結果を左右する制御定数を、記憶された天候予測結果及び過去実績データに応じて更新し、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定することを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、大気圧を用いて天候予測結果を決定する演算式の制御定数を、過去の天候予測結果及び上記過去実績データに応じて更新する。これにより、更新後の演算式に、これまでの天候予測の的中結果を反映させることができ、天候予測の的中率を向上することができる。例えば、晴の少ない地域や季節では、雨の天候予測が得られやすい演算式に変更することができ、雨の少ない地域や季節では、晴の天候予測が得られやすい演算式に変更することができる。つまり、天候予測が当たりがたい季節や地域でも、その環境に適合した独自の天候予測決定ロジックを構築することができるのである。したがって、使用環境に適合したシステムであって、天候予測の精度向上及びランニングコストの低減が図れるハイブリッドシステムを提供できる。
【0010】
請求項2は、太陽光エネルギーを取り入れて発電する太陽光発電装置(130)と、昼間の電気料金よりも安価な料金体系の電力を用いて蓄電池(114)に蓄電する蓄電装置(115)と、翌日の天候を予測して太陽光発電装置(130)により翌日発電できる予測発電量を算出し、当該算出した予測発電量と翌日に使用が予測される使用電力量とに応じて蓄電池(114)に安価な料金体系の電力を用いて蓄電する必要な蓄電量を算出する制御装置(111)と、を備えるハイブリッドシステムに係る発明であって、
制御装置(111)は、
大気圧を用いて翌日の天候予測結果を決定するための予め定められた演算式と、当該演算式にしたがって決定した天候予測結果と、太陽光発電装置(130)によって発電された発電量実績と、を記憶し、
さらに、演算式に含まれる定数であってその値が天候予測結果を左右する制御定数を、記憶された天候予測結果及び発電量実績に応じて更新し、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、大気圧を用いて天候予測結果を決定する演算式の制御定数を、過去の天候予測結果及び発電量実績に応じて更新する。これにより、更新後の演算式に、これまでの天候予測の的中結果を反映させることができ、天候予測の的中率を向上することができる。例えば、晴の少ない地域や季節では、雨の天候予測が得られやすい演算式に変更することができ、雨の少ない地域や季節では、晴の天候予測が得られやすい演算式に変更することができる。つまり、天候予測が当たりがたい季節や地域でも、その環境に適合した独自の天候予測決定のロジックを構築することができるのである。したがって、使用環境に適合したシステムであって、天候予測の精度向上及びランニングコストの低減が図れるハイブリッドシステムを提供できる。
【0012】
請求項3によると、請求項1または請求項2に記載の発明において、制御装置(5)は、過去の所定日数において天候実績に対する天候予測結果の的中率を算出し、当該算出した的中率を改善するように制御定数を更新し、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定することを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、過去の天候予測の的中率を改善するように制御定数を更新し、更新された演算式によって天候予測結果を決定する。これにより、天候予測の的中率が良くない状況が過去にあれば、これを改善すべく制御定数が更新されて、今後の天候予測の的中率を向上することができる。例えば、雨予測の的中率が良くない場合には、雨予測が得られやすい雨重視の制御定数に変更し、また晴予測の的中率が良くない場合には、晴予測が得られやすい晴重視の制御定数に変更することになる。したがって、システム使用場所における特有の地域性及び季節性等がある天候に適切に対応する天候予測決定のロジックに継続的に改善していくことができる。
【0014】
請求項4によると、請求項3に記載の発明において、制御装置(5)は、
翌日の天候予測を「雨」、「曇」、「晴」のいずれかに決定するものであり、過去の所定日数において天候実績に対する、「雨」及び「曇」の少なくとも一方に関する天候予測結果の的中率を算出し、
当該算出した的中率が低いと判定した場合は「雨」の天候予測結果が得られやすい値に制御定数を変更し、当該算出した的中率が高いと判定した場合は「晴」の天候予測結果が得られやすい値に制御定数を変更し、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定することを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、「雨」及び「曇」の少なくとも一方の天候予測についての的中率が低い場合は実際の天候実績が雨であるにもかかわらず、あまり的中できていないため、「雨」予測が得られやすい演算式に更新し、逆に当該的中率が高い場合は「晴」予測が得られやすい演算式に更新する。これにより、今後の天候予測において、「雨」予測の的中率を向上するとともに、「雨」予測の的中率が高い場合に「晴」予測が得られにくく、太陽エネルギーを十分に活用できない天候予測とならないように常に予測ロジックを改善していくことができる。
【0016】
請求項5は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明において、さらに、制御定数の増大及び低下を指定して、当該制御定数の更新を手動で設定可能なレベル設定操作部(10b)を備え、制御装置(5)は、レベル設定操作部(10b)によって制御定数の増大または低下が設定された場合には、設定されたレベルに応じて当該制御定数を更新し、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定することを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、自動で行われる制御定数の更新だけでなく、手動で制御定数の更新を設定できることにより、ユーザーの意思に対応した演算式に更新することができる。したがって、ユーザー特有の使い方や好み、翌日のシステム使用時におけるユーザーの要求に応えられる天候予測を随時提供することができる。
【0018】
請求項6によると、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発明において、演算式は、所定の時間幅における、大気圧の変化値と、大気圧の変動を積算して求めた大気圧の振動値とのそれぞれに関して制御定数の大小関係を定めた不等式で構成されることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、大気圧の変化値及び大気圧の振動値のそれぞれとの間で不等式を構成する制御定数を更新することにより、天候予測のロジックを継続して改善していく。これにより、継続的に改善されていく天候予測の決定を、複雑でなく処理能力を要しない演算によって実現することができる。
【0020】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のハイブリッドシステムの一例である第1実施形態のハイブリッド給湯装置の概要を示した構成図である。
【図2】第1実施形態のハイブリッド給湯装置における沸き上げ運転の作動を示したフローチャートである。
【図3】図2に示すフローチャートにおける「天候予測制御ステップ」に関するサブルーチンである。
【図4】図3に示すフローチャートにおける「天候予測学習ステップ」に関するサブルーチンである。
【図5】図4のフローチャートの処理において使用する過去7日間の実績データの一例を示す図である。
【図6】「天候予測学習ステップ」の制御定数更新ステップで使用する「制御定数のレベル決定テーブル」である。
【図7】図2に示すフローチャートにおける天候予測値決定ステップで使用する「天候予測値決定マップ」である。
【図8】第2実施形態に係る「天候予測学習ステップ」に関するサブルーチンである。
【図9】図8のフローチャートの処理において使用する過去7日間の実績データの一例を示す図である。
【図10】第3実施形態に係る「天候予測学習ステップ」に関するサブルーチンである。
【図11】図10のフローチャートの処理において使用する過去7日間の実績データの一例を示す図である。
【図12】過去7日間の実績データを用いて決定した天候実績の一例を示す図である。
【図13】本発明のハイブリッドシステムの一例である第4実施形態に係るハイブリッド蓄電システムの概要を示した構成図である。
【図14】第4実施形態のハイブリッド蓄電システムにおける蓄電運転の作動を示したフローチャートである。
【図15】第4実施形態のハイブリッド蓄電システムに係る「天候予測学習ステップ」に関するサブルーチンである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0023】
本発明に係るハイブリッドシステムは、使用が予測される使用熱量または使用電力に対して、タンクに蓄熱された蓄熱量及び太陽熱集熱器により集熱される熱量では不足する分の加熱熱量、または蓄電池に蓄電された蓄電量及び太陽光発電装置により発電される電力量では不足する分の蓄電量を、昼間の電気料金よりも安価な料金体系である所定の安価料金時間帯に、加熱運転を実施してタンクに蓄熱するシステム、または蓄電運転を実施して蓄電池に蓄電するシステムである。
【0024】
(第1実施形態)
本発明のハイブリッドシステムの一実施形態である第1実施形態について図1〜図7を参照して説明する。図1は、ハイブリッドシステムの一例である太陽エネルギーを利用したハイブリッド給湯装置1の概要を示した構成図である。
【0025】
図1に示すように、ハイブリッドシステムの一例であるハイブリッド給湯装置1は、太陽熱を集熱する太陽熱集熱器4と、ヒートポンプサイクルを用いた加熱装置であるヒートポンプユニット2と、ヒートポンプユニット2によって沸き上げた湯を蓄えるタンク3と、を有しており、各装置を適宜使用して給湯を行うハイブリッド式のシステムである。つまり、浴槽やシャワーなどへ出湯するときには、状況に応じて、昼間における太陽熱集熱器4の集熱量によって作った太陽熱温水(熱媒体)のみを使用したり、ヒートポンプユニット2によって作った貯湯水のみを使用したり、あるいは当該太陽熱温水と貯湯水を混合した温水を使用したりする。これにより、ハイブリッド給湯装置1は、太陽熱利用と、昼間の電気料金よりも安価な料金体系である所定の安価料金時間帯(例えば、深夜料金時間帯)に実施する沸き上げ運転とを活用して省エネルギー性を優先しつつ、ユーザーの要望を満たした給湯を行うものである。
【0026】
ヒートポンプユニット2は、冷媒を熱交換媒体とするヒートポンプサイクルからなり、タンク3内の水を加熱可能な加熱装置である。ヒートポンプユニット2は制御装置5からの制御信号により作動するとともに、その作動状態を制御装置5に出力するように構成されている。
【0027】
タンク3は耐食性に優れた金属製のタンクであり、その外周部に図示しない断熱材が配置されており、高温の給湯用水を長時間に渡って保温することができる。タンク3の外壁面には、貯湯水の湯量、貯湯温度を検出するための複数個のタンクサーミスタ31,32,33,34,35,36,37が設けられており、本実施形態では縦方向にほぼ等間隔で最上部から順に7個のサーミスタが配設されている。これら7個のサーミスタの検出温度信号は、それぞれ制御装置5の入力回路に入力されるようになっており、各水位レベルでのタンク内流体の温度や湯量を検出可能である。したがって、制御装置5は、タンクサーミスタ31〜37からの温度情報に基づいて、タンク3内上方の沸き上げられた湯とタンク3内下方の沸き上げられる前の水との境界位置を検出でき、さらに温度及び湯量の検出することにより、タンク3内に蓄えられている蓄熱量を算出することができる。
【0028】
タンク3には、タンク3の内部に水道水を供給するための給水管11と、ヒートポンプユニット2とタンク3の内部とを接続しヒートポンプユニット2により加熱された湯が循環する加熱用循環回路12と、給湯端末に繋がる給湯管13等からなる配管系統と、給湯管13に混合弁15を介して連結される市水流入管14と、が接続されている。さらにタンク3の内部には、熱交換器8が設置されている。この熱交換器8には、太陽熱集熱器4で太陽熱により加熱された熱媒体の一例である太陽熱温水が循環する集熱器用循環回路9が接続されている。
【0029】
集熱器用循環回路9には、当該太陽熱温水を強制的に循環させるポンプ7が設けられている。熱交換器8においては、当該太陽熱温水とタンク3内部の貯湯水とが熱交換することにより、当該貯湯水が太陽熱温水から吸熱して加熱される。集熱器用循環回路9の一部であって太陽熱集熱器4内部の太陽熱温水が流通する部位に、太陽熱集熱器4で受熱した太陽熱温水の温度を検出する集熱器サーミスタ20が設けられている。集熱器サーミスタ20は、太陽熱集熱器4によって加熱された後、熱交換器8で熱交換される前の太陽熱温水の温度(熱媒体の温度)を検出する第1の熱媒体温度センサとして使用できる。
【0030】
熱交換器8から太陽熱温水が流出する出口に相当する集熱器用循環回路9の一部には、熱交換器8で熱交換後の太陽熱温水の温度を検出する熱交換後サーミスタ21が設けられている。熱交換後サーミスタ21は、熱交換器8で熱交換された後、太陽熱集熱器4によって加熱される前の熱媒体の温度を検出する第2の熱媒体温度センサとして使用できる。熱交換後サーミスタ21は、集熱器用循環回路9を構成する環状の配管のうち、タンクユニットを取り囲む筐体内であって熱交換器8よりも下流側でタンク3外に露出する配管部位に設置されている。
【0031】
熱交換前サーミスタ22は、太陽熱集熱器4によって加熱された後、熱交換器8で熱交換される前の熱媒体(太陽熱温水)の温度を検出する第1の熱媒体温度センサとして使用できる。熱交換前サーミスタ22は、集熱器用循環回路9を構成する環状の配管のうち、タンクユニットを取り囲む筐体内であって熱交換器よりも上流側でタンク3外に露出する配管部位に設置され、吸熱される前の集熱器用循環回路9を流れる熱媒体の温度を検出する。
【0032】
タンク3内の熱交換器8の周囲には、熱交換器8の近傍における貯湯水の温度を検出する熱交換器サーミスタ23が設けられている。熱交換器サーミスタ23は、熱交換器8で熱交換された後、太陽熱集熱器4によって加熱される前の熱媒体(太陽熱温水)の温度を検出する第2の熱媒体温度センサとしても使用できる。熱交換器サーミスタ23は、例えば、熱交換器8に近接した部位、熱交換器8と同じ高さの水位に相当する部位、熱交換器8の下流側出口に近接する部位、その他これらの部位に相当するタンク3の内壁面に設置されている。熱交換器サーミスタ23は、熱交換器8の周囲に位置するタンク3内の貯湯水の温度を検出することができる。
【0033】
ポンプ7の駆動により太陽熱温水が循環する集熱器用循環回路9の一部には、循環する太陽熱温水(熱媒体)の流量を検出する流量センサ40が設けられている。流量センサ40は、太陽熱集熱器4によって加熱された後の太陽熱温水が熱交換器8を通過する流量を検出する。
【0034】
制御装置5は、ユーザーが運転操作を設定できる運転操作部であるリモートコントローラ10上の運転モード設定スイッチ10a,レベル設定スイッチ10b及びヒートポンプユニット2からの通信信号、流量センサ40、大気圧検出手段の一例である大気圧センサ6、各種のサーミスタ20〜23,31〜37等からの検出信号が入力される入力回路と、入力回路からの信号を用いて各種演算を実行するマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータによる演算に基づいてヒートポンプユニット2、ポンプ7、各種混合弁等を制御する制御信号を出力する出力回路と、を備えている。マイクロコンピュータは、大気圧、天候予測値(天候予測結果)、集熱量実績、温水温度実績(熱媒体の温度実績)、天候実績等のデータ、演算結果等を記憶する記憶手段としてのROM、RAM等を内蔵し、あらかじめ設定された制御プログラムや更新可能な制御プログラムを有し、後述する沸き上げ運転を制御する。
【0035】
制御装置5は、大気圧センサ6により検出される大気圧の検出値に応じて天候を予測する天候予測手段、過去の各種実績データを用いて天候予測を学習する天候予測学習手段、天候予測結果及び過去の集熱量実績に基づき太陽熱集熱器4による集熱量の予測値を求める集熱量予測手段、及び集熱量の予測値に応じてヒートポンプユニット2による沸き上げ熱量(加熱熱量)を求める加熱量算出手段としての機能を有する。
【0036】
つまり、制御装置5は、省エネルギー、低ランニングコストのため、過去の実績データを活用した学習機能を有し、天候予測学習によって翌日の天候予測の精度を向上する。さらに、制御装置5は、このように精度向上を図った上で天候を予測し、天候予測結果等に基づく昼間の太陽熱の集熱量を予測し、この集熱量とタンク3内に蓄えた熱量を加味して深夜料金時間帯のヒートポンプユニット2による沸き上げ熱量を決定する。この沸き上げ熱量は、ユーザーの過去の使用熱量実績による学習値から、タンク3内に残存するタンク残存熱量と、翌日の集熱量(集熱量の予測値)とを減算することにより算出されるものである。そして、制御装置5は、電力が安価な深夜時間帯にヒートポンプユニット2を作動させ、加熱量算出手段として算出した沸き上げ熱量(加熱熱量)に応じてヒートポンプユニット2に貯湯水の加熱を行わせることにより、加熱された高温水がタンク3内に供給されて当該沸き上げ熱量がタンク3内の貯湯水に加わることになる。
【0037】
また、制御装置5による天候予測演算は、所定の時間幅において、検出された大気圧値、大気圧値の変化値、大気圧値の変動を積算して求めた大気圧の振動値等に基づいて、分類された複数種類の天候のうち、一の天候予測結果を決定する。例えば、制御装置5は天候予測演算に使用する所定のマップを複数記憶している。当該マップは、当該大気圧値の振動値が大きく2つに分類されており、この振動値の分類毎に大気圧値の変化値に関する不等式がさらに複数に分類され、当該変化値の分類毎にさらに大気圧値に関する不等式が割り当てられている。そして、当該マップに、大気圧値、当該振動値、及び当該変化値の各パラメータを当てはめることにより、一の天候予測結果を決定することができる。
【0038】
本実施形態では、天候予測結果は、「晴」、「曇」、「雨」の3種類のうち、いずれかに決定される。また例えば、大気圧値としては演算に現在の検出値を使用し、当該振動値及び当該変化値としては4時間前から現在までに検出されたデータを使用して算出するものである。
【0039】
また、制御装置5は、日照時間帯に太陽熱温水から貯湯水に伝熱可能な状態になったら太陽熱温水のポンプ7を作動させ、太陽熱温水に蓄えられた太陽熱を貯湯水に伝達させる。このとき制御装置5は、太陽熱温水から貯湯水へ伝熱可能か否かの判定を、太陽熱温水の温度を検出する第1の熱媒体温度センサ(集熱器サーミスタ20)から得られる検出値と第2の熱媒体温度センサ(熱交換器サーミスタ23)から得られる検出値との温度差を利用して実施する。つまり、制御装置5は、両検出値の温度差が所定値以上になれば、太陽熱温水が貯湯水よりも充分に高い温度であり太陽熱温水から貯湯水に伝熱可能であると判定してポンプ7を作動させる。なお、第1の熱媒体温度センサには集熱器サーミスタ20、熱交換前サーミスタ22を使用することができ、第2の熱媒体温度センサには熱交換後サーミスタ21、熱交換器サーミスタ23を使用することができる。
【0040】
上記構成のハイブリッド給湯装置1における深夜料金時間帯の沸き上げ運転の作動について図2〜図7を参照して説明する。図2は、ハイブリッド給湯装置1における沸き上げ運転の作動を示したフローチャートである。
【0041】
図2に示す各ステップは、制御装置5によって実行される。まず、ステップ1では、最初の大気圧データの保存を行う場合は、現在時刻が19時から深夜料金時間帯内であるか否か、つまり、19時から翌日の7時までの時間帯であるか否かが判定される。そして、19時以降または深夜料金時間帯内であれば、ステップ2に進み、天候予測制御を実行する。この天候予測制御のサブルーチンは、図3に示すフローチャートにしたがって行われ、その詳細は後述する。ステップ1でNOと判定するとYESと判定するまでステップ1の処理を反復する。
【0042】
ステップ2の天候予測制御では、主に、所定時間に記憶した大気圧データと、過去の天候実績、集熱量実績、天候予測等に関わる過去実績データを用いた天候予測学習と、によって天候予測値を決定する。天候予測制御を実行した後は、次にステップ3を実行する。
【0043】
ステップ3では、ステップ2で算出された翌日の天候予測値と、記憶手段に記憶された過去の集熱量実績とを用いて翌日に集熱が予測される予測集熱量を算出する。このステップ3は、翌日の天候予測結果を用いて、太陽熱集熱器4で昼間に集熱されうる熱量の予測量を算出する予測集熱量演算ステップである。記憶手段には、天候予測結果と集熱量実績を用いて予測集熱量を算出できるマップが予め記憶されている。予測集熱量演算ステップは、翌日の天候予測結果(「晴」、「曇」、「雨」のいずれかの天候予測値)、集熱量実績、及び当該マップを用いて、予測集熱量を算出する集熱量予測手段である。
【0044】
また、ステップ3で算出した翌日の予測集熱量と、タンクサーミスタ31〜37のうちタンク3の下部に設置されたサーミスタの検出値から求めたタンク内下部の貯湯温度とから、太陽熱集熱器4から得られるソーラー確保湯量を求めるようにしている。ソーラー確保湯量は、制御装置5が記憶手段に予め記憶しているテーブルを用いて求められる。当該テーブルは、タンク内下部の貯湯温度と翌日の予測集熱量とが決まれば、タンク3の容量に対応するソーラー確保湯量が求まる特性マップである。
【0045】
次にステップ4,5,6で、深夜料金時間帯に実施する沸き上げ運転の制御に必要なパラメータを算出する。ステップ4では前述した沸き上げ熱量を算出し、ステップ5では目標沸き上げ温度を算出し、ステップ6では沸き上げ開始時刻を算出する。
【0046】
制御装置5は、ステップ4で算出した沸き上げ熱量(使用熱量実績による学習値から、タンク残存熱量及び翌日の予測集熱量を減算して得られた熱量)を用いて、タンク3が満タンとなる湯量にて当該沸き上げ熱量を割戻して、目標沸き上げ温度を算出する。つまり、ステップ5で算出する目標沸き上げ温度は、翌日得られる予測集熱量を見越してその分を差し引いた熱量を沸き上げるために必要とする沸き上げ温度である。また、沸き上げ開始時刻は、目標沸き上げ温度または沸き上げ熱量を達成するようにタンク3を満タンにするために必要な運転時間を算出し、この必要な運転時間が深夜料金時間帯の終了時刻までに終了するように逆算することにより算出する。
【0047】
そして、ステップ7で、現在時刻がステップ6で算出した沸き上げ開始時刻になったか否かを判定する。そして、沸き上げ開始時刻になったら(YES)、ステップ8に進み、ステップ4,5,6で算出したパラメータを満たすように沸き上げ運転を実施する。沸き上げ開始時刻になっていなければ(NO)、ステップ1に戻り、沸き上げ開始時刻になるまで以降のステップを実行する。
【0048】
次に、ステップ2の天候予測制御について図3にしたがって説明する。図3は、図2に示すフローチャートの「天候予測制御ステップ」に関するサブルーチンである。図3に示すように、天候予測制御を開始すると、まずステップ20で、大気圧のデータを記憶手段に記憶していく。
【0049】
大気圧のデータは、ステップ21でデータの取得開始から所定の時間(大気圧取得時間、例えば4時間)が経過したと判定するまで継続して多数回取得され、記憶されるものとする。大気圧のデータは、例えば4時間継続して取得する場合、サンプリング周期2分で合計120回分が取得され記憶されることになる。図2のフローチャートから沸き上げ運転は19時以降に開始されるので、大気圧のデータは、19時から23時までの時間幅、または19時以降の時刻から4時間が経過するまでの時間幅で記憶されることになる。なお、ステップ20,21は、ここでは4時間という時間幅であるが、この時間に限定するものではなく、予め定めた時間幅の大気圧データを読み込むステップである。
【0050】
次にステップ22では、現在時刻から4時間前までの記憶済みの大気圧データを記憶手段から読み込み、大気圧の振動値Fを算出する。大気圧の振動値Fは、所定の時間間隔の大気圧の変動を積算して求めた値である。また、大気圧の振動値Fは、所定の大気圧取得時間内で取得した複数の大気圧値のそれぞれについて、当該大気圧取得時間の初期圧力値P0と終期圧力値P120とを結ぶ一次式との差である差分値を求め、複数の各差分値を積算(合計)することにより求めた値である。大気圧の振動値Fは、下記の(数1)によって算出される。
【数1】
【0051】
なお、制御装置5は、停電の発生等によって、大気圧値の取得回数、つまり、iが120回に満たないでも、取得したすべての大気圧値を用いて取得できた個数の差分値を積算してF値を算出するものとする。(数1)により示される演算式は、あらかじめ設定された制御プログラムの一部として記憶手段に記憶されている。
【0052】
さらにステップ23では、記憶手段から読み込まれた大気圧データを用いて、大気圧の変化値Sを算出する。大気圧の変化値Sは、大気圧取得時間の初期圧力値P0から終期圧力値P120を差し引いた値であり、下記の(数2)によって算出される。
【数2】
【0053】
(数2)により示される演算式は、あらかじめ設定された制御プログラムの一部として記憶手段に記憶されている。
【0054】
次に、ステップ24の天候予測学習について図4にしたがって説明する。図4は、図3に示すフローチャートの「天候予測学習ステップ」に関するサブルーチンである。図4に示すように、天候予測学習を開始すると、まずステップ240で、記憶手段に記憶されている各種データを読み込む。この場合の各種データは、過去の予め定めた期間、例えば、過去7日間における天候予測値、集熱量実績等である。
【0055】
図5には、天候予測学習ルーチンの処理において使用する過去7日間の実績データの一例を示している。天候予測の対象である翌日は「8日」であり、1日前は図5に示す「7日」であり、2日前は図5に示す「6日」であり、以降、過去に遡って7日前は図5に示す「1日」である。また、約24時間経過して翌日の19時以降に「天候予測学習ステップ」を行うときには、1日前は「8日」であり、2日前は図5に示す「7日」であり、以降、過去に遡って7日前は図5に示す「2日」となる。つまり、過去実績の対象となる日付は、1日経過する毎に、1日分更新されて、最も昔の日付が対象外となる。
【0056】
各日の集熱量実績は、例えば、当該日における集熱量の経時変化のグラフから、1日のトータル集熱量を積算によって算出するものとする。また、1日の集熱量は、当該グラフにおける所定時間帯の集熱量の変化率に基づいて算出してもよいし、日照時間における集熱量の最大値と最小値の差に基づいて算出してもよい。
【0057】
ステップ241では、ステップ240で読み込んだデータが、過去7日分あるか否かを判定し、7日分に満たなければ、以降のステップを実行することなく、天候予測学習のサブルーチンを終了する。ステップ241で過去7日分のデータがあることを確認したら、ステップ242に進み、集熱量実績データについて条件A1が成立するか否かを判定する。
【0058】
ここで、条件A1は、過去実績において天候予測値が「晴」で、かつ集熱量実績が100kal以下である日数が7日間うち3日以上あること、と定義されている。図5に示すように、「晴」の天候予測値は、2日、3日、4日、6日、7日であり、そのうち、集熱量実績が100kal以下であるのは、2日、4日、6日である。よって、図5に示す過去実績データの場合、ステップ242で条件A1が成立するので、次にステップ245で制御定数を1レベル下げ、ステップ246で制御定数のレベルを確定する。
【0059】
条件A1が成立する場合は、天候予測値が「晴」であるにもかかわらず、集熱量実績が少なかった日が多いことから実際の天候は「雨」または「曇」であり、予測が外れた日が多いことを示している。このため、翌日に期待する集熱量が得られず、タンク3内の蓄熱量が不足して湯切れを起こしやすい状況を表している。つまり、予測集熱量が多いと予測して、夜間のタンク3への蓄熱量を絞ったため、翌日の使用熱量を確保することが困難な日が多かったことになる。そして、翌日の使用熱量を確保するために、昼間にヒートポンプユニット2によって沸き上げ運転を実施するので、ランニングコストが増加してしまうことが想定されるのである。
【0060】
天候予測値は、後のステップ25において、図7に示す「天候予測値決定マップ」にしたがって決定される。ここで、制御定数α,β,γは、天候予測値決定ステップ(ステップ25)で使用する「天候予測値決定マップ」の演算式において、ステップ22,23で求められる大気圧の振動値F及び変化値Sのそれぞれと不等式を構成し、振動値Fによる分類と変化値Sによる分類を経て、天候予測結果が決定される重要な値である。
【0061】
本実施形態の天候予測学習は、ステップ242の条件A1またはステップ243の条件B1が成立した場合に、図6に示す「制御定数のレベル決定テーブル」にしたがって制御定数のレベルを更新することを特徴としている。この制御定数のレベル更新機能を有することより、過去実績データに反映された、システム使用地域特有の天候に適応した天候予測を可能とし、天候予測の精度を向上することができるのである。
【0062】
図6の「制御定数のレベル決定テーブル」では、制御定数α,β,γのそれぞれについて、レベル1、レベル2、レベル3、レベル4、レベル5という5段階のレベルを示す定数が設定されている。設定されるレベルがレベル5に近づくほど、天候予測値が「晴」に決定されやすい「晴重視」の制御定数更新がなされ、レベル1に近づくほど、天候予測値が「雨」に決定されやすい「雨重視」の制御定数更新がなされるように規定されている。
【0063】
図5に示すような過去実績データではなく、ステップ242で条件A1が成立しないときはステップ243で集熱量実績データについて条件B1が成立するか否かを判定する。条件B1は、過去実績において天候予測値が「雨」で、かつ集熱量実績が2000kal以上である日数が7日間うち2日以上あること、と定義されている。ステップ243で条件B1が成立しない場合は、ステップ246に進み、レベルを変更することなく制御定数のレベルを確定する。ステップ243で条件B1が成立する場合は、次にステップ244で制御定数を1レベル上げ、ステップ246で制御定数のレベルを確定する。
【0064】
条件B1が成立する場合は、天候予測値が「雨」であるにもかかわらず、集熱量実績が多かった日が多いことから実際の天候は「晴」であり、予測が外れた日が多いことを示している。このため、翌日に十分に得られる太陽熱からの集熱量を活用して蓄熱することができない。つまり、予測集熱量が少ないと予測して、夜間のタンク3への蓄熱量を大きくしたため、夜間のヒートポンプユニット2による加熱量が過剰になり、給湯使用時の残湯量が大きくなる。このように、条件B1が成立する場合は、昼間の太陽熱を十分に活用することができず、無駄な残湯量が拡大するため、年間給湯効率(1年間で使用する給湯に係る熱量を1年間で必要な消費電力で除算した値)が低下してしまうことになる。
【0065】
ステップ246でレベル確定を実行した後、次にステップ247でレベル設定スイッチ10bによる手動のレベル設定があったか否かを判定する。レベル設定スイッチ10bは、ユーザーにより、制御定数α,β,γの増大及び低下が指定され、すなわち、レベルの上昇及び下降が設定されて、制御定数の更新を手動で設定できるレベル設定操作部である。
【0066】
ステップ247でレベル設定スイッチ10bによる制御定数のレベル設定があった場合は、ステップ246でのレベル確定にかかわらず、またはステップ246でのレベル確定値からさらに、レベル設定スイッチ10bによるレベル設定に応じて、1レベル上げるか、1レベル下げるかの設定に合わせてレベルを確定し(ステップ248)、天候予測学習のサブルーチンを終了する。また、レベル設定スイッチ10bによるレベル設定がなかった場合は、ステップ246で確定したレベルに合わせて制御定数α,β,γを更新する(ステップ249)し、天候予測学習のサブルーチンを終了する。
【0067】
また、ステップ24の天候予測学習は、複数の予め定めた時刻に実行するようにしてもよい。例えば、深夜時間の23時、0時、1時、2時、3時等の時刻に実行し、それぞれの時刻において、制御定数の更新を行うようにする。また、図6に示す制御定数レベルの決定表は、複数のレベルに設定されていればよく、5段階のレベルに限定するものではない。また、天候予測学習が一度も行われていない制御定数の初期値としては、最大のレベル、最も「晴」予測が得られやすいレベル5に設定されている。
【0068】
天候予測学習のサブルーチンを終了すると、次にステップ25で、天候予測値の算出を実行する。ステップ25では、ステップ24で更新した制御定数を適用した図7の演算式を含む天候予測値決定マップに基づいて、ステップ22で算出した大気圧の振動値Fと、ステップ23で算出した大気圧の変化値Sとを順に分類して、天候予測値を「晴」、「曇」、「雨」のいずれかに決定する。
【0069】
大気圧の振動値Fがレベル変更後のα以下である場合は、次に大気圧の変化値Sがレベル変更後のβより大きいときは「晴」に決定し、Sがレベル変更後のγ以上で当該β以下であるときには「曇」に決定し、Sが当該γより小さいときには「雨」に決定する。また、Fがレベル変更後のαより大きい場合は、次にSがβより大きいときは「晴」に決定し、Sがレベル変更後のγ以上で当該β以下であるときには「曇」に決定し、Sが当該γより小さいときには「雨」に決定する。
【0070】
また、ステップ25の天候予測値決定のステップは、複数の予め定めた時刻に実行するようにしてもよい。例えば、深夜時間の23時、0時、1時、2時、3時等の時刻に実行し、それぞれの時刻において天候予測値を決定し、決定された数回の天候予測値のうち、「雨」、「曇」の各回数に応じて、最終的な天候予測結果を決定するようにしてもよい。例えば、「雨」の天候予測が1回以上である場合には、最終的な天候予測結果を「雨」とし、「雨」の天候予測が1回もなく「曇」の天候予測が2回以上である場合には最終的な天候予測結果を「曇」とし、「雨」の天候予測が1回もなく「曇」の天候予測が2回未満である場合には最終的な天候予測結果を「晴」とする。
【0071】
ステップ25で天候予測結果が得られると、次にステップ26で各種のデータ、例えば、天候予測結果、集熱量実績、温水温度実績(熱媒体の温度実績)、天候実績等のデータを記憶手段に記憶し、天候予測制御のサブルーチンを終了する。
【0072】
本実施形態のハイブリッド給湯装置1がもたらす作用効果を以下に述べる。ハイブリッド給湯装置1は、太陽熱を熱媒体を介して取り入れる太陽熱集熱器4と、昼間の電気料金よりも安価な料金体系の電力を用いたヒートポンプユニット2によって生成した熱量を蓄熱するタンク3と、翌日の天候を予測して太陽熱集熱器4により翌日集熱できる予測集熱量を算出し、当該算出した予測集熱量と翌日に使用が予測される使用熱量とに応じてタンク3に安価な料金体系の電力を用いて蓄熱する必要な蓄熱量を算出する制御装置5と、を備える。
【0073】
制御装置5は、大気圧を用いて翌日の天候予測結果を決定するための予め定められた演算式と、当該演算式にしたがって決定した天候予測結果と、太陽熱集熱器4によって集熱された集熱量実績と、を記憶する(ステップ26)。さらに制御装置5は、演算式に含まれる定数であってその値が天候予測結果を左右する制御定数を、記憶された天候予測結果及び集熱量実績に応じて更新し(ステップ249)、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定する(ステップ25)。
【0074】
天候予測結果を用いて翌日の集熱量を算出する従来のシステムにおいては、天候予測は必ずしも高い確率で的中するわけではないため、以下のような不具合が生じうる。具体的には、天候予測結果が「雨」で、実際が「晴」であった場合には、深夜料金時間帯に実施するタンク3への蓄熱量が過大になり、タンク3内の残湯が多く、太陽熱の集熱ができない。このため、年間給湯効率(1年間で使用する給湯に係る熱量を1年間で必要な消費電力で除算した値)が低下することになる。また、天候予測結果が「晴」で、実際が「雨」であった場合には、実際に昼間の集熱量が予測量よりも大きく不足し、深夜料金時間帯に実施するタンク3への蓄熱量が不足するようになる。このため、貯湯量が不足して湯切れが生じ易く、後で追加の沸き増し運転が必要になり、ランニングコストが上昇することになる。また、ユーザーの好みや習慣により、午前中や昼間に大量の給湯を使用する場合には、湯切れが生じやすくなる。
【0075】
そこで、ハイブリッド給湯装置1によれば、大気圧を用いて天候予測結果を決定する演算式の制御定数を、過去の天候予測結果及び集熱量実績に応じて更新する(ステップ249)。これにより、更新後の演算式に、これまでの天候予測の的中結果を反映させることができ、天候予測の的中率を向上することができる。例えば、晴の少ない地域や季節では、雨の天候予測が得られやすい演算式に変更することができ、雨の少ない地域や季節では、晴の天候予測が得られやすい演算式に変更することができる。つまり、天候予測が当たりがたい季節や地域でも、その環境に適合した独自の天候予測決定ロジックを構築することができるのである。
【0076】
このように従来固定値だった制御定数を過去実績データに応じて適切に更新することにより、過去に実際に起こっている状況を活用して、天候予測の精度向上を図ることができる。したがって、年間を通して使用環境に適合し、天候予測の精度向上及びランニングコストの低減に貢献するハイブリッド給湯装置1を提供できる。
【0077】
さらにハイブリッド給湯装置1は、制御定数の増大及び低下を指定して、当該制御定数の更新を手動で設定可能なレベル設定スイッチ10bを備える。制御装置5は、レベル設定スイッチ10bによって制御定数の増大または低下が設定された場合には、設定されたレベルに応じて当該制御定数を更新し(ステップ248,249)、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定する(ステップ25)。
【0078】
この処理によれば、自動で行われる制御定数の更新だけでなく、手動で制御定数の更新を設定できることにより、ユーザーの意思に対応した演算式に更新することができる。したがって、ユーザー特有の使い方や好み、翌日のシステム使用時におけるユーザーの要求に応えられる天候予測を随時提供するハイブリッド給湯装置1が得られる。
【0079】
また、天候予測値を決定するためにステップ25の処理で使用される演算式は、所定の時間幅における、大気圧の変化値Sと、大気圧の変動を積算して求めた大気圧の振動値Fとのそれぞれに関して制御定数α,β,γの大小関係を定めた不等式で構成されている(図7参照)。
【0080】
これによれば、大気圧の変化値S及び大気圧の振動値Fのそれぞれとの間で図7に示す不等式を構成する制御定数α,β,γを更新することにより、天候予測のロジックを継続して改善していくことができる。このため、時間経過に伴う気候変化に随時対応する天候予測を提供できる。また、このように継続的に改善されていく天候予測の決定ロジックを、複雑でなく処理能力を要しない演算によって実現することができる。
【0081】
(第2実施形態)
第2実施形態のハイブリッド給湯装置1は、第1実施形態で説明したステップ242及びステップ243を、それぞれステップ242A及びステップ243Aに置き換えた「天候予測学習」のサブルーチンを有する。また、第2実施形態は、システムの構成及び図2、図3のフローチャート、図6及び図7について第1実施形態と同様であり、制御に係る各処理、その作用効果も同様である。図8は、第2実施形態に係る「天候予測学習ステップ」に関するサブルーチンである。図9は、図8のフローチャートの処理において使用する過去7日間の実績データの一例を示す図である。図9に示す温水温度実績は、例えば、一日のうち、所定時間範囲(例えば、10時〜16時の範囲)の平均温水温度を求めたものである。以下、第1実施形態と異なる部分のみ説明する。
【0082】
図8に示すように、ステップ242Aでは温水温度実績について条件A2が成立するか否かを判定し、条件A2が成立しない場合にさらにステップ243Aで温水温度実績について条件B2が成立するか否かを判定する。ここで、条件A2は、過去実績において天候予測値が「晴」で、かつ温水温度実績が30℃以下である日数が7日間うち3日以上あること、と定義されている。条件B2は、過去実績において天候予測値が「雨」で、かつ集熱量実績が45℃以上である日数が7日間うち2日以上あること、と定義されている。
【0083】
図9に示すように、「晴」の天候予測値は、2日、3日、4日、6日、7日であり、そのうち、温水温度実績が30℃以下であるのは、2日、4日、6日である。よって、図9に示す過去実績データの場合、ステップ242Aで条件A2が成立するので、次にステップ245で制御定数を1レベル下げ、ステップ246で制御定数のレベルを確定する。
【0084】
条件A2が成立する場合は、天候予測値が「晴」であるにもかかわらず、温水温度実績が低温度であった日が多いことから実際の天候は「雨」または「曇」であり、予測が外れた日が多いことを示している。このため、翌日に期待する集熱が得られずに温水温度が上がらず、タンク3内の蓄熱量が不足して湯切れを起こしやすい状況を表している。つまり、予測集熱量が多いと予測して、夜間のタンク3への蓄熱量を絞ったため、翌日の使用熱量を確保することが困難な日が多かったことになる。そして、翌日の使用熱量を確保するために、昼間にヒートポンプユニット2によって沸き上げ運転を実施するので、ランニングコストが増加してしまうことが想定されるのである。
【0085】
ステップ242Aで条件A2が成立せず、さらにステップ243Aで条件B2が成立しない場合は、ステップ246に進み、レベルを変更することなく制御定数のレベルを確定する。ステップ243Aで条件B2が成立する場合は、次にステップ244で制御定数を1レベル上げ、ステップ246で制御定数のレベルを確定する。
【0086】
条件B2が成立する場合は、天候予測値が「雨」であるにもかかわらず、温水温度実績が高温度であった日が多いことから実際の天候は「晴」であり、予測が外れた日が多いことを示している。このため、翌日に十分に得られる太陽熱からの集熱量を活用して蓄熱することができない。つまり、予測集熱量が少ないと予測して、夜間のタンク3への蓄熱量を大きくしたため、夜間のヒートポンプユニット2による加熱量が過剰になり、給湯使用時の残湯量が大きくなる。このように、条件B2が成立する場合は、昼間の太陽熱を十分に活用することができず、無駄な残湯量が拡大するため、年間給湯効率(1年間で使用する給湯に係る熱量を1年間で必要な消費電力で除算した値)が低下してしまうことになる。
【0087】
本実施形態によれば、制御装置5は、大気圧を用いて翌日の天候予測結果を決定するための予め定められた演算式と、当該演算式にしたがって決定した天候予測結果と、太陽熱を集熱した温水温度実績と、を記憶する(ステップ26)。さらに制御装置5は、演算式に含まれる定数であってその値が天候予測結果を左右する制御定数を、記憶された天候予測結果及び温水温度実績に応じて更新し(ステップ249)、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定する(ステップ25)。
【0088】
これにより、温水温度実績を用いて実際の天候実績を判断するため、集熱量実績を用いて判断したときに実際の天候実績を正確に導き出させない状況でも、有用な天候実績判断方法を提供することができる。
【0089】
例えば、天候予測が「雨」である場合に翌日の天候が「晴」であったときである。この場合、「雨」予測であることから、タンク3に夜間蓄える蓄熱量が多いため、翌日の昼間にはタンク3内に高温の湯が多く貯湯されることになる。熱交換器8では、タンク3に多く蓄えられた高温の湯と熱交換した比較的高い温度の太陽熱温水が太陽熱集熱器4に戻るため、太陽熱温水の温度は太陽熱集熱器4を流通する前後であまり変化しない。したがって、算出される集熱量は、実際に太陽熱が提供する熱量に比べて小さい値になり、この集熱量実績からは正確な天候予測ができないことになる。そこで、第2実施形態では、温水温度実績を判断に用いるので、夜間の過大な蓄熱量に関係なく、翌日提供される太陽熱の状況をより正確に検出できるのである。
【0090】
(第3実施形態)
第3実施形態のハイブリッド給湯装置1は、第1実施形態で説明したステップ242及びステップ243を、それぞれステップ242B及びステップ243Bに置き換えた「天候予測学習」のサブルーチンを有する。また、第3実施形態は、システムの構成及び図2、図3のフローチャート、図6及び図7について第1実施形態と同様であり、制御に係る各処理、その作用効果も同様である。図10は、第3実施形態に係る「天候予測学習ステップ」に関するサブルーチンである。図11は、図10のフローチャートの処理において使用する過去7日間の実績データの一例を示す図である。図12は、過去7日間の実績データを用いて決定した天候実績の一例を示す図である。以下、第1実施形態と異なる部分のみ説明する。
【0091】
図10に示すように、ステップ242Bでは天候予測値の「曇」及び「雨」の的中率(以下、単に「曇・雨的中率」ともいう)について条件A3が成立するか否かを判定し、条件A3が成立しない場合にさらにステップ243Bで曇・雨的中率について条件B3が成立するか否かを判定する。ここで、条件A3は、過去7日間の天候予測実績において曇・雨的中率が30%以下であること、と定義されている。条件B3は、過去7日間の天候予測実績において曇・雨的中率が60%以上であること、と定義されている。
【0092】
天候実績の求め方は、以下のとおりである。過去の所定期間、例えば過去7日の集熱量実績のうち、2番目に大きい値に第1の係数を乗算して第1の閾値を求め、当該2番目に大きい値に第2の係数を乗算して第2の閾値を求める。各日の集熱量実績が、第1の閾値以上である場合は天候実績を「晴」と判断し、第2の閾値以下である場合は「雨」と判断し、第2の閾値と第1の閾値の間に含まれる場合には「曇」と判断するものである。
【0093】
一例として、この演算を用いて8日〜14日の各日について過去実績から決定した天候実績は、図12に示すとおりとなる。例えば、8日について天候実績を求めみる。過去7日の集熱量実績のうち2番目に大きい値は、3500kcalであり、第1の閾値は、3500×0.6(第1の係数)=2100kcalで、第2の閾値は、3500×0.1(第2の係数)=350kcalである。8日の集熱量実績は4000kcalであり、第1の閾値2100kcalよりも大きいので、8日の天候実績は、「晴」と決定できる。
【0094】
的中率(%)は、まず、該当する日付の天候実績に対する天候予測結果の的中精度をポイント化し、合計ポイントを完全的中した場合のポイントで除算した値に100を乗算することにより求められる。獲得できるポイントは、天候実績が「雨」で、予測が「雨」のときは3点、予測が「曇」のときは1点、予測が「晴」のときは0点である。また、天候実績が「曇」で、予測が「曇」のときは2点、予測が「雨」のときは1点、予測が「晴」のときは1点である。
【0095】
図12において、8日〜14日の間で天候実績が「曇」及び「雨」である日は、9日、10日、12日、13日、14日である。9日は、「雨」実績に対して「晴」予測であるため、獲得ポイントは0である。10日は、「雨」実績に対して「雨」予測であるため、獲得ポイントは3である。12日は、「雨」実績に対して「晴」予測であるため、獲得ポイントは0である。13日は、「雨」実績に対して「晴」予測であるため、獲得ポイントは0である。14日は、「曇」実績に対して「曇」予測であるため、獲得ポイントは2である。8日〜14日の間の合計獲得ポイントは、5点である。
【0096】
「雨」実績は、9日、10日、12日、13日の4日間であるため、4日間すべてを完全的中した場合には、獲得ポイントは3点の4倍であり12点である。「曇」実績は、14日の1日間であるため、これを完全的中した場合には、獲得ポイントは2点である。したがって、該当する5日間を完全的中した場合の獲得ポイントは14点になる。したがって、8日〜14日の間の的中率(%)は、合計獲得ポイント5点を完全的中時の獲得ポイント14点で除算し、100を乗算すると、35.7(%)となる。
【0097】
したがって、図11及び図12に示すデータの場合、的中率35.7(%)であることが求められ、ステップ242Bで条件A3が成立せず、さらにステップ243Bで条件B3が成立しない。これにより、ステップ246に進み、レベルを変更することなく制御定数のレベルを確定する。
【0098】
また、天候実績の求め方について、以下に他の方法を説明する。第1の他の方法は、上記のように集熱量実績を用いて天候実績を決定した後、さらに過去7日間の温水温度実績を用いて天候実績を補正する方法である。
【0099】
具体的に図11のデータを使用して8日の天候実績を求めてみる。過去7日間の温水温度実績の1番目に大きい値(50℃)と2番目に大きい値(48℃)の平均である第1の平均値((50+48)÷2=49℃))を算出する。過去7日間の温水温度実績の1番目に小さい値(23℃)と2番目に小さい値(25℃)の平均である第2の平均値((23+25)÷2=24℃))を算出する。そして、集熱量実績を用いて求めた上記天候実績が例えば「晴」の場合、8日の温水温度実績が、第1の平均値(49℃)から5℃を減算した第1の閾温度(44℃)以上である場合は天候実績を「晴」と補正し、第2の平均値(24℃)から5℃を加算した第2の閾温度(29℃)以下である場合は「雨」と補正し、第2の閾温度(29℃)と第1の閾温度(44℃)の間に含まれる場合には「曇」と補正するものである。8日の場合、温水温度実績は50℃であるので、第1の他の方法によって、天候実績は「晴」に再決定されることになる。
【0100】
つまり、第1の他の方法では、制御装置5は、太陽熱集熱器4によって集熱された集熱量実績及び太陽熱を集熱した熱媒体の温度実績を含む過去実績データを記憶する(ステップ26)。さらに制御装置5は、演算式に含まれる定数であってその値が天候予測結果を左右する制御定数を、記憶された天候予測結果及び当該過去実績データに応じて更新し(ステップ249)、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定する(ステップ25)。
【0101】
この第1の他の方法によれば、集熱用実績を用いて天候実績を決定した後、さらに温水温度実績を用いて実際の天候実績を補正するため、集熱量実績によって判断したときに実際の天候実績を正確に導き出させない場合に、有用な天候実績判断を行うことができる。例えば、天候予測が「雨」である場合に翌日の天候が「晴」であったときである。この点については、上記の第2実施形態に記載の作用効果と同様である。
【0102】
第2の他の方法は、上記のように集熱量実績を用いて天候実績を決定する代わりに、過去7日間の温水温度実績を用いて天候実績を決定する方法である。
【0103】
具体的に図11及び図12のデータを使用して13日の天候実績を求めてみる。過去7日間(6日〜12日)の温水温度実績の1番目に大きい値(50℃)と2番目に大きい値(50℃)の平均である第1の平均値((50+50)÷2=50℃))を算出する。過去7日間の温水温度実績の1番目に小さい値(23℃)と2番目に小さい値(25℃)の平均である第2の平均値((23+25)÷2=24℃))を算出する。そして、13日の温水温度実績が、第1の平均値(50℃)から5℃を減算した第1の閾温度(45℃)以上である場合は天候実績を「晴」と決定し、第2の平均値(24℃)から5℃を加算した第2の閾温度(29℃)以下である場合は「雨」と決定し、第2の閾温度(29℃)と第1の閾温度(45℃)の間に含まれる場合には「曇」と決定するものである。13日の場合、温水温度実績は26℃であるので、第2の他の方法によって、天候実績は「雨」に決定されることになる。
【0104】
第3の他の方法は、上記のように集熱量実績を用いて天候実績を決定する代わりに、過去7日間の所定時間範囲の温水温度の変化率実績を用いて天候実績を決定する方法である。記憶手段には、過去7日間の所定時間範囲、例えば、各日の5時から18時まで1時間単位で温水温度の変化率が記憶される。
【0105】
過去7日間における温水温度の変化率実績が、1番目に大きい値と2番目に大きい値の平均である第1の平均変化率を算出する。過去7日間の温水温度の変化率実績の1番目に小さい値と2番目に小さい値の平均である第2の平均変化率を算出する。そして、その日のうち温水温度の変化率実績の最大値が、第1の平均変化率以上である場合は天候実績を「晴」と決定し、第2の平均変化率以下である場合は「雨」と決定し、第2の平均変化率と第1の平均変化率の間に含まれる場合には「曇」と決定するものである。
【0106】
第2の他の方法または第3の他の方法によれば、温水温度実績を用いて実際の天候実績を判断するため、集熱量実績が実際の天候実績と対応せず、集熱量実績によっては正確な天候実績を導き出させない状況でも、有用な天候実績判断を行うことができる。例えば、天候予測が「雨」である場合に翌日の天候が「晴」であったときである。この点については、上記の第2実施形態に記載の作用効果と同様である。
【0107】
本実施形態によれば、制御装置5は、過去の所定日数において天候実績に対する天候予測結果の的中率を算出し、当該算出した的中率を改善するように制御定数を更新し(ステップ242,245,243,244,249)、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定する(ステップ25)。
【0108】
この制御によれば、天候予測結果の的中率が良くない状況が過去にあれば、これを改善すべく制御定数が更新されて、今後の天候予測の的中率を向上することができる。例えば、「雨」予測の的中率が良くない場合には、「雨」予測が得られやすい雨重視の制御定数にチューニングすることができる。また「晴」予測の的中率が良くない場合には、「晴」予測が得られやすい晴重視の制御定数にチューニングすることができる。したがって、ハイブリッド給湯装置1の使用場所における特有の地域性及び季節性等がある天候に対して適切に対応できる天候予測決定のロジックに継続的に改善していくことができるのである。なお、この制御は、後述する第4実施形態のハイブリッド蓄電システム100にも適用可能である。
【0109】
また、制御装置5は、翌日の天候予測を「雨」、「曇」、「晴」のいずれかに決定するものであり、過去の所定日数において天候実績に対する、「雨」及び「曇」の少なくとも一方に関する天候予測結果の的中率を算出する。さらに制御装置5は、当該算出した的中率が低いと判定した場合は「雨」の天候予測結果が得られやすい値に制御定数を変更し(ステップ245)、当該算出した的中率が高いと判定した場合は「晴」の天候予測結果が得られやすい値に制御定数を変更し(ステップ244)、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定する(ステップ25)。
【0110】
この制御によれば、「雨」及び「曇」の少なくとも一方の天候予測についての的中率が低い場合は実際の天候実績が雨であるにもかかわらず、あまり的中できていない。このため、「雨」予測が得られやすい演算式に更新する。逆に当該的中率が高い場合は「晴」予測が得られやすい演算式に更新する。したがって、今後の天候予測において、「雨」予測の的中率を向上するとともに、「雨」予測の的中率が高い場合に「晴」予測が得られにくく太陽エネルギーを十分に活用できない天候予測を継続しないように、常に天候予測ロジックを改善していくことができる。なお、この制御は、後述する第4実施形態のハイブリッド蓄電システム100にも適用可能である。
【0111】
(第4実施形態)
本発明のハイブリッドシステムの一実施形態である第4実施形態について図13〜図15を参照して説明する。図13は、太陽エネルギー利用のハイブリッド蓄電システム100の概略構成を示した模式図である。第4実施形態で特に説明しない構成、作動、作用効果は、第1実施形態と同様である。
【0112】
図13に示すように、ハイブリッドシステムの一例であるハイブリッド蓄電システム100は、太陽電池130と、蓄電池114と、制御装置111と、を主に備えるシステムである。太陽電池130は、太陽光エネルギーを得て発電する太陽光発電装置である。蓄電池114は、会社等から供給される系統電力170を受電して蓄電する。制御装置111は、使用が予測される電力量に対して、蓄電池114に蓄電された蓄電量及び太陽電池130により発電される電力量では不足する分の蓄電量を算出する。
【0113】
ハイブリッド蓄電システム100は、制御装置111が算出した当該不足する分の蓄電量を、昼間の電気料金よりも安価な料金体系である所定の安価料金時間帯(例えば、深夜料金時間帯)に系統電力170から受電して蓄電池114に蓄電する。これにより、ハイブリッド蓄電システム100は、太陽光エネルギーを利用した発電と、深夜料金時間帯に蓄電池114に電力を蓄える蓄電運転とを活用して省エネルギー性を優先しつつ、ユーザーの要望を満たした電気エネルギーの供給を行うものである。
【0114】
さらに図13を参照してハイブリッド蓄電システム100に関わる他の構成について説明する。太陽電池130が太陽光エネルギーから発電する直流電力及び系統電力から送電される交流電力は分電盤120に送られる。分電盤120に送られた電力は、HEMS装置110に送られ、HEMS装置110のパワーコンディショナー115によって交流と直流間で電力変換されて、蓄電池114に蓄電されたり、コンセント150に供給されたり、分電盤120に供給されたりする。HEMS装置110は、電力使用先である家庭等での電気機器の動作、エネルギー使用量を計測、表示して、住人に省エネルギーを喚起したり、電気機器の使用量等を制限したりしてエネルギー消費量を抑えるホームエネルギーマネジメントシステムである。
【0115】
HEMS装置110は、制御装置111、大気圧センサ112、操作盤113、パワーコンディショナー115及び蓄電池114を少なくとも備えて構成される。パワーコンディショナー115は、太陽電池130で発電した直流電力を効率よく交流電力に変換したり、系統電力170からの交流電力を直流電力に変換したり、蓄電池114に蓄電されていた直流電力を交流電力に変換したりする電力変換装置である。蓄電装置としてのパワーコンディショナー115で直流から交流に変換された電力は、電気配線を介して、建物に据え付けのコンセント150、建物内の各種の電化製品140、電源コードの先に付いている差込器具を利用して蓄電池160aに充電されて、プラグインハイブリッド自動車160、電気自動車等に電力供給することができる。
【0116】
制御装置111は、操作盤113上の各種スイッチ及びパワーコンディショナー115からの各種の通信信号、大気圧検出手段の一例である大気圧センサ112等からの検出信号が入力される入力回路と、入力回路からの信号を用いて各種演算を実行するマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータによる演算に基づいてパワーコンディショナー115のスイッチング素子等を制御する信号を出力する出力回路と、を備えている。操作盤113は、ユーザーが運転操作を設定できる運転操作部であり、第1実施形態と同様のレベル設定スイッチを備えている。マイクロコンピュータは、大気圧、天候予測値(天候予測結果)、発電量実績、天候実績等のデータ、演算結果等を記憶する記憶手段としてのROM、RAM等を内蔵し、あらかじめ設定された制御プログラムや更新可能な制御プログラムを有し、蓄電運転を制御する。ハイブリッド蓄電システム100の運転状況は、制御装置111からの出力信号によって、操作盤113に設けられた表示画面に表示される。
【0117】
制御装置111は、大気圧センサ112により検出される大気圧の検出値に応じて天候を予測する天候予測手段、この天候予測結果及び過去の発電量実績に基づき太陽電池130による予測発電量を求める発電量予測手段、及び予測発電量に応じて蓄電池114に蓄える蓄電量を求める蓄電量算出手段としての機能を有する。過去の各日の発電量実績は、例えば、当該日における発電量の経時変化のグラフから、1日のトータル発電量を積算によって算出する。また、1日の発電量は、当該グラフにおける所定時間帯の発電量の変化率に基づいて算出してもよいし、日照時間における発電量の最大値と最小値の差に基づいて算出してもよい。
【0118】
制御装置111は、省エネルギー、低ランニングコストのため、天候を予測し、天候予測等に基づく昼間の太陽光エネルギーから得られる発電量を予測し、この予測発電量と蓄電池114内に蓄えられた蓄電量を加味して深夜料金時間帯の蓄電池114への蓄電量を決定する。この蓄電量は、ユーザーの過去の使用電力量実績による学習値から、蓄電池114内に残存する蓄電量と、翌日の発電量(予測発電量)とを減算することにより算出されるものである。そして、制御装置111は、蓄電量算出手段として算出した蓄電量分の電力量を、電力が安価な深夜料金時間帯に系統電力170から交流電力を受電し、パワーコンディショナー115で電力変換して蓄電池114に蓄電する。また、制御装置111は、日照時間帯に太陽電池130で発電可能な状態になったら直流電力を取り込み蓄電池114に充電する。
【0119】
また、制御装置111による天候予測演算は、第1実施形態と同様に、検出された大気圧値、大気圧の振動値F、及び当該大気圧の変化値Sの各パラメータに基づいて、分類された複数種類のうち、一の天候予測結果を決定する。制御装置111は、天候予測制御に関して、図3を参照して説明した第1実施形態と同様の処理を実行するが、一部異なる処理を行う。以下に、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0120】
上記構成のハイブリッド蓄電システム100における深夜料金時間帯の蓄電運転の作動について図14及び図15を参照して説明する。図14は、ハイブリッド蓄電システム100における蓄電運転の作動を示したフローチャートである。
【0121】
図14に示す各ステップは、制御装置111によって実行される。まず、ステップ1では、最初の大気圧データの保存を行う場合は、現在時刻が19時から深夜料金時間帯内であるか否か、つまり、19時から翌日の7時までの時間帯であるか否かが判定される。そして、19時以降または深夜料金時間帯内であれば、ステップ2に進み、天候予測制御を実行する。ステップ2の天候予測制御では、主に、所定時間に記憶した大気圧データと、過去の天候実績、発電量実績、天候予測等に関わる過去実績データを用いた天候予測学習と、によって天候予測値を決定する。
【0122】
この天候予測制御のサブルーチンは、前述の図3に示すフローチャートにしたがって行われるが、天候予測学習のサブルーチンのみが第1実施形態の説明と異なり、図15に示す「天候予測学習ステップ」のフローチャートにしたがって実行される。
【0123】
天候予測学習の処理は、第1実施形態で図4を参照して説明したサブルーチンとほぼ同様であるが、ステップ242C,243Cの判断のみが異なる。ステップ242Cでは、発電量実績データについて条件A4が成立するか否かを判定する。条件A4は、過去実績において天候予測値が「晴」で、かつ発電量実績が予め定めた第1の電力量以下である日数が7日間うち3日以上あること、と定義されている。ステップ242Cで条件A4が成立する場合は、ステップ245で制御定数を1レベル下げ、ステップ246で制御定数のレベルを確定する。
【0124】
条件A4が成立する場合は、天候予測値が「晴」であるにもかかわらず、発電量実績が少なかった日が多いことから実際の天候は「雨」または「曇」であり、予測が外れた日が多いことを示している。このため、翌日に期待する発電量が得られず、蓄電池114や蓄電池160aの蓄電量が不足して電力が不足する状況を表している。つまり、翌日の予測発電量が多いと予測して、夜間の蓄電池114や蓄電池160aへの蓄電量を絞ったため、翌日の使用電力量を確保することが困難な日が多かったことになる。そして、翌日の使用電力量を確保するために、昼間に系統電力170から高価な電力供給を受ける必要があるので、安価な深夜料金時間帯の電力を活用することができず、ランニングコストが増加してしまうことが想定されるのである。
【0125】
天候予測値は、第1実施形態と同様に、後のステップ25において、図7に示す「天候予測値決定マップ」にしたがって決定される。本実施形態の天候予測学習は、ステップ242Cの条件A4またはステップ243Cの条件B4が成立した場合に、図6に示す「制御定数のレベル決定テーブル」にしたがって制御定数のレベルを更新することを特徴としている。この制御定数のレベル更新機能を有することより、過去実績データに反映された、システム使用地域特有の天候に適応した天候予測を可能とし、天候予測の精度を向上することができる。
【0126】
ステップ242Cで条件A4が成立しないときは、ステップ243Cで発電量実績データについて条件B4が成立するか否かを判定する。条件A4は、過去実績において天候予測値が「雨」で、かつ発電量実績が予め定めた第2の電力量以上である日数が7日間うち2日以上あること、と定義されている。ステップ243Cで条件B4が成立しない場合は、ステップ246に進み、レベルを変更することなく制御定数のレベルを確定する。ステップ243Cで条件B4が成立する場合は、次にステップ244で制御定数を1レベル上げ、ステップ246で制御定数のレベルを確定する。
【0127】
条件B4が成立する場合は、天候予測値が「雨」であるにもかかわらず、発電量実績が多かった日が多いことから実際の天候は「晴」であり、予測が外れた日が多いことを示している。このため、翌日に十分に得られる太陽光からの発電量を活用して蓄熱することができない。つまり、予測発電量が少ないと予測して、夜間の蓄電池114や蓄電池160aへの蓄電量を大きくしたため、夜間の深夜料金電力による蓄電量が過剰になり、翌日の発電を蓄電池114や蓄電池160aに蓄電できないことがある。このように、条件B4が成立する場合は、昼間の太陽光を十分に活用することができないため、自然エネルギー利用効率が低下してしまうことになる。
【0128】
天候予測学習ルーチンで制御定数を更新し、天候予測値の決定、各種データの記憶を実行し、ステップ2の天候予測制御を実行した後は、次にステップ3Aを実行する。ステップ3Aでは、ステップ2で算出された翌日の天候予測値と、記憶手段に記憶された過去の発電量実績とを用いて翌日に発電が予測される予測発電量を算出する。このステップ3Aは、翌日の天候予測結果を用いて、太陽電池130で昼間に発電されうる電力量の予測量を算出する予測発電量演算ステップである。記憶手段には、天候予測結果と発電量実績を用いて予測発電量を算出するためのマップが予め記憶されている。予測発電量演算ステップは、翌日の天候予測結果(「晴」、「曇」、「雨」のいずれかの天候予測値)、発電量実績、及び当該マップを用いて、予測発電量を算出する発電量予測手段である。
【0129】
次に制御装置111は、ステップ4A,5Aで、深夜料金時間帯に蓄電池114、160a等に電力を蓄える蓄電運転の制御に必要なパラメータを算出する。ステップ4Aでは必要な蓄電量を算出し、ステップ5Aでは蓄電運転開始時刻を算出する。
【0130】
蓄電運転開始時刻は、ステップ4Aで算出した必要な蓄電量(使用電力量実績による学習値から、蓄電池114、160a等の残存電力量及び翌日の予測発電量を減算して得られた電力量)を達成するように蓄電するために必要な運転時間を算出し、この必要な運転時間が深夜料金時間帯の終了時刻までに終了するように逆算することにより算出する。
【0131】
そして、ステップ7Aで、現在時刻がステップ6Aで算出した蓄電運転開始時刻になったか否かを判定する。そして、蓄電運転開始時刻になったら(YES)、ステップ8Aに進み、ステップ4A,5Aで算出したパラメータを満たすように蓄電運転を実施する。蓄電運転開始時刻になっていなければ(NO)、ステップ1に戻り、蓄電運転開始時刻になるまで以降のステップを実行する。
【0132】
本実施形態のハイブリッド蓄電システム100がもたらす作用効果を以下に述べる。ハイブリッド蓄電システム100は、太陽光エネルギーを取り入れて発電する太陽電池130と、昼間の電気料金よりも安価な料金体系の電力を用いて蓄電池114に蓄電するパワーコンディショナー115と、翌日の天候を予測して太陽電池130により翌日発電できる予測発電量を算出し、当該算出した予測発電量と翌日に使用が予測される使用電力量とに応じて蓄電池114に安価な料金体系の電力を用いて蓄電する必要な蓄電量を算出する制御装置111と、を備える。
【0133】
制御装置111は、大気圧を用いて翌日の天候予測結果を決定するための予め定められた演算式と、当該演算式にしたがって決定した天候予測結果と、太陽電池130によって発電された発電量実績と、を記憶する(ステップ26)。
【0134】
さらに制御装置111は、演算式に含まれる定数であってその値が天候予測結果を左右する制御定数を、記憶された天候予測結果及び発電量実績に応じて更新し(ステップ249)、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定する(ステップ25)。
【0135】
天候予測結果を用いて翌日の発電量を算出する従来のシステムにおいては、天候予測は必ずしも高い確率で的中するわけではないため、以下のような不具合が生じうる。具体的には、天候予測結果が「雨」で、実際が「晴」であった場合には、深夜料金時間帯に実施する蓄電池への蓄電量が過大になり、蓄電池内の残存電力量が多いので、太陽光エネルギーを蓄電できない。このため、自然エネルギーの利用効率が低下することになる。また、天候予測結果が「晴」で、実際が「雨」であった場合には、実際に昼間の蓄電量が予測量よりも大きく不足し、深夜料金時間帯に実施する蓄電池への蓄電量が不足するようになるため、充電量が不足して充電切れが生じ易く、後で昼間の系統電力を利用した蓄電運転が必要になり、ランニングコストが上昇することになる。
【0136】
そこで、ハイブリッド蓄電システム100によれば、大気圧を用いて天候予測結果を決定する演算式の制御定数を、過去の天候予測結果及び発電量実績に応じて更新する。これにより、更新後の演算式に、これまでの天候予測の結果を反映させることができ、天候予測の的中率を向上することができる。例えば、晴の少ない地域や季節では、雨の天候予測が得られやすい演算式に変更し、雨の少ない地域や季節では、晴の天候予測が得られやすい演算式に変更する天候予測ロジックを構築することができる。つまり、雨季時、高地、多雨地域等、天候予測が当たりがたい季節や地域でも、その環境に適合した独自の天候予測ロジックを構築することができるのである。したがって、年間を通して使用環境に適合し、天候予測の精度向上及びランニングコストの低減が図れるハイブリッド蓄電システム100を提供できる。
【0137】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0138】
上記実施形態では、集熱量実績等を用いて天候実績を決定しているが、インターネットに接続する接続手段を設け、インターネット等を介して気象庁等による外部機関提供の天気実績に関する情報を取得し、これを使用するようにしてもよい。
【0139】
上記実施形態では、レベル設定スイッチ10bを操作することによって、ユーザーが制御定数のレベルを変更することができる。このとき、リモートコントローラ10や操作盤113の表示画面に、天候予測結果、集熱量実績、温水温度実績、発電量実績等を表示し、この表示をユーザーに提示して、ユーザーがレベル設定スイッチ10bを操作する際にこの表示を参考にするように構成してもよい。
【0140】
上記実施形態のレベル設定スイッチ10bによる制御定数のレベル変更において、提示された直感的にわかりやすい表示や操作部を参考にして、ユーザーが当該レベル変更を行うように構成してもよい。例えば、晴重視のレベル変更を促す「効率優先」表示または操作部、雨重視のレベル変更を促す「ランニングコスト優先」表示または操作部である。
【0141】
また、上記の第3実施形態では、条件A3及び条件B3において曇及び雨の的中率を用いたが、天候予測値の「雨」的中率を用いて各条件の成立か否かを判断するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0142】
1…ハイブリッド給湯装置(ハイブリッドシステム)
2…ヒートポンプユニット(加熱装置)
3…タンク(蓄熱装置)
4…太陽熱集熱器
5…制御装置
10b…レベル設定スイッチ(レベル設定操作部)
100…ハイブリッド蓄電システム(ハイブリッドシステム)
111…制御装置
113…操作盤(レベル設定操作部)
114…蓄電池
115…パワーコンディショナー(蓄電装置)
130…太陽電池(太陽光発電装置)
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽エネルギーと深夜時間帯等の安価な電力とを使用するハイブリッドシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のハイブリッドシステムの一例であるハイブリッド給湯装置は、例えば特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1に記載の従来技術では、過去の使用実績等に基づいて翌日の使用熱量を予測するとともに、大気圧センサにより得られる大気圧の検出値、及び太陽熱集熱器による集熱量の実績値に応じて翌日の天候を予測し、予測した天候に基づき太陽熱集熱器によって得られる翌日の集熱量の予測値を求める。さらに、深夜料金時間帯のヒートポンプによる加熱量は、翌日の使用熱量予測値から、貯湯タンクの残熱量及び翌日の集熱量予測値を減算して求められる。このように大気圧の検出値と過去の集熱量の実績値とを併用することにより、天候の予測精度を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008‐64388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術の天候予測は、必ずしも高い確率で的中するわけではない。当該天候予測は、急な天候変化が起こりやすい地域、特異な天候が多く見られる地域、極端に晴れが少ない季節や地域、標高の高い地域等において外れることが想定される。天候予測が外れた場合には、以下のような問題が生じる。
【0005】
仮に天候予測が「晴」のときに実際が「雨」である場合には、翌日の集熱量の予測値が大きいにもかかわらず、実際に得られる集熱量が小さいため、ヒートポンプによって加熱した蓄熱量が不足し、給湯使用時に湯切れを起こすことがある。そして、このような湯切れを防ぐために、昼間にヒートポンプによって沸き上げ運転を実施するので、ランニングコストが増加してしまう。また、天候予測が「晴」のときに、午前中等にシャワーを使用したり、風呂に入ったりする場合には、その後の給湯使用時に湯切れを起こしてしまうことがある。
【0006】
また天候予測が「雨」のときに実際が「晴」である場合には、翌日の集熱量の予測値が小さいにもかかわらず、実際に得られる翌日の集熱量が大きいため、夜間のヒートポンプによる加熱量が過剰になり、給湯使用時の残湯量が大きくなるとともに、昼間の太陽熱を集熱することができない。このように、昼間の太陽熱を十分に活用することができず無駄な残湯量が拡大するため、年間給湯効率(1年間で使用する給湯に係る熱量を1年間で必要な消費電力で除算した値)が低下してしまう。
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、その目的は、天候予測の精度向上及びランニングコストの低減が図れるハイブリッドシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1は、太陽熱を熱媒体を介して取り入れる太陽熱集熱器(4)と、昼間の電気料金よりも安価な料金体系の電力を用いた加熱装置(2)によって生成した熱量を蓄熱する蓄熱装置(3)と、翌日の天候を予測して太陽熱集熱器(4)により翌日集熱できる予測集熱量を算出し、当該算出した予測集熱量と翌日に使用が予測される使用熱量とに応じて蓄熱装置(3)に安価な料金体系の電力を用いて蓄熱する必要な蓄熱量を算出する制御装置(5)と、を備えるハイブリッドシステムに係る発明であって、
制御装置(5)は、
大気圧を用いて翌日の天候予測結果を決定するための予め定められた演算式と、当該演算式にしたがって決定した天候予測結果と、太陽熱集熱器(4)によって集熱された集熱量実績及び太陽熱を集熱した熱媒体の温度実績の少なくとも一方の過去実績データと、を記憶し、
さらに、演算式に含まれる定数であってその値が天候予測結果を左右する制御定数を、記憶された天候予測結果及び過去実績データに応じて更新し、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定することを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、大気圧を用いて天候予測結果を決定する演算式の制御定数を、過去の天候予測結果及び上記過去実績データに応じて更新する。これにより、更新後の演算式に、これまでの天候予測の的中結果を反映させることができ、天候予測の的中率を向上することができる。例えば、晴の少ない地域や季節では、雨の天候予測が得られやすい演算式に変更することができ、雨の少ない地域や季節では、晴の天候予測が得られやすい演算式に変更することができる。つまり、天候予測が当たりがたい季節や地域でも、その環境に適合した独自の天候予測決定ロジックを構築することができるのである。したがって、使用環境に適合したシステムであって、天候予測の精度向上及びランニングコストの低減が図れるハイブリッドシステムを提供できる。
【0010】
請求項2は、太陽光エネルギーを取り入れて発電する太陽光発電装置(130)と、昼間の電気料金よりも安価な料金体系の電力を用いて蓄電池(114)に蓄電する蓄電装置(115)と、翌日の天候を予測して太陽光発電装置(130)により翌日発電できる予測発電量を算出し、当該算出した予測発電量と翌日に使用が予測される使用電力量とに応じて蓄電池(114)に安価な料金体系の電力を用いて蓄電する必要な蓄電量を算出する制御装置(111)と、を備えるハイブリッドシステムに係る発明であって、
制御装置(111)は、
大気圧を用いて翌日の天候予測結果を決定するための予め定められた演算式と、当該演算式にしたがって決定した天候予測結果と、太陽光発電装置(130)によって発電された発電量実績と、を記憶し、
さらに、演算式に含まれる定数であってその値が天候予測結果を左右する制御定数を、記憶された天候予測結果及び発電量実績に応じて更新し、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、大気圧を用いて天候予測結果を決定する演算式の制御定数を、過去の天候予測結果及び発電量実績に応じて更新する。これにより、更新後の演算式に、これまでの天候予測の的中結果を反映させることができ、天候予測の的中率を向上することができる。例えば、晴の少ない地域や季節では、雨の天候予測が得られやすい演算式に変更することができ、雨の少ない地域や季節では、晴の天候予測が得られやすい演算式に変更することができる。つまり、天候予測が当たりがたい季節や地域でも、その環境に適合した独自の天候予測決定のロジックを構築することができるのである。したがって、使用環境に適合したシステムであって、天候予測の精度向上及びランニングコストの低減が図れるハイブリッドシステムを提供できる。
【0012】
請求項3によると、請求項1または請求項2に記載の発明において、制御装置(5)は、過去の所定日数において天候実績に対する天候予測結果の的中率を算出し、当該算出した的中率を改善するように制御定数を更新し、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定することを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、過去の天候予測の的中率を改善するように制御定数を更新し、更新された演算式によって天候予測結果を決定する。これにより、天候予測の的中率が良くない状況が過去にあれば、これを改善すべく制御定数が更新されて、今後の天候予測の的中率を向上することができる。例えば、雨予測の的中率が良くない場合には、雨予測が得られやすい雨重視の制御定数に変更し、また晴予測の的中率が良くない場合には、晴予測が得られやすい晴重視の制御定数に変更することになる。したがって、システム使用場所における特有の地域性及び季節性等がある天候に適切に対応する天候予測決定のロジックに継続的に改善していくことができる。
【0014】
請求項4によると、請求項3に記載の発明において、制御装置(5)は、
翌日の天候予測を「雨」、「曇」、「晴」のいずれかに決定するものであり、過去の所定日数において天候実績に対する、「雨」及び「曇」の少なくとも一方に関する天候予測結果の的中率を算出し、
当該算出した的中率が低いと判定した場合は「雨」の天候予測結果が得られやすい値に制御定数を変更し、当該算出した的中率が高いと判定した場合は「晴」の天候予測結果が得られやすい値に制御定数を変更し、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定することを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、「雨」及び「曇」の少なくとも一方の天候予測についての的中率が低い場合は実際の天候実績が雨であるにもかかわらず、あまり的中できていないため、「雨」予測が得られやすい演算式に更新し、逆に当該的中率が高い場合は「晴」予測が得られやすい演算式に更新する。これにより、今後の天候予測において、「雨」予測の的中率を向上するとともに、「雨」予測の的中率が高い場合に「晴」予測が得られにくく、太陽エネルギーを十分に活用できない天候予測とならないように常に予測ロジックを改善していくことができる。
【0016】
請求項5は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発明において、さらに、制御定数の増大及び低下を指定して、当該制御定数の更新を手動で設定可能なレベル設定操作部(10b)を備え、制御装置(5)は、レベル設定操作部(10b)によって制御定数の増大または低下が設定された場合には、設定されたレベルに応じて当該制御定数を更新し、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定することを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、自動で行われる制御定数の更新だけでなく、手動で制御定数の更新を設定できることにより、ユーザーの意思に対応した演算式に更新することができる。したがって、ユーザー特有の使い方や好み、翌日のシステム使用時におけるユーザーの要求に応えられる天候予測を随時提供することができる。
【0018】
請求項6によると、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の発明において、演算式は、所定の時間幅における、大気圧の変化値と、大気圧の変動を積算して求めた大気圧の振動値とのそれぞれに関して制御定数の大小関係を定めた不等式で構成されることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、大気圧の変化値及び大気圧の振動値のそれぞれとの間で不等式を構成する制御定数を更新することにより、天候予測のロジックを継続して改善していく。これにより、継続的に改善されていく天候予測の決定を、複雑でなく処理能力を要しない演算によって実現することができる。
【0020】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のハイブリッドシステムの一例である第1実施形態のハイブリッド給湯装置の概要を示した構成図である。
【図2】第1実施形態のハイブリッド給湯装置における沸き上げ運転の作動を示したフローチャートである。
【図3】図2に示すフローチャートにおける「天候予測制御ステップ」に関するサブルーチンである。
【図4】図3に示すフローチャートにおける「天候予測学習ステップ」に関するサブルーチンである。
【図5】図4のフローチャートの処理において使用する過去7日間の実績データの一例を示す図である。
【図6】「天候予測学習ステップ」の制御定数更新ステップで使用する「制御定数のレベル決定テーブル」である。
【図7】図2に示すフローチャートにおける天候予測値決定ステップで使用する「天候予測値決定マップ」である。
【図8】第2実施形態に係る「天候予測学習ステップ」に関するサブルーチンである。
【図9】図8のフローチャートの処理において使用する過去7日間の実績データの一例を示す図である。
【図10】第3実施形態に係る「天候予測学習ステップ」に関するサブルーチンである。
【図11】図10のフローチャートの処理において使用する過去7日間の実績データの一例を示す図である。
【図12】過去7日間の実績データを用いて決定した天候実績の一例を示す図である。
【図13】本発明のハイブリッドシステムの一例である第4実施形態に係るハイブリッド蓄電システムの概要を示した構成図である。
【図14】第4実施形態のハイブリッド蓄電システムにおける蓄電運転の作動を示したフローチャートである。
【図15】第4実施形態のハイブリッド蓄電システムに係る「天候予測学習ステップ」に関するサブルーチンである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0023】
本発明に係るハイブリッドシステムは、使用が予測される使用熱量または使用電力に対して、タンクに蓄熱された蓄熱量及び太陽熱集熱器により集熱される熱量では不足する分の加熱熱量、または蓄電池に蓄電された蓄電量及び太陽光発電装置により発電される電力量では不足する分の蓄電量を、昼間の電気料金よりも安価な料金体系である所定の安価料金時間帯に、加熱運転を実施してタンクに蓄熱するシステム、または蓄電運転を実施して蓄電池に蓄電するシステムである。
【0024】
(第1実施形態)
本発明のハイブリッドシステムの一実施形態である第1実施形態について図1〜図7を参照して説明する。図1は、ハイブリッドシステムの一例である太陽エネルギーを利用したハイブリッド給湯装置1の概要を示した構成図である。
【0025】
図1に示すように、ハイブリッドシステムの一例であるハイブリッド給湯装置1は、太陽熱を集熱する太陽熱集熱器4と、ヒートポンプサイクルを用いた加熱装置であるヒートポンプユニット2と、ヒートポンプユニット2によって沸き上げた湯を蓄えるタンク3と、を有しており、各装置を適宜使用して給湯を行うハイブリッド式のシステムである。つまり、浴槽やシャワーなどへ出湯するときには、状況に応じて、昼間における太陽熱集熱器4の集熱量によって作った太陽熱温水(熱媒体)のみを使用したり、ヒートポンプユニット2によって作った貯湯水のみを使用したり、あるいは当該太陽熱温水と貯湯水を混合した温水を使用したりする。これにより、ハイブリッド給湯装置1は、太陽熱利用と、昼間の電気料金よりも安価な料金体系である所定の安価料金時間帯(例えば、深夜料金時間帯)に実施する沸き上げ運転とを活用して省エネルギー性を優先しつつ、ユーザーの要望を満たした給湯を行うものである。
【0026】
ヒートポンプユニット2は、冷媒を熱交換媒体とするヒートポンプサイクルからなり、タンク3内の水を加熱可能な加熱装置である。ヒートポンプユニット2は制御装置5からの制御信号により作動するとともに、その作動状態を制御装置5に出力するように構成されている。
【0027】
タンク3は耐食性に優れた金属製のタンクであり、その外周部に図示しない断熱材が配置されており、高温の給湯用水を長時間に渡って保温することができる。タンク3の外壁面には、貯湯水の湯量、貯湯温度を検出するための複数個のタンクサーミスタ31,32,33,34,35,36,37が設けられており、本実施形態では縦方向にほぼ等間隔で最上部から順に7個のサーミスタが配設されている。これら7個のサーミスタの検出温度信号は、それぞれ制御装置5の入力回路に入力されるようになっており、各水位レベルでのタンク内流体の温度や湯量を検出可能である。したがって、制御装置5は、タンクサーミスタ31〜37からの温度情報に基づいて、タンク3内上方の沸き上げられた湯とタンク3内下方の沸き上げられる前の水との境界位置を検出でき、さらに温度及び湯量の検出することにより、タンク3内に蓄えられている蓄熱量を算出することができる。
【0028】
タンク3には、タンク3の内部に水道水を供給するための給水管11と、ヒートポンプユニット2とタンク3の内部とを接続しヒートポンプユニット2により加熱された湯が循環する加熱用循環回路12と、給湯端末に繋がる給湯管13等からなる配管系統と、給湯管13に混合弁15を介して連結される市水流入管14と、が接続されている。さらにタンク3の内部には、熱交換器8が設置されている。この熱交換器8には、太陽熱集熱器4で太陽熱により加熱された熱媒体の一例である太陽熱温水が循環する集熱器用循環回路9が接続されている。
【0029】
集熱器用循環回路9には、当該太陽熱温水を強制的に循環させるポンプ7が設けられている。熱交換器8においては、当該太陽熱温水とタンク3内部の貯湯水とが熱交換することにより、当該貯湯水が太陽熱温水から吸熱して加熱される。集熱器用循環回路9の一部であって太陽熱集熱器4内部の太陽熱温水が流通する部位に、太陽熱集熱器4で受熱した太陽熱温水の温度を検出する集熱器サーミスタ20が設けられている。集熱器サーミスタ20は、太陽熱集熱器4によって加熱された後、熱交換器8で熱交換される前の太陽熱温水の温度(熱媒体の温度)を検出する第1の熱媒体温度センサとして使用できる。
【0030】
熱交換器8から太陽熱温水が流出する出口に相当する集熱器用循環回路9の一部には、熱交換器8で熱交換後の太陽熱温水の温度を検出する熱交換後サーミスタ21が設けられている。熱交換後サーミスタ21は、熱交換器8で熱交換された後、太陽熱集熱器4によって加熱される前の熱媒体の温度を検出する第2の熱媒体温度センサとして使用できる。熱交換後サーミスタ21は、集熱器用循環回路9を構成する環状の配管のうち、タンクユニットを取り囲む筐体内であって熱交換器8よりも下流側でタンク3外に露出する配管部位に設置されている。
【0031】
熱交換前サーミスタ22は、太陽熱集熱器4によって加熱された後、熱交換器8で熱交換される前の熱媒体(太陽熱温水)の温度を検出する第1の熱媒体温度センサとして使用できる。熱交換前サーミスタ22は、集熱器用循環回路9を構成する環状の配管のうち、タンクユニットを取り囲む筐体内であって熱交換器よりも上流側でタンク3外に露出する配管部位に設置され、吸熱される前の集熱器用循環回路9を流れる熱媒体の温度を検出する。
【0032】
タンク3内の熱交換器8の周囲には、熱交換器8の近傍における貯湯水の温度を検出する熱交換器サーミスタ23が設けられている。熱交換器サーミスタ23は、熱交換器8で熱交換された後、太陽熱集熱器4によって加熱される前の熱媒体(太陽熱温水)の温度を検出する第2の熱媒体温度センサとしても使用できる。熱交換器サーミスタ23は、例えば、熱交換器8に近接した部位、熱交換器8と同じ高さの水位に相当する部位、熱交換器8の下流側出口に近接する部位、その他これらの部位に相当するタンク3の内壁面に設置されている。熱交換器サーミスタ23は、熱交換器8の周囲に位置するタンク3内の貯湯水の温度を検出することができる。
【0033】
ポンプ7の駆動により太陽熱温水が循環する集熱器用循環回路9の一部には、循環する太陽熱温水(熱媒体)の流量を検出する流量センサ40が設けられている。流量センサ40は、太陽熱集熱器4によって加熱された後の太陽熱温水が熱交換器8を通過する流量を検出する。
【0034】
制御装置5は、ユーザーが運転操作を設定できる運転操作部であるリモートコントローラ10上の運転モード設定スイッチ10a,レベル設定スイッチ10b及びヒートポンプユニット2からの通信信号、流量センサ40、大気圧検出手段の一例である大気圧センサ6、各種のサーミスタ20〜23,31〜37等からの検出信号が入力される入力回路と、入力回路からの信号を用いて各種演算を実行するマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータによる演算に基づいてヒートポンプユニット2、ポンプ7、各種混合弁等を制御する制御信号を出力する出力回路と、を備えている。マイクロコンピュータは、大気圧、天候予測値(天候予測結果)、集熱量実績、温水温度実績(熱媒体の温度実績)、天候実績等のデータ、演算結果等を記憶する記憶手段としてのROM、RAM等を内蔵し、あらかじめ設定された制御プログラムや更新可能な制御プログラムを有し、後述する沸き上げ運転を制御する。
【0035】
制御装置5は、大気圧センサ6により検出される大気圧の検出値に応じて天候を予測する天候予測手段、過去の各種実績データを用いて天候予測を学習する天候予測学習手段、天候予測結果及び過去の集熱量実績に基づき太陽熱集熱器4による集熱量の予測値を求める集熱量予測手段、及び集熱量の予測値に応じてヒートポンプユニット2による沸き上げ熱量(加熱熱量)を求める加熱量算出手段としての機能を有する。
【0036】
つまり、制御装置5は、省エネルギー、低ランニングコストのため、過去の実績データを活用した学習機能を有し、天候予測学習によって翌日の天候予測の精度を向上する。さらに、制御装置5は、このように精度向上を図った上で天候を予測し、天候予測結果等に基づく昼間の太陽熱の集熱量を予測し、この集熱量とタンク3内に蓄えた熱量を加味して深夜料金時間帯のヒートポンプユニット2による沸き上げ熱量を決定する。この沸き上げ熱量は、ユーザーの過去の使用熱量実績による学習値から、タンク3内に残存するタンク残存熱量と、翌日の集熱量(集熱量の予測値)とを減算することにより算出されるものである。そして、制御装置5は、電力が安価な深夜時間帯にヒートポンプユニット2を作動させ、加熱量算出手段として算出した沸き上げ熱量(加熱熱量)に応じてヒートポンプユニット2に貯湯水の加熱を行わせることにより、加熱された高温水がタンク3内に供給されて当該沸き上げ熱量がタンク3内の貯湯水に加わることになる。
【0037】
また、制御装置5による天候予測演算は、所定の時間幅において、検出された大気圧値、大気圧値の変化値、大気圧値の変動を積算して求めた大気圧の振動値等に基づいて、分類された複数種類の天候のうち、一の天候予測結果を決定する。例えば、制御装置5は天候予測演算に使用する所定のマップを複数記憶している。当該マップは、当該大気圧値の振動値が大きく2つに分類されており、この振動値の分類毎に大気圧値の変化値に関する不等式がさらに複数に分類され、当該変化値の分類毎にさらに大気圧値に関する不等式が割り当てられている。そして、当該マップに、大気圧値、当該振動値、及び当該変化値の各パラメータを当てはめることにより、一の天候予測結果を決定することができる。
【0038】
本実施形態では、天候予測結果は、「晴」、「曇」、「雨」の3種類のうち、いずれかに決定される。また例えば、大気圧値としては演算に現在の検出値を使用し、当該振動値及び当該変化値としては4時間前から現在までに検出されたデータを使用して算出するものである。
【0039】
また、制御装置5は、日照時間帯に太陽熱温水から貯湯水に伝熱可能な状態になったら太陽熱温水のポンプ7を作動させ、太陽熱温水に蓄えられた太陽熱を貯湯水に伝達させる。このとき制御装置5は、太陽熱温水から貯湯水へ伝熱可能か否かの判定を、太陽熱温水の温度を検出する第1の熱媒体温度センサ(集熱器サーミスタ20)から得られる検出値と第2の熱媒体温度センサ(熱交換器サーミスタ23)から得られる検出値との温度差を利用して実施する。つまり、制御装置5は、両検出値の温度差が所定値以上になれば、太陽熱温水が貯湯水よりも充分に高い温度であり太陽熱温水から貯湯水に伝熱可能であると判定してポンプ7を作動させる。なお、第1の熱媒体温度センサには集熱器サーミスタ20、熱交換前サーミスタ22を使用することができ、第2の熱媒体温度センサには熱交換後サーミスタ21、熱交換器サーミスタ23を使用することができる。
【0040】
上記構成のハイブリッド給湯装置1における深夜料金時間帯の沸き上げ運転の作動について図2〜図7を参照して説明する。図2は、ハイブリッド給湯装置1における沸き上げ運転の作動を示したフローチャートである。
【0041】
図2に示す各ステップは、制御装置5によって実行される。まず、ステップ1では、最初の大気圧データの保存を行う場合は、現在時刻が19時から深夜料金時間帯内であるか否か、つまり、19時から翌日の7時までの時間帯であるか否かが判定される。そして、19時以降または深夜料金時間帯内であれば、ステップ2に進み、天候予測制御を実行する。この天候予測制御のサブルーチンは、図3に示すフローチャートにしたがって行われ、その詳細は後述する。ステップ1でNOと判定するとYESと判定するまでステップ1の処理を反復する。
【0042】
ステップ2の天候予測制御では、主に、所定時間に記憶した大気圧データと、過去の天候実績、集熱量実績、天候予測等に関わる過去実績データを用いた天候予測学習と、によって天候予測値を決定する。天候予測制御を実行した後は、次にステップ3を実行する。
【0043】
ステップ3では、ステップ2で算出された翌日の天候予測値と、記憶手段に記憶された過去の集熱量実績とを用いて翌日に集熱が予測される予測集熱量を算出する。このステップ3は、翌日の天候予測結果を用いて、太陽熱集熱器4で昼間に集熱されうる熱量の予測量を算出する予測集熱量演算ステップである。記憶手段には、天候予測結果と集熱量実績を用いて予測集熱量を算出できるマップが予め記憶されている。予測集熱量演算ステップは、翌日の天候予測結果(「晴」、「曇」、「雨」のいずれかの天候予測値)、集熱量実績、及び当該マップを用いて、予測集熱量を算出する集熱量予測手段である。
【0044】
また、ステップ3で算出した翌日の予測集熱量と、タンクサーミスタ31〜37のうちタンク3の下部に設置されたサーミスタの検出値から求めたタンク内下部の貯湯温度とから、太陽熱集熱器4から得られるソーラー確保湯量を求めるようにしている。ソーラー確保湯量は、制御装置5が記憶手段に予め記憶しているテーブルを用いて求められる。当該テーブルは、タンク内下部の貯湯温度と翌日の予測集熱量とが決まれば、タンク3の容量に対応するソーラー確保湯量が求まる特性マップである。
【0045】
次にステップ4,5,6で、深夜料金時間帯に実施する沸き上げ運転の制御に必要なパラメータを算出する。ステップ4では前述した沸き上げ熱量を算出し、ステップ5では目標沸き上げ温度を算出し、ステップ6では沸き上げ開始時刻を算出する。
【0046】
制御装置5は、ステップ4で算出した沸き上げ熱量(使用熱量実績による学習値から、タンク残存熱量及び翌日の予測集熱量を減算して得られた熱量)を用いて、タンク3が満タンとなる湯量にて当該沸き上げ熱量を割戻して、目標沸き上げ温度を算出する。つまり、ステップ5で算出する目標沸き上げ温度は、翌日得られる予測集熱量を見越してその分を差し引いた熱量を沸き上げるために必要とする沸き上げ温度である。また、沸き上げ開始時刻は、目標沸き上げ温度または沸き上げ熱量を達成するようにタンク3を満タンにするために必要な運転時間を算出し、この必要な運転時間が深夜料金時間帯の終了時刻までに終了するように逆算することにより算出する。
【0047】
そして、ステップ7で、現在時刻がステップ6で算出した沸き上げ開始時刻になったか否かを判定する。そして、沸き上げ開始時刻になったら(YES)、ステップ8に進み、ステップ4,5,6で算出したパラメータを満たすように沸き上げ運転を実施する。沸き上げ開始時刻になっていなければ(NO)、ステップ1に戻り、沸き上げ開始時刻になるまで以降のステップを実行する。
【0048】
次に、ステップ2の天候予測制御について図3にしたがって説明する。図3は、図2に示すフローチャートの「天候予測制御ステップ」に関するサブルーチンである。図3に示すように、天候予測制御を開始すると、まずステップ20で、大気圧のデータを記憶手段に記憶していく。
【0049】
大気圧のデータは、ステップ21でデータの取得開始から所定の時間(大気圧取得時間、例えば4時間)が経過したと判定するまで継続して多数回取得され、記憶されるものとする。大気圧のデータは、例えば4時間継続して取得する場合、サンプリング周期2分で合計120回分が取得され記憶されることになる。図2のフローチャートから沸き上げ運転は19時以降に開始されるので、大気圧のデータは、19時から23時までの時間幅、または19時以降の時刻から4時間が経過するまでの時間幅で記憶されることになる。なお、ステップ20,21は、ここでは4時間という時間幅であるが、この時間に限定するものではなく、予め定めた時間幅の大気圧データを読み込むステップである。
【0050】
次にステップ22では、現在時刻から4時間前までの記憶済みの大気圧データを記憶手段から読み込み、大気圧の振動値Fを算出する。大気圧の振動値Fは、所定の時間間隔の大気圧の変動を積算して求めた値である。また、大気圧の振動値Fは、所定の大気圧取得時間内で取得した複数の大気圧値のそれぞれについて、当該大気圧取得時間の初期圧力値P0と終期圧力値P120とを結ぶ一次式との差である差分値を求め、複数の各差分値を積算(合計)することにより求めた値である。大気圧の振動値Fは、下記の(数1)によって算出される。
【数1】
【0051】
なお、制御装置5は、停電の発生等によって、大気圧値の取得回数、つまり、iが120回に満たないでも、取得したすべての大気圧値を用いて取得できた個数の差分値を積算してF値を算出するものとする。(数1)により示される演算式は、あらかじめ設定された制御プログラムの一部として記憶手段に記憶されている。
【0052】
さらにステップ23では、記憶手段から読み込まれた大気圧データを用いて、大気圧の変化値Sを算出する。大気圧の変化値Sは、大気圧取得時間の初期圧力値P0から終期圧力値P120を差し引いた値であり、下記の(数2)によって算出される。
【数2】
【0053】
(数2)により示される演算式は、あらかじめ設定された制御プログラムの一部として記憶手段に記憶されている。
【0054】
次に、ステップ24の天候予測学習について図4にしたがって説明する。図4は、図3に示すフローチャートの「天候予測学習ステップ」に関するサブルーチンである。図4に示すように、天候予測学習を開始すると、まずステップ240で、記憶手段に記憶されている各種データを読み込む。この場合の各種データは、過去の予め定めた期間、例えば、過去7日間における天候予測値、集熱量実績等である。
【0055】
図5には、天候予測学習ルーチンの処理において使用する過去7日間の実績データの一例を示している。天候予測の対象である翌日は「8日」であり、1日前は図5に示す「7日」であり、2日前は図5に示す「6日」であり、以降、過去に遡って7日前は図5に示す「1日」である。また、約24時間経過して翌日の19時以降に「天候予測学習ステップ」を行うときには、1日前は「8日」であり、2日前は図5に示す「7日」であり、以降、過去に遡って7日前は図5に示す「2日」となる。つまり、過去実績の対象となる日付は、1日経過する毎に、1日分更新されて、最も昔の日付が対象外となる。
【0056】
各日の集熱量実績は、例えば、当該日における集熱量の経時変化のグラフから、1日のトータル集熱量を積算によって算出するものとする。また、1日の集熱量は、当該グラフにおける所定時間帯の集熱量の変化率に基づいて算出してもよいし、日照時間における集熱量の最大値と最小値の差に基づいて算出してもよい。
【0057】
ステップ241では、ステップ240で読み込んだデータが、過去7日分あるか否かを判定し、7日分に満たなければ、以降のステップを実行することなく、天候予測学習のサブルーチンを終了する。ステップ241で過去7日分のデータがあることを確認したら、ステップ242に進み、集熱量実績データについて条件A1が成立するか否かを判定する。
【0058】
ここで、条件A1は、過去実績において天候予測値が「晴」で、かつ集熱量実績が100kal以下である日数が7日間うち3日以上あること、と定義されている。図5に示すように、「晴」の天候予測値は、2日、3日、4日、6日、7日であり、そのうち、集熱量実績が100kal以下であるのは、2日、4日、6日である。よって、図5に示す過去実績データの場合、ステップ242で条件A1が成立するので、次にステップ245で制御定数を1レベル下げ、ステップ246で制御定数のレベルを確定する。
【0059】
条件A1が成立する場合は、天候予測値が「晴」であるにもかかわらず、集熱量実績が少なかった日が多いことから実際の天候は「雨」または「曇」であり、予測が外れた日が多いことを示している。このため、翌日に期待する集熱量が得られず、タンク3内の蓄熱量が不足して湯切れを起こしやすい状況を表している。つまり、予測集熱量が多いと予測して、夜間のタンク3への蓄熱量を絞ったため、翌日の使用熱量を確保することが困難な日が多かったことになる。そして、翌日の使用熱量を確保するために、昼間にヒートポンプユニット2によって沸き上げ運転を実施するので、ランニングコストが増加してしまうことが想定されるのである。
【0060】
天候予測値は、後のステップ25において、図7に示す「天候予測値決定マップ」にしたがって決定される。ここで、制御定数α,β,γは、天候予測値決定ステップ(ステップ25)で使用する「天候予測値決定マップ」の演算式において、ステップ22,23で求められる大気圧の振動値F及び変化値Sのそれぞれと不等式を構成し、振動値Fによる分類と変化値Sによる分類を経て、天候予測結果が決定される重要な値である。
【0061】
本実施形態の天候予測学習は、ステップ242の条件A1またはステップ243の条件B1が成立した場合に、図6に示す「制御定数のレベル決定テーブル」にしたがって制御定数のレベルを更新することを特徴としている。この制御定数のレベル更新機能を有することより、過去実績データに反映された、システム使用地域特有の天候に適応した天候予測を可能とし、天候予測の精度を向上することができるのである。
【0062】
図6の「制御定数のレベル決定テーブル」では、制御定数α,β,γのそれぞれについて、レベル1、レベル2、レベル3、レベル4、レベル5という5段階のレベルを示す定数が設定されている。設定されるレベルがレベル5に近づくほど、天候予測値が「晴」に決定されやすい「晴重視」の制御定数更新がなされ、レベル1に近づくほど、天候予測値が「雨」に決定されやすい「雨重視」の制御定数更新がなされるように規定されている。
【0063】
図5に示すような過去実績データではなく、ステップ242で条件A1が成立しないときはステップ243で集熱量実績データについて条件B1が成立するか否かを判定する。条件B1は、過去実績において天候予測値が「雨」で、かつ集熱量実績が2000kal以上である日数が7日間うち2日以上あること、と定義されている。ステップ243で条件B1が成立しない場合は、ステップ246に進み、レベルを変更することなく制御定数のレベルを確定する。ステップ243で条件B1が成立する場合は、次にステップ244で制御定数を1レベル上げ、ステップ246で制御定数のレベルを確定する。
【0064】
条件B1が成立する場合は、天候予測値が「雨」であるにもかかわらず、集熱量実績が多かった日が多いことから実際の天候は「晴」であり、予測が外れた日が多いことを示している。このため、翌日に十分に得られる太陽熱からの集熱量を活用して蓄熱することができない。つまり、予測集熱量が少ないと予測して、夜間のタンク3への蓄熱量を大きくしたため、夜間のヒートポンプユニット2による加熱量が過剰になり、給湯使用時の残湯量が大きくなる。このように、条件B1が成立する場合は、昼間の太陽熱を十分に活用することができず、無駄な残湯量が拡大するため、年間給湯効率(1年間で使用する給湯に係る熱量を1年間で必要な消費電力で除算した値)が低下してしまうことになる。
【0065】
ステップ246でレベル確定を実行した後、次にステップ247でレベル設定スイッチ10bによる手動のレベル設定があったか否かを判定する。レベル設定スイッチ10bは、ユーザーにより、制御定数α,β,γの増大及び低下が指定され、すなわち、レベルの上昇及び下降が設定されて、制御定数の更新を手動で設定できるレベル設定操作部である。
【0066】
ステップ247でレベル設定スイッチ10bによる制御定数のレベル設定があった場合は、ステップ246でのレベル確定にかかわらず、またはステップ246でのレベル確定値からさらに、レベル設定スイッチ10bによるレベル設定に応じて、1レベル上げるか、1レベル下げるかの設定に合わせてレベルを確定し(ステップ248)、天候予測学習のサブルーチンを終了する。また、レベル設定スイッチ10bによるレベル設定がなかった場合は、ステップ246で確定したレベルに合わせて制御定数α,β,γを更新する(ステップ249)し、天候予測学習のサブルーチンを終了する。
【0067】
また、ステップ24の天候予測学習は、複数の予め定めた時刻に実行するようにしてもよい。例えば、深夜時間の23時、0時、1時、2時、3時等の時刻に実行し、それぞれの時刻において、制御定数の更新を行うようにする。また、図6に示す制御定数レベルの決定表は、複数のレベルに設定されていればよく、5段階のレベルに限定するものではない。また、天候予測学習が一度も行われていない制御定数の初期値としては、最大のレベル、最も「晴」予測が得られやすいレベル5に設定されている。
【0068】
天候予測学習のサブルーチンを終了すると、次にステップ25で、天候予測値の算出を実行する。ステップ25では、ステップ24で更新した制御定数を適用した図7の演算式を含む天候予測値決定マップに基づいて、ステップ22で算出した大気圧の振動値Fと、ステップ23で算出した大気圧の変化値Sとを順に分類して、天候予測値を「晴」、「曇」、「雨」のいずれかに決定する。
【0069】
大気圧の振動値Fがレベル変更後のα以下である場合は、次に大気圧の変化値Sがレベル変更後のβより大きいときは「晴」に決定し、Sがレベル変更後のγ以上で当該β以下であるときには「曇」に決定し、Sが当該γより小さいときには「雨」に決定する。また、Fがレベル変更後のαより大きい場合は、次にSがβより大きいときは「晴」に決定し、Sがレベル変更後のγ以上で当該β以下であるときには「曇」に決定し、Sが当該γより小さいときには「雨」に決定する。
【0070】
また、ステップ25の天候予測値決定のステップは、複数の予め定めた時刻に実行するようにしてもよい。例えば、深夜時間の23時、0時、1時、2時、3時等の時刻に実行し、それぞれの時刻において天候予測値を決定し、決定された数回の天候予測値のうち、「雨」、「曇」の各回数に応じて、最終的な天候予測結果を決定するようにしてもよい。例えば、「雨」の天候予測が1回以上である場合には、最終的な天候予測結果を「雨」とし、「雨」の天候予測が1回もなく「曇」の天候予測が2回以上である場合には最終的な天候予測結果を「曇」とし、「雨」の天候予測が1回もなく「曇」の天候予測が2回未満である場合には最終的な天候予測結果を「晴」とする。
【0071】
ステップ25で天候予測結果が得られると、次にステップ26で各種のデータ、例えば、天候予測結果、集熱量実績、温水温度実績(熱媒体の温度実績)、天候実績等のデータを記憶手段に記憶し、天候予測制御のサブルーチンを終了する。
【0072】
本実施形態のハイブリッド給湯装置1がもたらす作用効果を以下に述べる。ハイブリッド給湯装置1は、太陽熱を熱媒体を介して取り入れる太陽熱集熱器4と、昼間の電気料金よりも安価な料金体系の電力を用いたヒートポンプユニット2によって生成した熱量を蓄熱するタンク3と、翌日の天候を予測して太陽熱集熱器4により翌日集熱できる予測集熱量を算出し、当該算出した予測集熱量と翌日に使用が予測される使用熱量とに応じてタンク3に安価な料金体系の電力を用いて蓄熱する必要な蓄熱量を算出する制御装置5と、を備える。
【0073】
制御装置5は、大気圧を用いて翌日の天候予測結果を決定するための予め定められた演算式と、当該演算式にしたがって決定した天候予測結果と、太陽熱集熱器4によって集熱された集熱量実績と、を記憶する(ステップ26)。さらに制御装置5は、演算式に含まれる定数であってその値が天候予測結果を左右する制御定数を、記憶された天候予測結果及び集熱量実績に応じて更新し(ステップ249)、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定する(ステップ25)。
【0074】
天候予測結果を用いて翌日の集熱量を算出する従来のシステムにおいては、天候予測は必ずしも高い確率で的中するわけではないため、以下のような不具合が生じうる。具体的には、天候予測結果が「雨」で、実際が「晴」であった場合には、深夜料金時間帯に実施するタンク3への蓄熱量が過大になり、タンク3内の残湯が多く、太陽熱の集熱ができない。このため、年間給湯効率(1年間で使用する給湯に係る熱量を1年間で必要な消費電力で除算した値)が低下することになる。また、天候予測結果が「晴」で、実際が「雨」であった場合には、実際に昼間の集熱量が予測量よりも大きく不足し、深夜料金時間帯に実施するタンク3への蓄熱量が不足するようになる。このため、貯湯量が不足して湯切れが生じ易く、後で追加の沸き増し運転が必要になり、ランニングコストが上昇することになる。また、ユーザーの好みや習慣により、午前中や昼間に大量の給湯を使用する場合には、湯切れが生じやすくなる。
【0075】
そこで、ハイブリッド給湯装置1によれば、大気圧を用いて天候予測結果を決定する演算式の制御定数を、過去の天候予測結果及び集熱量実績に応じて更新する(ステップ249)。これにより、更新後の演算式に、これまでの天候予測の的中結果を反映させることができ、天候予測の的中率を向上することができる。例えば、晴の少ない地域や季節では、雨の天候予測が得られやすい演算式に変更することができ、雨の少ない地域や季節では、晴の天候予測が得られやすい演算式に変更することができる。つまり、天候予測が当たりがたい季節や地域でも、その環境に適合した独自の天候予測決定ロジックを構築することができるのである。
【0076】
このように従来固定値だった制御定数を過去実績データに応じて適切に更新することにより、過去に実際に起こっている状況を活用して、天候予測の精度向上を図ることができる。したがって、年間を通して使用環境に適合し、天候予測の精度向上及びランニングコストの低減に貢献するハイブリッド給湯装置1を提供できる。
【0077】
さらにハイブリッド給湯装置1は、制御定数の増大及び低下を指定して、当該制御定数の更新を手動で設定可能なレベル設定スイッチ10bを備える。制御装置5は、レベル設定スイッチ10bによって制御定数の増大または低下が設定された場合には、設定されたレベルに応じて当該制御定数を更新し(ステップ248,249)、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定する(ステップ25)。
【0078】
この処理によれば、自動で行われる制御定数の更新だけでなく、手動で制御定数の更新を設定できることにより、ユーザーの意思に対応した演算式に更新することができる。したがって、ユーザー特有の使い方や好み、翌日のシステム使用時におけるユーザーの要求に応えられる天候予測を随時提供するハイブリッド給湯装置1が得られる。
【0079】
また、天候予測値を決定するためにステップ25の処理で使用される演算式は、所定の時間幅における、大気圧の変化値Sと、大気圧の変動を積算して求めた大気圧の振動値Fとのそれぞれに関して制御定数α,β,γの大小関係を定めた不等式で構成されている(図7参照)。
【0080】
これによれば、大気圧の変化値S及び大気圧の振動値Fのそれぞれとの間で図7に示す不等式を構成する制御定数α,β,γを更新することにより、天候予測のロジックを継続して改善していくことができる。このため、時間経過に伴う気候変化に随時対応する天候予測を提供できる。また、このように継続的に改善されていく天候予測の決定ロジックを、複雑でなく処理能力を要しない演算によって実現することができる。
【0081】
(第2実施形態)
第2実施形態のハイブリッド給湯装置1は、第1実施形態で説明したステップ242及びステップ243を、それぞれステップ242A及びステップ243Aに置き換えた「天候予測学習」のサブルーチンを有する。また、第2実施形態は、システムの構成及び図2、図3のフローチャート、図6及び図7について第1実施形態と同様であり、制御に係る各処理、その作用効果も同様である。図8は、第2実施形態に係る「天候予測学習ステップ」に関するサブルーチンである。図9は、図8のフローチャートの処理において使用する過去7日間の実績データの一例を示す図である。図9に示す温水温度実績は、例えば、一日のうち、所定時間範囲(例えば、10時〜16時の範囲)の平均温水温度を求めたものである。以下、第1実施形態と異なる部分のみ説明する。
【0082】
図8に示すように、ステップ242Aでは温水温度実績について条件A2が成立するか否かを判定し、条件A2が成立しない場合にさらにステップ243Aで温水温度実績について条件B2が成立するか否かを判定する。ここで、条件A2は、過去実績において天候予測値が「晴」で、かつ温水温度実績が30℃以下である日数が7日間うち3日以上あること、と定義されている。条件B2は、過去実績において天候予測値が「雨」で、かつ集熱量実績が45℃以上である日数が7日間うち2日以上あること、と定義されている。
【0083】
図9に示すように、「晴」の天候予測値は、2日、3日、4日、6日、7日であり、そのうち、温水温度実績が30℃以下であるのは、2日、4日、6日である。よって、図9に示す過去実績データの場合、ステップ242Aで条件A2が成立するので、次にステップ245で制御定数を1レベル下げ、ステップ246で制御定数のレベルを確定する。
【0084】
条件A2が成立する場合は、天候予測値が「晴」であるにもかかわらず、温水温度実績が低温度であった日が多いことから実際の天候は「雨」または「曇」であり、予測が外れた日が多いことを示している。このため、翌日に期待する集熱が得られずに温水温度が上がらず、タンク3内の蓄熱量が不足して湯切れを起こしやすい状況を表している。つまり、予測集熱量が多いと予測して、夜間のタンク3への蓄熱量を絞ったため、翌日の使用熱量を確保することが困難な日が多かったことになる。そして、翌日の使用熱量を確保するために、昼間にヒートポンプユニット2によって沸き上げ運転を実施するので、ランニングコストが増加してしまうことが想定されるのである。
【0085】
ステップ242Aで条件A2が成立せず、さらにステップ243Aで条件B2が成立しない場合は、ステップ246に進み、レベルを変更することなく制御定数のレベルを確定する。ステップ243Aで条件B2が成立する場合は、次にステップ244で制御定数を1レベル上げ、ステップ246で制御定数のレベルを確定する。
【0086】
条件B2が成立する場合は、天候予測値が「雨」であるにもかかわらず、温水温度実績が高温度であった日が多いことから実際の天候は「晴」であり、予測が外れた日が多いことを示している。このため、翌日に十分に得られる太陽熱からの集熱量を活用して蓄熱することができない。つまり、予測集熱量が少ないと予測して、夜間のタンク3への蓄熱量を大きくしたため、夜間のヒートポンプユニット2による加熱量が過剰になり、給湯使用時の残湯量が大きくなる。このように、条件B2が成立する場合は、昼間の太陽熱を十分に活用することができず、無駄な残湯量が拡大するため、年間給湯効率(1年間で使用する給湯に係る熱量を1年間で必要な消費電力で除算した値)が低下してしまうことになる。
【0087】
本実施形態によれば、制御装置5は、大気圧を用いて翌日の天候予測結果を決定するための予め定められた演算式と、当該演算式にしたがって決定した天候予測結果と、太陽熱を集熱した温水温度実績と、を記憶する(ステップ26)。さらに制御装置5は、演算式に含まれる定数であってその値が天候予測結果を左右する制御定数を、記憶された天候予測結果及び温水温度実績に応じて更新し(ステップ249)、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定する(ステップ25)。
【0088】
これにより、温水温度実績を用いて実際の天候実績を判断するため、集熱量実績を用いて判断したときに実際の天候実績を正確に導き出させない状況でも、有用な天候実績判断方法を提供することができる。
【0089】
例えば、天候予測が「雨」である場合に翌日の天候が「晴」であったときである。この場合、「雨」予測であることから、タンク3に夜間蓄える蓄熱量が多いため、翌日の昼間にはタンク3内に高温の湯が多く貯湯されることになる。熱交換器8では、タンク3に多く蓄えられた高温の湯と熱交換した比較的高い温度の太陽熱温水が太陽熱集熱器4に戻るため、太陽熱温水の温度は太陽熱集熱器4を流通する前後であまり変化しない。したがって、算出される集熱量は、実際に太陽熱が提供する熱量に比べて小さい値になり、この集熱量実績からは正確な天候予測ができないことになる。そこで、第2実施形態では、温水温度実績を判断に用いるので、夜間の過大な蓄熱量に関係なく、翌日提供される太陽熱の状況をより正確に検出できるのである。
【0090】
(第3実施形態)
第3実施形態のハイブリッド給湯装置1は、第1実施形態で説明したステップ242及びステップ243を、それぞれステップ242B及びステップ243Bに置き換えた「天候予測学習」のサブルーチンを有する。また、第3実施形態は、システムの構成及び図2、図3のフローチャート、図6及び図7について第1実施形態と同様であり、制御に係る各処理、その作用効果も同様である。図10は、第3実施形態に係る「天候予測学習ステップ」に関するサブルーチンである。図11は、図10のフローチャートの処理において使用する過去7日間の実績データの一例を示す図である。図12は、過去7日間の実績データを用いて決定した天候実績の一例を示す図である。以下、第1実施形態と異なる部分のみ説明する。
【0091】
図10に示すように、ステップ242Bでは天候予測値の「曇」及び「雨」の的中率(以下、単に「曇・雨的中率」ともいう)について条件A3が成立するか否かを判定し、条件A3が成立しない場合にさらにステップ243Bで曇・雨的中率について条件B3が成立するか否かを判定する。ここで、条件A3は、過去7日間の天候予測実績において曇・雨的中率が30%以下であること、と定義されている。条件B3は、過去7日間の天候予測実績において曇・雨的中率が60%以上であること、と定義されている。
【0092】
天候実績の求め方は、以下のとおりである。過去の所定期間、例えば過去7日の集熱量実績のうち、2番目に大きい値に第1の係数を乗算して第1の閾値を求め、当該2番目に大きい値に第2の係数を乗算して第2の閾値を求める。各日の集熱量実績が、第1の閾値以上である場合は天候実績を「晴」と判断し、第2の閾値以下である場合は「雨」と判断し、第2の閾値と第1の閾値の間に含まれる場合には「曇」と判断するものである。
【0093】
一例として、この演算を用いて8日〜14日の各日について過去実績から決定した天候実績は、図12に示すとおりとなる。例えば、8日について天候実績を求めみる。過去7日の集熱量実績のうち2番目に大きい値は、3500kcalであり、第1の閾値は、3500×0.6(第1の係数)=2100kcalで、第2の閾値は、3500×0.1(第2の係数)=350kcalである。8日の集熱量実績は4000kcalであり、第1の閾値2100kcalよりも大きいので、8日の天候実績は、「晴」と決定できる。
【0094】
的中率(%)は、まず、該当する日付の天候実績に対する天候予測結果の的中精度をポイント化し、合計ポイントを完全的中した場合のポイントで除算した値に100を乗算することにより求められる。獲得できるポイントは、天候実績が「雨」で、予測が「雨」のときは3点、予測が「曇」のときは1点、予測が「晴」のときは0点である。また、天候実績が「曇」で、予測が「曇」のときは2点、予測が「雨」のときは1点、予測が「晴」のときは1点である。
【0095】
図12において、8日〜14日の間で天候実績が「曇」及び「雨」である日は、9日、10日、12日、13日、14日である。9日は、「雨」実績に対して「晴」予測であるため、獲得ポイントは0である。10日は、「雨」実績に対して「雨」予測であるため、獲得ポイントは3である。12日は、「雨」実績に対して「晴」予測であるため、獲得ポイントは0である。13日は、「雨」実績に対して「晴」予測であるため、獲得ポイントは0である。14日は、「曇」実績に対して「曇」予測であるため、獲得ポイントは2である。8日〜14日の間の合計獲得ポイントは、5点である。
【0096】
「雨」実績は、9日、10日、12日、13日の4日間であるため、4日間すべてを完全的中した場合には、獲得ポイントは3点の4倍であり12点である。「曇」実績は、14日の1日間であるため、これを完全的中した場合には、獲得ポイントは2点である。したがって、該当する5日間を完全的中した場合の獲得ポイントは14点になる。したがって、8日〜14日の間の的中率(%)は、合計獲得ポイント5点を完全的中時の獲得ポイント14点で除算し、100を乗算すると、35.7(%)となる。
【0097】
したがって、図11及び図12に示すデータの場合、的中率35.7(%)であることが求められ、ステップ242Bで条件A3が成立せず、さらにステップ243Bで条件B3が成立しない。これにより、ステップ246に進み、レベルを変更することなく制御定数のレベルを確定する。
【0098】
また、天候実績の求め方について、以下に他の方法を説明する。第1の他の方法は、上記のように集熱量実績を用いて天候実績を決定した後、さらに過去7日間の温水温度実績を用いて天候実績を補正する方法である。
【0099】
具体的に図11のデータを使用して8日の天候実績を求めてみる。過去7日間の温水温度実績の1番目に大きい値(50℃)と2番目に大きい値(48℃)の平均である第1の平均値((50+48)÷2=49℃))を算出する。過去7日間の温水温度実績の1番目に小さい値(23℃)と2番目に小さい値(25℃)の平均である第2の平均値((23+25)÷2=24℃))を算出する。そして、集熱量実績を用いて求めた上記天候実績が例えば「晴」の場合、8日の温水温度実績が、第1の平均値(49℃)から5℃を減算した第1の閾温度(44℃)以上である場合は天候実績を「晴」と補正し、第2の平均値(24℃)から5℃を加算した第2の閾温度(29℃)以下である場合は「雨」と補正し、第2の閾温度(29℃)と第1の閾温度(44℃)の間に含まれる場合には「曇」と補正するものである。8日の場合、温水温度実績は50℃であるので、第1の他の方法によって、天候実績は「晴」に再決定されることになる。
【0100】
つまり、第1の他の方法では、制御装置5は、太陽熱集熱器4によって集熱された集熱量実績及び太陽熱を集熱した熱媒体の温度実績を含む過去実績データを記憶する(ステップ26)。さらに制御装置5は、演算式に含まれる定数であってその値が天候予測結果を左右する制御定数を、記憶された天候予測結果及び当該過去実績データに応じて更新し(ステップ249)、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定する(ステップ25)。
【0101】
この第1の他の方法によれば、集熱用実績を用いて天候実績を決定した後、さらに温水温度実績を用いて実際の天候実績を補正するため、集熱量実績によって判断したときに実際の天候実績を正確に導き出させない場合に、有用な天候実績判断を行うことができる。例えば、天候予測が「雨」である場合に翌日の天候が「晴」であったときである。この点については、上記の第2実施形態に記載の作用効果と同様である。
【0102】
第2の他の方法は、上記のように集熱量実績を用いて天候実績を決定する代わりに、過去7日間の温水温度実績を用いて天候実績を決定する方法である。
【0103】
具体的に図11及び図12のデータを使用して13日の天候実績を求めてみる。過去7日間(6日〜12日)の温水温度実績の1番目に大きい値(50℃)と2番目に大きい値(50℃)の平均である第1の平均値((50+50)÷2=50℃))を算出する。過去7日間の温水温度実績の1番目に小さい値(23℃)と2番目に小さい値(25℃)の平均である第2の平均値((23+25)÷2=24℃))を算出する。そして、13日の温水温度実績が、第1の平均値(50℃)から5℃を減算した第1の閾温度(45℃)以上である場合は天候実績を「晴」と決定し、第2の平均値(24℃)から5℃を加算した第2の閾温度(29℃)以下である場合は「雨」と決定し、第2の閾温度(29℃)と第1の閾温度(45℃)の間に含まれる場合には「曇」と決定するものである。13日の場合、温水温度実績は26℃であるので、第2の他の方法によって、天候実績は「雨」に決定されることになる。
【0104】
第3の他の方法は、上記のように集熱量実績を用いて天候実績を決定する代わりに、過去7日間の所定時間範囲の温水温度の変化率実績を用いて天候実績を決定する方法である。記憶手段には、過去7日間の所定時間範囲、例えば、各日の5時から18時まで1時間単位で温水温度の変化率が記憶される。
【0105】
過去7日間における温水温度の変化率実績が、1番目に大きい値と2番目に大きい値の平均である第1の平均変化率を算出する。過去7日間の温水温度の変化率実績の1番目に小さい値と2番目に小さい値の平均である第2の平均変化率を算出する。そして、その日のうち温水温度の変化率実績の最大値が、第1の平均変化率以上である場合は天候実績を「晴」と決定し、第2の平均変化率以下である場合は「雨」と決定し、第2の平均変化率と第1の平均変化率の間に含まれる場合には「曇」と決定するものである。
【0106】
第2の他の方法または第3の他の方法によれば、温水温度実績を用いて実際の天候実績を判断するため、集熱量実績が実際の天候実績と対応せず、集熱量実績によっては正確な天候実績を導き出させない状況でも、有用な天候実績判断を行うことができる。例えば、天候予測が「雨」である場合に翌日の天候が「晴」であったときである。この点については、上記の第2実施形態に記載の作用効果と同様である。
【0107】
本実施形態によれば、制御装置5は、過去の所定日数において天候実績に対する天候予測結果の的中率を算出し、当該算出した的中率を改善するように制御定数を更新し(ステップ242,245,243,244,249)、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定する(ステップ25)。
【0108】
この制御によれば、天候予測結果の的中率が良くない状況が過去にあれば、これを改善すべく制御定数が更新されて、今後の天候予測の的中率を向上することができる。例えば、「雨」予測の的中率が良くない場合には、「雨」予測が得られやすい雨重視の制御定数にチューニングすることができる。また「晴」予測の的中率が良くない場合には、「晴」予測が得られやすい晴重視の制御定数にチューニングすることができる。したがって、ハイブリッド給湯装置1の使用場所における特有の地域性及び季節性等がある天候に対して適切に対応できる天候予測決定のロジックに継続的に改善していくことができるのである。なお、この制御は、後述する第4実施形態のハイブリッド蓄電システム100にも適用可能である。
【0109】
また、制御装置5は、翌日の天候予測を「雨」、「曇」、「晴」のいずれかに決定するものであり、過去の所定日数において天候実績に対する、「雨」及び「曇」の少なくとも一方に関する天候予測結果の的中率を算出する。さらに制御装置5は、当該算出した的中率が低いと判定した場合は「雨」の天候予測結果が得られやすい値に制御定数を変更し(ステップ245)、当該算出した的中率が高いと判定した場合は「晴」の天候予測結果が得られやすい値に制御定数を変更し(ステップ244)、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定する(ステップ25)。
【0110】
この制御によれば、「雨」及び「曇」の少なくとも一方の天候予測についての的中率が低い場合は実際の天候実績が雨であるにもかかわらず、あまり的中できていない。このため、「雨」予測が得られやすい演算式に更新する。逆に当該的中率が高い場合は「晴」予測が得られやすい演算式に更新する。したがって、今後の天候予測において、「雨」予測の的中率を向上するとともに、「雨」予測の的中率が高い場合に「晴」予測が得られにくく太陽エネルギーを十分に活用できない天候予測を継続しないように、常に天候予測ロジックを改善していくことができる。なお、この制御は、後述する第4実施形態のハイブリッド蓄電システム100にも適用可能である。
【0111】
(第4実施形態)
本発明のハイブリッドシステムの一実施形態である第4実施形態について図13〜図15を参照して説明する。図13は、太陽エネルギー利用のハイブリッド蓄電システム100の概略構成を示した模式図である。第4実施形態で特に説明しない構成、作動、作用効果は、第1実施形態と同様である。
【0112】
図13に示すように、ハイブリッドシステムの一例であるハイブリッド蓄電システム100は、太陽電池130と、蓄電池114と、制御装置111と、を主に備えるシステムである。太陽電池130は、太陽光エネルギーを得て発電する太陽光発電装置である。蓄電池114は、会社等から供給される系統電力170を受電して蓄電する。制御装置111は、使用が予測される電力量に対して、蓄電池114に蓄電された蓄電量及び太陽電池130により発電される電力量では不足する分の蓄電量を算出する。
【0113】
ハイブリッド蓄電システム100は、制御装置111が算出した当該不足する分の蓄電量を、昼間の電気料金よりも安価な料金体系である所定の安価料金時間帯(例えば、深夜料金時間帯)に系統電力170から受電して蓄電池114に蓄電する。これにより、ハイブリッド蓄電システム100は、太陽光エネルギーを利用した発電と、深夜料金時間帯に蓄電池114に電力を蓄える蓄電運転とを活用して省エネルギー性を優先しつつ、ユーザーの要望を満たした電気エネルギーの供給を行うものである。
【0114】
さらに図13を参照してハイブリッド蓄電システム100に関わる他の構成について説明する。太陽電池130が太陽光エネルギーから発電する直流電力及び系統電力から送電される交流電力は分電盤120に送られる。分電盤120に送られた電力は、HEMS装置110に送られ、HEMS装置110のパワーコンディショナー115によって交流と直流間で電力変換されて、蓄電池114に蓄電されたり、コンセント150に供給されたり、分電盤120に供給されたりする。HEMS装置110は、電力使用先である家庭等での電気機器の動作、エネルギー使用量を計測、表示して、住人に省エネルギーを喚起したり、電気機器の使用量等を制限したりしてエネルギー消費量を抑えるホームエネルギーマネジメントシステムである。
【0115】
HEMS装置110は、制御装置111、大気圧センサ112、操作盤113、パワーコンディショナー115及び蓄電池114を少なくとも備えて構成される。パワーコンディショナー115は、太陽電池130で発電した直流電力を効率よく交流電力に変換したり、系統電力170からの交流電力を直流電力に変換したり、蓄電池114に蓄電されていた直流電力を交流電力に変換したりする電力変換装置である。蓄電装置としてのパワーコンディショナー115で直流から交流に変換された電力は、電気配線を介して、建物に据え付けのコンセント150、建物内の各種の電化製品140、電源コードの先に付いている差込器具を利用して蓄電池160aに充電されて、プラグインハイブリッド自動車160、電気自動車等に電力供給することができる。
【0116】
制御装置111は、操作盤113上の各種スイッチ及びパワーコンディショナー115からの各種の通信信号、大気圧検出手段の一例である大気圧センサ112等からの検出信号が入力される入力回路と、入力回路からの信号を用いて各種演算を実行するマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータによる演算に基づいてパワーコンディショナー115のスイッチング素子等を制御する信号を出力する出力回路と、を備えている。操作盤113は、ユーザーが運転操作を設定できる運転操作部であり、第1実施形態と同様のレベル設定スイッチを備えている。マイクロコンピュータは、大気圧、天候予測値(天候予測結果)、発電量実績、天候実績等のデータ、演算結果等を記憶する記憶手段としてのROM、RAM等を内蔵し、あらかじめ設定された制御プログラムや更新可能な制御プログラムを有し、蓄電運転を制御する。ハイブリッド蓄電システム100の運転状況は、制御装置111からの出力信号によって、操作盤113に設けられた表示画面に表示される。
【0117】
制御装置111は、大気圧センサ112により検出される大気圧の検出値に応じて天候を予測する天候予測手段、この天候予測結果及び過去の発電量実績に基づき太陽電池130による予測発電量を求める発電量予測手段、及び予測発電量に応じて蓄電池114に蓄える蓄電量を求める蓄電量算出手段としての機能を有する。過去の各日の発電量実績は、例えば、当該日における発電量の経時変化のグラフから、1日のトータル発電量を積算によって算出する。また、1日の発電量は、当該グラフにおける所定時間帯の発電量の変化率に基づいて算出してもよいし、日照時間における発電量の最大値と最小値の差に基づいて算出してもよい。
【0118】
制御装置111は、省エネルギー、低ランニングコストのため、天候を予測し、天候予測等に基づく昼間の太陽光エネルギーから得られる発電量を予測し、この予測発電量と蓄電池114内に蓄えられた蓄電量を加味して深夜料金時間帯の蓄電池114への蓄電量を決定する。この蓄電量は、ユーザーの過去の使用電力量実績による学習値から、蓄電池114内に残存する蓄電量と、翌日の発電量(予測発電量)とを減算することにより算出されるものである。そして、制御装置111は、蓄電量算出手段として算出した蓄電量分の電力量を、電力が安価な深夜料金時間帯に系統電力170から交流電力を受電し、パワーコンディショナー115で電力変換して蓄電池114に蓄電する。また、制御装置111は、日照時間帯に太陽電池130で発電可能な状態になったら直流電力を取り込み蓄電池114に充電する。
【0119】
また、制御装置111による天候予測演算は、第1実施形態と同様に、検出された大気圧値、大気圧の振動値F、及び当該大気圧の変化値Sの各パラメータに基づいて、分類された複数種類のうち、一の天候予測結果を決定する。制御装置111は、天候予測制御に関して、図3を参照して説明した第1実施形態と同様の処理を実行するが、一部異なる処理を行う。以下に、第1実施形態と異なる点について説明する。
【0120】
上記構成のハイブリッド蓄電システム100における深夜料金時間帯の蓄電運転の作動について図14及び図15を参照して説明する。図14は、ハイブリッド蓄電システム100における蓄電運転の作動を示したフローチャートである。
【0121】
図14に示す各ステップは、制御装置111によって実行される。まず、ステップ1では、最初の大気圧データの保存を行う場合は、現在時刻が19時から深夜料金時間帯内であるか否か、つまり、19時から翌日の7時までの時間帯であるか否かが判定される。そして、19時以降または深夜料金時間帯内であれば、ステップ2に進み、天候予測制御を実行する。ステップ2の天候予測制御では、主に、所定時間に記憶した大気圧データと、過去の天候実績、発電量実績、天候予測等に関わる過去実績データを用いた天候予測学習と、によって天候予測値を決定する。
【0122】
この天候予測制御のサブルーチンは、前述の図3に示すフローチャートにしたがって行われるが、天候予測学習のサブルーチンのみが第1実施形態の説明と異なり、図15に示す「天候予測学習ステップ」のフローチャートにしたがって実行される。
【0123】
天候予測学習の処理は、第1実施形態で図4を参照して説明したサブルーチンとほぼ同様であるが、ステップ242C,243Cの判断のみが異なる。ステップ242Cでは、発電量実績データについて条件A4が成立するか否かを判定する。条件A4は、過去実績において天候予測値が「晴」で、かつ発電量実績が予め定めた第1の電力量以下である日数が7日間うち3日以上あること、と定義されている。ステップ242Cで条件A4が成立する場合は、ステップ245で制御定数を1レベル下げ、ステップ246で制御定数のレベルを確定する。
【0124】
条件A4が成立する場合は、天候予測値が「晴」であるにもかかわらず、発電量実績が少なかった日が多いことから実際の天候は「雨」または「曇」であり、予測が外れた日が多いことを示している。このため、翌日に期待する発電量が得られず、蓄電池114や蓄電池160aの蓄電量が不足して電力が不足する状況を表している。つまり、翌日の予測発電量が多いと予測して、夜間の蓄電池114や蓄電池160aへの蓄電量を絞ったため、翌日の使用電力量を確保することが困難な日が多かったことになる。そして、翌日の使用電力量を確保するために、昼間に系統電力170から高価な電力供給を受ける必要があるので、安価な深夜料金時間帯の電力を活用することができず、ランニングコストが増加してしまうことが想定されるのである。
【0125】
天候予測値は、第1実施形態と同様に、後のステップ25において、図7に示す「天候予測値決定マップ」にしたがって決定される。本実施形態の天候予測学習は、ステップ242Cの条件A4またはステップ243Cの条件B4が成立した場合に、図6に示す「制御定数のレベル決定テーブル」にしたがって制御定数のレベルを更新することを特徴としている。この制御定数のレベル更新機能を有することより、過去実績データに反映された、システム使用地域特有の天候に適応した天候予測を可能とし、天候予測の精度を向上することができる。
【0126】
ステップ242Cで条件A4が成立しないときは、ステップ243Cで発電量実績データについて条件B4が成立するか否かを判定する。条件A4は、過去実績において天候予測値が「雨」で、かつ発電量実績が予め定めた第2の電力量以上である日数が7日間うち2日以上あること、と定義されている。ステップ243Cで条件B4が成立しない場合は、ステップ246に進み、レベルを変更することなく制御定数のレベルを確定する。ステップ243Cで条件B4が成立する場合は、次にステップ244で制御定数を1レベル上げ、ステップ246で制御定数のレベルを確定する。
【0127】
条件B4が成立する場合は、天候予測値が「雨」であるにもかかわらず、発電量実績が多かった日が多いことから実際の天候は「晴」であり、予測が外れた日が多いことを示している。このため、翌日に十分に得られる太陽光からの発電量を活用して蓄熱することができない。つまり、予測発電量が少ないと予測して、夜間の蓄電池114や蓄電池160aへの蓄電量を大きくしたため、夜間の深夜料金電力による蓄電量が過剰になり、翌日の発電を蓄電池114や蓄電池160aに蓄電できないことがある。このように、条件B4が成立する場合は、昼間の太陽光を十分に活用することができないため、自然エネルギー利用効率が低下してしまうことになる。
【0128】
天候予測学習ルーチンで制御定数を更新し、天候予測値の決定、各種データの記憶を実行し、ステップ2の天候予測制御を実行した後は、次にステップ3Aを実行する。ステップ3Aでは、ステップ2で算出された翌日の天候予測値と、記憶手段に記憶された過去の発電量実績とを用いて翌日に発電が予測される予測発電量を算出する。このステップ3Aは、翌日の天候予測結果を用いて、太陽電池130で昼間に発電されうる電力量の予測量を算出する予測発電量演算ステップである。記憶手段には、天候予測結果と発電量実績を用いて予測発電量を算出するためのマップが予め記憶されている。予測発電量演算ステップは、翌日の天候予測結果(「晴」、「曇」、「雨」のいずれかの天候予測値)、発電量実績、及び当該マップを用いて、予測発電量を算出する発電量予測手段である。
【0129】
次に制御装置111は、ステップ4A,5Aで、深夜料金時間帯に蓄電池114、160a等に電力を蓄える蓄電運転の制御に必要なパラメータを算出する。ステップ4Aでは必要な蓄電量を算出し、ステップ5Aでは蓄電運転開始時刻を算出する。
【0130】
蓄電運転開始時刻は、ステップ4Aで算出した必要な蓄電量(使用電力量実績による学習値から、蓄電池114、160a等の残存電力量及び翌日の予測発電量を減算して得られた電力量)を達成するように蓄電するために必要な運転時間を算出し、この必要な運転時間が深夜料金時間帯の終了時刻までに終了するように逆算することにより算出する。
【0131】
そして、ステップ7Aで、現在時刻がステップ6Aで算出した蓄電運転開始時刻になったか否かを判定する。そして、蓄電運転開始時刻になったら(YES)、ステップ8Aに進み、ステップ4A,5Aで算出したパラメータを満たすように蓄電運転を実施する。蓄電運転開始時刻になっていなければ(NO)、ステップ1に戻り、蓄電運転開始時刻になるまで以降のステップを実行する。
【0132】
本実施形態のハイブリッド蓄電システム100がもたらす作用効果を以下に述べる。ハイブリッド蓄電システム100は、太陽光エネルギーを取り入れて発電する太陽電池130と、昼間の電気料金よりも安価な料金体系の電力を用いて蓄電池114に蓄電するパワーコンディショナー115と、翌日の天候を予測して太陽電池130により翌日発電できる予測発電量を算出し、当該算出した予測発電量と翌日に使用が予測される使用電力量とに応じて蓄電池114に安価な料金体系の電力を用いて蓄電する必要な蓄電量を算出する制御装置111と、を備える。
【0133】
制御装置111は、大気圧を用いて翌日の天候予測結果を決定するための予め定められた演算式と、当該演算式にしたがって決定した天候予測結果と、太陽電池130によって発電された発電量実績と、を記憶する(ステップ26)。
【0134】
さらに制御装置111は、演算式に含まれる定数であってその値が天候予測結果を左右する制御定数を、記憶された天候予測結果及び発電量実績に応じて更新し(ステップ249)、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定する(ステップ25)。
【0135】
天候予測結果を用いて翌日の発電量を算出する従来のシステムにおいては、天候予測は必ずしも高い確率で的中するわけではないため、以下のような不具合が生じうる。具体的には、天候予測結果が「雨」で、実際が「晴」であった場合には、深夜料金時間帯に実施する蓄電池への蓄電量が過大になり、蓄電池内の残存電力量が多いので、太陽光エネルギーを蓄電できない。このため、自然エネルギーの利用効率が低下することになる。また、天候予測結果が「晴」で、実際が「雨」であった場合には、実際に昼間の蓄電量が予測量よりも大きく不足し、深夜料金時間帯に実施する蓄電池への蓄電量が不足するようになるため、充電量が不足して充電切れが生じ易く、後で昼間の系統電力を利用した蓄電運転が必要になり、ランニングコストが上昇することになる。
【0136】
そこで、ハイブリッド蓄電システム100によれば、大気圧を用いて天候予測結果を決定する演算式の制御定数を、過去の天候予測結果及び発電量実績に応じて更新する。これにより、更新後の演算式に、これまでの天候予測の結果を反映させることができ、天候予測の的中率を向上することができる。例えば、晴の少ない地域や季節では、雨の天候予測が得られやすい演算式に変更し、雨の少ない地域や季節では、晴の天候予測が得られやすい演算式に変更する天候予測ロジックを構築することができる。つまり、雨季時、高地、多雨地域等、天候予測が当たりがたい季節や地域でも、その環境に適合した独自の天候予測ロジックを構築することができるのである。したがって、年間を通して使用環境に適合し、天候予測の精度向上及びランニングコストの低減が図れるハイブリッド蓄電システム100を提供できる。
【0137】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0138】
上記実施形態では、集熱量実績等を用いて天候実績を決定しているが、インターネットに接続する接続手段を設け、インターネット等を介して気象庁等による外部機関提供の天気実績に関する情報を取得し、これを使用するようにしてもよい。
【0139】
上記実施形態では、レベル設定スイッチ10bを操作することによって、ユーザーが制御定数のレベルを変更することができる。このとき、リモートコントローラ10や操作盤113の表示画面に、天候予測結果、集熱量実績、温水温度実績、発電量実績等を表示し、この表示をユーザーに提示して、ユーザーがレベル設定スイッチ10bを操作する際にこの表示を参考にするように構成してもよい。
【0140】
上記実施形態のレベル設定スイッチ10bによる制御定数のレベル変更において、提示された直感的にわかりやすい表示や操作部を参考にして、ユーザーが当該レベル変更を行うように構成してもよい。例えば、晴重視のレベル変更を促す「効率優先」表示または操作部、雨重視のレベル変更を促す「ランニングコスト優先」表示または操作部である。
【0141】
また、上記の第3実施形態では、条件A3及び条件B3において曇及び雨の的中率を用いたが、天候予測値の「雨」的中率を用いて各条件の成立か否かを判断するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0142】
1…ハイブリッド給湯装置(ハイブリッドシステム)
2…ヒートポンプユニット(加熱装置)
3…タンク(蓄熱装置)
4…太陽熱集熱器
5…制御装置
10b…レベル設定スイッチ(レベル設定操作部)
100…ハイブリッド蓄電システム(ハイブリッドシステム)
111…制御装置
113…操作盤(レベル設定操作部)
114…蓄電池
115…パワーコンディショナー(蓄電装置)
130…太陽電池(太陽光発電装置)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽熱を熱媒体を介して取り入れる太陽熱集熱器(4)と、昼間の電気料金よりも安価な料金体系の電力を用いた加熱装置(2)によって生成した熱量を蓄熱する蓄熱装置(3)と、翌日の天候を予測して前記太陽熱集熱器(4)により翌日集熱できる予測集熱量を算出し、当該算出した予測集熱量と翌日に使用が予測される使用熱量とに応じて前記蓄熱装置(3)に前記安価な料金体系の電力を用いて蓄熱する必要な蓄熱量を算出する制御装置(5)と、を備えるハイブリッドシステムであって、
前記制御装置(5)は、
大気圧を用いて翌日の天候予測結果を決定するための予め定められた演算式と、当該演算式にしたがって決定した天候予測結果と、前記太陽熱集熱器(4)によって集熱された集熱量実績及び太陽熱を集熱した熱媒体の温度実績の少なくとも一方の過去実績データと、を記憶し、
さらに、前記演算式に含まれる定数であってその値が前記天候予測結果を左右する制御定数を、前記記憶された天候予測結果及び過去実績データに応じて更新し、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定することを特徴とするハイブリッドシステム。
【請求項2】
太陽光エネルギーを取り入れて発電する太陽光発電装置(130)と、昼間の電気料金よりも安価な料金体系の電力を用いて蓄電池(114)に蓄電する蓄電装置(115)と、翌日の天候を予測して前記太陽光発電装置(130)により翌日発電できる予測発電量を算出し、当該算出した予測発電量と翌日に使用が予測される使用電力量とに応じて前記蓄電池(114)に前記安価な料金体系の電力を用いて蓄電する必要な蓄電量を算出する制御装置(111)と、を備えるハイブリッドシステムであって、
前記制御装置(111)は、
大気圧を用いて翌日の天候予測結果を決定するための予め定められた演算式と、当該演算式にしたがって決定した天候予測結果と、前記太陽光発電装置(130)によって発電された発電量実績と、を記憶し、
さらに、前記演算式に含まれる定数であってその値が前記天候予測結果を左右する制御定数を、前記記憶された天候予測結果及び発電量実績に応じて更新し、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定することを特徴とするハイブリッドシステム。
【請求項3】
前記制御装置(5)は、過去の所定日数において天候実績に対する天候予測結果の的中率を算出し、当該算出した的中率を改善するように前記制御定数を更新し、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のハイブリッドシステム。
【請求項4】
前記制御装置(5)は、
前記翌日の天候予測を「雨」、「曇」、「晴」のいずれかに決定するものであり、過去の所定日数において天候実績に対する、「雨」及び「曇」の少なくとも一方に関する天候予測結果の的中率を算出し、
当該算出した的中率が低いと判定した場合は「雨」の天候予測結果が得られやすい値に前記制御定数を変更し、当該算出した的中率が高いと判定した場合は「晴」の天候予測結果が得られやすい値に前記制御定数を変更し、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定することを特徴とする請求項3に記載のハイブリッドシステム。
【請求項5】
さらに、前記制御定数の増大及び低下を指定して、当該制御定数の更新を手動で設定可能なレベル設定操作部(10b)を備え、
前記制御装置(5)は、前記レベル設定操作部(10b)によって前記制御定数の増大または低下が設定された場合には、設定されたレベルに応じて当該制御定数を更新し、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のハイブリッドシステム。
【請求項6】
前記演算式は、所定の時間幅における、大気圧の変化値と、大気圧の変動を積算して求めた大気圧の振動値とのそれぞれに関して前記制御定数の大小関係を定めた不等式で構成されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のハイブリッドシステム。
【請求項1】
太陽熱を熱媒体を介して取り入れる太陽熱集熱器(4)と、昼間の電気料金よりも安価な料金体系の電力を用いた加熱装置(2)によって生成した熱量を蓄熱する蓄熱装置(3)と、翌日の天候を予測して前記太陽熱集熱器(4)により翌日集熱できる予測集熱量を算出し、当該算出した予測集熱量と翌日に使用が予測される使用熱量とに応じて前記蓄熱装置(3)に前記安価な料金体系の電力を用いて蓄熱する必要な蓄熱量を算出する制御装置(5)と、を備えるハイブリッドシステムであって、
前記制御装置(5)は、
大気圧を用いて翌日の天候予測結果を決定するための予め定められた演算式と、当該演算式にしたがって決定した天候予測結果と、前記太陽熱集熱器(4)によって集熱された集熱量実績及び太陽熱を集熱した熱媒体の温度実績の少なくとも一方の過去実績データと、を記憶し、
さらに、前記演算式に含まれる定数であってその値が前記天候予測結果を左右する制御定数を、前記記憶された天候予測結果及び過去実績データに応じて更新し、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定することを特徴とするハイブリッドシステム。
【請求項2】
太陽光エネルギーを取り入れて発電する太陽光発電装置(130)と、昼間の電気料金よりも安価な料金体系の電力を用いて蓄電池(114)に蓄電する蓄電装置(115)と、翌日の天候を予測して前記太陽光発電装置(130)により翌日発電できる予測発電量を算出し、当該算出した予測発電量と翌日に使用が予測される使用電力量とに応じて前記蓄電池(114)に前記安価な料金体系の電力を用いて蓄電する必要な蓄電量を算出する制御装置(111)と、を備えるハイブリッドシステムであって、
前記制御装置(111)は、
大気圧を用いて翌日の天候予測結果を決定するための予め定められた演算式と、当該演算式にしたがって決定した天候予測結果と、前記太陽光発電装置(130)によって発電された発電量実績と、を記憶し、
さらに、前記演算式に含まれる定数であってその値が前記天候予測結果を左右する制御定数を、前記記憶された天候予測結果及び発電量実績に応じて更新し、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定することを特徴とするハイブリッドシステム。
【請求項3】
前記制御装置(5)は、過去の所定日数において天候実績に対する天候予測結果の的中率を算出し、当該算出した的中率を改善するように前記制御定数を更新し、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のハイブリッドシステム。
【請求項4】
前記制御装置(5)は、
前記翌日の天候予測を「雨」、「曇」、「晴」のいずれかに決定するものであり、過去の所定日数において天候実績に対する、「雨」及び「曇」の少なくとも一方に関する天候予測結果の的中率を算出し、
当該算出した的中率が低いと判定した場合は「雨」の天候予測結果が得られやすい値に前記制御定数を変更し、当該算出した的中率が高いと判定した場合は「晴」の天候予測結果が得られやすい値に前記制御定数を変更し、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定することを特徴とする請求項3に記載のハイブリッドシステム。
【請求項5】
さらに、前記制御定数の増大及び低下を指定して、当該制御定数の更新を手動で設定可能なレベル設定操作部(10b)を備え、
前記制御装置(5)は、前記レベル設定操作部(10b)によって前記制御定数の増大または低下が設定された場合には、設定されたレベルに応じて当該制御定数を更新し、当該更新後の演算式を用いて天候予測結果を決定することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のハイブリッドシステム。
【請求項6】
前記演算式は、所定の時間幅における、大気圧の変化値と、大気圧の変動を積算して求めた大気圧の振動値とのそれぞれに関して前記制御定数の大小関係を定めた不等式で構成されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のハイブリッドシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−53805(P2013−53805A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192198(P2011−192198)
【出願日】平成23年9月4日(2011.9.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月4日(2011.9.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
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