説明

ハイブリッド光デバイスの組み立て方法

【課題】 能動部品が放出する熱を散逸させ、能動部品の光軸を受動部品の光ガイドとアライメントすることができる、ハイブリッド光デバイスの組み立て方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、能動部品に光学的に結合されシリカ基板上のシリカ層内に作製された受動部品を含み、前記層および基板がこのようにしてシリカオンシリカ構造を形成するハイブリッド光デバイスの組み立て方法に関する。この方法は、良好な熱伝導性および能動部品の熱膨張率と類似の熱膨張率を有する中間エレメントを作製すること、能動部品を中間エレメント上に固定すること、および能動部品が空洞の内部に存在し受動部品に光学的に結合されるように、シリカオンシリカ構造内に空洞を形成し、この構造上に中間エレメントを固定することからなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ハイブリッド光デバイスの組み立て方法に関する。ハイブリッド光デバイスとは、受動部品に光学的に結合された能動光電子部品を含む素子と定義される。この素子は、複数の光ファイバが接続できる光モジュール内に収納するようになっている。
【0002】
【従来の技術】従来技術において既にハイブリッド光デバイスが作製されている。具体的には、共にシリコン基板3に支持される、シリカを材料とする受動部品1と、たとえばレーザまたは光増幅器型の光電子部品2とを含む図1Aの斜視略図に示すような素子が存在する。
【0003】実際には、受動部品1は、シリコン基板3上に連続する三つのシリカ層6、7、8を重ねることにより作製される。第二のシリカ層7は個別の形態にエッチングされ、受動部品1の光ガイドを構成する。図1Aに示す例ではこのガイドは直線であるが、他の形状とすることもできる。いずれにせよ、ガイドが果たすべき機能によって一切が決まる。また、この第二のシリカ層7は、他の二つの層6および8の屈折率よりも高い屈折率を有するように作製される。したがって、第二層7は光ファイバのコアと等価であり、一方、他の二つの層6および8は、この光ファイバのクラッドに等しい。
【0004】受動部品を形成するシリカ層6、7、8と、シリコン基板3とで構成されるアセンブリを一般に、シリカオンシリコン構造と呼び、SiO2/Siと記す。
【0005】シリカ層6、7、8内のシリコン基板3の近くに収納部5が規定される。すると、光電子部品2は、その光軸9が受動部品1の光ガイド7とアライメントされるように、この収納部5の内部に設置される。
【0006】能動部品2の光軸9と受動部品1の光ガイド7の位置合わせは、高精度、すなわち約1ミクロン(1μm=10-6メートル)以下でなければならない。そのためには空洞5は、図1Bの横断面図に示すように、光電子部品2をその位置に固定することができる構造を有さなければならない。この図では、空洞5は、能動部品の形状に一致するように段51を含む。さらに空洞5の寸法は1ミクロン以下の精度で規定される。また、はんだ点Sにより、空洞の底部に能動部品2を固定することができる。
【0007】図1Bに示す矢印は、光電子部品2から放出される熱量が排出される方向を示す。
【0008】この種のハイブリッド光素子は、とくにI.Kitazawa他の文献「Thermal resistance and soldering stress analyses on LD-mount-structures forplanar lightwave circuits」、IOOC’95、FA3−5、pp26−29で言及された。
【0009】しかしながらこの種のハイブリッド光素子の使用はきわめて限られている。これは主に、シリコンがシリカの熱膨張率とは非常に異なる熱膨張率を有することによる。その結果、400℃から1400℃の温度でシリコン基板上に連続シリカ層6、7、8を付着させ、全体を周囲温度まで冷却させた後に得られるシリカオンシリコン構造は、非常に変形した湾曲形状を有する。この変形により応力が発生し、種々のシリカ層内を伝播する。
【0010】直線ガイドを作製しようとする時にはこれらの応力は邪魔にはならない。一方、たとえばパワーディバイダ、すなわち3dB損失カプラなど、他の種類の受動部品を作製しようとする場合には、これらの応力は大きな欠点となる。
【0011】事実、光偏光は光ファイバの中を回転する。光ファイバから出た光が3dBカプラに注入されると、偏光の如何に関わらず光出力を分配することができる部品を持つことが重要である。シリカ層内で発生する応力により、このようなカプラの受動的機能が偏光に感応するようになり、その結果、この種の受動部品が正しく動作することができなくなる。
【0012】図1Cに示すこの問題に対する解決方法は、溶解シリカ、すなわち非晶質シリカ製の支持体3を使用することから成る。その場合これをシリカオンシリカ構造と呼び、SiO2/SiO2と記す。この例では、略図で示す受動部品はカプラCである。この場合、基板3、およびカプラCを規定するシリカ層はきわめて近い熱膨張係数を有し、その結果、シリカ層内では応力は一切発生しない。したがって受動部品は偏光に感応しない。
【0013】このような解決方法はたとえば、S.Kobayashi他の文献「Prospects for silica and glass-based IO components」、ECIO’95、WeA3、pp309−314において記述されている。
【0014】しかしながら、溶解シリカはシリコンとは異なり粗悪なヒートシンクである。ところで、ハイブリッド光素子を作製する場合には、光電子部品が放出する熱量を排出できることが必要である。
【0015】したがって解決すべき問題は、ハイブリッド光素子、すなわち相互に光学的に結合されている能動部品と受動部品とを含む素子を、溶解シリカ基板上に作製することができる手段を見出すことにある。
【0016】この問題を解決するために考えられる第一の方法を図2Aの横断面の略図に示す。この方法は、能動部品2が放出する熱量を散逸することができるシリコン支持体4で前記能動部品を被覆することから成る。放出される熱量の排出方向を図2Aで矢印で示す。
【0017】しかしながらこの方法は大きな欠点を有するため、最適ではない。実際、熱量の排出は能動部品2を通して行われるため、能動部品の動作は非常に妨害される。さらに、光電子部品の品質が大きく低下し、その寿命が著しく短くなる。
【0018】さらに、この場合、シリコン支持体4の保持手段が規定されていない。場合によっては、接着により支持体をシリカオンシリカ構造に固定することができる。いずれにせよ、この支持体は能動部品と受動部品の位置合わせには寄与しない。前述し、図1Aおよび図1Bに対応する従来技術における場合と同様、この位置合わせが可能であるのは専ら空洞5の形状およびはんだ点Sによるものである。
【0019】光電子部品を通して熱量の排出が行われるのを回避するための別の方法は、図2Bに示すような前記部品を反転させることにあると思われる。実際、この場合、熱量は、能動部品2を通過することなく、シリコン支持体4側に最も短い経路から排出される。シリコン支持体4は熱通路の役割を果たす。
【0020】光電子部品2の後面2aは、能動的機能9に関係なく研磨により±10μmの精度で薄くされる。熱通路4は、光電子部品2の光軸9側に取り付けられる。このような熱通路はヒートシンクの機能を果たすだけである。さらに、場合によっては、熱通路によりチップ2をカプセル化することもできる。しかし、位置合わせ機能は光電子部品の後面2aの薄膜化のための大きい公差(±10μm)とは相容れないことから、熱通路が、受動部品1の光ガイドに対する能動部品2の光軸9の良好な位置合わせに寄与することは有り得ない。結果として、この第二の方法も採用することができない。
【0021】従来技術では、図2Cの略縦断面図で示す別の種類のハイブリッド光デバイスも提案された。このデバイスは、光電子部品2と、熱通路、すなわちシリコン「ブリッジ」4と、少なくとも一つの受動部品がその上に作製されるシリカオンシリコン構造10とを含む。この構造10は、シリカオンシリカ構造とすることもできる。
【0022】この場合、シリコンブリッジ4は、ヒートシンクの役割と、能動部品2とシリカオンシリコン構造10とに共通な支持体の役割とを同時に果たす。したがって、これら二つの種類の部品を支持するためには、ブリッジ4の面積は比較的大きくなければならない。すなわち、通常、0.1cm2よりも大きくなければならない。この面積は数cm2に達することがある。シリカオンシリコン構造10は、支持点AおよびBの2点でブリッジ4上に固定される。この二つの支持点AとBの間の距離は、構造10の寸法と同規模である。したがってこの距離は比較的大きく、1mmから数cmである。
【0023】この大きな距離により、−40℃から+85℃まで変化する可能性のある温度で行われる通信の標準的使用中に、支持点AおよびBのレベルでせん断の問題が発生する。実際にはこれらせん断の問題は、シリカオンシリコン構造10またはシリカオンシリカ構造のシリカとシリコンブリッジ4との間の熱膨張率の差によるものである。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、能動部品が放出する熱を散逸させるとともに、前記能動部品の光軸を受動部品の光ガイドとアライメントすることができるシリコンの支持体を使用するハイブリッド光デバイスの組み立て方法を提供することにより所載の欠点をすべて解消することができる。
【0025】
【課題を解決するための手段】より詳細には本発明は、能動部品に光学的に結合されシリカ基板上のシリカ層内に作製される受動部品を含み、前記層および基板がこのようにしてシリカオンシリカ構造を形成する、ハイブリッド光デバイスの組み立て方法であって、− 良好な熱伝導性、および能動部品の熱膨張率と同様の熱膨張率を有する中間エレメントを作製すること、− 能動部品を中間エレメント上に固定すること、および− 能動部品が空洞の内部に存在し受動部品に光学的に結合されるように、シリカオンシリカ構造内に空洞を形成し、この構造上に中間エレメントを固定することからなることを特徴とする方法に関する。
【0026】本発明の別の特徴によれば、本発明はさらに、第一種のストッパを能動部品の目印に対向して位置決めし、第二種のストッパをシリカオンシリカ構造のマーキングに対向して位置決めするように、ストッパを中間エレメント上に、目印を能動部品上に、マーキングをシリカオンシリカ構造上に作製することから成る。
【0027】本発明の別の特徴によれば、中間エレメントはシリコンで作製される。
【0028】本発明の別の対象は、シリカ基板上のシリカ層内に作製された受動部品に光学的に結合された能動部品を含み、前記層および基板がこのようにしてシリカオンシリカ構造を形成するハイブリッド光デバイスであって、さらに、良好な熱伝導性、および能動部品の熱膨張率と同様の熱膨張率を有する中間エレメントと、シリカオンシリカ構造内に穿口された空洞とを含み、能動部品が空洞の内部に存在し受動部品に光学的に結合されるように、中間エレメントが能動部品とシリカオンシリカ構造の双方に対して組み付けられることを特徴とするデバイスである。
【0029】本発明の別の特徴によれば、中間エレメントは、能動部品上に位置する目印および、シリカオンシリカ構造上に位置するマーキングに対向して位置決めすることのできるストッパを含む。
【0030】本発明の別の特徴によれば、中間エレメントはシリコンで作製される。
【0031】本発明の別の特徴によれば、中間エレメントは小さい寸法を有し、その面積は能動部品の面積よりかろうじて大きい。
【0032】本発明の別の特徴によれば、中間エレメントは1mm2未満の面積を有し、シリカオンシリカ構造(100)は1mm2を超える面積を有する。
【0033】本発明の別の特徴によれば、能動部品は空洞内に「表が外側」になるように取り付けられる。
【0034】本発明の別の特徴によれば、空洞は貫通しておらず、能動部品のカプセル化に寄与するように、中間エレメントはこの空洞の上側に配置される。
【0035】本発明によるハイブリッド光デバイスは、とくに、溶解シリカ基板のコストが安いこと、および偏光に感応しない部品を主とする光学システムの設計にこの基板を使用することによって生じる著しい単純化により、多くの長所を有する。
【0036】さらに、本発明による組み立て方法は、TRD(送受信装置)型の接続部品の製造、またはスイッチングに適用することができる。これら二種類の適用例、すなわちTRD型部品およびスイッチングに関する長所は、本発明による方法では平面型素子を使用することから、大量生産に適合すること、ならびに偏光に感応せず、したがってインライン回路の簡略化が可能なシリカオンシリカ部品を使用することによるものである。さらに、構造上の光電子部品の密度が高いスイッチングの適用例の場合には、ヒートシンクはきわめて重要である。
【0037】本発明の他の特徴および長所は、添付の図面を参照して非限定的な例として行う説明を読めば明らかになるであろう。
【0038】
【発明の実施の形態】図3は本発明によるハイブリッド光素子の構造を示す図であり、これにより、素子が組み立てられている様子をよりよく理解することができる。このハイブリッド光素子は、たとえばレーザまたは光増幅器型であってチップとも呼ばれる能動光電子部品2と、直線光ガイド、または3dBカップラ、またはその他の型の受動部品1とを含む。
【0039】受動部品1は、溶解シリカ基板3上にシリカ層6、7、8を連続して重ねる知られている方法により作製される。中間の層7は受動部品のコアを形成し、作製すべき光ガイドに応じて個別の形態にエッチングされる。他の二つの層6および8は、受動部品のクラッドを構成する。溶解シリカ基板により、シリカ層6、7、8内に応力が形成されるのを防止することができ、結果として、偏光に感応しない高品質な受動部品を得ることができる。以下の説明では、受動部品1とシリカ基板3とで構成されるアセンブリを、シリカオンシリカ構造と呼び、符号100で示す。
【0040】変形実施形態では、受動部品のコア7は、チッ化シリコン(Si34)層内に作製することもできる。
【0041】光電子部品2を収納するために、シリカオンシリカ構造100内、すなわち連続するシリカ層6、7、8、および場合によっては基板3内に空洞5が設けられる。この空洞5は貫通していなくても貫通していてもよい。この空洞が貫通されるか貫通されていないかは、製造コストおよび能動部品2のカプセル化の必要によって決まることが多い。光電子部品2は、その光軸9が受動部品1の光ガイド7とアライメントされるように、空洞5内に挿入されるようになっている。
【0042】光電子部品2は、たとえばエピタキシにより通常の方法で作製され、出力が1mWから200mWである、GaInAsPオンInP型レーザである。レーザ2は、空洞5内に挿入する前に、放出された熱を散逸させるための中間エレメント4上にたとえばはんだにより固定される。この中間エレメントの寸法は比較的小さく、その面積は、空洞5の面積、すなわち能動部品2の面積よりかろうじて大きいだけである。チップ2は「表が外側」になるように空洞5に挿入される。一方、中間エレメント4上ではチップは「表が内側」になるように設置され、これを「フリップチップ」マウンティングによりこの素子に取り付けられるとも言う。
【0043】また、レーザ2の光軸9を受動部品1の光ガイド7に対しアライメントすることができるようにするためには、レーザ2ならびに受動部品1に対しヒートシンク4をきわめて正確に位置決めできることが必要である。そのために、中間エレメント4上および能動部品2および受動部品1上にストッパまたは目印を作製する。これらの目印はたとえば、リソグラフィー、RIE(「ReactiveIon Etching)エッチング、あるいはその他のエッチング方法により作製される。
【0044】したがって、図3には図示しないストッパは、たとえばレーザ2の前側表面2b上に設けた目印21に対向するように位置決めされるように、ヒートシンク4の下面上に作製される。同様にストッパ41は、マーキングに対向するように位置決めされるか、あるいはシリカオンシリカ構造100の上面上に設けた図3の例に示すような凹み11内に位置決めされるように、ヒートシンク4の下面上に設けられる。
【0045】中間エレメント4はレーザ2と受動部品1を基準として位置決めされ、能動部品と受動部品は、遷移の理由から、互いに相手を基準として位置決めされる。
【0046】レーザ2の目印21に対するヒートシンクのストッパの位置決めは、1ミクロン未満ときわめて正確に行われる。
【0047】同様に、ヒートシンクのストッパ41は、構造100のマーキング11に対し1ミクロン未満のきわめて高い精度で位置決めすることができるように作製される。
【0048】図3に示す例では、レーザ2の目印21はレーザの光軸9とアライメントされ、受動部品1の目印11はシリカ光ガイド7とアライメントされ、最後に、中間エレメント4の二種類のストッパはそれぞれ、レーザの目印と受動部品の目印とアライメントされる。もちろんこれらストッパおよび目印の位置は一例にすぎない。これらのストッパおよび目印により、ヒートシンク4を基準として能動部品および受動部品を固定し、相互にアライメントすることができるので、これらのストッパおよび目印は別の方法で設置することもできる。
【0049】受動部品1の光ガイド7は、単純化のため、図3では直線で示してあるが、より複雑な形態とすることもでき、具体的にはたとえば3dBカプラとすることができる。
【0050】図4は、図3のハイブリッド光素子の略縦断面図である。同一の素子を示すために、図3と同じ符号を使用している。受動部品1はシリカ層6、7、8の積み重ねによって作製される。受動部品は、所望寸法にエッチングされ、クラッド層6および8に埋め込まれたコア7すなわち光ガイドを含む。この例では、受動部品のシリカ層内および基板3内に穿孔された空洞5が貫通している。この空洞5により、能動光電子部品2の光軸9が受動部品1の光ガイド7とアライメントされるように、能動光電子部品2を収納することができる。チップ2は、中間エレメント4の電気接続部45上に固定され、はんだ点S1によりヒートシンクの役割を果たす。
【0051】ヒートシンク4はシリコンを材料とすることが好ましい。なぜならこの材料は、GaInAsP/InPチップ2の熱膨張率と同様の熱膨張率を有し、そのため、とくに、チップ2と中間エレメント4との間に作製されるはんだ点S1において伝播することがあるせん断の発生を防ぐことができるからである。
【0052】もちろん中間エレメント4は、たとえばアルミナ(Al23)、ヒ化ガリウム(GaAs)など他の材料で作製することも可能である。しかしながらGaAsはシリコンよりも高価であり、Al23では、能動部品と受動部品の光軸のきわめて高精度な位置合わせを行うために、1ミクロン未満のきわめて高い精度でストッパを作製することはできない。
【0053】説明する例では、基板3は溶解シリカを材質とする。実施の変形形態によれば、場合によっては基板を石英製とすることができるが、この材料はシリカよりも高価である。
【0054】また、ヒートシンク4の下面上に設けたストッパ42は、レーザ2の前面2b上に設けた目印21に当たるように位置決めされるようになっている。
【0055】他のストッパ41は、シリカオンシリカ構造100の上表面上に設けたマーキング11に当たって収納されるように、ヒートシンク4の下表面上に設けられる。さらに、シリカオンシリカ構造100は、ヒートシンクの電気接続部分45に取り付けた溶接点S2により、ヒートシンク4上に固定される。
【0056】図4の例では、中間エレメント4のストッパ41、42、レーザ2の目印21、および受動部品1のマーキング11は、レーザの光軸9および受動部品の光ガイド7と共にアライメントされる。
【0057】また、本発明によるハイブリッド光デバイスを作製するのに使用するシリカオンシリカ構造100は大きな寸法を有することに留意すべきである。実際、その面積は数mm2以上であり、数十cm2に達することがある。一方、本発明で使用する「ブリッジ」すなわちヒートシンク4は、1mm2未満の小さな面積を有する。この小さな面積により、シリカオンシリカ構造100とヒートシンク4との間に作製される二つのはんだ点S2の間の距離を制限することができ、その結果、シリコンとシリカとの間に存在する熱膨張率の差により、−40℃から+85℃まで変化する可能性のある温度で行われる通信における標準的使用中に発生することがあるとくにせん断の危険性を制限することができる。したがってこのことは、前述し図2Cに対応する従来技術と比較して大きな長所である。
【0058】チップ2は、「フリップチップ」方式で中間エレメント4上に取り付けられ、光軸9の下の領域はたとえばn型など第一型のキャリアーがドープされ、光軸の上に位置する領域はたとえばp型など第二型のキャリアーがドープされる。したがって、チップとシンクとを接続するための溶接点S1は、第二型の電極、すなわち例では正電極を有する。第一型の電極、すなわち例における負電極は、たとえば、シンクの接続部45とn型キャリアーがドープされたレーザ2の領域とにはんだ付けされた導線15で構成することができる。
【0059】図5は、本発明によるハイブリッド光デバイスの実施の変形形態の略横断面図である。この場合、中間エレメント4のストッパ41、42は、能動部品2および受動部品1の光軸と一直線ではなく、これらの光軸に直角な方向に沿って作製される。ヒートシンク4のストッパ41をマーキングに当て、ヒートシンクを受動部品1とアライメントするために、シリカオンシリカ構造100の上表面内にマーキング11が彫られる。さらに、ヒートシンク4のストッパ42は、レーザ2の前側表面2bの側面隔壁22に対向して位置決めされるように設けられる。
【0060】図5にそのうちの一つが示してあるはんだ点S1により、ヒートシンク4上にレーザ2を一定の状態で保持することができる。この図では、シンクにシリカオンシリカ構造100を固定することを可能にするはんだ点は示していない。その結果、中間エレメント4が能動部品と受動部品の双方に対して固定されるので、これら二つの部品は相互に固定されアライメントされる。
【0061】図5に示す例では空洞5は貫通されていない。その結果この場合、空洞の上側に置かれた中間エレメント4は能動要素のカプセル化に寄与する。図示する矢印は、レーザ2から放出される熱量が排出される方向を示す。
【0062】前述の例は全て、1つの能動部品および1つの受動部品を含む装置に関する。もちろん、同様にして、各能動部品が空洞の内部に存在し受動部品に光学的に結合されるように、他に、複数の受動部品と、複数の空洞と、各能動部品およびシリカオンシリカ構造にそれぞれ組み合わせた複数の中間エレメントとを含む装置を作製することはきわめて実行可能なことである。
【図面の簡単な説明】
【図1A】従来技術のハイブリッド光素子の略斜視図である。
【図1B】図1Aの素子の略横断面図である。
【図1C】従来技術の3dBカップラ型受動部品の略斜視図である。
【図2A】従来技術の別のハイブリッド光素子の略横断面図である。
【図2B】別のハイブリッド光素子の略横断面図である。
【図2C】従来技術の別のハイブリッド光素子の略縦断面図である。
【図3】本発明によるハイブリッド光素子の略斜視図である。
【図4】図3の素子の略縦断面図である。
【図5】本発明によるハイブリッド光素子の実施の変形形態の横断面の略図である。
【符号の説明】
1 受動部品
2 能動光電子部品
2a 光電子部品の後面
2b レーザの前面
3 溶解シリカ基板
4 中間エレメント
5 空洞
6、7、8 シリカ基板
9 光軸
10 シリカオンシリコン構造
11 マーキング
15 導線
21、22 目印
41、42 ストッパ
45 電気接続部
51 段
100 シリカオンシリカ構造
A、B 支持点
C カプラ
S1、S2 溶接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】 能動部品(2)に光学的に結合されシリカ基板(3)上のシリカ層(6、7、8)内に作製される受動部品(1)を含み、前記層および基板がこのようにしてシリカオンシリカ構造(100)を形成するハイブリッド光デバイスの組み立て方法であって、良好な熱伝導性、および能動部品(2)の熱膨張率と類似の熱膨張率を有する中間エレメント(4)を作製すること、能動部品(2)を中間エレメント(4)上に固定すること、および能動部品(2)が空洞(5)の内部に存在し受動部品(1)に光学的に結合されるように、シリカオンシリカ構造(100)内に空洞(5)を形成し、この構造(100)上に中間エレメント(4)を固定することからなることを特徴とする方法。
【請求項2】 さらに、第一種のストッパ(41)を能動部品(2)の目印(21)に対向して位置決めし、第二種のストッパ(42)をシリカオンシリカ構造(100)のマーキング(11)に対向して位置決めするように、ストッパ(41、42)を中間エレメント(4)上に、目印(21、22)を能動部品(2)上に、マーキング(11)をシリカオンシリカ構造(100)上に作製することから成ることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】 中間エレメント(4)がシリコンで作製されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】 シリカ基板(3)上のシリカ層(6、7、8)内に作製された受動部品(1)に光学的に結合された能動部品(2)を含み、前記層および基板がシリカオンシリカ構造(100)を形成する、ハイブリッド光デバイスであって、さらに、良好な熱伝導性、および能動部品(2)の熱膨張率と類似の熱膨張率を有する中間エレメント(4)と、シリカオンシリカ構造(100)内に穿口された空洞(5)とを含み、能動部品(2)が空洞(5)の内部に存在し受動部品(1)に光学的に結合されるように、中間エレメント(4)が能動部品(2)とシリカオンシリカ構造(100)の両方に組み付けられることを特徴とするハイブリッド光デバイス。
【請求項5】 中間エレメントが、能動部品(2)上に位置する目印(21、22)および、シリカオンシリカ構造(100)上に位置するマーキング(11)に対向して位置決めすることのできるストッパ(41、42)を含むことを特徴とする請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】 中間エレメント(4)がシリコンで作製されることを特徴とする請求項4または5に記載のデバイス。
【請求項7】 中間エレメント(4)が小さい寸法を有し、その面積が能動部品(2)の面積よりかろうじて大きいことを特徴とする請求項4から6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】 中間エレメント(4)が1mm2未満の面積を有し、シリカオンシリカ構造(100)が数mm2を超える面積を有することを特徴とする請求項4から7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】 能動部品(2)が空洞内に「表が外側」になるように取り付けられることを特徴とする請求項4から7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】 空洞(5)が貫通しておらず、能動部品(2)のカプセル化に寄与するように、中間エレメント(4)がこの空洞の上側に配置されることを特徴とする請求項4から9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】 さらに、他の複数の空洞と、各能動部品が空洞の内部に存在し能動部品に光学的に結合されるように、各能動部品およびシリカオンシリカ構造にそれぞれ組み付けられた他の複数の中間エレメントとを含むことを特徴とする請求項4から10のいずれか一項に記載のデバイス。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平10−274729
【公開日】平成10年(1998)10月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−42362
【出願日】平成10年(1998)2月24日
【出願人】(391030332)アルカテル・アルストム・コンパニイ・ジエネラル・デレクトリシテ (1,149)
【氏名又は名称原語表記】ALCATEL ALSTHOM COMPAGNIE GENERALE D’ELECTRICITE