説明

ハロゲン化銀カラー写真感光材料

【課題】白地部の濃度変動がなく、かつ、高速露光してもスタチックカブリを生じないハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供する。
【解決手段】透過型支持体上にイエロー、シアン及びマゼンタの各発色感光性ハロゲン化銀乳剤層を少なくとも一層ずつ有し、かつ、下記一般式(I)で表される染料の固体微粒子分散物を含有する非感光性親水性コロイド層を少なくとも一層有し、支持体裏面の表面抵抗値が下記数式(S)及び(T)を満たす映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料。


(式中、Dは発色団を有する化合物残基を、Xは解離性水素又はこれを有する基を、yは1〜7を表す。)
数式(S):0.3≦SR2−SR1≦3.0
数式(T):9.0≦SR1≦12.7
(式中、SR1は発色現像処理前の表面抵抗値R1の対数を、SR2は発色現像処理後の表面抵抗値R2の対数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存性、および現像所における仕上がり均一性にすぐれたハロゲン化銀カラー写真感光材料、特に映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン化銀写真技術の応用である映画は、1秒間に通常24枚の割合で対象物を撮影し、得られた静止画を撮影時と同じ速度で順次投影し、動画像を再現する方法である。この方法は、100年以上に渡り改良され続けているハロゲン化銀写真技術に立脚しており、他の動画像を再現する方法に比べ圧倒的な高画質を有している。この高画質を原資とした大画面化が容易であり、大人数が同時に動画像を鑑賞するのに適している。それ故、映画館などの大画面への映画映写設備を有する大人数収容可能な劇場が多数作られている。しかしながら、最近の急速な電子技術および情報処理技術の発達は、撮影、編集、および上映に至る映画の全ての過程に、デジタル画像処理技術を基にした画質的に匹敵する代替手段を提案出来るまでに至った。これらデジタル画像処理技術に立脚する手法は、コンピュータの進歩により画像を簡便に取り扱える点と、劣化が少ないというデジタル信号の特徴に基づく再現性が良い点を特徴としている。従って、ハロゲン化銀写真技術に基づく映画に対しても、本来の高画質を維持しつつ簡便性や安定性の付与、特に保存や現像処理液の変動に対する安定性といった現像所における簡便性や安定性の付与が求められている。
【0003】
これら、保存や現像処理液の変動時に変化する性能の中で重要なものの一つとして、処理後画像の白地部の濃度変動の問題を挙げることが出来る。
白地部の濃度変動に対しては、従来からも重要な課題として取り上げられており、主に、以下の2つの観点から検討され続けてきた。
(1)不要着色成分の除去促進の観点から、ハレーションやイラジェーション防止用の染料および、増感色素の流出促進。
(2)感光性ハロゲン化銀乳剤に作用し、カブリを押さえる化合物の探索。
【0004】
拡大投影され鑑賞される映画映写用感光材料においては、鮮鋭度は重要な画質要件である。鮮鋭度を向上させる方法としては、先述したハレーションやイラジェーション防止用の染料の使用が有効である。それ故、特許文献1に記載されたイラジェーション防止を目的とした種々の水溶性染料や特許文献2〜11に記載された種々の染料固定手法によるハレーション防止法が提案されているが、何れも白地部の濃度変動の観点では不十分であった。
特に、染料固定によるハレーション防止と白地部の濃度変動の両立を目指し、親水性コロイド層中に固体分散の状態で留まり、処理で抜けやすい染料が特許文献1、2で提案されているが、白地部の濃度変動、特に長期保存後の濃度変動の観点では不十分であった。
【0005】
更に、ハロゲン化銀写真感光材料は、一般に電気絶縁性のプラスチックフィルム等の基体上に、感光性のハロゲン化銀写真乳剤層(ハロゲン化銀写真感光性層)、ハレーション防止層、保護層、中間層、下塗り層、帯電防止層等を形成して製造される。
近年、ハロゲン化銀写真感光材料の製造技術の向上は著しく、よりプリント速度が高速化している。この高速化に伴い、各製造工程において、粉落ちやユーザー使用時のプリンティングダストが新たな問題として発生している。これらに対して、帯電防止層中の硬膜剤を規定したり、帯電防止剤である金属酸化物粒子の構造を規定する、乃至は現像処理前後の表面抵抗値を規定する方法が開示されている(例えば、特許文献12〜14等参照)。
しかしながら、生産性向上の為に更なる高速露光を実施する際にスタチックを発生することがあり、新たな改良技術が必要とされてきた。
【0006】
【特許文献1】特開平2−282244号公報
【特許文献2】特開平11−95371号公報
【特許文献3】特開昭55−155350号公報
【特許文献4】特開昭55−155351号公報
【特許文献5】特開昭55−92716号公報
【特許文献6】特開昭63−197943号公報
【特許文献7】特開昭63−27838号公報
【特許文献8】特開昭64−40827号公報
【特許文献9】欧州特許第15601B1号明細書
【特許文献10】欧州特許第276566A1号明細書
【特許文献11】国際公開第88/04794号パンフレット
【特許文献12】特開平8−36239号公報
【特許文献13】特開2002−144493号公報
【特許文献14】特開平10−62905公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、現像所における仕上がり均一性、特に、保存期間にかかわらず白地の濃度の安定性に優れ、かつ、高速露光を実施してもスタチックカブリを発生しないハロゲン化銀カラー写真感光材料、特に、映画用カラーポジ感光材料として好適に用いられるハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題について鋭意検討した結果、現像所における仕上がり均一性、特に、保存期間にかかわらず白地の濃度の安定性を確保するためには、特定の染料を用い、かつ、特定のアンモニウム塩を用いることで良化することを見い出した。また、支持体を介して乳剤面と反対に位置する面に塗設することにより、高速露光搬送時のスタチックカブリ耐性がさらに改善されることを見い出し、本発明に至った。
【0009】
従って、前記課題を解決する手段は以下の通りである。即ち、
<1>透過型支持体上にイエロー発色感光性ハロゲン化銀乳剤層、シアン発色感光性ハロゲン化銀乳剤層およびマゼンタ発色感光性ハロゲン化銀乳剤層の各層を少なくとも一層ずつ有し、かつ、非感光性親水性コロイド層を少なくとも一層有するハロゲン化銀カラー写真感光材料であって、該非感光性親水性コロイド層の少なくとも一層に、下記一般式(I)で表される染料の固体微粒子分散物を含有し、支持体に対してハロゲン化銀乳剤層が設けられている面とは反対面の表面抵抗値が下記数式(S)及び(T)を満たすことを特徴とする映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(I)
D−(X)y
(一般式(I)中、Dは発色団を有する化合物残基を表し、Xは解離性水素または解離性水素を有する基を表し、yは1〜7の整数を表す。)
数式(S)
0.3≦SR2−SR1≦3.0
数式(T)
9.0≦SR1≦12.7
(数式(S)及び(T)中、SR1は発色現像処理前の表面抵抗値R1の対数を表し、SR2は発色現像処理後の表面抵抗値R2の対数を表す。)
<2>前記支持体において前記ハロゲン化銀乳剤層が設けられている面とは反対側の面上に設けられた層の少なくとも一層に、下記一般式(AS)で表される化合物を含有することを特徴とする<1>項に記載の映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中R1〜R4は、各々炭素数1〜4のアルキル基を表し、X-はハロゲン、又は水酸基を表す。)
<3>前記透過型支持体がポリエステル支持体であり、前記支持体において前記ハロゲン化銀乳剤層が設けられている面とは反対側の面上に導電性を有する帯電防止層及び保護層がこの順で設けられていることを特徴とする<2>項に記載の映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料。
<4>前記の導電性を有する帯電防止層に金属酸化物粒子を含有し、かつ該金属酸化物粒子が、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、MgO、及びこれらの複合金属酸化物、並びにこれらの金属酸化物に更に異種原子を含む金属酸化物、からなる群より選択される少なくとも一種の金属酸化物であることを特徴とする<3>項に記載の映画用ハロゲン銀カラー写真感光材料。
<5>前記の帯電防止層における金属酸化物粒子の含有量が、50mg/m2以上500mg/m2以下であることを特徴とする<4>項に記載の映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【発明の効果】
【0012】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、現像所における仕上がり均一性、特に、保存期間にかかわらず白地の濃度の安定性に優れ、かつ、高速露光を実施してもスタチックカブリを発生しないという優れた効果を奏し、特に、映画用カラーポジ感光材料として好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料に詳細に説明する。最初に、本発明に用いられる一般式(I)で表される化合物について詳細に説明する。
一般式(I)
D−(X)y
(一般式(I)中、Dは発色団を有する化合物残基を表し、Xは解離性水素原子又は解離性水素原子を有する基を表し、yは1〜7の整数を表す。ここで、yが2〜7のとき、複数のXは同一でも異なってもよい。)
【0014】
本発明で好ましく使用される一般式(I)で表される染料は、分子構造中に解離性水素等を有する点に特徴がある。Dにおける発色団を有する化合物残基は、多くの周知である色素の中から選ぶことができる。これらの化合物としては、オキソノール色素、メロシアニン色素、シアニン色素、アリーリデン色素、アゾメチン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アントラキノン色素、インドアニリン色素を挙げることができる。
【0015】
Xは、Dに直接もしくは2価の連結基を介して結合した解離性水素又は解離性水素を有する基を表す。XとDとの間の2価の連結基は、アルキレン基、アリーレン基、ヘテロ環残基、−CO−、−SOn−(n=0,1,2)、−NR−(Rは水素原子、アルキル基、アリール基を表す)、−O−、及びこれらの連結基を組み合わせた2価の基であり、更にそれらはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホンアミド基等の置換基を有していてもよい。好ましい例として−(CH2)n−(n=1,2,3)、−CH2CH(CH3)CH2−、1,2−フェニレン、5−カルボキシ−1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、6−メトキシ−1,3−フェニレン、−CONHC64−等を挙げることができる。
【0016】
Xで表される解離性水素又は解離性水素を有する基は、一般式(I)で表される染料が本発明のハロゲン化銀写真感光材料中に添加された状態では、非解離であって、一般式(I)の染料を実質的に水不溶性にする特性を有し、該感光材料が現像処理される工程では、解離して一般式(I)で表される化合物を実質的に水可溶性にする特性を有する。Xで表される解離性水素を有する基の例としては、カルボン酸基、スルホンアミド基、スルファモイル基、スルホニルカルバモイル基、アシルスルファモイル基、フェノール性水酸基などを有する基を挙げることができる。Xで表される解離性水素はオキソノール色素のエノール基の水素などを挙げることができる。
【0017】
yの好ましい範囲は1〜5、特に好ましい範囲は1〜3である。一般式(I)で表される化合物のうち好ましいものは、Xにおける解離性水素を有する基がカルボン酸基を有する基であるものであり、特にカルボキシル基で置換されたアリール基を有する化合物が好ましい。また一般式(I)で表される化合物のうち、より好ましいものは下記一般式(II)又は一般式(III)で表される化合物である。
一般式(II)
1=L1−(L2=L3)m−Q
(一般式(II)中、A1は酸性核を表し、Qはアリール基又は複素環基を表し、L1、L2、L3は各々メチン基を表し、mは0、1又は2を表す。但し、一般式(II)の化合物は分子内に水溶性基としてカルボン酸基、スルホンアミド基、スルファモイル基、スルホニルカルバモイル基、アシルスルファモイル基、フェノール性水酸基及びオキソノール色素のエノール基からなる群の中より選ばれる基を1〜7個有する。)
【0018】
一般式(III)
1=L1−(L2=L3)n−A2
(一般式(III)中、A1及びA2は酸性核を表し、L1、L2、L3は各々メチン基を表し、nは0、1、2又は3を表す。但し、一般式(III)の化合物は分子内に水溶性基としてカルボン酸基、スルホンアミド基、スルファモイル基、スルホニルカルバモイル基、アシルスルファモイル基、フェノール性水酸基及びオキソノール色素のエノール基からなる群の中より選ばれる基を1〜7個有する。)
【0019】
以下、一般式(II)及び(III)について詳細に説明する。
1及びA2で表される酸性核は、環状のケトメチレン化合物又は電子吸引性基によって挟まれたメチレン基を有する化合物から誘導されるものが好ましい。環状のケトメチレン化合物の例としては、2−ピラゾリン−5−オン、ロダニン、ヒダントイン、チオヒダントイン、2,4−オキサゾリジンジオン、イソオキサゾロン、バルビツール酸、チオバルビツール酸、インダンジオン、ジオキソピラゾロピリジン、ヒドロキシピリドン、ピラゾリジンジオン、2,5−ジヒドロフランを挙げることができる。これらは置換基を有していてもよい。
【0020】
電子吸引性基によって挟まれたメチレン基を有する化合物は、Z1CH22と表すことができる。ここにZ1及びZ2はそれぞれ−CN、−SO211、−COR11、−COOR12、−CONHR12、−SO2NHR12又は−C〔=C(CN)2〕R11を表す。R11は、アルキル基、アリール基、又は複素環基を表し、R12は水素原子又はR11で表される基を表し、そしてこれらはそれぞれ置換基を有していてもよい。
【0021】
Qで表されるアリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基を挙げることができる。これらはそれぞれ置換基を有していてもよい。Qで表される複素環基の例としては、ピロール、インドール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、インドリジン、キノリン、カルバゾール、フェノチアジン、フェノキサジン、インドリン、チアゾール、ピリジン、ピリダジン、チアジアジン、ピラン、チオピラン、オキソジアゾール、ベンゾキノリン、チアジアゾール、ピロロチアゾール、ピロロピリダジン、テトラゾール、オキサゾール、クマリン、及びクマロンを挙げることができる。これらはそれぞれ置換基を有していてもよい。
【0022】
1、L2及びL3で表されるメチン基は、置換基を有していてもよく、その置換基同士が連結して5又は6員環(例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン)を形成していてもよい。
【0023】
上述した各基が有していてもよい置換基は、一般式(I)〜(III)の化合物をpH5〜pH7の水に実質的に溶解させるような置換基でなければ特に制限はない。例えば、以下の置換基を挙げることができる。
【0024】
カルボン酸基、炭素数1〜10のスルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド、n−オクタンスルホンアミド)、炭素数0〜10の無置換又はアルキルもしくはアリール置換スルファモイル基(例えば、無置換のスルファモイル、メチルスルファモイル、フェニルスルファモイル、ナフチルスルファモイル、ブチルスルファモイル)、炭素数2〜10のスルホニルカルバモイル基(例えば、メタンスルホニルカルバモイル、プロパンスルホニルカルバモイル、ベンゼンスルホニルカルバモイル)、炭素数1〜l0のアシルスルファモイル基(例えば、アセチルスルファモイル、プロピオニルスルファモイル、ピバロイルスルファモイル、ベンゾイルスルファモイル)、
【0025】
炭素数1〜8の鎖状又は環状のアルキル基(例えば、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、ヘキシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、2−ヒドロキシエチル、4−カルボキシブチル、2−メトキシエチル、ベンジル、フェネチル、4−カルボキシベンジル、2−ジエチルアミノエチル)、炭素数2〜8のアルケニル基(例えば、ビニル、アリル)、炭素数1〜8のアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ)、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br)、炭素数0〜10のアミノ基(例えば、無置換のアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、カルボキシエチルアミノ)、炭素数2〜10のエステル基(例えば、メトキシカルボニル)、炭素数1〜10のアミド基(例えば、アセチルアミノ、ベンズアミド)、炭素数1〜10のカルバモイル基(例えば、無置換のカルバモイル、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル)、炭素数6〜10のアリール基(例えば、フェニル、ナフチル、ヒドロキシフェニル、4−カルボキシフェニル、3−カルボキシフェニル、3,5−ジカルボキシフェニル、4−メタンスルホンアミドフェニル、4−ブタンスルホンアミドフェニル)、炭素数6〜10のアリーロキシ基(例えば、フェノキシ、4−カルボキシフェノキシ、3−メチルフェノキシ、ナフトキシ)、
【0026】
炭素数1〜8のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、オクチルチオ)、炭素数6〜10のアリールチオ基(例えば、フェニルチオ、ナフチルチオ)、炭素数1〜10のアシル基(例えば、アセチル、ベンゾイル、プロパノイル)、炭素数1〜10のスルホニル基(例えば、メタンスルホニル、ベンゼンスルホニル)、炭素数1〜10のウレイド基(例えば、ウレイド、メチルウレイド)、炭素数2〜10のウレタン基(例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ)、シアノ基、水酸基、ニトロ基、複素環基(例えば、5−カルボキシベンゾオキサゾール環)、ピリジン環、スルホラン環、ピロール環、ピロリジン環、モルホリン環、ピペラジン環、ピリミジン環、フラン環)。
【0027】
また一般式(III)で表される化合物のうちより好ましいものは、下記一般式(IV)で表される化合物である。この一般式(IV)で表される化合物は解離性水素としてエノール基の水素を有している。
【0028】
【化2】

【0029】
一般式(IV)中、R1は水素原子、アルキル基、アリール基又は複素環基を表し、R2は水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基、−COR4又はSO24を表し、R3は水素原子、シアノ基、水酸基、カルボキシル基、アルキル基、アリール基、−CO24、−OR4、−NR56、−CONR56、−NR5COR4、−NR5SO24、又はNR5CONR56(ここで、R4はアルキル基、又はアリール基を表し、R5、R6は各々水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。)を表す。L1、L2、L3は各々メチン基を表す。nは1又は2を表す。
【0030】
一般式(IV)において、R1のアルキル基としては炭素数1〜4のアルキル基、2−シアノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、カルボキシベンジル基が挙げられ、アリール基としてはフェニル基、2−メチルフェニル基、2−カルボキシフェニル基、3−カルボキシフェニル基、4−カルボキシフェニル基、3,6−ジカルボキシフェニル基、2−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、2−クロロ−4−カルボキシフェニル基、4−メチルスルファモイルフェニル基が挙げられ、複素環基としては、5−カルボキシベンゾオキサゾール−2−イル基が挙げられる。
【0031】
2のアルキル基としては炭素数1〜4のアルキル基、カルボキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−メトキシエチル基が挙げられ、アリール基としては2−カルボキシフェニル基、3−カルボキシフェニル基、4−カルボキシフェニル基、3,6−ジカルボキシフェニル基が挙げられ、複素環基としてはピリジル基が挙げられ、−COR4としてはアセチル基が挙げられ、−SO24としてはメタンスルホニル基が挙げられる。
【0032】
3、R4、R5、R6のアルキル基としては炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。R3、R4、R5、R6のアリール基としてはフェニル基、メチルフェニル基が挙げられる。本発明においては、R1がカルボキシル基置換のフェニル基(例えば、2−カルボキシフェニル、3−カルボキシフェニル、4−カルボキシフェニル、3,6−ジカルボキシフェニル)であることが好ましい。
【0033】
以下に、本発明に好ましく用いられる一般式(I)〜(IV)のいずれかで表される化合物の具体例を記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
【化3】

【0035】
【化4】

【0036】
【化5】

【0037】
【化6】

【0038】
【化7】

【0039】
【化8】

【0040】
【化9】

【0041】
【化10】

【0042】
【化11】

【0043】
【化12】

【0044】
【化13】

【0045】
【化14】

【0046】
【化15】

【0047】
【化16】

【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【0052】
【表5】

【0053】
【表6】

【0054】
【表7】

【0055】
本発明に用いられる染料は、国際特許WO88/04794号、欧州公開特許第274,723A1号、同第276,566号、同第299,435号、特開昭52−92716号、同55−155350号、同55−155351号、同61−205934号、同48−68623号、米国特許第2,527,583号、同第3,486,897号、同第3,746,539号、同第3,933,798号、同第4,130,429号、同第4,040,841号、特開平3−282244号、同3−7931号、同3−167546号等の明細書あるいは公報に記載されている方法又はその方法に準じて合成できる。
【0056】
本発明で用いられる染料の固体微粒子分散物は、公知の方法で調製できる。製造法の詳細は、機能性顔料応用技術(シーエムシー刊、1991年)などに記載されている。メディア分散は一般的な方法の一つである。この方法では染料粉末又はそのウエットケーキと呼ばれる水や有機溶媒で湿った状態の染料を、水性スラリーにし、公知の粉砕機(例えばボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、縦型サンドミル、ローラーミル、ピンミル、コボールミル、キャディーミル、横型サンドミル、アトライター等)を用いて、分散メディア(スチールボール、セラミックボール、ガラスビーズ、アルミナビーズ、ジルコニアシリケートビーズ、ジルコニアビーズ、オタワサンドなど)の存在下で機械力によって粉砕する。これらのうち、ビーズの平均直径は好ましくは2mm〜0.3mm、より好ましくは1mm〜0.3mm、更に好ましくは0.5mm〜0.3mmのものが用いられる。これらの他にジェットミル、ロールミル、ホモジナイザー、コロイドミルやデゾルバーによって粉砕する方法や、超音波分散機による粉砕方法も用いることができる。
【0057】
また米国特許第2,870,012号明細書に開示されているように、均一溶液に溶解した後、貧溶媒を加えて固体微粒子を析出させたり、例えば特開平3−182743号公報に開示されているように、アルカリ溶液に溶解した後pHを下げることで、固体微粒子を析出させる方法も用いることができる。
【0058】
これらの固体微粒子分散物を調製するときは、分散助剤を存在させるのが好ましい。好ましく用いられる分散助剤の詳細(具体的な説明、好ましい限定、例示化合物等)は特開2003−172984号公報33頁63欄25行目〜34頁65欄25行目(段落番号0125〜0131)に記載されており、本明細書の一部として取り込まれる。
【0059】
本発明において、好ましく用いられる染料に対する上記分散助剤の使用量としては、質量比で好ましくは0.05〜0.5、より好ましくは0.1〜0.3である。分散助剤の使用量がこの範囲であると塗布面の均一性良化の点で好ましい。また固体微粒子分散物の調製時に分散物の安定化や低粘度化の目的でポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、多糖類、ゼラチンなどの親水性コロイドを共存させることもできる。本発明においては後述する一般式(VI)で表される化合物を共存させることが特に好ましい。
【0060】
本発明で好ましく用いられる染料の固体微粒子分散物は、好ましくは、特開平5−216166号公報に開示されているような方法で、分散前、分散中又は分散後に加熱処理されることが、本発明の効果を得るのに好ましい。本発明において、染料分散物に好ましく適用される熱処理としては、染料粉体を溶媒中で加熱するなど固体状に微分散する工程の前に行う方法と、染料を分散剤の存在下で水あるいは他の溶媒中に分散する際冷却せず、あるいは温度をかけて分散を行う方法、及び分散後の液や塗布液を加熱処理する方法とがあるが、分散後に行うのが特に好ましい。
【0061】
一般式(I)の染料を含有する固体微粒子分散物が、特定の層に複数種用いられているときは少なくとも1種が熱処理されていればよい。
【0062】
分散時及び分散後熱処理中のpHは分散物が安定に存在する条件であればよく、好ましくはpH2.0以上8.0以下、より好ましくは2.0以上6.5以下、更に好ましくは2.5以上4.5未満である。熱処理中のpHがこの範囲であると塗布物の膜強度改良の点で好ましい。分散物のpH調整は、例えば硫酸、塩酸、酢酸、クエン酸、リン酸、シュウ酸、炭酸、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムやそれらからなる緩衝液を用いることができる。
【0063】
熱処理をする温度としては熱処理をする工程、粉体ないし粒子の大きさ形状、熱処理条件、溶媒などによって異なるので一概には云えず40℃以上で染料が分解しない範囲であれば何度でもよいが、粉体で熱処理する場合には40℃〜200℃が適当であり、好ましくは50℃〜150℃が適当であり、溶媒中で熱処理する場合には40℃〜150℃、好ましくは50℃〜150℃、分散中に熱処理する場合には40℃〜90℃が適当であり、好ましくは50℃〜90℃、分散後の分散液を熱処理する場合には40℃〜100℃が適当であり、好ましくは50℃〜95℃である。熱処理の温度が40℃より低いと効果が乏しく好ましくない。
【0064】
熱処理が溶媒中で行われる場合、その溶媒の種類としては、染料を実質的に溶解しないものであれば制限はなく、例えば水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアミルコール、オクタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、エチルセロソルブ)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル)、アルキルカルボン酸類(例えば、酢酸、プロピオン酸)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル)、エーテル類(例えば、ジメトキシエタン、ジオキサン、テトラヒドロフラン)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド)等を挙げることができる。
【0065】
また、これらの溶媒単独では染料が溶解してしまう場合でも、水や他の溶媒と混合したり、pHを調節することで染料が実質溶解しなければ使用することができる。
【0066】
熱処理する時間についても一概には云えず、温度が低ければ長時間を要し、高ければ短時間で済む。製造工程上影響のない範囲内で熱処理が実現できるように任意に設定することができるが、通常1時間〜4日であることが好ましい。
【0067】
写真感光材料に染料の微粒子を含有してなる層を設けるには、このようにして得た微粒子を適当なバインダー中に分散させることによってほぼ均一な粒子の固体分散物として調製した後、これを所望の支持体上に塗設することによって設けることが出来る。上記バインダーは感光性乳剤層や、非感光性層に用いることができる親水性のコロイドであれば特に制限はないが、通常ゼラチン又はポリビニルアルコールやポリアクリルアミド等の合成ポリマーが用いられる。
【0068】
固体分散物中の微粒子は、平均粒子径0.005μm〜10μm、好ましくは0.01μm〜1μm、より好ましくは0.01μm〜0.7μmであることが好ましい。この範囲であると微粒子の非凝集性、光の吸収効率の点で好ましい。本発明で好ましく用いられる一般式(I)で表される染料の固体微粒子分散物は、単独又は複数の固体微粒子分散物と併用して使用することができる。
【0069】
さらに、本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料において、固体微粒子を添加する親水性コロイド層はただ一層でもよいし、複数層であってもよい。例えば、単独の固体微粒子分散物をただ一層に添加する場合、複数層に分割して添加する場合、複数の固体微粒子分散物をただ一層に同時に添加する場合、それぞれ別層に添加する場合などが例として挙げられるが、上記に限られるものではない。
【0070】
さらに、固体微粒子分散物は、アンチハレーション層として必要な量を組み込まれたうえ、イラジエーション防止用に感光性ハロゲン化銀乳剤層に必要量を添加されることもできる。本発明で使用する一般式(I)で表される染料の固体微粒子分散物を含有する親水性コロイド層は、支持体とこれに最も近いハロゲン化銀乳剤層の間に設けられる。ここで、支持体とこれに最も近いハロゲン化銀乳剤層の間には、固体微粒子分散物を含有する親水性コロイド層以外の他の非感光性親水性コロイド層を有していてもよい。
【0071】
本発明で好ましく用いられる染料の固体微粒子分散物は、ハロゲン化銀写真感光材料において、染料の色相に応じて非感光性親水性コロイド層に含有されるが、該非感光性層が複数層設けられている態様の感光材料においては、これらの複数層に含有させることもできる。本発明の好ましく用いられる固体微粒子分散物中の染料濃度は0.1〜50質量%が適当であり、好ましくは2〜30質量%である。染料濃度がこの範囲であると分散物の粘度の点で好ましい。また、固体微粒子染料の好ましい塗布量は、約0.05〜0.5g/m2である。
【0072】
本発明においては、前記固体微粒子分散物とともに下記一般式(VI)で表される化合物を同一写真構成層に含有することが好ましい。
一般式(VI)
P−((S)m−R)n
(一般式(VI)中、Rは水素原子、疎水性基又は疎水性重合体を表し、Pは下記構層単位A、B及びCのうちの少なくとも1つを含み、Pの重合度が10以上3500以下の重合体を表す。nは1又は2を表す。mは1又は0を表す。)
【0073】
【化17】

【0074】
ここで、R1は−H又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R2は−H又は炭素数1〜10のアルキル基を表し、R3は−H又は−CH3を表し、R4はH、−CH3、−CH2COOH(アンモニウム基又は金属塩を含む)又は−CNを表し、Xは−H、−COOH(アンモニウム基又は金属塩を含む)又は−CONH2を表し、Yは−COOH(アンモニウム基又は金属塩を含む)、−SO3H(アンモニウム基又は金属塩を含む)、−OSO3H(アンモニウム基又は金属塩を含む)、−CH2SO3H(アンモニウム基又は金属塩を含む)、−CONHC(CH3)2CH2SO3H(アンモニウム基又は金属塩を含む)又は−CONHCH2CH2CH2+(CH3)3・Cl-を表す。
【0075】
本発明で好ましく使用される一般式(VI)で表される化合物の詳細(具体的な説明、好ましい限定、例示化合物、使用量、合成法等)は特開平11−95371号公報の24頁46欄27行目〜33頁63欄2行目(段落番号0090〜0128)に記載されており、本明細書の一部として取り込まれる。
【0076】
次に、本発明に用いられる一般式(AS)で表される化合物について詳細に説明する。
【0077】
【化18】

【0078】
式中R1〜R4は、各々炭素数1〜4のアルキル基を表し、X-はハロゲン、又は水酸基を表す。これらR1〜R4は、同一でも異なっていても良い。炭素数は1又は2が好ましく、更に好ましくは2である。Xはハロゲン又は水酸基であれば特に限定はないが、好ましくはハロゲンで、更に好ましくは塩素イオンである。
【0079】
本発明に用いられる一般式(AS)で表される化合物の好ましい例を具体的に以下に例示するが、本発明は、これらに具体的に限定されるものではない。
【0080】
(AS-1) (CH3)4+・Cl-
(AS-2) (CH3)4+・Br-
(AS-3) (CH3)4+・OH-
(AS-4) (C25)4+・Cl-
(AS-5) (C25)4+・Br-
(AS-6) (C25)4+・OH-
(AS-7) (C37)4+・Cl-
(AS-8) (C37)4+・Br-
(AS-9) (C37)4+・OH-
(AS-10) (C49)4+・Cl-
(AS-11) (C49)4+・Br-
(AS-12) (C49)4+・OH-
【0081】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料において、一般式(AS)で表される化合物の1m2当たりの塗設量は、好ましくは1mg以上50mg以下、より好ましくは3mg以上30mg以下、更に好ましくは5mg以上10mg以下である。塗設の方法に関して特に限定はなく、乳剤層塗布の前後どちらでも構わない。また、支持体を延伸して作製した後、乳剤塗設層の反対側に帯電防止層を塗設する場合単層でも多層でもよく、多層の場合は、一般式(AS)で表される化合物は、どの層に添加しても構わない。
また、本発明における一般式(AS)の添加とは、一般式(AS)で示される塩において添加されることを意味しており、カチオンとアニオンが別々の塩を形成して添加され、最終塗布物として一般式(AS)の形で存在する場合は当てはまらない。
【0082】
本発明の感光材料における帯電防止層側の表面電気抵抗値は高すぎても低すぎても不都合が生じる。好ましい範囲は、現像処理前には23℃65%RH雰囲気下で5×109Ω/□以上5×1012Ω/□以下である。現像処理前にはスタチックマーク発生を防止する観点から上記範囲にする必要がある。更に現像処理後には映写機等の搬送トラブルを防止する観点から、23℃65%RH雰囲気下で6.3×109Ω/□以上5×1015Ω/□以下にすることが好ましい。
【0083】
表面電気抵抗値の測定に関しては、直流定電圧電源と電流計を用いることができる。測定の原理はオームの法則E=RI(電圧E、電流I、抵抗R)の関係を利用する。感光材料の帯電防止層上の決められた面積の箇所に一定電圧Eを印加し、その時に流れる電流Iを回路内の電流計により測定することで、規格化された面積あたりの電気抵抗値R(単位:Ω/□)を算出することができる。更に抵抗値Rに対して対数をとり、以下のようにSR値を定義した。発色処理前の乳剤塗設面と反対側の表面抵抗値R1の対数をSR1とし、発色処理後の表面抵抗値R2の対数をSR2とした。
SR1(発色処理前)≡Log R1(発色処理前)
SR2(発色処理後)≡Log R2(発色処理後)
本発明の感光材料において、乳剤塗設面と反対側の表面電気抵抗値は下記数式(S)及び(T)を満たす。
数式(S):0.3≦SR2−SR1≦3.0
数式(T):9.0≦SR1≦12.7
SR1の範囲は9.0以上12.7以下であり、好ましくは9.0以上12.0以下、更に好ましくは9.5以上11.0以下である。SR2の好ましい範囲は9.3以上15.7以下であり、より好ましくは9.3以上15.0以下、更に好ましくは9.3以上14.5以下である。
【0084】
具体的な装置は、例えば、タケダ理研工業社製の定電圧電源TR−300Cと電流計TR−8651およびサンプルチャンバーTR−42の組み合わせである(いずれも商品名)。抵抗の標準としては、STANDARDRESISTOR TR−45(商品名)を用いる。
【0085】
次に、静電気障害を防止する考え方について述べる。感光材料を映写機等において搬送させると、前述のように、静電気が発生し、感光材料が帯電することがある。この帯電圧の減衰は、次式で表されることが知られている。
Vt=Vo・exp(−t/τ)
Vo:最初の帯電圧
Vt:時間tにおける電圧
τ:時定数
上記式中のτは、静電容量C、漏洩抵抗(=電気抵抗)Rを用いて
τ=CR
で表すことができる。
【0086】
時定数τが小さいことは大量の電荷が発生してもそれが瞬時に漏洩して帯電量としては大きくならないことを意味する。このため、現像処理前の感光材料にスタチックマークの発生を防止する目的では電気抵抗Rが小さい方が好ましい。現像処理前の感光材料が取り扱われる場所の多くは、温湿度が管理されているので、代表的な条件下として23℃65%RHにおける電気抵抗で性質を表すことができる。
【0087】
しかし、電気抵抗値は小さければ小さいほど好ましいものではない。感光材料が静電気的にアースのとられていない状態にある場合にはかえって静電気障害を引き起こしやすくなる。例えば、現像処理後の感光材料を水平プラッター型映写機等で搬送する際には、水平プラッター中央部のローラーとの摩擦により発生した静電気による電荷を打ち消すために、反対の符号の電荷が感光材料の他の部分から供給されることになる。時定数が小さいとこの供給は瞬時に行なわれ、電荷の供給元は片方の符号の電荷を供与するために、一時的に電気的に片寄った状態となる。感光材料がアースされていない場合は電気的な片寄りは解消されない上に、感光材料は次々と搬送されていくのでローラーとの摩擦により静電気は発生し続けることになる。こうして現像処理後の感光材料での静電気障害を引き起こす。
【0088】
これを防止するには感光材料の電気抵抗をある程度大きくして時定数を大きくすることで、ローラーとの摩擦による静電気の打ち消しに要する時間を遅らせて、電気的な片寄りの程度を軽減させるのがよい。
【0089】
よって、SR1はSR2より大きいことが好ましく、SR1−SR2の値の好ましい範囲は、0.3以上3.0以下であり、より好ましくは0.5以上1.5以下である。
【0090】
以下、支持体について説明する。
本発明においては、透過型支持体が用いられ、プラスチックフィルム支持体が好ましい。前記プラスチックフィルム支持体としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ジナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン等のフィルムを挙げることができる。これらのプラスチックフィルム支持体中のなかでも、ポリエステル支持体が好ましく、具体的にはポリエチレンテレフタレートが好ましく、特に2軸延伸、熱固定されたポリエチレンテレフタレートフィルムが、安定性、強靱さなどの点からも特に好ましい。
【0091】
支持体の厚さに特に制限はないが、15〜500μmの範囲が一般的で、特に40〜200μmの範囲のものが取扱易さ、汎用性などの点から有利であり好ましい。また、支持体は、透明でもよいし、アントラキノン染料、染料化ケイ素、二酸化ケイ素、アルミナゾル、クロム塩、ジルコニウム塩、酸化チタンなどを含有していても良い。
【0092】
上記プラスチックフィルム支持体の表面に、感光層を強固に接着させるために、一般に下記の表面処理が行われる。帯電防止層(バック層)が形成される側の表面も、一般に同様な表面処理が行われる。(1)薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理、オゾン酸処理、などの表面活性処理を施した後、直接写真乳剤(感光層形成用塗布液)を塗布して接着力を得る方法と、(2)一旦これらの表面処理した後、下塗層を設けこの上に写真乳剤層を塗布する方法との二法がある。
【0093】
これらのうち(2)の方法がより有効であり広く行われている。これらの表面処理はいずれも、本来は疎水性であった支持体表面に、多少とも極性基を形成させること、表面の接着に対してマイナスの要因になる薄層を除去すること、表面の架橋密度を増加させ接着力を増加させるものと思われ、その結果として下塗層用溶液中に含有される成分の極性基との親和力が増加することや、接着表面の堅牢度が増加すること等により、下塗層と支持体表面との接着性が向上すると考えられる。
【0094】
また、下塗層の塗布の方法としては、第一層として支持体によく接着する層を設け、その上に第二層としてゼラチン層を塗布形成する所謂、重層法と、疎水性基と親水性基との両方を含有する樹脂層を一層のみ塗布する単層法がある。下塗層の形成方法として、例えば、高分子物質の第一下塗層とゼラチンの第二下塗層からなる二層の下塗層を水系で形成する方法を挙げることができる。第一下塗層の高分子物質としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などの中から選ばれた単量体を出発原料とする共重合体を初めとして、ポリエチレンイミン、エポキシ樹脂グラフト化ゼラチン、ニトロセルロースなどを挙げることができる。第一下塗層とゼラチンの第二下塗層の形成には、一般にジクロロトリアジン誘導体、エポキシ化合物、ビニルスルホン化合物などの硬化剤が併用される。
【0095】
第一下塗層には、膨潤剤として、所望により、例えばフェノール、レゾルシン等を添加してもよく、その添加量は第一下塗層用塗布液1リットルあたり1〜10gである。第一下塗層には、親水性ポリマーを使用しても良く、例えばゼラチンの如き天然ポリマー、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、アクリル酸−アクリルアミド共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、などの合成ポリマーを挙げることができる。さらにブロッキング防止剤としてマット剤(二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ポリメチルアクリレート、ポリスチレン)や、メチルセルロース、ポリビニルアルコール等を用いることも可能である。
【0096】
第一下塗層用塗布液は、一般によく知られた塗布方法、例えば、ディップコート法、エアナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、あるいは、米国特許第2681294号明細書に記載のポッパーを使用するエクストルージョンコート法等により塗布することができる。下塗層上にさらに第二下塗層を設ける場合は、必要に応じて、米国特許第2761791号、同3508947号、同2941898号および同3526528号明細書、尾崎等著「コーティング工学」253頁(1973年、朝倉書店発行)などに記載された方法により二層以上の層を同時に塗布することが出来る。
【0097】
第一下塗層および第一下塗層上に設けられる第二下塗層の塗布量としては、固形分として、ポリエステルフィルム支持体の一平方メートルあたり0.01〜10gが好ましく、特に0.2〜3gであることが好ましい。本発明においては、第一下塗層上に、第二下塗層としてゼラチンを主成分とする親水性コロイド層が設けられる。
【0098】
第二下塗層に使用されるゼラチン以外の親水性ポリマーの例としては、フタル化ゼラチン、マレイン化ゼラチンなどのアシル化ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、アクリル酸、メタクリル酸もしくはアミドなどをゼラチンにグラフトさせたグラフト化ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシアルキルアクリレート、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、カゼイン、アガロース、アルブミン、アルギン酸ソーダ、ポリサッカライド、寒天、でんぷん、グラフトでんぷん、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミンアシル化合物、及びアクリル酸、メタクリル酸アクリルアミド、N−置換アクリルアミド及びN−置換メタクリルアミドなどの単独もしくは共重合体、あるいはそれらの部分加水分解物など合成もしくは天然の親水性高分子化合物を挙げることができる。これらのものは、単独もしくは混合して使用することができる。上記の如き親水性ポリマーに、必要に応じて、帯電防止剤、架橋剤、マット剤、ブロッキング防止剤等を加えることができる。
【0099】
帯電防止剤としては、導電性金属酸化物粒子が好ましく、更に、微粒子を含有することがユーザー使用時におけるプリンティングダスト低減と搬送性向上、および該微粒子の脱落防止の点から好ましい。更に、一般的には結合剤を含んでなり、必要に応じて、界面活性剤、滑り剤等の他の成分を含んでいてもよい。
【0100】
前記導電性金属酸化物粒子としては、透明性や膜強度、および帯電防止性の観点から、針状粒子の金属酸化物であることが好ましく、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、MgO、及びこれらの複合金属酸化物、並びにこれらの金属酸化物に更に異種原子を含む金属酸化物からなる群より選択される少なくとも一種の金属酸化物が好ましい。中でも、SnO2、ZnO、In22、TiO2が好ましく、SnO2が更に好ましい。
【0101】
前記異種原子を少量含む金属酸化物としては、例えば、ZnOに対してAl若しくはInを、TiO2に対してNb若しくはTaを、In23に対してSnを、SnO2に対してSb、Nb又はハロゲン元素を、それぞれ少量ドープしてなるものが挙げられる。
ここで、金属酸化物に対してドープする異種原子のドープ量としては、0.01〜30モル%が好ましく、0.1〜10モル%がより好ましい。前記異種元素のドープ量が、0.01モル%未満であると、酸化物又は複合酸化物に十分な導電性を付与することができないことがあり、30モル%を超えると、金属酸化物の粒子自体の黒化度が増し、帯電防止層が黒ずむ結果、ハロゲン化銀写真感光材料の用途に適さなくなることがある。
【0102】
また、結晶構造中に酸素欠陥を含むものも好ましい。前記異種原子を少量含む金属酸化物の中でも、アンチモンがドープされたSnO2粒子が好ましく、特にアンチモンが0.2〜2.0モル%ドープされたSnO2粒子が好ましい。
【0103】
前記導電性金属酸化物粒子のサイズとしては、その短軸に対する長軸の比(長軸/短軸比)が3〜50のものが好ましく、10〜50のものが特に好ましい。
また、導電性金属酸化物粒子の前記短軸の長さとしては、0.001〜0.1μmが好ましく、0.01〜0.02μmが特に好ましい。前記長軸の長さとしては、0.1〜5.0μmが好ましく、0.1〜2.0μmが特に好ましい。
【0104】
本発明においては、特に、前記サイズ(長軸/短軸比)及び短軸、長軸の長さよりなるアンチモンドープSnO2等の金属酸化物粒子を用いることにより、良好な導電性を示し帯電防止性能に優れ、しかもヘイズ率が低く透明性に優れた帯電防止層を形成することができる。
【0105】
本発明において、前記短軸、長軸からなる針状の金属酸化物粒子を用いることによって、良好な導電性を示し帯電防止性能に優れ、しかもヘイズ値が低く透明性に優れた帯電防止層を形成し得る理由について推察する。
前記針状の金属酸化物粒子は、帯電防止層内では、長軸方向が帯電防止層の表面に平行に長く伸びているが、層の厚さ方向には短軸の径の長さ分だけ占めているに過ぎない。このような針状の金属酸化物粒子は、上記のように長軸方向に長いため、通常の球状の粒子に比べて互いに接触し易く、少ない量でも高い導電性が得られる。従って、透明性を損なうことなく、表面電気抵抗を低下させることができると考えられる。
【0106】
また、前記針状の金属酸化物粒子では、短軸の径は、通常帯電防止層の厚さより小さいか、ほぼ同じであり、表面に突出することは少なく、仮に突出してもその突出部分は僅かなため、帯電防止層上に設けられる保護層によりほぼ完全に覆われることになる。従って、製造工程中の支持材の搬送や、ハロゲン化銀写真感光材料として取扱う際の撮影、現像時の搬送中に、層から突出する金属酸化物粒子が脱離して生ずる白粉汚れを防止することができる。また更に、ハロゲン化銀写真感光材料とした後、現像処理前後における表面電気抵抗値の変化が、球状の粒子の場合比較的大きいのに比べて、前記針状の金属酸化物を用いた場合は極めて小さく、特に現像処理後の搬送性を格段に向上させることができる。これは、球状の粒子の場合には、現像処理による膜の膨潤、収縮により配列状態が変化し易く、針状の粒子に比べて相互間の接触部分が減少するためと推察される。
【0107】
また、前記針状の金属酸化物を用いることにより、帯電防止層の膜強度を高めることができ、既述のような、製造工程や取扱いの際の搬送、現像、カメラ等からの排出における帯電防止剤の脱離、即ち、塗工素材の白色汚れをも防止することができる。
【0108】
帯電防止層中における金属酸化物粒子の含有量としては、帯電防止性、透明性の観点から、2mg/m2〜2000mg/m2が好ましく、50mg/m2〜1000mg/m2がより好ましく、50mg/m2〜500mg/m2が特に好ましい。前記含有量が、2mg/m2未満であると、十分な帯電防止性能が得られないことがあり、2000mg/m2を超えると、ヘイズ値が高くなり、透明性が著しく低下することがある。また、前記針状の金属酸化物粒子のほか、帯電防止剤として、後述のハロゲン化銀写真感光性層に使用可能な公知の帯電防止剤を併用してもよい。
【0109】
本発明の感光材料における帯電防止層に使用する他の有用な電気伝導性材料には、米国特許第3,245,833号、同第3,428,451号および同第5,075,171号明細書に記載される、沃化第一銅のような半導体金属塩、米国特許第4,845,369号および同第5,116,666号明細書に記載される、例えば、非導電性チタン酸カリウムウィスカー上に塗付されたアンチモンをドープした酸化錫を含む繊維状の導電性粉体、米国特許第4,070,189号明細書の架橋されたビニルベンジル第4級アンモニウムポリマーのような導電性ポリマー、米国特許第4,237,194号明細書の導電性ポリアニリン、および米国特許第4,987,042号、同第5,035,926号、同第5,354,613号、同第5,370,981号、同第5,372,924号、同第5,543,944号および同第5,766,515号明細書の導電性ポリチオフェン、米国特許第4,203,769号、同第5,006,451号、同第5,221,598号および同第5,284,714号明細書に記載される、バナジウムペントキシドまたは銀をドープしたバナジウムペントキシドのコロイドゲル、が含まれる。
【0110】
次に本発明の映画映写用ハロゲン化銀カラー写真感光材料の写真層等について記載する。
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、透過型支持体を有するハロゲン化銀カラー写真感光材料であり、該支持体上に、実質的に感色性の異なる複数のハロゲン化銀乳剤層から成る感光性層を少なくとも1つ有するハロゲン化銀カラー写真感光材料である。本発明はカラーポジフィルム、映画用ポジフィルムなど一般用、映画用カラー写真感光材料に適用することができる。特に映画用カラーポジ感光材料に適用するのが好ましい。
【0111】
本発明において、感光性ハロゲン化銀乳剤層及び非感光性親水性コロイド層の層数及び層順に特に制限はない。イエロー、シアン、マゼンタの各発色性感光性ハロゲン化銀乳剤層は、一つの感光性ハロゲン化銀乳剤層からなっていても、感色性が同じで感度の異なる複数のハロゲン化銀乳剤層からなっていてもよい。
各発色性感光性ハロゲン化銀乳剤層の発色性と感色性との間にも制限はなく、例えば、ある発色性感光性ハロゲン化銀乳剤層が赤外域に感色性を有していてもかまわない。
【0112】
典型的な層順の例としては、支持体から順に染料の固体微粒子分散物および/または黒色コロイド銀を含有する非感光性親水性コロイド層、イエロー発色性感光性ハロゲン化銀乳剤層、非感光性親水性コロイド層(混色防止層)、シアン発色性感光性ハロゲン化銀乳剤層、非感光性親水性コロイド層(混色防止層)、マゼンタ発色性感光性ハロゲン化銀乳剤層、非感光性親水性コロイド層(保護層)である。しかし、目的に応じて、上記設置順を変更しても、感光性ハロゲン化銀乳剤層又は非感光性親水性コロイド層の数を増減させてもかまわない。
【0113】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料中の鉄分(Fe)については、主にゼラチン、乳剤粒子中に故意にドープしたもの、染料などによって持ち込まれるが、本発明の感光材料におけるFe含有量としては、Fe量が2×10-5mol/m2以下(好ましくは1×10-8〜2×10-5mol/m2)である事が必要であり、8×10-6mol/m2以下(好ましくは1×10-8から8×10-6mol/m2)が好ましく、3×10-6mol/m2以下(好ましくは1×10-8〜3×10-6mol/m2)が最も好ましい。
【0114】
本発明において、親水性コロイドとしてはゼラチンが好ましく用いられる。必要に応じて他の親水性コロイドを任意の比率でゼラチンに代えて用いることもできる。これらの例としては、ゼラチン誘導体、ゼラチンと他のポリマーのグラフト重合体、アルブミンあるいはカゼイン等のタンパク質、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及び硫酸セルロース等)、アルギン酸ナトリウム及びデンプン誘導体等の糖類、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールの部分アセタール体、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルイミダゾールあるいはポリビニルピラゾール等の広範囲な合成ポリマー等を挙げることができる。
【0115】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子としては、塩化銀、臭化銀、(沃)塩臭化銀、沃臭化銀等がある。特に、本発明においては現像処理時間を速めるために、塩化銀含有率95モル%以上の塩化銀、塩臭化銀、塩沃化銀、塩沃臭化銀を好ましく用いることができる。この乳剤中のハロゲン化銀粒子は、立方体、八面体、十四面体のような規則的な結晶を有するもの、球状、板状のような変則的な結晶系を有するもの、双晶面等の結晶欠陥を有するもの、あるいはその複合系でもよい。また、主平面が(111)面又は(100)面である平板粒子を用いると、発色現像の迅速化、処理混色の低減などの点で好ましい。主平面が(111)面又は(100)面である平板状高塩化銀乳剤粒子については、特開平6−138619号、米国特許第4,399,215号、同第5,061,617号、同第5,320,938号、同第5,264,337号、同第5,292,632号、同第5,314,798号、同第5,413,904号、国際公開WO94/22051号の各公報または明細書等に開示されている方法にて調製することができる。
【0116】
本発明において併用できるハロゲン化銀乳剤としては、任意のハロゲン組成のハロゲン化銀乳剤を用いてもよいが、迅速処理性の観点から、塩化銀含有率が95モル%以上の塩(沃)化銀、塩(沃)臭化銀が好ましく、さらには本発明に用いられる乳剤と同じく塩化銀含有率が98モル%以上のハロゲン化銀乳剤が好ましい。
【0117】
写真乳剤中のハロゲン化銀粒子は、立方体、八面体、十四面体のような規則的な結晶形を有するもの、双晶面などの結晶欠陥を有するもの、あるいはそれらの複合形でもよい。ハロゲン化銀の粒径は、約0.2μm以下の微粒子でも投影面積直径が約10μmに至るまでの大サイズ粒子でもよく、多分散乳剤でも単分散乳剤でもよいが、本発明に用いられるハロゲン化銀粒子は、現像進行を速くする目的で、単分散であることが好ましく、各ハロゲン化銀粒子の粒子サイズの変動係数が0.3以下(好ましくは、0.3〜0.05)が好ましく、さらに好ましくは、0.25以下(好ましくは、0.25〜0.05)である。ここでいう変動係数とは、統計上の標準偏差値(s)と平均粒子サイズ(d)との比(s/d)で表される。
【0118】
本発明に使用できるハロゲン化銀写真乳剤は、例えばリサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す)No.17643(1978年12月),22〜23頁、“I.乳剤製造(Emulsion preparation and types)”、及び同No.18716(1979年11月),648頁、同No.307105(1989年11月),863〜865頁、及びグラフキデ著「写真の物理と化学」、ポールモンテル社刊(P.Glafkides,Chemie et Phisique Photographique,Paul Montel,1967)、ダフィン著「写真乳剤化学」、フォーカルプレス社刊(G.F.Duffin,Photographic Emulsion Chemistry,Focal Press,1966)、ゼリクマンら著「写真乳剤の製造と塗布」、フォーカルプレス社刊(V.L.Zelikman,et al.,Making and Coating Photographic Emulsion,Focal Press,1964)などに記載された方法を用いて調製することができる。
【0119】
米国特許第3,574,628号、同第3,655,394号、及び英国特許第1,413,748号の各明細書に記載された単分散乳剤も好ましい。また、アスペクト比が約3以上であるような平板状粒子も本発明に使用できる。平板状粒子は、ガトフ著、フォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Gutoff,Photographic Science and Engineering)、第14巻248〜257頁(1970年);米国特許第4,434,226号、同第4,414,310号、同第4,433,048号、同第4,439,520号及び英国特許第2,112,157号の各明細書に記載の方法により簡単に調製することができる。
【0120】
結晶構造は一様なものでも、内部と外部とが異質なハロゲン組成からなるものでもよく、層状構造をなしていてもよい。エピタキシャル接合によって組成の異なるハロゲン化銀が接合されていてもよく、例えばロダン銀、酸化鉛などのハロゲン化銀以外の化合物と接合されていてもよい。また種々の結晶形粒子の混合物を用いてもよい。
【0121】
上記の乳剤は潜像を主として表面に形成する表面潜像型でも、粒子内部に形成する内部潜像型でも表面と内部のいずれにも潜像を有する型のいずれでもよいが、ネガ型の乳剤であることが必要である。内部潜像型のうち、特開昭63−264740号公報に記載のコア/シェル型内部潜像型乳剤であってもよく、この調製方法は特開昭59−133542号公報に記載されている。この乳剤のシェルの厚みは現像処理等によって異なるが、3〜40nmが好ましく、5〜20nmが特に好ましい。
【0122】
ハロゲン化銀乳剤は、通常、物理熟成、化学熟成及び分光増感を行ったものを使用する。このような工程で使用される添加剤はRDNo.17643、同No.18716及び同No.307105に記載されており、その該当箇所を後掲の表にまとめた。本発明の感光材料には、感光性ハロゲン化銀乳剤の粒子サイズ、粒子サイズ分布、ハロゲン組成、粒子の形状、感度の少なくとも1つの特性の異なる2種類以上の乳剤を、同一層中に混合して使用することができる。
【0123】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料における塗布銀量としては、6.0g/m2以下が好ましく、4.5g/m2以下がより好ましく、2.0g/m2以下が最も好ましい。なお、塗布銀量は0.01g/m2以上、好ましくは0.02g/m2以上、さらに好ましくは0.5g/m2以上使用される。
【0124】
支持体上に設けられた感光性ハロゲン化銀乳剤層や非感光性親水性コロイド層(中間層や保護層など)からなる写真構成層中のいずれかの層、好ましくはハロゲン化銀乳剤層に、1−アリール−5−メルカプトテトラゾール化合物をハロゲン化銀1モル当たり1.0×10-5〜5.0×10-2モル添加することが好ましく、さらには1.0×10-4〜1.0×10-2モル添加することが好ましい。この範囲で添加することによって、連続処理後の処理済みカラー写真表面への汚れをいっそう少なくすることができる。
【0125】
このような1−アリール−5−メルカプトテトラゾール化合物としては、1位のアリール基が無置換又は置換フェニル基であるものが好ましく、この置換基の好ましい具体例としてはアシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ、−NHCOC511(n)など)、ウレイド基(例えば、メチルウレイドなど)、アルコキシ基(例えばメトキシなど)、カルボン酸基、アミノ基、スルファモイル基などであって、これらの基はフェニル基に複数個(2〜3個など)結合していてもよい。また、これの置換基の位置はメタ又はパラ位が好ましい。これらの具体例としては、1−(m−メチルウレイドフェニル)−5−メルカプトテトラゾールや1−(m−アセチルアミノフェニル)−5−メルカプトテトラゾールが挙げられる。
【0126】
本発明に使用または併用できる写真用添加剤は以下のリサーチ・ディスクロージャー誌(RD)に記載されており、下記の表に関連する記載箇所を示した。
【0127】
【表8】

【0128】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料には、種々の色素形成カプラーを使用することができるが、以下の色素形成カプラーが特に好ましい。
イエローカプラー:欧州特許EP502,424A号明細書の一般式(I)、(II)で表されるカプラー;欧州特許EP513,496A号明細書の一般式(1)、(2)で表されるカプラー(特に18頁のY−28);特開平5−307248号公報の請求項1の一般式(I)で表されるカプラー;米国特許第5,066,576号明細書のカラム1の45〜55行の一般式(I)で表されるカプラー;特開平4−274425号公報の段落0008の一般式(I)で表されるカプラー;欧州特許EP498,381A1号明細書の40頁のクレーム1に記載のカプラー(特に18頁のD−35);欧州特許EP447,969A1号明細書の4頁の一般式(Y)で表されるカプラー(特にY−1(17頁),Y−54(41頁));米国特許第4,476,219号明細書のカラム7の36〜58行の式(II)〜(IV)で表されるカプラー(特にII−17,19(カラム17),II−24(カラム19))。
【0129】
マゼンタカプラー:特開平3−39737号公報(L−57(11頁右下),L−68(12頁右下),L−77(13頁右下));欧州特許EP456,257号明細書のA−4−63(134頁),A−4−73,−75(139頁);欧州特許EP486,965号明細書のM−4,M−6(26頁),M−7(27頁);特開平6−43611号の段落0024のM−45,特開平5−204106号公報の段落0036のM−1;特開平4−362631号公報の段落0237のM−22。
シアンカプラー:特開平4−204843号公報のCX−1,3,4,5,11,12,14,15(14〜16頁);特開平4−43345号公報のC−7,10(35頁),34,35(37頁),(I−1),(I−17)(42〜43頁);特開平6−67385号公報の請求項1の一般式(Ia)又は(Ib)で表されるカプラー。
ポリマーカプラー:特開平2−44345号公報のP−1,P−5(11頁)。
【0130】
発色色素が適度な拡散性を有するカプラーとしては、米国特許第4,366,237号、独国特許GB2,125570号、欧州特許EP96,873B号、独国特許DE3,234,533号の各明細書に記載のものが好ましい。発色色素の不要吸収を捕正するためのカプラーは、欧州特許EP456,257A1号明細書の5頁に記載の一般式(CI),(CII),(CIII),(CIV)で表されるイエローカラードシアンカプラー(特に84頁のYC−86)、該欧州特許明細書に記載のイエローカラードマゼンタカプラーExM−7(202頁、EX−1(249頁)、EX−7(251頁)、米国特許第4,833,069号明細書に記載のマゼンタカラードシアンカプラーCC−9(カラム8)、CC−13(カラム10)、US4,837,136の(2)(カラム8)、国際公開WO92/11575号明細書のクレーム1の一般式〔C−1〕で表される無色のマスキングカプラー(特に36〜45頁の例示化合物)が好ましい。
【0131】
現像主薬酸化体と反応して写真的に有用な化合物残基を放出する化合物(色素形成カプラーを含む)としては、以下のものが挙げられる。
現像抑制剤放出化合物:欧州特許EP378,236A1号明細書の11頁に記載の一般式(I),(II),(III),(IV)のいずれかで表される化合物(特にT−101(30頁),T−104(31頁),T−113(36頁),T−131(45頁),T−144(51頁),T−158(58頁)),欧州特許EP436,938A2号明細書の7頁に記載の一般式(I)で表される化合物(特にD−49(51頁))、特開平5−307248号公報の一般式(1)で表される化合物(特に段落0027の(23))、欧州特許EP440,195A2号明細書の5〜6頁に記載の一般式(I)、(II)、(III)のいずれかで表される化合物(特に29頁のI−(1));
漂白促進剤放出化合物:欧州特許EP310,125A2号明細書の5頁の一般式(I)、(I’)で表される化合物(特に61頁の(60),(61))及び特開平6−59411号公報の請求項1の一般式(I)で表される化合物(特に段落0022の(7));
リガンド放出化合物:米国特許第4,555,478号明細書のクレーム1に記載のLIG−Xで表される化合物(特にカラム12の21〜41行目の化合物);
ロイコ色素放出化合物:米国特許第4,749,641号明細書のカラム3〜8の化合物1〜6;
蛍光色素放出化合物:米国特許第4,774,181号明細書のクレーム1のCOUP−DYEで表される化合物(特にカラム7〜10の化合物1〜11);
現像促進剤又はカブラセ剤放出化合物:米国特許第4,656,123号明細書のカラム3の一般式(1)、(2)、(3)で表される化合物(特にカラム25の(I−22))及び欧州特許EP450,637A2号明細書の75頁36〜38行目のExZK−2;
離脱して初めて色素となる基を放出する化合物:米国特許第4,857,447号のクレーム1の一般式(I)で表わされる化合物(特にカラム25〜36のY−1〜Y−19)。
【0132】
色素形成カプラー以外の添加剤としては、以下のものが好ましい。
油溶性有機化合物の分散媒:特開昭62−215272号公報のP−3,5,16,19,25,30,42,49,54,55,66,81,85,86,93(140〜144頁);
油溶性有機化合物の含浸用ラテックス:米国特許第4,199,363号明細書に記載のラテックス;
現像主薬酸化体スカベンジャー:米国特許第4,978,606号明細書のカラム2の54〜62行の一般式(I)で表される化合物(特にI−(1),(2),(6),(12)(カラム4〜5))、米国特許第4,923,787号明細書のカラム2の5〜10行の式(特に化合物1(カラム3));
ステイン防止剤:欧州特許EP298321A号明細書の4頁30〜33行の一般式(I)〜(III)、特にI−47,72,III−1,27(24〜48頁);
褪色防止剤:欧州特許EP298321A号明細書のA−6,7,20,21,23,24,25,26,30,37,40,42,48,63,90,92,94,164(69〜118頁)、米国特許第5,122,444号明細書のカラム25〜38のII−1〜III−23,特にIII−10、欧州特許EP471347A号明細書の8〜12頁のI−1〜III−4,特にII−2、米国特許第5,139,931号明細書のカラム32〜40のA−1〜48,特にA−39,42;
発色増強剤又は混色防止剤の使用量を低減させる素材:欧州特許EP411324A号明細書の5〜24頁のI−1〜II−15,特にI−46;
ホルマリンスカベンジャー:欧州特許EP477932A号明細書の24〜29頁のSCV−1〜28,特にSCV−8;
【0133】
硬膜剤:特開平1−214845号公報の17頁のH−1,4,6,8,14、米国特許第4,618,573号明細書のカラム13〜23の一般式(VII)〜(XII)で表される化合物(H−1〜54)、特開平2−214852号公報の8頁右下の式(6)で表される化合物(H−1〜76),特にH−14、米国特許第3,325,287号明細書のクレーム1に記載の化合物;
現像抑制剤プレカーサー:特開昭62−168139号公報のP−24,37,39(6〜7頁)、米国特許第5,019,492号明細書のクレーム1に記載の化合物,特にカラム7の28〜29;
防腐剤、防黴剤:米国特許第4,923,790号明細書のカラム3〜15のI−1〜III−43,特にII−1,9,10,18,III−25;
安定剤、かぶり防止剤:米国特許第4,923,793号明細書のカラム6〜16のI−1〜(14),特にI−1,60,(2),(13)、米国特許第4,952,483号明細書のカラム25〜32の化合物1〜65,特に36;
化学増感剤:トリフェニルホスフィンセレニド、特開平5−40324号公報の化合物50;
染料:特開平3−156450号公報の15〜18頁のa−1〜b−20,特にa−1,12,18,27,35,36,b−5,27〜29頁のV−1〜23,特にV−1、欧州特許EP445627A号明細書の33〜55頁のF−I−1〜F−II−43,特にF−I−11,F−II−8、欧州特許EP457153A号明細書の17〜28頁のIII−1〜36,特にIII−1,3、欧州特許EP319999A号明細書の6〜11頁の化合物1〜22,特に化合物1、欧州特許EP519306A号明細書の一般式(1)〜(3)で表される化合物D−1〜87(3〜28頁)、米国特許第4,268,622号明細書の一般式(I)で表される化合物1〜22(カラム3〜10)、米国特許第4,923,788号明細書の一般式(I)で表される化合物(1)〜(31)(カラム2〜9);
UV吸収剤:特開昭46−3335号公報の一般式(1)で表される化合物(18b)〜(18r),101〜427(6〜9頁)、欧州特許EP520938A号明細書の一般式(I)で表される化合物(3)〜(66)(10〜44頁)及び一般式(III)で表される化合物HBT−1〜HBT−10(14頁)、欧州特許EP521823号明細書の一般式(1)で表される化合物(1)〜(31)(カラム2〜9)。
【0134】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は乳剤層を有する側の支持体から最も離れた層、または乳剤層を有しない側の支持体から最も離れた層、若しくはその両方に、フッ素原子を含む化合物を好ましく用いることができる。
【0135】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料は、乳剤層を有する側の全親水性コロイド層において、膜厚の総和が28μm以下であることが好ましく、23μm以下がより好ましく、18μm以下がさらに好ましく、16μm以下が特に好ましい。なお、該膜厚の総和は、0.1μm以上であり、好ましくは1μm以上、更に好ましくは5μm以上である。また、膜膨潤速度T1/2は、60秒以下が好ましく、30秒以下がより好ましい。T1/2は、発色現像液で35℃、3分処理した時に到達する最大膨潤膜厚の90%を飽和膜厚としたとき、その膜厚が1/2に到達するまでの時間と定義する。膜厚は、25℃相対湿度55%調湿下(2日)で測定した膜厚を意味し、T1/2は、エー・グリーン(A.Green)らのフォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Photogr.Sci.Eng),19巻,2,124〜129頁に記載の型のスエロメーター(膨潤計)を使用することにより測定できる。T1/2は、バインダーとしてのゼラチンに硬膜剤を加えること、あるいは塗布後の経時条件を変えることによって調整することができる。
【0136】
また、膨潤率は、180〜280%が好ましく、200〜250%がより好ましい。ここで、膨潤率とは、本発明のハロゲン化銀写真感光材料を27℃の蒸留水に浸し、膨潤させたときの平衡膨潤量を表す尺度であり、膨潤率(単位:%)=膨潤時の全膜厚/乾燥時の全膜厚×100と定義される。前記膨潤率は、ゼラチン硬化剤の添加量を調節することにより上記範囲とすることができる。
【0137】
本発明の映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料は、映画用ポジ感光材料の標準的な処理工程で処理出来る。
従来の映画用ポジ感光材料の標準的な処理工程(乾燥以外)
(1)発色現像浴
(2)停止浴
(3)水洗浴
(4)第一定着浴
(5)水洗浴
(6)漂白促進浴
(7)漂白浴
(8)水洗浴
(9)サウンド現像(塗り付け現像)
(10)水洗
(11)第二定着浴
(12)水洗浴
(13)安定浴
【0138】
本発明においては、上記処理工程のうち、発色現像時間(上記の(1)の工程)が2分30秒以下(下限は6秒以上が好ましく、より好ましくは10秒以上、さらに好ましくは20秒以上、最も好ましくは30秒以上)、より好ましくは2分以下(下限は2分30秒と同じ)である場合も好ましい結果が得られる。
【0139】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料における被膜のpHは、4.6〜6.4が好ましく、さらに好ましくは5.5〜6.5である。経時の長い試料において、被膜pHが6.5を超える場合、セーフライト照射によるシアン画像、マゼンタ画像の増感が大きく、逆に被膜pHが4.5を下回る場合、感光材料を露光してから現像するまでの時間変化に対して、イエロー画像濃度が大きく変化する。いずれの場合も実用上問題である。
【0140】
本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料における被膜pHとは、塗布液を支持体上に塗布することによって得られた全写真層のpHであり、塗布液のpHとは必ずしも一致しない。その被膜pHは、特開昭61−245153号に記載されているような以下の方法で測定できる。即ち、(1)ハロゲン化銀乳剤が塗布された側の感光材料表面に純水を0.05ml滴下する。次に、(2)3分間放置後、表面pH測定電極(東亜電波社製GS−165F、商品名)にて被膜pHを測定する。被膜pHの調整は、必要に応じて酸(例えば硫酸、クエン酸)又はアルカリ(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)を用いて行うことができる。
【実施例】
【0141】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中で、部または%とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【0142】
実施例1
<試料101の作製>
[支持体の準備]
【0143】
乳剤塗設面側に下塗りを施し、乳剤塗設面の反対側に下記の導電性ポリマー(0.05g/m2)と酸化スズ微粒子(0.20g/m2)を含有するアクリル樹脂層を塗設したポリエチレンテレフタレートフィルム支持体(厚さ120μm)を準備した。
二軸延伸(縦、横それぞれ3.3倍)し、240℃で10分熱固定した後、両面ともコロナ放電処理を施した厚さ120μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)を用意した。
【0144】
[第一下塗り層及び第二下塗り層の形成]
下記組成よりなる第一下塗り層形成用及び第二下塗り層形成用の塗布液(第一下塗り層用塗布液、第二下塗り層用塗布液)を調製した。続いて、上記PETフィルムの一方の表面に、まず第一下塗り層用塗布液をバーコーターにより塗布し180℃で30秒間乾燥して、0.3μm厚の第一下塗り層を形成した。更に、該層上に第二下塗り層用塗布液を同様に塗布し170℃で30秒間乾燥して、0.15μm厚の第二下塗り層を形成した。支持体上には、支持体側から順に第一下塗り層、第二下塗り層が積層されている状態にした。
【0145】
《第一下塗層用塗布液》(TOTAL100.04質量部)
・スチレン/ブタジエン共重合体ラテックス 14.1部
(スチレン:ブタジエン=67:30、商品名:LX−407C5、
日本ゼオン社製、固形分40質量%)
・2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン(固形分8質量%) 2.5部
・ポリスチレン粒子 0.04部
(商品名:UFN1008、日本ゼオン社製、平均粒子径:2μm、
固形分20質量%)
・蒸留水 83.4部
【0146】
《第二下塗層用塗布液》(TOTAL99.9質量部)
・ゼラチン 14.8部
(写真用ゼラチン681タイプ、商品名、新田ゼラチン社製、
固形分10質量%)
・酢酸(固形分20%) 1.0部
・下記化合物(1)(固形分1.5質量%) 2.2部
・下記化合物(2)(固形分3.5質量%) 0.1部
・メチルセルロース 2.3部
(メトローズ60SH−6、商品名、信越化学社製、固形分2質量%)
・蒸留水 79.5部
【0147】
【化19】

【0148】
[帯電防止層の形成]
続いて、前記支持体の下塗り層が設けられていない側の表面に、下記組成よりなる帯電防止層用塗布液をバーコーターにより塗布し、180℃で30秒間乾燥して、0.1μmの帯電防止層を形成した。
【0149】
《帯電防止層用塗布液》
・ポリアクリル樹脂水分散液 1.9部
(ジュリマーET410、商品名、日本純薬社製、固形分30質量%)
・酸化スズ−酸化アンチモン分散物 7.1部
(TDL−1、商品名、三菱マテリアル社製、平均粒径0.1μm、
固形分17質量%)
・導電性ポリマー:下記化合物(3) 2.0部
・カルボジイミド化合物 1.1部
(カルボジライトV02−L2、商品名、日清紡社製、固形分8質量%)
・界面活性剤:下記化合物(4) 0.6部
(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、固形分10質量%)
・アルキルスルホン酸ナトリウム塩 0.6部
(サンデッドBL、商品名、三洋化成工業社製、固形3質量%)
・マット剤 1.0部
(MP−1000、商品名、綜研化学社製、平均粒子径:0.4μm、
固形分5質量%)
・蒸留水 85.7部
【0150】
【化20】

【0151】
【化21】

【0152】
[保護層の形成]
続いて、下記組成よりなる保護層用塗布液を、バーコーターにより前記帯電防止層上に塗布し、170℃で30秒間乾燥して、0.03μmの保護層を形成した。
【0153】
《保護層用塗布液》
・ポリオレフィンアイオノマー 2.3部
(ケミパールS−120、商品名、三井化学社製、固形分27質量%)
・コロイダルシリカ 1.5部
(スノーテックスCL、商品名、日産化学社製、固形分20質量%)
・エポキシ化合物 22.2部
(デナコールEX−614B、商品名、ナガセ化成社製、
固形分1質量%)
・増粘剤:下記化合物(5) 1.1部
(ポリスチレンスルホン酸塩、固形分3質量%)
・アルキルスルホン酸ナトリウム塩 0.8部
(サンデッドBL、商品名、三洋化成工業社製、固形分10質量%)
・界面活性剤 1.9部
(ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル・グリシドール付加物、
固形分4質量%)
・蒸留水 70.2部
【0154】
【化22】

【0155】
[ハロゲン化銀乳剤の準備]
−青感性ハロゲン化銀乳剤の調製−
大サイズ乳剤(BO−01)
(立方体、粒子サイズ0.71μm、粒子サイズ分布0.09、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
当業界で知られたコントロールダブルジェット法により、硝酸銀水溶液と、塩化ナトリウム、臭化カリウム混合水溶液を添加することにより、調製した。イリジウム含有量は4×10-7モル/モル銀となるように調製した。この乳剤に後述する構造式で表される増感色素(A’)〜(C’)を下記のように添加した。
青色増感色素(A’);3.5×10-5モル/モル銀
青色増感色素(B’);1.9×10-4モル/モル銀
青色増感色素(C’);1.8×10-5モル/モル銀
更に、塩化金酸とトリエチルチオ尿素を用いて最適に金硫黄増感した。
【0156】
中サイズ乳剤(BM−01)
(立方体、粒子サイズ0.52μm、粒子サイズ分布0.09、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
当業界で知られたコントロールダブルジェット法により、硝酸銀水溶液と、塩化ナトリウム、臭化カリウム混合水溶液を添加することにより、調製した。イリジウム含有量は6×10-7モル/モル銀となるように調製した。この乳剤に後述する構造式で表される増感色素(A’)〜(C’)を下記のように添加した。
青色増感色素(A’);6.9×10-5モル/モル銀
青色増感色素(B’);2.3×10-4モル/モル銀
青色増感色素(C’);2.7×10-5モル/モル銀
更に、塩化金酸とトリエチルチオ尿素を用いて最適に金硫黄増感した。
【0157】
小サイズ乳剤(BU−01)
(立方体、粒子サイズ0.31μm、粒子サイズ分布0.08、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
BM−01乳剤の調製において、粒子形成温度を下げたこと以外はBM−01と同様にした。
後述する構造式で表される増感色素(A’)〜(C’)を下記のように添加した。
青色増感色素(A’):8.5×10-4モル/モル銀
青色増感色素(B’):4.1×10-4モル/モル銀
青色増感色素(C’):3.7×10-5モル/モル銀
【0158】
−赤感性ハロゲン化銀乳剤の調製−
大サイズ乳剤(RO−01)
(立方体、粒子サイズ0.23μm、粒子サイズ分布0.11、ハロゲン組成Br/Cl=25/75)
当業界で知られているコントロールダブルジェット法により硝酸銀水溶液と、塩化ナトリウム、臭化カリウム混合水溶液を添加することにより調製した。イリジウム含有率は2×10-7モル/モル銀となるように調製した。この乳剤に後述する構造式で表される増感色素(D’)〜(F’)を下記のように添加し分光増感した。
赤感性増感色素(D’):4.5×10-5モル/モル銀
赤感性増感色素(E’):0.2×10-5モル/モル銀
赤感性増感色素(F’):0.2×10-5モル/モル銀
更に、塩化金酸と、トリエチルチオ尿素を用いて、最適に金硫黄増感した後、後述する構造式で表されるCpd−71をハロゲン化銀1モル当たり、9.0×10-4モル添加した。
【0159】
中サイズ乳剤(RM−01)
(立方体、粒子サイズ0.174μm、粒子サイズ分布0.12、ハロゲン組成Br/Cl=25/75)
粒子形成温度を変更したこと以外はRO−01と同様にし、後述する構造式で表される増感色素(D’)〜(F’)を下記のように使用した。
赤感性増感色素(D’):7.0×10-5モル/モル銀
赤感性増感色素(E’):1.0×10-5モル/モル銀
赤感性増感色素(F’):0.4×10-5モル/モル銀
【0160】
小サイズ乳剤(RU−01)
(立方体、粒子サイズ0.121μm、粒子サイズ分布0.13、ハロゲン組成Br/Cl=25/75)
粒子形成温度を変更したこと以外はRO−01と同様にし、後述する構造式で表される増感色素(D’)〜(F’)を下記のように使用した。
赤感性増感色素(D’):8.9×10-5モル/モル銀
赤感性増感色素(E’):1.2×10-5モル/モル銀
赤感性増感色素(F’):0.5×10-5モル/モル銀
【0161】
−緑感性ハロゲン化銀乳剤の調製−
大サイズ乳剤(GO−01)
(立方体、粒子サイズ0.20μm、粒子サイズ分布0.11、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
当業界で知られているコントロールダブルジェット法により硝酸銀水溶液と、塩化ナトリウム、臭化カリウム混合水溶液を添加することにより調製した。イリジウム含有率は2×10-7モル/モル銀となるように調製した。この乳剤に後述する構造式で表される増感色素(G’)〜(J’)を下記のように添加し分光増感した。
緑感性増感色素(G’):2.8×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(H’):0.8×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(I’):1.2×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(J’):1.2×10-4モル/モル銀
更に、塩化金酸と、トリエチルチオ尿素を用いて、最適に金硫黄増感した。
【0162】
中サイズ乳剤(GM−01)
(立方体、粒子サイズ0.146μm、粒子サイズ分布0.12、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
粒子形成温度を変更したこと以外はGO−01と同様にし、後述する構造式で表される増感色素(G’)〜(J’)を下記のように使用した。
緑感性増感色素(G’):3.8×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(H’):1.3×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(I’):1.4×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(J’):1.2×10-4モル/モル銀
【0163】
小サイズ乳剤(GU−01)
(立方体、粒子サイズ0.102μm、粒子サイズ分布0.10、ハロゲン組成Br/Cl=3/97)
粒子形成温度を変更したこと以外はGO−01と同様にし、後述する構造式で表される増感色素(G’)〜(J’)を下記のように使用した。
緑感性増感色素(G’):5.1×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(H’):1.7×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(I’):1.9×10-4モル/モル銀
緑感性増感色素(J’):1.2×10-4モル/モル銀
【0164】
【化23】

【0165】
【化24】

【0166】
【化25】

【0167】
【化26】

【0168】
[染料固体微粒子分散物A及びBの調製]
下記化合物(HD−1;例示化合物(IV−1))のメタノールウェットケーキを化合物の正味量が240gになるように秤量し、分散助剤として下記化合物(Pm−1)を48g秤量し、水を加えて4000gとした。流通式サンドグラインダーミル(UVM−2)(アイメックスK.K製、商品名)にジルコニアビーズ(0.5mm径)を1.7リットル充填し、吐出量0.5リットル/min、周速10m/sで2時間粉砕した。その後、分散物を化合物濃度が3質量%となるように希釈し、下記構造式で表される化合物(Pm−1)を染料に対し質量比で3%添加した(分散物Aと称する)。この分散物の平均粒子サイズは0.45μmであった。
さらに、同様な方法で下記化合物(HD−2;例示化合物(II−25))を5質量%含む分散物(分散物Bと称する)を得た。
【0169】
【化27】

【0170】
【化28】

【0171】
[試料101の作製]
支持体上に、下記に示すような組成の各層を重層塗布し、多層カラー写真感光材料である試料101を作製した。
【0172】
−第6層塗布液調整−
マゼンタカプラー(ExM’)75.0g、添加物(Cpd−49)1.5g、添加物(Cpd−51)0.1gおよび添加物(Cpd−55)2.3gを溶媒(Solv−21)15gおよび酢酸エチル80mlに溶解し、この溶液を、添加物(Cpd−52)の10%水溶液20mlを含む10%ゼラチン水溶液1000gに乳化分散させて、乳化分散物Mを調製した。一方、前述した塩臭化銀乳剤GO−01、GM−01、およびGU−01を用いて、前記乳化分散物Mとこの塩臭化銀乳剤とを混合溶解し、後記組成となるように第6層塗布液を調製した。第1層〜第5層および第7層用の塗布液も第6層塗布液と同様な方法で調製した。
【0173】
−層構成−
以下に各層の組成を示す。数字は塗布量(g/m2)を表す。ハロゲン化銀乳剤塗布量は銀換算塗布量を表す。また、ゼラチン硬膜剤として、1−オキシ−3,5−ジクロロ−s−トリアジンナトリウム塩を用いた。
【0174】
[試料101の層構成]
支持体
・上記ポリエチレンテレフタレートフィルム
【0175】
第1層(ハレーション防止層(非感光性親水性コロイド層))
・ゼラチン 1.02
・上記分散物A(染料塗布量として) 0.11
・上記分散物B(染料塗布量として) 0.06
【0176】
第2層(青感性ハロゲン化銀乳剤層)
・塩臭化銀乳剤BO−01、乳剤BM−01、および乳剤BU−01の3:1:6混合物(銀モル比)。 0.54
・ゼラチン 2.71
・イエローカプラー(ExY’) 1.19
・(Cpd−41) 0.0006
・(Cpd−42) 0.01
・(Cpd−43) 0.04
・(Cpd−44) 0.006
・(Cpd−45) 0.017
・(Cpd−46) 0.002
・(Cpd−52) 0.07
・(Cpd−54) 0.08
・(Cpd−63) 0.02
・溶媒(Solv−21) 0.26
【0177】
第3層(混色防止層)
・ゼラチン 0.56
・(Cpd−49) 0.02
・(Cpd−43) 0.05
・(Cpd−52) 0.01
・(Cpd−53) 0.005
・(Cpd−61) 0.02
・(Cpd−62) 0.05
・溶媒(Solv−21) 0.05
・溶媒(Solv−23) 0.04
・溶媒(Solv−24) 0.001
【0178】
第4層(赤感性ハロゲン化銀乳剤層)
・塩臭化銀乳剤RO−01、乳剤RM−01および乳剤RU−01の2:2:6混合物(銀モル比) 0.38
・ゼラチン 2.79
・シアンカプラー(ExC’) 0.75
・(Cpd−47) 0.06
・(Cpd−48) 0.06
・(Cpd−50) 0.03
・(Cpd−52) 0.04
・(Cpd−53) 0.03
・(Cpd−55) 0.03
・(Cpd−57) 0.05
・(Cpd−58) 0.007
・(Cpd−60) 0.02
・溶媒(Solv−21) 0.51
・溶媒(Solv−22) 0.28
・溶媒(Solv−23) 0.03
【0179】
第5層(混色防止層)
・ゼラチン 0.56
・(Cpd−49) 0.02
・(Cpd−43) 0.05
・(Cpd−52) 0.01
・(Cpd−53) 0.005
・(Cpd−62) 0.05
・(Cpd−64) 0.002
・溶媒(Solv−21) 0.05
・溶媒(Solv−23) 0.04
・溶媒(Solv−24) 0.001
【0180】
第6層(緑感性ハロゲン化銀乳剤層)
・塩臭化銀乳剤GO−01、GM−01、GU−01の1:3:6混合物(銀モル比) 0.54
・ゼラチン 1.66
・マゼンタカプラー(ExM’) 0.73
・(Cpd−49) 0.013
・(Cpd−51) 0.001
・(Cpd−52) 0.02
・(Cpd−55) 0.02
・溶媒(Solv−21) 0.15
【0181】
第7層(保護層)
・ゼラチン 0.97
・アクリル樹脂(平均粒径2μm) 0.002
・(Cpd−55) 0.03
・(Cpd−56) 0.08
・(Cpd−59) 0.001
ここで使用した化合物を以下に示す。
【0182】
【化29】

【0183】
【化30】

【0184】
【化31】

【0185】
【化32】

【0186】
【化33】

【0187】
【化34】

【0188】
【化35】

【0189】
【化36】

【0190】
【化37】

【0191】
以上のように試料101を作製した。
【0192】
<試料100の作製>
試料101に対して第1層を除去し、支持体の反対面にレジンバック層を付与した試料を作製し、試料100とした。
【0193】
<試料101〜113の作製>
次に、前記感光材料101の作製において、帯電防止層に含まれる酸化スズ−酸化アンチモン分散物塗設量を下記表Aに表された量に調整し、かつ同層に一般式(AS)で表される化合物を、下記表Aに表された種類及び量で塗設した試料を作製した。
【0194】
<試験及び評価>
前記試料100〜113について、白地部の色味、帯電特性を評価するために下記に示す評価を実施した。
【0195】
−白地部評価−
未露光試料を、イーストマンコダック社から公表されているECP−2プロセスに従って処理を実施した。処理済の試料をX−rite社製X−rite 310TR(商品名)を用いて、B濃度を示す部分の濃度値を5回測定し、平均値を算出しYminとした。値が大きいほど、白地が劣ることを意味する。
【0196】
−帯電性評価−
得られた試料100〜113について、下記のようにスタチックマークの発生と水平プラッター映写機における静電気トラブル発生を評価した。
(1)スタチックマークの発生
上記試料を35mm幅の長尺フィルムに加工し、処理後にX−riteでの濃度測定値が(R、G、B)=(1.0、1.0、1.0)となるように露光した。2500ft/分、25℃15%条件において暗室下でプリンター搬送させた後、自動現像機にて現像処理を実施し、試料を目視で下記のように評価した。
○:スタチックマークの発生がない
△:スタチックマークの発生が所々に認められる
×:スタチックマークの発生が頻繁に認められる
××:スタチックマークの発生が連続的に発生し、線状のマークを形成する。
(2)水平プラッター映写機における静電気トラブルの発生
現像処理済の上記試料各6000ftを水平プラッター型映写機(SPECO Systems&products engineering company製、LP−270、商品名)にて搬送させ、下記のように評価した。
○:全くトラブルがない
△:時々フィルム同士がくっついて送り出される
×:頻繁にフィルム同士がくっついて送り出される
××:フィルム同士がくっついて送り出されて、プラッター中央部にフィルムがからみつく。
(3)帯電特性値の評価
本明細書に記載された方法により、処理前表面抵抗値の対数SR1と処理後表面抵抗値SR2を測定した。
【0197】
―処理液汚れ評価―
上記試料を35mm幅の長尺フィルムに加工し、処理後にX−riteでの濃度測定値が(R、G、B)=(1.0、1.0、1.0)となるように露光した。暗室下でプリンター搬送させた後、自動現像機にて現像処理を施した後、現像処理浴を目視で下記のように評価した。
○:黒色濁りがない
×:黒色濁りが認められる
【0198】
上記評価結果を表Aに示す。
【0199】
【表9】

【0200】
表Aの結果から明らかなように、第1層の一般式(I)で表される染料の固体微粒子分散物を含有する非感光性親水性コロイド層を、該染料を含有しないレジンバック層に代えた試料100では、処理液に黒色濁りの汚れが発生し、白地部の濃度変動(Ymin)も大きかった。また、支持体裏面の表面抵抗値が前記数式(S)及び(T)を満たさない試料101、102、104及び109〜113では、高速露光を実施する際にスタチックマークが発生したり、映写機における静電気トラブルが発生したりした。
これらに対して、一般式(I)で表される染料の固体微粒子分散物を含有する非感光性親水性コロイド層を有し、かつ、支持体裏面の表面抵抗値が前記数式(S)及び(T)を満たす試料103及び105〜109では、スタチックマークの発生及び映写機における静電気トラブルを防ぐことができることがわかった。特に、一般式(AS)で表される化合物を用いた試料105〜109では、スタチックマークが全く発生せず、映写機における静電気トラブルも全く起こらなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過型支持体上にイエロー発色感光性ハロゲン化銀乳剤層、シアン発色感光性ハロゲン化銀乳剤層およびマゼンタ発色感光性ハロゲン化銀乳剤層の各層を少なくとも一層ずつ有し、かつ、非感光性親水性コロイド層を少なくとも一層有するハロゲン化銀カラー写真感光材料であって、該非感光性親水性コロイド層の少なくとも一層に下記一般式(I)で表される染料の固体微粒子分散物を含有し、支持体に対してハロゲン化銀乳剤層が設けられている面とは反対面の表面抵抗値が下記数式(S)及び(T)を満たすことを特徴とする映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料。
一般式(I)
D−(X)y
(一般式(I)中、Dは発色団を有する化合物残基を表し、Xは解離性水素または解離性水素を有する基を表し、yは1〜7の整数を表す。)
数式(S)
0.3≦SR2−SR1≦3.0
数式(T)
9.0≦SR1≦12.7
(数式(S)及び(T)中、SR1は発色現像処理前の表面抵抗値R1の対数を表し、SR2は発色現像処理後の表面抵抗値R2の対数を表す。)
【請求項2】
前記支持体において前記ハロゲン化銀乳剤層が設けられている面とは反対側の面上に設けられた層の少なくとも一層に、下記一般式(AS)で表される化合物を含有することを特徴とする請求項1記載の映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【化1】

(式中R1〜R4は、各々炭素数1〜4のアルキル基を表し、X-はハロゲン、又は水酸基を表す。)
【請求項3】
前記透過型支持体がポリエステル支持体であり、前記支持体において前記ハロゲン化銀乳剤層が設けられている面とは反対側の面上に導電性を有する帯電防止層及び保護層がこの順で設けられていることを特徴とする請求項2記載の映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【請求項4】
前記の導電性を有する帯電防止層に金属酸化物粒子を含有し、かつ該金属酸化物粒子が、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、MgO、及びこれらの複合金属酸化物、並びにこれらの金属酸化物に更に異種原子を含む金属酸化物、からなる群より選択される少なくとも一種の金属酸化物であることを特徴とする請求項3記載の映画用ハロゲン銀カラー写真感光材料。
【請求項5】
前記の帯電防止層における金属酸化物粒子の含有量が、50mg/m2以上500mg/m2以下であることを特徴とする請求項4記載の映画用ハロゲン化銀カラー写真感光材料。

【公開番号】特開2007−264031(P2007−264031A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−85239(P2006−85239)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】