説明

ハロゲン化銀写真感光材料の現像処理装置及びメンテナンスシステム

【課題】 情報不足などにより必要な作業がわかりにくい場合でも、メンテナンスマンには適切な作業を迅速かつ確実に行わせることにより、メンテナンス不良によるトラブル発生の起きない現像処理装置を提供する。
【解決手段】 記憶手段に記憶されている物理量変化の情報と検知手段で実際に検知した物理量変化とを比較するとともに、記憶手段に記憶されているメンテナンス作業の履歴情報を照合して、作業者に行わせる作業を表示手段に表示するハロゲン化銀写真感光材料の現像処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化銀写真感光材料の現像処理装置及びメンテナンスシステムに関し、特に、作業者が具体的な作業内容を把握していない状態にあっても、当該装置に必要なメンテナンス作業を確実に行える様にした現像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ミニラボシステムに代表されるハロゲン化銀写真感光材料用の自動現像処理装置(以下、自動現像機、自現機、処理装置ともいう)は、現像、漂白、定着などの一連の処理工程を経て最終製品である写真プリントをユーザに提供するものである。自動現像装置では、現像液など各種の処理液を貯留した処理槽を工程順に並設し、この処理槽内に露光済みの感光材料を順次浸漬、搬送させて現像処理を行う。現像処理の進行に伴って、処理槽中には感光材料の構成物質が溶出したり、あるいは処理温度を維持するために行う加温により処理液が劣化してタール等の汚染物を発生することがある。したがって、処理槽内の処理液性能を一定レベルに維持させるためには適宜メンテナンスを行う必要がある。
【0003】
メンテナンス作業には、処理液をろ過するろ過手段の洗浄や交換、感光材料あるいは処理液からの析出物の除去、現像処理レベルに応じた補充量の変更やタンク液の更新作業、さらには循環ポンプ等消耗部品の交換作業などが挙げられ、これらの作業を的確に行う上で写真処理技術に対してある程度の専門性が必要になる。
【0004】
例えば、メンテナンス作業の1つにフィルタ部材の交換作業がある。フィルタ装置は処理液から異物を除去する等の液性能を維持するものであり、定期的な洗浄や交換により目詰まりの発生を防止する必要がある。しかしながら、フィルタ装置の交換や洗浄は、処理液に浸漬したフィルタ装置を処理槽内から取り出すために処理液に手を入れたり、部品の取外しや取付け作業に意外と手間を要した。そこで、作業者に負担をかけずに作業が行える様な技術が種々検討されてきた。
【0005】
例えば、フィルタエレメントの保持部材にレバーを設け、交換時にレバー部を弾性変形させてフィルタエレメントの取外しを行える様にしたり(例えば、特許文献1参照)、エンドプレートとジグを介してフィルタを処理ラックに固着させてフィルタを処理槽内から取り出せる様にして(例えば、特許文献2参照)、処理液になるべく手を触れない様にしてフィルタ交換が行えるものがある。
【0006】
あるいは、水洗水のヒートアップ時における昇温速度を算出し、そこからフィルタの目詰まり検知を行うもの(例えば、特許文献3参照)やフィルタ交換時期の目安に感光材料の処理量や補充液量を積算する積算装置を設けて(例えば、特許文献4参照)、フィルタ交換をタイムリーに行える様にする技術がある。
【0007】
さらには、処理槽内の処理液の比重やpHを継続して測定し、そのデータに基いて補充剤の添加量や水の供給量を遠隔操作により補正する技術もあり(例えば、特許文献5参照)、作業者にできるだけ負担をかけずにメンテナンスが行える自動現像処理装置の開発がこれまでも行われてきた。
【0008】
ところで、カラー感材の現像処理は、最近ではミニラボ機の普及によりカメラ店やDPE取次店での店頭処理が一般化しており、現像処理の依頼を受けてから数十分程度の時間でプリント写真をユーザに提供できる様になってきた。さらに、最近では、写真技術に対する専門性の乏しい人でもオペレータとして操作できるものが登場して、スーパーやコンビニエンスストアなどにもミニラボシステムが設置されている。
【0009】
この様な店舗では、オペレータは現像処理やプリント作業に専念し、メンテナンスは専門の作業者が定期的に行うことが多く、スーパーやコンビニエンスストアに設置された自現機を1人の作業者がかけ持ちでメンテナンスする体制をとることが多い。この様な体制では、メンテナンス作業を行う者は自現機のそばにいつもいるわけではないので、各自現機に行わなくてはならない作業の内容を正確に把握しておくことが難しくなる。また、メンテナンス作業は開店前や閉店後などの限られた時間に効率よく行うことが要求される。
【0010】
しかしながら、制約された時間内で、しかも、情報の少ない下で各自現機に適切なメンテナンスを行うことは難しく、必要な作業をやらないままにしてメンテナンス不良によるトラブル発生を起こす危険性があった。
【0011】
この様に、作業に対する情報が少なく時間的な制約が厳しいスーパーやコンビニなどに設置されたミニラボシステムでは、メンテナンスマンが必要な作業を迅速かつ確実に行うには困難が伴うものであった。そして、時間的にも情報的にも制約された状況下で、メンテナンスマンがやるべき作業を正確に行い、メンテナンス不良によるトラブル発生がない自現機の登場が望まれていた。
【特許文献1】特開2000−202213号公報(段落0007等参照)
【特許文献2】特開2002−341504号公報(段落0045等参照)
【特許文献3】特開2004−109494号公報(段落0040等参照)
【特許文献4】特開平5−61203号公報(段落0004等参照)
【特許文献5】特開2002−357887号公報(段落0009等参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、例えば、スーパーやコンビニエンスストアに設置されているミニラボシステムなど、メンテナンスマンが普段常駐していない自現機に対し、メンテナンス作業を行う時にその自現機に必要な作業をメンテナンスマンが作業内容を漏らすことなく確実に行えるハロゲン化銀写真感光材料の現像処理装置を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、複数個所に設置されているミニラボシステムを1人のメンテナンスマンがかけもちで管理する場合に、作業者が個々の自現機に行う作業の内容を正確に把握していなくても確実に作業を行える様にし、作業者にかかる負担を軽減させることが可能なハロゲン化銀写真感光材料の現像処理装置を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、メンテナンスマンが常駐していない状況下に設置された自現機に対して、その自現機の設置環境や処理状況に応じた適切なメンテナンス作業を行える様にしたハロゲン化銀写真感光材料の現像処理装置を提供することを目的とする。
【0015】
さらに、本発明は、メンテナンス作業を正確に行うことが困難な自動現像機に対して、メンテナンス不良に起因するトラブル発生を未然に防止して、美しい仕上がりの写真プリントをユーザに安定供給することが可能なハロゲン化銀写真感光材料の現像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、以下に記載の構成により本発明の課題が解消されることを見出した。
【0017】
(請求項1)
露光済みのハロゲン化銀写真感光材料を現像処理する現像処理装置であって、
該現像処理装置に設定されている条件に基づいて発現される物理量変化に関する情報とメンテナンス作業に関する情報とを記憶する記憶手段と、
該現像処理装置で実際に発現している物理量変化を検知する検知手段と、
該現像処理装置に行うメンテナンス作業の内容を表示する表示手段と、
該表示手段に表示するメンテナンス作業の内容を決める制御手段と、を有し、
該制御手段は、
該記憶手段に記憶されている物理量変化に関する情報と該検知手段により検知された物理量変化を比較して、
比較して得られた結果と該記憶手段に記憶されているメンテナンス作業に関する情報とを照合して、
該表示手段に表示するメンテナンス作業の内容を決める
ものであることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の現像処理装置。
【0018】
なお、請求項1に記載される「物理量変化」とは、例えば、処理液の昇温速度や循環速度の変動、自現機の消費電力量変化や循環ポンプの回転数の変化などの自現機内で発現される物理量の変化のことをいい、自現機の電源スイッチをオンにしてから現像処理が可能な状態になるまでの間や、自現機をメンテナンスモードにした時に発現する物理量変化のことを意味する。
【0019】
また、請求項1に記載される「現像処理装置に設定されている条件に基づいて発現される物理量変化」とは、現像処理装置を設計仕様の性能を発現する状態で稼働させた時に発現される物理量変化のことをいう。すなわち、フィルタなどの交換部材や循環ポンプ、ヒータ等の消耗部品の耐久性が所定期間内にあり、メンテナンスが十分に行き届いており、処理液の劣化が発生していない、まさに安定した状態の現像処理装置で発現される物理量変化のことをいう。
【0020】
また、請求項1に記載されている「メンテナンス作業に関する情報」とは、現像処理装置に装備されている各部材の耐用期間に関する情報や、現像処理装置に実際に行ったメンテナンス作業の履歴に関する情報のことをいう。具体的には、「△年○月×日に発色現像処理槽のろ過フィルタを交換した」といったメンテナンス作業の履歴情報や、メンテナンス作業を実施してからの積算経時時間、自現機の積算稼働時間、感材の積算処理枚数(処理本数)、補充液の積算供給量といったメンテナンス作業実施後の積算情報、さらには、メンテナンス作業時に交換した部材の耐用期間などの情報も含まれる。
【0021】
本発明者は、メンテナンスが行き届いている自動現像機は、電源スイッチ投入から現像処理可能な状態になるまでに発現される処理液の温度変化や循環量の変動、消費電力量の変動といったものはある程度決まった挙動を繰り返すものと考えた。そして、メンテナンス作業が必要な状態に近づいていくことは、上述した様な物理量変化の挙動が本来のものから段々乖離する様になると考え、両者の乖離状況から自現機に行うメンテナンス作業の内容を決めることができるものと考え、本発明を見出した。
【0022】
すなわち、本発明はコンピュータを搭載した自現機を用いて、コンピュータにはメンテナンスが行き届いている時に自現機で発現される物理量変化と、自現機に装備されている部材の耐用期間やこれまで行ってきたメンテナンス作業に関する情報を記憶しておく。また、自現機には検知部材を設け、自現機で実際に起きている温調速度や処理液の循環量変化、さらには消費電力量の変化などの物理量変化の挙動を検知する。そして、検知して得られた情報とコンピュータに記憶されている情報とを比較し、両者の間での乖離の状況から、当該自現機にメンテナンス作業が必要か否かを判断する。そして、メンテナンス作業が必要と判断した時、当該自現機にこれまでに行ってきたメンテナンス作業の情報を用いて不具合個所を推定または特定して具体的な作業内容を決める。さらに、決定したメンテナンス作業の内容をコンピュータのモニタに表示して作業者に伝達するものである。
【0023】
(請求項2)
前記制御手段は、
前記表示手段に複数のメンテナンス作業内容を表示させるものであり、
前記記憶手段に記憶されているメンテナンス作業に関する情報に基づいて、該表示手段に表示する作業の内容を優先順位をつけて表示する様に制御するものであることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀写真感光材料の現像処理装置。
【0024】
(請求項3)
前記制御手段は、
前記表示手段に表示されたメンテナンス作業が完了したことを確認すると、
前記検知手段で物理量変化の検知を行う様に制御するものであることを特徴とする請求項1または2に記載のハロゲン化銀写真感光材料の現像処理装置。
【0025】
(請求項4)
前記物理量変化が少なくとも2種以上の物理量変化であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料の現像処理装置。
【0026】
(請求項5)
前記物理量変化の少なくとも1種は、前記現像処理装置の処理槽内に貯留された処理液の昇温速度であり、
前記検知手段は、該処理槽内の処理液の昇温速度を検知するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料の現像処理装置。
【0027】
(請求項6)
前記現像処理装置は、前記処理槽内に貯留された処理液を循環する循環手段を有し、
前記物理量変化の少なくとも1種は、該処理槽内での処理液の循環速度であり、
前記検知手段は、該処理槽内に貯留された処理液の循環速度を検知するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料の現像処理装置。
【0028】
(請求項7)
前記物理量変化の少なくとも1種は、前記現像処理装置の消費電力量の変化であり、
前記検知手段は、該現像処理装置の消費電力量を検知するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料の現像処理装置。
【0029】
(請求項8)
露光済みのハロゲン化銀写真感光材料を現像処理する現像処理装置に対するメンテナンスシステムであって、
該現像処理装置に設けられている記憶手段に、該現像処理装置に設定されている条件に基づいて発現される物理量変化に関する情報とメンテナンス作業に関する情報とを記憶しておき、
該現像処理装置に検知手段を設けて、実際に発現している物理量変化を検知し、
該記憶手段に記憶されている物理変化に関する情報と該検知手段により検知された物理量変化を比較し、比較して得られた結果と該記憶手段に記憶されているメンテナンス作業に関する情報とを照合して、
該現像処理装置に行うメンテナンス作業の内容を、該現像処理装置に設けられた表示手段に表示することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の現像処理装置へのメンテナンスシステム。
【0030】
(請求項9)
前記メンテナンス作業に関する情報を通信手段を介して取得する請求項8に記載のハロゲン化銀写真感光材料の現像処理装置へのメンテナンスシステムであって、
前記記憶手段に記憶されている物理量変化に関する情報とメンテナンス作業に関する情報と、前記検知手段により検知された実際に発現した物理量変化の情報の少なくとも1つを、ネットワーク上に設けられたサーバに該通信手段を介して送信し、該サーバに記憶された前記情報を該通信手段を介して受信する、
ことを特徴とする請求項8に記載のハロゲン化銀写真感光材料の現像処理装置へのメンテナンスシステム。
【発明の効果】
【0031】
上記請求項1または請求項8に記載の構成により、本発明に係る現像処理装置は、記憶手段に記憶されている当該現像処理装置で本来発現される物理量変化に関する情報と、検知手段により検知される実際に発現している物理量変化とを比較し、両者の乖離具合から現像処理装置に行うメンテナンス作業の内容を決めている。すなわち、前述した2つの物理量変化に関する情報と、記憶手段に記憶されている消耗部材の耐用期間や現像処理装置にこれまでに行ってきたメンテナンス作業の履歴情報とを照合して、当該現像処理装置に必要なメンテナンス作業の内容を決め、それをメンテナンスマンに伝達することで、装置のメンテナンス性を向上させている。
【0032】
その結果、スーパーやコンビニエンスストアに設置されているミニラボシステムのメンテナンス体制の様に、メンテナンスマンが常駐せずかけ持ちでメンテナンス作業を行う場合でも、各装置が必要とする作業の内容が作業者に正確に伝達され、メンテナンス不良によるトラブルの発生を解消できる様になった。
【0033】
したがって、メンテナンスマンは、1人で何台もの装置をかけもちで管理していても、個々の自現機の状況を細かく把握しておく必要もなく、各現像処理装置の安定稼働を維持することができる様になり、作業の効率と正確性を大幅に向上させることができた。
【0034】
この様に、請求項1に記載の発明によれば、複数台の現像処理装置の管理を1人のメンテナンスマンで対応することが可能であり、また、作業者に大きな負担をかけることなく、制約された作業条件下で必要なメンテナンス作業を確実に行える様にしている。
【0035】
また、請求項1に記載の発明によれば、巡回管理の様にメンテナンスを頻繁に行うことが困難な環境に置かれた自現機に対して、事前にトラブル発生の要因を除去することができるので、少ない巡回回数でもトラブル発生のない安定した維持管理が可能になる。すなわち、本発明では記憶手段の情報と検知手段からの情報に基づいて決めた作業をメンテナンスマンに行わせるので、早い段階でトラブル発生の要因を除去しメンテナンス不良によるトラブル発生を未然に防止することを可能にした。その結果、トラブル発生による現像処理装置の停止によるプリントサービスの中止といった問題を起こすことがなく、しかも、美しい仕上がり品質の写真プリントをユーザに安定提供することが可能になり、スーパやコンビニなどでプリントを専門に行う作業者や顧客への信頼性が格段に向上した。
【0036】
請求項2に記載の発明では、記憶手段に記憶されている物理量変化に関する情報と実際に検知された物理量変化とメンテナンス作業に関する情報からの総合的な判断により、推定される不具合個所を可能性の高い順に、あるいは緊急性の高い順に優先順位をつけて表示できる様にした。
【0037】
その結果、現像処理装置においてメンテナンスを行うべき不具合個所の特定を容易に行える様になった。また、メンテナンスマンは当該現像処理装置に必要な作業の全体像を容易に把握することが可能であるとともに、表示された作業の中でもどの作業が重要かを確認することができるので、作業の効率を大幅に向上させることが可能になった。
【0038】
すなわち、複数の作業内容が表示されるので、作業者は些細な作業も漏らすことなく確実に行える様になり、作業者の見落としによるメンテナンス不良を回避することが可能になった。また、メンテナンスマンは表示された優先順位に基づいて作業を行える様になっているので、例えば、時間的に逼迫した状況で全ての作業を一度にできない様な場合、緊急度の高いものを先ず行っておいて、後で残りの作業を行うという作業形態をとらなくてはならない場合でも、当該装置に必要な作業は確実に行われるのでメンテナンス不良によるトラブル発生の回避が確実になり、限られた時間内で高い信頼性が得られるメンテナンス作業の実施を可能にした。
【0039】
請求項3に記載の発明では、指示された作業を行った後に検知手段を作動させて作業の効果を確認することができる。すなわち、作業完了後に検知手段が作動して物理量変化の挙動を検知し、記憶手段に記憶されている現像処理装置が本来発現する物理量変化の情報と比較することができるので、作業者は作業を実施した直後にその効果をタイムリーに確認することができ、メンテナンス作業の効率を大幅に向上させることが可能になった。
【0040】
請求項4に記載の発明では、現像処理装置内で発現される複数の物理量変化を検知してその情報を利用することにより、メンテナンスマンに適切なメンテナンス作業の内容を提供することが可能になった。例えば、物理量変化として処理槽内の処理液の昇温速度を検知するケースを考えてみよう。ここで、検知された昇温速度が通常状態で発現される昇温速度よりも遅いものになった場合、原因となる不具合点として、例えば、フィルタの目詰まり、循環ポンプの劣化、ヒータの劣化、処理液の濃縮など、複数のものが考えられる。ここで、昇温速度とともに処理液の循環速度も検知して循環速度に異常が見られなければ、昇温速度の遅れの原因がフィルタの目詰まりと循環ポンプの劣化によるものではないことが把握される。この様に、請求項4に記載の発明は、メンテナンスマンに適切なメンテナンス作業の内容を提供できる様にした。
【0041】
請求項5〜7に記載の発明は、請求項1〜3に記載の発明の下位概念に該当するもので具体的な手段を介して本願発明の課題を解消することを可能にしている。すなわち、請求項5に記載の発明では処理液の昇温速度を利用することにより、請求項6に記載の発明では循環速度を利用することにより、請求項7に記載の発明では消費電力量を利用することにより、メンテナンスマンに適切なメンテナンス作業内容を提供することが可能であることが確認された。
【0042】
請求項9に記載の発明は、本発明に係る現像処理装置に通信手段を設けることにより、通信手段を介してメンテナンス作業に使用する情報を得られる様にしたものである。
【0043】
請求項9に記載の発明によれば、メンテナンスマンは、パソコンや画面付きの携帯電話を介してネットワーク上のサーバにアクセスして、サーバに記録されているメンテナンス作業に関する情報を確認することができる。したがって、ネットワークに接続した全ての現像処理装置からメンテナンス情報を得ることが可能になるので、これらの情報を自分が担当する機器のメンテナンス作業に使用することが可能になる。特に、業務経験の浅いメンテナンスマンにとって有効な情報を多く得られる場になることや、ネットワークに接続されていない現像処理装置をメンテナンスする場合でも携帯電話を使ってサーバに記録された情報を利用するという対応が可能なので、メンテナンス作業の効率や精度を向上させることが可能になった。
【0044】
また、請求項9に記載の発明によれば、ネットワーク上のサーバにバージョンアップ用のソフトウェアを保管しておき、作業を行う現像処理装置よりバージョンアップ用のソフトウェアを直接ダウンロードしてバージョンアップ作業を行うことも可能にした。この様に、メンテナンス作業に使用する情報をサーバに予め取り込んでおいて、作業場所で直接取り寄せることが可能になるので、メンテナンスマンの携帯物を少なくして負担を軽減することも可能になった。
【0045】
さらに、請求項9に記載の発明によれば、ネットワークに接続された各現像処理装置のメンテナンスに関する情報を全メンテナンスマンの間で共有化することができる様になっているので、緊急の作業対応が必要になった時にメンテナンスマンを速やかにアサインすることが可能になり、ユーザのニーズに対応した作業者の労務管理を行える様になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本発明は、自動現像機にコンピュータを搭載し、コンピュータに当該現像処理装置で本来発現される物理量変化に関する情報とこれまでに行ったメンテナンス作業に関する情報を記憶しておくとともに、スイッチをオンして現像処理が可能な状態になるまでの挙動を検知して、その検知結果と記憶情報とを比較、照合して、メンテナンスマンが適切な作業を行える様にした現像処理装置に関する発明である。
【0047】
従来は、現像処理を行ったフィルム感材を用いてプリント写真を作製する際、オペレータが殆どのフィルタワークを自分で設定して対応していた。このプリント作成時のフィルタワークの設定作業は高度な熟練性が要求されるものであったため、現像処理やプリント作成はラボなどの限られた場所で行われていた。この様な場所では、ろ過フィルタの交換をはじめとする装置のメンテナンス作業はオペレータが対応していた。
【0048】
そして、無水洗処理技術をはじめとする処理技術の発展により、小型の現像処理装置とプリンタ装置からなるいわゆるミニラボシステムによる写真プリントサービスの実施が可能になった。ところで、初期のミニラボシステムではフィルタワークを完全に自動対応することができなかったので、ミニラボシステムの設置個所は前述した一般カメラ店やDPE取次店の様な写真技術に関する専門性を有する人が存在する個所に限られていた。近年になり、フィルタワークを完全に自動対応化させたミニラボシステムが現れ、熟練性の低い人でも美しい仕上がりのプリント写真の作成作業を行える様になった。
【0049】
しかしながら、通常の現像処理やプリント作成作業の簡素化、効率化は達成されたものの、装置のメンテナンス作業にはある程度の専門性が求められ、専門性を有するメンテナンスマンにより作業を遂行することが避けられなかった。そして、ミニラボシステムの市場では、プリント作成作業等を行うオペレータとメンテナンス作業を行う作業者とが異なる様になり、個々の自現機で行わなくてはならない作業をメンテナンスマンが正確に把握することが困難になってきた。
【0050】
本発明は、前述の特許請求の範囲に記載の構成により、この様な状況でも適切なメンテナンスを実施できる様にしている。以下、本発明について詳細に説明する。
【0051】
最初に、本発明に係る現像処理装置で行われているハロゲン化銀カラー写真感光材料の現像処理工程について説明する。図1は、ハロゲン化銀写真感光材料の現像処理工程の一例を示す概略図である。
【0052】
図1に示す感光材料処理装置(以下自動現像機という)1は、ハロゲン化銀カラー写真感光材料をローラにより搬送するローラ搬送方式の自動現像機である。自動現像機1は本体筐体(図示せず)内に、発色現像液、漂白定着液、及び安定液をそれぞれ貯留する発色現像槽2、漂白定着槽3,及び安定槽−1(図の4)、−2(図の5)、−3(図の6)が、図中左からこの順に並設されている。
【0053】
図1の自動現像機は、主にカラー印画紙の現像処理に使用されるものであるが、代表的な自動現像機の例として挙げたものであり、本発明を限定するものではない。本発明を適用して処理を行うことが可能なハロゲン化銀写真感光材料としては、カラーネガフィルム、カラー印画紙、カラーリバーサルフィルム、ダイレクトポジ印画紙、X線用フィルム、印刷用フィルム、モノクロネガフィルム、モノクロ印画紙等の銀塩感材が挙げられる。
【0054】
発色現像槽2内には、感光材料Sを槽内の所定の経路で搬送する搬送ローラ51が配置されている。また、漂白定着槽3及び安定槽−1〜−3(4〜6)にもそれぞれ同様の搬送ローラ52及び53〜55が配置されている。
【0055】
また、各処理槽2〜6及び後述するスクイズ部7の間には、それぞれクロスオーバローラ56が設置されている。クロスオーバローラ56は、感光材料Sを挟持した時に感光材料表面に付着する処理液を除去し、前槽から次槽への処理液の持ち込みを抑制する。
【0056】
また、各処理槽2〜6の底部付近等のローラ間及びクロスオーバローラ56の両側部には、感光材料Sを次のローラへ導くガイド57が設けられている。
【0057】
なお、搬送ローラ51〜55及びガイド57は、各処理槽毎にラックに組み立てられた状態で装填されているのが好ましい。
【0058】
本体筐体内に導入された感光材料Sは、上記各ローラ51〜55により、発色現像槽2、漂白定着槽3及び安定槽4〜6内を順次搬送され、その間に各処理液に浸漬されて、発色現像、漂白定着、及び安定化の各処理が行われる。
【0059】
安定−3槽6の図1中右上方には、スクイズ部7が設けられている。スクイズ部7には、複数対のスクイズローラ71が感光材料Sの搬送経路に沿って設置され、これらのスクイズローラ71で安定処理後の感光材料Sを挟持、搬送することにより、感光材料Sから水分を除去する。
【0060】
スクイズ部7の図1中下方には、乾燥機8が設けられている。この乾燥機8は、ケーシング81と、このケーシング81内に乾燥用の温風を供給する温風供給手段83とを有し、ケーシング81の内部に搬送ローラ82が感光材料Sの搬送経路に沿って設置されている。
【0061】
また、温風供給手段83は、送風ファン及びヒータを内蔵し、ケーシング81に連通するダクトを通じて、好ましくは35〜100℃程度、より好ましくは40〜80℃程度に加熱された温風をケーシング81内へ供給する。ケーシング81内では、スクイズ部7を経た感光材料Sが搬送ローラ82により搬送され、供給される温風と接触して乾燥がなされる。この様な処理工程を経て、図1の自動現像機では露光済みのハロゲン化銀カラー写真感光材料の現像処理が行われる。
【0062】
また、自動現像機1の各処理槽2〜6では、その処理に応じた処理液の補充が行われ、処理槽からのオーバーフローした液が廃液として処理槽外に排出される。
【0063】
例えば、発色現像槽2へは、発色現像液の補充液が管路12を介して供給され、漂白定着槽3へは、漂白定着液の補充液が管路13を介して供給され、安定槽4〜6には安定液の補充液が管路14を介して供給される。これらの補充液は、完成した補充液として供給する場合の他、濃縮液や複数種のパーツ剤からなる濃縮液キットを所定濃度に希釈する希釈水とともに供給する方法や、固体処理剤の形態で希釈水とともに供給するなどの方法で供給される。希釈水を使用する場合は、自動現像機1内に図示しないストックタンクを設け、当該ストックタンクより希釈水を供給するのが好ましい。
【0064】
また、発色現像槽2、漂白定着槽3及び安定槽4には、それぞれ、図示しない排液口が設置されており、現像槽2および定着槽3内に管路12および13を介して補充液が補充されると、この補充量をほぼ同量の疲労、劣化した現像液および定着液が、それぞれ、排液口から槽外へ排出される。また、安定槽6に管路14を介して補充液が補充されると、オーバーフローが安定槽5、安定槽4へと順次供給され、最後に安定槽4のオーバーフローが槽外に排出される。
【0065】
処理槽2の発色現像液は図示しないヒータにより所定の温度に温調されることが好ましく、また、漂白定着液や安定液などの他の処理液も処理性能を向上させる視点から、図示しないヒータでそれぞれ所定温度に温調されるのが好ましい。
【0066】
なお、図1の自動現像機1には上記説明を明瞭にするため、あえて本発明に係る構成であるろ過手段や循環手段、検知手段等の図示を省略している。
【0067】
図1の自動現像機1に示す現像処理工程は、図2に示す自動現像機1に内蔵されている。図2は、本発明に係る現像処理装置の実施形態の例であるコンピュータを搭載した自動現像機の斜視図である。この自動現像機1は、本体11の左側面にマガジン装填部15を備え、本体11内には記録媒体である感光材料に露光する露光処理部16と、露光された感光材料を前述した現像処理工程で現像処理して乾燥する工程を経てプリント写真を作製する現像処理部2〜8を有し、作成されたプリント写真は本体11の右側面に設けられたトレー17に排出される。
【0068】
図2の自動現像機1の露光処理部16の上方に、本発明に係る現像処理装置における制御手段である制御部50が設けられている。本体11の上部に、本発明に係る現像処理装置における表示手段であるCRT60が搭載されている。CRT60は、プリント写真を作成する画像を画面に表示したり、メンテナンス作業時に作業者に行わせる作業内容を表示するものである。自動現像機1は、コンピュータ10を搭載しており、コンピュータ10には、図2では示してないが、記憶部70、制御部50、CRT60、及び通信装置90が設けられている。
【0069】
また、図2の自動現像機1には、CRT60の左側にネガフィルムをはじめとするフィルム原稿の読込みを行うフィルムスキャナ部80を有し、右側にはプリント写真等の反射画像を読み込んで画像入力を行う反射原稿入力装置85が配置されている。
【0070】
また、本体11の制御部50の位置には、情報読込部51が設けられ、PCカードやフロッピー(登録商標)ディスク、あるいはマルチメディアカード、メモリーステック、MDデータ、CD−R等の記憶媒体を介して、画像情報が入力されたり、自動現像機1のバージョンアップ用のソフトウェアが供給される様になっている。
【0071】
さらに、自動現像機1は、図2に明示していないが、記憶部70を有する。記憶部70は、本発明に係る現像処理装置を構成する記憶手段であって、自動現像機1に予め設定されている条件(所定条件)で発現される物理量変化の情報や、自動現像機1にこれまでに行ってきたメンテナンス作業の履歴情報、自動現像機1に使用されているろ過フィルタや循環ポンプ等の消耗部品の耐用期間に関する情報などが記憶されている。これらの情報を記憶部70に記録する方法は特に限定されるものではなく、例えば、メンテナンスマンが作業時に手入力によるものや、インターネット等の通信手段を介して自動入力する方法などが挙げられる。
【0072】
自動現像機1は、メンテナンス作業時に必要な作業の内容をCRT60に表示して、必要とする作業の内容を作業者に伝達することが可能である。すなわち、自動現像機1では、制御部50が記憶部70に記憶されている昇温速度や循環速度、消費電力量などの物理量変化に関する情報と後述する検知部材により検知される物理量変化とを比較する。そして、比較した結果と記憶部70に記憶されている自動現像機1にこれまで行ってきたメンテナンス作業に関する情報とを照合して、CRT60に表示するメンテナンス作業の内容を決める。
【0073】
本発明に係る現像処理装置についてさらに詳細に説明する。
【0074】
図3は、図1に示した自動現像機1の発色現像槽2をさらに詳細に説明した模式図である。図3に示す様に、発色現像槽2などの処理槽は、露光済みの写真感光材料を現像処理する処理槽20と、補充液を投入したり処理液のろ過を行う補助タンク21、処理槽20と補助タンク21とを連結する循環パイプ22、及び、本発明に係る現像処理装置における検知手段に相当する検知部材40を有する。
【0075】
図3では、補助タンク21内に処理液のろ過を行うろ過手段であるろ過フィルタ23を設け、循環パイプ22の経路中に循環ポンプ30を設け、循環パイプ22を介して発色現像液が処理槽20と補助タンク21との間を循環させる。処理液の循環方向は、例えば、図3で示す矢印方向に循環させるものや、これと逆方向に循環させるものが挙げられる。
【0076】
この様に、処理液を処理槽内を循環させることにより、処理液の液温度や含有成分濃度を均一化させて処理性能が一定レベルになる様に維持している。また、補助タンク21の上方に補充管12を設け写真感光材料の処理量に応じて所定量の補充液が処理槽内に供給される。
【0077】
検知部材40は、自動現像機1の電源スイッチをオンしてから現像処理が可能になるまでの間に発現される物理量の変化を検知するものである。自動現像機1で発現される物理量の変化の、具体的な例としては、電源をオンしてから現像処理が可能になるまでの間に発現される処理液の昇温速度や送液速度、液の循環量変動、液面変動、さらには、消費電力量の変動や循環ポンプの回転数の変動などが挙げられる。
【0078】
また、検知部材40には上記に挙げたものの他に、新液更新時を起点にして感材処理レベルを積算する処理量カウンタや、処理時間を積算するタイマー等も含まれる。
【0079】
本発明では、自動現像機1で電源スイッチをオンしてから現像処理が可能になるまでの間に、処理液の循環速度や昇温速度などの処理槽内の処理液で発現される物理量の変化や、自動現像機1の消費電力量の変化や循環ポンプの回転数の変化を検知部材40で検知し、その検知結果を前述した制御部50に伝達する。そして、制御部50では、検知部材40で検知した結果と前述の記憶部70に記憶されている自現機で本来発現される物理量変化の情報とが比較、照合される。そして、制御部50は、両者間の変化に乖離が見られる場合に、当該自現機にメンテナンス作業を実施する必要があると判断し、記憶部70に記録されたメンテナンス履歴情報に基づいて自動現像機1に必要なメンテナンス作業の内容をCRT60に表示する。
【0080】
図3は、作業者に行わせる作業がろ過フィルタの交換の場合で、CRT60に「ろ過フィルタの交換を行ってください」という情報が表示されている。メンテナンスマンはCRT60に表示されている内容の作業を実施して自動現像機1に必要なメンテナンス作業を円滑に行うことが可能になる。
【0081】
この様に、本発明では当該現像処理装置で本来発現される物理量変化の情報とメンテナンス作業の履歴情報を記憶したコンピュータと、現像処理可能になるまでに実際に起きている物理量変化を検知する検知手段により、本発明の課題が解消される。
【0082】
本発明で使用される物理量変化を検知する検知手段の具体例を以下に挙げる。
【0083】
処理液の昇温速度を検知する手段としては温度センサが挙げられる。本発明に使用される温度センサは、現像処理装置が設置されている環境の温度から現像処理温度近傍までの温度範囲での昇温速度を正確に検知することが可能なものであることが必要である。さらに、処理槽内にセットした時に、搬送ラックなどの処理槽内に配置する部材や現像処理中の感光材料の搬送を邪魔しないコンパクトなサイズを有することが好ましい。
【0084】
具体的には、直接処理液に接触して昇温速度を検知する接触式のものと、処理液から放射される赤外線を測定し、その赤外線量の変動から昇温速度を検知する非接触方式のものが挙げられる。接触式の温度センサの具体例としては、例えば、白金測温抵抗体、サーミスタ、熱電対などが挙げられ、比較的簡素な構成であることや多品種のものが市場に出回っている状況から選択性や経済性の面から好ましい。また、非接触方式の温度センサとしてはサーモパイルなどが挙げられ、接触式の温度センサと比較して構造が複雑になるが、処理液に接触させることなく温度検知が可能なので、タンク容量の小さな現像処理装置の昇温速度の検知に好ましい。
【0085】
接触方式の温度センサについてさらに説明する。熱電対は、2種類の異なる金属線を先端で接合した(対にした)温度センサで、両端の温度差に応じて発生する微弱な電圧(熱起電力)を利用して処理液の昇温速度を検知するものである。熱電対には、例えば、プラス側にニッケル及びクロムを主とする合金や鉄、銅の金属線が、マイナス側に銅及びニッケルを主とする合金やニッケルを主とする合金製の金属線を用いた2種類の金属線をビニール、ガラス繊維、テフロン(登録商標)等で被覆して構成されている被覆熱電対が挙げられ、機械的強度と柔軟性を有し、自由な長さで使用することができる。熱電対の具体例は、例えば、助川電気工業株式会社のホームページ(http://sukegawadenki.co.jp)にある製品カタログを参照するとよい。
【0086】
サーミスタは、金属酸化物や半導体などの電気抵抗が温度で変化することを利用して温度変化を検知するもので、その形状は小型のものが多く、マンガン、コバルト、ニッケルの金属酸化物やシリコン単結晶、ゲルマニウムや炭化ケイ素の薄膜などが用いられる。
【0087】
サーミスタは、温度変化に対する電気抵抗の変化の仕方により、次の3つの種類に分類される。すなわち、温度の上昇で電気抵抗が大きくなるものをPTC、減少するものをNTC、特定の温度で電気抵抗が急変するものをCTRという。サーミスタの具体例は、例えば、コーア株式会社のホームページ(http://www.koaproducts.com/)にある製品カタログを参照するとよい。
【0088】
白金測温抵抗体は、前述のサーミスタと同様に、金属の電気抵抗が温度変化に対して変化する性質を利用した測温抵抗体の1種で、温度特性が良好で経時変化が少ない白金(Pt)を測温素子に用いたセンサである。白金測温抵抗体は、温度上昇に伴い金属分子運動が活発化して電気抵抗が上昇するという白金の性質を利用して温度変化を検知するものである。そして、白金は抵抗値の変化と温度変化の関係が直線的(リニア)な変化を示す傾向があることから、高い再現性が得られる。白金測温抵抗体の具体例は、前述のコーア株式会社のホームページやキーエンス株式会社のホームページ(http://www.keyence.co.jp/)に掲示される製品カタログを参照するとよい。
【0089】
また、非接触方式の温度センサであるサーモパイルは、物体から放射される赤外線を受けた時に、そのエネルギー量に応じた熱起電力を発生する赤外線センサにより処理液の温調速度を測定するものである。サーモパイルの具体例としては、例えば、日本セラミック株式会社のホームページ(http://www.nicera.co.jp/)内にある製品カタログを参照するとよい。
【0090】
また、処理液の循環速度を検知する手段としては流量計が挙げられる。本発明に使用される流量計は、処理槽内で循環状態にある処理液の瞬時流量を測定することが可能な流量計であれば特に限定されるものではない。瞬時流量測定が可能な流量計としては以下のものが挙げられる。例えば、フロートの動きから流量を求める面積流量計、オリフィスを通過させた時の液流の圧力差より流量を検知する差圧式流量計、流体中に置いた柱状物体後方で発生する渦列の発生周波数をサーミスタやストレンゲージで測定することで流量を検知する渦式流量計、液流の流れ方向に対して直角の向きに磁界を加えた時に発生する起電力の大きさから流量を検知する電磁式流量計、流体中を伝播する超音波が流速によりその速度や周波数を変化させる性質を利用して流量を検知する超音波式流量計、単位時間あたりの羽根車の回転数から流量を検知する羽根車式流量計等が挙げられる。
【0091】
本発明に使用される流量計は、市販される上記流量計でよく、例えば、オムロン社製のE8Y型差圧流量計、旭有機材社製のVortex V1型渦式流量計、富士電機社製のEシリーズ電磁流量計、東京計装社製の小口径超音波流量計UCUFシリーズ、グラーツ社製のビジョン2000型インペラ式流量センサなどがある。さらに、詳細な内容については、上記メーカーや日本フローコントロール社(http://www.flow−jfc.com/)のホームページに記載されている各種流量計のカタログを参照するとよい。
【0092】
また、現像処理装置の消費電力量の変動は、当該現像処理装置内に装填可能なコンパクトな市販の消費電力計や、スイッチをオンした後の電圧値や電流値の変動を検知可能な電圧計や電流計で確認することが可能である。
【0093】
循環ポンプの回転数の変動を検知する手段としては、接触型回転計に代表される回転計の他に、前述の消費電力量や電流値変動、電圧変動に基づいて、ポンプの回転数を算出するものでもよい。前述の回転計には、主軸に回転スリット円板を取り付けて計測する接触型回転計や、主軸に反射テープを貼付して計測する非接触型回転計や、ポンプの主軸に一定周期で点滅する光を照射して回転数を計測するストロボスコープ式回転計が挙げられる。ストロボスコープ式の回転計は点滅光の影響が処理槽に及ばない様に設計しておく必要がある。なお、具体的な回転計の例としては、株式会社テストーのホームページ(http://www.testo.co.jp)に記載の回転計のカタログ等の回転計メーカのホームページを参照するとよい。
【0094】
次に、図4のブロック図を用いて、本発明に係る現像処理装置を構成する制御手段を説明する。制御部50は、本発明に係る現像処理装置1の作動を制御するもので、特に、メンテナンス作業が必要な時に、記憶部70に記憶される情報と検知部40で検知された情報を活用して現像処理装置1に行うべきメンテナンス作業の内容を作業者に指示することが可能である。
【0095】
制御部50は、記憶部70に記録された情報や検知部40で検知された情報等に基づいて現像処理装置1の作動を制御するもので、コンピュータの形態を採る。制御部50は、現像処理装置を構成する各装置が円滑に作動する様に実際に制御を行う処理部(CPU)に該当するもので、各種の情報を記憶しておく記憶部(主記憶部、補助記憶部)70、情報入力等の操作を行う操作部80、メンテナンス作業内容等の各種情報を表示する表示部60、循環ポンプ31や搬送駆動モータ34など感材処理や現像処理装置1の状態を維持するために作動する各種部材や装置よりなる作動部30、バージョンアップしたソフトウェアのダウンロードによる取込み等に使用される通信装置90と接続している。そして、制御部50はこれらの構成との間で情報信号のやりとりを行い、これらの情報信号に基づいて現像処理装置1の作動やメンテナンスを制御する。
【0096】
本発明に係る現像処理装置は、制御部50により円滑なメンテナンス作業が行える様になっている。すなわち、制御部50には、例えば、電源スイッチがオンされて現像処理可能な状態になるまでの間、あるいは、メンテナンスモードに入った時に、記憶部70より現像処理装置1で本来発現される昇温速度の変化やポンプの循環量の変化などの物理量の変化に関する情報が情報信号として入力される。同時に制御部50には、検知部40により実際に発現している物理量変化の情報が情報信号として入力される。
【0097】
制御部50は、記憶部70からの情報信号と検知部40で検知された情報信号を比較し、双方の情報信号が同じ挙動を示していると判断した場合はメンテナンス作業を行う必要がないと判断する。すなわち、制御部50は、記憶部70に記憶される物理量変化と実際に発現される物理量変化が同じ挙動を示していると判断した時、現像処理装置1が所定状態に到達した時に表示部60に「現像処理が可能です」等と表示させ、メンテナンス作業を指示する必要がないと判断する。
【0098】
一方、制御部50は、記憶部70に記憶されている物理量変化と実際に発現される物理量変化の挙動との間に乖離があることを見出した時、現像処理装置1にメンテナンス作業を行う必要があると判断する。そして、制御部50は、今回発生した物理量変化の乖離の原因を解析するために、記憶部70に記憶されている現像処理装置1にこれまでに行ったメンテナンス作業の履歴情報を調べる。すなわち、制御部50は、これまでに行ってきた種々のメンテナンス作業の内容を調べ、例えば、前回作業から大分日数が経過していてフィルタの様な部材の交換が必要なものや、ごく最近作業を行っていても装置の設置環境や処理条件により改めてその作業が必要になっていると考えられる作業など、物理量変化を乖離させたと推測される原因を解消させる具体的な作業を見つけ出す。そして、これらの具体的な作業内容を表示部60に表示し、メンテナンスマンに作業を指示する。
【0099】
ここで、「物理量変化の挙動との間に乖離がある」とは、例えば、処理液の昇温速度を例にすると、発色現像処理液の温度を20℃から38℃に昇温させるのに要する時間が通常は10分であるものが、実際は15分要する場合の様に、実際に発現している物理量変化がメンテナンスの行き届いた状態で発現される物理量変化(所定条件における物理量変化という)から逸脱している状態のことをいう。
【0100】
この様にして、本発明に係る現像処理装置1は、当該装置に必要なメンテナンス作業の内容を作業者に伝達できるので、たとえ、メンテナンスマンが常駐しない様な環境に設置された場合でも、的確なメンテナンス作業を迅速かつタイムリーに行える。
【0101】
次に、本発明に係る現像処理装置1で行われるメンテナンス作業の流れを図5のフロー図を用いて説明する。なお、図5のフローを行う現像処理装置1は、制御部50が表示部60に表示されたメンテナンス作業の完了を確認した後、再度検知部40により物理量変化の検知を行うように制御しているものである。
【0102】
メンテナンスマンは、操作部80の操作等を行い、現像処理装置1をメンテナンスモードにして(ステップS1)、現像処理装置1をメンテナンス作業を行える状態にする。ここで、メンテナンスモードとは、現像処理装置1にメンテナンス作業を実施することが可能な状態のことをいい、例えば、電源スイッチをオンにした後は、特別な操作を行うことなく自動的にメンテナンス作業が行える状態になるものもここでは含まれる。
【0103】
メンテナンスモードに移行すると、検知部40は現像処理装置1で発現している物理量変化の検知を開始し(ステップS2)、検知部40で検知された物理量変化に関する情報は情報信号として制御部50に送られる(ステップS3)。また、別の方法として通常の処理モードにおいて物理量の変化を継続的に検知、記憶しておき、メンテナンスモードに入った時に記憶されている情報を読み出してもよい。
【0104】
制御部50では、前述の検知部40からの情報信号に加えて、記憶部70より所定条件下で本来発現される物理量変化の情報が情報信号として供給され(ステップS4)、2つの情報信号を比較し(ステップS5)、現像処理装置1にメンテナンス作業を行う必要があるか否かを判定する(ステップS6)。
【0105】
そして、現像処理装置1にメンテナンス作業を行う必要がないと判断した場合(ステップS6のNo)は、メンテナンスモードを自動的に解除(ステップS7)して、現像処理を行える状態にする。一方、メンテナンス作業の実施が必要と判断した場合(ステップS6のYes)は、作業者に実施させるメンテナンス作業内容を決めることになる。
【0106】
制御部50は、これまでに現像処理装置1に行ってきたメンテナンス作業履歴に関する情報を記憶部70より受け(ステップS8)、前述の物理量変化に関する情報信号と照合しながら(ステップS9)、メンテナンスマンに実施させる作業の内容を決め(ステップS10)、表示部60に決めた作業の内容を表示する(ステップS11)。
【0107】
メンテナンスマンは、表示部60に表示された内容の作業を行い、制御部50は表示された作業が完了したことを確認すると(ステップS12のYes)、表示部60から該当作業の表示を削除する(ステップS13)。
【0108】
図5では、制御部50は、表示部60から該当作業の表示を削除した後、検知部40により物理量の変化を再度検知し(ステップS2)、前述のステップS3からS6を繰り返し行って、メンテナンスマンの対応した作業により現像処理装置1における所定の物理量変化が発現することを確認する。そして、所定の物理量変化が発現されることを確認できると、メンテナンスモードを解除して(ステップS7)、メンテナンス作業を終了する。
【0109】
この様に、図5のフロー図によるメンテナンス作業を行う現像処理装置では、作業完了後に検知部40を作動させて現像処理装置1が所定の物理量変化を行って現像処理可能な状態になるかを確認できる。その結果、作業者は表示部60に表示された作業が適切なものだったか否かをタイムリーに確認できるので、限られた作業時間内で効率よくメンテナンス作業を行える様になる。
【0110】
また、本発明に係る現像処理装置1は、制御部50が複数のメンテナンス作業の内容を優先順位をつけて表示部60に表示させるものでもよい。複数の作業を優先順位をつけて表示する方法は、制御部50がステップS8〜S9の段階で検知情報とメンテナンス履歴情報とを照合する時に、物理量変化が元に戻る可能性があると思われる作業の内容を全て見つけておく。そして、複数項目の物理量変化情報や部材の耐用期間情報、さらにメンテナンス履歴情報から優先順位を判断し、ステップ10の段階で表示部60に複数の作業内容を表示する。
【0111】
この様に、複数の作業内容をモニタ60に優先順位をつけて表示することにより、メンテナンスマンは当該現像処理装置1に必要なメンテナンス作業の全体像を把握できるので、当該現像処理装置1に施す作業の難易度を把握して作業を行うことができる。そして、これらの要因の中でも、特に重要な作業を優先的に対処する様になっているので、問題を解消させる作業を迅速かつ確実に行える様になる。また、優先順位に基づいた作業を行うことにより、例えば、全ての作業を一度にできない様な時間的に制約された状況でも、対応が必要な作業と対応を遅らせてもだいじょうぶな作業とに区別できるので、制約の多い状況下での作業効率を向上させることが可能になる。
【0112】
さらに、本発明に係る現像処理装置1は、前述の様に、制御部50が優先順位をつけて選択した複数の作業内容を、例えば、優先順位にしたがって1つずつ表示部60に表示して、作業者に作業の指示を行うものでもよい。すなわち、表示部60に表示された内容の作業を行い、作業により物理量変化が所定の挙動になるかを確認する。そして、物理量変化が所定の挙動に戻らない場合には、優先順位にしたがった次の作業を表示部60に表示し、当該作業を行う様に指示する。
【0113】
この様に、表示部60には優先順位に基づいて作業内容が1つずつ表示され、表示された作業を1つずつ確実に行っていくことが可能である。したがって、優先順位の高い作業をうっかりやり忘れる様なこともなく、作業を確実に進めていくことが可能である。
【0114】
ここで、上記フローに基づいて表示部60に表示されるメッセージの例を図6を用いて説明する。図6は、図5のフローに対応して表示部60に表示されるメッセージの例を段階的に示したものである。先ず、ステップS6で制御部50が現像処理装置1に対してメンテナンス作業を行う必要がないと判断した場合は、(a)に示す様にメンテナンス作業を行う必要がないことを伝えるメッセージを表示する。
【0115】
一方、制御部50がメンテナンス作業が必要だと判断した場合は、例えば(b)に示す様なメッセージを表示した後、続けて(c)に示す様な具体的な作業内容を表示する。これは、図5のステップS6〜S11の流れに相当する。そして、制御部50がメンテナンスマンが作業を完了したことを確認し、さらに、メンテナンスマンの作業により物理量変動の挙動が所定のものになったことを確認すると、表示部60の表示は、(c)から(d)に遷移する。これは、図5のステップS11〜S13〜S6の流れに相当する。
【0116】
この様に、表示部60の表示内容は、制御部50により、例えば、図6に示す様なメッセージを表示する。
【0117】
また、本発明は、メンテナンス作業が必要であると制御部50が判断した時に、複数の作業を用意し、かつ、これらに優先順位をつけてメンテナンスマンに作業内容を提示することが可能である。図7〜図9は、複数のメンテナンス作業を優先順位をつけた状態で表示部60に表示した例を示す模式図である。
【0118】
図7と図8は、画面上に複数の作業内容を列記して表示するもので、制御部50で決めた優先順位は各作業の頭に付された番号で示されている。図7(a)は、メンテナンスマンが表示部60に表示された指示にしたがって、補助タンクの清掃作業を行った結果、物理量変化の挙動が本来のものに戻り、これ以上作業を行う必要がなくなったことを示す。また、図7(b)は、最初に補助タンクの清掃作業を行ったが物理量変化を元通りにするには別の作業も必要で、2番目に表示されたろ過フィルタの清掃を行って問題を解消させたことを示す。同様に、図8(a)は3番目に表示された循環ポンプの清掃まで行うことで問題を解消させ、図8(b)では4番目のろ過フィルタの交換まで行って問題を解消させることができたことを示す。
【0119】
また、図9は、優先順位をつけた作業内容を1つずつ画面上に表示するものである。すなわち、図9(a)は、制御部50は最も効果的な作業に補助タンクの清掃を挙げ、メンテナンスマンにこの作業を行う様にモニタに表示する。そして、メンテナンスマンが補助タンクの清掃を行い、物理量変化が本来の挙動に戻ったので作業を終了してよいことを表示している。また、図9(b)は、最初に補助タンクの清掃を行わせたが、物理量変化が本来の挙動に戻らなかったことを検知したので、制御部50は2番目の作業としてろ過フィルタの清掃を行う様に指示し、作業後に物理量変化の挙動が元に戻った場合である。同様に図9(c)は優先順位が3位の循環ポンプの清掃を行うことで問題が解消したものであり、図9(d)は優先順位4位のろ過フィルタの交換を行って問題を解消させたことを示している。
【0120】
この様に、本発明に係る現像処理装置1では、制御部50がメンテナンス作業の必要性を判断した時に、複数の作業内容を優先順位をつけてメンテナンスマンに提示することが可能である。したがって、メンテナンスマンは表示部60の表示内容にしたがってメンテナンス作業を行うことで、現像処理装置1で発現される物理量変化の挙動を本来のものに戻せるので、発生した問題を迅速かつ確実に解消することが可能である。
【0121】
本発明に係る現像処理装置は、メンテナンス作業に関する情報を通信手段を介して取得することで、メンテナンス作業の効率を向上させることが可能である。すなわち、本発明に係る現像処理装置1は、通信装置90を設けることによりメンテナンス作業に対するメンテナンスマンの負担をさらに低減することが可能である。図10は本発明に係る現像処理装置1をネットワーク接続したシステムの概略図である。ネットワーク91には、本発明に係る現像処理装置1の他にサーバ92が接続されている。メンテナンスマンは、手持ちのパソコン93や画面付きの携帯電話94を介してネットワーク上の装置にアクセスできる様になっている。
【0122】
本発明では、サーバ92にネットワーク91に接続する各現像処理装置1のメンテナンス関係の情報を記録、管理することで、各現像処理装置で行われたメンテナンス作業に関する情報をメンテナンスマンの間で共有化することが可能になる。すなわち、ネットワーク上の現像処理装置1で行われたメンテナンス作業の履歴情報(例えば、○年○月○日に□部品を交換した)や、メンテナンス作業を行う時に検知手段によって検知された検知結果(例えば、昇温速度が○℃/minで通常よりも10%遅れていた)、メンテナンス作業時にメンテナンスマンに伝達した作業の内容といったメンテナンスに関する情報をセットにしてサーバ92に記録しておくとよい。
【0123】
メンテナンスマンは、パソコン93や画面付きの携帯電話94でサーバ92にアクセスし、サーバ92に記録されている各機でこれまでに行われてきたメンテナンス作業に関する情報が閲覧可能である。そして、これらの情報を自分が担当する機器をメンテナンスする時に参考情報として用いる。サーバ92に記録されたメンテナンス関係の情報は、各現像処理装置で検知手段が検知した状況に基づいて行われた内容なので、自分が担当する機器で同じ様な傾向が見られた時に対応する作業内容を決める上で参考になる。
【0124】
したがって、現像処理装置の状況に応じて行うメンテナンス作業の内容がメンテナンスマンの間で共有化されるので、メンテナンス作業の効率と精度を向上させることが可能になる。とりわけ、業務経験の浅いメンテナンスマンにとっては多くの情報が得られ、限られた時間内で適格なメンテナンス作業を遂行するための情報源として有効である。また、図10に示す様に、ネットワークに接続されていない現像処理装置96をメンテナンスする場合でも、携帯電話94やパソコン93で情報を利用することができるので、ネットワーク接続していない現像処理装置のメンテナンス作業にもサーバ92に記録されたメンテナンス作業に関する情報が有効に利用される。
【0125】
また、本発明では、バージョンアップしたソフトウェアなどの様に、メンテナンス作業に道具として使用する情報をサーバ92に登録しておき、作業者はサーバにアクセスして必要なソフトウェアをその場で調達できる様にすること可能である。すなわち、現像処理装置1で使用されるソフトウェアをバージョンアップする必要が生じた時に、サーバ92にバージョンアップ用のソフトウェアを保管しておく。メンテナンスマンは、作業中の現像処理装置1よりサーバ92にネットワーク91を介してアクセスし、バージョンアップ用のソフトウェアをサーバ92より直接ダウンロードして現像処理装置1のソフトウェアをバージョンアップする。
【0126】
この様に、バージョンアップ用のソフトウェアを作業を行っている場所で得られるので、メンテナンスマンはバージョンアップ用のソフトウェアを収納した媒体を常時携帯しておく手間がなくなり、作業負担を軽減させることが可能になる。
【0127】
さらに、図10に記載のシステムの下でメンテナンス業務を進めていくと、各現像処理装置のメンテナンスに関する情報が全メンテナンスマンの間で共有化されている状態となり、メンテナンスマンのアサインが円滑に行え、迅速かつ確実な作業対応が可能になるとともに、作業者の労務管理を行う上でも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】ハロゲン化銀写真感光材料の現像処理工程の一例を示す概略図である。
【図2】コンピュータを搭載した自動現像機の斜視図である。
【図3】自動現像機内の処理槽を詳細に説明した模式図である。
【図4】本発明に係る現像処理装置を構成する制御手段のブロック図である。
【図5】本発明で行われるメンテナンス作業の流れを示すフロー図である。
【図6】メンテナンス作業の内容をモニタ表示する例の模式図である。
【図7】複数のメンテナンス作業に優先順位をつけて表示する例の模式図である。
【図8】複数のメンテナンス作業に優先順位をつけて表示する例の模式図である。
【図9】複数のメンテナンス作業に優先順位をつけて表示する例の模式図である。
【図10】現像処理装置をネットワーク接続したシステムの概略図である。
【符号の説明】
【0129】
1 自動現像機
2 発色現像槽
3 漂白定着槽
4 安定槽−1
5 安定槽−2
6 安定槽−3
7 スクイズ部
8 乾燥部
10 コンピュータ
20 処理槽
21 補助タンク
22 循環パイプ
30 ポンプ
40 検知部
50 制御部(CPU)
60 表示部(モニタ、CRT)
70 記憶部
80 操作部
90 通信装置
91 ネットワーク
92 サーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光済みのハロゲン化銀写真感光材料を現像処理する現像処理装置であって、
該現像処理装置に設定されている条件に基づいて発現される物理量変化に関する情報とメンテナンス作業に関する情報とを記憶する記憶手段と、
該現像処理装置で実際に発現している物理量変化を検知する検知手段と、
該現像処理装置に行うメンテナンス作業の内容を表示する表示手段と、
該表示手段に表示するメンテナンス作業の内容を決める制御手段と、を有し、
該制御手段は、
該記憶手段に記憶されている物理量変化に関する情報と該検知手段により検知された物理量変化を比較して、
比較して得られた結果と該記憶手段に記憶されているメンテナンス作業に関する情報とを照合して、
該表示手段に表示するメンテナンス作業の内容を決める
ものであることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の現像処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記表示手段に複数のメンテナンス作業内容を表示させるものであり、
前記記憶手段に記憶されているメンテナンス作業に関する情報に基づいて、該表示手段に表示する作業の内容を優先順位をつけて表示する様に制御するものであることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀写真感光材料の現像処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記表示手段に表示されたメンテナンス作業が完了したことを確認すると、
前記検知手段で物理量変化の検知を行う様に制御するものであることを特徴とする請求項1または2に記載のハロゲン化銀写真感光材料の現像処理装置。
【請求項4】
前記物理量変化が少なくとも2種以上の物理量変化であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料の現像処理装置。
【請求項5】
前記物理量変化の少なくとも1種は、前記現像処理装置の処理槽内に貯留された処理液の昇温速度であり、
前記検知手段は、該処理槽内の処理液の昇温速度を検知するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料の現像処理装置。
【請求項6】
前記現像処理装置は、前記処理槽内に貯留された処理液を循環する循環手段を有し、
前記物理量変化の少なくとも1種は、該処理槽内での処理液の循環速度であり、
前記検知手段は、該処理槽内に貯留された処理液の循環速度を検知するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料の現像処理装置。
【請求項7】
前記物理量変化の少なくとも1種は、前記現像処理装置の消費電力量の変化であり、
前記検知手段は、該現像処理装置の消費電力量を検知するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハロゲン化銀写真感光材料の現像処理装置。
【請求項8】
露光済みのハロゲン化銀写真感光材料を現像処理する現像処理装置に対するメンテナンスシステムであって、
該現像処理装置に設けられている記憶手段に、該現像処理装置に設定されている条件に基づいて発現される物理量変化に関する情報とメンテナンス作業に関する情報とを記憶しておき、
該現像処理装置に検知手段を設けて、実際に発現している物理量変化を検知し、
該記憶手段に記憶されている物理変化に関する情報と該検知手段により検知された物理量変化を比較し、比較して得られた結果と該記憶手段に記憶されているメンテナンス作業に関する情報とを照合して、
該現像処理装置に行うメンテナンス作業の内容を、該現像処理装置に設けられた表示手段に表示することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料の現像処理装置へのメンテナンスシステム。
【請求項9】
前記メンテナンス作業に関する情報を通信手段を介して取得する請求項8に記載のハロゲン化銀写真感光材料の現像処理装置へのメンテナンスシステムであって、
前記記憶手段に記憶されている物理量変化に関する情報とメンテナンス作業に関する情報と、前記検知手段により検知された実際に発現した物理量変化の情報の少なくとも1つを、ネットワーク上に設けられたサーバに該通信手段を介して送信し、該サーバに記憶された前記情報を該通信手段を介して受信する、
ことを特徴とする請求項8に記載のハロゲン化銀写真感光材料の現像処理装置へのメンテナンスシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−53215(P2006−53215A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−233133(P2004−233133)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(303050159)コニカミノルタフォトイメージング株式会社 (1,066)
【Fターム(参考)】