説明

ハロゲン化銀感光材料の製造方法

【課題】 本発明の目的は、製造安定性(塗布液停滞安定性、塗布性)及び高温保存時の安定性が改良されたハロゲン化銀感光材料の製造方法を提供することである。
【解決手段】 支持体上に感光性ハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀感光材料の製造方法において、少なくとも1層の該感光性ハロゲン化銀乳剤層が下記一般式(1)で表される増感色素を含有し、かつ該一般式(1)で表される増感色素を含有する該感光性ハロゲン化銀乳剤層を形成する塗布液が、pHが6.5以上、8.0以下であって、かつ硬膜剤を除く全ての添加剤の添加が終了してから、該支持体上へ塗布を開始するまでの時間が1時間以上であることを特徴とするハロゲン化銀感光材料の製造方法。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造安定性(塗布液停滞安定性、塗布性)及び高温保存時の安定性が改良されたハロゲン化銀感光材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン化銀カラー感光材料は、高感度であること、色再現性に優れていること、連続処理に適していることから今日盛んに用いられている。従来より広く使われている一般撮影用ハロゲン化銀カラー感光材料では、例えば、カラーネガフィルムで撮影し、現像処理を介して得られた色画像を、光学系を用いて焼き付ける方式では、予めプリント条件を設定しておけば、カラーネガフィルムの濃度を測定した結果から簡単にプリント条件が決定、調整され、カラープリント感光材料(カラー印画紙)上に、1回の露光でフルカラーの優れた画質のカラープリント画像を連続的に得ることが可能であり、極めて高い生産性を有しているシステムである。また、このカラー印画紙は、最近では、デジタルカメラ等で撮影された画像データにより、レーザー、LED等の露光光源の光量を変調し、カラー画像を形成するデジタル画像形成方法にも使われている。デジタル画像露光においても、通常であれば変調されたB、G、Rの3色の光を混合し、1回の走査によってカラー画像が形成され、従来と同様の高い生産性を示していた。
【0003】
また、ハロゲン化銀カラー感光材料を用いた記録材料は、特に低濃度においてノイズが少ないことが知られており、非常に滑らかな階調再現が可能である特徴を有していることから、露光装置が十分な階調再現容量を有する場合には、特に、ハイライトの描写性に優れるという特徴を有していた。こうした特徴から、ハロゲン化銀カラー感光材料は、写真の分野のみではなく、印刷の分野でも、印刷の途中の段階で仕上がりの印刷物の状態をチェックするためのいわゆるカラープルーフの分野で広く用いられるようになってきている。
【0004】
プルーフの分野では、コンピュータ上で編集された色画像を印刷用フィルムに出力し、現像処理済みのフィルムを適宜交換しつつ分解露光することによって、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色画像を形成させ、最終印刷物の画像をカラー印画紙上に形成させることにより、最終印刷物のレイアウトや色の適否を判断することが行われていた。
【0005】
最近では、コンピュータ上で編集された画像を直接印刷版に出力する方式が徐々に普及してきており、このような場合には、コンピュータ上のデータからフィルムを介することなく直接カラー画像を得ることが望まれていた。
【0006】
このような目的には、溶融熱転写方式や電子写真方式、インクジェット方式等種々の方式の応用が試みられてきたが、高画質な画像が得られる方式では費用がかかり生産性が劣るという欠点があり、費用が少なくてすみ生産性に優れた方式では画質が劣るという欠点があった。ハロゲン化銀感光材料、とりわけハロゲン化銀カラー感光材料を用いたシステムでは、ほとんどノイズ(粒状構造)をもたない画像形成が可能であることや優れた鮮鋭性から、正確な網点画像が形成できるなど高画質な画像形成が可能であり、また一方、連続した現像処理が可能であることや複数の色画像形成ユニットに同時に画像を書き込むことができる等の利点から高い生産性を実現することが可能であった。
【0007】
ハロゲン化銀カラー感光材料を用いたシステムは、極めて完成度の高い成熟製品と言われている一方で、要求される性能は、高感度、高画質、保存条件による性能変動が少ないこと、製造安定性に優れていること等多岐にわたり、その要求レベルは近年益々高まってきている。特に、高い色再現性、高画質な網点画像を安定して形成するには、画像形成の媒体となるハロゲン化銀感光材料の設計品質の他に、従来問題となってきたハロゲン化銀写真感光材料特有の製造過程での性能変動が少なく、更に製造後の様々な保存環境下における優れた品質安定性が望まれている。特に、近年盛んに実用化されている半導体レーザー(LD)や発光ダイオード(LED)等を光源とし、小さい単位での走査露光を採用した画像形成方法に至っては、わずかな画像形成媒体の変動でも影響が大きく、より高い安定性を備えた製品供給が求められる。
【0008】
上記課題に対し、ハロゲン化銀乳剤の分光増感に用いる増感色素からの改良アプローチがなされており、例えば、特定の構造を有するトリメチン型増感色素を併用することにより、長期間にわたり保存したハロゲン化銀写真感光材料を網点よりも小さな露光単位で走査露光後、現像処理することを連続して行った際に起こる複版画像の色の変動を抑制し、安定した面積階調画像が得られるハロゲン化銀感光材料が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、平均塩化銀含有率が95モル%以上のハロゲン化銀乳剤と特定の構造を有するトリメチン型増感色素とを用いて、経時保存前後における露光温度依存性が改良され、安定した画像形成が可能な面積階調画像の形成方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。本発明者は、上記提案されている特許文献1、2に記載の方法について継続検討した結果、確かに面積階調画像の色調変動抑制、経時保存安定性に優れた特性を有しているが、上述のようなより高画質な網点画像を安定して形成する要望が更に高まった現在、製造工程における極めて高い安定性が求められているが、上記提案されている方法では、製造工程で長時間の連続塗布を行った際に、十分な性能安定性を維持するためにはやや問題を抱えており、その対応のため、発色カプラーを塗布直前にインラインで添加して、極めて高い製造安定性を実現する必要があることが判明した。
【0009】
上記各特許文献で提案されている方法では、塗布液は各添加剤を混合した直後の不安定な状態で塗布され、形成された膜面の塗設分布が安定でないこと、また、求められる製造安定性を実現するためには、発色カプラーをインライン添加することが有効な手段の1つであるが、新たな設備が必要となり、大量生産を行う際に製造ロット毎の安定性が十分得られないことなどの問題が生じ、特許文献1、2で提案されている増感色素の実用化には大きな障害となっていた。
【特許文献1】特開2002−196443号公報
【特許文献2】特開2001−25356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、製造安定性(塗布液停滞安定性、塗布性)及び高温保存時の安定性が改良されたハロゲン化銀感光材料の製造方法
を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0012】
(請求項1)
支持体上に感光性ハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀感光材料の製造方法において、少なくとも1層の該感光性ハロゲン化銀乳剤層が下記一般式(1)で表される増感色素を含有し、かつ該一般式(1)で表される増感色素を含有する該感光性ハロゲン化銀乳剤層を形成する塗布液が、pHが6.5以上、8.0以下であって、かつ硬膜剤を除く全ての添加剤の添加が終了してから、該支持体上へ塗布を開始するまでの時間が1時間以上であることを特徴とするハロゲン化銀感光材料の製造方法。
【0013】
【化1】

【0014】
〔式中、R21及びR23は、各々置換あるいは非置換のアルキル基を表し、R21及びR23の少なくともいずれか一方の基はエチル基以外の基であり、R22及びR24は低級アルキル基を表し、R22とR24のいずれか一方は親水性基を置換したアルキル基である。V1、V2、V3及びV4は各々、水素原子あるいは加算したハメットσp値の総和が1.7より小さくなる置換し得る基を表し、V1〜V4が同時に水素原子あるいは塩素原子とはならない。Xは分子内の電荷を中和するのに必要なイオンを表し、n2は分子内の電荷を相殺するに必要なイオン数を表す。〕
(請求項2)
塗布及び乾燥終了後の膜面pHが、5.0以上、6.0以下であることを特徴とする請求項1記載のハロゲン化銀感光材料の製造方法。
【0015】
(請求項3)
前記ハロゲン化銀感光材料が、前記感光性ハロゲン化銀乳剤層として、イエロー発色感光性感光性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色感光性感光性ハロゲン化銀乳剤層及びシアン発色感光性感光性ハロゲン化銀乳剤層をそれぞれ少なくとも1層有するハロゲン化銀カラー感光材料であることを特徴とする請求項1または2に記載のハロゲン化銀感光材料の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、製造安定性(塗布液停滞安定性、塗布性)及び高温保存時の安定性が改良されたハロゲン化銀感光材料の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0018】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、支持体上に感光性ハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀感光材料の製造方法において、少なくとも1層の該感光性ハロゲン化銀乳剤層が前記一般式(1)で表される増感色素を含有し、かつ該一般式(1)で表される増感色素を含有する該感光性ハロゲン化銀乳剤層を形成する塗布液が、pHが6.5以上、8.0以下であって、かつ硬膜剤を除く全ての添加剤の添加が終了してから、該支持体上へ塗布を開始するまでの時間を1時間以上としたハロゲン化銀感光材料の製造方法により、従来前記一般式(1)で表される増感色素を含む塗布液で問題となっていた塗布液停滞安定性を向上すると共に、塗布直前に高い体積比率を占める発色カプラーを混合することによる塗布不安定性が排除でき、安定した塗膜形成を実現でき、更にこれらの製造方法に従って作製したハロゲン化銀感光材料を、長期間にわたり保存した際の保存安定性を向上できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0019】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0020】
本発明のハロゲン化銀感光材料の製造方法(以下、単に製造方法ともいう)においては、感光性ハロゲン化銀乳剤層が前記一般式(1)で表される増感色素を含有することを1つの特徴とする。
【0021】
はじめに、本発明に係る前記一般式(1)で表される増感色素について説明する。
【0022】
前記一般式(1)において、R21及びR23は、各々置換あるいは非置換のアルキル基を表し、R21及びR23の少なくともいずれか一方の基はエチル基以外の基であり、R22及びR24は低級アルキル基を表し、R22とR24のいずれか一方は親水性基を置換したアルキル基である。V1、V2、V3及びV4は各々、水素原子あるいは加算したハメットσp値の総和が1.7より小さくなる置換し得る基を表し、V1〜V4が同時に水素原子あるいは塩素原子とはならない。Xは分子内の電荷を中和するのに必要なイオンを表し、n2は分子内の電荷を相殺するに必要なイオン数を表す。
【0023】
前記一般式(1)において、R21及びR23が各々表す置換アルキル基としては、例えば、ヒドロキシエチル、エトキシカルボニルエチル、エトキシカルボニルメチル、アリル、ベンジル、フェネチル、メトキシエチル、メタンスルホニルアミノエチル、3−ヒドロキシブチル等の各基が挙げられ、非置換のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル等の低級アルキル基が挙げられる。ただし、R21及びR23のいずれか一方は、エチル基以外の基を表す。
【0024】
22及びR24が各々表す低級アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、トリフルオロエチル等の各基が挙げられ、親水性基で置換されたアルキル基としては、例えば、カルボキシメチル、カルボキシエチル、メタンスルホニルアミノエチル、スルホブチル、スルホエチル、スルホプロピル、スルホペンチル、6−スルホ−3−オキソヘキシル、4−スルホ−3−オキソペンチル基、10−スルホ−3,6−ジオキソデシル、6−スルホ−3−チアヘキシル、o−スルホベンジル、p−カルボキシベンジル等の各基が挙げられる。
【0025】
1、V2、V3及びV4が各々表す置換基としては、該置換基のハメットσp値を加算した時、その総和が1.7を超えない範囲で任意の基であればよく、ハメットσp値の総和が0.8〜1.7であるものがより好ましい。加算したハメットσp値の総和が1.7より小さくなる、例えば、ハロゲン原子(弗素、塩素、臭素、沃素)、アルキル基(メチル、エチル、t−ブチル等)、アルコキシ基(メトキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ等)、トリフルオロメチル基、シアノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アシル基(アセチル等)、スルホニル基(メタンスルホニル等)、カルバモイル基(カルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−モルホリノカルバモイル等)、スルファモイル基(スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル等)、アセチルアミノ基、アセチルオキシ基等が挙げられる。
【0026】
Xが表す分子内の電荷を中和するに必要なイオンとしては、アニオン、カチオンの何れであってもよく、アニオンとしては、例えば、ハロゲン化物イオン(塩化物イオン、臭化物イオン、沃化物イオン等)、パークロレートイオン、エチルサルフェートイオン、チオシアナートイオン、p−トルエンスルホン酸イオン、パーフロロボレートイオン等があり、カチオンとしては、例えば、水素イオン、アルカリ金属イオン(リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等)、アルカリ土類金属イオン(マグネシウムイオン、カルシウムイオン等)、アンモニウムイオン、有機アンモニウムイオン(トリエチルアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン等)等が挙げられる。
【0027】
1、V2、V3及びV4が各々表す置換基において好ましいものは、
S=2L/(B1+B2+B3+B4
から導かれるS値が1.0より小さい値を与える基である。ここにL、B1、B2、B3及びB4はSTERIMOLパラメータを表す。
【0028】
具体的には、メチル基(S=0.815)、エチル基(S=0.992)、t−ブチル基(S=0.728)、メトキシ基(S=0.993)、メチルチオ基(S=0.982)、トリフルオロメチル基(S=0.697)、アセチル基(S=0.893)、メタンスルホニル基(S=0.825)、カルボキシル基(S=0.887)、カルバモイル基(S=0.93)、スルファモイル基(S=0.726)等の基、弗素原子(S=0.981)、塩素原子(S=0.978)、臭素原子(S=0.982)等が挙げられる。
【0029】
一般式(1)で用いられるハメットσp値は、ハメット等によって安息香酸エステルの加水分解に及ぼす置換基の電子的効果から求められた置換基定数であり、又、STERIMOLパラメータは、ベンゼン核との結合軸に対する投影図から求めた長さで定義された値であり、ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー23巻、420〜427頁(1958)、日本化学会編:実験化学講座14巻(丸善出版社)、フィジカル・オーガニック・ケミストリー(マグローヒル・ブック社,1940)、ドラッグデザイン第VII巻(アカデミック・プレス社,1976)、薬物の構造活性相関(南江堂,1979)等に詳しく記載されている。
【0030】
以下に、本発明で用いることのできる一般式(1)で表される増感色素の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
【化2】

【0032】
【化3】

【0033】
【化4】

【0034】
【化5】

【0035】
上記化合物は一般に公知であり、例えば、ハーマー著「ザ・シアニン・ダイズ・アンド・リレーテッド・コンパウンズ」(インターサイエンス・パブリシャーズ,ニューヨーク,1969年)に記載の方法により容易に合成できる。
【0036】
上記一般式(1)で表される増感色素の添加時期としては、ハロゲン化銀粒子形成から化学増感終了までの任意の時期でよい。又、これらの色素の添加方法としては、水又はメタノール、エタノール、弗素化アルコール、アセトン、ジメチルホルムアミド等の水と混和性の有機溶媒に溶解して溶液として添加してもよいし、増感色素を密度が1.0g/mlより大きい水混和性溶媒の溶液、又は乳化物、懸濁液として添加してもよい。
【0037】
増感色素の分散方法としては、高速撹拌型分散機を用いて水系中に機械的に1μm以下の微粒子に粉砕・分散する方法以外に、特開昭58−105141号に記載のように、pH6〜8、60〜80℃の条件下で水系中において機械的に1μm以下の微粒子に粉砕・分散する方法、特公昭60−6496号に記載の表面張力を0.038N/m以下に抑える界面活性剤の存在下に分散する方法、特開昭50−80826号に記載の、実質的に水を含まずpKaが5を上回らない酸に溶解し、該溶解液を水性液に添加分散し、この分散物をハロゲン化銀乳剤に添加する方法等を用いることができる。分散に用いる分散媒としては水が好ましいが、少量の有機溶媒を含ませて溶解性を調整したり、ゼラチン等の親水性コロイドを添加して分散液の安定性を高めることもできる。
【0038】
分散液を調製するのに用いることのできる分散装置としては、例えば、特開平4−125631号の第1図に記載の高速撹拌型分散機の他、ボールミル、サンドミル、超音波分散機等を挙げることができる。又、これらの分散装置を用いるに当たって、特開平4−125632号に記載のように、予め乾式粉砕などの前処理を施した後、湿式分散を行う等の方法を採ってもよい。
【0039】
本発明のハロゲン化銀感光材料の製造方法においては、上記説明した本発明に係る一般式(1)で表される増感色素を含む感光性ハロゲン化銀乳剤層を形成するpHを6.5〜8.0に調整された塗布液を、硬膜剤の各種添加剤の全てを添加した後、1時間以上経てから支持体上に塗布することを特徴とする。
【0040】
本発明において、感光性ハロゲン化銀乳剤層塗布液のpHを6.5〜8.0の範囲に調整することにより、本発明に係る一般式(1)で表される増感色素を用いても、塗布液を長時間にわたり停滞を行っても増感色素のハロゲン化銀粒子からの脱着を起こすことなく安定した性能を得ることができる。塗布液のpHが6.5未満では、上述のように本発明に係る一般式(1)で表される増感色素の析出やハロゲン化銀粒子からの脱着を起こしやすくなり、その結果、塗布液停滞時間の異なる条件で製造されたハロゲン化銀感光材料の感度、階調性、最小濃度等の変動やバラツキを引き起こす要因となる。また、塗布液のpHを8.0を超える条件とした場合には、塗布液の停滞時間が長くなるに従って、最小濃度(カブリ濃度)の増加や、ハロゲン化銀感光材料とした時、膜面pHが高くりすぎ、長期間にわたり保存した際の性能変動を引き起こすため好ましくない。
【0041】
本発明に係る一般式(1)で表される増感色素を含む塗布液のpHを上記で規定する範囲に調整する方法としては、公知の酸またはアルカリを用いて調整することができ、酸類としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸などの無機酸、酢酸、クエン酸、酒石酸などの水溶性有機酸が挙げられ、また、アルカリ類としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、炭酸水素ナトリウム、重炭酸ナトリウム等の無機アルカリなどが好ましく挙げられるが、その中でも、写真性能への影響が小さくという観点から、硫酸と水酸化ナトリウムを用いることが特に好ましい。
【0042】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀乳剤層を形成する塗布液、特に好ましくは発色カプラーを含むハロゲン化銀カラー感光材料に適用する感光性ハロゲン化銀乳剤層を形成する塗布液を構成する主な構成要素(それぞれの構成要素の詳細に関しては、後述する)としては、親水性バインダー(例えば、ゼラチン等)、本発明に係る一般式(1)で表される増感色素を用いて分光増感された感光性ハロゲン化銀乳剤、発色カプラーを含む分散物、カブリ安定剤、界面活性剤(塗布助剤)及び親水性バインダーを硬化するための硬膜剤から構成されているが、本発明の製造方法においては、上記構成要素のうち、硬膜剤を除く各構成要素の全てを混合して塗布液を調製してから、1時間以上の安定期間を設けた後、硬膜剤を塗布時に添加して、支持体上に塗布することを特徴とする。この様な塗布液を調製した後、1時間以上の安定期間を設けることにより、塗布液の均一性を高めることができ、その結果、安定した塗布を可能とし、均質性の高い塗膜を得ることができる。特に、調製初期、カプラー油滴を含む発色カプラー分散物を多量に添加、混合する場合、親水性バインダー等から構成されている母液との混合均一性に一定の時間を要するため、本発明で規定する時間が必要となる。
【0043】
本発明の製造方法では、上述の理由により、硬膜剤を除く各構成要素の全てを混合して塗布液を調製してから、1時間以上で塗布することを特徴とするが、好ましくは1時間以上、20時間以下であり、生産性等を考慮すると1時間以上、10時間以下がより好ましく、特に好ましく1時間以上、5時間以下である。
【0044】
本発明においては、硬膜剤を除く構成要素を全て添加した後、1時間以上の安定期間を要した後、支持体上に塗布を行うが、塗布時に硬膜剤の添加を行う。
【0045】
硬膜剤とは、前述のように塗膜を形成する親水性バインダーを硬化させ、ハロゲン化銀感光材料の塗膜を強化するためのものであり、親水性バインダーとしてゼラチンを用いる場合、好ましい硬膜剤の例としては、米国特許第4,678,739号第41欄、同4,791,042号、特開昭59−116,655号、同62−245,261号、同61−18,942号、同61−249,054号、同61−245,153号、特開平4−218,044号等に記載の硬膜剤が挙げられる。より具体的には、アルデヒド系硬膜剤(例えば、ホルムアルデヒド等)、アジリジン系硬膜剤、エポキシ系硬膜剤、ビニルスルホン系硬膜剤(例えば、N,N′−エチレン−ビス(ビニルスルホニルアセタミド)エタン等)、N−メチロール系硬膜剤(例えば、ジメチロール尿素等)、ほう酸、メタほう酸あるいは高分子硬膜剤(例えば、特開昭62−234157号等に記載の化合物)が挙げられる。これらの硬膜剤の中で、ビニルスルホン型硬膜剤やクロロトリアジン型硬膜剤を単独又は併用して使用することが好ましい。
【0046】
本発明においては、塗布直前の塗布液に該硬膜剤を添加する方法としては、特に制限はないが、塗布液安定性並びに形成する塗膜安定性の観点から、インライン添加方法を適用することが好ましい。インライン添加とは、特公昭56−54624号に記載されている様な、各写真構成層塗布液と添加剤溶液をコーターの直前に設けられたインライン混合機において送液しながら瞬時に混合しコーターに送る方法である。
【0047】
本発明における塗布直前とは、硬膜剤を除く塗布液と硬膜剤を含む溶液を送液、混合してから塗布するまでの時間を5分以下、好ましくは5分以下、更に好ましくは1秒以上2分以下を指す。
【0048】
インライン混合機としては、インラインミキサーやスタティックミキサーとして市販されている。例えば、Kenics社(アメリカ)製のスタティックミキサー、Sulger社(スイス)製のスタティックミキシングエレメントSMV型、晃立工業社製のシマザキパイプミキサー、東レ社製のHi−Mixer、ノリタケ社製のスタティクミキサーN10等がある。
【0049】
次いで、本発明に係るハロゲン化銀感光材料、その中でも好ましい態様である感光性ハロゲン化銀乳剤層として、イエロー発色感光性感光性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色感光性感光性ハロゲン化銀乳剤層及びシアン発色感光性感光性ハロゲン化銀乳剤層をそれぞれ少なくとも1層有するハロゲン化銀カラー感光材料について説明する。
【0050】
本発明に係るハロゲン化銀カラー感光材料に用いられるハロゲン化銀乳剤としては、95モル%以上が塩化銀からなるハロゲン化銀乳剤であることが、本発明の目的効果を発揮する観点から好ましく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、塩沃化銀等任意のハロゲン組成を有するものが用いられる。中でも、塩化銀を95モル%以上含有する塩臭化銀、中でも臭化銀を高濃度に含有する部分を有するハロゲン化銀乳剤が好ましく用いられ、また、表面近傍に沃化銀を0.05〜0.5モル%含有する塩沃化銀も好ましく用いられる。臭化銀を高濃度に含有する部分を有するハロゲン化銀乳剤において、高濃度に臭化銀を含有する部分は、いわゆるコア・シェル型ハロゲン化銀乳剤であってもよいし、完全な層を形成せず単に部分的に組成の異なる領域が存在するだけのいわゆるエピタキシー接合した領域を形成していてもよい。臭化銀が高濃度に存在する部分は、ハロゲン化銀粒子の表面の結晶粒子の頂点に形成されることが特に好ましい。また、組成は連続的に変化してもよいし不連続に変化してもよい。
【0051】
本発明に係るハロゲン化銀カラー感光材料に用いられるネガ型ハロゲン化銀乳剤には、重金属イオンを含有させるのが有利である。これにより、いわゆる相反則不軌が改良され、高照度露光での減感が防止されたりシャドー領域での軟調化が防止されることが期待される。
【0052】
このような目的で用いることのできる重金属イオンとしては、鉄、イリジウム、白金、パラジウム、ニッケル、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、コバルト等の第8〜10族金属や、カドミウム、亜鉛、水銀などの第12族遷移金属や、鉛、レニウム、モリブデン、タングステン、ガリウム、クロムの各イオンを挙げることができる。中でも鉄、イリジウム、白金、ルテニウム、ガリウム、オスミウムの金属イオンが好ましい。これらの金属イオンは、塩や、錯塩の形でハロゲン化銀乳剤に添加することができる。前記重金属イオンが錯体を形成する場合には、その配位子としてシアン化物イオン、チオシアン酸イオン、シアン酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、沃化物イオン、カルボニル、ニトロシル、アンモニア、水、ピリジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、1,2,4−トリアゾール、2,2′−ビイミダゾール、2,2′−ビピリジンまたは2,2′:6′,2″−ターピリジン化合物が好ましく用いられる。中でも、シアン化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、水、ニトロシル、5−メチルチアゾール、1,2,4−トリアゾール等が好ましい。これらの配位子は単独であっても複数の配位子が併用されてもよい。
【0053】
ハロゲン化銀乳剤中に重金属イオンを含有させる方法としては、該重金属化合物をハロゲン化銀粒子の形成前、ハロゲン化銀粒子の形成中、ハロゲン化銀粒子の形成後の物理熟成中の各工程の任意の場所で添加すればよい。
【0054】
重金属化合物をハロゲン化物塩と一緒に溶解して粒子形成工程の全体或いは一部にわたって連続的に添加することができる。また、あらかじめこれらの重金属化合物を含有するハロゲン化銀微粒子を形成しておいて、これを添加することによって調製することもできる。前記重金属イオンのハロゲン化銀乳剤中への添加量は、ハロゲン化銀1モル当り1×10-9モル以上、1×10-2モル以下が好ましく、特に、1×10-8モル以上、5×10-5モル以下が好ましい。
【0055】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子の形状は、任意のものを用いることができる。好ましい例の1つは、(100)面を結晶表面として有する立方体である。また、米国特許第4,183,756号、同第4,225,666号、特開昭55−26589号、特公昭55−42737号や、ザ・ジャーナル・オブ・フォトグラフィック・サイエンス(J.Photogr.Sci.)21、39(1973)等の文献に記載された方法等により、八面体、十四面体、十二面体等の形状を有する粒子をつくり、これを用いることもできる。更に、双晶面を有する粒子を用いてもよい。
【0056】
本発明に用いられる粒子は、単一の形状からなる粒子が好ましく用いられるが、単分散のハロゲン化銀乳剤を二種以上同一画像形成層に添加することが特に好ましい。
【0057】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子の粒径としては、特に制限はないが、迅速処理性適性及び到達感度や、他の写真性能を考慮すると、好ましくは0.1〜1.2μm、更に好ましくは、0.2〜1.0μmの範囲である。
【0058】
この粒径は、ハロゲン化銀粒子の投影面積か、あるいは直径近似値を使ってこれを測定して求めることができる。ハロゲン化銀粒子が実質的に均一形状である場合は、粒径分布は直径か投影面積としてかなり正確にこれを表すことができる。
【0059】
本発明に用いられるハロゲン化銀粒子の粒径分布は、好ましくは変動係数が0.22以下、更に好ましくは0.15以下の単分散ハロゲン化銀粒子であり、特に好ましくは、変動係数が0.15以下の単分散乳剤を2種以上、同一画像形成層に添加することである。ここでいう変動係数とは、粒径分布の広さを表す係数であり、次式によって定義される。
【0060】
変動係数=S/R
ここに、Sは粒径分布の標準偏差、Rは平均粒径を表す。
【0061】
ハロゲン化銀乳剤の調製装置、調製方法としては、当業界において公知の種々の方法を用いることができる。
【0062】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、酸性法、中性法、アンモニア法の何れで得られたものであってもよい。該ハロゲン化銀粒子は、一時に成長させたものであってもよいし、種粒子を調製した後で成長させてもよい。種粒子を調製する方法と成長させる方法は同じであっても、異なってもよい。
【0063】
また、可溶性銀塩と可溶性ハロゲン化物塩を反応させる形式としては、順混合法、逆混合法、同時混合法、それらの組合せなど、いずれでもよいが、同時混合法で得られたものが好ましい。更に、同時混合法の一形式として、特開昭54−48521号等に記載されているpAgコントロールド・ダブルジェット法を用いることもできる。
【0064】
また、特開昭57−92523号、同57−92524号等に記載の反応母液中に配置された添加装置から水溶性銀塩及び水溶性ハロゲン化物塩水溶液を供給する装置、ドイツ公開特許第2,921,164号等に記載されている水溶性銀塩及び水溶性ハロゲン化物塩水溶液を連続的に濃度変化させて添加する装置、特公昭56−501776号等に記載の反応器外に反応母液を取り出し、限外濾過法で濃縮することによりハロゲン化銀粒子間の距離を一定に保ちながら粒子形成を行なう装置などを用いてもよい。
【0065】
更に、必要で有ればチオエーテル等のハロゲン化銀溶剤を用いてもよい。また、メルカプト基を有する化合物、含窒素ヘテロ環化合物または増感色素のような化合物をハロゲン化銀粒子の形成時、または、粒子形成終了の後に添加して用いてもよい。
【0066】
本発明に用いられるネガ型ハロゲン化銀乳剤は、金化合物を用いる増感法、カルコゲン増感剤を用いる増感法等を適宜組み合わせて用いることができる。カルコゲン増感剤としては、イオウ増感剤、セレン増感剤、テルル増感剤などを用いることができるが、イオウ増感剤が好ましい。イオウ増感剤としては、チオ硫酸塩、トリエチルチオ尿素、アリルチオカルバミドチオ尿素、アリルイソチアシアネート、シスチン、p−トルエンチオスルホン酸塩、ローダニン、無機イオウ等が挙げられる。
【0067】
イオウ増感剤の添加量としては、適用されるハロゲン化銀乳剤の種類や期待する効果の大きさなどにより適宜変更することが好ましいが、概ねハロゲン化銀1モル当たり5×10-10〜5×10-5モルの範囲、好ましくは5×10-8〜3×10-5モルの範囲である。
【0068】
金増感剤としては、塩化金酸、硫化金等の他各種の金錯体として添加することができる。用いられる配位子化合物としては、ジメチルローダニン、チオシアン酸、メルカプトテトラゾール、メルカプトトリアゾール等を挙げることができる。金化合物の使用量は、ハロゲン化銀乳剤の種類、使用する化合物の種類、熟成条件などによって一様ではないが、通常は、ハロゲン化銀1モル当たり1×10-4〜1×10-8モルであることが好ましい。更に好ましくは1×10-5〜1×10-8モルである。これらの化合物は、増感剤としてではなく、塗布液の調製段階などで種々の目的で添加することもできる。
【0069】
本発明に用いられるネガ型ハロゲン化銀乳剤の化学増感法としては、還元増感法を用いてもよい。
【0070】
本発明に係るハロゲン化銀カラー感光材料には、400〜900nmの波長域の特定領域に分光増感されたハロゲン化銀乳剤を含む層を有することもできる。該ハロゲン化銀乳剤は、1種または、2種以上の増感色素を組み合わせて含有する。
【0071】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤に用いる分光増感色素としては、本発明に係る一般式(1)で表される増感色素と共に、公知の化合物をいずれも用いることができるが、青感光性増感色素としては、本発明に係る前記一般式〔I〕で表される増感色素のほかに、本発明の目的効果を損なわない範囲で、公知の増感色素、例えば、特開平3−251840号28ページに記載のBS−1〜8を組み合わせて用いることができる。緑感光性増感色素としては、同公報28ページに記載のGS−1〜5が好ましく用いられる。赤感光性増感色素としては同公報29ページに記載のRS−1〜8が好ましく用いられる。
【0072】
これらの増感色素の添加時期としては、ハロゲン化銀粒子形成から化学増感終了までの任意の時期でよい。また、これらの色素の添加方法としては、水またはメタノール、エタノール、フッ素化アルコール、アセトン、ジメチルホルムアミド等の水と混和性の有機溶媒に溶解して溶液として添加してもよいし、増感色素を密度が1.0g/mlより大きい、水混和性溶媒の溶液または、乳化物、懸濁液として添加してもよい。
【0073】
増感色素の分散方法としては、高速撹拌型分散機を用いて水系中に機械的に1μm以下の微粒子に粉砕・分散する方法以外に、特開昭58−105141号に記載のようにpH6〜8、60〜80℃の条件下で水系中において機械的に1μm以下の微粒子に粉砕・分散する方法、特公昭60−6496号に記載の表面張力を3.8×10-2N/m以下に抑える界面活性剤の存在下に分散する方法、特開昭50−80826号に記載の実質的に水を含まず、pKaが5を上回らない酸に溶解し、該溶解液を水性液に添加分散し、この分散物をハロゲン化銀乳剤に添加する方法等を用いることができる。
【0074】
分散に用いる分散媒としては水が好ましいが、少量の有機溶媒を含ませて溶解性を調整したり、ゼラチン等の親水性コロイドを添加して分散液の安定性を高めることもできる。
【0075】
分散液を調製するのに用いることのできる分散装置としては、例えば、特開平4−125631号公報の第1図に記載の高速撹拌型分散機の他、ボールミル、サンドミル、超音波分散機等を挙げることができる。
【0076】
また、これらの分散装置を用いるに際し、特開平4−125632号に記載のように、あらかじめ乾式粉砕などの前処理を施した後、湿式分散を行う等の方法をとってもよい。
【0077】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、1種または、2種以上の増感色素を組み合わせて含有してもよい。
【0078】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤には、ハロゲン化銀カラー感光材料の調製工程中に生じるカブリを防止したり、保存中の性能変動を小さくしたり、現像時に生じるカブリを防止する目的で、公知のカブリ防止剤、安定剤を用いることができる。この様な目的で用いることのできる好ましい化合物の例として、特開平2−146036号公報の7ページ下欄に記載された一般式(II)で表される含窒素複素環メルカプト化合物を挙げることができ、更に好ましい具体的な化合物としては、同公報の8ページに記載の(IIa−1)〜(IIa−8)、(IIb−1)〜(IIb−7)の化合物や、特開2000−267235号公報の8ページ右欄32〜36行目に記載の化合物を挙げることができる。これらの化合物は、その目的に応じて、ハロゲン化銀乳剤粒子の調製工程、化学増感工程、化学増感工程の終了時、塗布液調製工程などの任意の工程で添加される。これらの化合物の存在下に化学増感を行う場合には、ハロゲン化銀1モル当り1×10-5〜5×10-4モル程度の量で好ましく用いられる。化学増感終了時に添加する場合には、ハロゲン化銀1モル当り1×10-6〜1×10-2モル程度の量が好ましく、1×10-5〜5×10-3モルがより好ましい。塗布液調製工程において、ハロゲン化銀乳剤層に添加する場合には、ハロゲン化銀1モル当り1×10-6〜1×10-1モル程度の量が好ましく、1×10-5〜1×10-2モルがより好ましい。また、ハロゲン化銀乳剤層以外の層に添加する場合には、塗布皮膜中の含有量として、1m2当り1×10-9〜1×10-3モル程度の量が好ましい。
【0079】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤には、種々の目的で他の添加剤を加えることができる。例えば、特開平2−146036号公報に具体的に記載されているA−20、C−1、C−9、C−14、C−15、C−16、C−40等のジスルフィド、ポリスルフィド化合物、D−1、D−3、D−6、D−8等のチオスルホン酸化合物、無機イオウ等を用いることが好ましい。
【0080】
本発明に係るハロゲン化銀カラー感光材料に用いられるカプラーとしては、発色現像主薬の酸化体とカップリング反応して340nmより長波長域に分光吸収極大波長を有するカップリング生成物を形成し得るいかなる化合物をも用いることが出来るが、特に代表的な物としては、波長域350〜500nmに分光吸収極大波長を有する本発明に係るイエロー色素形成カプラーの他に、波長域500〜600nmに分光吸収極大波長を有するマゼンタ色素形成カプラー、波長域600〜750nmに分光吸収極大波長を有するシアン色素形成カプラーとして知られているものが代表的である。
【0081】
本発明に係るハロゲン化銀カラー感光材料に用いられるマゼンタカプラーとしては、特開平8−328210号公報の2ページに記載の一般式M−IもしくはM−IIで示される化合物が好ましい。好ましい化合物の具体例としては、同号6ページから16ページに記載のMCP−1〜MCP−41を挙げることができる。更に、他の具体例としては、欧州公開特許第0,273,712号の6〜21頁に記載されている化合物M−1〜M−61及び同第0,235,913号の36〜92頁に記載されている化合物1〜223の中の上述の代表的具体例以外のものがある。
【0082】
該マゼンタカプラーは、他の種類のマゼンタカプラーと併用することもでき、通常、総マゼンタカプラー量としては、ハロゲン化銀1モル当たり1×10-3モル〜1モル、好ましくは1×10-2モル〜8×10-1モルの範囲で用いることができる。
【0083】
本発明に係るハロゲン化銀カラー感光材料において、形成されるマゼンタ画像の分光吸収のλmaxは530〜560nmであることが好ましく、またλL0.2は、580〜635nmであることが好ましい。λL0.2とは、画像色素の分光吸光度曲線において、最大吸光度が1.0である時、最大吸光度を示す波長よりも長波で、吸光度が0.2となる波長をいう。この量は、画像色素の長波側の不要吸収の大きさを示す目安となる量であり、λmaxに近い波長であるほど不要吸収が小さく好ましいことを表す。
【0084】
本発明に係るハロゲン化銀カラー感光材料のマゼンタ画像形成層には、マゼンタカプラーに加えてイエローカプラーが含有されることが好ましい。本発明に係るハロゲン化銀カラー感光材料のマゼンタ画像形成性層に含有させる好ましいイエローカプラーとしては、公知のピバロイルアセトアニリド型もしくはベンゾイルアセトアニリド型等のカプラーが挙げられる。本発明に係るハロゲン化銀カラー感光材料のマゼンタ画像形成性層に含有させる好ましいイエローカプラーの具体例としては、例えば、特開平8−314079号公報の6〜15ページ右欄に記載のYCP−1〜YCP−39で表されるカプラーが挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0085】
本発明に係るハロゲン化銀カラー感光材料において、シアン画像形成層中に含有されるシアンカプラーとしては、公知のフェノール系、ナフトール系又はイミダゾール系、アゾール系カプラーを用いることができる。例えば、アルキル基、アシルアミノ基、或いはウレイド基などを置換したフェノール系カプラー、5−アミノナフトール骨格から形成されるナフトール系カプラー、離脱基として酸素原子を導入した2当量型ナフトール系カプラーなどが代表される。このうち好ましい化合物としては、特開平6−95283号公報の13ページに記載の一般式[C−I]、[C−II]で表される化合物が挙げられる。
【0086】
アゾール系カプラーとしては、特開平8−171185号公報の2ページに記載の一般式〔I〕もしくは〔II〕で表されるピラゾロアゾール系カプラー、または、特開平11−282138号公報に記載の一般式(I)で表されるピロロアゾール系カプラーを挙げることができる。
【0087】
該シアンカプラーは、通常ハロゲン化銀乳剤層において、ハロゲン化銀1モル当たり1×10-3〜1モル、好ましくは1×10-2〜8×10-1モルの範囲で用いることができる。
【0088】
本発明に係るハロゲン化銀カラー感光材料においては、公知のイエローカプラー、好ましくはアシルアセトアニリド系カプラー等を用いることができる。
【0089】
本発明で用いることのできるイエローカプラーの具体例としては、例えば、特開平3−241345号の5頁〜9頁に記載の化合物、Y−I−1〜Y−I−55で示される化合物、もしくは特開平3−209466号の11〜14頁に記載の化合物、Y−1〜Y−30で示される化合物も好ましく使用することができる。更に特開平6−95283号21ページ記載の一般式〔Y−I〕で表されるカプラー、特開2002−351023号に記載の一般式(I)、(II)の化合物等も挙げることができる。
【0090】
また、良好な色再現性、高発色性ならびに良好な耐光性が得られる観点から、特開昭63−123047号に記載されているような、アニリド部の2位にアルコキシ基を、5位にアシルアミノ基を有するイエローカプラー、米国特許第5,455,149号明細書に記載されているような炭素数1〜6のアルキル基が窒素原子に置換したピリミジン−4−オンが結合したアセトアニリド型カプラー、特開2002−296740号公報に記載の置換アルキル基が置換したピリミジン−4−オンが結合したアセトアニリド型カプラー、特開2002−296741号公報に記載のアリール基または複素環基が置換したピリミジン−4−オンが結合したアセトアニリド型カプラー、特開2002−318442号公報に記載のヘテロ原子等の二価の連結基が導入されたピリミジン−4−オンが結合したアセトアニリド型カプラー、特開2002−318443号公報に記載の炭素数7以上のアルキル基が置換したピリミジン−4−オンが結合したアセトアニリド型カプラー、特開2002−351023号公報、特開2003−173007号公報に記載の〔1,2,4〕チアジアジン−1,1−ジオキシドが結合したアセトアニリド型カプラー等を挙げることができる。
【0091】
本発明に係るハロゲン化銀カラー感光材料において、形成されるイエロー画像の分光吸収のλmaxは425nm以上であることが好ましく、λL0.2は515nm以下であることが好ましい。
【0092】
該イエロー色画像の分光吸収のλL0.2とは、特開平6−95283号21ページ右欄1行〜24行に記載の内容で定義される値であり、イエロー色素画像の分光吸収特性で長波側の不要吸収の大きさを表す。
【0093】
該マゼンタ色画像、シアン色画像、及びイエロー色画像の分光吸収特性を調整するために、本発明に係る前記一般式(HBS−1)で表される化合物と共に、公知の色調調整作用を有する化合物を添加することができる。このための化合物としては、特開平6−95283号公報の22ページに記載の一般式[HBS−I]で示されるリン酸エステル系化合物、[HBS−II]で示されるホスフィンオキサイド系化合物が挙げられる。
【0094】
前記マゼンタ、シアン、イエローの各カプラーには、形成された色素画像の光、熱、湿度等による褪色を防止するため褪色防止剤を併用することができる。好ましい化合物としては、特開平2−66541号公報の3ページに記載の一般式IおよびIIで示されるフェニルエーテル系化合物、特開平3−174150号公報に記載の一般式IIIBで示されるフェノール系化合物、特開昭64−90445号公報に記載の一般式Aで示されるアミン系化合物、特開昭62−182741号公報に記載の一般式XII、XIII、XIV、XVで示される金属錯体が、特にマゼンタ色素用として好ましい。また、特開平1−196049号号公報に記載の一般式I′で示される化合物および特開平5−11417号公報に記載の一般式IIで示される化合物が、特にイエロー、シアン色素用として好ましい。
【0095】
本発明に係るハロゲン化銀カラー感光材料に用いられるステイン防止剤やその他の有機化合物を添加する際に、水中油滴型乳化分散法を用いる場合、通常、沸点150℃以上の水不溶性高沸点有機溶媒に、必要に応じて低沸点及び/または水溶性有機溶媒を併用して溶解し、ゼラチン水溶液などの親水性バインダー中に界面活性剤を用いて乳化分散する。分散手段としては、撹拌機、ホモジナイザー、コロイドミル、フロージェットミキサー、超音波分散機等を用いることができる。分散後、または、分散と同時に低沸点有機溶媒を除去する工程を組み入れてもよい。ステイン防止剤等を溶解して分散するために用いることのできる高沸点有機溶媒としては、トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート等のリン酸エステル類、トリオクチルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類、特開平4−265975号公報の5ページに記載の(a−i)〜(a−x)を代表とする高級アルコール系化合物等が好ましく用いられる。また、高沸点有機溶媒の誘電率としては3.5〜7.0であることが好ましい。また、2種以上の高沸点有機溶媒を併用することもできる。
【0096】
本発明に係るハロゲン化銀カラー感光材料には、イラジエーション防止やハレーション防止の目的で、種々の波長域に吸収を有する染料を用いることができる。この目的で、公知の化合物をいずれも用いることができるが、特に、可視域に吸収を有する染料としては、特開平3−251840号公報の308ページに記載のAI−1〜11の染料および特開平6−3770号公報に記載の染料が好ましく用いられる。
【0097】
また同様に、黒色コロイド銀の添加も好ましい。黒色コロイド銀の添加層としては、支持体に隣接する層が好ましく、該黒色コロイド銀を添加する層と、最も近いハロゲン化銀乳剤層との間には、少なくとも1層の親水性コロイド層を有することが好ましい。
【0098】
黒色コロイド銀の添加量は、特に制限はないが、処理時に漂白される量であることが好ましく、感光材料1m2あたり0.01g以上0.3g以下が好ましい。特に好ましくは0.05g以上から0.2g以下である。
【0099】
本発明に係るハロゲン化銀カラー感光材料は、ハロゲン化銀乳剤層のうち最も支持体に近いハロゲン化銀乳剤層より支持体に近い側に少なくとも1層の着色された親水性コロイド層を有することが好ましく、該層に白色顔料を含有していてもよい。例えばルチル型二酸化チタン、アナターゼ型二酸化チタン、硫酸バリウム、ステアリン酸バリウム、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、カオリン等を用いることができるが、種々の理由から、中でも二酸化チタンが好ましい。白色顔料は処理液が浸透できるような例えばゼラチン等の親水性コロイドの水溶液バインダー中に分散される。白色顔料の塗布付量は好ましくは0.1g/m2〜50g/m2の範囲であり、更に好ましくは0.2g/m2〜5g/m2の範囲である。
【0100】
支持体と、支持体から最も近いハロゲン化銀乳剤層との間には、白色顔料含有層の他に必要に応じて下塗り層、あるいは任意の位置に中間層等の非感光性親水性コロイド層を設けることができる。
【0101】
本発明に係るハロゲン化銀カラー感光材料中に、蛍光増白剤を添加することで白地性をより改良できる点で好ましい。蛍光増白剤は、紫外線を吸収して可視光の蛍光を発することのできる化合物であれば特に制限はないが、分子中に少なくとも1個以上のスルホン酸基を有するジアミノスチルベン系化合物であり、これらの化合物には、増感色素のハロゲン化銀カラー感光材料外への溶出を促進する効果もあり好ましい。他の好ましい一つの形態は、蛍光増白効果を有する固体微粒子化合物である。
【0102】
本発明に係るハロゲン化銀カラー感光材料においては、公知の各種界面活性剤を併せて用いることができる。感光材料に用いられる写真用添加剤の分散や塗布時の表面張力調整のため用いられる界面活性剤として好ましい化合物としては、1分子中に炭素数8〜30の疎水性基とスルホン酸基またはその塩を含有するものが挙げられる。具体的には、特開昭64−26854号に記載のA−1〜A−11が挙げられる。また、アルキル基に弗素原子を置換した界面活性剤も好ましく用いられる。これら界面活性剤を用いて乳化された油溶性添加剤の分散液は、通常、ハロゲン化銀乳剤を含有する塗布液に添加されるが、分散後塗布液に添加されるまでの時間、および塗布液に添加後塗布までの時間は短いほうがよく、各々10時間以内が好ましく、3時間以内、20分以内がより好ましい。
【0103】
本発明に係るハロゲン化銀カラー感光材料には、現像主薬酸化体と反応する化合物をハロゲン化銀乳剤層間に設けた中間層に添加して色濁りを防止したり、また、ハロゲン化銀乳剤層に直接添加してカブリ等を改良することが好ましい。このための化合物としてはハイドロキノン誘導体が好ましく、更に好ましくは2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノンのようなジアルキルハイドロキノンである。特に好ましい化合物は、特開平4−133056号に記載の一般式IIで示される化合物であり、同号13〜14ページ記載の化合物II−1〜II−14および17ページ記載の化合物1が挙げられる。
【0104】
本発明に係るハロゲン化銀カラー感光材料中には、紫外線吸収剤を添加してスタチックカブリを防止したり、色素画像の耐光性を改良することが好ましい。好ましい紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール類が挙げられ、特に好ましい化合物としては特開平1−250944号に記載の一般式III−3で示される化合物、特開昭64−66646号に記載の一般式IIIで示される化合物、特開昭63−187240号に記載のUV−1L〜UV−27L、特開平4−1633号に記載の一般式Iで示される化合物、特開平5−165144号に記載の一般式(I)、(II)で示される化合物が挙げられる。
【0105】
本発明に係るハロゲン化銀カラー感光材料には、油溶性染料や顔料を含有すると白地性が改良され好ましい。油溶性染料の代表的具体例は、特開平2−842号8ページ〜9ページに記載の化合物1〜27が挙げられる。
【0106】
本発明に係るハロゲン化銀カラー感光材料には、バインダーとしてゼラチンを用いることが有利であるが、必要に応じて他のゼラチン、例えば、ゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子のグラフトポリマー、ゼラチン以外のタンパク質、糖誘導体、セルロース誘導体、単一あるいは共重合体のごとき合成親水性高分子物質等の親水性コロイドも用いることができる。
【0107】
また、写真性能や画像保存性に悪影響するカビや細菌の繁殖を防ぐため、コロイド層中に特開平3−157646号に記載のような防腐剤および抗カビ剤を添加することが好ましい。また、ハロゲン化銀カラー感光材料または処理後のハロゲン化銀カラー感光材料表面の物性を改良するため、保護層に、例えば、特開平6−118543号や特開平2−73250号に記載の滑り剤やマット剤を添加することが好ましい。
【0108】
本発明に係るハロゲン化銀感光材料に用いる支持体としては、特に制限はないが、反射性支持体を用いることが好ましく、反射支持体としては、どのような材質を用いてもよく、例えば、ポリエチレンやポリエチレンテレフタレートで被覆した紙、天然パルプや合成パルプからなる紙支持体、塩化ビニルシート、白色顔料を含有してもよいポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート支持体、バライタ紙などを用いることができる。なかでも、原紙の両面に耐水性樹脂被覆層を有する支持体が好ましい。耐水性樹脂としてはポリエチレンやポリエチレンテレフタレートまたはそれらのコポリマーが好ましい。紙の表面に耐水性樹脂被覆層を有する支持体は、通常、50〜300g/m2の質量を有する表面の平滑なものが用いられるが、プルーフ画像を得る目的に対しては、取り扱いの感覚を印刷用紙に近づけるため、130g/m2以下の原紙が好ましく用いられ、さらに70〜120g/m2の原紙が好ましく用いられる。本発明に用いられる反射支持体としては、ランダムな凹凸を有するものであっても平滑なものであっても好ましく用いることができる。
【0109】
反射支持体に用いられる白色顔料としては、無機及び/または有機の白色顔料を用いることができ、好ましくは無機の白色顔料が用いられる。例えば、硫酸バリウム等のアルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩、微粉ケイ酸、合成ケイ酸塩等のシリカ類、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、クレイ等が挙げられる。白色顔料は、好ましくは硫酸バリウム、酸化チタンである。支持体の表面の耐水性樹脂層中に含有される白色顔料の量は、鮮鋭性を改良するうえで13質量%以上が好ましく、さらには15質量%が好ましい。
【0110】
本発明で用いられる紙支持体の耐水性樹脂層における白色顔料の分散度は、特開平2−28640号に記載の方法で測定することができる。この方法で測定したときに、白色顔料の分散度が前記公報に記載の変動係数として0.20以下であることが好ましく、0.15以下であることがより好ましい。
【0111】
本発明に用いられる両面に耐水性樹脂層を有する紙支持体の樹脂層は、1層であってもよいし、複数層からなってもよい。複数層とし、乳剤層と接する方に白色顔料を高濃度で含有させると鮮鋭性の向上が大きく、プルーフ用画像を形成するのに好ましい。また、反射支持体の中心面平均粗さ(SRa)の値が0.15μm以下、さらには0.12μm以下であることが、光沢性がよいという効果が得られより好ましい。
【0112】
本発明に係るハロゲン化銀感光材料には、必要に応じて反射支持体表面にコロナ放電、紫外線照射、火炎処理等を施した後、直接または下塗層(支持体表面の接着性、帯電防止性、寸度安定性、耐摩擦性、硬さ、ハレーション防止性、摩擦特性及び/またはその他の特性を向上するための1または2以上の下塗層)を介して塗布されていてもよい。
【0113】
本発明のハロゲン化銀感光材料において、各ハロゲン化銀乳剤層(発色層)は支持体上に積層塗布され、この他に必要に応じ中間層、フィルター層、保護層等を配置することができる。支持体からの各構成層の順番はどのような順番でもよい。
【0114】
ハロゲン化銀乳剤を用いたハロゲン化銀カラー感光材料の塗布に際して、塗布性を向上させる目的で、増粘剤を用いてもよい。塗布方法としては、2種以上の層を同時に塗布することのできるエクストルージョンコーティングまたはカーテンコーティングが特に有用である。
【0115】
以上のような主要構成要素より構成される本発明に係るハロゲン化銀感光材料においては、塗布、乾燥した後の膜面pHを5.0以上、6.0以下とすることが、本発明の目的効果、とりわけ、長期保存時の安定性を向上することができ好ましい。
【0116】
特に、本発明に係る本発明に係る一般式(1)で表される増感色素を含む塗布液のpHを6.5以上、8.0以下に設定するため、特にpH8.0以下近傍で塗布液を調製した際には、作製されたハロゲン化銀感光材料の膜面pHがやや高い条件にシフトするため、ハロゲン化銀感光材料の膜面pHとしては、最終的には5.0以上、6.0以下とすることが好ましい。
【0117】
本発明でいう膜面pHの測定方法として、1cm2のハロゲン化銀感光材料の測定面の上に、水0.05mlを添加し、90%RH以上の雰囲気下で10分間放置後、平衡に達したことを確認し、塩化銀平型複合電極を用いて測定した値である。平型複合電極の具体例としては東亜電波工業(株)製のpHメーターなどがある。
【0118】
本発明の膜面pHを5.0〜6.0の範囲に調節するには、酸又はアルカリを膜面pH調整用として添加し、所定の膜面pHとする。
【0119】
本発明において用いられる、膜面pH調整用の酸としては、有機酸、無機酸のどちらでもかまわないが、クエン酸、フタル酸、クエン酸エステル、サリチル酸、リン酸、オルトリン酸などの酸が好ましい。また、膜面pH調整用のアルカリとしては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物が好ましい。これらの膜面pH調整用の酸あるいはアルカリは、非感光性層に添加して所望の膜面pHに調整することが好ましい。
【0120】
本発明に係るハロゲン化銀カラー感光材料の幅としては用途に応じて任意の幅の物を用いることができるが、プルーフの用途では400mm以上の幅が好ましく用いられる。800mmあるいはそれ以上の幅の感光材料も好ましく用いられる。
【0121】
次いで、本発明のハロゲン化銀カラー感光材料の現像処理を行う処理方法について説明する。
【0122】
本発明のハロゲン化銀カラー感光材料の処理方法は、後述の方法で露光を施したハロゲン化銀カラー感光材料を発色処理工程(発色現像液)、漂白工程(漂白液)、定着工程(定着液)あるいは漂白定着工程(漂白定着液)、安定化工程(安定化液)を経て、乾燥する。
【0123】
また、それぞれ補充用発色現像液、補充用漂白液、補充用定着液、あるいは補充用漂白定着液、補充用安定化液等を補充しながら連続的に現像処理することができる。
【0124】
本発明に係る水へのLogPが0.9以上、1.5以下である化合物を含む発色現像液では、発色現像主薬を含有する。
【0125】
発色現像液に用いる発色現像主薬としては芳香族一級アミン現像主薬が主に用いられ、芳香族一級アミン現像主薬として下記に示す各化合物を挙げることができる。
【0126】
CD−1:N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン
CD−2:2−アミノ−5−ジエチルアミノトルエン
CD−3:2−アミノ−5−(N−エチル−N−ラウリルアミノ)トルエン
CD−4:4−(N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アミノ)アニリン
CD−5:2−メチル−4−(N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アミノ)アニリン
CD−6:4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−(メタンスルホンアミド)エチル)アニリン
CD−7:N−(2−アミノ−5−ジエチルアミノフェニルエチル)メタンスルホンアミド
CD−8:N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン
CD−9:4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−メトキシエチルアニリン
CD−10:4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−エトキシエチル)アニリン
CD−11:4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(γ−ヒドロキシプロピル)アニリン
本発明においては、発色現像液を任意のpH域で使用できるが、迅速処理の観点からpH9.5〜13.0であることが好ましく、より好ましくはpH9.8〜12.0の範囲で用いられる。
【0127】
本発明で適用可能な発色現像液の処理温度は、35℃以上、70℃以下が好ましい。温度が高いほど短時間の処理が可能であり好ましいが、処理液の安定性からはあまり高くない方が好ましく、37℃以上60℃以下で処理することが好ましい。
【0128】
発色現像時間は、従来一般には3分30秒程度で行われているが、本発明では、40秒以内が好ましく、更に25秒以内の範囲で行うことが更に好ましい。
【0129】
発色現像液には、前記の発色現像主薬に加えて、既知の現像液成分化合物を添加することができる。通常、pH緩衝作用を有するアルカリ剤、塩化物イオン、ベンゾトリアゾール類等の現像抑制剤、保恒剤、キレート剤などが用いられる。
【0130】
本発明に係るハロゲン化銀カラー感光材料は、発色現像後、脱銀工程としての漂白定着液処理及び安定処理が施される。
【0131】
漂白定着処理において、漂白定着液として、特開昭64−295258号に記載のイミダゾール及びその誘導体又は同明細書記載の一般式[I]〜[IX]で示される化合物及びこれらの例示化合物の少なくとも一種を含有することが好ましい。また、上記の促進剤の他、特開昭62−123459号の第51頁〜第115頁に記載の例示化合物及び特開昭63−17445号の第22頁〜第25頁に記載の例示化合物、特開昭53−95630号、同53−28426号記載の化合物等も同様に用いることができる。
【0132】
漂白定着剤には、上記以外に臭化アンモニウム、臭化カリウム、臭化ナトリウムの如きハロゲン化物、各種の蛍光増白剤、消泡剤或いは界面活性剤を含有せしめることもできる。
【0133】
本発明における漂白定着剤に用いられる定着主剤としては、チオシアン酸塩、チオ硫酸塩が好ましく用いられる。
【0134】
漂白定着剤には、これら定着主剤の他にpH緩衝剤、又アルキルアミン類、ポリエチレンオキサイド類、更にアルカリハライド又はアンモニウムハライド、例えば臭化カリウム、臭化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化アンモニウム等の再ハロゲン化剤を含有させることが望ましい。
【0135】
漂白定着剤には、特開昭64−295258号第56頁に記載の一般式[FA]で示される化合物及びこの例示化合物を添加するのが好ましく、本発明の効果をより良好に奏するばかりか、少量の感光材料を長期間にわたって処理する際に定着能を有する処理液中に発生するスラッジも極めて少ないという別な効果が得られる。
【0136】
本発明においては、漂白定着液のpHが、3以上5以下であることが好ましく、より好ましくは3.5以上5.0以下である。
【0137】
安定液に添加する好ましい化合物としては、例えば、キレート化合物、蛍光増白剤の他に、アンモニウム化合物が挙げられる。アンモニウム化合物の添加量は安定液1L当り0.001〜1.0モルの範囲が好ましく、より好ましくは0.002〜2.0モルの範囲である。
【0138】
安定剤には亜硫酸塩を含有させることが好ましい。又安定液にはキレート剤と併用して金属塩を含有することが好ましい。かかる金属塩としては、Ba、Ca、Ce、Co、In、La、Mn、Ni、Bi、Pb、Sn、Zn、Ti、Zr、Mg、Al又はSrの金属塩があり、ハロゲン化物、水酸化物、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩等の無機塩又は水溶性キレート剤として供給できる。使用量としては安定液1L当り1×10-4〜1×10-1モルの範囲が好ましく、より好ましくは4×10-4〜2×10-2モルの範囲である。
【0139】
本発明に係る水洗もしくは安定化処理は、多段向流方式の処理槽が用いられており、処理槽のサイズとしては概ね3〜7Lで、かつ安定液の循環量が2〜6L/minであることが好ましい。水洗もしくは安定化処理に要する時間は、各槽それぞれ20〜90秒が好ましい。
【0140】
水洗もしくは安定化処理の処理温度が35℃以上であることが好ましく、より好ましくは35〜38℃である。本発明に係る水洗もしくは安定化槽の加熱手段としては、独立したヒーターを用いて安定液を加熱してもよく、あるいは、漂白定着槽や現像槽のヒーターを用いて追従温調により加熱しても良い。
【0141】
本発明のハロゲン化銀感光材料の現像処理に用いる現像処理装置としては、処理槽に配置されたローラーに感光材料をはさんで搬送するローラートランスポートタイプであっても、ベルトに感光材料を固定して搬送するエンドレスベルト方式であってもよいが、処理槽をスリット状に形成して、この処理槽に処理液を供給するとともに感光材料を搬送する方式や処理液を噴霧状にするスプレー方式、処理液を含浸させた担体との接触によるウエッブ方式、粘性処理液による方式なども用いることができる。大量に処理する場合には、自動現像機を用いてランニング処理されるのが、この際、補充液の補充量は少ない程好ましく、環境適性等より最も好ましい処理形態は、補充方法として錠剤の形態で処理剤を添加することであり、公開技報94−16935に記載の方法が最も好ましい。
【0142】
次いで、本発明に係るハロゲン化銀カラー感光材料への画像記録方法について説明する。
【0143】
本発明に用いられる露光装置の露光光源は、公知のものをいずれも好ましく用いることが出来るが、レーザーまたは発光ダイオード(以下LEDと表す)がより好ましく用いられる。
【0144】
レーザーとしては半導体レーザー(以下、LDと表す)がコンパクトであること、光源の寿命が長いことから好ましく用いられる。
【0145】
LDはDVD、音楽用CDの光ピックアップ、POSシステム用バーコードスキャナ等の用途や光通信等の用途に用いられており、安価であり、かつ比較的高出力のものが得られるという長所を有している。LDの具体的な例としては、アルミニウム・ガリウム・インジウム・ヒ素(650nm)、インジウム・ガリウム・リン(〜700nm)、ガリウム・ヒ素・リン(610〜900nm)、ガリウム・アルミニウム・ヒ素(760〜850nm)等を挙げることができる。最近では、青光を発振するレーザーも開発されているが、現状では、610nmよりも長波の光源としてLDを用いるのが有利である。
【0146】
SHG素子を有するレーザー光源としては、LD、YAGレーザーから発振される光をSHG素子により半分の波長の光に変換して放出させるものであり、可視光が得られることから適当な光源がない緑〜青の領域の光源として用いられる。この種の光源の例としては、YAGレーザーにSHG素子を組み合わせたもの(532nm)等がある。ガスレーザーとしては、ヘリウム・カドミウムレーザー(約442nm)、アルゴンイオンレーザー(約514nm)、ヘリウムネオンレーザー(約544nm、633nm)等が挙げられる。特にG光の光源としてヘリウムネオンレーザーが好ましく用いられる。
【0147】
LEDとしては、LDと同様の組成をもつものが知られているが、青〜赤外まで種々のものが実用化されている。
【0148】
本発明に用いられる露光光源としては、各レーザーを単独で用いてもよいし、これらを組合せ、マルチビームとして用いてもよい。LDの場合には、例えば10個のLDを並べることにより10本の光束からなるビームが得られる。一方、ヘリウムネオンレーザーのような場合、レーザーから発した光をビームセパレーターで例えば10本の光束に分割する。ヘリウムネオンレーザーの場合には、比較的形状の整った光束が容易に得られる。
【0149】
本発明に用いられる露光用光源の強度変化は、LDのような場合には、個々のLDに流れる電流値を変化させる直接変調を行ってもよいしAOM(音響光学素子)のような素子を用いて強度を変化させてもよい。ガスレーザーの場合には、AOM、EOM(電気光学素子)等のデバイスを用いるのが一般である。
【0150】
本発明においては、面積階調画像を出力可能なカラープルーフであることが一つの特徴であるが、本発明でいう面積階調画像とは、画像上の濃淡を個々の画素の色の濃淡で表現するのではなく、特定の濃度に発色した部分の面積の大小で表現するものであり、網点と同義と考えてよい。
【0151】
通常、面積階調露光であればY、M、Cの発色をさせることで目的を達することもできる。より好ましくは、単色での発色濃度よりも高い濃度で墨を作るように、2値以上の露光量を使い分けて露光する事が好ましい。墨にさらにM、C等の単色が発色したことを識別するには、3値以上の露光量を使い分けて露光する事が好ましい。印刷においては、特別な色の版を用いることがあるが、これを再現するためには、4値以上の露光量を使い分けて露光する事が好ましい。
【0152】
レーザー光源の場合には、ビーム径は25μm以下であることが好ましく、6〜22μmがより好ましい。6μmより小さいと画質的には好ましいが、調整が困難であったり、処理速度が低下したりする。一方、25μmより大きいとムラが大きくなり、画像の鮮鋭性も劣化する。ビーム径を最適化する事によってムラのない高精細の画像の書き込みを高速で行うことができる。
【0153】
このような光で画像を描くには、ハロゲン化銀感光材料上を光束が走査する必要があるが、感光材料を円筒状のドラムに巻き付けこれを高速に回転しながら回転方向に直角な方向に光束を動かす円筒外面走査方式をとってもよく、円筒状の窪みにハロゲン化銀感光材料を密着させて露光する円筒内面走査方式も好ましく用いることができる。多面体ミラーを高速で回転させこれによって搬送されるハロゲン化銀感光材料を搬送方向に対して直角に光束を移動して露光する平面走査方式をとってもよい。高画質であり、かつ大きな画像を得るには円筒外面走査方式がより好ましく用いられる。
【0154】
円筒外面走査方式での露光を行うには、ハロゲン化銀感光材料は正確に円筒状のドラムに密着されなければならない。これが的確に行われるためには、正確に位置合わせされて搬送される必要がある。本発明に用いられるハロゲン化銀感光材料は露光する側の面が外側に巻かれたものがより的確に位置合わせでき、好ましく用いることができる。同様な観点から、本発明に用いられるハロゲン化銀感光材料に用いられる支持体は適正な剛度があり、テーバー剛度で0.8〜4.0が好ましい。
【0155】
ドラム径は、露光するハロゲン化銀感光材料の大きさに適合させて任意に設定することができる。ドラムの回転数も任意に設定できるがレーザー光のビーム径、エネルギー強度、書き込みパターンや感光材料の感度などにより適当な回転数を選択することができる。生産性の観点からは、より高速な回転で走査露光できる方が好ましいが、具体的には1分間に200〜3000回転が好ましく用いられる。
【0156】
ドラムへのハロゲン化銀感光材料の固定方法は、機械的な手段によって固定させてもよいし、ドラム表面に吸引できる微小な穴を感光材料の大きさに応じて多数設けておき、感光材料を吸引して密着させることもできる。感光材料をドラムにできるだけ密着させることが画像ムラ等のトラブルを防ぐには重要である。
【0157】
本発明に用いられる露光装置の露光光源は、公知のものをいずれも好ましく用いることができるが、レーザーまたは発光ダイオード(以下LEDと表す)がより好ましく用いられる。
【0158】
レーザーとしては半導体レーザー(以下、LDと表す)がコンパクトであること、光源の寿命が長いことから好ましく用いられる。また、LDはDVD、音楽用CDの光ピックアップ、POSシステム用バーコードスキャナ等の用途や光通信等の用途に用いられており、安価であり、かつ比較的高出力のものが得られるという長所を有している。LDの具体的な例としては、アルミニウム・ガリウム・インジウム・ヒ素(650nm)、インジウム・ガリウム・リン(〜700nm)、ガリウム・ヒ素・リン(610〜900nm)、ガリウム・アルミニウム・ヒ素(760〜850nm)等を挙げることができる。最近では、青光を発振するレーザーも開発されているが、現状では、610nmよりも長波の光源としてLDを用いるのが有利である。
【0159】
SHG素子を有するレーザー光源としては、LD、YAGレーザーから発振される光をSHG素子により半分の波長の光に変換して放出させるものであり、可視光が得られることから適当な光源がない緑〜青の領域の光源として用いられる。この種の光源の例としては、YAGレーザーにSHG素子を組み合わせたもの(532nm)等がある。
【0160】
ガスレーザーとしては、ヘリウム・カドミウムレーザー(約442nm)、アルゴンイオンレーザー(約514nm)、ヘリウムネオンレーザー(約544nm、633nm)等が挙げられる。
【0161】
LEDとしては、LDと同様の組成をもつものが知られているが、青〜赤外まで種々のものが実用化されている。
【0162】
本発明に用いられる露光光源としては、各レーザーを単独で用いてもよいし、これらを組合せ、マルチビームとして用いてもよい。LDの場合には、例えば10個のLDを並べることにより10本の光束からなるビームが得られる。一方、ヘリウムネオンレーザーのような場合、レーザーから発した光をビームセパレーターで例えば10本の光束に分割する。
【0163】
露光用光源の強度変化は、LD、LEDのような場合には、個々の素子に流れる電流値を変化させる直接変調を行うことができる。LDの場合には、AOM(音響光学変調器)のような素子を用いて強度を変化させてもよい。ガスレーザーの場合には、AOM、EOM(電気光学変調器)等のデバイスを用いるのが一般である。
【0164】
光源にLEDを用いる場合には、光量が弱ければ、複数の素子で同一の画素を重複して露光する方法を用いてもよい。
【0165】
また、これらに代わる光源として有機発光素子を用いてもよく、これらについては、例えば、特開2000−258846号等に記載されている。
【0166】
本発明において、面積階調画像という言葉を用いるが、これは画像上の濃淡を個々の画素の色の濃淡で表現するのではなく、特定の濃度に発色した部分の面積の大小で表現するものであり、網点と同義と考えてよい。
【0167】
通常、面積階調露光であれば、Y、M、C、墨の発色をさせることで目的を達することもできる。より好ましくは、墨に加えてM、C等の単色が発色したことを識別するには、3値以上の露光量を使い分けて露光することが好ましい。印刷においては、特別な色の版を用いることがあるが、これを再現するためには、4値以上の露光量を使い分けて露光することが好ましい。
【0168】
レーザー光源の場合には、ビーム径は25μm以下であることが好ましく、6〜22μmがより好ましい。6μmより小さいと画質的には好ましいが、調整が困難であったり、処理速度が低下したりする。一方、25μmより大きいとムラが大きくなり、画像の鮮鋭性も劣化する。ビーム径を最適化することによってムラのない高精細の画像の書き込みを高速で行うことができる。
【0169】
このような光で画像を描くには、ハロゲン化銀カラー感光材料上を光束が走査する必要があるが、ハロゲン化銀カラー感光材料を円筒状のドラムに巻き付けこれを高速に回転しながら回転方向に直角な方向に光束を動かす円筒外面走査方式をとってもよく、円筒状の窪みにハロゲン化銀感光材料を密着させて露光する円筒内面走査方式も好ましく用いることができる。多面体ミラーを高速で回転させこれによって搬送されるハロゲン化銀カラー感光材料を、搬送方向に対して直角に光束を移動して露光する平面走査方式をとってもよい。高画質であり、かつ大きな画像を得るには円筒外面走査方式がより好ましく用いられる。
【0170】
円筒外面走査方式での露光を行うには、ハロゲン化銀カラー感光材料は正確に円筒状のドラムに密着されなければならない。これが的確に行われるためには、正確に位置合わせされて搬送される必要がある。本発明に係るハロゲン化銀カラー感光材料は、露光する面側が外側に巻かれたものがより的確に位置合わせでき、好ましく用いることができる。同様な観点から、本発明に係るハロゲン化銀カラー感光材料に用いられる支持体は、適正な剛度があり、テーバー剛度で0.8〜4.0が好ましい。
【0171】
ドラム径は、露光するハロゲン化銀カラー感光材料の大きさに適合させて任意に設定することができる。ドラムの回転数も任意に設定できるがレーザー光のビーム径、エネルギー強度、書き込みパターンやハロゲン化銀カラー感光材料の感度などにより、適当な回転数を選択することができる。生産性の観点からは、より高速な回転で走査露光できる方が好ましいが、具体的には1分間に200〜3000回転が好ましく用いられる。
【0172】
ドラムへのハロゲン化銀カラー感光材料の固定方法は、機械的な手段によって固定させてもよいし、ドラム表面に吸引できる微小な穴をハロゲン化銀カラー感光材料の大きさに応じて多数設けておき、ハロゲン化銀カラー感光材料を吸引して密着させることもできる。ハロゲン化銀カラー感光材料をドラムにできるだけ密着させることが、画像ムラ等のトラブルを防ぐには重要である。
【実施例】
【0173】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0174】
《ハロゲン化銀カラー感光材料の作製》
〔試料101の作製〕
以下の方法に従って、青感光性、緑感光性及び赤感光性ハロゲン化銀乳剤を調製した。
【0175】
(青感光性ハロゲン化銀乳剤の調製)
40℃に保温した2%ゼラチン水溶液1リットル中に、下記(A液)及び(B液)をpAg=7.3、pH=3.0に制御しつつ同時添加し、更に下記(C液)及び(D液)をpAg=8.0、pH=5.5に制御しつつ同時添加した。この時、pAgの制御は、特開昭59−45437号公報に記載の方法に従って行い、pH制御は硫酸または水酸化ナトリウム水溶液を用いて行った。
【0176】
〈A液〉
塩化ナトリウム 3.42g
臭化カリウム 0.03g
水を加えて 200mlに仕上げた
〈B液〉
硝酸銀 10g
水を加えて 200mlに仕上げた
〈C液〉
塩化ナトリウム 102.7g
ヘキサクロロイリジウム(IV)酸カリウム 4×10-8モル
ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム 2×10-5モル
臭化カリウム 1.0g
水を加えて 600mlに仕上げた
〈D液〉
硝酸銀 300g
水を加えて 600mlに仕上げた
添加終了後、花王アトラス社製のデモールNの5%水溶液と硫酸マグネシウムの20%水溶液とを用いて脱塩を行った後、ゼラチン水溶液と混合して平均粒径0.71μm、粒径分布の変動係数0.07、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体の乳剤EMP−101を得た。
【0177】
上記乳剤EMP−101に対し、下記化合物を用い60℃にて最適に化学増感を行い、青感光性ハロゲン化銀乳剤Em−B101を得た。
【0178】
チオ硫酸ナトリウム 0.8mg/モルAgX
塩化金酸 0.5mg/モルAgX
安定剤:STAB−1 3×10-4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 3×10-4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 3×10-4モル/モルAgX
増感色素:BS−1 4×10-4モル/モルAgX
増感色素:BS−2 1×10-4モル/モルAgX
臭化カリウム 0.2g/モルAgX
次いで、上記乳剤EMP−101の調製において、(A液)と(B液)の添加時間、及び(C液)と(D液)の添加時間とをそれぞれ変更した以外は同様にして、平均粒径0.64μm、粒径分布の変動係数0.07、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体の乳剤EMP−102を得た。
【0179】
上記青感光性ハロゲン化銀乳剤Em−B101の調製において、乳剤EMP−101に代えて、乳剤EMP−102を用いた以外同様にして、青感光性ハロゲン化銀乳剤Em−B102を調製し、Em−B101とEm−B102の1:1の混合物を第7層で用いる青感光性ハロゲン化銀乳剤とした。
【0180】
(緑感性ハロゲン化銀乳剤の調製)
上記乳剤EMP−101の調製において、(A液)と(B液)の添加時間、及び(C液)と(D液)の添加時間とをそれぞれ変更した以外は同様にして、平均粒径0.40μm、変動係数0.08、塩化銀含有率99.5%の単分散立方体の乳剤EMP−103を得た。
【0181】
上記乳剤EMP−103に対し、下記化合物を用い55℃にて最適に化学増感を行い、緑感光性ハロゲン化銀乳剤Em−G101を得た。
【0182】
チオ硫酸ナトリウム 1.5mg/モルAgX
塩化金酸 1.0mg/モルAgX
安定剤:STAB−1 3×10-4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 3×10-4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 3×10-4モル/モルAgX
増感色素:GS−1 4×10-4モル/モルAgX
塩化ナトリウム 0.5g/モルAgX
次いで、上記乳剤EMP−103の調製において、(A液)と(B液)の添加時間、及び(C液)と(D液)の添加時間をそれぞれ変更した以外は同様にして、平均粒径0.50μm、変動係数0.08、塩化銀含有率99.5%の単分散立方体の乳剤EMP−104を得た。
【0183】
上記緑感光性ハロゲン化銀乳剤Em−G101の調製において、EMP−103に代えてEMP−104を用いた以外同様にして緑感光性ハロゲン化銀乳剤Em−G102を調製し、Em−G101とEm−G102の1:1の混合物を第5層で用いた緑感光性ハロゲン化銀乳剤とした。
【0184】
(赤感性ハロゲン化銀乳剤の調製)
前記調製した乳剤EMP−103に対し、下記化合物を用い60℃にて最適に化学増感を行い、赤感光性ハロゲン化銀乳剤Em−R101を得た。
【0185】
チオ硫酸ナトリウム 1.8mg/モルAgX
塩化金酸 2.0mg/モルAgX
安定剤:STAB−1 2×10-4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 2×10-4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 2×10-4モル/モルAgX
安定剤:STAB−4 1×10-4モル/モルAgX
増感色素:RS−1 1×10-4モル/モルAgX
増感色素:RS−2 1×10-4モル/モルAgX
強色増感剤:SS−1 2×10-4モル/モルAgX
次に、前記調製した乳剤EMP−103に対し、下記化合物を用い60℃にて最適に化学増感を行い、赤感光性ハロゲン化銀乳剤Em−R102を得た。
【0186】
チオ硫酸ナトリウム 1.8mg/モルAgX
塩化金酸 2.0mg/モルAgX
安定剤:STAB−1 2×10-4モル/モルAgX
安定剤:STAB−2 2×10-4モル/モルAgX
安定剤:STAB−3 2×10-4モル/モルAgX
安定剤:STAB−4 1×10-4モル/モルAgX
増感色素:RS−1 2×10-4モル/モルAgX
増感色素:RS−2 2×10-4モル/モルAgX
強色増感剤:SS−1 2×10-4モル/モルAgX
上記調製した赤感光性ハロゲン化銀乳剤Em−R101と赤感光性ハロゲン化銀乳剤Em−R102の1:1の混合物を、第3層の赤感光性ハロゲン化銀乳剤として用いた。
【0187】
上記各感光性ハロゲン化銀乳剤の調製に用いた添加剤の詳細は、以下の通りである。
【0188】
STAB−1:1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール
STAB−2:1−(4−エトキシフェニル)−5−メルカプトテトラゾール
STAB−3:1−(3−アセトアミドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール
STAB−4:p−トルエンチオスルホン酸
【0189】
【化6】

【0190】
(試料の作製)
片面に高密度ポリエチレンを、もう一方の面にアナターゼ型酸化チタンを15質量%の含有量で分散して含む溶融ポリエチレンをラミネートした、平米当たりの質量が115gのポリエチレンラミネート紙の反射支持体1(テーバー剛度=3.5、PY値=2.7μm)上に、下記表1に記載の構成からなる各層を、酸化チタンを含有するポリエチレン層面側に塗設し、更に裏面側にはゼラチン6.00g/m2、シリカマット剤0.65g/m2を含む層を塗設した多層ハロゲン化銀カラー感光材料である試料101を作製した。
【0191】
カプラー及びその他の油溶性添加剤(ステイン防止剤、紫外線吸収剤)はそれぞれ高沸点溶媒に溶解して超音波分散し、分散物として添加したが、この時、界面活性剤として(SU−1)を用いた。又、硬膜剤として第2層及び第4層に(H−1)を、第7層に(H−2)を添加した。また各層に(F−1)を全量が0.04g/m2となるように添加した。なお、試料101は、前述の方法に従って測定した膜面pHが5.5となるように、第8層(紫外線吸収層)塗布液のpHを適宜調整した。
【0192】
塗布助剤としては、界面活性剤(SU−2)、(SU−3)を添加し、表面張力を調整した。
【0193】
なお、上記試料101の作製において、第5層の緑感光性層塗布液の調製及び塗布は、下記のようにして行った。
【0194】
はじめに、ゼラチンに適量の水を添加して、膨潤させた後、一定時間後に加熱してゼラチン溶液を調製した。次いで、このゼラチン溶液に、緑感光性ハロゲン化銀乳剤に適量の水を添加溶解した溶液、シアンカプラー分散物、ステイン防止剤分散物をそれぞれ適量の水を加えて溶解した溶液を順次添加攪拌した後、界面活性剤(SU−2)、(SU−3)及び(F−1)を添加して、pHを5.3に調製して第5層の緑感光性層塗布液を調製した。調製完了後、1.5時間の停滞時間を経て、上記方法に従って塗布を行った。
【0195】
【表1】

【0196】
SU−1:トリ−i−プロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム
SU−2:スルホ琥珀酸ジ(2−エチルヘキシル)・ナトリウム塩
SU−3:スルホ琥珀酸ジ(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)・ナトリウム塩
H−1:テトラキス(ビニルスルホニルメチル)メタン
H−2:2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン・ナトリウム
HQ−1:2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン
HQ−2:2,5−ジ((1,1−ジメチル−4−ヘキシルオキシカルボニル)ブチル)ハイドロキノン
HQ−3:2,5−ジ−sec−ドデシルハイドロキノンと2,5−ジ−secテトラデシルハイドロキノンと2−sec−ドデシル−5−sec−テトラデシルハイドロキノンの質量比1:1:2の混合物
HQ−4:2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン
PVP:ポリビニルピロリドン
【0197】
【化7】

【0198】
【化8】

【0199】
【化9】

【0200】
〔試料102の作製〕
上記試料101の作製において、緑感性ハロゲン化銀乳剤の調製時に用いた増感色素(GS−1)を、同モル量の例示化合物(1−53)に変更し、更に第5層の緑感光性層塗布液のpHを、6.0に変更したい以外は同様にして、試料102を作製した。
【0201】
〔試料103の作製〕
上記試料101の作製において、第5層の緑感光性層塗布液の調製方法及び塗布開始方法を以下のように変更した以外は同様にして、試料103を作製した。
【0202】
試料101の第5層の緑感光性層塗布液の調製において、緑感性ハロゲン化銀乳剤の調製時に用いた増感色素(GS−1)を、同モル量の例示化合物(1−54)に変更し、塗布液の調製手順として、カプラー分散液を除く各添加物を添加、混合して、カプラー分散液を除く塗布液を同様にして調製した。これは別に、カプラー分散液を適量の水で溶解した塗布液を調製した。塗布開始時に、主流としてカプラー分散液を除く塗布液をコーターに供給しながら、副流としてカプラー分散液を主流に東レエンジニアリング製のスタチックミキサーを用いて混合した後、5秒後に塗布を開始した。この時、カプラー分散液を除く塗布液とカプラー分散液とを混合したときのpHが6.8となるように、カプラー分散液を除く塗布液のpHを適宜調整した。
【0203】
〔試料104〜124の作製〕
上記試料101〜103の作製において、第5層の緑感光性層塗布液で用いる緑感性ハロゲン化銀乳剤の増感色素の種類、塗布液pH、カプラーの添加方法及び膜面pHを、表2に記載の組み合わせとなるように変更した以外は同様にして、試料104〜124を作製した、なお、表2に記載の膜面pHは、表2に記載の値となるように第8層塗布液のpHを適宜調整した。
【0204】
なお、表2に記載のカプラーの添加方法の記載のうち、バッチ法とは試料101の第5層塗布液の調製方法のように、カプラー分散液を、ゼラチン溶液に事前に添加して塗布液を調製する方法であり、IL法(インライン法)とは試料103の作製のように、カプラー分散液を別途適量の水で溶解した状態とし、該カプラー分散液を除く塗布液に、塗布直前に、インラインミキサーを用いて混合する方法である。
【0205】
〔試料101A〜124Aの作製〕
上記試料101〜124の作製において、塗布開始時点から各層塗布液を40℃で12時間停滞を行った後、同様にして塗布を行った以外は同様にして、試料101A〜124Aを作製した。
【0206】
《現像処理液の調製》
〔発色現像液の調製〕
タンク液 補充液
純水 800ml 800ml
トリエチレンジアミン 2g 3g
ジエチレングリコール 10g 10g
臭化カリウム 0.01g −
塩化カリウム 3.5g −
亜硫酸カリウム 0.25g 0.5g
N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)−4−アミノアニリン硫酸塩
2.9g 4.8g
N,N−ジスルホエチルヒドロキシルアミン 20.4g 18.0g
トリエタノールアミン 10.0g 10.0g
ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム塩 2.0g 2.0g
蛍光増白剤(4,4′−ジアミノスチルベンジスルホン酸誘導体)
2.0g 2.5g
炭酸カリウム 30g 30g
水を加えて全量を1リットルとし、タンク液はpH=10.0に、補充液はpH=10.6に調整した。
【0207】
〔漂白定着液の調製〕
漂白定着液タンク液=補充液
ジエチレントリアミン五酢酸第二鉄アンモニウム2水塩 65g
ジエチレントリアミン五酢酸 3g
チオ硫酸アンモニウム(70%水溶液) 100ml
2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール 2.0g
亜硫酸アンモニウム(40%水溶液) 27.5ml
水を加えて全量を1リットルとし、炭酸カリウム又は氷酢酸でpH=5.0に調整した。
【0208】
〔安定化液の調製〕
安定化液タンク液=補充液
o−フェニルフェノール 1.0g
5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.02g
2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.02g
ジエチレングリコール 1.0g
蛍光増白剤(チノパールSFP) 2.0g
1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸 1.8g
硫酸亜鉛 0.5g
硫酸マグネシウム・7水塩 0.2g
PVP(ポリビニルピロリドン) 1.0g
アンモニア水(水酸化アンモニウム25%水溶液) 2.5g
ニトリロ三酢酸・三ナトリウム塩 1.5g
水を加えて全量を1リットルとし、硫酸又はアンモニア水でpH=7.5に調整した。
【0209】
《露光、現像処理》
〔露光方法〕
下記の光源をもつドラム露光方式の露光装置を用いた。
【0210】
光源としてブルーのLEDを主走査方向に5個並べ露光のタイミングを少しづつ遅延させることによって同じ場所を5個のLEDで露光できるように調整した。また、副走査方向にも20個のLEDを並べ隣接する20画素分の露光が1度に出来る露光ヘッドを準備した。グリーン、レッドについても同様に、上記と同様にLEDを組み合わせて露光ヘッドを準備した。各ビームの径は約10μmで、この間隔でビームを配列し、副走査のピッチは約100μmとした。1画像当たりの露光時間は約100ナノ秒であった。
【0211】
上記露光装置の露光ドラムに、600mm×600mmのシート状に断裁した上記各ハロゲン化銀カラー感光材料を巻き付けて、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、墨(K)の濃度を20ステップにわたって変化させたウェッジ露光と、グリーンのLEDを用いて現像後のマゼンタ濃度が1.0となるような均一ベタ露光を行った。
【0212】
〔現像処理〕
上記方法に従って露光した各ハロゲン化銀カラー感光材料(試料101〜124、試料101A〜試料124A)を、下記の現像処理条件で処理を行い、画像1〜24、1A〜24Aを作成した。
【0213】
(現像処理条件)
〈処理工程〉 〈処理温度〉 〈処理時間〉 〈補充量:ml/m2
発色現像 40.0±0.3℃ 110秒 80
漂白定着 40.0±0.3℃ 80秒 100
安定化 40.0±0.3℃ 60秒 150
乾燥 60〜80℃ 30秒
《処理済み試料の評価》
〔停滞安定性の評価〕
上記作成した試料101〜124、試料101A〜試料124Aの各ウェッジ画像について、エックスライト社製の反射濃度計530型(フィルター:ステータスT)を用いて各色濃度を測定し、縦軸:色画像濃度D、横軸:露光量LogEからなる特性曲線を作成した。
【0214】
作成した特性曲線において、マゼンタ濃度0.75を得るのに要する露光量の逆数を感度と定義し、それぞれの試料の感度を測定し、試料101〜124の感度に対する10時間の塗布液停滞を行った後作製したそれぞれ対応する試料101A〜試料124Aの感度比率を求め、これを停滞安定性の評価尺度とした。感度変動率が0.97〜1.03の範囲であれば、実用上優れた塗布安定性を有していると判定しした。
【0215】
〔塗膜均一性の評価〕
上記作成した試料101〜124のグリーンの均一ベタ露光を施し現像した試料について、10の被験者による濃度の均一性、濃度ムラの有無について目視観察を行い、下記の基準に従って塗膜均一性の評価を行い、その平均値を求めた。
【0216】
5:形成されたベタ画像は、画像均一性が高く、全く問題ない
4:形成されたベタ画像を注視して見ると、極弱い濃度ムラがやや認められるが、良好な画像均一性である
3:形成されたベタ画像にやや弱い濃度ムラが散在するが、実用上は許容される品質である
2:形成されたベタ画像に弱い濃度ムラの発生が認められ、実用上問題となる品質である
1:形成されたベタ画像に強い濃度ムラの発生が認められ、実用上明らかに問題となる品質である
〔高温保存安定性の評価〕
上記作成した各試料(基準試料)と、それらを予め55℃の環境下で1週間保存した試料(高温処理試料)とを準備し、それぞれの各試料を未露光状態で上記現像処理を行った後、エックスライト社製の反射濃度計530型(フィルター:ステータスT)を用いて、グリーンフィルターを用いて、最小マゼンタ濃度を測定し、高温処理前後でのマゼンタ最小濃度(カブリ濃度)の変動幅ΔDmin(高温処理試料の最小マゼンタ濃度−基準試料の最小マゼンタ濃度)を求め、これを高温保存安定性の評価尺度とした。ΔDminが+0.05以下であれば、優れた高温保存安定性を備えていると判断した。
【0217】
以上により得られた結果を、表2に示す。
【0218】
【表2】

【0219】
表2に記載の結果より明らかなように、第5層の構成として一般式(1)で表される増感色素を含有し、塗布液pHを6.5〜8.0の範囲とし、更に全ての添加剤の添加が終了してから塗布を開始するまでの時間が1時間以上として製造した本発明の試料は、比較例に対し、停滞安定性、塗膜均一性に優れ、かつ高温保存安定性が良好であることが分かる。更に、本発明の試料においても、膜面pHを5.0〜6.0の範囲とすることにより、特に、高温保存安定性がより良好であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に感光性ハロゲン化銀乳剤層を有するハロゲン化銀感光材料の製造方法において、少なくとも1層の該感光性ハロゲン化銀乳剤層が下記一般式(1)で表される増感色素を含有し、かつ該一般式(1)で表される増感色素を含有する該感光性ハロゲン化銀乳剤層を形成する塗布液が、pHが6.5以上、8.0以下であって、かつ硬膜剤を除く全ての添加剤の添加が終了してから、該支持体上へ塗布を開始するまでの時間が1時間以上であることを特徴とするハロゲン化銀感光材料の製造方法。
【化1】

〔式中、R21及びR23は、各々置換あるいは非置換のアルキル基を表し、R21及びR23の少なくともいずれか一方の基はエチル基以外の基であり、R22及びR24は低級アルキル基を表し、R22とR24のいずれか一方は親水性基を置換したアルキル基である。V1、V2、V3及びV4は各々、水素原子あるいは加算したハメットσp値の総和が1.7より小さくなる置換し得る基を表し、V1〜V4が同時に水素原子あるいは塩素原子とはならない。Xは分子内の電荷を中和するのに必要なイオンを表し、n2は分子内の電荷を相殺するに必要なイオン数を表す。〕
【請求項2】
塗布及び乾燥終了後の膜面pHが、5.0以上、6.0以下であることを特徴とする請求項1記載のハロゲン化銀感光材料の製造方法。
【請求項3】
前記ハロゲン化銀感光材料が、前記感光性ハロゲン化銀乳剤層として、イエロー発色感光性感光性ハロゲン化銀乳剤層、マゼンタ発色感光性感光性ハロゲン化銀乳剤層及びシアン発色感光性感光性ハロゲン化銀乳剤層をそれぞれ少なくとも1層有するハロゲン化銀カラー感光材料であることを特徴とする請求項1または2に記載のハロゲン化銀感光材料の製造方法。

【公開番号】特開2006−227351(P2006−227351A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−41876(P2005−41876)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】