説明

ハロゲン電球、反射鏡付きハロゲン電球および照明装置

【課題】フィラメントに扁平コイルを採用した管球において、扁平コイルがねじするのを防止することができる発光体を備えるハロゲン電球を得ることを目的とする。
【解決手段】ハロゲン電球は、バルブと当該バルブ内に配された発光体とを備える。前記発光体は、1又は複数の一重巻きのフィラメントコイルから構成された2以上の発光部を有し、また前記フィラメントコイルは、フィラメント線を略扁平形状に巻回して構成される。そして、少なくとも2つの前記発光部は、それぞれのフィラメントコイルの長軸同士が平行に対向する状態で隣接し、前記少なくとも2つの発光部におけるフィラメント線の横断面の結晶数N(Nは整数)が1個から3個の範囲内にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハロゲン電球、反射鏡付きハロゲン電球および照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
反射鏡付きハロゲン電球は、凹面状の反射鏡内にハロゲン電球が組み込まれた構成を有し、例えば商業施設におけるスポットライト等の一般照明用として使用されている。
そして、ハロゲン電球は、バルブと、内部リード線によって支持されて、当該バルブ内に配置された発光体とを有している。
ここで、発光体は、全体的にコンパクトであるほど点光源に近づけることができ、反射鏡との組み合わせにおいて集光効率を向上させることができる。そこで、発光体として、フィラメント線を扁平形状に巻回してなるフィラメントコイルを利用したものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特に、扁平形状に一重巻きされ、かつそれが直線状に延びるフィラメントコイルを複数用いてなる発光体を、バルブ内においてそれぞれのフィラメントコイル(発光部)の長手方向の中心軸が反射鏡における光軸と略平行になるように互いに隣接させて配置することにより、発光体が、前記光軸方向と、前記光軸と垂直に交わる方向とのいずれにおいてもコンパクトになり、上記した集光効率を一層向上させることが期待される。
【特許文献1】国際公開第2003/075317号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、上記した従来の発光体の構造を基に発光体を一層コンパクト化し、集光効率を最大限に高めるために、フィラメントコイルとして、全体形状が直線形状をした一重巻きの扁平コイルを略V字状に折り曲げ、あたかも二つの発光部が隣接するように並べた構造の発光体を用いて、その効果の検証を行った。
ところが、円形形状に巻回されたフィラメントコイルでは見られなかった現象が起きた。すなわち、完成したハロゲン電球において、累積の点灯経過時間が初期の段階(例えば数分〜数時間)での点灯中に、図17に示すような、発光部に対応するフィラメントコイルがその長手方向の中心軸に対してねじれるように回転変形(この変形を、以下、単に「ねじれ」という)し、これにより、隣接するフィラメントコイルのフィラメント線同士で接触して短絡したり、接触しなくとも互いに近接することによってその間で放電して断線したりするといった問題が起こった。
【0005】
さらには、フィラメントコイルがねじれた結果、そのフィラメントコイルの一部においてコイルピッチが乱れ、発光している部分と発光していない部分とが現れ、この状態においては発光している部分が過剰に温度上昇するために短寿命化を招く。もちろん、フィラメントコイルがねじれたことにより、フィラメントコイルがバルブ内で本来位置すべき位置からずれ、集光効率が低下するという問題も起こる。
【0006】
なお、フィラメントコイルがねじれていない正常な状態(設計どおり状態)を図16に、それを数分点灯した後のフィラメントコイルがねじれ、コイルピッチも乱れている状態を図17にそれぞれ示す。
したがって、発光体としてフィラメントコイルを1本単体で用いて1つの発光部を構成する分には問題ないが、そのフィラメントコイル(発光部)を複数、林立するように隣接して配置することはできなかった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、略扁平形状に巻回されたフィラメントコイルのねじれのような回転変形を防止することができる発光体を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明において注目すべき点は、フィラメントコイルがねじれるタイミングが、完成したハロゲン電球において累積の点灯経過時間が初期の段階での点灯中(通電中)であって、フィラメントコイル自体あるいは発光体自体のプロセスで起きているわけではないことである。
すなわち、通常、フィラメントコイルは、芯線と呼ばれる例えばモリブデン棒にタングステン線(素線)を巻回し、焼成して所定の巻回形状に安定化(タングステンの再結晶化)させた後、モリブデン棒を溶解させて得る。前記ねじれはこの溶解後に起きているわけではない。
【0009】
一方で、特開昭57−82961号公報には、「繰り返し衝撃のためにコイルフィラメントが変形する」ことが開示されている。また、特開平8−115709号公報には、「ランプの点滅による繰り返しの膨張と収縮によるストレスが加わり、粒界の強度が減少し、タングステンワイヤーが変形、断線する」ことが開示されている。これらは、いずれも複写機用のハロゲン電球における電球移動時の衝撃や点滅時の熱衝撃による応力に起因した変形である。
【0010】
しかしながら、ここで問題とする前記ねじれは、上述のとおり完成ハロゲン電球において累積の点灯経過時間が初期の段階での点灯中であって、フィラメントコイル(フィラメント線)に熱衝撃による応力が発生しやすいハロゲン電球の消灯時や消灯直後の点灯時ではなく、また静置状態での点灯中であり、外部から何らかの衝撃が加わったことに起因するものでもない。
【0011】
本発明者らは、このように既知の事項を応用するだけでは解決できない問題でありながらも、鋭意検討した結果、特に前記フィラメント線における少なくとも曲線状の部分の横断面において、結晶数を1個から3個の範囲内にすることにより、上記した問題を解決することができることを見出した。
すなわち、バルブと当該バルブ内に配された発光体とを備えるハロゲン電球において、前記発光体は、1又は複数の一重巻きのフィラメントコイルから構成された2以上の発光部を有し、前記フィラメントコイルは、フィラメント線を略扁平形状に巻回して構成され、少なくとも2つの前記発光部は、それぞれのフィラメントコイルの長軸同士が平行に対向する状態で隣接し、前記少なくとも2つの発光部におけるフィラメント線の横断面の結晶数N(Nは整数)が1個から3個の範囲内にあることを特徴とするものである。
【0012】
ここで、「発光体は、1又は複数の一重巻きのフィラメントコイルから構成された2以上の発光部を有し」とは、それぞれ独立した別個の一重巻きのフィラメントが複数あることはもちろんのこと、外見上、独立したフィラメントコイル自体は一つであるが、そのフィラメントコイルの任意の位置に非発光の領域が存在し、発光している領域である発光部自体は見かけ上、複数存在していることになるもの等を含む。具体的には、複数の一重巻きのフィラメントコイルから2以上の発光部が構成される例としては、二つの直線状または曲線状のフィラメントコイルがハの字状に配置されて2つの発光部を構成したものや、二つ以上の直線状または曲線状のフィラメントが、その長手方向の中心軸が平行になるように平面的にまたは立体的に配置されて2つの発光部を構成したものもの等が挙げられる。また、1つの一重巻きのフィラメントコイルから2以上の発光部が構成される例としては、一つの直線状のフィラメントがたとえばその中央で略V字状に曲げられその頂点部(中央)を非発光部として、その両側に2つの発光部を構成したもの等が挙げられる。
【0013】
また、ここでいう「隣接」には、接触は含まないが、上述したように発光体のコンパクト化という本発明の趣旨から可能な限り近接させた状態を意味する。さらに、「横断面」は、フィラメントコイルを構成しているフィラメント線のある任意点を含み、フィラメント線が延びる方向に対して垂直に切ったときの断面を意味する。
本発明に係る反射鏡付きハロゲン電球は、凹面状の反射鏡と、この反射鏡内に配置された上記構成のハロゲン電球とを備え、前記ハロゲン電球のバルブの長手方向の中心軸と前記反射鏡の光軸とが略同一軸上に位置していることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明に係る照明装置は、上記構成のハロゲン電球が照明器具に取り付けられていることを特徴とするものであり、内部に反射鏡部を有する照明器具と、前記反射鏡部内に組み込まれた上記構成のハロゲン電球とを備えていることを特徴とするものである。
さらに、本発明に係る照明装置は、上記構成の反射鏡付きハロゲン電球が照明器具に取り付けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、発光部におけるフィラメント線の横断面の結晶数N(Nは整数)を1個から3個の範囲内にすることにより、累積の点灯経過時間が初期段階を超えてもフィラメントコイルにねじれるような回転変形が発生しないことが試験により確認された。つまり、発光部におけるフィラメント線の横断面の結晶数N(Nは整数)を1個から3個の範囲内にすることにより、略扁平形状に巻回されたフィラメントコイルのねじれのような回転変形を防止できる発光体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
<実施の形態1>
1.照明装置
図1は、実施の形態1に係る管球の一例として示すハロゲン電球14を有する照明装置10の概略構成を示す一部切欠き図である。なお、図1を含む全ての図面において、各部材間の縮尺は統一していない。
【0017】
照明装置10は、例えば、住宅、店舗、あるいはスタジオ等におけるスポットライト照明として用いられる。照明装置10は、照明器具12と照明用ハロゲン電球14とを有する。
照明器具12は、有底円筒状をした器具本体16と器具本体16に収納された反射鏡18とを有する。
【0018】
器具本体16の底部には、ハロゲン電球14の口金30(図2参照)を取り付けるための受け具(図示せず)が設けられている。なお、器具本体16は、円筒状に限らず、種々の公知形状とすることができる。
反射鏡18は、ハロゲン電球14を取替え可能とするため、器具本体16に対し、着脱可能である。
【0019】
反射鏡18は、漏斗状をした硬質ガラス製基体20を有する。基体20において回転楕円面または回転放物面等に形成された凹面部分20Aには、反射面を構成する多層干渉膜22が形成されている。多層干渉膜22は、二酸化ケイ素(SiO)、二酸化チタン(TiO)、フッ化マグネシウム(MgF)、硫化亜鉛(ZnS)等で形成することができる。
【0020】
また、多層干渉膜22に代えてアルミニウムやクロム等からなる金属膜で反射面を構成することもできる。反射鏡18の開口径(ミラー径)は100[mm]であり、ビームの開き(ビーム角)が、狭角(約10[°])のものである(数値は一例である)。なお、反射面には必要に応じてファセットを形成してもよい。
反射鏡18は、基体20の開口部(光照射開口部)に設けられた前面ガラス24を有する。本例では、前面ガラス24は基体20に固着されており、ハロゲン電球14の取替えのため、基体20部分が器具本体16と着脱自在な構成となっているが、これに限らず、基体を器具本体に固定し、前面ガラスを基体に対し着脱自在な構成としても構わない。
2.ハロゲン電球
ハロゲン電球14は、前記受け具(不図示)に取り付けられ、反射鏡18内に組み込まれて使用される。組み込まれた(取り付けられた)状態で、ハロゲン電球14の後述するバルブ26の中心軸Bと反射鏡18の光軸Rとが略同軸上に位置することとなる(中心軸Bと光軸Rとが略一致することとなる)。ハロゲン電球14は、定格電圧が100[V]以上150[V]以下で、かつ定格電力が100[W]以下に設定された電球である。
【0021】
図2に、ハロゲン電球14の一部切欠き正面図を示す。
ハロゲン電球14は、気密封止されたバルブ26と、バルブ26の後述する封止部38側に接着剤28によって固着された、例えばE型の口金30とを有している。
バルブ26は、封止切りの残痕であるチップオフ部32、後述するフィラメント体(本発明の「発光体」に相当する)61等を収納するフィラメント体収納部34、略円筒状をした筒部36、および公知のピンチシール法によって形成された封止部38がこの順に連なった構造をしている。
【0022】
フィラメント体収納部34は、図2に示すように、略回転楕円体形状をしている。ここで言う「略回転楕円体形状」とは、完全な回転楕円体形を含むことはもちろんのこと、ガラスの加工上ばらつく程度分、完全な回転楕円体形からずれた形状を含むことを意味している。なお、フィラメント体収納部は、上記した形状に限らず、例えば、略円筒形状や略球形状、あるいは略複合楕円体形状としても構わない。
【0023】
また、バルブの構造も上記したものに限らず、例えば、図2の筒部36を有さず、チップオフ部(場合によっては無い場合もある)、フィラメント体収納部、封止部がこの順に連なったものとすることができる。
なお、フィラメント体収納部34(およびチップオフ部32)の外面には赤外線反射膜が形成されている。もっとも、この赤外線反射膜は必ずしも必要なものではなく、適宜形成されるものである。
【0024】
バルブ26内には、ハロゲン物質と希ガスとがそれぞれ所定量封入されている。これに加えて、窒素ガスを封入することとしても構わない。
ハロゲン物質は、点灯中、ハロゲンサイクルによって、フィラメント体61から蒸発したその構成物質であるタングステンを再びフィラメント体61に戻し、バルブ26の黒化を防止するためのものである。ハロゲン物質の濃度は10[ppm]〜300[ppm]の範囲内にあることが好ましい。
【0025】
また、ハロゲンサイクルを活性化させるためには、バルブ26内面における最冷点温度が200[℃]以上であることが好ましい。さらに、ハロゲンサイクルを適切に機能させるためには、バルブ26内の酸素濃度を100[ppm]以下にすることが好ましい。
希ガスには、クリプトンガスを用いることが好ましい。クリプトンガスを用いることにより、集光効率を高める目的でフィラメント体を全体的にコンパクト化するため、後述するような形態を採用しているにもかかわらず、対向する発光部(後述)間の任意の場所で点灯時にアーク放電が発生して、断線するのを抑制するといった効果が得られる。
【0026】
特に、封入ガスは、クリプトンを主成分とした、窒素ガスおよびハロゲン物質を含むものとし、バルブ26内での常温時におけるガス圧を2[atm]〜10[atm]の範囲内に設定することが好ましい。当該ガス圧が10[atm]を超えると、万一バルブ26が破損した場合に、飛散する破片で照明器具が破損するおそれがあり、一方、2[atm]未満であると、フィラメント体61の構成物質であるタングステンが蒸発し易く、ランプ寿命が短くなるからである。
【0027】
換言すると、ガス圧の上記範囲は、当該ガス圧が適度に抑制されているため、万一バルブ26が破損したとしても、照明器具が破損するほどの勢いで破片が飛散せず、かつ、当該ガス圧が適度に高いため、フィラメント体61の構成物質であるタングステンが蒸発しにくく、長寿命化を実現でき、さらには、点灯時に隣接する発光部間の任意の場所で点灯時にアーク放電が発生して、断線するのを抑制することができる範囲である。
【0028】
また、封入ガスに窒素ガスを含ませる場合、窒素ガスの組成比率は8[%]〜40[%]の範囲内に設定することが好ましい。窒素ガスの組成比率が40[%]を超えると、点灯中にフィラメント体61で発生する熱が窒素ガスを介して過度に放出され、効率が低下するおそれがあり、一方、8[%]未満であると、点灯時に対向する発光部(後述)間でアーク放電が起きやすく、断線が発生し易いからである。
【0029】
換言すると、窒素ガスの上記組成比率範囲は、窒素ガスの組成比率が適度に抑制されているため、点灯中にフィラメント体61で発生する熱が窒素ガスを介して過度に放出されることにより効率が低下するのを防止することができると共に、窒素ガスが適度に含まれているため、点灯時に対向する発光部(後述)間でアーク放電が発生し、断線するのを抑制することができる範囲である。
【0030】
封止部38内には、一対の金属箔40,42が封着されている。金属箔40,42はモリブデン製である。なお、封止部38に封着されている金属箔40,42の過熱による酸化が原因で、バルブ26の気密性が損なわれるのを防止するため、封止部38の表面を凹凸にして、当該表面積を増やし、封止部38での放熱性を向上させることが好ましい。
金属箔40の一端部には外部リード線44の一端部が、金属箔42の一端部には外部リード線46の一端部が、それぞれ接合されて電気的に接続されている。外部リード線44,46は、タングステン製である。外部リード線44,46の他端部は、バルブ26の外部に導出されていて、それぞれ、口金30の端子部48,50に電気的に接続されている。
【0031】
ここで、2本の外部リード線44,46の内、少なくとも一方の外部リード線と口金30の対応する端子部(48または50)との間に、ヒューズ(図示せず)を設けておくことが好ましい。当該ヒューズを設けることにより、万一、発光部(後述)で断線が生じ、その断線箇所でアーク放電が発生したとしても、即座にヒューズが溶断されてアーク放電の継続を絶ち、もってアーク放電の衝撃でバルブ26が破損等するのを防止できる。
【0032】
特に、発光部の対向間隔をできる限り短縮する場合には、両方の外部リード線44,46と口金30の対応する端子部48,50とのそれぞれの間にヒューズを設けることが好ましい。この場合には、発光部での断線に起因するアーク放電が発生しなくても、対向する発光部間でアーク放電が発生するおそれがあるからである。
金属箔40の他端部には内部リード線52の一端部が、金属箔42の他端部には内部リード線54の一端部が、それぞれ接合されて電気的に接続されている。内部リード線52,54は、金属線の一例として示すタングステン線からなり、その径は、例えば、0.5[mm]である。内部リード線52,54の一端部は、バルブ26の封止部38で支持されていて、内部リード線52,54の他端部側が当該封止部38からバルブ26内空間に延出している。内部リード線52,54は、口金30を介して供給される外部電力をフィラメント体61に給電すると共に、フィラメント体61の一部を直接に支持する導電性支持部材としての役割を果たす。
3.マウント
(1)全体構造
図3に、フィラメント体61が支持されてなるマウント55の斜視図を示す。
【0033】
フィラメント体61は、本実施の形態では、一本のフィラメント線を扁平形状に一重に巻回させてなる単フィラメントコイル60一個で構成されている。
図3に示すように、フィラメント体61の一部を直接に支持する支持部材としては上記内部リード線52,54の他に、フィラメント体61を、その長手方向ほぼ中央で支持する中間支持部材がある。なお、以下、当該中間支持部材をサポート線56とし、サポート線56は、タングステン線からなる。
【0034】
内部リード線52,54、サポート線56は、一対の柱状ステムガラス57,59で挟持されている。これによって、サポート線56が支持されると共に、内部リード線52,54、サポート線56相互間の相対的な位置が保持されることとなる。
(2)フィラメント体
フィラメント体61は、図3に示すように、短軸と長軸とを有する扁平な横断面をした筒状にフィラメント線が巻かれた単フィラメントコイル60を、当該単フィラメントコイル60の長手方向ほぼ中央部60Dで、短軸方向に略V字状に屈曲させ、当該屈曲部を中間支持部材であるサポート線56で支持し、サポート線56と両内部リード線52,54との間で懸架したものである。
【0035】
発光部60A1,60A2は、上述したように、単フィラメントコイル60の中央部60Dの長手方向の両側部分であって、単フィラメントコイル60を略V字状に屈曲させることで互いに対向する部分に存在する。発光部60A1,60A2は、各発光部60A1,60A2の扁平形状の単フィラメントコイル60の長軸同士が平行して対向する状態となっている。なお、発光部60A1,60A2については後述する。
【0036】
本例で示す略V字状は、ステムガラス57,59(封止部38(図2))側に開いている。ここで、「略V字状」とは、厳密に文字「V」の形状を意味していないことは言うまでもなく、フィラメントコイルを鋭角に屈曲させた際に必然的に形成されるおおよその形状を意味するものである。したがって、屈曲部も丸みを帯びていることは勿論であり、屈曲部から端部に至る部分も完全に直線である必要はなく、若干湾曲している状態を含むものである。また、鋭角に屈曲させず、積極的に円弧状に屈曲させて、全体的に略U字状とすることも可能である。
【0037】
(3)単フィラメントコイル
単フィラメントコイル60として、扁平な筒状に一重に巻回されてなるコイル(以下、「扁平コイル」と言う)を採用したのは、以下の理由による。すなわち、円筒状に一重に巻回されてなる単コイル(以下、「円筒コイル」と略称する)と比較して、(扁平な筒の短軸長と円筒の直径が等しいとした場合)1ターン当たりの素線長を長くすることができる関係上、タングステン線の長さが同じであれば、コイルの全長を短縮でき、もって、反射鏡の光軸方向(バルブ中心軸)におけるフィラメントコイル(発光部)のコンパクト化が図れることとなるからである。
【0038】
扁平コイルである単フィラメントコイル60は、以下のようにして作製される。すなわち、図4に示すように、円柱状をした芯線(マンドレル)62を複数本(図示例では4本)、平行かつ一列に密着させて並べたものの外周に、タングステンからなるフィラメント線64を、後述する拡開部を除き全体的に所定の等ピッチ(一様ピッチ)で巻回する。
そして、巻回した状態で、焼成(この焼成を「第1焼成」という)して、巻回されたフィラメント線の形状安定化(タングステンの再結晶化)を行う。その後、芯線62を溶解して作製し、再度、焼成(この焼成を「第2焼成」という)して、扁平コイルを構成するフィラメント線内に残留する応力を緩和・除去すると共にタングステンの結晶成長化を行う。
【0039】
上記タングステンの結晶成長化を行うことで、フィラメント線の横断面における結晶数を1個以上3個以下としている。なお、フィラメント線の横断面における結晶数を1個以上3個以下とする理由については後述する。
フィラメント線は、タングステンを主成分とし、酸化カリウム等がドープ材として添加されている。また、フィラメント線の径は、例えば0.05[mm]で、前記所定の等ピッチは、例えば0.079[mm]に設定されている。
【0040】
図5の上部に示すのは、屈曲前の単フィラメントコイル60をそのコイル軸心CX方向から視た平面図を模式的に表したものであり、図5の下部に示すのは、同正面図を模式的に表したものである。
図5の上部に示すように、単フィラメントコイル60は、そのコイル軸心CX方向から見て、平行に配された2本の線分の対応する端同士を半円で結んでなる、いわゆる(陸上競技の)トラック形状をしている。この形状は、上記した作製方法に由来するものであり、芯線62の本数が多いほど、より扁平したトラック形状となる。すなわち、芯線62の本数で、扁平の度合い(扁平率)を調整することができる。
【0041】
ここで、扁平率は、単フィラメントコイル60内周における長軸LXの長さを短軸SXの長さで除して得られる値と規定する。本例では、上記した製作法を採る関係上、扁平率は整数の値となり、一例として、扁平率を「4」としている。
また、単フィラメントコイル60は、全体的には、略一様なピッチで巻かれているのであるが、その中間部の両側に、上記略一様なピッチよりも拡げられた拡開部60E1,60E2を有する。拡開部60E1,60E2は、1〜2巻(ターン)の範囲で形成される。
【0042】
拡開部60E1,60E2は、前述した単フィラメントコイル60の作製工程において、図4に示す芯線62にフィラメント線64を巻く際に形成される。単フィラメントコイル60において、拡開部60E1,60E2よりも端部側の部分が、それぞれ、内部リード線52,54に接続される(内部リード線52,54で支持される)継線部60B1,60B2となる。
【0043】
拡開部60E1,60E2を設ける目的は、フィラメント体61において、発光領域(発光するフィラメント線部分の長さ)を安定させるためである。内部リード線52,54と接触するフィラメント線部分は、通電状態において発光しない。
拡開部60E1,60E2を設けない場合(すなわち、継線部となるべき部分と発光部(60A1,60A2)となるべき部分とが、拡開部60E1,60E2を介することなく、連続している場合)、両継線部60B1,60B2間が発光すべきなのであるが、発光部60A1,60A2と継線部60B1,60B2との境界が不明確となり、継線部となるべき部分が不用意に発光したり、その逆に、発光すべき部分(60A1,60A2)が発光しなかったりする事態が生じる。
【0044】
そこで、拡開部60E1,60E2を設け、継線部60B1,60B2と発光部との間に存するフィラメント線部分(すなわち、拡開部60E1,60E2に存するフィラメント線部分)は、積極的に発光させないこととすることにより、発光部60A1,60A2の基端(フィラメント線の発光端)を明確にすることとしているのである。これにより、発光するフィラメント線部分の長さが安定する関係上、消費電力が安定することとなる。
【0045】
ここで、上記の目的を確実に達成するためには、継線部60B1,60B2における、単フィラメントコイル60の中央側(拡開部60E1,60E2側)の最終ターン(巻き線部分)を、内部リード線52,54に確実に接触させる必要がある。
図3に戻り、単フィラメントコイル60の端部から導入された内部リード線52,54は、拡開部60E1,60E2から導出されていて、導出部52A,54Aが、単フィラメントコイル60の対応する端部側に折り曲げられている。
【0046】
(4)単フィラメントコイルの支持
内部リード線52,54の単フィラメントコイル60内における形態は同様なので、内部リード線54の単フィラメントコイル60内(継線部60B2内)での形態を代表として、図6に示す。図6は、図3に示す矢印Aの向きに継線部60B2を見た図であり、継線部60B2を断面で表し、その内部における内部リード線54部分の形態を分かり易くした図である。なお、継線部60B2は、両端以外の同一形状部分を一部省略したものであり、当該同一形状部分については、コイルの内径と外径を一点鎖線で表したものである。
【0047】
内部リード線54は、扁平な横断面を有する筒状に巻かれた単フィラメントコイル60内において、前記横断面の長軸方向に「く」字状に屈曲された屈曲部54Bを有する。屈曲部54Bを設けない場合、単フィラメントコイル60が内部リード線54を中心として回転してしまうのであるが、当該屈曲部54Bを設けることにより、当該回転を防止できる。
【0048】
回転を防止するのは、回転してしまうと、継線部60B1,60B2(図3)同士が異常に接近したり、接触したりして、継線部60B1,60B2間での放電や、短絡が生じる恐れがあり、好ましくないからである。
屈曲部54Bの高さHは、前記長軸の長さと略等しいことが好ましい。なお、屈曲部54Bにおいて「く」字状の屈曲角度βは特に限定されるものではなく、図示した角度より小さくても大きくても構わない。また、屈曲の形態も「く」字状に限定されるものではなく、上述した目的が達成できる(効果が得られる)形態であれば、円弧状や蛇行状等でも構わない。
【0049】
屈曲部54B両側にストレート部54C,54Dが、継線部60B2の前記長軸方向一端部側内周に沿い、継線部60B2(単フィラメントコイル60)の軸心方向に延びている。
ストレート部54Dに続く部分は、拡開部60E2から単フィラメントコイル60外へ導出されていて、当該導出部54Aが、前述したように、単フィラメントコイル60の端部側に折り曲げられている。当該折り曲げは、内部リード線54の、継線部60B2における拡開部60E2側の最終巻き線(最終ターン)60T1と接触する位置を基点としてなされている。折り曲げ角度αは、45度以下が好ましい。
【0050】
このように、導出部54Aを折り曲げることにより、内部リード線54を最終巻き線60T1と確実に接触させることができ、もって、継線部60B2が不用意に発光することを防止できる。
また、導出部54Aを折り曲げることで、継線部60B2が内部リード線54から脱落するのを防止できる。図6において、二点鎖線で示す折り曲げない状態のままであると、ハロゲン電球14に外力が加わって、例えば、フィラメント体61が扁平の長軸方向に振動した場合に導出部54Aから継線部60B2が抜け出してしまう事態が生じるのであるが、上記のように折り曲げることで、フィラメント線が内部リード線54の端部を越えて振動することが無いので、上記のような事態を防止できるのである。
(5)発光部
図7の上部に示すのは、内部リード線52,54、サポート線56に取り付けられた状態、すなわち、図3に示す状態のフィラメント体61を、図3の矢印Cの向きに見た平面図を模式的に表したものであり、図7の下部に示すのは、矢印Dの向きに見た正面図を模式的に表したものである。ここで、図7は、フィラメント体61における通電中の発光箇所等を説明する目的で用いるため、本図において、内部リード線52,54の図示は省略し、サポート線56は、フィラメント体61を直接支持する部分で切断した切断端面で表している。図7では、また、上部の平面図および下部の正面図の両方において、フィラメント体61における発光部60A1,60A2を実線で、非発光部60C1,60C2,60C3を二点鎖線で表した。
【0051】
フィラメント体61(単フィラメントコイル60)は、継線部60B1、拡開部60E1および継線部60B2、拡開部60E2で発光しない(非発光部60C1,60C2)ことは、前述した通りである。
また、フィラメント体61の屈曲部において、サポート線56に支持されて接触している数巻き(数ターン)部は、隣接するターン同士の一部が接触して電気的に短絡状態となるため通電中においても発光しない。発光しない範囲は、屈曲部の態様、屈曲の程度(屈曲角度)、サポート線の形状等に拠るが、少なくとも屈曲部の一部は非発光部60C3となる。すなわち、フィラメント体61では、非発光部60C3を含む屈曲部からフィラメント体61の一方の拡開部60E1に至る間(拡開部60E1は含まない)に第1の発光部60A1が、他方の拡開部60E2に至る間(拡開部60E2は含まない)に第2の発光部60A2が存することとなる。そして、第1の発光部60A1と第2の発光部A2とは、単フィラメントコイル60における扁平形状の長軸同士が対向する状態で配されている。
【0052】
(6)フィラメント線
図8は、発光部のフィラメント線の横断面図である。
発光部60A1,60A2は、図8に示すように、フィラメント線の横断面において、結晶数N(Nは整数)は1個から3個の範囲内(1個および3個は含む)にある。フィラメント線の横断面における結晶数Nが、上記範囲にあることにより、発光部に対応する領域のフィラメントコイル(フィラメントコイルの発光部を構成している部分)がねじれるのを抑制できることが判明している。
【0053】
これは、フィラメント線の横断面における結晶数Nを1個から3個の範囲内にすることで、フィラメント線の横断面において結晶数のバラツキが小さくなり、全体として均質等方性を示すようになったためと考えられる。
図9は、フィラメント線の横断面における結晶数とねじれ発生率との関係を示す図である。
【0054】
試験では、フィラメント線の横断面における結晶数が1〜4であるフィラメント体を用いてハロゲン電球を製作し、当該ハロゲン電球を点灯させて、累積時間が初期の段階においてフィラメントコイルにねじれが発生するか否かを目視により観察した。なお、試験本数は5本である。
ここでの目視によるねじれの無は、発光部におけるフィラメントコイルの形状を完全に維持しているだけでなく、厳密にはわずかにねじれてはいるものの、実質的にフィラメントコイルの原形形状と同一視できる程度のものも含んでいる。
【0055】
フィラメント線の横断面における結晶数の制御は、例えば、特開昭57−82961号公報に示す公知技術により行える。つまり、フィラメント線の原料であるタングステン粉末にドープされる酸化カリウム等のカリウム化合物(ドープ剤)のドープ量、焼成温度、焼成回数等により行う。
上記の試験により、図9に示すように、フィラメント線の横断面における結晶数Nが1〜3であるランプの場合、ねじれ発生率が0/5、つまり、5本ともねじれが発生しなかったことが分かる。一方、結晶数Nが4になると、ねじれ発生率が4/5、つまり、5本中4本にねじれが発生していることが分かる。
【0056】
このように、発光部60A1,60A2を構成する全領域のフィラメント線の横断面における結晶数Nが、上記範囲にあることにより、発光部60A1,60A2を構成している扁平形状に巻回されているフィラメントコイルに発生していたねじれが抑制されることが試験より確認された。
(7)その他
サポート線56は、内部リード線52,54とは異なり、導電性を有する必要はなく、フィラメント体61を機械的に支持できれば構わないため、絶縁性部材、例えばセラミック材料やガラス材料で形成することも可能である。この場合であっても、フィラメント体61の屈曲部の内側では、隣接する巻き線同士(ターン同士)が接触するほどにコイルピッチが狭くなるので、当該コイルピッチが狭くなり接触する部分で短絡が生じる。その結果、当該短絡部分は、発光しないこととなる。
【0057】
フィラメント体61では、図3に示すように、第1の発光部60A1と第2の発光部60A2間の中心軸B(図7の下部参照)と直交する方向の間隔が、ステムガラス57,59(封止部38)から遠ざかるほど狭くなる(言い換えれば、ステムガラス57,59(封止部38)に近づくほど広くなる)なるようにしていて、図7に示すように、第1の発光部60A1と第2の発光部60Aとが「ハ」状をなすようにしているが、これとは反対に、逆「ハ」字状をなすようにしても構わない。
【0058】
そのように構成した、変形例に係るフィラメント体66を図10に示す。なお、図10は、フィラメント体66の正面図を模式的に表したものである。フィラメント体66は、第1の発光部60A1と第2の「発光部60A2の開く向きが異なる以外は、フィラメント体61(図7)と基本的に同様な構成である。
したがって、図10に示すフィラメント体66では、フィラメント体61と実質的に同様な構成部分に同符号を付して、その説明については省略する。なお、フィラメント体66を支持するサポート線68や、内部リード線(不図示)は、タングステン線を適宜屈曲加工することにより実現することができる。
【0059】
以上のように実施の形態1に係るハロゲン電球14の構成によれば、累積の点灯経過時間が初期の段階での点灯中に、単フィラメントコイル60がその長手方向の中心軸に対してねじれるのを防止することができる。その結果、従来のものと異なり、隣接する単フィラメントコイル60のフィラメント線同士で接触して短絡したり、接触しなくとも互いに近接することによってその間で放電して断線したりするのを防止することできる。
【0060】
さらに、単フィラメントコイル60の一部において上記ねじれによりコイルピッチが乱れ、本来は全体として発光すべき部分(発光部である)において、発光している部分と発光していない部分とが現れ、発光している部分が過剰に温度上昇して短寿命化を招くのも防止することができる。
しかも、実施の形態1に係る単フィラメントコイル60がねじれることがないので、点灯時間が経過しても単フィラメントコイル60がバルブ26内で本来位置すべき位置に維持され、集光効率が低下するのを防止することができる。
<実施の形態2>
実施の形態1に係るハロゲン電球14では、単フィラメントコイル60一個でフィラメント体61(発光体)を構成すると共に前記フィラメントコイル60をその中央の中央部60Dで折り曲げて2個の発光部60A1,60A2を構成したが(図3)、実施の形態2に係るハロゲン電球では、単フィラメントコイルを二個用いてフィラメント体(発光体)を構成するとともに2個の発光部を構成している。
【0061】
実施の形態2に係るハロゲン電球は、マウント(特にフィラメント体)が異なる以外は、実施の形態1のハロゲン電球と基本的に同じ構成である。したがって、以下、異なる部分を中心に説明する。
図11(a)に、実施の形態2に係るハロゲン電球のマウント70を示す斜視図を、図11(b)に、マウント70における後述するサポート線78の一部の斜視図を示す。図11に示すマウント70において、実施の形態1のマウント55(図3)と実質的に同じ構成の部材には、同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0062】
マウント70を構成するフィラメント体72は、二個の単フィラメントコイル74,76からなる。単フィラメントコイル74,76の各々は、中間部の長さ等が異なる以外は、基本的に単フィラメントコイル60(図3、図5)と同様である。すなわち、単フィラメントコイル74,76の各々は、略一様なピッチでフィラメント線が巻かれた中間部が発光部74A,76Aとなり、当該発光部74A,76Aの両側に、拡開部74E1,74E2,76E1,76E2を介して継線部74B1,74B2,76B1,76B2を有する構成とされている。
【0063】
本実施の形態では、発光部74A,76Aは、扁平形状の単フィラメントコイル74,76の長軸方向の延伸する方向から見たときに、「ハ」字状に対向し、単フィラメントコイル74,76における各発光部74A,76Aに対応する領域の長軸同士が平行且つ対向状態で互いに隣接している。
発光部74A,76Aは、実施の形態1と同様に、フィラメント線の横断面において、結晶数N(Nは整数)は1個から3個の範囲内(1個および3個は含む)にある。
【0064】
継線部74B2,76B2は、それぞれ、実施の形態1と同様にして、内部リード線52,54で支持されている。
サポート線78の一端部部分は、ステムガラス57,59で挟持されており、他端部部分に、図11(b)に示すように、「コ」字状に屈曲したコイル支持部78A,78Bを有する。
【0065】
単フィラメントコイル74は、その拡開部74E1からサポート線78のコイル支持部78Aが継線部74B1へ挿入されることによって、継線部74B1がコイル支持部78Aに取り付けられ、単フィラメントコイル76も、同様に、その拡開部76E1からサポート線78のコイル支持部78Bが挿入されることによって、継線部76B1がコイル支持部78Bに取り付けられる。サポート線78によって、単フィラメントコイル74,76は、機械的に連結されると共に、電気的に直列接続されることとなる。この意味で、サポート線78は、連結線と捉えることもできる。
【0066】
上記の構成からなるマウント70において、内部リード線52,54を介して給電すると、単フィラメントコイル74,76の各々において、発光部74A,76Aの全体が(発光部74A,76Aの全長に渡って)発光する。
なお、上記例では、発光部74A,76Aは、単フィラメントコイル74,76の長軸方向の延伸する方向から見たときに、「ハ」字状に対向していたが、例えば、逆「ハ」字状に対向させても良い。つまり、発光部74A,76Aをステムガラス57,59から遠ざかるほど、その間隔が狭くなるように、あるいは間隔が広くなるように構成しても良い。
【0067】
以上のように実施の形態2に係るハロゲン電球の構成においても、実施の形態1に係るハロゲン電球と同様に、累積の点灯経過時間が初期の段階での点灯中に、単フィラメントコイル74,76がその長手方向の中心軸に対してねじれるのを防止することができる。
<実施の形態3>
実施の形態2が、フィラメント体(発光体)72を二個の単フィラメントコイル74,76で構成すると共に2個の発光部74A,76Aを構成したのに対し、実施の形態3では、フィラメント体(発光体)を三個の単フィラメントコイルで構成することとし、また3個の発光部を構成している。
【0068】
この実施の形態3に係るハロゲン電球も、実施の形態2と同様、マウント(特にフィラメント体)の構成が異なる以外は、実施の形態1のハロゲン電球と基本的に同様の構成である。したがって、以下、異なる部分を中心に説明する。
図12に、実施の形態3に係るハロゲン電球のマウント80の斜視図を、図13に、マウント80から単フィラメントコイル81,82,83を除いた状態を示す斜視図をそれぞれ示す。図12、図13に示すマウント80おいて、実施の形態1のマウント55(図3)と実質的に同じ構成の部材には、同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0069】
上記したように、実施の形態3のフィラメント体84は、3個の単フィラメントコイル81,82,83からなる。単フィラメントコイル81,82,83の各々も、実施の形態2の場合と同様、基本的に実施の形態1の単フィラメントコイル60(図3、図5)と同様である。すなわち、単フィラメントコイル81,82,83の各々は、略一様なピッチでフィラメント線が巻かれた中間部に位置する発光部81A,82A,83Aの両側に、拡開部81E1,81E2,82E1,82E2,83E1,83E2を介して継線部81B1,81B2,82B1,82B2,83B1,83B2を有する構成とされている。
【0070】
ここでは、単フィラメントコイル81,82,83は、図12に示すように、全体形状が略直線状(コイル軸が直線である)であり、扁平形状の単フィラメントコイル81,82,83の長軸方向の延伸する方向からこれらを見たときに、3つの単フィラメントコイル81,82,83が平行な状態で配され、単フィラメントコイル81,82,83における各発光部81A,82A,83Aに対応する領域の長軸同士が平行且つ対向する状態で互いに隣接している。
【0071】
発光部81A,82A,83Aは、実施の形態1や実施の形態2と同様に、フィラメント線の横断面において、結晶数N(Nは整数)は1個から3個の範囲内(1個および3個は含む)にある。
上記構成からなる単フィラメントコイル81,82,83のマウント80における取付態様について、図13も参照しながら説明する。
【0072】
単フィラメントコイル81の継線部81B2は、実施の形態1と同様の内部リード線52によって支持されている。
サポート線85の一端部部分は、ステムガラス57,59で挟持されており、他端部部分は、他端部部分に、「コ」字状に屈曲したコイル支持部85A,85Bを有する。
単フィラメントコイル81の継線部81Bは、コイル支持部85Aで支持され、単フィラメントコイル82の継線部83B1は、コイル支持部85Bで支持されている。これによって、単フィラメントコイル81と単フィラメントコイル82とが、サポート線85で、機械的に連結されるとともに、電気的に直列接続されることとなる。この意味で、サポート線85は、連結線と捉えることもできる。
【0073】
図13の矢印Fの向きに見て、「コ」字状に屈曲しているサポート線86の当該屈曲部の一部が、ステムガラス57,59で挟持されている。サポート線86の両端部分は、図13に示すように、内部リード線52の端部部分と同様の形態に屈曲されている(屈曲部86A,86B)。
単フィラメントコイル82の継線部82B2は、サポート線86の屈曲部86Aで支持されており、単フィラメントコイル83の継線部83B2は、屈曲部86Bで支持されている。これによって、単フィラメントコイル82と単フィラメントコイル83とが、サポート線86で、機械的に連結されるとともに、電気的に直列接続されることとなる。この意味で、サポート線86は、連結線と捉えることもできる。
【0074】
バルブの封止部から延出された内部リード線87は、途中部分がステムガラス57,59で挟持されており、延出端部部分に、「コ」字状に屈曲したコイル支持部87Aを有する。
単フィラメントコイル83の継線部83B1は、内部リード線87のコイル支持部87Aで支持されている。
【0075】
上記の構成からなるマウント80において、内部リード線52,87を介して給電すると、単フィラメントコイル81,82,83の各々において、発光部81A,82A,83Aの全体が発光する(全長に渡って発光する)こととなる。
なお、上記の例では、図12に示すように、フィラメント体84は、3個の単フィラメントコイル81,82,83を、各単フィラメントコイル81,82,83が対向するように配されてなるが、例えば、2個あるいは4個以上の単フィラメントコイル(発光部)を、各フィラメントコイルのコイル軸が光軸と平行であって扁平形状の各コイルの長軸同士が平行となるように配することで構成しても良い。
【0076】
さらに、3つの発光部81A,82A,83Aは、略平行に配されているが、例えば、発光部82Aをそのままにして、両側の発光部81A,83Aをステムガラス57,59から遠ざかるほど、その間隔が狭くなるように構成しても良いし、この逆に、広くなるように構成しても構わない。
以上のように実施の形態3に係るハロゲン電球の構成においても、実施の形態1及び2に係るハロゲン電球と同様に、累積の点灯経過時間が初期の段階での点灯中に、単フィラメントコイル81,82,83がその長手方向の中心軸に対してねじれるのを防止することができる。
<実施の形態4>
図14は、実施の形態4に係る反射鏡付きハロゲン電球100の概略構成を示す縦断面図である。
【0077】
反射鏡付きハロゲン電球100は、反射鏡一体型のハロゲン電球であるが、これに用いているハロゲン電球102は、主として口金が異なる以外は、実施の形態1に係るハロゲン電球14(図2)と基本的に同じ構成なので、共通部分には、同じ符号を付して、その説明については省略する。なお、実施の形態1のハロゲン電球に限らず、実施の形態2〜3のいずれかのハロゲン電球の構成を用いても構わない。
【0078】
反射鏡104は、硬質ガラスまたは石英ガラス等からなり、漏斗状をした基体106を有する。基体106において回転楕円面または回転放物面等に形成された凹面部分106Aには、反射面を構成する多層干渉膜108が形成されている。多層干渉膜108は、二酸化ケイ素(SiO)、二酸化チタン(TiO)、フッ化マグネシウム(MgF)、硫化亜鉛(ZnS)等で形成することができる。また、多層干渉膜108に代えてアルミニウムやクロム等からなる金属膜で反射面を構成することもできる。反射鏡104の開口径(ミラー径)は100mmである。なお、反射面には必要に応じてファセットを形成してもよい。
【0079】
反射鏡104は、基体106の開口部(光照射開口部)に設けられた前面ガラス110を有する。前面ガラス110は、基体106に公知の止め金具112によって係止されている。なお、止め金具112に代えて、接着剤で固着してもよい。あるいは、両方を併用しても構わない。もっとも、前面ガラスは、反射鏡付きハロゲン電球の必須の構成部材ではなく、無くても構わない。
【0080】
基体106のネック部106Bは、ハロゲン電球102の口金114の端子部116,118とは反対側に設けられた基体受け部122と嵌合された上、接着剤124で固着されている。なお、基体106の口金114への取り付けに先立って、バルブ26が、口金114に取り付けられている。言うまでも無く、口金114にバルブ26と基体106(反射鏡104)とが取り付けられた状態で(すなわち、反射鏡104内にハロゲン電球102が組み込まれた状態で)、バルブ26の中心軸と反射鏡104の光軸とが略同軸上に位置する(前記中心軸と前記光軸とが略一致する)こととなる。
【0081】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下の形態とすることもできる。
(1)単フィラメントコイルは、上記したトラック形状に限らず、他の扁平形状でも構わない。要は、互いに直交する長軸と短軸を有する扁平な横断面をした筒状に巻回されていれば構わない。また、扁平率も整数に限らず、任意の小数をとり得る。
【0082】
ここで、本発明において「短軸と長軸とを有する扁平な横断面」とは、以下に記すような形状のものを含む。当該形状について図15を参照しながら説明する。なお、図15では、短軸に符号「SX」を、長軸に符号「LX」を、また、短軸および長軸の両軸と略直交する中心軸(すなわち、コイル軸心)に符号「CX」をそれぞれ付している。
(i)同図(a)に示すように、コイル軸心CX方向から見て、上記したトラック形状のもの、つまり二つの平行な線分とそれらの各々の両端を略半円で結んだもの。
【0083】
(ii)同図(b)に示すように、コイル軸心CX方向から見て、円形を押し潰した形状のもの。
(iii)同図(c)に示すように、コイル軸心CX方向から見て、略楕円形状のもの
(iv)同図(d)に示すように、コイル軸心CX方向から見て、略長方形のもの。但し、四隅は、加工上、丸みを帯びる。
【0084】
(v)その他、コイル軸心CX方向から見て、上記(i)〜(iv)に類似した形状のもの。例えば上記(i)において、同図(e)に示すように、二つの平行な線分が内方向に湾曲していても上記(i)に類似した形状として含む。また、ここでは、加工ばらつきによる上記(i)〜(iv)の変形形状も含む。
(2)上記実施の形態では、管球の一例としてハロゲン電球を示したが、本発明は、ハロゲン電球以外の管球にも適用可能である。要は、フィラメントコイルに電流を流して白熱発光させる光源であれば構わないのである。
(3)上記実施の形態では、発光部に対応する領域の単フィラメントコイルにおけるコイル軸が略直線状をしていたが、例えば、曲線状であっても良い。さらに、コイル軸が直線状の部分と曲線状の部分との両方を含むような形状であっても良い。
【0085】
なお、「略直線状」とは、厳密な意味で言う「直線状」はもちろんのこと、設計的には直線状であるが、プロセス上、不可避的に曲がってしまうものも含む。これに対して「曲線状」とは、弓形状、半円状、半楕円状、半長円状など設計上、積極的に湾曲させているものを意味する。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明に係るハロゲン電球は、例えば、スポット照明用の光源として好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】実施の形態1に係るハロゲン電球を有する照明装置の概略構成を示す一部切欠き図である。
【図2】上記ハロゲン電球を示す図である。
【図3】単フィラメントコイルを有するマウントを示す斜視図である。
【図4】上記単フィラメントコイルの製作方法を説明するための図である。
【図5】屈曲前の単フィラメントコイルの平面図(上部)と正面図(下部)を表す模式図である。
【図6】図3に示す矢印Aの向きに継線部を見た図であり、継線部を簡易断面で表し、その内部おける内部リード線部分の形態を分かり易くした図である。
【図7】フィラメント体を平面図(上部)と正面図(下部)で表した模式図である。
【図8】発光部のフィラメント線の横断面図である。
【図9】フィラメント線の横断面における結晶数とねじれ発生率との関係を示す図である。
【図10】変形例に係るフィラメント体を正面図で表した模式図である。
【図11】実施の形態2に係るハロゲン電球のマウントを示す斜視図である。
【図12】実施の形態3に係るハロゲン電球のマウントを示す斜視図である。
【図13】実施の形態3に係るハロゲン電球のマウントにおいて、3個の単フィラメントコイルを取り除いた上体を示す斜視図である。
【図14】実施の形態4に係る反射鏡付きハロゲン電球の概略構成を示す図である。
【図15】扁平な筒(状)の横断面の形状を例示した図である。
【図16】点灯前のフィラメントコイルがねじれていない正常な状態を示す写真である。
【図17】数分点灯後のフィラメントコイルがねじれた状態を示す写真である。
【符号の説明】
【0088】
14 ハロゲン電球
26 バルブ
38 封止部
52,54,98 内部リード線
56,68 サポート線
58 支持コイル
60,74,76,81,82,83,94 単フィラメントコイル
61,66,70,84,92 フィラメント体
64 フィラメント線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブと当該バルブ内に配された発光体とを備えるハロゲン電球において、
前記発光体は、1又は複数の一重巻きのフィラメントコイルから構成された2以上の発光部を有し、
前記フィラメントコイルは、フィラメント線を略扁平形状に巻回して構成され、
少なくとも2つの前記発光部は、それぞれのフィラメントコイルの長軸同士が平行に対向する状態で隣接し、
前記少なくとも2つの発光部におけるフィラメント線の横断面の結晶数N(Nは整数)が1個から3個の範囲内にある
ことを特徴とするハロゲン電球。
【請求項2】
凹面状の反射鏡と、この反射鏡内に配置された請求項1記載のハロゲン電球とを備え、前記ハロゲン電球のバルブの長手方向の中心軸と前記反射鏡の光軸とが略同一軸上に位置していることを特徴とする反射鏡付きハロゲン電球。
【請求項3】
請求項1記載のハロゲン電球が照明器具に取り付けられている
ことを特徴とする照明装置。
【請求項4】
内部に反射鏡部を有する照明器具と、前記反射鏡部内に組み込まれた請求項1記載のハロゲン電球とを備えている
ことを特徴とする照明装置。
【請求項5】
請求項2記載の反射鏡付きハロゲン電球が照明器具に取り付けられている
ことを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−4288(P2009−4288A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165853(P2007−165853)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)