説明

ハンガーパイプ受けとその施工方法

【課題】本発明の目的は壁面直付けにも棚柱を利用した取り付けにも共有することができるハンガーパイプ受けを提供することにある。
【解決手段】一定間隔で取付孔(5)が形成されている長尺の棚柱(4)を収納する棚柱収納溝(6)が背面に凹設され、前記棚柱収納溝(6)に合わせ且つ棚柱(4)の取付孔(5)に一致して穿設された固定孔(7)を有する取付プレート部(2)と、該取付プレート部(2)の前面に、上方及び前方に開口してハンガーパイプ(8)の端部(8a)が嵌め込まれる端部収納部(3)が形成されている端部収納部(3)とで構成されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は収納製品の側壁間や建物の対向する壁間に架設される新規なハンガーパイプ受けとその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、収納製品の側壁間や建物の対向する壁間には一対のハンガーパイプ受けが対向して設けられ、このハンガーパイプ受けにハンガーパイプが架設されて多数のハンガーを引っ掛け、そこに洋服を吊り下げるようにしている。ハンガーパイプ受けの取り付け方法としては特許文献1に示すように、収納製品や壁の表面に直接ビス止めしたり、特許文献2に示すように収納製品や壁の対向する表面のそれぞれに棚柱を複数本平行にして縦方向に取り付け、この棚柱間にハンガーパイプ受けが設けられた横バーを収納製品の内側面や壁に平行に架設し、この対向する横バーの一対となるハンガーパイプ受けにハンガーパイプを架け渡し、前述のように多数のハンガーを引っ掛け洋服を吊り下げるような例も示されている。この方法では横バーを必要とし、外観が悪いだけでなくコストアップの原因となり、又、施工がより面倒にもなる。その他、片側のみに棚柱を設けた場合にはハンガーパイプの架設に対応が出来ない。
【0003】
そしていずれの場合も壁面直付けか棚柱のいずれかにのみしか適用することができず、両方の用途に共用することができない。しかもハンガーの引っ掛け部分の開口は比較的狭くしかも洋服を吊るした状態では持ち重りがするため、ハンガーパイプから脱着するときにハンガーパイプにハンガーが引っ掛かることがよくある。その場合、ハンガーパイプ受けにハンガーパイプの脱落防止機構が設けられてない場合には、時としてハンガーの脱着時にハンガーパイプがハンガーパイプ受けから脱落することもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−259408号公報
【特許文献2】実用新案登録第3156342号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は係る従来例の問題点に鑑みてなされたもので、第1の目的は壁面直付けにも棚柱を利用した取り付けにも共有することができるハンガーパイプ受けを提供することにあり、第2の目的はハンガーが引っ掛かった時でもハンガーパイプがハンガーパイプ受けから容易に脱落しないハンガーパイプ受けを提供することにあり、第3の目的は前記ハンガーパイプ受けを使用した施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載した発明は、「一定間隔で取付孔(5)が形成されている長尺の棚柱(4)を収納する棚柱収納溝(6)が背面に凹設され、前記棚柱収納溝(6)に合わせ且つ棚柱(4)の取付孔(5)に一致して穿設された固定孔(7)を有する取付プレート部(2)と、該取付プレート部(2)の前面に、上方及び前方に開口してハンガーパイプ(8)の端部(8a)が嵌め込まれる端部収納部(3)が形成されている端部収納部(3)とで構成されたことを特徴とするハンガーパイプ受け(1)」である。
【0007】
請求項2に記載した発明は、請求項1のハンガーパイプ受け(1)に「端部収納部(3)の上端開口縁にハンガーパイプ(8)の端部(8a)の上端側部(8e)を係止する係止用突部(3b)が凸設されている」ことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載した方法発明は、「一定間隔で取付孔(5)が形成されている長尺の棚柱(4)を対向する壁面(10)に対向させて固定し、請求項1または2に記載のハンガーパイプ受け(1)の背面の棚柱収納溝(6)を棚柱(4)に嵌め込み、棚柱(4)の取付孔(5)を介してハンガーパイプ受け(1)の固定孔(7)をビス止めする」ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載した発明では、ハンガーパイプ受け(1)の取付プレート部(2)に固定孔(7)が形成されているので、この固定孔(7)を利用して壁面(10)のいずれの部分にもハンガーパイプ受け(1)を直に取り付けることができ、しかもこの取付プレート部(2)の背面に棚柱(4)の棚柱収納溝(6)が凹設され、取付プレート部(2)の固定孔(7)が前記棚柱(4)の取付孔(5)に一致し且つ棚柱収納溝(6)に合わせて穿設されているので、取り付け時に固定孔(7)と取付孔(5)を一致させてビス止め或いは専用の固定金具(11)を用いるなどして棚柱(4)を利用して壁面(10)に取り付けることもできる。即ち、本発明のハンガーパイプ受け(1)は任意の位置における「壁面(10)」への直接ビス止めや、請求項3に示すような「棚柱(4)」を利用した壁面(10)への取り付けに兼用することができる。
【0010】
そして、請求項2に示すように、端部収納部(3)の上端開口縁にハンガーパイプ(8)の端部(8a)の上端側部(8e)を係止する係止用突部(3b)が凸設されているので、一旦、ハンガーパイプ(8)の端部(8a)を端部収納部(3)に嵌め込むと、その上端開口縁の係止用突部(3b)が前記端部(8a)の上端側部(8e)を係止することになって仮令ハンガーの脱着時にハンガーがハンガーパイプ(8)にぶつかったとしてもハンガーパイプ(8)がハンガーパイプ受け(1)の端部収納部(3)から脱落するようなことはない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るハンガーパイプ受けの施工状態を示す一部省略正面図である。
【図2】図1に示すハンガーパイプ受けの部分斜視図である。
【図3】図1のX1−X1断面矢視図である。
【図4】本発明に係るハンガーパイプ受けの斜視図である。
【図5】図3のY1−Y1断面矢視図である。
【図6】本発明に係るハンガーパイプ受けの正面図である。
【図7】図6の側面図である。
【図8】図6の底面図である。
【図9】図6の背面図である。
【図10】本発明に係るハンガーパイプ受けの他の施工状態を示す一部省略正面図である。
【図11】図10に示すハンガーパイプ受けの部分斜視図である。
【図12】図10のX2−X2断面矢視図である。
【図13】図12のY2−Y2断面矢視図である。
【図14】図11の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明の第1実施例を図1〜9に従って説明する。棚柱(4)はアルミ押し出し成形品或いは表面鍍金のスチールやステンレス帯板の曲げ加工品で、取付部(4a)に両端からリブ(4b)が同じ方向に凸設された横断面U字状の長尺物で、その取付部(4a)の上下および中間の適宜箇所に壁面(10)への取り付け用の壁面装着用通孔(4c)が形成され、壁面装着用通孔(4c)間に一定間隔で取付孔(5)が形成されている。取付孔(5)は45°回転した正方形部分(5a)の上下コーナー部に矩形切欠(5b)が形成された形状、或いは後述するハンガーパイプ受け(1)の固定孔(7)と同じ長円に形成されている(図14参照)。
【0013】
ハンガーパイプ(8)はアルミニウムあるいは樹脂の中空押出成形品で、その外形は横断面小判形で外側面に全長にわたって長手方向に波状の凹凸(8c)が形成されており、さらに上下の外円弧面(8b)には全長にわたって長手方向にギザギザの凹凸(8d)が形成されている。
【0014】
ハンガーパイプ受け(1)は例えばポリアミド、ポリカーボネート、PETあるいはABSのような強度があり、成形(一般的には射出成形)が可能な樹脂製で、小判型の取付プレート部(2)と立体でU字形状の端部収納部(3)とで一体構成されている。取付プレート部(2)の背面は図9に示すように、平板部分の側縁からリブ(2a)が凸設されていて左右のリブ(2a)の突起部分(2b)間が棚柱収納溝(6)となっており、リブ(2a)の内側の棚柱収納溝(6)を構成する3箇所の突起部分(2b)が棚柱(4)のリブ(4b)の外側面に安定的に摺接する。棚柱収納溝(6)の深さは棚柱(4)のリブ(4b)の高さより若干浅く形成されている。そして、取付プレート部(2)には前記棚柱収納溝(6)に合わせ、棚柱(4)の取付孔(5)に一致して固定孔(7)が穿設されている。第1実施例の固定孔(7)はビス止めされるため、皿ビス(9)の頭に合うように、テーパー状に形成されている。
【0015】
端部収納部(3)はハンガーパイプ(8)の端部(8a)に合わせて上方及び前方に開口した立体でU字状に形成されており、その上端開口縁にハンガーパイプ(8)の端部(8a)の上端側部(8e)のギザギザの凹凸(8d)に係止する係止用突部(3b)が全長にわたって凸設されている。即ち、両係止用突部(3b)の間隔はハンガーパイプ(8)の狭い方の横幅より若干狭く形成され、ハンガーパイプ(8)を両係止用突部(3b)の間に手での押圧により接触しつつ押し込むことができる程度の寸法に形成されている。端部収納部(3)の内周面の中段部分にはさらに係止リブ(3c)が水平に「または図示しないが係止突起が」凸設されており、ハンガーパイプ(8)を端部収納部(3)に嵌め込んだ時に係止リブ(3c)がハンガーパイプ(8)の外側面の波状の凹凸(8c)に嵌り込んで前述の上端側部(8e)とでハンガーパイプ(8)の保持力を強くしている。
【0016】
しかして、棚柱(4)を利用する場合、棚柱(4)を建物の対向壁面(10)或いは収納棚の対向壁面(10)に対応させて配置し、その壁面装着用通孔(4c)を利用してビス(12)にてビス止めする。次に、ハンガーパイプ受け(1)の背面の棚柱収納溝(6)を棚柱(4)に嵌め込み、左右の両ハンガーパイプ受け(1)の高さを合わせた後、棚柱(4)の取付孔(5)を介してハンガーパイプ受け(1)の固定孔(7)をそれぞれ皿ビス(9)にてビス止めする。限定されるものではないが、本実施例では上下2箇所のビス止めが行われる。勿論、後述する固定金具(11)の使用も可能である。
【0017】
然る後、ハンガーパイプ(8)の端部(8a)をハンガーパイプ受け(1)の両係止用突部(3b)の間から端部収納部(3)内に押し込む。この時、両係止用突部(3b)あるいはハンガーパイプ(8)の端部(8a)またはその両方が若干撓むことになる。このようにして対向壁面(10)間にハンガーパイプ(8)を架設する。
【0018】
棚柱(4)を使用しない場合には、対向壁面(10)に対応させてハンガーパイプ受け(1)を配置し、その固定孔(7)をそれぞれ直接対向壁面(10)にビス止めする。そして同様に対向壁面(10)間にハンガーパイプ(8)を架設する。
【0019】
架設されたハンガーパイプ(8)の上側の外円弧面(8b)のギザギザの凹凸(8d)に係止用突部(3b)が両側から係止し、更に端部収納部(3)の内周面の中段部分の係止リブ(3c)がハンガーパイプ(8)の外側面の波状の凹凸(8c)に嵌り込む。これによりハンガーの脱着時において、ハンガーがハンガーパイプ(8)に強く当たったとしてもハンガーパイプ(8)がハンガーパイプ受け(1)から脱落するようなことがない。なお、端部収納部(3)の内周面の中段部分の係止リブ(3c)は図示しているが必須のものではなく省略することも可能である。
【0020】
次に、図10〜14に従って第2実施例を説明する。第1実施例と重複する部分は第1実施例の説明を援用する。第2実施例におけるハンガーパイプ受け(1)の固定孔(7)は上下に伸びた長円に形成されている。そしてこのハンガーパイプ受け(1)は棚柱(4)に取り付けるための専用の固定金具(11)にて取り付けられるようになっている。勿論、前述のビス固定も可能である。
【0021】
固定金具(11)は正方形の固定頭部(11a)、固定頭部(11a)の幅より細いがその長さは幅より長くて長円形の取付孔(5)や固定孔(7)、或いは変形の取付孔(5)の矩形切欠(5b)間を通過できる寸法の棒状の固定係止部(11b)及び両者をつなぐ円柱状の固定脚部(11c)とで構成されており、固定脚部(11c)の直径は固定孔(7)及び取付孔(5)より細く、それゆえ挿入して回転できる太さとなっている。
【0022】
このハンガーパイプ受け(1)の棚柱(4)への取り付けは、第1実施例に示したように配置した後、前後に重ねあわされた固定孔(7)と取付孔(5)に固定金具(11)の固定脚部(11c)を取付孔(5)の背面側に至る迄挿入し、その状態で90°回転させる。すると、固定脚部(11c)は取付孔(5)の正方形部分(5a)に(或いは取付孔(5)が長円の場合には細幅を跨ぐように)係止し、棚柱(4)の取付部(4a)とハンガーパイプ受け(1)の取付プレート部(2)とを固定金具(11)の固定頭部(11a)と固定係止部(11b)とで挟み付けて固定するようになっている。従って、固定脚部(11c)の長さは後に重ねあわされた固定孔(7)と取付孔(5)の厚みに略等しい。それ以外の点は第1実施例と同じである。
【0023】
以上により、本発明のハンガーパイプ受け(1)は壁面(10)への直接的な取り付けと、棚柱(4)への取り付けの両方に対応する事ができる。
【符号の説明】
【0024】
(1) ハンガーパイプ受け
(2) 取付けプレート部
(2a) リブ
(2b) 突起部分
(3) 端部収納部
(3a) 上端開口
(3b) 係止用突部
(4) 棚柱
(4a) 取付部
(4b) リブ
(4c) 壁面装着用通孔
(5) 取付孔
(5a) 正方形部分
(5b) 矩形切欠
(6) 棚柱収納溝
(7) 固定孔
(8) ハンガーパイプ
(8a) ハンガーパイプの端部
(8b) 上端側部
(8c) 係止リブ
(9) 皿ビス
(10) 対向壁面
・ 固定金具
(11a) 固定頭部
(11b) 固定係止部
(11c) 固定脚部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定間隔で取付孔が形成されている長尺の棚柱を収納する棚柱収納溝が背面に凹設され、前記棚柱収納溝に合わせ且つ棚柱の取付孔に一致して穿設された固定孔を有する取付プレート部と、該取付プレート部の前面に、上方及び前方に開口してハンガーパイプの端部が嵌め込まれる端部収納部が形成されている端部収納部とで構成されたことを特徴とするハンガーパイプ受け。
【請求項2】
端部収納部の上端開口縁にハンガーパイプの端部の上端側部を係止する係止用突部が凸設されていることを特徴とする請求項1に記載のハンガーパイプ受け。
【請求項3】
一定間隔で取付孔が形成されている長尺の棚柱を対向する壁面に対向させて固定し、請求項1または2に記載のハンガーパイプ受けの背面の棚柱収納溝を棚柱に嵌め込み、棚柱の取付孔を介してハンガーパイプ受けの固定孔をビス止めすることを特徴とするハンガーパイプ受けの施工方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−90799(P2012−90799A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241048(P2010−241048)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 大建工業株式会社発行、「2011 Rシリーズ ドア・収納・造作部材・階段 価格改定版」、2010年10月発行 大建工業株式会社発行、「2011 床・壁・ダイライト・住機製品 価格改定版」、2010年10月発行 大建工業株式会社発行、「2011 設計・施工資料 床・壁・ダイライト・住機製品・Rシリーズ」、2010年10月発行
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)