説明

ハンガー装置

【課題】ズボン等の被吊下物の挿入動作および被吊下物の引下げ動作という単純な動作により、被吊下物をハンガーに着脱可能とするハンガー装置を提供する。
【解決手段】外向きにハ字形に弾性変形可能な逆U字形のハンガー本体部100と、ハンガー本体部の相対する各ハンガー片110の下端内面に回動軸121を介して設けられた一対の回動羽根120と、各回動羽根120の先端に設けられた一対の捕捉ローラー140と、被吊下物Wの挿入動作により跳ね上げられた一対の回動羽根120を、被吊下物の自重による下降動作の途中で、前記一対の捕捉ローラー140が被吊下物の上端を両側から捕捉する捕捉位置に保持する下部ストッパー130を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服等の被吊下物、特にスラックス等のズボンを楽に着脱可能としたハンガー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スラックス等の折り目正しいズボンをハンガーに掛けるときは、皺が寄らないように気を使いながらズボンをハンガーに半折状態に掛けるようにしている。しかしながら、ジャケット等の上着と異なり、ズボンをハンガーに掛ける作業は煩わしいものである。皺が寄らないようにズボンをハンガーに掛けた積りでも、後で取り外すとズボンに皺が寄っていたり、半折状態に掛けたズボンがその重みでハンガーから落下することもあり、その結果、上に述べたようにズボンをハンガーに掛ける作業は煩わしい。ズボンに皺が寄ると、ズボンの折り目に再びアイロンを当てなければならず、時間と労力のロスにつながる。
【0003】
ズボンをハンガーに確実に掛けるようにした提案が従来より種々なされている。例えば、特開2000−5030号公報(特許文献1)には、左右一対のクリップでズボンやスカートを吊下げられるようにしたハンガーが提案され、また、特開2008−194155号公報(特許文献2)には、外側からノブを押し込み操作することでズボン類の裾をクランプ爪でクランプできるようにしたハンガーが提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−5030号公報
【特許文献2】特開2008−194155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記提案のハンガーは、ズボンを吊下げる際や吊下げたズボンを外す際のいずれの場合であっても、クリップやノブを操作しなければならず、ズボンを吊下げたり外したりする場合の操作が非常に面倒である。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、ズボン等の被吊下物の挿入動作および被吊下物の引下げ動作という単純な動作により、被吊下物をハンガーに楽に着脱可能とするハンガー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るハンガー装置は、
外向きにハ字形に弾性変形可能な逆U字形のハンガー本体部と、
当該ハンガー本体部の相対する各ハンガー片の下端内面に軸受部を介して跳ね上げ可能に支持した一対の回動羽根と、
各回動羽根の先端に設けた一対の捕捉ローラーと、
被吊下物の挿入動作により跳ね上げられた一対の回動羽根を、被吊下物の自重による下降動作の途中で、前記一対の捕捉ローラーが被吊下物の上端を両側から捕捉する捕捉位置に保持する下部ストッパーを具備する、
ことを第1の特徴とする。
【0008】
本発明に係るハンガー装置によると、逆U字形のハンガー本体部に対し、被吊下物、例えばズボンの上端、例えばズボンの裾を両手で揃えて、ハンガー本体部のハンガー片どうしの隙間から上に挿入し、ズボンの上端をハンガー本体部内に位置させる。このとき、ハンガー片の下端内側の一対の回動羽根がズボンの上端の挿入動作に伴い下から上へ跳ね上げられるので、ズボンの上端をスムーズにハンガー本体部内に挿入することができる。
【0009】
そして、手を離しズボンを自重により下降させると、跳ね上げられた一対の回動羽根が下降するズボンに合わせて下向きに回動し、ズボンの下降動作の途中で、一対の回動羽根が水平姿勢になる手前の斜め上向きの状態で、先端の捕捉ローラーがズボンの上端を両側から挟み込むように捕捉する。捕捉するメカニズムを詳述すると、回動羽根は下部ストッパーによりズボンの捕捉位置に停止し、ズボンの自重により、斜め上向き姿勢の回動羽根にはハンガー本体部のハンガー片を開く方向に付勢力が作用し、その反作用で、回動羽根の先端、すなわち、両側の捕捉ローラーには、ズボンを押し上げる垂直方向分力と、ズボンを両側から押し付ける水平方向分力が働き、これらの分力の働きにより、ズボンが両側の捕捉ローラーにより捕捉され、ズボンがハンガー本体部内に確実に吊下げられる。
【0010】
次に、回動羽根および捕捉ローラーによる捕捉状態に抗して、ハンガー本体部内に吊下げられたズボンを両手でズボンの自重を超える加重により強制的に引下げ動作すると、回動羽根に下向きの力が作用するとともに、下部ストッパーを介して各ハンガー片をさらに外向きに弾性変形させて捕捉ローラーがズボンの上端を捕捉する力が弱まり、また、ズボンの自重を超える加重により各捕捉ローラーを回転させて、ズボンの上端を下方にスムーズに抜き出しできる。
【0011】
このように、ズボンの挿入動作という単純動作だけでズボンをハンガー本体部内に装着して吊下げることができ、また、ズボンの強制引下げ動作という単純動作だけでズボンをハンガー本体部内からスムーズに抜き出しすることができる。したがって、ハンガーに手指を触れることなく、ズボンを楽々とハンガーに掛けあるいはハンガーから外すことができる。
【0012】
各捕捉ローラーと回動羽根との間に、被吊下物の自重による加重下では各捕捉ローラーの回転を不能とし、被吊下物の自重を越える加重による被吊下物の強制引き下げ動作時に各捕捉ローラーの回転を許容する回転制動力を、各捕捉ローラーに付与する回転制動力付与手段をさらに具備する、ことを第2の特徴とする。
【0013】
各捕捉ローラーに所要の回転制動力を付与することにより、被吊下物の自重による加重下で各捕捉ローラーが回転して跳ね上がり、被吊下物に対する捕捉不良が生じることを確実に防ぐことができる。
【0014】
本発明に係るハンガー装置は、
外向きにハ字形に弾性変形可能な逆U字形のハンガー本体部と、
当該ハンガー本体部の相対する各ハンガー片の下端内面に軸受部を介して跳ね上げ可能に支持した一対の回動羽根と、
前記一対の回動羽根の先端に設けた一対の捕捉部と、
被吊下物の挿入動作により跳ね上げられた一対の回動羽根を、被吊下物の自重による下降動作の途中で、前記一対の捕捉部が被吊下物の上端を両側から捕捉する捕捉位置に保持する下部ストッパーを具備する、
ことを第3の特徴とする。
【0015】
本発明に係るハンガー装置によると、上に述べたように、ハンガー本体部に対し、被吊下物、例えばズボンの上端を両手で揃えて、ハンガー片どうしの隙間から上に挿入し、ズボンの上端をハンガー本体部内に位置させ、そして、後は手を離しズボンの自重によりズボンを下降させると、一対の回動羽根が下降するズボンに合わせて下向きに回動し、先端の捕捉部が、ズボンの上端を両側から挟み込んで捕捉する。
【0016】
また、ハンガー本体部内に吊下げられたズボンを両手で強制的に引下げ動作すると、回動羽根に下向きの力が作用するとともに、下部ストッパーを介して各ハンガー片が外向きに弾性変形して回動羽根および捕捉部による捕捉状態が緩和され、これによりズボンの上端を下に抜き出しすることができる。
【0017】
このように、ズボンの挿入動作という単純動作だけでズボンをハンガー本体部内に装着して吊下げることができ、また、ズボンの強制引下げ動作という単純動作だけでズボンをハンガー本体部内からスムーズに抜き出しすることができる。したがって、ハンガーに手指を触れることなく、ズボンを楽々とハンガーに掛けあるいはハンガーから外すことができる。
【0018】
本発明に係るハンガー装置は、
外向きにハ字形に弾性変形可能な逆U字形のハンガー本体部と、
当該ハンガー本体部の相対する各ハンガー片の下端内面に軸受部を介して跳ね上げ可能に支持した一対の回動羽根と、
前記一対の回動羽根の先端に設けた一対の捕捉部と、
被吊下物の挿入動作により跳ね上げられた一対の回動羽根を、被吊下物の自重による下降動作の途中で、前記一対の捕捉部が被吊下物の上端を両側から捕捉する捕捉位置に保持する下部ストッパーと、
被吊下物の捕捉姿勢から、いずれか一方の回動羽根を跳ね上げ操作し、被吊下物の捕捉姿勢を解除する解除操作手段を具備する、
ことを第4の特徴とする。
【0019】
本発明に係るハンガー装置によると、被吊下物、例えばズボンを手で把持しながら、解除操作手段の操作により、ハンガー本体部内に吊下げられたズボンの捕捉状態をワンタッチで解除し、ズボンを自重によりあるいは手で引き下げてハンガー本体部から容易に取り外すことができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明に係るハンガー装置によると、被吊下物、例えばズボンの挿入動作という単純動作だけで被吊下物をハンガー本体部内に装着して吊下げることができ、また、例えばズボンの強制引下げ動作という単純動作だけで被吊下物をハンガー本体部内からスムーズに抜き出しすることができる。これによって、ズボン等の被吊下物を楽々とハンガーに掛けあるいはハンガーから外すことができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら説明する。図1ないし図4は本発明に係るハンガー装置の第1実施形態を示すもので、これらの図において符号S1はズボン吊りハンガー装置を示している。
【0022】
図1および図2において、ズボン吊りハンガー装置S1は、プラスチック製、金属製あるいは木製等からなる逆U字形のハンガー本体部100を備えている。
【0023】
逆U字形のハンガー本体部100は、外向きにハ字形に弾性変形可能な一対のハンガー片110,110を備えている。各ハンガー片110,110の自由端110aとハンガー本体部100の基端部100aの間には、開口部110bが設けられている。ハンガー片110,110の各開口部110bの自由端110a側には、相対する一対の回動羽根120,120がそれぞれ回動軸121を介して軸支されている。
【0024】
各回動羽根120は、それぞれ左右一対の回動片122,122を有し、ズボン等の被吊下物の下から上への挿入動作に伴い、図2の点線で示すように、下から上に跳ね上げられる方向に回動し、挿入後の被吊下物の自重による下降動作に伴い、図2の実線で示すように、上から下へ互いに接近する方向に回動して被吊下物の上端を両側から挟み込む形で捕捉するように作動する。
【0025】
各ハンガー片110,110の下端110aには、その内側に各回動羽根120の回動片122,122を被吊下物の上端の捕捉角度に保持する下部ストッパー130,130が設けられている。下部ストッパー130は、より具体的には、各回動羽根120の回動片122,122を、水平状態から互いに若干斜め上向きとなる角度(ハンガー片110の内面と回動羽根120の上面のなす角度が90度未満で、図示例の場合、45度〜75度の範囲)の捕捉姿勢に保持する。なお、各ハンガー片110,110の下端110aには、各回動羽根120の回動片122,122の跳ね上げ角度(θ)を規制する上部ストッパー131,131が設けられている。
【0026】
各回動羽根120の回動片122の軸受部123,123間には、回転軸124を介して一対の互いに平行かつ水平姿勢の捕捉ローラー140,140が回転可能に軸支されている。各捕捉ローラー140の表面にはスポンジ状の弾性部材141が巻回されている。この弾性部材141は一対の捕捉ローラー140,140間に挟まれる被吊下物との間で摩擦力を発生させる。
【0027】
各捕捉ローラー140,140とそれぞれの両側の軸受部123,123との間には、被吊下物の自重による下降動作時に各捕捉ローラー140,140の回転を不能とする制動力を各捕捉ローラー140,140に付与する回転制動力付与部材(回転制動力付与手段)150が介在されている。回転制動力付与部材150は、例えば各捕捉ローラー140,140とそれぞれの両側の軸受部123,123との間にスポンジ状の摩擦部材を介在させることで構成することができ、これにより、一対の回動羽根120,120の挟み込み動作による被吊下物の上端の捕捉を可能とする。
【0028】
回転制動力付与部材150は、被吊下物の自重(例えば1kg〜2kg程度)では各捕捉ローラー140,140の回転を不能とする回転制動力を各捕捉ローラー140に付与するが、同回転制動力の程度は、ハンガー本体部100内の吊下げ状態から両手で、被吊下物の自重を超える加重により被吊下物の上端を強制引き下げ動作する時(例えば3kg程度を超える力で引き下げる)に、各回動羽根120に下向きの力を作用させるとともに、下部ストッパー130を介してハンガー本体部100の各ハンガー片110を外向きに弾性変形させて回動羽根120,120の捕捉状態を緩和し、各捕捉ローラー140,140の回転を許容する値に設定される。
【0029】
同回転制動力は、例えば各捕捉ローラー140,140の両側面と軸受部123,123との間に介在されるスポンジ状の摩擦部材(回転制動力付与部材)の摩擦力を変更する(例えば材質や部材表面の粗さを変更する)ことにより、適宜調整可能である。
【0030】
なお、符号160は、ハンガー本体部100の上面中央に設けられた吊下げ用フック部を示す。
【0031】
次に上記構成のズボン吊りハンガー装置S1の使用方法および作用について、図3(A)ないし(D)、図4を参照して説明する。被吊下物としてズボンWを用いる。
【0032】
まず、ズボン吊りハンガー装置S1を洋服掛け等のパイプに吊下げ用フック160を介して吊下げる。吊下げた状態では、図3(A)に示すように、回動羽根120,120は下部ストッパー130,130により、跳ね上げられる前の姿勢にある。
【0033】
次に、図3(B)に示すように、逆U字形のハンガー本体部100に対し、ズボンWの上端、例えば裾を両手で揃えて、ハンガー本体部100の相対するハンガー片110どうしの隙間から上に挿入し、ズボンWの裾をハンガー本体部100内に位置させる。このとき、ハンガー片110,110の下端110a内側の回動羽根120,120がズボンWの裾の下から上への挿入に伴い下から上向きに跳ね上げられるから、スムーズにズボンWの裾をハンガー本体部100内に挿入できる。
【0034】
次に、両手を離しズボンWの自重によりズボンWを下降させると、図3(C)に示すように、前記一対の回動羽根120,120が下降するズボンWに合わせて上から下へ回動して先端の捕捉ローラー140,140がズボンWの裾を両側から挟み込んで捕捉し、同捕捉姿勢で停止する。
【0035】
図4を参照して、回動羽根120および捕捉ローラー140により、ズボンWの上端が捕捉されるメカニズムを詳述すると、回動羽根120が下部ストッパー130(図3参照)によりズボンWの捕捉位置に停止すると、ズボンWの自重Gにより、斜め上向き姿勢の回動羽根120,120にはハンガー本体部100のハンガー片110,110を外側へ開く方向に付勢力が作用し、その反作用で、ハンガー片110,110から回動羽根120,120の軸方向に力Fが作用する。かかる力Fは、両側の捕捉ローラー140,140におけるズボンWの両側の接触位置において、ズボンWに対し、ズボンWを押し上げる垂直方向分力UFと、ズボンを両側から押し付ける水平方向分力VFが働く。そして、これら両分力UF,VFの作用により、ズボンWが両側の捕捉ローラー140,140により確実に捕捉され、ズボンがハンガー本体部内に確実に吊下げられる。
【0036】
また、回転制動力付与部材150の制動力により、ズボンWの自重による下降動作時に捕捉ローラー140,140による捕捉がより確実になされる。
【0037】
ハンガー本体部100からズボンWを外す場合は、回転制動力付与部材150の制動力に抗して、図3(D)に示すように、ハンガー本体部100からズボンWを両手で強制的に引下げ動作すればよい。かかる引下げ動作により、下部ストッパー130により捕捉姿勢に保持された一対の回動羽根120,120に下向きの力が作用するとともに、下部ストッパー130,130を介して各ハンガー片110,110が、図3(D)の点線から実線に示すように、外向きに弾性変形させられながら回動羽根120,120どうしの捕捉状態が緩和されるとともに、ズボンWの引下げ動作に伴い各捕捉ローラー140,140が回転して、捕捉ローラー140,140に挟まれたズボンWの上端が下方にスムーズに抜き出しされる。
【0038】
このように、ハンガー本体部100に対し、ズボンWの上端を両手で挿入動作する単純動作によりズボンWの上端をハンガー本体部100内に吊下げることができる。また、ズボンWの上端を両手で強制的に引下げ動作する単純動作により、ハンガー片110,110を外向きに弾性変形させながら、ズボンWの上端を、回転する捕捉ローラー140,140の間を通過させて、下方にスムーズに抜き出しすることができる。したがって、ハンガーに手指を触れることなく、ズボンを楽々とハンガーに掛けあるいはハンガーから外すことができる。
【0039】
図5は本発明に係るハンガー装置の第2実施形態を示すもので、これらの図において符号S2はズボン吊りハンガー装置を示している。なお、前記実施形態で説明したズボン吊りハンガー装置S1と同一部材には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0040】
ズボン吊りハンガー装置S2は、図5(A)に示すように、一対の回動羽根120’,120’の先端に比較的厚いスポンジ状の弾性部材(捕捉片)170がそれぞれ取付けられている。ここで、各回動羽根120’は、図1の回動羽根120と異なり、一枚の板状部材からなる。また、一対の回動片とその先端部間を接続するコ字状の枠状部材からなってもよい。回動弾性部材170は、一対の回動羽根120’,120’によるズボンWの上端の捕捉姿勢において、ズボンWの両側から摩擦力を付与し、これによりズボンWを確実に捕捉する役目をする。
【0041】
本実施形態のズボン吊りハンガー装置S2は、第1実施形態で述べたように、逆U字形のハンガー本体部100に対し、ズボンWの上端を両手で揃えて、ハンガー片110,110どうしの隙間から上に挿入動作し、ズボンWの上端をハンガー本体部100内に位置させる。そして、手を離しズボンWの自重によりズボンWを下降させると、各回動羽根120’が下降するズボンWに合わせて下向きに回動し、先端の弾性部材170,170がズボンWの上端を両側から挟み込んで捕捉する。
【0042】
そして、図5(B)に示すように、ハンガー本体部100内に吊下げられたズボンWを両手で強制的に引下げ動作すると、下部ストッパー130,130により捕捉姿勢に保持された一対の回動羽根120’,120’に下向きの力が作用するとともに、各ハンガー片110が矢印のように外向きに弾性変形して一対の回動羽根120’,120’が左右に動き、捕捉状態が緩和される。これによりズボンWの上端を下に抜き出しできる。したがって、ハンガーに手指を触れることなく、ズボンを楽々とハンガーに掛けあるいはハンガーから外すことができる。
【0043】
なお、図5において、各回動羽根120’の上端上面に、相対する回転ローラーを設けてよい。ズボンWの引下げ動作に合わせて各ハンガー片110が外向きに弾性変形して一対の回動羽根120’,120’の捕捉状態が緩和されると同時に、その上側に設けた回転ローラーがズボンWを両側から挟み、後は回転ローラーの回転により、ズボンWをスムーズに引下げ動作することができる。
【0044】
図6は本発明に係るハンガー装置の第3実施形態を示すもので、これらの図において符号S3はズボン吊りハンガー装置を示している。なお、前記実施形態で説明したズボン吊りハンガー装置S1と同一部材には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0045】
ズボン吊りハンガー装置S3は、一対の回動羽根120’,120’およびその先端の弾性部材170,170によるズボンWの捕捉姿勢から、一方の回動羽根120’を跳ね上げ操作し、捕捉状態を解除するための解除操作手段180が設けられている。
【0046】
具体的には、解除操作手段180は、一方の回動羽根120’の先端に一端が係止された紐部材181と、一方の回動羽根120’側のハンガー片110の外側面のガイド182に沿って上方にスライド可能に設けられたスライド部材183を有し、前記紐部材181の他端はハンガー片110に設けられた孔110cを通してスライド部材183に係止されている。スライド部材183にはガイド182の外面に設けられた長孔182aを介して突出する操作ボタン184が設けられている。
【0047】
本実施形態のズボン吊りハンガー装置S3によれば、回動羽根120’,120’によるズボンWの上端の捕捉姿勢においては、操作ボタン184が長孔182aの下端位置にあり、ハンガー本体部100内に吊下げられたズボンWの上端を手で持ち、操作ボタン184を引き上げ操作すると、紐部材181により一方の回動羽根120’が跳ね上げられ、ズボンWの捕捉姿勢が解除される。その結果、ズボンWの捕捉状態をワンタッチで解除し、ズボンWを自重によりあるいは手で引き下げてハンガー本体部100から容易に取り外すことができる。
【0048】
かくして、本発明に係るハンガー装置を用いることにより、ズボンを楽々とハンガーに掛けあるいはハンガーから外すことができる。
【0049】
なお、本発明に係るハンガー装置は、被吊下物としてはスラックス、男子制服等のズボンが好適であるが、これに限られない。例えば、スカートなどの衣服の他、ホテルの室内で使用後のタオルやバスタオルを吊下げたり、複数のハンガー装置を用いて大型のシーツを干したり、各種洗濯物を干すことが可能である。また、業務クリーニング用にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係るハンガー装置は、ズボン、スカート等の衣服の他、タオル、シーツ類その他の被吊下物を楽に吊下げあるいは取り外すハンガー装置として幅広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態を示すズボン吊りハンガー装置の全体斜視図、
【図2】図1に示すズボン吊りハンガー装置の側面図、
【図3】(A)ないし(D)は図1に示すズボン吊りハンガー装置の使用手順および作用を示す説明図、
【図4】回動羽根および捕捉ローラーがズボンを捕捉するメカニズムを示す説明図、
【図5】本発明の第2実施形態を示すズボン吊りハンガー装置の説明図で、(A)は同装置の側面図、(B)はその作用を示す説明図、
【図6】本発明の第3実施形態を示すズボン吊りハンガー装置の作用を示す説明図である。
【符号の説明】
【0052】
100 ハンガー本体部
100a 基端部
110 ハンガー片
110a,120a 自由端
110b 開口部
120 回動羽根
121 回動軸
122 回動片
123 軸受部
124 回転軸
130 下部ストッパー
131 上部ストッパー
140 回転ローラー
141 弾性部材
150 回転制動力付与部材(回転制動力付与手段)
160 吊下げ用フック
S1,S2,S3 ズボン吊りハンガー装置
W ズボン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外向きにハ字形に弾性変形可能な逆U字形のハンガー本体部と、
当該ハンガー本体部の相対する各ハンガー片の下端内面に軸受部を介して跳ね上げ可能に支持された一対の回動羽根と、
各回動羽根の先端に設けられた一対の捕捉ローラーと、
被吊下物の挿入動作により跳ね上げられた一対の回動羽根を、被吊下物の自重による下降動作の途中で、前記一対の捕捉ローラーが被吊下物の上端を両側から捕捉する捕捉位置に保持する下部ストッパーを具備する、
ことを特徴とするハンガー装置。
【請求項2】
各捕捉ローラーと回動羽根との間に、被吊下物の自重による加重下では各捕捉ローラーの回転を不能とし、被吊下物の自重を越える加重による被吊下物の強制引き下げ動作時に各捕捉ローラーの回転を許容する回転制動力を、各捕捉ローラーに付与する回転制動力付与手段をさらに具備する、ことを特徴とする請求項1記載のハンガー装置。
【請求項3】
外向きにハ字形に弾性変形可能な逆U字形のハンガー本体部と、
当該ハンガー本体部の相対する各ハンガー片の下端内面に軸受部を介して跳ね上げ可能に支持された一対の回動羽根と、
前記一対の回動羽根の先端に設けられた一対の捕捉部と、
被吊下物の挿入動作により跳ね上げられた一対の回動羽根を、被吊下物の自重による下降動作の途中で、前記一対の捕捉部が被吊下物の上端を両側から捕捉する捕捉位置に保持する下部ストッパーを具備する、
ことを特徴とするハンガー装置。
【請求項4】
外向きにハ字形に弾性変形可能な逆U字形のハンガー本体部と、
当該ハンガー本体部の相対する各ハンガー片の自由端内面に軸受部を介して跳ね上げ可能に支持された一対の回動羽根と、
前記一対の回動羽根の先端に設けられた一対の捕捉部と、
被吊下物の挿入動作により跳ね上げられた一対の回動羽根を、被吊下物の自重による下降動作の途中で、前記一対の捕捉部が被吊下物の上端を両側から捕捉する捕捉位置に保持する下部ストッパーと、
被吊下物の捕捉姿勢から、いずれか一方の回動羽根を跳ね上げ操作し、被吊下物の捕捉姿勢を解除する解除操作手段を具備する、
ことを特徴とするハンガー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−165928(P2012−165928A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30339(P2011−30339)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(304018233)
【Fターム(参考)】