説明

ハンドおよびロボット

【課題】異なる大きさや形状のワークを把持すること。
【解決手段】互いに接近する向きあるいは遠ざかる向きにスライドする1組のスライド部と、かかるスライド部のそれぞれに固定される支持部と、少なくとも1つの支持部の先端部に取り付けられ、上記のスライド部のスライド軸と平行な回転軸まわりに回転する回転部と、上記の回転軸と直交し、かつ、それぞれ異なる向きに取り付けられる複数の把持爪とを備え、上記の1組のスライド部は、互いに平行な上記のスライド軸に沿ってそれぞれスライドするようにハンドおよびロボットを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドおよびロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部品箱の中などに置かれたボルトや電子部品といったワークを、アームの終端可動部に設けられたハンドによって把持して移動させる動作、いわゆるピック動作を行うロボットが知られている。
【0003】
かかるロボットは、ハンドの先端部に設けられた複数の把持爪でワークを挟み込むことによって把持動作を行う(たとえば、特許文献1参照)。なお、各把持爪は、ハンドが有する個別の移動部にそれぞれ固定されており、前述の挟み込みは、各移動部が相互に接近する向きへ移動することによって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−283268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のハンドおよびロボットは、把持爪の大きさや形状が一定であるため、把持対象となるワークの大きさや形状などによっては、ワークを把持しづらい場合があるという問題があった。
【0006】
この点、特許文献1の技術は、移動部の移動量を調整することによってワークの多様性に対応できるとしているが、そもそも把持爪の形状がワークにそぐわない場合には、やはりワークを把持しづらかった。
【0007】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、異なる大きさや形状のワークを把持することができるハンドおよびロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の開示するハンドおよびロボットは、一つの態様において、互いに接近する向きあるいは遠ざかる向きにスライドする1組のスライド部と、前記スライド部のそれぞれに固定される支持部と、少なくとも1つの前記支持部の先端部に取り付けられ、前記スライド部のスライド軸と平行な回転軸まわりに回転する回転部と、前記回転軸と直交し、かつ、それぞれ異なる向きに取り付けられる複数の把持爪とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本願の開示するハンドおよびロボットの一つの態様によれば、異なる大きさや形状のワークを把持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、ワークピッキングシステム1の配置例を示す図である。
【図2A】図2Aは、実施例に係るハンドの斜視図である。
【図2B】図2Bは、実施例に係るハンドの構成例を示す図である。
【図3A】図3Aは、実施例に係るハンドの側面図である。
【図3B】図3Bは、実施例に係るハンドの断面図である。
【図4A】図4Aは、スライド機構の平面図である。
【図4B】図4Bは、スライド機構の側面図である。
【図5A】図5Aは、把持爪の形状の具体例パターンAを示す図である。
【図5B】図5Bは、把持爪の形状の具体例パターンBを示す図である。
【図5C】図5Cは、把持爪の形状の具体例パターンCを示す図である。
【図5D】図5Dは、把持爪の形状の具体例パターンDを示す図である。
【図5E】図5Eは、把持爪の形状の具体例パターンEを示す図である。
【図5F】図5Fは、把持爪の形状の具体例パターンFを示す図である。
【図6】図6は、部品箱と把持爪との位置関係を示す図である。
【図7】図7は、変形例に係るスライド機構の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本願の開示するハンドおよびロボットの実施例を詳細に説明する。なお、以下に示す実施例における例示で本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0012】
まず、実施例に係るハンドを備えたロボットを含むワークピッキングシステムの配置例について、図1を用いて説明する。図1は、ワークピッキングシステム1の配置例を示す図である。
【0013】
図1に示すように、ワークピッキングシステム1は、ロボット10と、3次元計測部30とを備える。ロボット10は、たとえば、7軸の多軸ロボットであり、終端可動部には、ハンド20が設けられる。ハンド20は、いわゆるエンドエフェクタであり、ロボット10は、かかるエンドエフェクタを交換可能な汎用ロボットである。なお、ハンド20の詳細については、図2A以降を用いて後述する。
【0014】
また、図1に示すように、ロボット10は、右アーム10aと、左アーム10bとを備える、いわゆる双腕ロボットである。ここで、右アーム10aおよび左アーム10bは、それぞれが多軸ロボット(図1では7軸ロボット)であり、左アーム10bのエンドエフェクタとしてハンド20が設けられる。
【0015】
なお、右アーム10aには、所定のエンドエフェクタが設けられ、ワークがバラ積みされた部品箱200を把持する。このように、ロボット10は、右アーム10aで把持した部品箱200から、左アーム10bに設けられたハンド20でワークをつまみ出す動作を行う。
【0016】
なお、ロボット10は、右アーム10aおよび左アーム10bが設けられた胴部10cを、床面などに固定される支持部10dに対して水平面に沿って旋回させる機構を有している。
【0017】
3次元計測部30は、部品箱200における各ワークの位置を計測する機器であり、計測領域が鉛直方向側となるように、スタンド31などを介して固定される。
【0018】
次に、実施例に係るハンド20の構成例について、図2Aおよび図2Bを用いて説明する。図2Aは、実施例に係るハンド20の斜視図である。また、図2Bは、実施例に係るハンド20の構成例を示す図である。
【0019】
なお、説明を分かりやすくするために、図2Aおよび図2Bには、鉛直上向きを正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。かかる直交座標系は、以下の説明に用いる他の図面においても示す場合がある。
【0020】
また、以下では、1対で構成される構成要素については、1対のうちの一方の各部材にのみ符号を付し、他方については符号の付与を省略する場合がある。かかる場合、双方の構成は同様であるものとする。
【0021】
図2Aに示すように、実施例に係るハンド20は、左アーム10bの終端可動部10baに対して取り付けられる。ここで、終端可動部10baは、図2Aに示す軸AXzを回転軸として回転する。したがって、ハンド20もまた、かかる終端可動部10baの回転にあわせて回転することとなる。なお、図2Aでは、軸AXzが、図中のZ軸と平行である場合を示している。
【0022】
また、図2Aに示すように、ハンド20は、図示しない移動部(以下、「スライド部」と記載する)を含むスライド機構21と、1対の支持部22と、回転機構24とを備えている。また、支持部22は、それぞれ先端部に把持対象であるワークを把持する把持爪部23を備えている。
【0023】
なお、把持爪部23には複数の把持爪が備えられており、ハンド20は、ワークの大きさや形状に応じて、把持動作に用いる把持爪を切り換えることができる。
【0024】
以下、ハンド20の構成例をより詳細に説明する。図2Bに示すように、ハンド20が備えるスライド機構21は、1対のスライド部21aを備えている。
【0025】
また、スライド機構21は、1つのスライド用サーボモータ21bを備えており、かかるスライド用サーボモータ21bの駆動に基づき、各スライド部21aを図中のX軸に平行なスライド軸(図示せず)に沿って互いに接近する向きあるいは遠ざかる向きにスライドさせる。
【0026】
なお、各スライド部21aの互いに接近する向きへのスライドは、ワークを把持する動作に対応する。また、互いに遠ざかる向きへのスライドは、把持したワークを解放する動作に対応する。なお、スライド機構21の詳細については、図4Aおよび図4Bを用いて後述する。
【0027】
また、図2Bに示すように、1対の支持部22は、各スライド部21aへそれぞれ固定される。したがって、支持部22は、スライド部21aの挙動と同様の動きを示すこととなる。
【0028】
また、図2Bに示すように、把持爪部23は、図中のX軸に平行な軸AXr1まわりに回転する回転部23aをさらに備えている。
【0029】
かかる回転部23aの回転は、ハンド20が備える回転機構24の動作に基づく。図2Bに示すように、回転機構24は、1つの回転用サーボモータ24aと、回転用主動ベルトプーリ部24bと、スプラインシャフト24cと、回転用従動ベルトプーリ部24dとを備えている。
【0030】
そして、回転部23aは、回転用サーボモータ24aの駆動に基づく回転の伝達を、かかる回転用主動ベルトプーリ部24b、スプラインシャフト24cおよび回転用従動ベルトプーリ部24dを介して受け、回転する。かかる点についての詳細は、図3Aおよび図3Bを用いて後述する。
【0031】
また、図2Bに示すように、かかる回転部23aには、把持爪23b、把持爪23cおよび把持爪23dの3つの把持爪が取り付けられる。なお、以下では、かかる3つの把持爪が取り付けられている場合を例に挙げて説明を行うが、把持爪の数を限定するものではない。
【0032】
かかる各把持爪は、他方の支持部22の先端部の各把持爪と対になっている。すなわち、図2Bに示す例では、把持爪23bは同じ形状の把持爪23bに、把持爪23cは同じく把持爪23cに、把持爪23dは同じく把持爪23dに、それぞれ対応し、対向することとなる。
【0033】
そして、回転部23aの回転にあわせて、かかる各把持爪の組み合わせは同期して回転する。たとえば、回転部23aは、把持爪23bが、把持対象であるワークの大きさや形状に適している場合、把持爪23bの先端の向きが、かかるワークの把持動作に適した方向へ向くように回転する。
【0034】
このとき、把持爪23bの組み合わせは、同期してその先端の向きを同じ方向へ向けることとなる。なお、かかる点は、ワークに適する把持爪が、把持爪23cまたは把持爪23dである場合についても、同様である。また、回転部23aの回転角は、3次元計測部30(図1参照)の計測結果に基づいて制御される。
【0035】
このようにして、実施例に係るハンド20は、ワークの大きさや形状に応じて、把持動作に用いる把持爪を切り換えることができる。
【0036】
なお、ワークは、図2Bに示す各把持爪の対向面Sにおいて把持される。ここで、かかる対向面Sには種々の素材を用いることができる。たとえば、ワークを把持した際にすべりにくくするためにゴムなどを用いることとしてもよい。また、熱を持つワークに対しては、セラミックスのような耐熱性に優れた素材を用いてもよい。
【0037】
また、対向面Sに対して直接加工を施してもよい。たとえば、対向面Sへ線条の加工を施して凹凸を形成し、摩擦力を高めてもよい。
【0038】
次に、実施例に係るハンド20が備える回転機構24の詳細について、図3Aおよび図3Bを用いて説明する。図3Aは、実施例に係るハンド20の側面図である。また、図3Bは、実施例に係るハンド20の断面図である。なお、図3Aは、X軸の正方向からみた場合を、図3Bは、図3Aに示すA−A断面をY軸の負方向からみた場合を、それぞれ示している。
【0039】
上述した図2Bを用いた説明と一部重複するが、図3Aに示すように、ハンド20が備える回転機構24は、図中のX軸に平行な軸AXr3まわりに回転駆動する回転用サーボモータ24aの回転を、回転用サーボモータ24aとスプラインシャフト24c(図3Aにおいては図示せず)との間に架けられた回転用主動ベルトプーリ部24bを介して、スプラインシャフト24cへ伝達する。
【0040】
そして、かかる回転の伝達を受けたスプラインシャフト24cは、図中の軸AXr2まわりに回転し、かかる回転を、スプラインシャフト24cと回転部23aとの間に架けられた回転用従動ベルトプーリ部24dを介して、回転部23aへ伝達する。
【0041】
そして、かかる回転の伝達を受けた回転部23aは、図中の軸AXr1まわりに回転し、把持動作に用いる把持爪を切り換える。ここで、回転部23aへ取り付けられる各把持爪の形状や取り付け方向について説明しておく。
【0042】
回転部23aへ取り付けられる各把持爪は、ワークの大きさに応じた異なる所定幅のものを複数取り付けることができる。たとえば、図3Aに示す把持爪23b、把持爪23cおよび把持爪23dのように、所定幅を順に大、中、小とすることができる。
【0043】
また、各把持爪の形状、たとえば、上述した対向面Sの形状を、ワークの形状に応じてそれぞれ異ならせてもよい。かかる点の具体例については、図5Aから図5Fを用いて後述する。なお、かかるワークの大きさに応じた対応、および、ワークの形状に応じた対応を組み合わせることができるのは言うまでもない。
【0044】
また、取り付け方向に関しては、図3Aに示すように、回転部23aの回転中心(すなわち、回転軸である軸AXr1との交点)から放射状に延伸する向きに、言い換えれば、軸AXr1と直交し、かつ、放射状に延びる向きに、各把持爪を取り付けることができる。
【0045】
なお、「放射状に延びる向き」に関しては、これに限らなくともよい。たとえば、軸AXr1と直交するが、上記の回転中心を逸れた向きに各把持爪を取り付けることとしてもよい。したがって、各把持爪の取り付け方向に関しては、軸AXr1と直交し、かつ、それぞれ異なる向きに、と言い換えることができる。
【0046】
ここで、図3Bを用いて、回転機構24についてさらに詳細に説明する。図3Bに示すように、各スライド部21aには、それぞれ支持部22が固定される。
【0047】
そして、かかる支持部22には、図中のX軸に平行な軸AXr2に沿って、スプラインシャフト24cが貫通している。また、スプラインシャフト24cには、1対のナット部24eが設けられており、かかるナット部24eは、それぞれ対応する支持部22へ連結される。
【0048】
そして、回転用サーボモータ24aとスプラインシャフト24cの一端との間には回転用主動ベルトプーリ部24bが架けられ、スプラインシャフト24cのナット部24eと回転部23aとの間には回転用従動ベルトプーリ部24dが架けられる。
【0049】
また、回転部23aは、支持部22の先端部において、図示しないベアリングなどを介して回転自在に軸支される。そして、かかる回転部23aには、回転軸である軸AXr1と直交し、かつ、それぞれ異なる向きに、把持爪23bや把持爪23cなどが取り付けられる。
【0050】
そして、かかる構成において、回転用サーボモータ24aが駆動すると、かかる駆動に基づく回転を回転用主動ベルトプーリ部24bが伝達し、スプラインシャフト24cを軸AXr2まわりに回転させる。かかるスプラインシャフト24cの回転は、すなわち、1対のナット部24eを同期して回転させる。
【0051】
そして、かかるナット部24eの回転を回転用従動ベルトプーリ部24dが伝達し、1対の回転部23aを同期して軸AXr1まわりに回転させる。この結果、1対の回転部23aにそれぞれ対向するように取り付けられた把持爪23bの組み合わせ、把持爪23cの組み合わせおよび把持爪23dの組み合わせは、それぞれ同期しつつ回転し、その先端を軸AXr1と直交する任意の向きへ向けることとなる。
【0052】
このように、各把持爪の先端を任意の向きへ向けられることで、把持対象となるワークの形状などに応じて把持動作に用いる把持爪を切り換え、かつ、かかるワークが部品箱200の内壁面付近に位置するような場合であっても、ハンド20をかかる内壁面に接触させることなく、ワークを把持することが可能となる。かかる点については、図6を用いて後述する。
【0053】
次に、実施例に係るハンド20が備えるスライド機構21の詳細について、図4Aおよび図4Bを用いて説明する。図4Aは、スライド機構21の平面図である。また、図4Bは、スライド機構21の側面図である。なお、図4Aは、Z軸の負方向からみた場合を、図4Bは、X軸の負方向からみた場合を、それぞれ示している。
【0054】
図4Aに示すように、ハンド20が備えるスライド機構21は、1対のスライド部21aと、1つのスライド用サーボモータ21bと、1対のシャフト21cと、スライド用主動ベルトプーリ部21dと、スライド用従動ベルトプーリ部21eと、ハウジング21fとを備えている。
【0055】
1対のスライド部21aは、スライド軸であるシャフト21cに沿ってスライドする部材である。スライド用サーボモータ21bは、図中のX軸に平行な軸AXs3まわりに回転駆動する回転駆動機構である。
【0056】
1対のシャフト21cは、1対のスライド部21aにそれぞれ対応するスライド軸であり、スライド部21aを貫通して互いに略平行となるように配置され、ハウジング21fに設けられた図示しないベアリングを介して回転自在に支持される。
【0057】
ここで、1対のシャフト21cのうちの一方の外周面には、右ねじが形成されており、他方の外周面には、左ねじが形成されている。また、1対のスライド部21aには、それぞれシャフト21cを貫通させる穴に、貫通するシャフト21cと同方向のねじが形成されている。
【0058】
そして、シャフト21cとスライド部21aとは、かかるねじの形成されている部分で嵌合している。なお、以下では、かかるねじの形成されている部分を、「ねじ部」と記載する場合がある。
【0059】
また、図4Aおよび図4Bに示すように、スライド用サーボモータ21bと1対のシャフト21cのうちの一方との間には、スライド用主動ベルトプーリ部21dが架けられる。また、1対のシャフト21cの双方の間には、スライド用従動ベルトプーリ部21eが架けられる。
【0060】
かかる構成において、スライド用サーボモータ21bが駆動すると、かかる駆動に基づく回転をスライド用主動ベルトプーリ部21dが伝達し、スライド用主動ベルトプーリ部21dが架けられた一方のシャフト21cを、軸心である軸AXs2まわりに回転させる。
【0061】
そして、かかる一方のシャフト21cの回転をスライド用従動ベルトプーリ部21eが伝達し、他方のシャフト21cを、軸心である軸AXs1まわりに回転させる。すなわち、1つのスライド用サーボモータ21bの駆動に基づき、1対のシャフト21cは同一方向へ同期して回転する。
【0062】
かかる1対のシャフト21cの回転は、ねじ作用によって直線運動に変換され、ねじ部において嵌合している1対のスライド部21aをシャフト21cに沿ってスライドさせる。
【0063】
このとき、上述したように、1対のシャフト21cのねじ部のねじ向きは逆向きであるため、1対のスライド部21aは、それぞれ逆向きへスライドする。すなわち、1対のスライド部21aが、互いに接近する向きへスライドする動作によって、1対のスライド部21aへ固定された1対の支持部22の先端に位置する把持爪がワークを把持し、互いに遠ざかる向きへスライドする動作によって、把持したワークを解放することとなる。
【0064】
このように、スライド機構21を、1対のスライド部21aを互いに略平行な1対のシャフト21cに沿ってそれぞれスライドさせる構成とすることによって、ハンド20が、コンパクトでありつつも把持動作に関して長いストロークを得られるようにすることができる。
【0065】
次に、ワーク100の形状に応じて把持爪の形状を異ならせる場合の具体例について、図5Aから図5Fを用いて説明する。図5Aから図5Fは、順に、把持爪の形状の具体例パターンA〜Fを示す図である。なお、図5Aから図5Fは、いずれも、これまでに示したY軸の負方向からみた場合を示している。したがって、上述の対向面Sとは直交する向きである。
【0066】
図5Aおよび図5Bに示すように、把持爪の形状は、ワーク100の高さに応じて異なるものとすることができる。なお、ここでは、ワーク100の形状は、Y軸の負方向からみた場合に矩形であるものとする。
【0067】
たとえば、図5Aに示すように、ワーク100が所定の高さを有する場合、把持爪は、同様に所定の高さを有する対向面Sを持つ形状とすることができる。一方、図5Bに示すように、ワーク100がそれほど高さを有しない場合、把持爪は、同様にそれほど高さを有しない対向面Sを持つ形状とすることができる。
【0068】
また、図5Cおよび図5Dに示すように、把持爪の形状は、ワーク100が把持されるうえで不安定な形状である場合に、かかるワーク100の形状に応じたものとすることができる。
【0069】
たとえば、図5Cに示すように、ワーク100の形状が、Y軸の負方向からみた場合に円状であるものとする。かかる場合、把持爪は、対向面Sの間にかかるワーク100を収めて確実に把持できるように、対向面Sを窪ませた形状とすることができる。
【0070】
一方、図5Dに示すように、ワーク100の被把持部位が窪んでいるような場合、把持爪は、対向面Sをかかる被把持部位へ挿し込んで確実に把持できるように、突き出した形状とすることができる。
【0071】
また、図5Eおよび図5Fに示すように、把持爪の形状だけではなく、部品箱200の深さに応じて把持爪の長さを異なるものとすることができる。たとえば、図5Eに示すように、所定の深さを有する部品箱200の中のワーク100を把持する場合、把持爪に対して所定の長さを持たせることができる。
【0072】
一方、図5Fに示すように、浅い部品箱200の中のワーク100を把持する場合には、短い把持爪とすることができる。なお、図5Eおよび図5Fに示すように、ワーク100がきわめて小さいような場合、把持爪は、ピンセット状に尖った形状とすることができる。
【0073】
また、図5Aから図5Fでは、Y軸の負方向からみた場合に対向面Sがいずれも鋭角的な形状である例を示したが、把持爪の形状を限定するものではなく、たとえば、Rを付けた形状としてもよい。
【0074】
次に、把持爪の先端を任意の向きへ向けられる場合の利点について、図6を用いて説明する。図6は、部品箱200と把持爪23bとの位置関係を示す図である。なお、説明を簡略化する観点から、図6においては、把持動作に用いる把持爪として把持爪23bへ切り換え済みであるものとし、他の把持爪については図示を省略している。また、上述した軸AXr1が紙面と垂直となるように図示している。
【0075】
上述した図3Bを用いた説明と一部重複するが、回転部23aを回転させることによって把持爪の先端を任意の向きへ向けられる場合、図6に示すように、左アーム10b(図1参照)ならびにハンド20を部品箱200に接触させることなく、部品箱200の内壁面付近に位置するワーク100(図5Aから図5Fを参照)を把持することが可能となる。
【0076】
たとえば、図6における左側壁面近くのワーク100を把持する場合には、位置71にハンド20を位置付けたうえで、把持爪23bの先端側が左側壁面に近づくように把持爪23bの先端を向けることで、左側壁面近くのワーク100を適切に把持することができる。
【0077】
また、図6における右側壁面近くのワーク100を把持する場合には、位置72にハンド20を位置付けたうえで、把持爪23bの先端側が右側壁面に近づくように把持爪23bの先端を向けることで、右側壁面近くのワーク100を適切に把持することができる。
【0078】
上述したように、本実施例に係るハンドおよびロボットは、互いに接近する向きあるいは遠ざかる向きにスライドする1組のスライド部と、スライド部のそれぞれに固定される支持部と、支持部の先端部に取り付けられ、スライド部のスライド軸と平行な回転軸まわりに回転する回転部と、上記の回転軸と直交し、かつ、それぞれ異なる向きに取り付けられる複数の把持爪とを備える。
【0079】
したがって、本実施例に係るハンドおよびロボットによれば、異なる大きさや形状のワークを把持することができる。
【0080】
ところで、上述した実施例では、同じ形状の把持爪が1対になっている場合について説明したが、これに限られるものではない。たとえば、ワークの形状などに応じて、異なる形状の把持爪を1対としてもよい。
【0081】
また、上述した実施例では、1対の支持部の双方の回転部を同期して回転させる場合について説明したが、これに限らなくともよい。たとえば、非対称な形状の複数種類のワークを把持する場合において、いずれの種類のワークも被把持部位の一端が常に同一形状であるものとする。
【0082】
かかる場合、その同一形状の一端に対応する把持爪については切り換えることなく、片方の支持部の回転部のみを回転させ、被把持部位の他端に対応する把持爪についてのみ切り換えることとしてもよい。これは、少なくとも1つの支持部の先端部にのみ回転部を取り付けることで実現することができる。
【0083】
また、上述した実施例では、1つの支持部の回転部にすべて異なる形状の把持爪を取り付ける場合を例に挙げたが、これに限られるものではない。たとえば、同じ形状ではあるが、対向面の素材などが異なるものを取り付けることとしてもよい。
【0084】
また、上述した実施例では、各把持爪を回転部へ取り付ける例を示したが、取り付け方はこれに限られるものではなく、たとえば、アナログ時計の長針、短針および秒針のように、回転軸に対して重ねるように固定してもよい。
【0085】
さらに、上述した実施例では、互いにねじの向きが逆向きであるねじ部を有する1対のシャフトをスライド軸とするスライド機構について説明したが、かかるねじ部のねじの向きを同一方向とし、一方のシャフトを、ギアなどを介して逆向きに回転させることとしてもよい。
【0086】
また、スライド機構のスライド軸を1つとしてもよい。かかる変形例については、図7を用いて説明する。図7は、変形例に係るスライド機構21Aの構成例を示す図である。なお、図7を用いた説明では、上述した実施例に係るスライド機構21と共通する構成要素については、説明を省略するか、簡単な説明にとどめることとする。
【0087】
図7に示すように、変形例に係るスライド機構21Aは、1対のスライド部21aと、スライド用サーボモータ21bと、1本の左右ねじシャフト21gと、スライド用主動ベルトプーリ部21dと、ハウジング21fとを備えている。
【0088】
ここで、軸AXs3まわりに回転するスライド用サーボモータ21bの回転駆動力は、スライド用主動ベルトプーリ部21dを介して左右ねじシャフト21gへ伝達される。
【0089】
左右ねじシャフト21gは、ハウジング21fに設けられた軸受(図示せず)によって回転自在に支持されており、スライド用主動ベルトプーリ部21dを介して伝達されたスライド用サーボモータ21bの回転駆動力によって軸心である軸AXs1まわりに回転する。
【0090】
ここで、左右ねじシャフト21gの1対のスライド部21aと嵌合する一端側と他端側においては、それぞれ逆向きのねじ(左右ねじ)が形成されている。
【0091】
また、1対のスライド部21aには、左右ねじシャフト21gを貫通させる穴に、それぞれ同方向のねじが形成されている。したがって、1対のスライド部21aは、左右ねじシャフト21gの回転に伴い、ねじ作用によって左右ねじシャフト21gに沿ってそれぞれ逆方向へスライドする。
【0092】
すなわち、1対のスライド部21aが、左右ねじシャフト21gに沿って互いに接近する向きへスライドする動作によって、ワークを把持する把持動作を行い、互いに遠ざかる向きへスライドする動作によって、把持したワークを解放する解放動作を行うことができる。
【0093】
このように、スライド軸を1本の左右ねじシャフト21gで構成することによって、部品点数を減らし、ハンド20の軽量化および低コスト化を図ることができる。
【0094】
また、上述した実施例では、スライド部およびかかるスライド部に固定される支持部が1対である場合について示したが、これに限定されるものではない。たとえば、スライド部およびかかるスライド部に固定される支持部が3つ以上である場合に本願の開示する技術を適用することとしてもよい。
【0095】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施例に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 ワークピッキングシステム
10 ロボット
10a 右アーム
10b 左アーム
10ba 終端可動部
10c 胴部
10d 支持部
20 ハンド
21、21A スライド機構
21a スライド部
21b スライド用サーボモータ
21c シャフト
21d スライド用主動ベルトプーリ部
21e スライド用従動ベルトプーリ部
21f ハウジング
21g 左右ねじシャフト
22 支持部
23 把持爪部
23a 回転部
23b、23c、23d 把持爪
24 回転機構
24a 回転用サーボモータ
24b 回転用主動ベルトプーリ部
24c スプラインシャフト
24d 回転用従動ベルトプーリ部
24e ナット部
30 3次元計測部
31 スタンド
100 ワーク
200 部品箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接近する向きあるいは遠ざかる向きにスライドする1組のスライド部と、
前記スライド部のそれぞれに固定される支持部と、
少なくとも1つの前記支持部の先端部に取り付けられ、前記スライド部のスライド軸と平行な回転軸まわりに回転する回転部と、
前記回転軸と直交し、かつ、それぞれ異なる向きに取り付けられる複数の把持爪と
を備えることを特徴とするハンド。
【請求項2】
前記1組のスライド部は、
互いに平行な前記スライド軸に沿ってそれぞれスライドすることを特徴とする請求項1に記載のハンド。
【請求項3】
前記スライド軸を軸心まわりに回転させる1つのスライド用サーボモータ
をさらに備え、
前記スライド軸は、
外周面に所定の向きのねじを形成したねじ部を有しており、
前記スライド部は、
前記ねじ部において前記スライド軸と嵌合し、当該スライド軸の回転にともなうねじ作用によって前記スライド軸に沿ってスライドすることを特徴とする請求項1または2に記載のハンド。
【請求項4】
スプラインシャフトと、
前記スプラインシャフトを前記回転軸まわりに回転させる1つの回転用サーボモータと、
前記回転部のそれぞれに対応して設けられ、前記スプラインシャフトの回転を前記回転部へ伝達するベルトプーリ部と
をさらに備え、
前記回転部は、
前記ベルトプーリ部によって伝達された回転に従動して回転し、前記把持爪の先端の向きを前記回転軸と直交する任意の向きへ向けることを特徴とする請求項1に記載のハンド。
【請求項5】
前記把持爪は、
それぞれ対応する対の把持爪を有しており、
前記回転部は、
前記把持爪および前記対の把持爪を同期して回転させ、双方の先端の向きを同じ向きへ向けることを特徴とする請求項4に記載のハンド。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つに記載のハンド
を備えることを特徴とするロボット。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図5D】
image rotate

【図5E】
image rotate

【図5F】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−236258(P2012−236258A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107140(P2011−107140)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】