ハンドローラ
【課題】高い技量を有さずとも、容易に塗装面の塗り斑あるいはパターンロール面のパターン斑を低減することのできるハンドローラを提供する。
【解決手段】ロール4と、ロール4を転動可能に支持する支持部6と、支持部6に取り付けられた把手7とを備え、支持部6が把手の軸8に対して回転自在であることを特徴とするハンドローラ10。本発明のハンドローラ10を用いることにより、高い技量を有さずとも、容易に塗装面の塗り斑あるいはパターンロール面のパターン斑を低減することができる。
【解決手段】ロール4と、ロール4を転動可能に支持する支持部6と、支持部6に取り付けられた把手7とを備え、支持部6が把手の軸8に対して回転自在であることを特徴とするハンドローラ10。本発明のハンドローラ10を用いることにより、高い技量を有さずとも、容易に塗装面の塗り斑あるいはパターンロール面のパターン斑を低減することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドローラに関する。
【背景技術】
【0002】
塗料をハンドローラで塗装する場合は、外観の仕上がりを向上するために、塗り斑の少ないように塗装することが求められている。しかしながら、外観の仕上がりは、作業者の技量に依るところが大きい。技量の乏しい作業者は、ハンドローラのロールの両端にかかる力に差を生じさせてしまい、その結果、塗り斑を生じることがあった。
【0003】
また、特許文献1のように、塗装面の塗料が乾かないうちにパターンローラを押し当てて模様を形成させる方法(パターンロール)の場合においても、得られるパターンロール面の模様の深さに差が生じてパターン斑とならないように、塗装面に対してパターンローラを平行に押し当て、かつロールの両端に均等な力を加えながら塗装面を転動する必要がある。
パターン斑のない均等なパターンロール面を得るためには、ロール表面を塗装面に対して平行に押し当てる必要があるが、従来のハンドローラでは、パターンローラを塗装面に押し当てる際に、ハンドローラを把持した手首、腕、あるいは体自体の向きを、塗装面に対してロール表面が常に平行になるように維持する必要があった。また、ハンドローラの転動の最中においても、塗装面に対してロール表面が常に平行を維持するように、手首などの向きを変えずに作業する必要があり、作業者にとっての負担が大きかった。
特に、塗装面の端、狭い場所、障害物のある場所など、作業が困難な位置にある塗装面、さらには、塗装面が曲面である場合などは、技量を備えた作業者であっても、その作業は容易ではなく、パターン斑が生じやすかった。
このように、塗装面にパターン斑が生じると、塗装面の外観性が低下してしまう。さらには、塗装のやり直しなどが必要になる場合もあり、塗装時間、塗装費用に無駄が生じることになる。
かかる課題に対し、例えば、特許文献2では、ロールの素材に単泡構造のゴムを用いることにより、ロールに付着する塗料の量を適正に保つことができ、以って高い技量を必要とせずとも塗り斑を低減できるハンドローラが提案されている。
【特許文献1】特開2002−263565号公報
【特許文献2】特開2005−118699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2のハンドローラでは、結局のところ、作業者の技量に依るところが大きく、塗装面の塗り斑が大きく改善されたとはいいがたい。また、ロールに付着させられる塗料の量が制限されるため、一度に塗布できる塗装面に限りがある。さらに、特許文献2のハンドローラでは、パターンロールにおける両端の模様の深さの差を解消するには至っていない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高い技量を有さずとも、容易に塗装面の塗り斑あるいはパターンロール面のパターン斑を低減することのできるハンドローラを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
ロールと、ロールを転動可能に支持する支持部と、支持部に取り付けられた把手とを備えたハンドローラであって、支持部が把手の軸に対して回転自在であることを特徴とするハンドローラ。
【発明の効果】
【0006】
本発明のハンドローラによれば、高い技量を有さずとも、容易に塗装面の塗り斑あるいはパターンロール面のパターン斑を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1に、本発明のハンドローラの一実施形態例を示す。ハンドローラ10は、ロール4と、ロール4を転動可能に支持する支持部6と、支持部6に取り付けられた把手7とを備えており、支持部6が把手の軸8に対して回転自在であることを特徴としている。
【0008】
塗装面と接触するロール表面5の表面形状としては、目的に応じて、平滑なもの、あるいは凹凸が形成されたものなどを適宜選択できる。
一般の塗装においては、均一に塗料を塗布するため、平滑な表面形状を有したロール表面5が好ましい。
パターンロールなどの立体模様を形成する場合においては、立体模様を形成するため、所定の凹凸模様を有したロール表面5が好ましい。未乾燥の塗装面にロール表面5を転動させることで、塗装面に凹凸模様が転圧され、意匠性に富んだ立体模様を形成することができる。また、ロール表面5の凹凸模様としては、例えば、波模様、スチップル模様(小さい波模様)、水玉模様、ストライプ模様などを例示できる。
ロール表面5の材質としては、例えば、JIS S 9024に示されているように、天然毛、純毛、モヘア、合成繊維、混毛などの繊維のパイル、あるいは多孔質系や発泡系樹脂、その他の樹脂、あるいは金属、木材、紙材などが挙げられる。
パターンロールに用いる場合には、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂などから形成される多孔質体や発泡体などからなるロール表面5が好ましく用いられる。多孔質体や発泡体に水または水溶性エマルション凝集剤を含ませることで、塗装面の転動の際に、未乾燥のエマルション塗料がロール表面5に付着しにくくすることができる。
【0009】
支持部6は、ロール軸2の両端と連結して、ロール4を転動自在となるように支持している。支持部6の形状は、ロール4を転動自在なように支持できれば特に限定されない。支持部6を形成する材質は特に限定されず、金属、樹脂、木材、あるいはそれらの組み合わせを例示できる。
【0010】
把手7は、手などで把持できる形状を有していれば特に限定されない。把手7の材質としては、例えば、金属、樹脂、木材、あるいはそれらの組み合わせを例示できる。
把手7は、把手の軸8がロール軸2に対して直角に交わるように支持部6に取り付けられるのが好ましい。このようにすることで、ロール4の進行方向に沿って力を掛けられるため、塗装面上を円滑に転動させることができる。
【0011】
本発明のハンドローラ10は、ロール表面5から塗装面に対して斜めに働く力が加わったとしても、支持部6が把手の軸8に対して回転することで、その傾きが補正される。したがって、把手7を握る手首の向きが変わったとしても、ロール表面5を塗装面に対して平行に押し当てることができる。
また、本発明のハンドローラ10は、塗装面を転動させる際にも、支持部6が把手の軸8に対して回転することで、その傾きが補正されるため、把手7を握る手首の向きが変わったとしても、常にロール表面5を塗装面に平行に押し当てて転動させることができる。
このように、支持部6が把手の軸8に対して回転自在であるハンドローラ10としては、例えば、図2、図3に示すような一実施形態例を挙げることができる。この実施形態例では、頭頂部22と軸棒23とを有した接合部材21が、支持部6に設けられた孔31と、ワッシャー51、52とを貫通して、把手7に接合している。接合部材21は、僅かに遊びを有して支持部6を挟持することで、支持部6が把手の軸8に対して回転自在とすることができる。
接合部材21としては、六角ボルトなどのボルト類;タッピング、トラス、サラなどのネジ類;ナットと棒ネジとの組み合わせなどが挙げられる。また、接合部材21は、把手7と接着剤や圧着などにより接合していてもよく、ネジ山を有した接合部材21を、ネジ溝を有した孔31に捻じ込むことにより接合してもよい。また、接合部材21の材質は特に限定されず、金属、樹脂、木材、あるいはそれらの組み合わせを例示できる。
支持部6は、把手の軸8に対して回転自在であるが、その回転には多少の抵抗を持たせることが好ましい。把手の軸8に対する支持部6の回転の抵抗が少ないと、支持部6が不用意に回転し、塗装面を傷つける、あるいは塗料が飛び散るなどの支障が生じる。また、支持部6が不用意に回転すると、ロール4を塗装面に押し当てる際の位置決めが難しくなる。
支持部6の回転に抵抗を与えるには、接合部材21によって支持部6を強く挟持する、あるいはワッシャー51および/またはワッシャー52に接触摩擦を生じやすい素材を用いるなどして、接合部材21と支持部6、および/または接合部材21と把手7との接触摩擦を増大させるのが好ましい。ワッシャー51、ワッシャー52としては、平ワッシャー、スプリングワッシャー、コイルスプリングなどを挙げることができ、その材質は、例えば金属、ゴムなどの弾性体を例示できる。
【0012】
支持部6が把手の軸8に対して回転自在とするには、例えば、図4の他の実施形態例に示すように、支持部6に取り付けられた軸棒24と、軸棒24に取り付けられた係り止め25と、把手7に形成され、掛かり受け33を有した窪み32とを備えたハンドローラ10であってもよい。軸棒24は、係り止め25が掛かり受け33に引っかかるように、窪み32に填め込まれている。これにより、把手7と支持部6とは脱落することなく、自在回転することができる。軸棒24の形状は円筒形が好ましい。窪み32は、軸棒24の形状に合わせ、断面が円形であることが好ましい。係り止め25は、図示したような軸棒24の先端への取り付け以外にも、軸棒24の途中に設けられていてもよい。ただし、窪み32および掛かり受け33の形状も、軸棒24および係り止め25の形状に合わせた形状とするのが好ましい。係り止め25の形状は特に限定されないが、軸棒24が窪み32から脱落しないように、少なくともその一部が、窪み32の断面の幅より大きいことが好ましい。なお、軸棒24と係り止め25とは、一体成形されていてもよい。また、この実施形態例でも、ワッシャー53を用いるなどして支持部6の回転に抵抗を持たせるのが好ましい。ワッシャー53には、ワッシャー51、52と同様のものを用いることができる。
【0013】
さらには、図5の実施形態例のように、窪み34の内壁の少なくとも一部に弾性体などからなる保持部材29を埋め込み、そこに軸棒26を挿し込んだハンドローラ10であってもよい。この実施形態例では、軸棒26が、保持部材29の有する適度な弾性力によって保持されている。これにより、軸棒26は保持部材29によって適度な接触摩擦を受けつつも、回転自在とすることができるので、ワッシャーなどによる接触抵抗を用いなくてもよい。また、この実施形態例では、保持部材29によって軸棒26を保持しているので、軸棒26に係り止め25を設けなくてもよい。さらには、保持部材29による軸棒26の保持力を、手で抜き挿しできる保持力にしておけば、必要に応じて、把手7と支持部6を容易に分離でき、例えば、把手7の交換が迅速に行える、あるいはコンパクトな収納を可能とすることができる。ただし、保持部材29は、軸棒26を容易には脱落させない程度の弾性力を有している必要がある。保持部材29には、スポンジ状、ゴム状の樹脂素材を用いるのが好ましい。また、把手7そのものを弾性体で形成することによってもよい。
【0014】
さらには、図6の実施形態例に示すように、把手の軸8を貫通するように形成された孔35と、孔35を貫通できる長さを有した軸棒28とを有したハンドローラ10であってもよい。軸棒28は、孔35に挿し込まれている。さらに、把手7が、支持部6から脱落することなく、かつ把手の軸8を中心に自在回転できるように、軸棒28の先端に係り止め27が取り付けられている。また、この実施形態例でも、支持部6の回転にある程度の抵抗を持たせるため、支持部6と把手7との間、および把手7と係り止め27との間に、ワッシャー54、ワッシャー55を介して支持部6の回転に抵抗を持たせるのが好ましい。ワッシャー54、55の材質はワッシャー51、52と同様のものを用いることができる。
【0015】
さらには、図7、8に示すように、転がり軸受9を用いたハンドローラ10であってもよい。転がり軸受9は、リング61と回転軸63とが複数のボール62を介して連結するように構成されており、一般にボールベアリングとも呼ばれ、各種機械に多用されている。本発明では、公知の転がり軸受を用いることができる。なお、この実施形態例では、回転軸63が支持部6側、リング61が把手7側に接合しているが、回転軸63が把手7側、リング61が支持部6側に接合されていてもよい。
この実施形態例において、支持部6の回転に抵抗を持たせるには、ワッシャー(不図示)を適所に用いてもよいが、あらかじめ所望の回転抵抗を有した転がり軸受9を用いてもよい。また、ワッシャーと転がり軸受9とを併用してもよい。なお、図示しないが、転がり軸受9の他にも、磁気を利用した磁気軸受、オイルなどの流体を介した流体軸受などであってもよい。
【0016】
ハンドローラ10は、図9に示すように、ロール軸2の片端のみを支持部6が支持する構造であってもよい。この実施形態例においても、上述したいずれかの方法によって把手7が支持部6に取り付けられており、支持部6が把手の軸8に対して回転自在となっている。
【0017】
次に、本発明のハンドローラ10を塗装面に押し当てる際における支持部6の動きについて、図10、11を参照して説明する。
本発明のハンドローラ10は、図10(a)、図11(a)に示すように、ロール表面5から塗装面100に対して斜めに働く力が加わったとしても、支持部6が把手の軸8に対して回転することにより、図10(b)、図11(b)に示すように、ロール表面5の傾きが塗装面100に対して平行になるように補正される。したがって、把手7を握る手首の向きが変わったとしても、ロール表面5を塗装面100に対して平行に押し当てることができる。
また、本発明のハンドローラ10は、塗装面100の傾きに応じて支持部6の傾きが補正されることにより、把手7を握る手首の向きが変わったとしても、ロール表面5を塗装面100に常に平行を維持した状態で転動させることができる。
【0018】
このように、本発明のハンドローラを用いれば、ロール表面と塗装面とを常に平行に押し当てることができるので、ロールの両端に加わる力を均等にすることができる。これにより、高い技量を有さずとも、容易に塗装面の塗り斑あるいはパターンロールのパターン斑を低減することができ、以って優れた外観の塗装面あるいはパターンロール面を得ることができる。また、本発明のハンドローラは、作業者の塗装作業時の負担を大きく軽減でき、さらに、塗装の失敗が大幅に減少するため、塗装作業に要する時間、費用の低減を図ることもできる。
【0019】
本発明のハンドローラを使用する対象には特に制限はなく、建築物の内/外壁、塀、オブジェなどに対する塗装に用いる塗装ローラ、あるいはパターンロールに用いるパターンローラに好適に用いられる。また、それらの用途以外にも、例えば、壁面などへの壁紙の貼り付けに用いる圧着ローラにも用いることができる。さらには、床面などのゴミを収集するゴミ取りローラなどにも、そのロール表面を粘着素材とすることにより、利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のハンドローラを示す斜視図。
【図2】本発明のハンドローラの一実施形態例を示す模式図。
【図3】図2のハンドローラの支持部と把手との取り付け部分を、把手の軸方向に切断した部分断面図。
【図4】本発明のハンドローラの他の実施形態例の支持部と把手との取り付け部分を、把手の軸方向に切断した部分断面図。
【図5】本発明のハンドローラの他の実施形態例の支持部と把手との取り付け部分を、把手の軸方向に切断した部分断面図。
【図6】本発明のハンドローラの他の実施形態例の支持部の一部と、把手と、支持部と把手との取り付け部分を、把手の軸方向に切断した部分断面図。
【図7】本発明のハンドローラの他の実施形態例の支持部の支持部と把手との取り付け部分を、把手の軸方向に切断した部分断面図。
【図8】図7のハンドローラの軸受の平面図。
【図9】本発明のハンドローラの他の実施形態例を示す斜視図。
【図10】本発明のハンドローラを塗装面に押し当てたときの支持部およびローラの動きを、ハンドローラの進行方向側から示す図。
【図11】本発明のハンドローラを塗装面に押し当てたときの支持部およびローラの動きを、ハンドローラの進行方向に対する側面側から示す図。
【符号の説明】
【0021】
2 ロール軸
4 ロール
5 ロール表面
6 支持部
7 把手
8 把手の軸
9 転がり軸受
10 ハンドローラ
21 接合部材
23、24、26、28 軸棒
25、27 係り止め
29 保持部材
31、35 孔
32、34 窪み
51、52、53、54、55 ワッシャー
100 塗装面
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドローラに関する。
【背景技術】
【0002】
塗料をハンドローラで塗装する場合は、外観の仕上がりを向上するために、塗り斑の少ないように塗装することが求められている。しかしながら、外観の仕上がりは、作業者の技量に依るところが大きい。技量の乏しい作業者は、ハンドローラのロールの両端にかかる力に差を生じさせてしまい、その結果、塗り斑を生じることがあった。
【0003】
また、特許文献1のように、塗装面の塗料が乾かないうちにパターンローラを押し当てて模様を形成させる方法(パターンロール)の場合においても、得られるパターンロール面の模様の深さに差が生じてパターン斑とならないように、塗装面に対してパターンローラを平行に押し当て、かつロールの両端に均等な力を加えながら塗装面を転動する必要がある。
パターン斑のない均等なパターンロール面を得るためには、ロール表面を塗装面に対して平行に押し当てる必要があるが、従来のハンドローラでは、パターンローラを塗装面に押し当てる際に、ハンドローラを把持した手首、腕、あるいは体自体の向きを、塗装面に対してロール表面が常に平行になるように維持する必要があった。また、ハンドローラの転動の最中においても、塗装面に対してロール表面が常に平行を維持するように、手首などの向きを変えずに作業する必要があり、作業者にとっての負担が大きかった。
特に、塗装面の端、狭い場所、障害物のある場所など、作業が困難な位置にある塗装面、さらには、塗装面が曲面である場合などは、技量を備えた作業者であっても、その作業は容易ではなく、パターン斑が生じやすかった。
このように、塗装面にパターン斑が生じると、塗装面の外観性が低下してしまう。さらには、塗装のやり直しなどが必要になる場合もあり、塗装時間、塗装費用に無駄が生じることになる。
かかる課題に対し、例えば、特許文献2では、ロールの素材に単泡構造のゴムを用いることにより、ロールに付着する塗料の量を適正に保つことができ、以って高い技量を必要とせずとも塗り斑を低減できるハンドローラが提案されている。
【特許文献1】特開2002−263565号公報
【特許文献2】特開2005−118699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2のハンドローラでは、結局のところ、作業者の技量に依るところが大きく、塗装面の塗り斑が大きく改善されたとはいいがたい。また、ロールに付着させられる塗料の量が制限されるため、一度に塗布できる塗装面に限りがある。さらに、特許文献2のハンドローラでは、パターンロールにおける両端の模様の深さの差を解消するには至っていない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高い技量を有さずとも、容易に塗装面の塗り斑あるいはパターンロール面のパターン斑を低減することのできるハンドローラを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
ロールと、ロールを転動可能に支持する支持部と、支持部に取り付けられた把手とを備えたハンドローラであって、支持部が把手の軸に対して回転自在であることを特徴とするハンドローラ。
【発明の効果】
【0006】
本発明のハンドローラによれば、高い技量を有さずとも、容易に塗装面の塗り斑あるいはパターンロール面のパターン斑を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1に、本発明のハンドローラの一実施形態例を示す。ハンドローラ10は、ロール4と、ロール4を転動可能に支持する支持部6と、支持部6に取り付けられた把手7とを備えており、支持部6が把手の軸8に対して回転自在であることを特徴としている。
【0008】
塗装面と接触するロール表面5の表面形状としては、目的に応じて、平滑なもの、あるいは凹凸が形成されたものなどを適宜選択できる。
一般の塗装においては、均一に塗料を塗布するため、平滑な表面形状を有したロール表面5が好ましい。
パターンロールなどの立体模様を形成する場合においては、立体模様を形成するため、所定の凹凸模様を有したロール表面5が好ましい。未乾燥の塗装面にロール表面5を転動させることで、塗装面に凹凸模様が転圧され、意匠性に富んだ立体模様を形成することができる。また、ロール表面5の凹凸模様としては、例えば、波模様、スチップル模様(小さい波模様)、水玉模様、ストライプ模様などを例示できる。
ロール表面5の材質としては、例えば、JIS S 9024に示されているように、天然毛、純毛、モヘア、合成繊維、混毛などの繊維のパイル、あるいは多孔質系や発泡系樹脂、その他の樹脂、あるいは金属、木材、紙材などが挙げられる。
パターンロールに用いる場合には、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂などから形成される多孔質体や発泡体などからなるロール表面5が好ましく用いられる。多孔質体や発泡体に水または水溶性エマルション凝集剤を含ませることで、塗装面の転動の際に、未乾燥のエマルション塗料がロール表面5に付着しにくくすることができる。
【0009】
支持部6は、ロール軸2の両端と連結して、ロール4を転動自在となるように支持している。支持部6の形状は、ロール4を転動自在なように支持できれば特に限定されない。支持部6を形成する材質は特に限定されず、金属、樹脂、木材、あるいはそれらの組み合わせを例示できる。
【0010】
把手7は、手などで把持できる形状を有していれば特に限定されない。把手7の材質としては、例えば、金属、樹脂、木材、あるいはそれらの組み合わせを例示できる。
把手7は、把手の軸8がロール軸2に対して直角に交わるように支持部6に取り付けられるのが好ましい。このようにすることで、ロール4の進行方向に沿って力を掛けられるため、塗装面上を円滑に転動させることができる。
【0011】
本発明のハンドローラ10は、ロール表面5から塗装面に対して斜めに働く力が加わったとしても、支持部6が把手の軸8に対して回転することで、その傾きが補正される。したがって、把手7を握る手首の向きが変わったとしても、ロール表面5を塗装面に対して平行に押し当てることができる。
また、本発明のハンドローラ10は、塗装面を転動させる際にも、支持部6が把手の軸8に対して回転することで、その傾きが補正されるため、把手7を握る手首の向きが変わったとしても、常にロール表面5を塗装面に平行に押し当てて転動させることができる。
このように、支持部6が把手の軸8に対して回転自在であるハンドローラ10としては、例えば、図2、図3に示すような一実施形態例を挙げることができる。この実施形態例では、頭頂部22と軸棒23とを有した接合部材21が、支持部6に設けられた孔31と、ワッシャー51、52とを貫通して、把手7に接合している。接合部材21は、僅かに遊びを有して支持部6を挟持することで、支持部6が把手の軸8に対して回転自在とすることができる。
接合部材21としては、六角ボルトなどのボルト類;タッピング、トラス、サラなどのネジ類;ナットと棒ネジとの組み合わせなどが挙げられる。また、接合部材21は、把手7と接着剤や圧着などにより接合していてもよく、ネジ山を有した接合部材21を、ネジ溝を有した孔31に捻じ込むことにより接合してもよい。また、接合部材21の材質は特に限定されず、金属、樹脂、木材、あるいはそれらの組み合わせを例示できる。
支持部6は、把手の軸8に対して回転自在であるが、その回転には多少の抵抗を持たせることが好ましい。把手の軸8に対する支持部6の回転の抵抗が少ないと、支持部6が不用意に回転し、塗装面を傷つける、あるいは塗料が飛び散るなどの支障が生じる。また、支持部6が不用意に回転すると、ロール4を塗装面に押し当てる際の位置決めが難しくなる。
支持部6の回転に抵抗を与えるには、接合部材21によって支持部6を強く挟持する、あるいはワッシャー51および/またはワッシャー52に接触摩擦を生じやすい素材を用いるなどして、接合部材21と支持部6、および/または接合部材21と把手7との接触摩擦を増大させるのが好ましい。ワッシャー51、ワッシャー52としては、平ワッシャー、スプリングワッシャー、コイルスプリングなどを挙げることができ、その材質は、例えば金属、ゴムなどの弾性体を例示できる。
【0012】
支持部6が把手の軸8に対して回転自在とするには、例えば、図4の他の実施形態例に示すように、支持部6に取り付けられた軸棒24と、軸棒24に取り付けられた係り止め25と、把手7に形成され、掛かり受け33を有した窪み32とを備えたハンドローラ10であってもよい。軸棒24は、係り止め25が掛かり受け33に引っかかるように、窪み32に填め込まれている。これにより、把手7と支持部6とは脱落することなく、自在回転することができる。軸棒24の形状は円筒形が好ましい。窪み32は、軸棒24の形状に合わせ、断面が円形であることが好ましい。係り止め25は、図示したような軸棒24の先端への取り付け以外にも、軸棒24の途中に設けられていてもよい。ただし、窪み32および掛かり受け33の形状も、軸棒24および係り止め25の形状に合わせた形状とするのが好ましい。係り止め25の形状は特に限定されないが、軸棒24が窪み32から脱落しないように、少なくともその一部が、窪み32の断面の幅より大きいことが好ましい。なお、軸棒24と係り止め25とは、一体成形されていてもよい。また、この実施形態例でも、ワッシャー53を用いるなどして支持部6の回転に抵抗を持たせるのが好ましい。ワッシャー53には、ワッシャー51、52と同様のものを用いることができる。
【0013】
さらには、図5の実施形態例のように、窪み34の内壁の少なくとも一部に弾性体などからなる保持部材29を埋め込み、そこに軸棒26を挿し込んだハンドローラ10であってもよい。この実施形態例では、軸棒26が、保持部材29の有する適度な弾性力によって保持されている。これにより、軸棒26は保持部材29によって適度な接触摩擦を受けつつも、回転自在とすることができるので、ワッシャーなどによる接触抵抗を用いなくてもよい。また、この実施形態例では、保持部材29によって軸棒26を保持しているので、軸棒26に係り止め25を設けなくてもよい。さらには、保持部材29による軸棒26の保持力を、手で抜き挿しできる保持力にしておけば、必要に応じて、把手7と支持部6を容易に分離でき、例えば、把手7の交換が迅速に行える、あるいはコンパクトな収納を可能とすることができる。ただし、保持部材29は、軸棒26を容易には脱落させない程度の弾性力を有している必要がある。保持部材29には、スポンジ状、ゴム状の樹脂素材を用いるのが好ましい。また、把手7そのものを弾性体で形成することによってもよい。
【0014】
さらには、図6の実施形態例に示すように、把手の軸8を貫通するように形成された孔35と、孔35を貫通できる長さを有した軸棒28とを有したハンドローラ10であってもよい。軸棒28は、孔35に挿し込まれている。さらに、把手7が、支持部6から脱落することなく、かつ把手の軸8を中心に自在回転できるように、軸棒28の先端に係り止め27が取り付けられている。また、この実施形態例でも、支持部6の回転にある程度の抵抗を持たせるため、支持部6と把手7との間、および把手7と係り止め27との間に、ワッシャー54、ワッシャー55を介して支持部6の回転に抵抗を持たせるのが好ましい。ワッシャー54、55の材質はワッシャー51、52と同様のものを用いることができる。
【0015】
さらには、図7、8に示すように、転がり軸受9を用いたハンドローラ10であってもよい。転がり軸受9は、リング61と回転軸63とが複数のボール62を介して連結するように構成されており、一般にボールベアリングとも呼ばれ、各種機械に多用されている。本発明では、公知の転がり軸受を用いることができる。なお、この実施形態例では、回転軸63が支持部6側、リング61が把手7側に接合しているが、回転軸63が把手7側、リング61が支持部6側に接合されていてもよい。
この実施形態例において、支持部6の回転に抵抗を持たせるには、ワッシャー(不図示)を適所に用いてもよいが、あらかじめ所望の回転抵抗を有した転がり軸受9を用いてもよい。また、ワッシャーと転がり軸受9とを併用してもよい。なお、図示しないが、転がり軸受9の他にも、磁気を利用した磁気軸受、オイルなどの流体を介した流体軸受などであってもよい。
【0016】
ハンドローラ10は、図9に示すように、ロール軸2の片端のみを支持部6が支持する構造であってもよい。この実施形態例においても、上述したいずれかの方法によって把手7が支持部6に取り付けられており、支持部6が把手の軸8に対して回転自在となっている。
【0017】
次に、本発明のハンドローラ10を塗装面に押し当てる際における支持部6の動きについて、図10、11を参照して説明する。
本発明のハンドローラ10は、図10(a)、図11(a)に示すように、ロール表面5から塗装面100に対して斜めに働く力が加わったとしても、支持部6が把手の軸8に対して回転することにより、図10(b)、図11(b)に示すように、ロール表面5の傾きが塗装面100に対して平行になるように補正される。したがって、把手7を握る手首の向きが変わったとしても、ロール表面5を塗装面100に対して平行に押し当てることができる。
また、本発明のハンドローラ10は、塗装面100の傾きに応じて支持部6の傾きが補正されることにより、把手7を握る手首の向きが変わったとしても、ロール表面5を塗装面100に常に平行を維持した状態で転動させることができる。
【0018】
このように、本発明のハンドローラを用いれば、ロール表面と塗装面とを常に平行に押し当てることができるので、ロールの両端に加わる力を均等にすることができる。これにより、高い技量を有さずとも、容易に塗装面の塗り斑あるいはパターンロールのパターン斑を低減することができ、以って優れた外観の塗装面あるいはパターンロール面を得ることができる。また、本発明のハンドローラは、作業者の塗装作業時の負担を大きく軽減でき、さらに、塗装の失敗が大幅に減少するため、塗装作業に要する時間、費用の低減を図ることもできる。
【0019】
本発明のハンドローラを使用する対象には特に制限はなく、建築物の内/外壁、塀、オブジェなどに対する塗装に用いる塗装ローラ、あるいはパターンロールに用いるパターンローラに好適に用いられる。また、それらの用途以外にも、例えば、壁面などへの壁紙の貼り付けに用いる圧着ローラにも用いることができる。さらには、床面などのゴミを収集するゴミ取りローラなどにも、そのロール表面を粘着素材とすることにより、利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のハンドローラを示す斜視図。
【図2】本発明のハンドローラの一実施形態例を示す模式図。
【図3】図2のハンドローラの支持部と把手との取り付け部分を、把手の軸方向に切断した部分断面図。
【図4】本発明のハンドローラの他の実施形態例の支持部と把手との取り付け部分を、把手の軸方向に切断した部分断面図。
【図5】本発明のハンドローラの他の実施形態例の支持部と把手との取り付け部分を、把手の軸方向に切断した部分断面図。
【図6】本発明のハンドローラの他の実施形態例の支持部の一部と、把手と、支持部と把手との取り付け部分を、把手の軸方向に切断した部分断面図。
【図7】本発明のハンドローラの他の実施形態例の支持部の支持部と把手との取り付け部分を、把手の軸方向に切断した部分断面図。
【図8】図7のハンドローラの軸受の平面図。
【図9】本発明のハンドローラの他の実施形態例を示す斜視図。
【図10】本発明のハンドローラを塗装面に押し当てたときの支持部およびローラの動きを、ハンドローラの進行方向側から示す図。
【図11】本発明のハンドローラを塗装面に押し当てたときの支持部およびローラの動きを、ハンドローラの進行方向に対する側面側から示す図。
【符号の説明】
【0021】
2 ロール軸
4 ロール
5 ロール表面
6 支持部
7 把手
8 把手の軸
9 転がり軸受
10 ハンドローラ
21 接合部材
23、24、26、28 軸棒
25、27 係り止め
29 保持部材
31、35 孔
32、34 窪み
51、52、53、54、55 ワッシャー
100 塗装面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールと、ロールを転動可能に支持する支持部と、支持部に取り付けられた把手とを備えたハンドローラであって、支持部が把手の軸に対して回転自在であることを特徴とするハンドローラ。
【請求項1】
ロールと、ロールを転動可能に支持する支持部と、支持部に取り付けられた把手とを備えたハンドローラであって、支持部が把手の軸に対して回転自在であることを特徴とするハンドローラ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−302340(P2008−302340A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154024(P2007−154024)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000224123)藤倉化成株式会社 (124)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000224123)藤倉化成株式会社 (124)
【Fターム(参考)】
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