説明

ハードコートフィルム

【課題】透明フィルム基材に粘着液を塗布した際にその粘着液がハードコート層の表面側に及んでしまう、いわゆる粘着液の液裏周りを抑制するハードコートフィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】透明フィルム基材の一方の面に、弾性率が5.0GPa以上であるハードコート層が形成されたハードコートフィルムであって、前記ハードコートフィルムの両端において、前記ハードコート層側の面にナーリング部の凹凸が1cm当たり10〜140個施され、前記ハードコート層に施された凹部に対応するように、透明フィルム基材のハードコート層が形成された側と反対側の面に、前記ナーリング部の凸部が施されていることを特徴とするハードコートフィルム。また、前記ハードコート層は、少なくとも多官能アクリレートの1種を含有することが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、接着液の液裏周り防止性に優れたハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CRTの他、液晶テレビやプラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイ等種々の表示装置が開発されてきており、それらの画面サイズが大型化してきている。大画面化及び高画質化に伴って、視認性を改善するため反射防止層等が形成されたハードコートフィルムを表示装置前面に張り付けることが行われている。また、このような表示装置では、直接、手が触れたり、物が接触したりすることがあり傷が付き易い。そこで、通常は傷つき防止のためにハードコート層を透明フィルム基材上に形成したものや更にその上に反射防止層等が形成されたハードコート層付きハードコートフィルムが用いられてきている。
【0003】
このような表示装置用のハードコートフィルムとしては、特に最近、大画面化により1000mm以上、更に2000mm以上の幅広フィルムが必要となってきている。また、携帯電話やノートパソコン用として厚みが40μm程度の薄い透明フィルム基材が使用されるようになってきた。そのため、透明フィルム基材にはセルロースエステル等の樹脂フィルムが使用され、その上に光学機能層として、ハードコート層、反射防止層、防汚層または防眩層を形成することが行われている。
【0004】
上記のように透明フィルム基材が幅広となった場合、反射性能、着色度、位相差性能、視野拡大性能等において、色むらや周期的なむらが発生してしまう。
【0005】
このような問題に対して、例えば、特許文献1には、既にナーリング部を施した透明フィルム基材の上に、塗布したハードコート層または機能性層にさらにナーリング部を積層させたハードコートフィルムの製造方法が提案されている。
【0006】
一方で、幅広い透明フィルム基材は、光学機能層等を形成した後のハードコートフィルムを巻き取る段階で、ロールの巻き締まりの不均一な箇所が発生しやすくなる。このロールの不均一な巻き締まりは、フィルム表面同士の接着(以降、ブロッキングと称する。)も起こしやすくする。ブロッキングの発生したロールから繰り出したフィルムは、しわや傷などが発生し、表示装置への適応ができなくなり、収率の低下を招いてしまう。
【0007】
このような問題に対しては、機能性層の膜厚より2μm以上高いナーリング部が設けられたハードコートフィルムが特許文献2に提案されている。
【0008】
しかしながら、上記の特許文献1,2に開示されているハードコートフィルムは、ディスプレイ等の表示画面に該ハードコートフィルムを接着させるために塗布した粘着液が、透明フィルム基材の両端側からハードコート層側にまで及んでしまうといった、いわゆる液裏周りの問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4479260号
【特許文献2】特開2005−77795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、光学フィルムの透明フィルム基材側に粘着液を塗布した際に、その粘着液が塗布されていないハードコート層側に及んでしまう、いわゆる粘着液の液裏周りを抑制するハードコートフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために本願発明者らが鋭意検討を行った結果、透明フィルム基材に硬度の高いハードコート層が形成されたハードコートフィルムの両端部に特定数のエンボスを加工し、透明フィルム基材のハードコート層が形成された側と反対側の面にも凸部状のナーリング部を施した。その結果、ハードコートフィルムをディスプレイに貼り付けるために透明フィルム基材へ塗布した粘着液が、前記凸部のナーリング部によって堰き止められることにより、その粘着液の裏周りを抑止することのできるハードコートフィルムが得られることを見出し、本願発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本願発明にかかるハードコートフィルムは、透明フィルム基材の一方の面に、弾性率が5.0GPa以上であるハードコート層が形成されたハードコートフィルムであって、前記ハードコートフィルムの両端において、前記ハードコート層側の面にナーリング部の凹凸が1cm当たり10〜140個施され、前記ハードコート層に施された凹部に対応するように、透明フィルム基材のハードコート層が形成された側と反対側の面に、前記ナーリング部の凸部が施されていることを特徴とする。
【0013】
また、前記ハードコート層を設けた側と反対側の面に粘着液層が塗布されていることが好適である。
【0014】
また、前記粘着層は、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤から選ばれる少なくとも1種を含有することが好適である。
【0015】
また、前記ハードコート層は、少なくとも多官能アクリレートの1種を含有することが好適である。
【0016】
また、前記多官能アクリレートは、イソシアヌル酸変性アクリレートであることが好適である。
【0017】
また、前記透明フィルム基材の弾性率は3.0〜4.5GPaであることが好適である。
【0018】
また、前記透明フィルム基材は、易接付きポリエステルフィルムであることが好適である。
【発明の効果】
【0019】
本願発明によれば、粘着液の裏周りを抑制することができるハードコートフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るハードコートフィルムの平面図、及びナーリング部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本願発明に係る実施形態について説明するが、本願発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
本願発明にかかるハードコートフィルムは、透明フィルム基材の一方の面に、弾性率が5.0GPa以上であるハードコート層が形成されたハードコートフィルムであって、前記ハードコートフィルムの両端において、前記ハードコート層側の面にナーリング部の凹凸が1cm当たり10〜140個施され、前記ハードコート層に施された凹部に対応するように、透明フィルム基材のハードコート層が形成された側と反対側の面に、前記ナーリング部の凸部が施されていることを特徴とする。
【0023】
〔ナーリング部〕
まず、本願発明にかかるナーリング部について説明する。
【0024】
本願発明のハードコートフィルムにおけるナーリング部とは、ハードコートフィルムの巻き取り方向に対して、両端部に凹凸状の帯をエンボス加工等により付与されたものである。
【0025】
従来のハードコートフィルムにおいては、ロール状のフィルムを巻き取った際に発生するブロッキング防止等のために、ハードコート層が付与される側の基材フィルム側面に対してのみナーリング部が付与されているものがほとんどであった。一方で、本願発明のハードコートフィルムは、ハードコート層を透明フィルム基材の片面に形成したハードコートフィルム全体に対し、さらにエンボス加工を行うことによって、透明フィルム基材のハードコートが形成された側と反対側の面にもナーリング部の凸状部が施されたものである。
【0026】
本願発明のハードコートフィルムは、視認性改善、外傷防止等の理由によりディスプレイなどの表示装置に貼り付けられるものである。この表示装置に貼り付ける際において、ハードコートフィルムが形成されていない透明フィルム基材面に粘着液が塗布される。
【0027】
従来のハードコートフィルムでは、本願発明のように透明フィルム基材に凸状のナーリングが施されていないことから、透明フィルム基材に塗布された余剰の粘着液が、該粘着液が塗布されていないハードコート層側にまで流れてしまう、いわいる液裏周りが生じていた。
【0028】
しかしながら、本願発明においては、前述したような透明フィルム基材の凸状のナーリング部が、透明フィルム基材に塗布された粘着液を堰き止める役割を果たすため、その粘着液の裏周りを抑止することができる。
【0029】
前記ナーリング部の凹凸の形状については特に限定されず、配置についてもランダム状、直線状でもよく、種々なパターンのものが用いることができる。また、前記直線状のナーリング部を施した場合、一列直線状より複数列の直線状であることが好ましい。ナーリング部が幅手方向に複数存在していると、段階的に粘着液の流れを抑止することができるからである。
【0030】
これらのナーリング部の数は、1cm当たり10〜140個であり、好ましくは30〜120個である。10個より少ないと長尺巻き取り時に巻き芯部のナーリングが潰れてブロッキングが発生してしまい、140個より多いと押し込み力が不足しナーリング加工時に十分な高さを得ることができない。また、エンボス加工の突起として観察される部分のエンボス加工部全体に対する面積の割合は、15〜50%程度が好ましい。
【0031】
ナーリング部として凹凸を付与する方法としては、フィルムに加熱されたエンボスロールを押し当てることにより形成することができる。ナーリング部の付与加工は常温でも可能であるが、フィルムのガラス転移温度(Tg)+20℃以上、融点(Tm)+30℃以下で加工することが好ましい。
【0032】
エンボスロールには細かな凹凸が形成されており、これを押し当てることでフィルムに凹凸を形成し、端部を嵩高くすることが出来る。本願発明に係るエンボス高さは、エンボス部の凸部の総厚みから、ナーリング部形成前の基材の厚みを差し引いた厚みをいう。また、ハードコートフィルムを形成した場合には、エンボス部の凸部の総厚みから、ナーリング部形成前の基材とハードコート層の厚みを差し引いた厚みをいう。このエンボスロールの加工の段階で、凸部の高さが所望の高さになるよう凹凸に彫金したエンボスロールを用いることにより達成される。
【0033】
ナーリング部の幅は特に限定はないが、0.5cm〜3cm、好ましくは1〜2.5cm、特に好ましくは1.5〜2cmの幅である。ナーリング部の位置は、特に限定されないが、フィルム端部から0〜50mmの部分にエンボス加工が施されていることが好ましい。
【0034】
図1は、本願発明に係るナーリング部の概略図である。但し、図は一例であり、これに限定されるものではない。図1(a)は、本願発明のハードコートフィルムの平面図であり、図1(b)は、図1(a)のIB−IBで示される断面図である。
【0035】
本願発明のハードコートフィルムは、例えば次のように製造される。
【0036】
まず、透明基材フィルム3の製造時にその両端部に上記エンボスロールを押し当てることにより、ナーリング部を前もって設ける。この透明基材フィルムに対して設けるナーリング部は付与されていても、されていなくてもよい。次に、透明フィルム基材3に対して、ハードコート層2を形成させた後、ハードコート層2側には凸状のナーリング部5、凹状のナーリング部4’を施すと同時に、透明フィルム基材2側に凸状のナーリング部4を設ける。これらのナーリング部は、透明フィルム基材2にハードコート層3を形成した後、巻き取り前に加熱したエンボスロールを用い設ければよい。
【0037】
そして本願発明の効果は、透明フィルム基材3のハードコート層2が形成された側と反対側の面に凸部のナーリング部4が設けられていれば得られる。つまり、表示装置等を本発明のハードコートフィルム1を表示装置等に貼り付ける際、該フィルム1に粘着液層6を塗布するが、この粘着液がナーリング部4によってその粘着液の裏周りを抑止している。
【0038】
透明フィルム基材ハードコート層上のナーリング部5の数が僅かな場合や、存在しない場合では、ハードコートフィルムをロール状フィルムとして巻いた時にハードコートフィルムにしわや傷などが発生してしまう。
【0039】
なお、本願発明では、ハードコート層側の凸部ナーリング部5、及び凹部ナーリング部4’は、それぞれ別の位置に設けられていることが好ましい。これらのナーリング部がそれぞれ別の位置に設けられていることで、効果的に前記液裏周り抑止効果を奏し、かつブロッキング防止効果についても相乗的に奏することになる。
【0040】
また、透明フィルム基材2は、易接着層付きの基材フィルムであってもよい。易接着層付きの基材フィルムであれば、そのままハードコート層を熱圧着させるだけで、透明フィルム基材2にハードコート層3を容易に形成させることができる。
【0041】
また、ハードコート層の弾性率は5.0GPa以上である。ハードコート層の弾性率が5.0GPaより小さい場合には、ハードコートフィルムをロール状フィルムとして巻いた時に、巻き圧力によるエンボス押されが原因となってナーリング部4がつぶれてしまい、その結果粘着液の液裏周りを抑止できるだけのエンボス高さを保持することができなくなってしまう。
【0042】
ナーリング部4の厚みは、1〜20μmであることが好ましく、3〜10μmであることがより好ましい。ナーリング部4の厚みが1μmより小さいと、ゆず肌と呼ばれるフィルム表面の微少な凹凸故障が発生しやすくなり、液裏周りが抑止できなくなる。また、20μmより大きいと巻き端部の厚みが増し(耳立ち故障)、フィルムが変形し巻き姿が劣化するため好ましくない。
【0043】
ハードコート層と透明フィルム基材とが積層されたハードコートフィルムの幅は1m以上であることが、生産効率及び反射防止フィルムを表示装置に適用する場合の利用効率が高く、好ましくは1.3〜4mである。このような広幅のハードコートフィルムを用いる場合、上記ナーリング部4,4’、及びナーリング部5は、透明フィルム基材端部だけではなく、さらにその内側にも設けることが好ましい。即ち、複数列のナーリング部を設けることが好ましい。例えば、ハードコートフィルムの中央にナーリング部を設けると、広幅の透明フィルム基材中央に発生し得るブロッキングを効果的に防止することができる。
【0044】
本願発明において、ハードコートフィルムをロール状に巻き取った時の巻き芯側〜巻き中央部〜巻き外側の均一性を高めるため、巻き芯側のナーリング部の厚みが巻き外側のナーリング部の厚みよりも厚く、該厚みの差が1〜10μmの範囲にすることが好ましく、3〜8μmの範囲にすることがより好ましい。例えば、巻き芯側エンボス厚み(15μm)/巻き中央部エンボス厚み(10μm)/巻き外側エンボス厚み(5μm)等の組み合わせになるように、エンボスロールを変更して加工することにより、巻き芯側方向への巻き圧力によるエンボス押されがあっても、所望のエンボス厚みを確保することが出来る。
【0045】
(加熱処理)
これらのナーリング部を有するハードコートフィルムをロール状に巻き取り、ロール状に巻き取った状態で、42℃以上で、3日間以上の加熱処理を行う時に、該加熱処理時に10℃〜30℃/日の昇温速度で加熱することが好ましい。また、処理温度は50℃〜120℃の範囲が好ましく、期間は3日〜30日であることが好ましい。
【0046】
加熱処理時の昇温速度が30℃/日を超えると、ハードコートフィルムの急激な膨張が起こり巻き芯近くにしわが入りやすくなるので好ましくない。また10℃/日未満であると生産性が著しく劣ることから現実的ではない。
【0047】
昇温パターンに特に制限はなく、最適化するために直線的、曲線的、段階的なパターンを取ってもよい。また、昇温期間中に一時的な温度降下があってもよい。
【0048】
加熱処理後の降温には特に制限はないが、昇温と同様に10〜30℃/日の降温パターンで温度を下げることが、ハードコートフィルムの収縮を均一にする上で好ましい。
【0049】
加熱処理を安定して行うためには、温湿度が調整可能な場所で行うことが好ましく、塵のないクリーンルーム等の加熱処理室で行うことが特に好ましい。
【0050】
これらのナーリング部を有するハードコート層またはハードコート層及び機能性層がコーティングされたハードコートフィルムをロール状に巻き取る際の、巻きコアとしては、円筒上のコアであれは、どのような材質のものであってもよいが、好ましくは中空プラスチックコアであり、プラスチック材料としては加熱処理温度に耐える耐熱性プラスチックであればどのようなものであっても良く、例えばフェノール樹脂、キシレン樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂が挙げられる。またガラス繊維などの充填材により強化した熱硬化性樹脂が好ましい。
【0051】
これらの巻きコアへの巻き数は、100巻き以上であることが好ましく、500巻き以上であることが更に好ましく、巻き厚は5cm以上であることが好ましく、フィルム基材の幅は80cm以上であることが好ましく、1m以上であることが特に好ましい。
【0052】
この様にして長巻きの透明プラスチックフィルム基材上にハードコート層またはハードコート層及び機能性層がコーティングされ、プラスチックコアに巻き取られたロールを、巻き取った状態で前記加熱処理を行う時、該ロールを回転させることが好ましく、回転は、1分間に1回転以下の速度が好ましく、連続でも良く断続的な回転であっても良い。また、加熱期間中に該ロールの巻き替えを1回以上行うことが好ましい。
【0053】
〔ハードコート層〕
本願発明に係るハードコート層について説明する。
【0054】
本願発明に係るハードコート層は、透明フィルム基材の一方の面に設けられる。
【0055】
なお、本願発明におけるハードコートフィルムとは、鉛筆硬度がH〜8Hであるフィルムをいう。特に好ましくは2H〜6Hであることが好ましい。鉛筆硬度は、作製したハードコートフィルムを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS S 6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K 5400が規定する鉛筆硬度評価方法に従い測定した値である。
【0056】
(多官能アクリレート)
ハードコート層に含有される組成物として、一般に紫外線のような活性光線硬化型樹脂を用いるが、本願発明では、このような活性光線硬化型樹脂として多官能アクリレートを含有することが好ましい。該多官能アクリレートは、ペンタエリスリトール多官能アクリレート、ジペンタエリスリトール多官能アクリレート、ペンタエリスリトール多官能メタクリレート、及びジペンタエリスリトール多官能メタクリレートよりなる群から選ばれることが好ましい。ここで、多官能アクリレートとは、分子中に2個以上のアクリロイルオキシ基及び/またはメタクロイルオキシ基を有する化合物である。
【0057】
多官能アクリレートのモノマーとしては、例えばエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、グリセリントリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ペンタグリセロールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、グリセリントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、イソボロニルアクリレート等が好ましく挙げられる。これらの化合物は、それぞれ単独または2種以上を混合して用いられる。また、上記モノマーの2量体、3量体等のオリゴマーであってもよい。
【0058】
また、以上の(メタ)アクリレートの他に、イソシアヌル酸変性アクリレートを含有することが好ましい。例えば、変性イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、変性イソシアヌル酸EO変性トリアクリレートなどから選ばれる。
【0059】
活性光線硬化型樹脂の添加量は、ハードコート層組成物中において固形分中の15質量%以上70質量%未満であることが好ましい。
【0060】
活性光線硬化型樹脂の硬化促進のために、光重合開始剤と分子中に重合可能な不飽和結合を2個以上有するアクリル系化合物とを質量比で20:100〜0.01:100含有することが好ましい。
【0061】
光重合開始剤としては、具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0062】
本願発明に係るハードコート層には、公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂またはゼラチン等の親水性樹脂等のバインダを上記活性光線硬化型樹脂に混合して使用することができる。これらの樹脂は、その分子中に極性基を持っていることが好ましい。極性基としては、−COOM、−OH、−NR、−NRX、−SOM、−OSOM、−PO、−OPOM(ここで、Mは水素原子、アルカリ金属またはアンモニウム基を、Xはアミン塩を形成する酸を、Rは水素原子、アルキル基を表す)等を挙げることができる。
【0063】
本願発明において使用し得る活性光線硬化型樹脂の市販品としては、アデカオプトマーKR・BYシリーズ:KR−400、KR−410、KR−550、KR−566、KR−567、BY−320B(旭電化(株)製);コーエイハードA−101−KK、A−101−WS、C−302、C−401−N、C−501、M−101、M−102、T−102、D−102、NS−101、FT−102Q8、MAG−1−P20、AG−106、M−101−C(広栄化学(株)製);セイカビームPHC2210(S)、PHC X−9(K−3)、PHC2213、DP−10、DP−20、DP−30、P1000、P1100、P1200、P1300、P1400、P1500、P1600、SCR900(大日精化工業(株)製);KRM7033、KRM7039、KRM7130、KRM7131、UVECRYL29201、UVECRYL29202(ダイセル・ユーシービー(株)製);RC−5015、RC−5016、RC−5020、RC−5031、RC−5100、RC−5102、RC−5120、RC−5122、RC−5152、RC−5171、RC−5180、RC−5181(大日本インキ化学工業(株)製);オーレックスNo.340クリヤ(中国塗料(株)製);サンラッドH−601、RC−750、RC−700、RC−600、RC−500、RC−611、RC−612(三洋化成工業(株)製);SP−1509、SP−1507(昭和高分子(株)製);RCC−15C(グレース・ジャパン(株)製)、アロニックスM−6100、M−8030、M−8060(東亞合成(株)製);B420(新中村化学工業(株)製)等を適宜選択して利用できる。
【0064】
また、ハードコート層には耐傷性、滑り性や屈折率を調整するために無機化合物または有機化合物の微粒子を含んでもよい。
【0065】
ハードコート層に使用される無機微粒子としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、ITO、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。特に、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等が好ましく用いられる。
【0066】
また有機粒子としては、ポリメタアクリル酸メチルアクリレート樹脂粉末、アクリルスチレン系樹脂粉末、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末、シリコン系樹脂粉末、ポリスチレン系樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、ベンゾグアナミン系樹脂粉末、メラミン系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、またはポリ弗化エチレン系樹脂粉末等紫外線硬化性樹脂組成物を加えることができる。特に好ましくは、架橋ポリスチレン粒子(例えば、綜研化学製SX−130H、SX−200H、SX−350H)、ポリメチルメタクリレート系粒子(例えば、綜研化学製MX150、MX300)、フッ素含有アクリル樹脂微粒子が挙げらる。フッ素含有アクリル樹脂微粒子としては、例えば日本ペイント製:FS−701等の市販品が挙げられる。また、アクリル粒子として、例えば日本ペイント製:S−4000,アクリル−スチレン粒子として、例えば日本ペイント製:S−1200、MG−251等が挙げられる。
【0067】
これらの微粒子粉末の平均粒径としては、0.01〜5μmが好ましく0.1〜5.0μm、更に、0.1〜4.0μmであることが特に好ましい。また、粒径の異なる2種以上の微粒子を含有することが好ましい。紫外線硬化性樹脂組成物と微粒子の割合は、樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜30質量部となるように配合することが望ましい。 ハードコート層の耐熱性を高めるために、光硬化反応を抑制しないような酸化防止剤を選んで用いることができる。例えば、ヒンダードフェノール誘導体、チオプロピオン酸誘導体、ホスファイト誘導体等を挙げることができる。具体的には、例えば、4,4′−チオビス(6−tert−3−メチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)メシチレン、ジ−オクタデシル−4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルベンジルホスフェート等を挙げることができる。 これらのハードコート層はグラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の方法で塗設することができる。塗布後、加熱乾燥し、UV硬化処理を行う。
【0068】
ハードコート層塗布液には溶媒が含まれていてもよく、必要に応じて適宜含有し、希釈されたものであってもよい。塗布液に含有される有機溶媒としては、例えば、炭化水素類(トルエン、キシレン、)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル)、グリコールエーテル類、その他の有機溶媒の中から適宜選択し、またはこれらを混合し利用できる。プロピレングリコールモノアルキルエーテル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)またはプロピレングリコールモノアルキルエーテル酢酸エステル(アルキル基の炭素原子数として1〜4)等を5質量%以上、より好ましくは5〜80質量%以上含有する上記有機溶媒を用いるのが好ましい。
【0069】
ハードコート層は、JIS B 0601で規定される中心線平均粗さ(Ra)が0.001〜0.1μmのクリアハードコート層、または微粒子等を添加しRaが0.1〜1μmに調整された防眩性ハードコート層であってもよい。中心線平均粗さ(Ra)は光干渉式の表面粗さ測定器で測定することが好ましく、例えばWYKO社製非接触表面微細形状計測装置WYKO NT−2000を用いて測定することができる。
【0070】
更にハードコート層には、シリコーン系界面活性剤或いはポリオキシエーテル化合物を含有させることが好ましい。シリコーン系界面活性剤としてはポリエーテル変性シリコーンが好ましく、具体的には、BYK−UV3500,BYK−UV3510、BYK−333、BYK−331、BYK−337(ビックケミ−ジャパン社製)、TSF4440、TSF4445、TSF4446、TSF4452、TSF4460(GE東芝シリコーン製)、KF−351、KF−351A、KF−352、KF−353、KF−354、KF−355、KF−615、KF−618、KF−945、KF−6004(ポリエーテル変性シリコーンオイル;信越化学工業社製)、等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0071】
また、ポリオキシエーテル化合物の中では、好ましくはポリオキシエチレンオレイルエーテル化合物であり、一般的に一般式(α)で表される化合物である。
【0072】
一般式(α):C1835−O(CO)nH (式中、nは2〜40を表す。)
【0073】
オレイル部分に対するエチレンオキシドの平均付加個数(n)は、2〜40であり、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜9、さらに好ましくは2〜8である。また一般式(α)の化合物はエチレンオキシドとオレイルアルコールとを反応させて得られる。
【0074】
具体的商品としては、エマルゲン404(ポリオキシエチレン(4)オレイルエーテル)、エマルゲン408(ポリオキシエチレン(8)オレイルエーテル)、エマルゲン409P(ポリオキシエチレン(9)オレイルエーテル)、エマルゲン420(ポリオキシエチレン(13)オレイルエーテル)、エマルゲン430(ポリオキシエチレン(30)オレイルエーテル)以上花王社製、日本油脂製NOFABLEEAO−9905(ポリオキシエチレン(5)オレイルエーテル)等が挙げられる。
【0075】
尚、( )はnの数字を表す。非イオン性のポリオキシエーテル化合物は単独或いは2種以上を併用しても良い。
【0076】
これらの成分は、これらは塗布性を高めるために、塗布液中の固形分成分に対し、0.01〜3質量%の範囲で添加することが好ましい。
【0077】
また、ハードコート層にはフッ素−シロキサングラフトポリマーを含有しても良い。
【0078】
フッ素−シロキサングラフトポリマーとは、少なくともフッ素系樹脂に、シロキサン及び/またはオルガノシロキサン単体を含むポリシロキサン及び/またはオルガノポリシロキサンをグラフト化させて得られる共重合体のポリマーをいう。市販品としては、富士化成工業株式会社製のZX−022H、ZX−007C、ZX−049、ZX−047−D等を挙げることができる。またこれら化合物は混合して用いても良い。フッ素−シロキサングラフトポリマーは活性光線硬化型樹脂との含有質量比率をフッ素−シロキサングラフトポリマー:エネルギー活性線硬化樹脂=0.05:100〜5.00:100で用いることが塗布液中の安定性から好ましい。
【0079】
また、ハードコート層は、2層以上の重層構造を有していてもよい。その中の1層は例えば導電性微粒子、π共役系導電性ポリマー、または、イオン性ポリマーを含有する所謂導電性層としてもよい。π共役系導電性ポリマーとしては、ポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−N−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。これらはそれぞれ単独でも良いし、2種からなる共重合体でも好適に用いることができる。
【0080】
また、イオン性ポリマーは種々の表示素子に対する色補正用フィルターとして色調調整機能を有する色調調整剤(染料もしくは顔料等)を含有させてもよいし、また電磁波遮断剤または赤外線吸収剤等を含有させそれぞれの機能を有するようにすることは好ましい。
【0081】
ハードコート層塗布液の塗布方法としては、前述のものを用いることができる。塗布量はウェット膜厚として0.1〜40μmが適当で、好ましくは、0.5〜30μmである。また、ドライ膜厚としては平均膜厚0.1〜30μm、好ましくは1〜20μmである。
【0082】
ハードコート層は塗布乾燥後に、紫外線を照射するのがよく、必要な活性光線の照射量を得るための照射時間としては、0.1秒〜1分程度がよく、紫外線硬化性樹脂の硬化効率または作業効率の観点から0.1〜10秒がより好ましい。
【0083】
〔透明フィルム基材〕
本願発明のハードコートフィルムの製造に用いられる基材フィルムとしては、製造が容易であること、ハードコート層等、光学的に等方性であること、光学的に透明性であることが好ましい。
【0084】
以上の性質を有していれば何れでもよく、例えば、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルローストリアセテートフィルム等のセルロースエステル系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンも含む)系フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルムまたはアクリルフィルム等を挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。これらの内セルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタックKC8UX2M、KC4UX2M、KC4UY、KC8UT、KC5UN、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4(以上、コニカミノルタオプト(株)製))、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)フィルム、シクロオレフィンポリマーフィルムが好ましく、特に好ましくは、本願発明の目的効果がより良く発揮されること、製造上、コスト面、透明性、接着性等の面から、ポリエステル系フィルムである。
【0085】
また、本願発明の透明フィルム基材は、一方の面または両面に易接着層が付与されているものであることが好ましい。易接着層の存在により、透明フィルム基材とハードコート層、又は透明フィルム基材と表示装置等との密着性を向上させることができる。
【0086】
易接着層の厚みは好ましくは10〜200nm、さらに好ましくは20〜150nmである。易接着層の厚みが10nm未満であると密着性を向上させる効果が乏しく、200nmを超えると易接着層の凝集破壊が発生しやすくなり密着性が低下することがあり好ましくない。
【0087】
易接着層の構成材としては、ポリエステルフィルムとの接着性に優れたものであることが好ましく、具体的には例えばポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタンアクリル樹脂、シリコンアクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリシロキサン樹脂を用いることができる。これらの樹脂は単独で用いても良く、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0088】
〔粘着液層〕
本実施形態に係るハードコートフィルムに塗布された粘着液層は、前記ハードコート層を透明フィルム基材に形成させたフィルムを、表示装置等と貼り付けるためのものである。
【0089】
本願発明の粘着液層に用いられる粘着液は、公知のハードコートフィルム貼付け用粘着剤であれば特に限定されないが、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤から選ばれる少なくとも1種を含有するものであることが好ましい。
【0090】
本発明に用いる粘着剤層に使用される粘着剤には、前記公知のアクリル系、シリコーン系、ウレタン系、ゴム系の粘着樹脂を使用することができる。これらのうち、反復単位として炭素数2〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体を主たる単量体成分として含有するアクリル系共重合体が、耐光性・耐熱性の点から好ましい。
【0091】
これらのうち、炭素数が4〜9のアルキル側鎖を有するアルキルメタクリレート又は炭素数が4〜9のアルキル側鎖を有するアルキルアクリレートが好ましく、炭素数が4〜9のアルキル側鎖を有するアルキルアクリレートがより好ましい。当該範囲の炭素数のアルキル側鎖を有するアルキル(メタ)アクリレートを使用することで、好適な粘着力を確保しやすくなる。
【実施例】
【0092】
以下に、実施例により本願発明をさらに具体的に説明するが、本願発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0093】
(実施例1)
長さ2600m、幅1.4m、膜厚100μmのポリエステルフィルムを下記のように作製した。この透明長尺基材フィルムに、下記に示すような第1ナーリング部を設けた。次いで該ポリエステルフィルムの一方の面にハードコート層を設け、実施例1のハードコートフィルムを作製した。
【0094】
《ポリエステル系フィルムの作製》
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を押出機にて290℃で溶融し、Tダイからシート状に押出し、キャストドラムで冷却した。その後、未延伸フィルムを、ロール延伸装置を使用して、延伸温度120℃、延伸倍率5倍で縦方向に延伸した。次いで、得られた縦延伸フィルムに易接層を塗布した後、乾燥させ、横延伸装置で延伸温度110℃、延伸倍率3.0倍で横方向に延伸してポリエステルフィルムを作製した。
【0095】
《ハードコート層の塗設》
前記ポリエステルフィルムの一方の面に下記ハードコート層組成物をダイコートし、80℃で5分間乾燥した後160mJ/cm2の紫外線を照射するようにハードコート層を設け、ハードコートフィルムを作製した。
【0096】
《ハードコート層組成物》
下記材料を攪拌、混合しハードコート層塗布組成物とした。
【0097】
ペンタエリスリトールトリ/テトラアクリレート
(NKエステルA−TMM−3L,新中村化学工業株式会社製) 100質量部
イルガキュア184(チバ・ジャパン株式会社製) 2質量部
ポリエーテル変性ポリジメチル シロキサン
(BYK−UV3510、ビックケミー・ジャパン株式会社製) 1質量部
シクロヘキサノン 10質量部
メチルエチルケトン 93質量部
このハードコート層の弾性率を測定したところ5.5GPaであった。
【0098】
《ナーリング部の作製》
上記のように作製したハードコートフィルムの両端部に、加熱したエンボスロールを押し当て、ポリエステルフィルムのハードコート層が形成された側と反対側の面に対して凸部になる(裏面が凸状となる)ようにナーリング部を1cm当たり70個となるようにに作製した。このときのエンボス高さは7μm、幅15mmであった。
【0099】
なお、本実施例におけるエンボス高さとは、エンボス部の凸部総厚から、ナーリング部形成前のポリエステルフィルムとハードコートフィルムとの膜厚を除いた高さである。
【0100】
(実施例2)
ナーリング部の1cm当たり20個した以外は、実施例1と同様の方法にて実施例2のハードコートフィルムを製造した。
【0101】
(実施例3)
ナーリング部の配置を1cm当たり140個となるように作製した以外は、実施例1と同様の方法にて実施例3のハードコートフィルムを製造した。
【0102】
(比較例1)
実施例1においてハードコートフィルムを積層しなかったものを比較例1とした。
【0103】
(比較例2)
ハードコート層の弾性率を4.5GPaとした以外は、実施例3と同様の方法にて比較例2のハードコートフィルムを製造した。
【0104】
(比較例3)
実施例3と同様の方法にてハードコートフィルムを製造したが、ポリエステルフィルムのハードコート層が形成された側と反対側の面に対して凹部になる(裏面が凹状となる)ようにナーリング部を施したものを比較例3とした。
【0105】
(比較例4)
ナーリング部の密度を1cm当たり70個となるように製造した以外は、実施例1と同様の方法にて実施例比較例4のハードコートフィルムを製造した。
【0106】
(比較例5)
ナーリング部の密度を1cm当たり160個となるように製造した以外は、実施例1と同様の方法にて比較例5のハードコートフィルムを製造した。
【0107】
以上の各シートについて下記の評価を行った。
【0108】
《評価》
〈粘着剤の裏周り防止効果〉
片面ハードコートフィルム基材のハードコート面とは逆の面に粘度100(mPa・s/25℃)のアクリル系粘着剤25g/mの付き量でワイヤーバー塗布を行った際の液の裏周り発生有無を確認した。
【0109】
◎:裏周りが全く発生せず、かつ濡れ広がりがナーリング部の幅の30%未満の幅のもの。
○:裏周りが全く発生せず、かつ濡れ広がりがナーリング部の幅の30%以上、100%未満のもの。
×:濡れ広がりにより裏周りが発生したもの。
【0110】
〈ハードコートフィルム巻き取り後のエンボス高さ〉
ハードコートフィルムを巻き取った後のエンボス高さを接触式卓上型厚み計測装置(山文電気社製)によって測定した。
【0111】
以上の結果を下記表1に示す。
【0112】
【表1】

【0113】
[考察]
表1の結果より、弾性率が5.0GPa以上であるハードコート層が形成され、透明フィルム基材のハードコート層が形成された側と反対側の面に、前記ナーリング部の凸部が施されている実施例1〜3のハードコートフィルムは、粘着剤の裏周りを抑止できていることが明らかとなった。特に、ナーリング部の密度を70個/cmとした場合(実施例1)は、140個/cmとした場合(実施例3)、20個/cmとした場合(実施例2)に比べて、巻きとり後においてもナーリング部が潰されることはなく、液裏周りの抑止効果に優れることが分かった。
【0114】
一方で、本発明のようなハードコート層を積層させなかったナーリング部を施していいない比較例1は、ハードコート面の反対委側の面に凸部が無いため、液裏周りを全く防止することができなかった。また、ハードコート層を積層させてはいたが、ハードコート層の弾性率が5GPaより小さい場合(比較例2)には、ハードコートフィルムを巻きとった際に該ナーリング部がつぶれてしまい、粘着剤の裏周りを防止することはできなかった。
【0115】
また、裏面に凸状でない、つまり透明フィルム基材のハードコート層が形成された側と反対側の面に凸状ではなく凹状のナーリング部を施した比較例3についても、粘着剤の裏周りを堰止める凸状のナーリング部が存在しないため、粘着剤の裏周りを抑止できなかった。
【0116】
また、ナーリング部の密度が5個/cmの場合(比較例4)にはハードコートフィルムを巻き取った際にナーリング部が潰れてしまい、粘着剤の裏周りを防止することができなかった。さらに、ナーリング部の密度が160個/cmの場合(比較例5)にはナーリング加工時に2μmの高さしか得ることができず、粘着剤の裏周りを防止することができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明フィルム基材の一方の面に、弾性率が5.0GPa以上であるハードコート層が形成されたハードコートフィルムであって、
前記ハードコートフィルムの両端において、前記ハードコート層側の面にナーリング部の凹凸が1cm当たり10〜140個施され、
前記ハードコート層に施された凹部に対応するように、透明フィルム基材のハードコート層が形成された側と反対側の面に、前記ナーリング部の凸部が施されていることを特徴とするハードコートフィルム。
【請求項2】
前記ハードコート層を設けた側と反対側の面に粘着液層が塗布されていることを特徴とする請求項1に記載のハードコートフィルム。
【請求項3】
前記粘着液層が、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項2に記載のハードコートフィルム。
【請求項4】
前記ハードコート層が、少なくとも多官能(メタ)アクリレートの1種を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【請求項5】
前記多官能アクリレートが、イソシアヌル酸変性アクリレートであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【請求項6】
前記透明フィルム基材の弾性率が、3.0〜4.5GPaであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【請求項7】
前記透明フィルム基材が、易接付きポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のハードコートフィルム。

【図1】
image rotate