説明

ハードディスクドライブのデータ読みとり検査方法

【課題】短時間で正確にハードディスクドライブ(HDD)の製品良否を判定する。
【解決手段】HDDに記録されたデータの抜き取り領域を指定する検査領域設定工程と、HDDから取得するデータのサイズを設定するデータサイズ設定工程と、HDDから取得するデータの開始セクターを決定する開始セクター決定工程と、開始セクター決定工程で決定した開始セクターからデータサイズ設定工程で設定したサイズ分の第1データおよび第2データを読み取るデータ取得工程と、データ取得工程で読み取った第1データを開始セクターから書き込むデータ記録工程と、再び開始セクターから第2データを読み取って第1データと比較するデータ比較工程を有し、データサイズ設定工程で設定したデータのサイズと開始セクター決定工程で決定した開始セクターを用いて、検査領域設定工程で設定された抜き取り領域に記録されたデータを、繰り返し抜き取って比較する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル電子機器へ実装したハードディスクドライブの製品良否をデータ読みとりによって判定する検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスクドライブの軽量小型化や大記憶容量化、アクセスの高速化が進むにつれ、ノートパソコンは勿論のこと、携帯音楽プレーヤーやデジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラなどにも内蔵され、これらの携帯を前提としたデジタル電子機器は、屋外への持ち出しも盛んに行われるようになった。
【0003】
しかしながらハードディスクを内蔵したデジタル電子機器の製造工程においては、ハードディスクの運搬中やデジタル電子機器の筐体への実装中、さらにはハードディスクを実装したデジタル電子機器の品質検査中に加えられる衝撃や振動などの加振ストレスによって故障するケースがあり、デジタル電子機器の製造過程においてハードディスクドライブの製品良否を検査する必要があった。
【0004】
図4は、ハードディスクドライブの概念的な構成図である。
【0005】
図4において、ハードディスクドライブ400には、データを記録するための磁性体を両面に塗布した金属製のディスクであるプラッタ401と、プラッタ401を高速に回転させるためのモータ402と、アーム405の先端にある磁気ヘッド403をプラッタ401上の任意の位置に移動させるためのアクチュエータ404がある。またハードディスクドライブの制御方式によっては、ハードディスクドライブ400が非動作の場合に、アクチュエータ404が磁気ヘッド403をプラッタ401の外周にある位置416に退避させるものもある。
【0006】
またハードディスクドライブ400を実装するデジタル電子機器にはCPU406とメモリ411があり、メモリ411にはOS412が常駐している。OS412がハードディスクドライブ400対してデータのアクセスを要求すると、CPU406からコマンド408が発行され、HDDコントローラ407はアクチュエータ404を所定の位置に移動して磁気ヘッド403経由でデータを読み出す。そして処理速度を向上させるためのメモリ409にデータ410を一時蓄えた後、デジタル電子機器のメモリ411にデータ413を転送する。
【0007】
図4(A)はシリンダを横から見た図である。ハードディスクドライブ400は複数のプラッタ401を同軸に配置し、シリンダ414が形成される。シリンダ数を増加させることによって、ハードディスクドライブの記憶容量の大容量化が可能である。
【0008】
図4(B)はプラッタを横から見た図である。プラッタ421の両面上には記録されたデータをアクセスするために、磁気ヘッド419と磁気ヘッド420が配置され、アクチュエータ415に接合されている。
【0009】
また図4(C)はプラッタを上から見た図である。プラッタの表面上には、同心円状に分割配置されたトラック417が複数あり、またトラック417には放射状に分割配置されたセクター418があり、これがハードディスクドライブにおける記録単位となる。
【0010】
図5は、衝撃によってハードディスクドライブに動作不良が発生する仕組みを説明した図である。
【0011】
図5(A)は、図4(B)の磁気ヘッド419付近を拡大したものである。
【0012】
図5(A)において、図4(B)にあるプラッタ421は金属製のディスク基板500にデータを記録するための磁性体501が塗布されている。また図4(B)にある磁気ヘッド419にはスライダ502が装着されており、スライダ502はアーム503に接合され、図4(A)にあるアクチュエータ415によって支えられている。
【0013】
ディスク基板500は毎秒数百回転という猛烈な速度で回転しており、図4(B)にある磁気ヘッド419はスライダ502を使い、ディスク基板500が高速に回転する際の空気の流れを利用して磁性体501上を浮上している。その浮上高504は0.1μm程度という極めて小さいものである。
【0014】
なお、ディスク基板500がスライダ502を浮上させるだけの回転数に満たない場合、当然、スライダ502は浮力を発生することが出来ない。このため、図4(B)にある磁気ヘッド419は磁性体501に接触するか、またはディスク基板500上に設けられた磁気ヘッドの退避領域であるCSSゾーン(Contact Start Stop Zone)に移動して接触していた(この方式はCSS方式と呼ばれている)。
【0015】
また、携帯を前提としたデジタル電子機器に実装するハードディスクドライブでは、ハードディスクドライブが非動作の場合や、ハードディスクドライブに実装された衝撃センサーが衝撃を検知した場合、図4のようにプラッタ401の外周である位置416に、磁気ヘッドを待機させる機構をもつものも多い(この方式はロード/アンロード方式と呼ばれている)。
【0016】
図5(B)は、衝撃や振動によってスライダと磁性体が接触した様子を示した図である。ハードディスクドライブが有する耐衝撃許容値には限界があり、その耐衝撃許容値を超える衝撃や振動が動作中(ディスク基板500が回転中)のハードディスクに与えられると、状態505や状態506のように磁性体501とスライダ502が接触し、その結果として磁性体501上に配置されたトラック507付近はアクセス不能となるほどの致命的な損傷を受けてしまう(ディスク基板500が回転しているため、スライダ504と磁性体501の接触により、円形の接触痕ができる)。また耐衝撃許容値を超える衝撃や振動が非動作中(ディスク基板500が停止中)のハードディスクに与えられた場合でも、状態505や状態506のように磁性体501とスライダ502が接触し、その結果として磁性体501上に配置されたトラックに存在するセクター508付近はアクセス不能となるほどの致命的な損傷を受けてしまう(ディスク基板500が停止しているため、スライダ504と磁性体501の接触により、点状の接触痕ができる)場合もあった。
【0017】
よって従来から、ハードディスクドライブの製品良否を検査する方法として、ハードディスクドライブの記憶領域にあるすべてのセクターに対して、データ読み取りとデータ書き込み、およびデータの比較を行っていた。しかしながらこの方法による検査は所要時間が長いため、各製造工程において実施すると生産効率が著しく低下する短所があった。また製造の最終工程において実施した場合は、不良品を検出しても、どの工程において不良が発生したのかが不明確になっていた。また完成した製品からハードディスクを交換するために多くの重複作業が発生してしまうといった課題があった。
【0018】
さらには、年々ハードディスクの記憶容量の増加に伴って、検査の所要時間が増加するといった課題もあった。
【0019】
一方、従来から、ハードディスクに関連する製品の生産管理の効率化に関する工夫は種々なされてきている。
【0020】
例えば特許文献1には、製造工程における品質管理の効率化のためにハードディスクに工程進捗情報や使用前履歴情報を記録するシステムが提案されている。
【0021】
また特許文献2には、効率よくハードディスクの生産工程管理を行うために、ディスクドライブのシリアル番号をディスクに書き込むことで、低コストを達成する工程管理方法が提案されている。
【0022】
また特許文献3には、製品ごとに内容の異なる作業指示と製品個体情報登録作業を効率的におこなうための生産管理システムが提案されている。
【0023】
また特許文献4には、ハードディスクドライブをランダムに着脱することを可能にしたハードディスクドライブのテスト方法が提案されている。
【特許文献1】特開平5−54549号公報
【特許文献2】特開平11−312371号公報
【特許文献3】特開2001−236114号公報
【特許文献4】特開2004−342116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら特許文献1〜4を含め、従来の技術では、本発明が解決しようとする課題を解決することはできなかった。
【0025】
本発明は、短時間で正確にハードディスクドライブの製品良否を判定する検査方法を提供することを第1の目的とする。
【0026】
また、ハードディスクドライブの記憶容量が増加した場合でも同一の所要時間で、ハードディスクドライブの製品良否を判定する検査方法を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記課題を解決するために本発明のハードディスクドライブの製品良否の検査方法では、デジタル電子機器へ実装したハードディスクドライブの製品良否をデータ読みとりによって判定する検査方法であって、ハードディスクドライブに記録されたデータの抜き取り領域を指定する検査領域設定工程と、ハードディスクドライブから取得するデータの開始セクターを決定する開始セクター決定工程と、前記開始セクター決定工程で決定した開始セクターから取得するデータのサイズを設定するデータサイズ設定工程と、開始セクター決定工程で決定した開始セクターからデータサイズ設定工程で設定したサイズ分の第1データおよび第2データを読み取るデータ取得工程と、データ取得工程で読み取った第1データを開始セクターから書き込むデータ記録工程と、再び開始セクターから第2データを読み取って第1データと比較するデータ比較工程を有し、データサイズ設定工程で設定したデータのサイズと開始セクター決定工程で決定した開始セクターを用いて、検査領域設定工程で設定された抜き取り領域に記録されたデータを、繰り返し抜き取って比較することで、比較検査の所要時間を短縮することができる。
【0028】
また、データサイズ設定工程で設定するデータのサイズは、ハードディスクドライブを構成するプラッタの表面上を同心円状に分割配置されたトラックの記録サイズで最小値未満の数値とすることで、検査に適したデータの読み取りサイズの上限を規定することができる。なおこことで言う、検査に適したデータの読み取りサイズとは、繰り返し抜き取り比較を行った結果、検査領域設定工程で設定した抜き取り領域に含まれるトラックごとに、少なくとも1つのセクターに対して、データ比較工程が第1データと第2データの比較を実行することを保証できる読み取りサイズのことである。
【0029】
さらに、開始セクター決定工程で決定するN回目の開始セクターとN−1回目の開始セクターとの間隔は、ハードディスクドライブを構成するプラッタの表面上を同心円状に分割配置されたトラックの記録サイズで最小値以下の数値とすることで、検査に適したデータの間引きサイズの上限を規定することができる。なおこことで言う、検査に適したデータの間引きサイズとは、繰り返し抜き取り比較を行った結果、検査領域設定工程で設定した抜き取り領域に含まれるトラックごとに、少なくとも1つのセクターに対して、データ比較工程が第1データと第2データの比較を実行することを保証できるデータの間引きサイズのことである。
【0030】
さらに、開始セクター決定工程で決定するN回目の開始セクターとN−1回目の開始セクターとの間隔は、データサイズ設定工程で設定した数値以上とすることで、検査に適したデータの間引きサイズの下限を規定することができる。なおこことで言う、検査に適したデータの間引きサイズとは、繰り返し抜き取り比較を行った結果、同一のセクターに対して、データ比較工程が第1データと第2データの比較を実行しないことを保証できるデータの間引きサイズのことである。
【0031】
なお、データの読み取りサイズは前述した読み取りサイズの上限値の1/2以下、データの間引きサイズは前述した間引きサイズの上限値が望ましい。読み取りサイズが大きいほどデータアクセスの回数が増加するため検査時間が増加するし、またトラック上のすべてのセクターが壊れている接触痕(図5(C)にあるトラック507の接触痕)を検出するには、1トラックあたり1セクターを検査すれば十分である。
【0032】
また、ハードディスクドライブに存在するすべてのセクターを検査するためには最大で、「開始セクター決定工程で決定するN回目の開始セクターとN−1回目の開始セクターとの間隔」を、「データサイズ設定工程で設定した数値」で除算した値に1を加算(前述の除算で小数点以下の余りがある場合)した回数の抜き取り検査を実施する必要がある。
【0033】
さらに、ハードディスクドライブの記憶容量によっては読み取りサイズを変更して、検査の所要時間を同一にすることも可能である。例えば、記憶容量100GBのハードディスクドライブでは、データの読み取りサイズを記憶容量50GBのハードディスクドライブの1/2にして、さらに200GBのハードディスクドライブでは1/4にすれば、検査の所要時間はほぼ同一になる。なお、この場合でも繰り返し抜き取り比較を行った結果、検査領域設定工程で設定した抜き取り領域に含まれるトラックごとに、少なくとも1つのセクターに対して、データ比較工程が第1データと第2データの比較を実行することを保証しなければならないとは言うまでもない。
【0034】
さらにデータの間引きサイズを間引きサイズの上限値(データの読み取りサイズは上限値以下)とすれば、繰り返し抜き取り比較を行った結果、検査領域設定工程で設定した抜き取り領域に含まれるトラックごとに、少なくとも1つのセクターに対して、データ比較工程が第1データと第2データの比較を実行することを保証できる。
【0035】
また、生産過程に付与された工程番号を所定の演算によって所定範囲の数値に変換する工程番号変換工程を有し、工程番号ごとに開始セクター決定工程で決定する1回目の開始セクターが異なるようにすることで、同一生産過程における検査時間を短縮しつつ、各生産過程で発生したハードディスクドライブの特定トラックに依存する製品不良を検出することが可能となる。また製品完成時点では、ハードディクスドライブのすべての記憶領域の検査を完了することもでき、ハードディクスドライブの特定セクターに依存する製品不良を検出することも可能である。
【0036】
また、デジタル電子機器に付与されたシリアル番号を所定の演算によって所定範囲の数値に変換するシリアル番号変換工程を有し、シリアル番号ごとに開始セクター決定工程で決定する1回目の開始セクターが異なるようにすることで、同一生産過程における検査時間を短縮しつつ、ハードディクスドライブの特定セクターに依存する製品不良ロット単位で検出することが可能である。
【発明の効果】
【0037】
本発明のハードディスクドライブのデータ読みとり検査方法よれば、短時間で正確にハードディスクドライブの製品良否を判定する検査方法を提供することができる。さらに、ハードディスクドライブの記憶容量が異なる場合でも同一の所要時間で、ハードディスクドライブの製品良否を判定する検査方法を提供することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0039】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0040】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るデジタル電子機器の概念的な構成図である。
【0041】
図1においてマザーボード100はデジタル電子機器を構成する主要部品を固定したり、コネクターを装着したりするためのものである。CPU101は中央演算処理装置であり、ノースブリッジ102はメモリ110とCPU101とグラフィックチップ104間のデータ送信を制御する。またモニタ115はグラフィックチップ104を経由してノースブリッジから送信された映像信号を出力する。サウスブリッジ103は、接続デバイスとのインターフェース間のデータ送信を制御する。主要なインターフェースとしては、ODD116(光ディスクドライブ)やHDD117(ハードディスクドライブ)のインターフェースであるATA106(IDE)や、キーボード・ポインティングデバイス118のインターフェースであるI/Oコントローラ122、LAN119のインターフェースであるEthernet(登録商標)コントローラ108、モデム120のインターフェースであるMedemコントローラ109、USBデバイスのインターフェースであるUSBxN105などがある。不揮発性メモリであるフラッシュメモリ107には、デジタル電子機器を構成する前述の各種デバイスを制御するプログラムであるBIOS(Basic Input/Output System)が組み込まれており、デバイスの動作設定はサウスブリッジ103にあるCMOS113に保持する。なお電池111はCMOS113のバックアップ電源である。ジャンパーSW121(ジャンパースイッチ)は、サウスブリッジ103にあるGPIO112の各ピンに接続され、その設定状態はBIOSを経由して取得することができる。RTC114(リアルタイムクロック)は、デジタル電子機器の電源が遮断されている時も電池111からの電力供給によって動作し、正しい日時をカウントし続ける。またμCPU123(マイクロコンピュータ)は内部および外部からの電力制御(図示しない)やバイプレート機能を動作させるモータ124の動作を制御する。
【0042】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係るデジタル電子機器の外観図である。
【0043】
図2において、ノートパソコン、すなわちデジタル電子機器の筐体20には、ハードディスク(図示しない)は勿論のこと、液晶モニタ21、キーボード22、タッチパッド23、LANコネクター24、モデムコネクター25、USBコネクター26、光ディスクドライブ27など各種デバイスが実装されている。
【0044】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係るハードディスクドライブ衝撃吸収ユニットの分解展開図である。
【0045】
図3において、ハードディスクドライブ衝撃吸収ユニットは、ハードディスクドライブ30および信号ケーブル31、凹型衝撃吸収保持体32および平面型衝撃吸収保持体33から構成され、信号ケーブルの一部を除いて、衝撃吸収保持体がハードディスクドライブを6方向の衝撃から保護するようになっている。また信号ケーブルはATA106(図1参照)のコネクターに挿入される。このようなハードディスクドライブ衝撃吸収ユニットを装着した場合、ハードディスクドライブの耐衝撃性能は著しく向上する。
【0046】
しかしながら、ハードディスクドライブを内蔵した製品の製造工程(特に、ハードディスクドライブをドライブ衝撃吸収ユニットに実装する際や、デジタル電子機器へ実装する際)において、耐衝撃性能の向上を保証するものではないため、製造の各工程においてハードディスクドライブの取り扱いは最も慎重を要する事項の1つとなっている。
【0047】
図12は、本発明の第1の実施の形態に係るハードディスクドライブのセクターをアクセスするためのLAB方式の概念的な説明図である。
【0048】
ハードディスクドライブのセクターをアクセスする方法としては、LBA(Logical Block Addressing)方式が一般的となっている。これは、ハードディスクドライブのすべてのセクターに付与されている論理番号を指定することによって、ハードディスクドライブの物理的なセクターに記録されたデータをアクセスする方式である。
【0049】
なお図12では、説明を簡単にするために、ハードディスクドライブは磁気ディスク面を2個、磁気ディスク面に配置されたトラックは8個、各トラックに配置されたセクターは10個とする。また、ハードディスクドライブのアクセス処理速度を向上させるために、LBA方式でのセクター番号の付与は、各磁気ディスク面の外周側にあるトラックに配置されたセクターが、トラック単位で優先的にLBAテーブルの先頭に割り振られているものとする。
【0050】
図12(A)は、LBAテーブルで対応づけられたハードディスクドライブの論理的なセクターを示したものである。また図12(B)は、ハードディスクドライブの物理的なトラックとセクターを示したものである。
【0051】
図12において、LBAテーブルにはハードディスクドライブのセクター番号を格納するセクター項目1229と、ハードディスクドライブのセクター番号に付与されたID項目1228がある。
【0052】
LABテーブルの先頭、すなわちID(0)1222にはプラッタ1の最外周のトラックにあるセクター1200が格納され、以降はセクター1201…というようにプラッタ1の最外周のトラックにあるセクターが格納されている。プラッタ1の最外周のトラックにあるセクターの後には、プラッタ1において1つ内側のトラックにあるセクター1202以降のセクターが格納されている。
【0053】
さらに、プラッタ1においてもう1つ内側のトラックにあるセクター1203以降のセクターの後には、プラッタ2における最外周のトラックにあるセクター1204がID(30)1223に格納されている。そして、以降はセクター1205…というようにプラッタ2の最外周のトラックにあるセクターが格納されている。プラッタ2の最外周のトラックにあるセクターの後には、プラッタ2において1つ内側のトラックにあるセクター1206以降のセクターが格納されている。
【0054】
つぎに、プラッタ2においてもう1つ内側のトラックにあるセクター1207以降のセクターの後には、プラッタ1において最外周のトラックから3つ内側のトラックにあるセクター1208がID(60)1224に格納されている。同様にしてさらに内側にある2つのトラックにあるセクターが格納された後は、プラッタ2にいて最外周のトラックから3つ内側のトラックにあるセクター1212から3トラック分のセクターがID(90)1225から格納されている。
【0055】
続いて、ID(120)1226からは、プラッタ1において最外周のトラックから6つ内側のトラックにあるセクター1216から2トラック分のセクターが格納され、最後にID(140)1227からは、プラッタ2において最外周のトラックから6つ内側のトラックにあるセクター1219から2トラック分のセクターが格納される。
【0056】
以上のようにして、ハードディスクドライブのすべてのセクターがLBAテーブルによって対応付けられ、LBAテーブルのIDを指定することによって、ハードディスクドライブのセクターに記録されたデータにアクセスすることができる。
【0057】
また、ハードディスクドライブの各プラッタにおける外周付近のトラックにある1/3を占めるセクターはLBAテーブルの先頭から1/3に対応付けられている。また内周付近のトラックにある1/3を占めるセクターはLBAテーブルの終端から1/3に対応付けられている。さらに、中央付近のトラックにある1/3を占めるセクターはLBAテーブルの中央付近の1/3に対応付けられているため、データ読み取り検査をする場合に所定の記録領域を指定して、所定のセクターに記録されたデータにアクセスするのも容易である。
【0058】
図6は、本発明の第1の実施の形態に係るハードディスクドライブを内蔵した製品の製造工程図である。
【0059】
図6(A)において、納品600でハードディスクドライブのベンダーから納品されたハードディスクドライブを開梱して受け入れ時の品質検査を実施する。ここでは、納品のための輸送中に与えられた衝撃や振動によって、ロット単位でハードディスクドライブの不良が発生している可能性がある。また品質検査後に不適切な取り扱いによって不良が発生する可能性もある。
【0060】
次に工程A601で、ハードディスクドライブにOSや自動検査を行うための、検査プログラムを実装する。ここでも、ハードディスクの不適切な取り扱いによって、ハードディスクドライブごとに不良が発生する可能性がある。
【0061】
次に工程B602で、デジタル電子機器にハードディスクドライブなど各種デバイスを実装する。ここでも、ハードディスクの不適切な取り扱いによって、ハードディスクドライブごとに不良が発生する可能性がある。
【0062】
次に工程C603で、デジタル電子機器に一定時間の熱ストレスを与えながら、各種の検査を実施する。なおこの段階では、ハードディスクドライブは各種の耐衝撃吸収機構を施したデジタル電子機器の筐体に実装されているため耐衝撃性能は向上している。しかしながら何らかの外部要因で、ハードディスクドライブ(を内蔵したデジタル電子機器)に衝撃や振動が与えられて、ハードディスクドライブごとに不良が発生する可能性はある。
【0063】
さらに工程D604で、デジタル電子機器に一定時間の振動ストレスを与えながら、各種の検査を実施する。ここでも、何らかの外部要因でハードディスクドライブ(を内蔵したデジタル電子機器)に衝撃や振動が与えられて、ハードディスクドライブごとに不良が発生している可能性はある。
【0064】
つぎに工程E605で、すべての検査が完了したデジタル電子機器を、包装箱に梱包する。
【0065】
最後に出荷606で、良品として保証した製品を出荷する。
【0066】
以上にあげた製造工程において、工程E605で、すべてのハードディスクドライブのすべての記憶領域に対してデータ読みとりを実施すれば、工程A601から工程E605で発生したハードディスクドライブの不良を検出することは可能である。しかしながら不良を検出し場合、修理および再検査に要する工数は実装に要した工数以上(解体、再実装、再検査)となる。さらにどの製造工程で不良が発生したかは不明確にために、有効な再発防止策を施すことも困難となる。
【0067】
一方、納品600からと工程E605までのすべての工程で、ハードディスクドライブのすべての記憶領域に対してデータ読みとりを実施すれば、各工程で発生した不良を早期に検出することは可能であるが、検査のための時間が増加して生産性が著しく低下する。
【0068】
さらに従来の方法では、納品600からと工程E605までのすべての工程で、製品単位での抜き取り検査を実施した場合でも、特定のハードディスクに加わった衝撃によって発生した不良をすべて検出するのは容易ではない。
【0069】
なお、納品600、工程A601、工程B602、工程C603、工程D604、工程E605、出荷606は、本実施例の説明のためにあげたものであり、工程数および各工程で実施する作業内容が、実際の製造工程と一致するとは限らない。
【0070】
また製品には、図6(B)のような製造番号が付与されている。年607は製造年、月608は製造月、日609は製造日を示している。ライン番号610は製造場所(製造ラインなど)、通番号611は同一年月日に製造した製品の通し番号である。
【0071】
図7は、本発明の第1の実施の形態に係る過程ごとに異なる領域の抜き取り検査を4回実施した場合の検査可能なセクターについて説明した図である。
【0072】
図7において、説明を簡単にするために、検査するハードディスクドライブは磁気ディスク面を1個、磁気ディスク面に配置されたトラックは8個、各トラックに配置されたセクターは24個とする。なお、実際のハードディスクドライブは磁気ディスク面を10面以上、1磁気ディスク面あたりのトラックは100個以上、1トラックあたりのセクターは100個以上あり、内周側にあるトラックより外周側にあるトラックに配置するセクター数は多くなっている。よってトラックの記録サイズが最も小さいトラックは最内周のトラックとなる。
【0073】
また、ハードディスクドライブにあるセクターへのアクセスはLBA方式で行うことして、図12に示したLBAテーブルを利用して、すべてのセクターをアクセスすれば、製品の良否判定をすることが可能である。
【0074】
以下に、検査領域設定工程で設定するデータの抜き取り領域を「ハードディスクドライブの全領域」、データサイズ設定工程で設定するデータのサイズを「最内周のトラックに存在するセクターの1/4、すなわち6セクター」、開始セクター決定工程で決定するN回目の開始セクターとN−1回目の開始セクターとの間隔を「最内周のトラックに存在するセクター数、すなわち24セクター」として、LBAの先頭番号が1回目の開始セクター700に付与されていると仮定した場合の、抜き取り検査について説明する。
【0075】
なお、図7の抜き取り検査において、開始セクター決定工程で決定するN回目の開始セクターとN−1回目の開始セクターとの間隔は24セクター、データサイズ設定工程で設定したデータサイズは6セクターとした場合に、ハードディスクドライブに存在するすべてのセクターを検査するためには4回の抜き取り検査を実施する必要がある。
【0076】
また工程番号変換工程は、図6(A)に示した製造工程に付与された工程番号を取得し、これを所定範囲の数値に変換する。抜き取り検査のための最適な所定範囲としては、前述のハードディスクドライブに存在するすべてのセクターを検査するために必要な回数(この場合は“4”)などが良い。よってこの場合は0から3までの範囲の整数値とする。
【0077】
また図6(A)に示した工程B602には“0”、工程C603には“1”、工程D604には“2”、工程E605には“3”の工程番号が割り振っていたとすると、工程B602では図7(A)にある1回目の抜き取り検査、工程C603では図7(B)にある2回目の抜き取り検査、工程D604では図7(C)にある3回目の抜き取り検査、工程E605では図7(D)にある4回目の抜き取り検査を実行することになる。なお、その他の工程でも抜き取り検査を実施する場合には、製造工程に付与された任意の工程番号を所定範囲(“4”)で除算した余りの数値を算出すれば0から3までの範囲の数値となるし、前述の除算した余りの数値に適宜数値を加算すれば幅4を有する任意の範囲の数値になるので、この数値を用いれば良い。
【0078】
そして、1回目の抜き取り検査で検査可能なセクターと、累積で検査したセクターを示したのが図7(A)である。1回目の開始セクター700から「データサイズ、6セクター」分のデータをアクセスしてセクターの良否判定を行う。以降は開始セクター決定工程が1回目の開始セクター700に「最内周のトラックに存在するセクター数、24セクター」を加算して2回目の開始セクター709、3回目の開始セクター710、4回目の開始セクター711を決定してデータをアクセスし、そしてLBAで付与された最終セクターまでデータアクセスしてこれ以上の開始セクターを決定できなくなったら1回目の抜き取り検査は完了となり、1回目の抜き取り検査で領域701に示したセクターの良否を判定したことになる。
【0079】
なお1回目の抜き取り検査では、検査領域設定工程で設定した抜き取り領域の1/4しか検査していないが、抜き取り領域に存在するトラックごとに、少なくとも1つのセクターに対して良否判定しており、図5で示したような致命的な損傷を受けたトラック507を検出することが可能である。
【0080】
つぎに2回目の抜き取り検査で検査可能なセクターと、累積で検査したセクターを示したのが図7(B)である。図7(A)で示した抜き取り検査と同様にして、1回目の開始セクター702から「データサイズ、6セクター」分のデータをアクセスしてセクターの良否判定を行う。このとき、1回目の開始セクター702は図7(A)で示した1回目の開始セクター700にデータサイズ「6セクター」を加算したものである。これ以降は図7(A)と同様なので省略するが、2回目の抜き取り検査は完了すると、開始セクター702を含んだ領域に存在するセクターの良否を判定したことになり、1回目から2回目の抜き取り検査で領域703に示したセクターの良否を判定したことになる。
【0081】
なお2回目の抜き取り検査でも、検査領域設定工程で設定した抜き取り領域の1/4しか検査していないが、抜き取り領域に存在するトラックごとに、少なくとも1つのセクターに対して良否判定しており、図5で示したような致命的な損傷を受けたトラック507が、新たに発生した場合でも不良を検出することが可能である。
【0082】
さらに3回目の抜き取り検査で検査可能なセクターと、累積で検査したセクターを示したのが図7(C)である。図7(A)で示した抜き取り検査と同様にして、1回目の開始セクター704から「データサイズ、6セクター」分のデータをアクセスしてセクターの良否判定を行う。このとき、1回目の開始セクター704は図7(B)で示した1回目の開始セクター702にデータサイズ「6セクター」を加算したものである。これ以降は図7(A)と同様なので省略するが、3回目の抜き取り検査は完了すると、開始セクター704を含んだ領域に存在するセクターの良否を判定したことになり、1回目から3回目の抜き取り検査で領域705に示したセクターの良否を判定したことになる。
【0083】
なお3回目の抜き取り検査でも、検査領域設定工程で設定した抜き取り領域の1/4しか検査していないが、抜き取り領域に存在するトラックごとに、少なくとも1つのセクターに対して良否判定しており、図5で示したような致命的な損傷を受けたトラック507が、新たに発生した場合でも不良を検出することが可能である。
【0084】
最後に4回目の抜き取り検査で検査可能なセクターと、累積で検査したセクターを示したのが図7(D)である。図7(A)で示した抜き取り検査と同様にして、1回目の開始セクター707から「データサイズ、6セクター」分のデータをアクセスしてセクターの良否判定を行う。このとき、1回目の開始セクター707は図7(C)で示した1回目の開始セクター704にデータサイズ「6セクター」を加算したものである。これ以降は図7(A)と同様なので省略するが、4回目の抜き取り検査は完了すると、開始セクター707を含んだ領域に存在するセクターの良否を判定したことになり、1回目から4回目の抜き取り検査で領域708に示したセクターの良否を判定したことになる。
【0085】
なお4回目の抜き取り検査でも、検査領域設定工程で設定した抜き取り領域の1/4しか検査していないが、抜き取り領域に存在するトラックごとに、少なくとも1つのセクターに対して良否判定しており、図5で示したような致命的な損傷を受けたトラック507が、新たに発生した場合でも不良を検出することが可能である。
【0086】
さらに、この時点までには、図5で示したような致命的な損傷を受けたセクター508をハードディスクドライブごとに検出することも可能である。
【0087】
以上のように、図6にある工程B602、工程C603、工程D604、工程E605において、同一生産過程における検査時間を検査領域設定工程で設定した抜き取り領域の1/4に短縮しつつ、各生産過程で発生した製品不良を早期に検出することが可能である。
【0088】
図8は、本発明の第1の実施の形態に係る過程ごとに異なる領域の抜き取り検査を3回実施した場合の検査可能なセクターについて説明した図である。
【0089】
図8において、説明を簡単にするために、検査するハードディスクドライブは磁気ディスク面を1個、磁気ディスク面に配置されたトラックは8個、各トラックに配置されたセクターは24個とする。
【0090】
以下に、検査領域設定工程で設定するデータの抜き取り領域を「ハードディスクドライブの全領域」、データサイズ設定工程で設定するデータのサイズを「最内周のトラックに存在するセクターの1/4、すなわち6セクター」、開始セクター決定工程で決定するN回目の開始セクターとN−1回目の開始セクターとの間隔を「最内周のトラックに存在するセクター数の3/4、すなわち18セクター」として、図7と同様にLBAの先頭番号が1回目の開始セクター800に付与されていると仮定した場合の、抜き取り検査について説明する。
【0091】
なお、図8の抜き取り検査において、開始セクター決定工程で決定するN回目の開始セクターとN−1回目の開始セクターとの間隔は18セクター、データサイズ設定工程で設定したデータサイズは6セクターなので、ハードディスクドライブに存在するすべてのセクターを検査するためには3回の抜き取り検査を実施する必要がある。
【0092】
また工程番号変換工程は、図6(A)に示した製造工程に付与された工程番号を取得し、これを所定範囲の数値に変換する。抜き取り検査のための最適な所定範囲としては、前述のハードディスクドライブに存在するすべてのセクターを検査するために必要な回数(この場合は“3”)などが良い。よってこの場合は0から2までの範囲の整数値とする。
【0093】
また図6(A)に示した工程B602には“0”、工程C603には“1”、工程D604には“2”の工程番号が割り振られていたとすると、工程B602では図7(A)にある1回目の抜き取り検査、工程C603では図7(B)にある2回目の抜き取り検査、工程D604では図7(C)にある3回目の抜き取り検査を実行することになる。なお、その他の工程でも抜き取り検査を実施する場合には、製造工程に付与された任意の工程番号を所定範囲(“3”)で除算した余りの数値を算出すれば0から2までの範囲の数値となるし、前述の除算した余りの数値に適宜数値を加算すれば幅3を有する任意の範囲の数値になるので、この数値を用いれば良い。
【0094】
そして、1回目の抜き取り検査で検査可能なセクターと、累積で検査したセクターを示したのが図8(A)である。1回目の開始セクター800から「データサイズ、6セクター」分のデータをアクセスしてセクターの良否判定を行う。以降は開始セクター決定工程が1回目の開始セクター800に「最内周のトラックに存在するセクター数の3/4、18セクター」を加算して2回目の開始セクター801、3回目の開始セクター802、4回目の開始セクター803を決定してデータをアクセスし、そしてLBAで付与された最終セクターまでデータアクセスしてこれ以上の開始セクターを決定できなくなったら1回目の抜き取り検査は完了となり、1回目の抜き取り検査で領域804に示したセクターの良否を判定したことになる。
【0095】
なお1回目の抜き取り検査では、検査領域設定工程で設定した抜き取り領域の1/3しか検査していないが、抜き取り領域に存在するトラックごとに、少なくとも1つのセクターに対して良否判定しており、図5で示したような致命的な損傷を受けたトラック507を検出することが可能である。
【0096】
つぎに2回目の抜き取り検査で検査可能なセクターと、累積で検査したセクターを示したのが図8(B)である。図8(A)で示した抜き取り検査と同様にして、1回目の開始セクター805から「データサイズ、6セクター」分のデータをアクセスしてセクターの良否判定を行う。このとき、1回目の開始セクター805は図8(A)で示した1回目の開始セクター800にデータサイズ「6セクター」を加算したものである。これ以降は図8(A)と同様なので省略するが、2回目の抜き取り検査は完了すると、開始セクター805を含んだ領域に存在するセクターの良否を判定したことになり、1回目から2回目の抜き取り検査で領域806に示したセクターの良否を判定したことになる。
【0097】
なお2回目の抜き取り検査でも、検査領域設定工程で設定した抜き取り領域の1/3しか検査していないが、抜き取り領域に存在するトラックごとに、少なくとも1つのセクターに対して良否判定しており、図5で示したような致命的な損傷を受けたトラック507が、新たに発生した場合でも不良を検出することが可能である。
【0098】
最後に3回目の抜き取り検査で検査可能なセクターと、累積で検査したセクターを示したのが図8(C)である。図8(A)で示した抜き取り検査と同様にして、1回目の開始セクター807から「データサイズ、6セクター」分のデータをアクセスしてセクターの良否判定を行う。このとき、1回目の開始セクター807は図8(B)で示した1回目の開始セクター805にデータサイズ「6セクター」を加算したものである。これ以降は図8(A)と同様なので省略するが、3回目の抜き取り検査は完了すると、開始セクター807を含んだ領域に存在するセクターの良否を判定したことになり、1回目から3回目の抜き取り検査で領域808に示したセクターの良否を判定したことになる。
【0099】
なお3回目の抜き取り検査でも、検査領域設定工程で設定した抜き取り領域の1/3しか検査していないが、抜き取り領域に存在するトラックごとに、少なくとも1つのセクターに対して良否判定しており、図5で示したような致命的な損傷を受けたトラック507が、新たに発生した場合でも不良を検出することが可能である。
【0100】
さらに、この時点までには、図5で示したような致命的な損傷を受けたセクター508をハードディスクドライブごとに検出することも可能である。
【0101】
以上のように、図6にある工程B602、工程C603、工程D604において、同一生産過程における検査時間を検査領域設定工程で設定した抜き取り領域の1/3に短縮しつつ、各生産過程で発生した製品不良を早期に検出することが可能である。また開始セクター決定工程で決定するN回目の開始セクターとN−1回目の開始セクターとの間隔と、データサイズ設定工程で設定したデータサイズを、適宜変更することにより、ハードディスクドライブに存在するすべてのセクターを検査するための抜き取り検査の回数を調節することもできる。
【0102】
図9は、本発明の第1の実施の形態に係る製品のシリアル番号ごとに異なる領域の抜き取り検査を実施した場合の検査可能なセクターについて説明した図である。
【0103】
図9において、説明を簡単にするために、検査するハードディスクドライブは磁気ディスク面を1個、磁気ディスク面に配置されたトラックは8個、各トラックに配置されたセクターは24個とする。
【0104】
以下に、検査領域設定工程で設定するデータの抜き取り領域を「ハードディスクドライブの全領域」、データサイズ設定工程で設定するデータのサイズを「最内周のトラックに存在するセクターの1/4、すなわち6セクター」、開始セクター決定工程で決定するN回目の開始セクターとN−1回目の開始セクターとの間隔を「最内周のトラックに存在するセクター数、すなわち24セクター」として、図7と同様にLBAの先頭番号が1回目の開始セクター900に付与されていると仮定した場合の、抜き取り検査について説明する。
【0105】
なお、図9の抜き取り検査において、開始セクター決定工程で決定するN回目の開始セクターとN−1回目の開始セクターとの間隔は24セクター、データサイズ設定工程で設定したデータサイズは6セクターなので、ハードディスクドライブの異なるすべての領域を検査するためには4回の抜き取り検査を実施する必要がある。
【0106】
またシリアル番号変換工程は、製品から図6(B)に示した製造番号のようなシリアル番号を取得し、これを所定範囲の数値に変換する。抜き取り検査のための最適な所定範囲としては、前述のハードディスクドライブの異なるすべての領域を検査するために必要な回数(この場合は“4”)などが良い。よってこの場合は0から3までの範囲の整数値とする。また図6(B)に示した文字入りの製造番号から数値だけの連番を抽出する場合は、通番号611などを用いれば良い。そして通番号611(“000005”)を所定範囲(“4”)で除算した余りの数値を算出すれば0から3までの範囲の数値(“1”)となるし、前述の除算した余りの数値に適宜数値を加算すれば幅4を有する任意の範囲の数値になる。なお、この抜き取り検査は、図6(A)に示した製造工程のうち、納品600や工程Eなどで実施する検査に適している。
【0107】
シリアル番号変換工程によって“0”に変換された製造番号を有する製品は、図9(A)に示す開始セクター900を含んだ領域に存在するセクターの良否を判定する。このセクターの検査方法は図7(A)と同様なので省略する。
【0108】
なお、この抜き取り検査では、検査領域設定工程で設定した抜き取り領域の1/4しか検査していないが、抜き取り領域に存在するトラックごとに、少なくとも1つのセクターに対して良否判定しており、図5で示したような致命的な損傷を受けたトラック507を検出することが可能である。
【0109】
同様にして、シリアル番号変換工程によって“1”に変換された製造番号を有する製品は、図9(B)に示す開始セクター901を含んだ領域、シリアル番号変換工程によって“2”に変換された製造番号を有する製品は、図9(C)に示す開始セクター902を含んだ領域、シリアル番号変換工程によって“3”に変換された製造番号を有する製品は、図9(D)に示す開始セクター903を含んだ領域を含んだ領域に存在するセクターの良否を判定する。このセクターの検査方法も図7(A)と同様なので省略するが、これらの抜き取り検査では、いずれも検査領域設定工程で設定した抜き取り領域の1/4しか検査していないが、抜き取り領域に存在するトラックごとに、少なくとも1つのセクターに対して良否判定しており、図5で示したような致命的な損傷を受けたトラック507を検出することが可能である。
【0110】
さらに、図5で示したような致命的な損傷を受けたセクター508が、特定ロット単位で発生していた場合に、ロット単位での抜き取り検査によって検出することが可能である。
【0111】
図10は、本発明の第1の実施の形態に係る過程ごとに異なる領域の抜き取り検査を実施する処理を示すフローチャートである。
【0112】
図10において、最初に、P101で、P108で算出される開始セクターから連続して読み取るデータのサイズを設定する。
【0113】
次にP102で、P108で算出されるN回目の開始セクターとN+1回目の開始セクターまでのセクターの間隔(幅)を設定する。
【0114】
そしてP103で、最大検査領域数を算出する。最大検査領域数はP102で設定した「N回目の開始セクターとN+1回目の開始セクターまでのセクターの間隔」をP101で設定した「開始セクターから連続して読み取るデータのサイズ」で除算した整数値である。
【0115】
またP104で、P103の計算結果で整数値の余りが発生するか否かを確認して、余りが発生する場合は、P105で最大検査領域数を1だけ増やしておく。
【0116】
次にP106で、この抜き取り検査を実行する領域(の番号を算出する)を決定する(詳細は後で説明する)。
【0117】
検査する領域が決まったら、P107ではP108で使用する開始セクターの計算回数をカウントするための変数(N)を0で初期化する。そしてP108以降で、「P106で決定した検査領域におけるN回目のデータ読み取りを行う開始セクター」を繰り返し算出しながら、各セクターが壊れていないか否かの検査を行う。
【0118】
P108では、「P106で決定した検査領域におけるN回目のデータ読み取りを行う開始セクター」を算出する。その位置はP101で求めた「読み取るデータのサイズ」とP106で求めた「抜き取り検査を実行する領域の番号」を乗算した値に、P102で設定した「N回目の開始セクターとN+1回目の開始セクターまでのセクターの間隔(幅)」にP107で初期化した「開始セクターの計算回数」を乗算した値を加算することで算出される。
【0119】
次にP109で、P110で使用する「N回目の開始セクターから連続して読み取るデーを記録したセクター」をカウントするための変数(i)を0で初期化する。そしてP110以降で各セクターが壊れていないか否かの検査を行う。
【0120】
まずP110では、P108で算出した「N回目のデータ読み取りを行う開始セクター」を基準にして「変数(i)」の位置にあるセクターのデータ(DAT1)を読み取る。これは、図12にあるLBAテーブルの「N回目のデータ読み取りを行う開始セクター」から「変数(i)」のIDに対応付けられたセクターのデータを読み取れば良い。このとき、P111で「N回目のデータ読み取りを行う開始セクター」を基準にして「変数(i)」の位置にあるセクターが存在しなかった場合は、P112で「抜き取り検査が正常終了」した旨の表示を行い、P106で決定した検査領域における抜き取り検査は完了となる。
【0121】
一方、指定のセクターが存在する場合はP113で、P110において読み取ったデータ(DAT1)を、同じセクターに書き込む。
【0122】
そしてP114で、再度同じセクターからデータ(DAT2)を読み取る。そしてP115では、P110で読み取ったデータ(DAT1)とP114で読み取ったデータ(DAT2)を比較して、P116で2つのデータが一致するか否かを判定する。一致しない場合は、P117で「抜き取り検査が異常終了」した旨の表示を行い、P106で決定した検査領域における抜き取り検査は中断される。
【0123】
一方、2つのデータが一致する場合はP118で、次のセクターの位置を示すように「変数(i)」を1だけ更新する。
【0124】
そして、P119で「N回目のデータ読み取りを行う開始セクター」から「P101で指定されたデータのサイズ」までのセクターに記録されたデータをすべて比較したか否かを確認して、まだ比較していないセクターが存在するならP110に戻る。すべて比較した場合はP120で、次の開始セクターを算出するために「変数(N)」を1だけ更新して、P108に戻る。
【0125】
なお、この抜き取り検査は、「ハードディスクドライブの全領域」を対象にして実施することを前提にしている。なお「ハードディスクドライブの所定の領域」を対象としたい場合は、図12にあるように、ハードディスクドライブの所定領域(例えば、外周寄りトラック1/3の領域、内周寄りトラック1/3の領域)に対応して、P110およびP111でLBAテーブルの読み取り範囲に制限を設ければ良い。
【0126】
また、図10に示す検査工程は、製品出荷前のHDD117またはフラッシュメモリ107の空き領域に本願の検査用プログラムを仮に書き込んでおき、検査時にはCPU101がこの検査プログラムを上記の記録媒体より読み出し、実行して不良部分の検出を行う。
【0127】
あるいは、外部制御機器(図示せず)よりLAN119、Ethernet(登録商標)コントローラ108である通信媒体を介して検査プログラムを実行して不良部分の検出を行うことも可能である。
【0128】
図11は、本発明の第1の実施の形態に係る検査領域番号を算出する処理を示すフローチャートである。
【0129】
検査領域番号は、図7および図8で説明したような「製造の過程番号」から算出する方法と、図9で説明したような「シリアル番号」から算出する方法がある。
【0130】
図11(A)は製造の過程番号から検査領域番号を算出する処理のフローチャートであり、まずP130で製造の各過程に付与された「製造の過程番号」を取得する。
【0131】
そしてP131で、P130において取得した「製造の過程番号」を図10のP103からP105で算出した「最大検査領域数」で除算した余りの数値を求め、これを検査領域番号とする。
【0132】
また、図11(B)は製品のシリアル番号から検査領域番号を算出する処理のフローチャートであり、まずP140で各製品に付与された「製品のシリアル番号」を取得する。
【0133】
そしてP141で、P140において取得した「製品のシリアル番号」を図10のP103からP105で算出した「最大検査領域数」で除算した余りの数値を求め、これを検査領域番号とする。
【0134】
なお、図10および、図11〜12に示す検査工程は、製品出荷前のHDD117またはフラッシュメモリ107の空き領域に本発明の検査用プログラムを仮に書き込んでおき、検査時にはCPU101がこの検査プログラムを上記の記録媒体より読み出し、実行してハードディスクドライブの製品良否判定を行う。
【0135】
あるいは、外部制御機器(図示せず)よりLAN119、Ethernet(登録商標)コントローラ108である通信媒体を介して検査プログラムを実行してハードディスクドライブの製品良否判定を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明にかかるハードディスクドライブのデータ読みとり検査方法は、短時間で正確にハードディスクドライブの製品良否を判定する検査方法を提供することができ、さらにハードディスクドライブの記憶容量が異なる場合でも同一の所要時間で、ハードディスクドライブの製品良否を判定することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るデジタル電子機器の概念的な構成図
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るデジタル電子機器の外観図
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るハードディスクドライブ衝撃吸収ユニットの分解展開図
【図4】ハードディスクドライブの概念的な構成図
【図5】衝撃によってハードディスクドライブに動作不良が発生する仕組みを説明した図
【図6】本発明の第1の実施の形態に係るハードディスクを内蔵した製品の製造工程図
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る過程ごとに異なる領域の抜き取り検査を4回実施した場合の検査可能なセクターについて説明した図
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る過程ごとに異なる領域の抜き取り検査を3回実施した場合の検査可能なセクターについて説明した図
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る製品のシリアル番号ごとに異なる領域の抜き取り検査を実施した場合の検査可能なセクターについて説明した図
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る過程ごとに異なる領域の抜き取り検査を実施する処理を示すフローチャート
【図11】本発明の第1の実施の形態に係る検査領域番号を算出する処理を示すフローチャート
【図12】本発明の第1の実施の形態に係るハードディスクドライブのセクターをアクセスするためのLAB方式の概念的な説明図
【符号の説明】
【0138】
P101 開始セクターから連続して読み取るデータのサイズを設定するステップ
P102 隣接する2つの開始セクターの間隔(幅)を設定するステップ
P103 最大検査領域数を算出するステップ
P104 最大検査領域数を修正か否か判定するステップ
P105 最大検査領域数を修正するステップ
P106 抜き取り検査を実行する領域を決定するステップ
P107 開始セクターの計算回数をカウントする変数を初期化するステップ
P108 データ読み取りを行う開始セクターを算出するステップ
P109 データを読み取るセクターをカウントする変数を初期化するするステップ
P110 指定セクターのデータを読み取るステップ
P111 データを読み取るセクターが存在するか否かを判定するステップ
P112 検査の正常終了を通知するステップ
P113 指定セクターにデータを書き込むステップ
P114 再度同一セクターからデータを読み取るステップ
P116 2つのデータが一致するか否かを判定するステップ
P117 検査の異常中断を通知するステップ
P118 データを読み取るセクターをカウントする変数を更新するステップ
P119 指定されたデータをすべて比較したか否かを判定するステップ
P120 開始セクターの計算回数をカウントする変数を更新するステップ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル電子機器へ実装したハードディスクドライブの製品良否をデータ読みとりによって判定する検査方法であって、
前記ハードディスクドライブに記録されたデータの抜き取り領域を指定する検査領域設定工程と、
前記ハードディスクドライブから取得するデータの開始セクターを決定する開始セクター決定工程と、
前記開始セクター決定工程で決定した開始セクターから取得するデータのサイズを設定するデータサイズ設定工程と、
前記開始セクター決定工程で決定した開始セクターから前記データサイズ設定工程で設定したサイズ分の第1データおよび第2データを読み取るデータ取得工程と、
前記データ取得工程で読み取った第1データを前記開始セクターから書き込むデータ記録工程と、
再び前記開始セクターから前記第2データを読み取って前記第1データと比較するデータ比較工程と、を有し、
前記データサイズ設定工程で設定したデータのサイズと前記開始セクター決定工程で決定した開始セクターを用いて、検査領域設定工程で設定された抜き取り領域に記録されたデータを、繰り返し抜き取って比較することを特徴とするハードディスクドライブの製品良否の検査方法。
【請求項2】
前記データサイズ設定工程で設定するデータのサイズは、ハードディスクドライブを構成するプラッタの表面上を同心円状に分割配置されたトラックの記録サイズで最小値未満の数値であることを特徴とする請求項1に記載のハードディスクドライブの製品良否の検査方法。
【請求項3】
前記開始セクター決定工程で決定するN回目の開始セクターとN−1回目の開始セクターとの間隔は、ハードディスクドライブを構成するプラッタの表面上を同心円状に分割配置されたトラックの記録サイズで最小値以下の数値であることを特徴とする請求項1〜2に記載のハードディスクドライブの製品良否の検査方法。
【請求項4】
前記開始セクター決定工程で決定するN回目の開始セクターとN−1回目の開始セクターとの間隔は、前記データサイズ設定工程で設定した数値以上であることを特徴とする請求項1〜3に記載のハードディスクドライブの製品良否の検査方法。
【請求項5】
生産過程に付与された工程番号を所定の演算によって所定範囲の数値に変換する工程番号変換工程と、を有し、
工程番号ごとに前記開始セクター決定工程で決定する1回目の開始セクターが、工程番号ごとに異なることを特徴とする請求項1〜4に記載のハードディスクドライブの製品良否の検査方法。
【請求項6】
前記デジタル電子機器に付与されたシリアル番号を所定の演算によって所定範囲の数値に変換するシリアル番号変換工程と、を有し、
シリアル番号ごとに前記開始セクター決定工程で決定する1回目の開始セクターが、シリアル番号ごとに異なることを特徴とする請求項1〜4に記載のハードディスクドライブの製品良否の検査方法。
【請求項7】
請求項1〜6記載の検査方法を制御するプログラムを記録した記録媒体。
【請求項8】
請求項1〜6記載の検査方法を制御するプログラムを配信する通信媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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