説明

ハードル

【課題】バーの上下動が簡便なハードルを供することを目的とする。
【解決手段】バー3の下部に設けられ上下動しバーに出入可能な手持部15と、手持部15をバー3に対して押圧状態とするときインナーパイプ7とアウターパイプ9との相対的な位置の固定を解除し、手持部15のバー3に対する押圧を解除するとき位置の固定をするように嵌合ピン23を操作する操作機構を設ける。これによれば、バー3の下部に設けられた手持部15がロック機構を担っているため、バー3の高さ調節のためにバー3を手に持って「バーの移動」の動作を行なうと必然的にバーのロックが解除されるため、「ロックの解除」と「バーの移動」とを1つの動作で行なうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は陸上競技のハードル競技に使用するハードルに関する。
【背景技術】
【0002】
ハードルは種目により標準の高さが異なっており、例えば「男子110m」では高さ1.067m、「女子100m」では高さ0.840mとなっている。そのため各競技を行なう前に、種目に応じた高さにハードルを調節しなければならない。
【0003】
従来のハードルの高さ調節は、ネジ式のロックやフットスイッチ式のロックを利用したものがあった。
【特許文献1】実公平6−21520号公報
【特許文献2】実開平3−63399号公報
【0004】
ネジ式のロックを利用したハードルは、左右の支柱に設けられた上部支柱と下部支柱との相対的な位置を固定するネジ式のロック機構を同時に解除したうえでバーを所望の高さに調節し、その高さを維持した状態で支柱をロックするものである。
【0005】
このネジ式のロックを利用したハードルは、高さ調節のために「ロックの解除」と「バーの移動」という2つの切り離された動作を行なう必要があるだけでなく、各動作の間に立ったり座ったりの動作が入るため、時間がかかるだけでなく作業そのものが苦痛であった。
【0006】
そこで、フットスイッチ式のロックを利用したハードルが開発された。フットスイッチ式のハードルは、左右の支柱の下端部を連結する連結パイプに設けられたフットスイッチを足で押圧することによりロックを解除し、その状態のままバーを所望の高さに調節し、その高さを維持した状態でフットスイッチから足を離しロックするものである。
【0007】
このフットスイッチ式のロックを利用したハードルは、ネジ式のロックを利用したハードルに比べ格段に操作性が高いが、依然として高さ調節のために「ロックの解除」と「バーの移動」という2つの切り離された動作を行なう必要があった。
【0008】
また、フットスイッチ式のロックを利用したハードルを、ハードル運搬車に重ねて載置した状態で高さ調節をしようとした場合、一人では奥に載置されたハードルのフットスイッチを踏み難く、高さ調節が困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願発明はバーの上下動が簡便なハードルを供することを目的とする。より詳しくは、「ロックの解除」と「バーの移動」とを1つの動作で行なえるハードルを供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的達成のため、本願発明によるハードルは、
バーと、該バーを支持する上部支柱と、該上部支柱を支持する下部支柱とを有し、該上部支柱が該下部支柱に対し相対的に上下動可能に設けられたハードルであって、
上記バーの下部に設けられ上下動し該バーに出入可能な手持部と、
上記上部支柱と上記下部支柱との相対的な位置を固定する係止部と、
上記手持部を上記バーに対して押圧状態とするとき上記上部支柱と上記下部支柱との相対的な位置の固定を解除し、上記手持部の上記バーに対する押圧を解除するとき上記位置の固定をするように上記係止部を操作する操作機構とからなることを特徴とする。
また、請求項1記載のハードルにおいて、上記操作機構は上記手持部の上下動を上記係止部の左右動に変換する操作機構であることを特徴とする。
また、請求項1又は請求項2記載のハードルにおいて、上記上部支柱が上記下部支柱内に摺動自在に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このように、本願発明にかかるハードルによれば、バーの下部に設けられた手持部がロック機構を担っているため、バーの高さ調節のためにバーを手に持って「バーの移動」の動作を行なうと必然的にバーのロックが解除されるため、「ロックの解除」と「バーの移動」とを1つの動作で行なうことができる。
【0012】
また、この手持部がバーの下部に設けられていることにより、バーの高さ調節の作業をハードルの上側のみ(バーの部分)の操作で行うことができるため、ハードルをハードル運搬車に重ねて載置した状態でも一人で簡便に高さ調節が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、実施の形態を示す図面に基づき本願発明によるハードルをさらに詳しく説明する。なお、便宜上同一の機能を奏する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0014】
図1は本願発明にかかるハードルの実施の形態を示した一部断面正面図であり、図2は(A)が図1の一部断面右側図、(B)が(A)のA−A断面図である。
【0015】
本願発明によるハードル1は、バー3と、バー受け5,5を介して該バー3を支持する左右一対の支柱35,35と、該支柱35が固着される一対のベース11,11とからなる。左右一対の支柱35,35は、その下端において連結パイプ13で連結されている。
【0016】
上記支柱35,35はベース11,11に固着された中空筒状のアウターパイプ9,9と該アウターパイプ9,9の内側に摺動自在に設けられバー受け5,5に固着された中空筒状のインナーパイプ7,7とからなる。
【0017】
上記バー3の下部には2つの手持部15,15が設けられている。該手持部15,15は、バー3の内側において上下動可能に設けられたレバーガイド板17に固定されており、該レバーガイド板17と連動して上下動可能となっている。該手持部15,15の下端の一部はバー3の下側に突出しており、この部分を押し上げることでレバーガイド板17が連動して押し上がる。該レバーガイド板17の上部には、常に下向きの力が加わるようにバネ16が設けられており、振動等によって該レバーガイド板17が上下動してしまうことを防いでいる。
【0018】
上記レバーガイド板17の左右両端には軸17aが設けられており、該軸17aはレバー19の上部に設けられた横長の長孔19aの外側端に遊着されている。該レバー19はバー受け5に軸19cを中心に回動可能に軸着されるとともに、上記バー受け5に設けられた軸5aと若干弯曲した長孔19dとが遊着され、下端はインナーパイプ7の内側に入り込み、同じくインナーパイプ7の内側に設けられた位置決めロッド21の上端に軸19bにて回動自在に軸着されている。該位置決めロッド21はインナーパイプ7の内側に接した部位に支点21aを設け、下端が嵌合ピン23になっている。該嵌合ピン23は、インナーパイプ7に開けられた孔7aから突出しアウターパイプ9に開けられた係止孔9aに着脱可能に嵌合し、該インナーパイプ7と該アウターパイプ9との相対的な位置を固定する。上記アウターパイプ9の係止孔は、バー3の高さが競技に応じた高さになるように予め計測された位置に9a、9b、9c、9d、9eと開けられている。
【0019】
各ベース11内には、バー3の高さ調整のための動作と連動するバランスウェイト31が内蔵される。該バランスウェイト31は、一端にスプリングポスト34に固定されたスプリング33が設けられ、他端に動滑車30が設けられる。25はワイヤであり、一端をバー受け5に固定され、他端はアウターパイプ9の下端に設けられた定滑車27、エンドキャップ32に設けられた定滑車29及び上記動滑車30を介しエンドキャップ32に固定される。
【0020】
上記バランスウェイト31はスプリング33によって常にハードル1の前方向(図2(B)の矢印方向)に引っ張られている。バー1が上方向に移動するとバー受け5に固定されたワイヤ25が上方向に引っ張られバランスウェイト31が後方向(図2(B)の反矢印方向)に移動する。逆にバー1が下方向に移動するとワイヤ25がゆるみスプリング33の張力により前方向に移動する。上記ワイヤ25はバランスウェイト31に設けられた動滑車30に通されているため、バー1の移動距離の半分の距離がバランスウェイト31の移動距離となる。
【0021】
図3は本願発明にかかるハードルがロックされている状態を、図4はハードルのロックが解除されている状態を説明する斜視図である。この図3及び図4にしたがってバーの高さの調節方法を説明する。
【0022】
手持部15を上方向に押し上げると、該手持部15に固定されたレバーガイド板17が上方向に移動する。すると軸17aにレバー19が引っ張られるため、該レバー19は軸19cを中心に軸19bが内側に移動するように回動する。該軸19bが内側に移動すると、位置決めロッド21はインナーパイプ7の内側に接した支点21aを支点として嵌合ピン23が外側に移動するように動作する。こうして、嵌合ピン23がインナーパイプ7の孔7a及びアウターパイプ9の係止孔9aから離脱しロックが解除される(図4参照)。
【0023】
このロックが解除された状態のまま、バー1を所望の高さまで移動させ手持部15を離せば、レバーガイド板17、レバー19及び位置決めロッド21は元の位置に戻るから、嵌合ピン23がインナーパイプ7の孔7aから突出しアウターパイプ9の移動後の係止孔9b乃至9eのいずれかに嵌合し再びロックされた状態となる。
【0024】
以上のように、手持部15を上方向に押し上げるという動作で「ロックの解除」が行われるため、そのまま一連の動きとして「バーの移動」の動作に移行でき簡便にバーの高さ調節が可能となる。
【0025】
本願発明は上記した実施の形態に限定されない。例えば、手持部の数は2個に限定されない。
【0026】
またバランスウェイトはどのような動作機構のものであっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本願発明は陸上競技のハードル競技に活用される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(A)は本願発明にかかるハードルの実施の形態を示した一部断面正面図、(B)はB部拡大図である。
【図2】(A)は図1の一部断面右側図、(B)は(A)のA−A断面図である。
【図3】本願発明にかかるハードルがロックされている状態を説明する斜視図である。
【図4】本願発明にかかるハードルのロックが解除されている状態を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1 ハードル
3 バー
5 バー受け
5a 軸
7 インナーパイプ
7a 孔
9 アウターパイプ
9a 係止孔
9b 係止孔
9c 係止孔
9d 係止孔
9e 係止孔
11 ベース
13 連結パイプ
15 手持部
16 バネ
17 レバーガイド板
17a 軸
19 レバー
19a 長孔
19b 軸
19c 軸
19d 長孔
21 位置決めロッド
21a 支点
23 嵌合ピン
25 ワイヤ
27 定滑車
29 定滑車
30 動滑車
31 バランスウェイト
32 エンドキャップ
33 スプリング
34 スプリングポスト
35 支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーと、該バーを支持する上部支柱と、該上部支柱を支持する下部支柱とを有し、該上部支柱が該下部支柱に対し相対的に上下動可能に設けられたハードルであって、
上記バーの下部に設けられ上下動し該バーに出入可能な手持部と、
上記上部支柱と上記下部支柱との相対的な位置を固定する係止部と、
上記手持部を上記バーに対して押圧状態とするとき上記上部支柱と上記下部支柱との相対的な位置の固定を解除し、上記手持部の上記バーに対する押圧を解除するとき上記位置の固定をするように上記係止部を操作する操作機構とからなることを特徴とするハードル。
【請求項2】
請求項1記載のハードルにおいて、上記操作機構は上記手持部の上下動を上記係止部の左右動に変換する操作機構であることを特徴とするハードル。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のハードルにおいて、上記上部支柱が上記下部支柱内に摺動自在に設けられることを特徴とするハードル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−194376(P2008−194376A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−35056(P2007−35056)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(391018374)株式会社ニシ・スポーツ (7)