説明

バイオガス供給方法及びバイオガス供給システム

【課題】天然ガスにおける不純物濃度及び熱量の基準値を満たしつつ、バイオマスを嫌気性発酵させて得られたバイオガスを天然ガスに混合して供給することを可能とするバイオガス供給方法を提供する。
【解決手段】不純物を含有するバイオガスを不純物の濃度が所定基準値未満の天然ガスとともに供給するバイオガス供給方法であって、天然ガス導管50から天然ガスを取り出す取出工程と、バイオガスに天然ガスよりも熱量が大きい高カロリーガスを添加して熱量調整を行う調整工程と、不純物の濃度が所定基準値以下となるように熱量調整後のバイオガスと天然ガスとを混合する混合工程と、混合後のガスを天然ガス導管50に戻すリターン工程とを包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不純物を含有するバイオガスを前記不純物の濃度が所定基準値未満の天然ガスとともに供給するバイオガス供給方法及びバイオガス供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥や有機性工場廃水等のバイオマスを嫌気性発酵させることにより得られるバイオガスが、新しいエネルギーとして注目されている。このバイオガスはメタンを主成分として含有しているため、バイオガスの発生元からガス事業者がバイオガスを受け入れたり、ガス事業者がバイオガスが混合された天然ガスを販売する場合に、受け入れガス又は販売ガスの不純物の濃度を十分に低減しておく必要がある。
ここで、「天然ガス」とは、ガス事業者の供給する天然ガスを主原料又は主成分とするガスをいう。また、ガス事業者がバイオガスを受け入れる場合はガス事業者が需要家となり、ガス事業者がバイオガスが混合された天然ガスを販売する場合はガス事業者の顧客が需要家となる。
【0003】
ちなみに、バイオガス中の不純物として、例えば、酸素が0.2〜1.0%、二酸化炭素が2〜10%、及び窒素が1〜7%含有されたものが知られている。
これに対して、ガス事業者が事業に使用しているガス導管にバイオガスを受け入れて天然ガスとともに供給する場合、その受け入れガス(バイオガスを含む)又は販売ガスの不純物濃度の基準値として、例えば、酸素が0.01%以下、二酸化炭素が0.5%以下、及び窒素が1%以下と定めている。
従って、これらの基準値を満たすためには、受け入れガス又は販売ガス中の不純物の濃度を、酸素については20分の1〜100分の1、二酸化炭素については4分の1〜20分の1、及び窒素については1分の1〜7分の1程度にまで低減する必要がある。
【0004】
なお、天然ガスの不純物濃度の基準値は、当該天然ガスを利用するエネルギー機器の要求値、安全性、性能、耐久性等を考慮して決定される。例えば、酸素濃度の基準値は、天然ガスを燃料電池の燃料とする場合、又は高純度水素発生装置の原料とする場合の機器要求値等から決定される。窒素濃度の基準値は、天然ガスを燃料電池の燃料とする場合の機器要求値等から決定される。二酸化炭素濃度の基準値は、天然ガスを燃料電池の燃料とする場合、又はRXガス発生装置の原料とする場合の機器要求値等から決定される。
【0005】
これらの理由から、バイオガスの製造業者は、バイオマスを嫌気性発酵させて得られたガスに対して精製処理を行う必要がある。この点に関し、従来、バイオガスの精製技術として、有機物を消化槽内で嫌気性発酵させて得られた消化ガスを高圧の水で洗浄する消化ガス精製方法があった(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−63393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の方法によれば、吸収塔の内部に消化ガスと吸収水とを導入し、両者を高圧状態で接触させることにより、消化ガスに含まれる二酸化炭素を吸収水に溶解させ、メタンの濃度を高めている。
【0008】
ところが、特許文献1の方法では、水に対する溶解性が高い二酸化炭素はある程度低減することはできるものの、水に対して難溶性又は不溶性である酸素や窒素等の不純物については殆ど低減することができない。特に、酸素については、上記のとおり受け入れガス又は販売ガス中の不純物の濃度を20分の1〜100分の1程度にまで低減する必要があり、これは他の不純物と比べて低減幅が大きく、その達成は容易ではない。
【0009】
また、バイオマスを嫌気性発酵させて得られたバイオガスは通常は熱量が小さいため、これをそのまま天然ガスに混合すると天然ガスの熱量が低下してしまう虞がある。
【0010】
従って、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、天然ガスにおける不純物濃度及び熱量の基準値を満たしつつ、バイオマスを嫌気性発酵させて得られたバイオガスを天然ガスに混合して供給することを可能とするバイオガス供給方法及びバイオガス供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るバイオガス供給方法の特徴構成は、不純物を含有するバイオガスを前記不純物の濃度が所定基準値未満の天然ガスとともに供給するバイオガス供給方法であって、天然ガス導管から前記天然ガスを取り出す取出工程と、前記バイオガスに前記天然ガスよりも熱量が大きい高カロリーガスを添加して熱量調整を行う調整工程と、前記不純物の濃度が前記所定基準値以下となるように熱量調整後のバイオガスと前記天然ガスとを混合する混合工程と、混合後のガスを前記天然ガス導管に戻すリターン工程とを包含することにある。
あるいは、本発明に係るバイオガス供給方法の特徴構成は、不純物を含有するバイオガスを前記不純物の濃度が所定基準値未満の天然ガスとともに供給するバイオガス供給方法であって、天然ガス導管から前記天然ガスを取り出す取出工程と、前記不純物の濃度が前記所定基準値以下となるように前記バイオガスと前記天然ガスとを混合する混合工程と、混合後のガスに前記天然ガスよりも熱量が大きい高カロリーガスを添加して熱量調整を行う調整工程と、熱量調整後のガスを前記天然ガス導管に戻すリターン工程とを包含することにある。
【0012】
本構成のバイオガス供給方法によれば、調整工程において天然ガスよりも熱量が大きい高カロリーガスを添加して熱量調整を行っているため、バイオガスと天然ガスとの混合ガスの熱量が低下することはない。また、バイオガスと天然ガスとを混合する際、混合後の天然ガス中の不純物の濃度が所定基準値以下となるように混合工程を実行しているので、混合後のガスを天然ガス導管にそのまま戻して、これを供給することができる。そして、調整工程と混合工程とは、記載順(調整工程を行ってから混合工程を行う)としてもよいし、記載順とは逆順(混合工程を行ってから調整工程を行う)としてもよい。
このように、本構成のバイオガス供給方法を実行すれば、天然ガスにおける不純物濃度及び熱量の基準値を満たしつつ、バイオマスを嫌気性発酵させて得られたバイオガスを天然ガスに混合して供給することが可能となる。
【0013】
本発明に係るバイオガス供給方法において、前記不純物が複数種の気体成分であり、これらの気体成分には夫々所定基準値が規定されており、前記気体成分の濃度と前記所定基準値との比率が最も大きくなる気体成分の所定基準値に合わせて前記混合工程が実行されることが好ましい。
【0014】
本構成のバイオガス供給方法によれば、バイオガスの不純物の所定基準値が複数種の気体成分について夫々規定されている場合、気体成分の濃度と所定基準値との比率が最も大きくなる気体成分に着目して所定基準値以下となるように混合工程を行うだけで、他の全ての気体成分についても夫々の所定基準値を満たすことができる。
【0015】
本発明に係るバイオガス供給方法において、前記気体成分の濃度と前記所定基準値との比率が最も大きくなる気体成分は酸素又は窒素であることが好ましい。
【0016】
本構成のバイオガス供給方法によれば、気体成分の濃度と所定基準値との比率が最も大きくなる気体成分を、一般に、低減幅が最も厳しい酸素とすることにより、他の気体成分についても余裕を持って十分に所定基準値以下にまで低減することができる。酸素濃度が条件を満たす場合、窒素を調整の対象とすることも当然可能である。
【0017】
本発明に係るバイオガス供給方法において、前記天然ガス導管が高圧管と低圧管とから構成され、前記取出工程を前記高圧管に対して実行し、前記リターン工程を前記低圧管に対して実行することが好ましい。
【0018】
本構成のバイオガス供給方法によれば、高圧管と低圧管との差圧により、高圧管から取り出した天然ガスは低圧管へとスムーズに戻るので、ガスを送るための昇圧コストを省略することができる。
【0019】
本発明に係るバイオガス供給方法において、前記不純物を含有するバイオガスは、生物由来物質を嫌気性メタン発酵させて得られた消化ガスを高圧水で洗浄して得られるものであることが好ましい。
【0020】
本構成のバイオガス供給方法によれば、バイオガス中に含まれる不純物のうち、例えば、二酸化炭素のような水溶性の不純物を予め大幅に低減しておくことができるため、基準値の達成がし易くなる。
【0021】
本発明に係るバイオガス供給システムの特徴構成は、不純物を含有するバイオガスを前記不純物の濃度が所定基準値未満の天然ガスとともに供給するバイオガス供給システムであって、天然ガス導管から前記天然ガスを取り出す分取部と、前記バイオガスに前記天然ガスよりも熱量が大きい高カロリーガスを添加して熱量調整を行う調整部と、前記不純物の濃度が前記所定基準値以下となるように熱量調整後のバイオガスと前記天然ガスとを混合する混合部と、混合後のガスを前記天然ガス導管に戻すリターン部とを備えたことにある。
更なる、本発明に係るバイオガス供給システムの特徴構成は、不純物を含有するバイオガスを前記不純物の濃度が所定基準値未満の天然ガスとともに供給するバイオガス供給システムであって、天然ガス導管から前記天然ガスを取り出す分取部と、前記不純物の濃度が前記所定基準値以下となるように前記バイオガスと前記天然ガスとを混合する混合部と、前記混合後のガスに前記天然ガスよりも熱量が大きい高カロリーガスを添加して熱量調整を行う調整部と、熱量調整後のガスを前記天然ガス導管に戻すリターン部とを備えたことにある。
【0022】
本構成のバイオガス供給システムによれば、調整部において天然ガスよりも熱量が大きい高カロリーガスを添加して熱量調整を行っているため、バイオガスと天然ガスとの混合ガスの熱量が低下することはない。また、混合部においてバイオガスと天然ガスとを混合する際、混合後のガス中の不純物の濃度が所定基準値以下となるようにしているので、混合ガスをリターン部から天然ガス導管にそのまま戻して、これを供給することができる。そして、調整部と混合部とは、記載順(調整を行ってから混合を行う)としてもよいし、記載順とは逆順(混合を行ってから調整を行う)としてもよい。
このように、本構成のバイオガス供給システムを用いれば、天然ガスにおける不純物濃度及び熱量の基準値を満たしつつ、バイオマスを嫌気性発酵させて得られたバイオガスを天然ガスに混合して供給することが可能となる。
【0023】
本発明に係るバイオガス供給システムにおいて、前記天然ガス導管が高圧管と低圧管とから構成され、前記分取部は前記高圧管に接続し、前記リターン部は前記低圧管に接続していることが好ましい。
【0024】
本構成のバイオガス供給システムによれば、高圧管と低圧管との差圧により、高圧管に接続する分取部から取り出した天然ガスはリターン部を通って低圧管へとスムーズに戻るので、ガスを送るためのブロア等の昇圧設備を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のバイオガス供給方法を実施するための第1実施形態によるバイオガス供給システムの模式図
【図2】本発明のバイオガス供給方法を実施するための第2実施形態によるバイオガス供給システムの模式図
【図3】本発明のバイオガス供給方法を実施するための第3実施形態によるバイオガス供給システムの模式図
【図4】本発明のバイオガス供給方法を実施するための第4実施形態によるバイオガス供給システムの模式図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明による実施形態を図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されるものではなく、種々の改変が可能である。
【0027】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明のバイオガス供給方法を実施するための第1実施形態によるバイオガス供給システム100の模式図である。
【0028】
バイオガス供給システム100は、例えば、天然ガス事業者が保有する天然ガス導管50に設けられる。このバイオガス供給システム100により、不純物を含有するバイオガスを、当該不純物の濃度が所定基準値未満の天然ガスとともに需要家(天然ガス事業者の顧客)に供給される。
天然ガス導管50の内部には、例えば、約0.8MPaの圧力(一次圧力)に調整された天然ガスが、常時500m3/h以上の流量で通流している。なお、天然ガス導管50を通流する天然ガスの圧力範囲は、0.07〜1.0MPaとすることが好ましい。0.07MPaより圧力が低いとバイオガス側の圧力制御が困難となり、1.0MPaより圧力が高いとバイオガス側の昇圧コストが大きくなる。また、上記圧力範囲にある天然ガス導管50は、天然ガスの流量を十分に大きくしておけば、天然ガスを容易に取り出すことができるため、実用的に見ても好ましい。
天然ガス導管50を通流する天然ガスの圧力及び流量は、圧力計51及び第1流量計52で夫々計測される。そして、第1流量計52で計測された流量データは、バイオガス供給システム100を制御する制御装置60に送信される。
【0029】
また、バイオガス供給システム100は、主たる構成要素として、天然ガス導管50から分岐された分取部としての天然ガス分岐導管10、バイオガス精製装置20から天然ガス分岐導管10に接続するバイオガス供給管30に設けられた調整部としてのLPG供給部31及びサブミキシングタンク32、バイオガスと天然ガスとを混合する混合部としてのミキシングタンク40、ミキシングタンク40で混合されたバイオガス及び天然ガス(以下、混合ガスと称する場合がある)を天然ガス導管10に戻すリターン部としてのリターン管11を備えている。
【0030】
天然ガス分岐導管10では、圧力調整バルブ12により、内部を通流する天然ガスの圧力(二次圧力)が約0.77MPaに調整される。また、このときの天然ガスの流量は、第2流量計13で計測され、その計測データは制御装置60に送信される。そして、圧力調整された天然ガスはミキシングタンク40に導入され、後述する精製バイオガスと混合されて混合ガスが生成される。
【0031】
バイオガス精製装置20には、下水汚泥等のバイオマスを嫌気性発酵させて発生させた消化ガスが導入され、これに、例えば、約0.9MPaの高圧水を接触させて消化ガスに含まれる水溶性の不純物(主に、二酸化炭素)を除去している。このバイオガス精製装置20自体は、従来公知の精製装置を採用することができる。
なお、バイオガス精製装置20で精製された精製バイオガスは、メタンを約97%含有し、不純物として二酸化炭素を約1.8%、窒素を約1.0%、及び酸素を約0.2%含有する。バイオガス精製装置20から排出される精製バイオガスは、平均10m3/hの
供給量で、バイオガス供給管30に流される。
【0032】
ところで、上記の精製バイオガスの熱量(38.6MJ/m3N程度)は天然ガスの熱量(45.0MJ/m3N程度)よりも低いため、これをそのまま天然ガスに混合すると、混合ガスの熱量がガス事業者等によって定められた熱量基準値を満たさなくなる虞がある。
そこで、本実施形態では、精製バイオガスに対して熱量調整が行われる。具体的には、バイオガス供給管30を通流する途中で、LPG供給部31から高カロリーガスであるLPG(99.2MJ/m3N程度)を精製バイオガスに添加し、天然ガス事業者が定める天然ガスの標準熱量(45.0MJ/m3N)に調整される。また、LPGの添加を行う際には、後述の表1に示すメタン濃度、及びLPG各成分(ブタン、プロパン)濃度の測定値から演算により求めた熱量が、前記標準熱量となるようにLPG添加量が設定される。これにより、熱量調整後の精製バイオガスの熱量は、44.3〜45.9MJ/m3N(平均値45.0MJ/m3N)の範囲となる。
熱量調整が行われた精製バイオガスは、次いで、都市ガス製造に使用される公知の付臭剤が、付臭部33から添加される。
【0033】
LPG及び付臭剤が添加された精製バイオガスは、クッションタンクとしても機能するサブミキシングタンク32で一旦混合・均一化され、圧力を約0.85MPaに調整される。均一化された精製バイオガスは、分析部34において、メタン濃度、LPG各成分(プロパン、ブタン)濃度、不純物(二酸化炭素、酸素、窒素)濃度、熱量、及び流量が測定される。この分析部34としては、例えば、二酸化炭素、酸素、及び窒素を10〜60分間隔で測定可能なTCD検出器(熱伝導度検出器)、及びFID検出器(水素炎イオン化検出器)を用いたガスクロマトグラフ、酸素を連続測定可能な磁気圧式酸素分析計、二酸化炭素を連続測定可能な赤外吸収式分析計、並びに流量を測定する超音波流量計等から構成される。分析部34による分析結果は制御装置60に送信される。
【0034】
分析部34で求めた精製バイオガス中の不純物濃度の分析値、並びに、天然ガス中の不純物濃度、及び達成すべき天然ガスと精製バイオガスとの混合ガスの不純物濃度の基準値を表1に示す。
【表1】

【0035】
制御装置60は、上記分析結果に基づいて、混合ガスの不純物濃度の基準値を達成するように天然ガスと精製バイオガスとの混合比を決定する。具体的には、混合比は以下の(1)及び(2)の演算により求められる。
混合比をaとすると、基準値(%)は、
基準値(%)=〔天然ガスの不純物濃度(%)×a+精製バイオガスの不純物濃度(%)〕/〔a+1〕 ・・・ (1)
と表される。従って、混合比aは、
a=〔精製バイオガスの不純物濃度(%)−基準値(%)〕/〔基準値(%)−天然ガスの不純物濃度(%)〕 ・・・ (2)
として求められる。
【0036】
表1中に各不純物に着目した本実施形態における具体的な混合比を示した。これらの混合比のうち、酸素を基準値以下とするための混合比(12.0以上)が最大となることが確認される。そうすると、上述したようにバイオガス供給管30を流れる精製バイオガスの流量は平均で10m3/hであるから、天然ガス分岐導管10において必要な天然ガス流量をその12倍の120m3/h以上とすれば、他の不純物(二酸化炭素及び窒素)についても十分に基準値以下とすることが可能となる。なお、実際には、確実に基準値以下となるように余裕をもって、例えば、安全係数2を設定することが好ましい。この場合、天然ガス流量は240m3/h以上となる。
【0037】
精製バイオガスは、算出された混合比に従って、バルブ35から天然ガス分岐導管10中を流れる天然ガスに添加される。そして、ミキシングタンク40で確実に均一化されて混合ガスとなる。その後、ブロア41によってリターン管11から天然ガス導管50に戻され、需要家の元に供給される。ここで、ブロア41の出力は、第2流量計13、及び分析部34からの測定データに基づいて、制御装置60によりフィードバック制御される。従って、天然ガス分岐導管10を通流する天然ガスの流量は、上記混合比となるように適切に調整されている。
【0038】
以上、説明したように、本実施形態のバイオガス供給システム100を用いて本発明のバイオガス供給方法を実行すれば、天然ガスにおける不純物濃度及び熱量の基準値を満たしつつ、バイオマスを嫌気性発酵させて得られたバイオガスを天然ガスに混合して供給することが可能となる。また、バイオガスの不純物の所定基準値が、本実施形態のように複数種の気体成分(例えば、二酸化炭素、酸素、及び窒素)について夫々規定されている場合では、各気体成分の濃度と所定基準値との比率が最も大きくなる気体成分(本実施形態では酸素)に着目して所定基準値以下となるように混合工程を行うだけで、他の全ての気体成分についても夫々の所定基準値を満たすことができるため、基準値の達成が容易である。
【0039】
〔第2実施形態〕
図2は、本発明のバイオガス供給方法を実施するための第2実施形態によるバイオガス供給システム200の模式図である。
【0040】
このバイオガス供給システム200では、サブミキシングタンク32で混合・均一化された精製バイオガスについて、バイオガス供給管30に設けた第1分析部34aにおいて熱量及び流量を測定している。また、精製バイオガスと天然ガスとの混合ガスについて、リターン管11に設けた第2分析部34bにおいてメタン濃度、LPG各成分(プロパン、ブタン)濃度、及び不純物(二酸化炭素、酸素、窒素)濃度を測定している。そして、これらの測定結果から、混合ガスがガス事業者によって定められる不純物濃度の基準値を満たすようにブロア41の出力を制御して、天然ガス分岐導管10を通流する天然ガスの流量を調節する。
その他の構成は、第1実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0041】
本実施形態の構成においても、第1実施形態で説明したものと同様の作用効果が得られる。なお、本実施形態において制御装置60がブロア41に対して行う制御の一部は、当該ブロア41より下流の混合ガスの分析結果に基づいて行うフィードバック制御となる。
【0042】
〔第3実施形態〕
図3は、本発明のバイオガス供給方法を実施するための第3実施形態によるバイオガス供給システム300の模式図である。
【0043】
このバイオガス供給システム300では、第1実施形態、第2実施形態に備えられるサブミキシングタンクを備えることなく、バイオガス精製装置20で得られた精製バイオガスについて、バイオガス供給管30に設けた第1分析部34aにおいて流量を測定している。また、精製バイオガスと天然ガスとの混合を先に行い、得られた混合ガスについて、LPG供給部31から高カロリーガスの供給による熱量調整、付臭部33からの付臭操作を経て、ミキシングタンク40での混合・均一化を行っている。そして、リターン管11に設けた第2分析部34bにおいてメタン濃度、LPG各成分(プロパン、ブタン)濃度、及び不純物(二酸化炭素、酸素、窒素)濃度を測定している。これらの測定結果から、混合ガスがガス事業者によって定められる不純物濃度の基準値を満たすようにブロア41の出力を制御して、天然ガス分岐導管10を通流する天然ガスの流量を調節する。
【0044】
その他の構成は、第1実施形態、第2実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
本実施形態の構成においても、第1、2実施形態で説明したものと同様の作用効果が得られる。なお、本実施形態において制御装置60がブロア41に対して行う制御の一部は、当該ブロア41より下流の混合ガスの分析結果に基づいて行うフィードバック制御となる。
【0045】
〔第4実施形態〕
図4は、本発明のバイオガス供給方法を実施するための第3実施形態によるバイオガス供給システム400の模式図である。
【0046】
このバイオガス供給システム400では、約0.8MPaの圧力に調整された天然ガス導管(高圧管)50から天然ガス分岐導管10によって天然ガスを取り出し、取り出した天然ガスと精製バイオガスとを混合して得られた混合ガス(約0.3MPa)を、リターン管11によって天然ガス導管50の内部圧力よりも低圧(約0.2MPa)の第2天然ガス導管(低圧管)53に戻している。
このような構成を採用することにより、混合ガスを昇圧する必要がないので、第1実施形態においてリターン管11に設置していたブロア41を省略することができる。
なお、本実施形態では、制御装置60によって制御される流量調整弁14を天然ガス分岐導管10に設け、天然ガス分岐導管10を通流する天然ガスの流量を調整している。その他の構成は、第1実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0047】
本実施形態の構成においても、第1実施形態で説明したものと同様の作用効果が得られる。
【0048】
〔別実施形態〕
(1) 上記第1実施形態〜第4実施形態は、本発明のバイオガス供給方法の実施中において、精製バイオガス又は混合ガス中の不純物の分析を連続的又は一定間隔毎に行うものであった。しかし、精製バイオガスの品質が比較的安定しており、含まれる不純物の濃度が略一定である場合は、混合比率を頻繁に調整しなくても十分に基準値を満たすことができる場合がある。
そこで、精製バイオガス中の不純物濃度の分析をバイオガス供給方法の運用開始前に実施しておき、その分析結果に基づいて、精製バイオガスと天然ガスとの固定混合比率を決定することができる。バイオガス供給方法の運用後は、基本的にはその固定混合比率で、精製バイオガスと天然ガスとの混合を継続的に行う。
ただし、本別実施形態の場合であっても、定期的に(例えば、1〜2ヶ月に一度)精製バイオガス中の不純物濃度の分析を行い、その分析結果に基づいて、固定混合比率を見直すことは好ましい。
(2) 上記の実施の形態では、調整の対象とする不純物が酸素の例を示したが、調整対象としては、窒素が対象となる場合がある。このような場合について以下に説明する。
先に説明した第1実施形態において、バイオガス精製装置の下流に酸素除去装置を敷設し、酸素を0.01%以下に低減した後天然ガスと混合するようにバイオガス供給システムを構築できる。酸素除去装置としては、水素を添加し触媒燃焼により酸素を水に変換する方式が採用できる。このような構成を採用すると、酸素除去後で天然ガスと混合する前の精製バイオガスのガス組成の例として、窒素含有量が多い場合があり、たとえばメタン 95.7% CO2 1.8% 窒素 2.5% 酸素 0.01%以下となる。
先に表1で示したように、天然ガス導管に注入するバイオガスと天然ガスの混合ガスに対する、天然ガス業者が定める不純物濃度および熱量の基準は表2のようであり、精製バイオガスの分析値から、この基準を満たすのに必要な天然ガスと精製バイオガスの混合比を求めた結果を同表に示した。
各混合比の中の最大値を求め(本実施例では窒素濃度で決まる4.2倍以上)、天然ガス分岐導管の必要な天然ガス流量を計算する。本実施例では42m3N/h以上となる。さらに安全係数を考え天然ガス流量を決定し制御装置で制御する。安全係数を2とすればこの流量は84m3N/hとなった。
【0049】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0050】
天然ガスにおける不純物濃度及び熱量の基準値を満たしつつ、バイオマスを嫌気性発酵させて得られたバイオガスを天然ガスに混合して供給することを可能とするバイオガス供給方法を提供することができた。
【符号の説明】
【0051】
10 天然ガス分岐導管(分取部)
11 リターン管(リターン部)
31 LPG供給部(調整部)
32 サブミキシングタンク(調整部)
40 ミキシングタンク(混合部)
50 天然ガス導管(高圧管)
53 第2天然ガス導管(低圧管)
100 バイオガス供給システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物を含有するバイオガスを前記不純物の濃度が所定基準値未満の天然ガスとともに供給するバイオガス供給方法であって、
天然ガス導管から前記天然ガスを取り出す取出工程と、
前記バイオガスに前記天然ガスよりも熱量が大きい高カロリーガスを添加して熱量調整を行う調整工程と、
前記不純物の濃度が前記所定基準値以下となるように熱量調整後のバイオガスと前記天然ガスとを混合する混合工程と、
混合後のガスを前記天然ガス導管に戻すリターン工程と
を包含するバイオガス供給方法。
【請求項2】
不純物を含有するバイオガスを前記不純物の濃度が所定基準値未満の天然ガスとともに供給するバイオガス供給方法であって、
天然ガス導管から前記天然ガスを取り出す取出工程と、
前記不純物の濃度が前記所定基準値以下となるように前記バイオガスと前記天然ガスとを混合する混合工程と、
混合後のガスに前記天然ガスよりも熱量が大きい高カロリーガスを添加して熱量調整を行う調整工程と、
熱量調整後のガスを前記天然ガス導管に戻すリターン工程と
を包含するバイオガス供給方法。
【請求項3】
前記不純物が複数種の気体成分であり、これらの気体成分には夫々所定基準値が規定されており、前記気体成分の濃度と前記所定基準値との比率が最も大きくなる気体成分の所定基準値に合わせて前記混合工程が実行される請求項1又は2に記載のバイオガス供給方法。
【請求項4】
前記気体成分の濃度と前記所定基準値との比率が最も大きくなる気体成分は酸素又は窒素である請求項3に記載のバイオガス供給方法。
【請求項5】
前記天然ガス導管が高圧管と低圧管とから構成され、前記取出工程を前記高圧管に対して実行し、前記リターン工程を前記低圧管に対して実行する請求項1〜4の何れか一項に記載のバイオガス供給方法。
【請求項6】
前記不純物を含有するバイオガスは、生物由来物質を嫌気性メタン発酵させて得られた消化ガスを高圧水で洗浄して得られるものである請求項1〜5の何れか一項に記載のバイオガス供給方法。
【請求項7】
不純物を含有するバイオガスを前記不純物の濃度が所定基準値未満の天然ガスとともに供給するバイオガス供給システムであって、
天然ガス導管から前記天然ガスを取り出す分取部と、
前記バイオガスに前記天然ガスよりも熱量が大きい高カロリーガスを添加して熱量調整を行う調整部と、
前記不純物の濃度が前記所定基準値以下となるように熱量調整後のバイオガスと前記天然ガスとを混合する混合部と、
混合後のガスを前記天然ガス導管に戻すリターン部と
を備えたバイオガス供給システム。
【請求項8】
不純物を含有するバイオガスを前記不純物の濃度が所定基準値未満の天然ガスとともに供給するバイオガス供給システムであって、
天然ガス導管から前記天然ガスを取り出す分取部と、
前記不純物の濃度が前記所定基準値以下となるように前記バイオガスと前記天然ガスとを混合する混合部と、
前記混合後のガスに前記天然ガスよりも熱量が大きい高カロリーガスを添加して熱量調整を行う調整部と、
熱量調整後のガスを前記天然ガス導管に戻すリターン部と
を備えたバイオガス供給システム。
【請求項9】
前記天然ガス導管が高圧管と低圧管とから構成され、前記分取部は前記高圧管に接続し、前記リターン部は前記低圧管に接続している請求項7又は8に記載のバイオガス供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−59416(P2010−59416A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184994(P2009−184994)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)