説明

バイオベースの複合材料成形体およびその製造方法

【課題】野菜廃棄物及び/又は果実廃棄物を有効に利用して、例えば容器包装材料等としても応用可能な、強度に優れたバイオベースの複合材料成形体およびその製造方法を実現する。
【解決手段】複合材料成形体は、シート形成が可能なタマネギなどの野菜由来成分及び/又は果実由来成分と、竹パルプなどのバイオベース系の繊維とを含有する材料を成形してなるので、強度に優れたバイオベースの複合材料成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオベースの複合材料成形体およびその製造方法に関し、特に野菜廃棄物及び/又は果実廃棄物を利用して得られる、強度に優れた複合材料成形体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷の少ないバイオベースの材料として、ポリ乳酸シートを中心に激しい国際的開発競争が繰り広げられている。しかし、ポリ乳酸の製法は糖質を発酵・合成するもので、加熱工程では多くのエネルギーを消費する。また採算ベースにするには大規模施設が必要である。さらに、ポリ乳酸材料の製造に用いられる原料であるトウモロコシやジャガイモは食料資源であり、世界的な食料不足の折、その使用に疑問が投げかけられている。一方、形が悪いために、または傷があるために商品に適さない等の理由で廃棄される野菜廃棄物は野菜の生産量の4〜5割、年間数十万トンに及んでいる。野菜生産地においてそのまま放置された野菜廃棄物は、各圃場で土壌を窒素過多とする原因となり、地下水に含まれる硝酸濃度が環境問題を生じさせている。同様の問題は果実についても存在する。そのため、野菜廃棄物及び/又は果実廃棄物を有効利用した、例えば容器包装材料等に使用可能なバイオベースの材料の開発が望まれている。
【0003】
従来、野菜及び/又は果実を有効利用する技術としては、抽出済み茶葉などを再処理加工する技術(特許文献1参照。)、搾汁残渣等の植物性の食品加工廃棄物を有効利用する技術(特許文献2参照。)等が報告されている。
【0004】
また、天然素材をシート状に加工する技術は、古くから知られており、オブラートや板海苔は食用として開発されたものである。また、野菜廃棄物を利用するものではないが、野菜をシート状に加工する技術もいくつか報告されている(特許文献3、4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−297686号公報(2009年12月24日公開)
【特許文献2】特開2011−30446号公報(2011年2月17日公開)
【特許文献3】特開2000−270802号公報(2000年10月3日公開)
【特許文献4】特開2002−45143号公報(2002年2月12日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、野菜廃棄物及び/又は果実廃棄物を有効利用した、例えば容器包装材料等に使用可能なバイオベースの材料は未だに得られていない。
【0007】
特許文献1には、抽出済み茶葉を粉砕してミル化あるいはナノ化した粉砕粉末をパルプ素材とすることにより、無薬品処理でパルプ素材を生成する再処理加工方法が記載されている。また、抽出済み茶葉の粉砕粉末に竹粉砕粉末を混練することが開示されている。しかし、特許文献1に記載のパルプ素材は、粒径が0.001〜0.01μmの粉砕粉末を用いるものであり、強度は十分ではない。
【0008】
また、特許文献2には、植物体からの搾汁残渣と、該搾汁残渣中の繊維同士を結着する可食性の結着剤とを含んでなる植物体廃棄物性シート状体が開示されている。しかし、特許文献2に記載のシート状体は、食用に用いることを前提にしたものであり、耐水性は向上するものの、強度は十分ではない。
【0009】
さらに、特許文献3、4に記載の野菜シートは食用に開発されたものであり強度は非常に小さい。例えば特許文献4では野菜を粉砕して抄紙、乾燥させることによってシートを得ているが、その強度は結合材を用いても最大6MPa程度である。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、野菜廃棄物及び/又は果実廃棄物を有効に利用して、例えば容器包装材料等としても応用可能な、強度に優れたバイオベースの複合材料成形体およびその製造方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る複合材料成形体は、上記課題を解決するために、シート形成が可能な野菜由来成分及び/又は果実由来成分と、バイオベース系の繊維とを含有する材料を成形してなることを特徴としている。
【0012】
上記の構成によれば、優れた強度を有する複合材料成形体を実現することができる。
【0013】
本発明に係る複合材料成形体では、上記野菜由来成分は、葉菜類、根菜類、果菜類、茎菜類、花菜類、芋類および豆類に含まれる少なくとも1種類の野菜に由来する成分であることが好ましい。
【0014】
上記の構成によれば、上記野菜を利用して優れた強度を有する複合材料成形体を得ることができる。
【0015】
本発明に係る複合材料成形体では、上記バイオベース系の繊維は、天然繊維、ポリ乳酸、キチン、および、キトサンに含まれる少なくとも1種類の繊維であることが好ましい。
【0016】
上記の構成によれば、優れた強度を有するバイオベースの複合材料成形体を実現することができる。
【0017】
本発明に係る複合材料成形体では、上記バイオベース系の繊維は、平均繊維長が0.1mm〜10mmであることが好ましい。
【0018】
上記の構成によれば、優れた強度を有するバイオベースの複合材料成形体を実現することができる。
【0019】
本発明に係る複合材料成形体は、シート状、3次元形状、または繊維状であることが好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、優れた強度を有するバイオベースの複合材料成形体を多様な方面に応用することができる。
【0021】
本発明に係る複合材料成形体の製造方法は、上記課題を解決するために、シート形成が可能な野菜由来成分及び/又は果実由来成分と、バイオベース系の繊維とを混合する混合工程と、上記混合工程で得られる混合物をシート状、3次元形状、または繊維状に成形する複合材料成形工程とを含むことを特徴としている。
【0022】
上記の構成によれば、簡便な方法で優れた強度を有するバイオベースの複合材料成形体を製造することができる。
【0023】
本発明に係る複合材料成形体の製造方法では、上記複合材料成形工程は、上記混合物を、抄紙してシート状に形成して乾燥する工程であることが好ましい。
【0024】
上記の構成によれば、簡便な方法でさらに優れた強度を有するバイオベースの複合材料成形体を製造することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る複合材料成形体は、以上のように、シート形成が可能な野菜由来成分及び/又は果実由来成分と、バイオベース系の繊維とを含有する材料を成形してなる構成を備えているので、優れた強度を有する複合材料成形体を実現することができるという効果を奏する。
【0026】
本発明に係る複合材料成形体の製造方法は、以上のように、シート形成が可能な野菜由来成分及び/又は果実由来成分と、バイオベース系の繊維とを混合する混合工程と、上記混合工程で得られる混合物をシート状、3次元形状、または繊維状に成形する複合材料成形工程とを備えているので、簡便な方法で優れた強度を有するバイオベースの複合材料成形体を製造することができるという効果を奏する。
【0027】
本発明により、未利用資源となっていた野菜廃棄物及び/又は果実廃棄物を有効利用することができ、野菜廃棄物及び/又は果実廃棄物の処理問題を解決することができる。そして、野菜廃棄物及び/又は果実廃棄物の有効利用は農業生産の単位面積当たりの収益を改善するという効果を奏する。
【0028】
また、本発明によれば、野菜や果実の生産規模に合わせた複合材料成形体の製造設備の構築が容易であり、野菜生産地や果実生産地の新たな事業創出に貢献することができる。さらには環境保護に結びつくとともに、複合材料成形体はエコ商品として応用範囲が非常に大きく、経済効果も大きい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例において、シート状の複合材料成形体を製造した方法を模式的に示す図であり、(a)はシート形成が可能な野菜由来成分と、バイオベース系の繊維とを混合して得られる混合物を抄紙してシート状に形成する方法の一例を模式的に示す図であり、(b)は上記混合物を、底部を有する型に投入し、乾燥する方法の一例を模式的に示す図である。
【図2】本発明の実施例1、2において製造した複合材料成形体の評価結果を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例1、2において製造した複合材料成形体の評価結果を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例1、2において製造した複合材料成形体の評価結果を示すグラフである。
【図5】本発明の実施例1、3、4において製造した複合材料成形体の評価結果を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例1、3、4において製造した複合材料成形体の評価結果を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例1、3、4において製造した複合材料成形体の評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
上記課題に鑑み、鋭意検討を行った結果、本願発明者らは、シート形成が可能な野菜由来成分と、バイオベース系の繊維と複合化したところ、驚くべきことに従来の野菜シートの強度からは予測できない30MPaに届く汎用プラスチック並みの強度を有する複合材料成形体を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。なお、シート形成が可能な野菜由来成分でかかる複合材料成形体を得ることができることから、シート形成が可能な果実由来成分でも当然に同等の複合材料成形体を得ることができると考えられる。
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変形を加えた態様で実施できるものである。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上、B以下」を意味する。
【0032】
(I)複合材料成形体
(I−1)野菜由来成分及び/又は果実由来成分
本発明に係る複合材料成形体は、シート形成が可能な野菜由来成分及び/又は果実由来成分と、バイオベース系の繊維とを含有する材料を成形してなる複合材料成形体である。本発明において、シート形成が可能な野菜由来成分及び/又は果実由来成分とは、当該野菜由来成分及び/又は果実由来成分のみでシート形成が可能な野菜由来成分及び/又は果実由来成分をいう。
【0033】
ここで、野菜由来成分のみでシート形成が可能であるとは、1種類又は複数種類の野菜を、例えばミキサーで粉砕したもののみを用いて、通常の抄紙法等により、シート形成したときに、シート形成が可能であることをいう。
【0034】
また、果実由来成分のみでシート形成が可能であるとは、1種類又は複数種類の果実を、例えばミキサーで粉砕したもののみを用いて、通常の抄紙法等により、シート形成したときに、シート形成が可能であることをいう。
【0035】
本発明において用いることができる野菜には、単一種類の野菜に由来する成分のみでシート形成が可能な場合のその単一種類の野菜と、複数種類の野菜に由来する成分でシート形成が可能な場合のその複数種類の野菜と、野菜及び果実に由来する成分でシート形成可能な場合のその野菜が含まれる。
【0036】
本発発明において用いることができる野菜としては、より具体的には、例えば、キャベツ、ハクサイ、ホウレンソウ、レタス、シュンギク、クレソン、ケール、サイシン、サンチュ、山東菜、セリ、セロリ、ダイコンナ、タカナ、チシャ、菜の花、野沢菜、パセリ、ミツバ、ルッコラ、コマツナ、シロナ、チンゲンサイ、ニラ、ミズナ等の葉菜類;カブ、ダイコン、ハツカダイコン、ワサビ、ニンジン、ゴボウ、ショウガ、レンコン、ラッキョウ、ユリネ等の根菜類;キュウリ、カボチャ、トマト、ナス、ピーマン、タカノツメ、トウガラシ、シシトウガラシ、ハバネロ、ズッキーニ、シロウリ、ニガウリ、トウガン、ヘチマ、オクラ等の果菜類;アオネギ、シロネギ、フキ、ワケギ、タマネギ、アスパラガス、ウド、コールラビ、ザーサイ、タケノコ、ニンニク等の茎菜類;ブロッコリー、カリフラワー、食用菊、フキノトウ、ミョウガ、アーティチョーク等の花菜類;サツマイモ、サトイモ、ジャガイモ、ナガイモ、ヤマノイモ等の芋類;アズキ、インゲンマメ、エンドウ、エダマメ、ササゲ、ソラマメ、ダイズ、ナタマメ、ラッカセイ、レンズマメ、ゴマ等の豆類を挙げることができる。これらの野菜は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組合せて用いてもよい。
【0037】
本発明において用いられる上記野菜は、これに限定されるものではないが、より好ましくは野菜廃棄物である。本発明において、野菜廃棄物とは、形が悪い、傷がある等の理由で商品に適さず廃棄される野菜、又は、例えば、根菜類、果菜類、茎菜類、芋類、豆類等の葉のように商品とならず廃棄される野菜の部位である。かかる野菜廃棄物を利用することによって、これまで廃棄されていた野菜を有効利用することができる。
【0038】
本発発明において用いることができる果実としては、より具体的には、例えば、リンゴ、カキ、モモ、ミカン、オレンジ、イヨカン、ハッサク、ナツミカン、グレープフルーツ、ブンタン、キンカン、ポンカン、スダチ、ダイダイ、ユズ、レモン、メロン、マクワウリ、スイカ、イチゴ、イチジク、キウイフルーツ、バナナ、ナシ、パイナップル、ビワ、ブドウ、ブルーベリー、アセロラ、ウメ等を挙げることができる。
【0039】
本発明において用いられる上記果実は、これに限定されるものではないが、より好ましくは果実廃棄物である。本発明において、果実廃棄物とは、形が悪い、傷がある等の理由で商品に適さず廃棄される果実、又は、例えば、果実の皮等である。かかる果実廃棄物を利用することによって、これまで廃棄されていた果実またはその部分を有効利用することができる。
【0040】
本発明において、野菜由来成分及び/又は果実由来成分とは、上記野菜および果実の少なくとも1種類に由来する成分であればよい。より具体的には、本発明に係る複合材料成形体は乾燥体であることから、上記野菜および果実の少なくとも1種類に由来する固形分であることがより好ましい。また、上記野菜および果実の少なくとも1種類に由来する固形分をすべて含んでいる必要はなく、例えば野菜由来成分及び/又は果実由来成分のうち、水に抽出される成分が一部除去されたものであってもよい。なお、ここで、野菜由来成分及び/又は果実由来成分のうち、水に抽出される成分とは、言い換えれば、水可溶成分である。
【0041】
(I−2)バイオベース系の繊維
本発明で用いられるバイオベース系の繊維としては、天然繊維、ポリ乳酸、キチン、キトサン等のバイオベース繊維に含まれる少なくとも1種類の繊維を好適に用いることができる。上記天然繊維としては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等の木材パルプ;竹、ケナフ、バガス等の非木材パルプ;綿、麻、絹、羊毛、羽毛等に含まれる少なくとも1種類の繊維を好適に用いることができる。中でも、バイオベース系の繊維として、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等の木材パルプ;竹、ケナフ、バガス等の非木材パルプ等を用いることがより好ましい。これにより、強度に優れた複合材料成形体を得ることができるので好ましい。また、綿、麻、絹、羊毛、羽毛等の天然繊維はフィブリル化させて使用してもよい。
【0042】
また、上記バイオベース系の繊維は、平均繊維長が0.1mm〜10mmであることがより好ましく、0.3mm〜5mmであることがさらに好ましく、0.3mm〜2mm以下であることが特に好ましい。バイオベース系の繊維の平均繊維長が上記範囲内であることにより、繊維の分散が良くなり、しかも応力分担を大きくできるので好ましい。
【0043】
ここで、繊維の平均繊維長とは無作為に抽出された500本の平均をいい、マイクロスコープによって測定された値をいう。
【0044】
また、上記バイオベース系の繊維は、平均繊維径が5μm〜50μmであることがより好ましく、10μm〜40μmであることがさらに好ましく、10μm〜20μmであることが特に好ましい。バイオベース系の繊維の平均繊維径が上記範囲内であることにより、繊維の良好な分散と野菜由来成分及び/又は果実由来成分との良好な接着が期待できるので好ましい。
【0045】
ここで、繊維の平均繊維径とは無作為に抽出された500本の平均をいい、マイクロスコープによって測定された値をいう。
【0046】
本発明に係る複合材料成形体に含まれる上記バイオベース系の繊維の含有量は特に限定されるものではなく、複合材料成形体の全重量に対して0より大きく40重量%以下程度であればよいが、1〜30重量%であることがより好ましく、2〜20重量%であることがさらに好ましい。上記バイオベース系の繊維の量が上記範囲内であることにより、特に強度に優れた複合材料成形体を得ることができる。
【0047】
なお、ここで、バイオベース系の繊維の含有量は、複合材料成形体の製造に用いたバイオベース系の繊維の重量を、得られた複合材料成形体の重量で除することによって得られる割合として求めることができる。
【0048】
(I−3)複合材料成形体
本発明に係る複合材料成形体は、シート形成が可能な野菜由来成分及び/又は果実由来成分と、バイオベース系の繊維とを含有してなることにより、従来の野菜シートと比較して顕著に優れた強度を有する。本発明に係るシート状の複合材料成形体は、JIS K7113に準じて、シート状の複合材料成形体を15mm×100mmの大きさに切断し、引張試験を行った強度が、より好ましくは5MPa以上であり、さらに好ましくは10MPa以上である。
【0049】
また、本発明に係る複合材料成形体の形状は特に限定されるものではなく、どのような形状であってもよいが、例えば、シート状、3次元形状、繊維状である。本発明に係る複合材料成形体は、従来の野菜シートと比較して、顕著に優れた強度を有するため、容器包装材、農業資材、インテリアグッズ、家具等の用途に用いることができる。
【0050】
(II)複合材料成形体の製造方法
本発明には、上記複合材料成形体の製造方法も含まれる。本発明に係る複合材料成形体の製造方法は、シート形成が可能な野菜由来成分及び/又は果実由来成分と、バイオベース系の繊維とを混合する混合工程と、上記混合工程で得られる混合物をシート状、3次元形状、または繊維状に成形する複合材料成形工程とを含んでいればよい。
【0051】
(II−1)混合工程
本発明において混合工程は、シート形成が可能な野菜由来成分及び/又は果実由来成分と、バイオベース系の繊維とを混合する工程であれば特に限定されるものではなく、例えば用いる野菜及び/又は果実を機械的に粉砕し、バイオベース系の繊維と均一な混合物が得られるように混合すればよい。このとき、必要に応じて、混合を円滑に行うために水を添加して濃度調製を行ってもよい。
【0052】
野菜及び/又は果実を粉砕する方法も特に限定されるものではなく、ミキサー、ミル等を好適に用いることができる。
【0053】
また、シート形成が可能な野菜由来成分及び/又は果実由来成分と、バイオベース系の繊維とを混合する方法も均一な混合物が得られるように混合することができる方法であれば、特に限定されるものではない。混合においては、バイオベース系の繊維が、粉末とならずに繊維が維持されるように混合を行う。
【0054】
シート形成が可能な野菜由来成分及び/又は果実由来成分と、バイオベース系の繊維とを混合する方法としては、例えば、ミキサー、ブレンダー等を好適に用いることができる。
【0055】
(II−2)複合材料成形工程
本発明において複合材料成形工程は、上記混合工程で得られる混合物をシート状、3次元形状、または繊維状に成形する工程であれば、特に限定されるものではない。
【0056】
複合材料成形工程の一実施態様としては、上記混合物を、抄紙してシート状に形成して乾燥する方法を挙げることができる。当該方法では、上記混合物を、抄紙機に投入する。抄紙機は、底部に金網が設置されており、当該底部から上記混合物に含まれる水分を排水する。これにより、上記混合物に含まれる固形分が金網の上に堆積することによって本発明のシート状の複合材料成形体を成形することができる。或いは、手すき和紙の作製方法のように、上記混合物を大きなタンクに準備し、底部に網のついた抄紙網器で漉きあげてもよい。
【0057】
上記のように、上記混合物を、抄紙してシート状に形成して乾燥する方法を用いることにより、より優れた強度を有する複合材料成形体を製造することが可能となる。すなわち、上記混合物を、抄紙してシート状に形成して乾燥する方法により得られる複合材料成形体はより強度に優れる。これは、野菜由来成分及び/又は果実由来成分の水可溶成分が、水分とともに除去されるためであると考えられる。
【0058】
なお、上記混合物を抄紙してシート状に形成した後、当該シートを乾燥する方法も特に限定されるものではないが、例えば、上下に加熱板をもつホットプレス機に投入して乾燥させる方法を好適に用いることができる。このときプレス圧を種々変化させることによって最終的に得られるシート状の複合材料成形体の密度と厚みを調節することができる。このときのホットプレス機の温度も特に限定されるものではないが、天然物を含む複合材料成形体であることから、120℃以下であることがより好ましい。また、プレス圧も特に限定されるものではないが、1〜5Paであることがより好ましい。或いは、ホットプレス機を用いる代わりに、温風または熱風により当該シートを乾燥させてもよい。
【0059】
複合材料成形工程の他の実施態様としては、上記混合物を、底部を有する型、より好ましくは金型に投入し、乾燥する方法を挙げることができる。かかる方法を用いることにより本発明にかかるシート状または3次元形状の複合材料成形体を製造することができる。また、かかる方法を用いることにより、より伸びに優れる複合材料成形体を得ることができる。これは、上記混合物を、すべて型に投入する場合には、野菜由来成分及び/又は果実由来成分に含まれる水可溶成分が失われないためであると考えられる。或いは、混合物の上澄みを除いて金型に投入することにより、野菜由来成分及び/又は果実由来成分に含まれる水可溶成分の量を調節することができる。それゆえ、得られる複合材料成形体の伸びと強度とのバランスを調整することができる。
【0060】
上記混合物を、上記型に投入し乾燥する方法においても、乾燥方法は特に限定されるものではなく、上述した方法を好適に用いることができる。
【0061】
なお、繊維状の複合材料成形体は、例えば、薄いシート状の複合材料成形体を撚ることにより製造することができる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0063】
実施例において得られたシート状の複合材料成形体の評価は以下の方法で行った。JIS K7113に準じて、成形したシート状の複合材料成形体を15mm×100mmの大きさに切断し、島津製作所(株)製の万能試験機AGS−J、10 KNを用い、試験速度2mm/minで引張試験を行った。測定は、温度22℃±1℃、相対湿度60%の環境下で行った。データとして強度(Tensile strength)、弾性率(Tensile modulus)、破断時の伸び(Elongation)を得た。すべてのデータは5枚の試験片の平均値である。
【0064】
〔実施例1〕
野菜としてタマネギを用い、バイオベース系の繊維として、カナダ標準ろ水度 727ml(CSF)、平均繊維長0.43mm、平均繊維径11μmの竹パルプ(輸入元:岡村化成(株))を用い、図1(a)に示す方法によりシート状の複合材料成形体を製造した。
【0065】
まず、表皮を除いたタマネギを家庭用のミキサーで粉砕した。タマネギは、90重量%以上の水分を含み、繊維含有量は乾燥物中約10重量%であった。ミキサーで粉砕したタマネギに、水を加えてほぐした竹パルプを添加し、水を加えて家庭用のミキサーで30秒間混合した。
【0066】
パルプ−試験用手すき紙の調製方法(JIS P8222)に従い、得られた混合物から、抄紙機(PU−401、テスター産業(株)製)を用いて、25×25cmのシートを得た。このとき野菜由来成分中の水可溶成分は殆ど除かれた。得られたシートを110℃で乾燥し、温度を保ったまま2MPaでホットプレスして、シート状の複合材料成形体を得た。得られたシート状の複合材料成形体の目付け(単位面積当たりの重さ(単位:g/m))は約200g/mとした。
【0067】
バイオベース系の繊維(竹パルプ)の含有量を様々に変化させて、シート状の複合材料成形体を製造し、得られたシート状の複合材料成形体の強度、弾性率、及び、破断時の伸びを評価した。なお、バイオベース系の繊維の含有量は下記式から算出した。
バイオベース系の繊維の含有量=使用した竹パルプの重量/得られた複合材料成形体の重量
表1および図2〜4に、評価結果を示す。なお、図2〜4中、(a)で示される線が本実施例の結果を示す。
【0068】
【表1】

【0069】
図2は、竹パルプの含有量(図2中、「Bamboo fiber content/重量%」と記載)に対して、強度(図2中、「Tensile strength/MPa」と記載)をプロットしたグラフである。図2に示されるように、得られたシート状の複合材料は、バイオベース系の繊維を含まない場合(比較例1)と比較して顕著に高い強度を有することが見出された。かかる強度はポリエチレンやポリプロピレンの強度にも匹敵するものである。
【0070】
図3は、竹パルプの含有量(図3中、「Bamboo fiber content/重量%」と記載)に対して、弾性率(図3中、「Tensile modulus/GPa」と記載)をプロットしたグラフである。図3に示されるように、得られたシート状の複合材料成形体はバイオベース系の繊維を含まない場合(比較例1)と比較して顕著に高い弾性率を有することが判る。
【0071】
図4は、竹パルプの含有量(図4中、「Bamboo fiber content/重量%」と記載)に対して、破断時の伸び(図3中、「Elongation/%」と記載)をプロットしたグラフである。
【0072】
〔比較例1〕
バイオベース系の繊維を添加しない点を除いては、実施例1と同様にして野菜由来成分のみからなるシートを製造した。
【0073】
〔実施例2〕
野菜としてタマネギを用い、バイオベース系の繊維として、カナダ標準ろ水度 727ml(CSF)、平均繊維長0.43mm、平均繊維径11μmの竹パルプ(輸入元:岡村化成(株))を用い、図1(b)に示す方法によりシート状の複合材料成形体を製造した。
【0074】
実施例1と同様にして、タマネギを家庭用のミキサーで粉砕し、水を加えてほぐした竹パルプを添加して家庭用のミキサーで混合した。
【0075】
パルプ−試験用手すき紙の調製方法(JIS P8222)を用いる代わりに、得られた混合物をすべて型に流し込んで、110℃で乾燥し、温度を保ったまま2MPaでホットプレスして、シート状の複合材料成形体を得た。得られたシート状の複合材料成形体の目付け(単位面積当たりの重さ(単位:g/m))は約300g/mとした。
【0076】
バイオベース系の繊維(竹パルプ)の含有量を様々に変化させて、シート状の複合材料成形体を製造し、得られたシート状の複合材料成形体の強度、弾性率、及び、破断時の伸びを評価した。図2〜4に、評価結果を示す。なお、図2〜4中、(b)で示される線が本実施例の結果を示す。
【0077】
図2に示されるように、得られたシート状の複合材料成形体はバイオベース系の繊維を含まない場合(比較例2)と比較して高い強度、弾性率を有することが判る。
【0078】
図4に示されるように、本実施例の製造方法によれば、竹パルプを含むことによって破断時の伸びが大きく減少するので、例えば成形品の形状安定化が期待できる。
【0079】
〔比較例2〕
バイオベース系の繊維を添加しない点を除いては、実施例2と同様にして野菜由来成分のみからなるシートを製造した。
【0080】
〔実施例3〕
野菜としてシロネギを用いた以外は実施例1と同様にして、図1(a)に示す方法によりシート状の複合材料成形体を製造した。
【0081】
バイオベース系の繊維(竹パルプ)の含有量を様々に変化させて、シート状の複合材料成形体を製造し、実施例1と同様にして、得られたシート状の複合材料成形体の強度、弾性率、及び、破断時の伸びを評価した。
【0082】
表2および図5〜7に、評価結果を示す。なお、図5〜7中、「Bamboo/Scallion」で示される線が本実施例の結果を示す。なお、図5〜7中、「Bamboo/Onion」で示される線は実施例1の結果を示す。
【0083】
【表2】

【0084】
図5は、竹パルプの含有量に対して、強度をプロットしたグラフである。図5に示されるように、得られたシート状の複合材料は、バイオベース系の繊維を含まない場合(比較例3)と比較して顕著に高い強度を有することが見出された。
【0085】
図6は、竹パルプの含有量に対して、弾性率をプロットしたグラフである。図6に示されるように、得られたシート状の複合材料成形体はバイオベース系の繊維を含まない場合(比較例3)と比較して顕著に高い弾性率を有することが判る。
【0086】
図7は、竹パルプの含有量に対して、破断時の伸びをプロットしたグラフである。
【0087】
〔比較例3〕
バイオベース系の繊維を添加しない点を除いては、実施例3と同様にして野菜由来成分のみからなるシートを製造した。
【0088】
〔実施例4〕
野菜としてピーマンを用いた以外は実施例1と同様にして、図1(a)に示す方法によりシート状の複合材料成形体を製造した。
【0089】
バイオベース系の繊維(竹パルプ)の含有量を様々に変化させて、シート状の複合材料成形体を製造し、実施例1と同様にして、得られたシート状の複合材料成形体の強度、弾性率、及び、破断時の伸びを評価した。
【0090】
表3および図5〜7に、評価結果を示す。なお、図5〜7中、「Bamboo/Green pepper」で示される線が本実施例の結果を示す。
【0091】
【表3】

【0092】
図5は、竹パルプの含有量に対して、強度をプロットしたグラフである。図5に示されるように、得られたシート状の複合材料は、バイオベース系の繊維を含まない場合(比較例4)と比較して高い強度を有することが見出された。
【0093】
図6は、竹パルプの含有量に対して、弾性率をプロットしたグラフである。図6に示されるように、得られたシート状の複合材料成形体はバイオベース系の繊維を含まない場合(比較例4)と比較して高い弾性率を有することが判る。
【0094】
図7は、竹パルプの含有量に対して、破断時の伸びをプロットしたグラフである。
【0095】
〔比較例4〕
バイオベース系の繊維を添加しない点を除いては、実施例4と同様にして野菜由来成分のみからなるシートを製造した。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明に係る複合材料成形体および複合材料成形体の製造方法によれば、簡便な方法で優れた強度を有するバイオベースの複合材料成形体を提供することができる。かかる複合材料成形体は、優れた強度を有するため、容器包装材、農業資材、インテリアグッズ、家具等をはじめとする広範囲の用途に用いることができる。また、かかる複合材料成形体は、エコ商品として応用範囲が非常に大きく、経済効果も大きい。
【0097】
それゆえ、本発明は、複合材料成形体の製造工業のみならず、かかる複合材料成形体を利用する産業分野においても利用することができ、非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート形成が可能な野菜由来成分及び/又は果実由来成分と、バイオベース系の繊維とを含有する材料を成形してなることを特徴とする複合材料成形体。
【請求項2】
上記野菜由来成分は、葉菜類、根菜類、果菜類、茎菜類、花菜類、芋類および豆類に含まれる少なくとも1種類の野菜に由来する成分であることを特徴とする請求項1に記載の複合材料成形体。
【請求項3】
上記バイオベース系の繊維は、天然繊維、ポリ乳酸、キチン、および、キトサンに含まれる少なくとも1種類の繊維であることを特徴とする請求項1または2に記載の複合材料成形体。
【請求項4】
上記バイオベース系の繊維は、平均繊維長が0.1mm〜10mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合材料成形体。
【請求項5】
シート状、3次元形状、または繊維状であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合材料成形体。
【請求項6】
シート形成が可能な野菜由来成分及び/又は果実由来成分と、バイオベース系の繊維とを混合する混合工程と、
上記混合工程で得られる混合物をシート状、3次元形状、または繊維状に成形する複合材料成形工程とを含むことを特徴とする複合材料成形体の製造方法。
【請求項7】
上記複合材料成形工程は、上記混合物を、抄紙してシート状に形成して乾燥する工程であることを特徴とする請求項6に記載の複合材料成形体の製造方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−233283(P2012−233283A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103616(P2011−103616)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(504255685)国立大学法人京都工芸繊維大学 (203)
【出願人】(599106204)
【Fターム(参考)】