説明

バイオマスガス化装置

【課題】不均一な粒径のバイオマスを効率的にガス化炉内に供給しつつ、ガス化剤の投入量の調整が容易なバイオマスガス化装置を提供する。
【解決手段】粉砕されたバイオマス粉粒体11をガス化剤12によりガス化して生成ガス17を得るガス化装置であって、前記バイオマス粉粒体11をガス化炉13内部に直接供給する粉粒体供給部14と、前記粉粒体供給部14の周囲から分散用の水蒸気15を供給する水蒸気供給部16とを具備し、水蒸気のアシストにより、不均一な粒径のバイオマスをガス化炉内に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスを粉砕した粉粒体からガスを生成させるバイオマスガス化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境保全等の観点から、化石燃料使用による二酸化炭素排出の抑制が検討されている。特に、草木等のバイオマスを原料に用いてメタノール等のような液体燃料を製造するようにすれば、当該液体燃料の使用によって生成する二酸化炭素を消費して成長する植物から当該液体燃料を製造することができるので、循環型のエネルギサイクルを確立することができると共に、有機物系の廃棄物の発生量を著しく減少させることができる。
【0003】
このようなバイオマスを原料に用いてメタノール等のような液体燃料を製造するには、乾燥して粉砕したバイオマスと、水蒸気および酸素(または空気)を含有するガス化剤とをガス化装置のガス化炉内に送給して、当該バイオマスを部分燃焼または水蒸気ガス化させることにより生成ガス(主に一酸化炭素と水素ガスとの混合ガス)を生じさせ、この生成ガスをガス化炉内から送出して冷却塔で冷却した後、例えばメタノール等の液体燃料の合成塔に送給して当該生成ガス中の一酸化炭素と水素ガスとを反応させてメタノール等の液体燃料を生成させている。
【0004】
従来においては、バイオマスをガス化炉内に投入する方法として、シュート投入方式を採用しているので、バイオマスの粉砕が均一でない場合、比較的大きなサイズのものが混在すると、投入の際にダマとなりやすく、ダマとなったものはそのままガス化炉底部側に落下、堆積し、ガス化に寄与しない、という問題があるため、漏斗に設けた細孔から流動ガスを噴射して、大粒子を炉底にて回収するようにしている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−91568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、細孔を有する漏斗を用いた場合、バイオマスの微粒子や溶融灰によって、細孔の目詰まりなどが発生する場合があり、安定したバイオマスのガス化を実施できない、という問題があった。
【0007】
また、バイオマスの大粒子を浮遊させるために炉内の空塔速度を増加すると、バイオマスの小さい粒子がショートパスして、ガス化反応しないまま、系外に放出される、という問題がある。
【0008】
また、バイオマスの搬送に水蒸気を用いて搬送する場合には、圧力シールを行うために、相応の水蒸気量が必要となり、ガス化剤投入量の調整が煩雑となるという問題がある。
【0009】
本発明は、前記問題に鑑み、不均一な粒径のバイオマスを効率的にガス化炉内に供給しつつ、ガス化剤の投入量の調整が容易なバイオマスガス化装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、バイオマス粉粒体をガス化剤によりガス化し生成ガスを得るガス化装置であって、前記バイオマス粉粒体をガス化炉内部に直接供給する粉粒体供給部と、前記粉粒体供給部の周囲又は下部側のいずれかより分散用の水蒸気を供給する水蒸気供給部とを具備することを特徴とするバイオマスガス化装置にある。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記粉粒体供給部の周囲に断熱部を有し、該断熱部の外側に水蒸気供給部が設けられていることを特徴とするバイオマスガス化装置にある。
【0012】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記粉粒体供給部が、押込みフィーダであることを特徴とするバイオマスガス化装置にある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バイオマス粉粒体のガス化炉内での分配用のアシストガスとして水蒸気をその周囲又は下部側から必要量を供給することができるので、従来の水蒸気搬送等による多量の水蒸気を必要とせず、より液体燃料製造に適した生成ガスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施例1に係るバイオマスガス化装置の概略図である。
【図2】図2は、実施例1に係る粉粒体供給部の構成を示す概略図である。
【図3】図3は、実施例2に係る粉粒体供給部の構成を示す概略図である。
【図4】図4は、実施例3に係る粉粒体供給部の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0016】
本発明による実施例に係るバイオマスガス化装置について、図面を参照して説明する。図1は、実施例1に係るバイオマスガス化装置の概略図である。図2は実施例1に係る粉粒体供給部の構成を示す概略図である。
図1に示すように、本実施例に係るバイオマスガス化装置10は、例えば粉砕手段によって粉砕されたバイオマス粉粒体11をガス化剤12によりガス化して生成ガス17を得るガス化装置であって、前記バイオマス粉粒体11をガス化炉13内部に直接供給する粉粒体供給部14と、前記粉粒体供給部14の周囲から分散用の水蒸気15を供給する水蒸気供給部16とを具備するものである。
なお、図1中、符号13aはガス化炉内の高温燃焼部、13bはガス化反応部、19は粗粒体、20は粗粒体受けホッパを各々図示する。
【0017】
ここで、粉粒体供給部14に投入されるバイオマス粉粒体11は、図示しない原料ホッパから供給フィーダ21を有する供給ホッパ22内に一時的に貯留され、供給ホッパ22の底面側に設けられた切出しスクリュフィーダS1で所定量ずつ切出し、連結管23を介して、粉粒体供給部である押込みスクリュフィーダS2に送られている。この押込みスクリュフィーダS2の先端側は、ガス化炉13内に直接開口され、この開口部から押し出されたバイオマス粉粒体11が直接供給されている。
【0018】
また、連結管23にはロータリバルブR1、R2が設けられ、所定量供給されるバイオマス粉粒体11を例えば窒素等の搬送ガス24により搬送するようにしている。
なお、供給ホッパ22の下方底面にはバイオマス粉粒体11を所定量切出す切出しレーキ22aが設けられており、所定量を切出しスクリュフィーダS1に切出すようにしている。
【0019】
本発明では、バイオマス粉粒体11は、バイオマス原料を粉砕・乾燥したものが用いられている。本発明でバイオマス原料とは、エネルギー源または工業原料として利用することのできる生物資源(例えば、農業生産物または副産物、木材、植物等)をいい、例えば、スイートソルガム,ネピアグラス,スピルリナ等の公知のバイオマスが用いられている。
【0020】
本実施例では、図2に示すように、粉粒体供給部14の周囲に、高温水蒸気15を供給する供給通路16aを有する水蒸気供給部16が設けられており、押込みされるバイオマス粉粒体11を分散用ガス化剤である水蒸気15によりアシストされつつ吹き込むようにしている。
【0021】
この結果、従来技術の水蒸気による直接搬送に較べて、少ないガス化剤量にてバイオマス粉粒体11をガス化炉13の内部に供給することができる。
【0022】
すなわち、従来の水蒸気搬送の場合には、圧力シールを行う必要があることから、相応の水蒸気量が必要となっていたが、本発明によれば、強制的に押込まれたバイオマス粉粒体11をガス化炉13内に舞い上がらせるように供給する量(所定の分散量)で足りるので、水蒸気搬送のような大量の水蒸気が不要となる。
【0023】
この結果、ガス化炉内でのガス化剤12以外に供給する水蒸気15の投入量の調整が容易となり、より液体燃料に適した余剰の水蒸気がない生成ガスを得ることができる。
【0024】
ここで、水蒸気15は、例えば400〜500℃程度の高温のものを用いており、例えばガス化炉の排熱等を用いるようにしている。
【0025】
また、本実施例では粉粒体供給部14の周囲には、図2に示すように、断熱部18が設けられており、高温の水蒸気15の影響がバイオマス粉粒体11に及ばないようにしている。これにより、高温の水蒸気15による部分的な加熱がなく、しかも高温水蒸気15による間接的な乾燥により、供給ホッパ22の状態よりもより乾燥したバイオマス粉粒体11をガス化炉13内部に供給することができる。なお、間接的な加熱の影響が少ないような場合には、供給する水蒸気15の温度に応じて断熱部18を適宜設けるようにすればよい。
【0026】
この断熱部18は、例えば耐火材を用いてバイオマス粉体の固着を防止している。
なお、耐火材以外としては、例えば水冷式ジャケット、低温水蒸気又は生成ガスなどの供給を例示することができる。
【0027】
本発明によれば、ガス化剤としての水蒸気の供給の際に、バイオマス粉粒体11のガス化炉13内での分配用のアシストガスとして必要量を供給することができることとなる。この結果、従来の水蒸気搬送等による多量の水蒸気を必要とせず、生成ガス17を用いて例えば液体燃料を製造する場合に、より液体燃料製造に適した生成ガス17を製造することができる。
【0028】
よって、ガス化炉13内での粉粒体供給部14の開口より排出されるバイオマス粉粒体11は、周囲から噴出される水蒸気15にアシストされてガス化炉13内を浮遊し、不均一な粒径のバイオマスであっても、効率的なガス化反応が可能となる。
【実施例2】
【0029】
図3は、本発明による実施例に係るバイオマスガス化装置に係る粉粒体供給部の構成を示す概略図である。
図3に示す粉粒体供給部14においては、その周囲に水蒸気供給部16を設けるようにしているが、本実施例では、水蒸気供給部16の下側に半割状の水蒸気供給部16を設けるようにしている。
【0030】
実施例1においては、粉粒体供給部14の周囲に水蒸気供給部16を設けているので、水蒸気15による間接的な加熱による影響が大きい場合がある。
このような場合において、粉粒体供給部14の下側に半割状の水蒸気供給部16を設けて、ガス化炉13内に分散するアシスト水蒸気を必要量供給するようにしている。これにより必要以上の加熱が抑制されると共に、効果的な高温水蒸気によるガス化炉内への分散アシストが可能となる。
【実施例3】
【0031】
図4は、本発明による実施例に係るバイオマスガス化装置に係る粉粒体供給部の構成を示す概略図である。
図4に示す粉粒体供給部14においては、その周囲に水蒸気供給部16を設けるようにしているが、本実施例では、粉粒体供給部14の下側の少し離れた箇所に断面矩形状の水蒸気供給部16を設けるようにしている。
【0032】
実施例1においては、粉粒体供給部14の周囲に水蒸気供給部16を設けているので、水蒸気15による間接的な加熱による影響が大きい場合がある。
このような場合において、粉粒体供給部14の下側に矩形状の水蒸気供給部16を設けて、ガス化炉13内に分散するアシスト水蒸気を必要量供給するようにしている。これにより必要以上の加熱が抑制されると共に、効果的な高温水蒸気によるガス化炉内への分散アシストが可能となる。
【符号の説明】
【0033】
10 バイオマスガス化装置
11 バイオマス粉粒体
12 ガス化剤
13 ガス化炉
14 粉粒体供給部
15 水蒸気
16 水蒸気供給部
17 生成ガス




【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス粉粒体をガス化剤によりガス化し生成ガスを得るガス化装置であって、
前記バイオマス粉粒体をガス化炉内部に直接供給する粉粒体供給部と、
前記粉粒体供給部の周囲又は下部側のいずれかより分散用の水蒸気を供給する水蒸気供給部とを具備することを特徴とするバイオマスガス化装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記粉粒体供給部の周囲に断熱部を有し、該断熱部の外側に水蒸気供給部が設けられていることを特徴とするバイオマスガス化装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記粉粒体供給部が、押込みフィーダであることを特徴とするバイオマスガス化装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−246439(P2012−246439A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120837(P2011−120837)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)