説明

バイオマス熱化学分解ガス化装置

【課題】油脂を含むバイオマス原料から、高品質の炭化水素を効率よく低コストで素早く連続生産することのできるバイオマス熱化学分解ガス化装置を提供する。
【解決手段】上流端側にバイオマス原料と触媒原料を投入する投入口21を有する第1の筒状シリンダ20の内部で、前記バイオマス原料と触媒原料を混練しながら搬送する混練部2と、上流端側に受け入れ口31を有し、且つ外周部に複数の分解ガス放出孔34を有する第2の筒状シリンダ30の内部にパドル33を有する攪拌スクリューコンベア32を設け、前記第2の筒状シリンダ30内を加熱する高周波誘導加熱手段40又はマイクロ波照射加熱手段を設け、熱化学分解及びガス化させつつ下流側へ搬送する反応部3と、第2の筒状シリンダ30内部に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段37と、第2の筒状シリンダ30の分解ガス放出孔34を通じて放出される分解ガスを回収するガス回収手段5とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂を含むバイオマス原料(搾油残渣や動物性を含む)から高効率で低コストに炭化水素油を採り出すことのできるバイオマス熱化学分解ガス化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、炭酸ガス排出規制に対応する取り組みの一つとして、化石燃料にかえて動植物起源の各種バイオマス原料から液体燃料を取り出す試みが盛んに行われている。バイオマス原料から液体燃料を取り出すエネルギー変換技術としては、熱化学系のものが知られている。例えば、炭水化物系原料やバイオマス原料からバイオエタノールを取り出す発酵技術(特許文献1、2)、動植物油や廃食油をメチルエステル化してバイオディーゼルを得るエステル化技術(特許文献3、4を参照)、木質バイオマス原料を高温高圧で反応させたり、反対に、比較的低圧で温和な反応条件で灯油・軽油〜重油留分を得るバイオオイル化技術(特許文献5を参照)等が知られている。
【0003】
しかしながら、発酵技術で得られるバイオエタノールは同量のガソリンと比べると熱量が小さく、内燃機関で燃焼した場合にガソリン燃焼よりもNOx等が多く排出される可能性がある。また、インフラの整備も必要となり、食料と競合する場合もある。一方、エステル化技術は、原料となる動植物油の前処理たとえば脱ガム処理や、廃食油の場合は酸化や水分の混入が大きく、また動物油脂と植物油脂が混ざっていること等で前処理にコストがかかり、反応後の触媒および発生したグリセリンの洗浄処理など後処理にもコストがかかる。また、総じて生成油の品質が低いために一般の内燃機関で使用するとフィルターの目詰まりや部品の劣化等の不具合が起こる。更に、原料の大量安定的確保も難しく、なによりエステル化反応には時間がかかる。
【0004】
バイオオイル化技術は、主として木質系バイオマス原料を高温、高圧で熱分解させて重油のような性状のバイオオイルを作り、それを重油代替燃料としてボイラー等に化石重油と混燃すること、さらには前記バイオオイルからGTL技術によりFT蒸留して軽質油に改質することも可能である。しかしながら、生成油であるバイオオイルの収率が非常に低く、製造工程が複雑で設備に巨費を要する為、安価で安定・大量生産可能な燃料製造技術として十分に確立されているとは言えない。
【0005】
その他、油脂類を熱分解して気化させ、生じたガスとアルミノシリケート系触媒とを接触させて燃料油を製造する技術も知られている(例えば、特許文献6、7を参照)。しかしながら、この方法では、熱分解槽と触媒槽とが分離しているため、製造装置のサイズが大きくなりやすく、また、高温に加熱された油脂のガスがアルミノシリケート系触媒に接触するまでの間に、ガス成分同士がラディカル反応を起して重縮合し複雑な炭化水素化合物となりやすく、高品質の燃料が得られにくいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−278825号公報
【特許文献2】特開2009−100713号公報
【特許文献3】特開2009−203346号公報
【特許文献4】特開2009−235313号公報
【特許文献5】特開2006−063310号公報
【特許文献6】特開2009−35678号公報
【特許文献7】特開2009−179785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、油脂を含むバイオマス原料から、高品質の炭化水素を効率よく低コストで素早く連続生産することのできるバイオマス熱化学分解ガス化装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述の課題解決のために、上流端側にバイオマス原料と触媒原料を投入する投入口を有する第1の筒状シリンダの内部に、搬送歯や原料によっては破砕歯、混練歯などを適切に配置させたパドルを有する回転軸を設け、該回転するパドルによりシリンダ内に投入された前記バイオマス原料と触媒原料を混練し、原料によっては粗破砕もしながら下流端側へ搬送する混練部と、上流端側に前記混練部で調製された原料を受け入れる受け入れ口を有し、且つ外周部に複数の分解ガス放出孔を有する第2の筒状シリンダの内部に、搬送と攪拌を行うパドルを有する攪拌スクリューコンベアを設け、前記第2の筒状シリンダ内を加熱する高周波誘導加熱手段又はマイクロ波照射加熱手段を設け、前記パドルによりシリンダ内の調製原料を攪拌しながら熱化学分解及びガス化させつつ下流側へ搬送する反応部と、前記第2の筒状シリンダ内部に窒素やヘリウム等の不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と、前記反応部全体を覆う気密チェンバーよりなり、前前記第2の筒状シリンダの分解ガス放出孔を通じて外側に放出される分解ガスを回収するガス回収手段とを備えることを特徴とするバイオマス熱化学分解ガス化装置を構成した(請求項1)。
【0009】
ここで、前記攪拌スクリューコンベアが、無軸スクリューコンベアの軸方向に隣接するスクリューパドルのピッチ間に攪拌部材を渡設してなるものが好ましい(請求項2)。
【0010】
また、前記分解ガス放出孔が前記第2の筒状シリンダ外周部の上面側にのみ設けられ、該分解ガス放出孔の外側に、二酸化炭素を選択的に吸着する目的を有する活性炭フィルター層又は固体触媒層を設けたものが好ましい(請求項3)。
【0011】
更に、前記第2の筒状シリンダ内の温度と圧力をセンシングするセンサーを設け、温圧を精密に管理するための制御モニター装置を設けたものが好ましい(請求項4)。
【0012】
また、前記第1の筒状シリンダの下流側端部と第2の筒状シリンダの上流側端部とが、第2のシリンダから第1のシリンダへの熱伝導を遮断する連結部を介して接続された一体型の装置であり、反応部の軸を混錬部の軸よりも下方に位置させた請求項1〜4の何れか1項に記載のバイオマス熱化学分解ガス化装置であることが好ましい(請求項5)。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係るバイオマス熱化学分解ガス化装置によれば、混練部においてバイオマス原料と触媒原料が第1の筒状シリンダ内で混練されながら搬送され、この混練過程で、バイオマス原料と触媒原料が均質に接触し、後の反応部でバイオマス原料中の油脂成分の熱分解および接触触媒反応による(ガス化並びに)脱炭酸反応(熱化学分解反応)が効率よく行なわれる状態の調製原料とされる。つまり原料の油脂と触媒の接触効率を高めるための均一混錬による原料の調整が行なわれる。次にこの調製原料が反応部の第2の筒状シリンダ内を搬送・攪拌されながら高周波誘導加熱手段又はマイクロ波照射加熱手段により効率よく急速に加熱され、調製原料中の油脂成分が熱分解し、瞬時に該バイオマス原料と接触している調製原料中の触媒と接触反応することで速やかに脱炭素反応が生じる。このような急速加熱はタールの発生を抑制する。
【0014】
このように本発明では、バイオマス原料の油脂成分を瞬時に急速かつ均一に加熱でき、反応炉全体や原料全体を四六時中加熱するのではなく原料と触媒の接触部分を選択的に集中的に加熱するため、バイオマス原料中の油脂の熱分解ガス化と脱炭酸脱炭素反応を効率よく行なわせることができ、生産効率の向上を図ることができるとともに燃料油となる高品質の炭化水素油を得ることができる。すなわち本装置で得られたガスは、冷却凝縮して粗油に化し、該粗油を分留すれば各種炭化水素油を得ることができ、油脂を含むバイオマス原料から、複雑な構造とすることなく低コストで、且つ高品質の炭化水素油を、効率よく連続的に生産できるのである。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、前記攪拌スクリューコンベアが、無軸スクリューコンベアの軸方向に隣接するスクリューパドルのピッチ間に攪拌部材を渡設してなるので、シリンダ内部の調製原料がスクレイプされピッチ間において移動しながら攪拌することを繰り返し、前方に押し出されることとなり、反応過程で調製原料を適度に攪拌することで反応時間が一層短縮され、発生する分解ガスの回収が容易となる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、前記第2の筒状シリンダの前記分解ガス放出孔の外側に、活性炭フィルター層又は固体触媒層を設けたので、活性炭フィルター層では分解ガス中の二酸化炭素をより選択的・効率的に吸着でき、また固体触媒層では上記熱化学分解反応をより確実に行なわせることができる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、前記第2の筒状シリンダ内の温度及び圧力をセンシングするセンサーを設けたので、検出された温圧データのフィードバックをもとに反応部内部の環境を電気的にリアルタイムに監視制御するモニターでき、測定結果に基づき原料供給量や回転スピード、加熱手段による加熱温度、不活性ガスの供給量などを調整できる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、混練部を構成する第1の筒状シリンダと反応部を構成する第2のシリンダを1つの動力で作動するように一体型としたので、混練部から反応部に調製原料が直接渡され、途中の配管等が省略でき、装置全体を小型化でき、より効率良く低コストに生産できる。また、反応部の軸を混錬部の軸よりも下方に位置させた。これは、反応部の軸は無軸スクリューコンベアを保持するクランクを有するが、連結部にギアボックスを設けて無軸スクリューコンベアのクランクを設けるために、反応部の軸の位置は筈かに下方に位置する。それによりクランク動作がおこり、反応物が上部の細孔(分解ガス放出孔)を閉塞することがなく、さらに反応部の熱が混錬部に伝わることを遮断できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係るバイオマス熱化学分解ガス化装置を示す概略図。
【図2】同じくバイオマス熱化学分解ガス化装置の変形例を示す概略図。
【図3】本発明の第2実施形態に係るバイオマス熱化学分解ガス化装置を示す概略図。
【図4】本発明の第3実施形態に係るバイオマス熱化学分解ガス化装置を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明に係るバイオマス熱化学分解ガス化装置の全体構成を示す概略図であり、図1及び図2は本発明の第1実施形態、図3は第2実施形態、図4は第3実施形態を示し、図中符号1はバイオマス熱化学分解ガス化装置、2は混練部、3は反応部、4は加熱手段、5はガス回収手段をそれぞれ示している。
【0022】
本発明のバイオマス熱化学分解ガス化装置1は、図1に示すように、バイオマス原料と触媒原料を混練して調製原料とする混練部2と、調製原料を加熱してガス化及び脱炭酸反応(熱化学分解反応)させる反応部3とを連続的に設けた装置であり、別途の反応炉への挿入・取り出しの作業など原料投入後の作業が不要であり、燃料油となる高品質の炭化水素油を効率よく得ることを可能とする装置である。本発明でいう熱化学分解反応とは、原料油脂(脂肪酸)が加熱により摂氏300度付近でエステルが熱分解しβ―シス型脱離反応が起こる結果、遊離脂肪酸とグリセリン分解物を生成し、更に摂氏400度付近で賦活された触媒との接触触媒反応により脱炭酸が促進され脱水・重合して炭化水素油(分解ブラ)となる反応をいう。
【0023】
バイオマス原料は、油脂を含むものであれば固相および液相どちらのバイオマスにも対応でき、特に安価で手に入り易く、取り扱い易いという観点からは、種子内に栄養として油脂(脂肪酸)を貯蔵している油糧植物のバイオマス原料が好ましい。このような油糧植物の中でも、ジャトロファ(ナンヨウアブラギリ)、ヒマワリ、ゴマ、ナタネ、ツバキ、パームヤシ、ココヤシ等が挙げられる。中でも、食料とはならず、大量に生産が可能なジャトロファ、パームヤシ、パームヤシの搾油残渣等を用いることが好ましい。また、生成される分解油の油質に違いがでるが、動物性油脂、種皮、果皮、枝、葉部分を含むバイオマス原料であってもよい。原料は使用前に数日間陰干し乾燥しておくことで余計な水分が除かれ、エネルギー節約を行いつつ反応部のシリンダー内圧の負担軽減と材料コストの節約、および油脂の効率的な熱化学分解を行うことができる。混錬部のパドルの交換により、使用する原料が硬皮種子であっても反応は円滑に行われる。
【0024】
触媒原料は、バイオマス原料からの油脂ガスを脱炭酸反応させることが可能な触媒であればよい。例えば、海塩、死滅珊瑚粉末、これらの炭素塩を活性炭や多孔質シリカに担持させた触媒等が挙げられる。特に炭素塩を担持した活性炭の触媒を用いると、活性炭部分が効率的な熱媒体となってバイオマス原料への加熱速度が向上する。具体的には、CaO及び/又はMgOと、活性炭とを含むものが好ましい。更には、KOHを含むものが好ましい。また、活性炭は多孔質シリカよりも二酸化炭素選択性が高いため脱炭酸反応による二酸化炭素吸着に有効である。触媒原料は、これら成分を別々に投入してもよいし、例えばCaO及び/又はMgOを活性炭に担持された状態で投入してもよい。更に、予めCaO及び/又はMgOと活性炭原料とを焼成担持させたものを投入してもよい。焼成前のものでも反応部で加熱されることで300度近辺で焼成担持されることとなる。混錬部のパドルとシリンダーのクリアランスが0.5mm以下が望ましいので、またバイオマス原料と触媒原料との相均一を達成するためには触媒原料の粒度は0.5mm以下の粒度とすることが好ましい。
【0025】
まず、図1、2に基づき、本発明の第1実施形態を説明する。
【0026】
混練部2は、公知の混練機の構造と同様のものを採用でき、上流端側にバイオマス原料と触媒原料を投入する投入口21(定量ホッパー)を有する第1の筒状シリンダ20の内部に、パドル23を有する回転軸22を設け、該回転するパドル23によりシリンダ20内に投入された前記バイオマス原料と触媒原料を混練しながら下流端側へ搬送する装置部分である。パドル23は、例えば、送り込み用のスクリュー歯、破断・破砕用歯、混錬用歯、送り出し用スクリューを順に組み合わせたものとなる。原料が液体の時は破砕歯は不要となる。混練部2は、単軸式、二軸式又はそれ以上の複数軸式とすることが可能である。例えば二軸式の場合、平行な二本の回転軸が軸方向に設けられ、各回転軸に断面楕円形等の歯や形状の異なるブレード等が取り付けたものなどを採用できる。そして、投入口21からシリンダ内に投入された原料が二本の回転軸の間およびシリンダ内周面との間で摩擦混合されることで混練されながら、前方向(下流側)に搬送される。
【0027】
混練部2の第1の筒状シリンダ20の下流端には、セラミックス製等の断熱材(セラミックウール塗装など)を挟んで反応部3を構成する第2の筒状シリンダ30の上流端側の受け入れ口31が装着される連結部7が設けられ、該連結部7を介して両シリンダ20、30が熱遮断された状態に連結されている。これは熱伝導により混錬部まで昇温させてしまうと、混錬不十分の段階で熱分解反応が起こることを防止するためである。この連結部7には、混練部2側の第1のドアと反応部3側の第2のドアがあり、第1ドアが開き、原料が搬入されると閉じて、第2ドアが開く構造を有する。
【0028】
反応部3は、上流端側に前記受け入れ口31、下流端側に残渣を排出する排出口36、窒素やヘリウム等の不活性ガスを供給するガス供給口37、及び外周部の複数の分解ガス放出孔34を有する第2の筒状シリンダ30を備え、該筒状シリンダ30の内部には、搬送・攪拌機能を有するスクリューパドル33からなる攪拌スクリューコンベア32が設けられている。分解ガス放出孔34はシリンダ下部に設けても反応物で詰まるため、上面だけとされる。スクリューパドル33とシリンダ下部の内壁との間に0.5mm以下のクリアランスだが、上部はパドルに付着した反応物がガス放出孔を塞ぐことを避けるために、さらに発生ガスによる内圧の上昇を抑えるために余剰空間が必要であり、シリンダ上部には十分な容積が与えられる。これにより熱容量も増えて混錬部の温度が上がる事を防ぐこともできる。
【0029】
そして、上記混練部2の第1の筒状シリンダ20の下流側端部から排出された調製原料を連結部7を介して受け入れ口31から受け入れ、パドル33の回転により調製原料が攪拌されながら軸方向に搬送される。つまり第1の筒状シリンダ20及び第2の筒状シリンダ30の内部を原料がほぼ連続的に移動し、混練調製、不活性雰囲気下での熱分解、脱炭酸、ガス化という一連の反応と処理が連続的かつ自動的に為され、残渣が排出口36から排出される。不活性ガスは内部雰囲気中の酸素濃度等をゼロ近くに調整して原料の燃焼を防止する。排出口36にはバネ付勢された圧力弁が設けられ、残渣が一定以上蓄積すると圧力で弁を押し開けて残渣を排出する。これにより排出口36からのガス漏れが防止されている。
【0030】
攪拌スクリューコンベア32は、両端がクランク軸で保持される無軸スクリューコンベアの軸方向に隣接するステンレス薄板製のスクリューパドル33のピッチ間に、図示したような攪拌部材38を渡設し、搬送とともに攪拌の機能を有する構造とされている。無軸スクリューコンベアとすることで軸を通した混錬部への熱伝導を小さくでき、僅かな熱伝導は摂氏60度以下であれば混錬部の原料粘度をあげて作業性が高まる。更に低コストで加熱効率を向上することができる。
【0031】
攪拌部材38は本例ではピッチ間の寸法に等しい長さを有する攪拌板であり、パドル外周縁(山の頂点)から回転中心にむかう放射方向に取り付ける。攪拌板の幅はスクリューパドル幅の半分くらいに設定される。尚、本例では攪拌部材38をパドル外周縁に端部を一致させたものとしたが、図2に示すように一部の攪拌部材をパドル途中位置に設けたものでもよい。また、攪拌部材38は板状の攪拌板以外に棒状や線状、例えば単又は複数本のピアノ線をピッチ間に張設したものでもよい。このような攪拌部材38によりシリンダ内部の最下部にある調製原料がスクレイプされピッチ間において移動しながら攪拌することを繰り返し、前方に押し出される。調製原料(被加熱物)は基本的に油脂と触媒等の固体および種皮や果皮などが混錬されたスラリー状態で反応部に投入されるので、反応過程で調製原料を適度に攪拌することで反応時間が一層短縮され、発生する分解ガスの回収も容易となるのである。
【0032】
また、第2の筒状シリンダ30を加熱する加熱手段4として、高周波誘導加熱手段40が設けられている。本例では、シリンダ壁そのものの上下部ないし左右部を電極とする。その他コイル状導線とこれに電気的に接続した電源とから構成することもできる。シリンダ壁は、電気抵抗の大きな金属であればよくステンレスが望ましい。調製原料は高周波誘導加熱手段により直接、急速に加熱され、バイオマス原料に含まれる油脂のガス化が生じる。本例では触媒の担持体および別途熱媒体として活性炭を混錬するので更に加熱効率がよい。例えば、原料60kgを従来のエステル反応を用いた製造方法に供した場合には、油を製造するのに8時間程度かかるとされているが、本発明の装置によれば、約数分程度に処理時間を低減することが可能になる。この反応部3では、急速、高温、均一な熱分解が行なわれるため、バイオマス原料からのタールの発生はほとんどないか極めて少なくてすむ。したがって、タールを回収する手間も省けるし、装置の保守も容易になる。
【0033】
そして、シリンダ間を連結している上述した連結部7には、更に電磁波漏出を防止する電磁波トラップが設けられる。また、反応部3を構成している当該筒状シリンダ30内には、温度センサーと圧力センサーが設けられ、検出された温圧データのフィードバックをもとに反応部内部の環境を電気的にリアルタイムに監視制御するモニターでき、測定結果に基づき原料供給量や回転スピード、加熱手段4による加熱温度、不活性ガスの供給量などを調整する。
【0034】
第1の筒状シリンダ20の混練用の回転軸22と、第2の筒状シリンダ30の攪拌スクリューコンベア32のクランク軸は、連結部7内で断熱部を介して連結され、共通の駆動モータ90を用いて互いに連動して回転するように構成されている。回転軸22が単軸であればセラミックス製等の断熱材を介在させて互いに連結すればよく、二軸式の混練用回転軸の場合はギアボックスを介して二軸から一軸に変換し、その変換後の出力軸とクランク軸とを同じく断熱材を介在させて互いに連結すればよい。混練部2は二軸式とすれば均一な混練が可能であり、一軸式とすれば低コスト化ができる。一方の回転軸自体を断熱素材で作製することも可能である。尚、このように回転軸22とクランク軸を連動させることは必ずしも必要でなく、別途の軸受けでそれぞれ独立支持させ、攪拌スクリューコンベアを別途の駆動モータで駆動させるようにすることも好ましい。このような構造では、攪拌スクリューコンベア間が離間するので両者間で熱が遮断され、断熱部を省略した簡易な構造とすることが可能となる。
【0035】
筒状シリンダ30の外周面側には、更にガスが内から外に向けて内部を接触流通する活性炭フィルター層35が外装されている。この活性炭フィルター層35は分解ガス中の二酸化炭素をより選択的・効率的に吸着するものであり、筒状のものを外装してもよいし、シート状のものを巻き付けてもよい。活性炭フィルター層35の代わりに、上記した触媒原料と同様の成分からなる固体触媒層とすることもできる。例えばCaO及び/又はMgOと活性炭とKOHとを含むものが好適である。このような固体触媒層は、濾材に上記成分を炭素繊維の不織布上に均一に分散付着させたフィルター状の濾布部材とすることができ、上記触媒成分を濾材に吹き付け塗装して乾燥したものや、触媒成分を水溶液中に分散させた液に濾材を浸漬して乾燥させることで作製できる。
【0036】
反応部3を構成している第2のシリンダ30の外周側には、該シリンダ30の分解ガス放出孔34から放出され、活性炭フィルター層35を通過した分解ガスを封じ込め、回収口81から回収するための気密チャンバー8が設けられている。この気密チャンバー8は、内部に活性炭フィルター層35及び加熱手段4の高周波誘導加熱手段40を内装した状態でシリンダ30の外周側の空間を囲む容器であり、活性炭フィルター層35の外側に放出される分解ガスを回収するガス回収手段5を構成している。気密チャンバー8には、上述の第2の筒状シリンダ30と同様、窒素やヘリウム等の不活性ガスがガス供給口82から供給され、内部雰囲気中の酸素濃度等をゼロ近くに調整して原料の燃焼を防止している。気密チャンバー8は、作業者の安全性の観点から、高周波を反射するステンレス等の材料で構成され、内部には筒状シリンダ30と同様、赤外線温度センサーと圧力センサーが設けられ、測定結果に基づき加熱手段4による加熱温度を調整したり不活性ガスの供給量を調整する。
【0037】
回収口81から回収される分解ガスは、冷却凝縮することで、粗油にすることができる。冷却凝縮は、常法に従って行えばよい。例えば、摂氏5度にした冷媒に分解ガスを接触させることで急速に冷却凝縮させて液化してもよいし、零下80度程度の深冷トラップを設けて凝縮液化させることもできる。凝縮液を所望の容器内において炭化水素油を含む油層と水層とに分離し、油層を取り出すことで粗油を得ることができる。粗油は、炭素数8から18の種々の脂肪族系炭化水素油である。次に、粗油を蒸留装置を設けて分留に供することで炭化水素油を得ることができる。分留の方法は、同じく常法に従って行えばよい。この分留により重油に近い重質なオイルから灯油、軽油等の炭化水素油が得られる。
【0038】
次に、図3に基づき、本発明の第2実施形態を説明する。
【0039】
本実施形態は、加熱手段4として高周波誘導加熱手段の代わりにマイクロ波照射加熱手段41を設けたものである。本例の筒状シリンダ30は、マイクロ波がシリンダ内の調製原料を加熱できるように耐熱ガラス製とされている。このマイクロ波照射加熱手段41によると、高周波誘導加熱手段と同様、調製原料が直接急速に加熱される。調製原料には触媒の担持体および別途熱媒体として活性炭が混錬されるので、更に加熱効率がよい。連結部7には、電磁波トラップを設けて電波を吸着し、電波障害を無くす工夫がなされている。その他の構成、作用効果については上記第1実施形態と基本的には同じであり、同一構造には同一符号を付し、説明を省略する。
【0040】
次に、図4に基づき、本発明の第3実施形態を説明する。
【0041】
本実施形態では、混練部2の筒状シリンダ20と反応部3の筒状シリンダ30を連結せずに分離したものであり、混練部2の回転軸と反応部3の攪拌スクリューコンベア32のクランク軸は互いに独立の駆動モータ90、91で独立に回転駆動され、シリンダ、回転軸とも完全に熱が遮断される構造である。混練部2で混練調製された原料は、排出口25を通じて筒状シリンダ20から排出され、反応部3の筒状シリンダ30の受け入れ口31(ホッパー)から筒状シリンダ30内に投入される。受け入れ口31には、第1実施形態の連結部7と同様、原料が搬入されると閉じてガス漏れを防ぐドアが設けられる。排出口25と投入口31の間は、好ましくはホースやベルトコンベアを介して、原料が連続的に移動し、上記第1実施形態と同様、混練調製、ガス化、脱炭酸反応の一連の処理を自動的に為し、生産効率を高めたものが好ましい。その他の構成、作用効果については上記第1実施形態と基本的には同じであり、同一構造には同一符号を付し、説明を省略する。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0043】
1 バイオマス熱化学分解ガス化装置
2 混練部
3 反応部
4 加熱手段
5 ガス回収手段
7 連結部
8 気密チャンバー
20 筒状シリンダ
21 投入口
22 回転軸
23 パドル
25 排出口
30 筒状シリンダ
31 受け入れ口
32 攪拌スクリューコンベア
33 スクリューパドル
34 分解ガス放出孔
35 活性炭フィルター層
36 排出口
37 ガス供給口
38 攪拌部材
40 高周波誘導加熱手段
41 マイクロ波照射加熱手段
81 回収口
82 ガス供給口
90 駆動モータ
91 駆動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流端側にバイオマス原料と触媒原料を投入する投入口を有する第1の筒状シリンダの内部に、パドルを有する回転軸を設け、該回転するパドルによりシリンダ内に投入された前記バイオマス原料と触媒原料を混練しながら下流端側へ搬送する混練部と、
上流端側に前記混練部で調製された原料を受け入れる受け入れ口を有し、且つ外周部に複数の分解ガス放出孔を有する第2の筒状シリンダの内部に、搬送と攪拌を行うパドルを有する攪拌スクリューコンベアを設け、前記第2の筒状シリンダ内を加熱する高周波誘導加熱手段又はマイクロ波照射加熱手段を設け、前記パドルによりシリンダ内の調製原料を攪拌しながら熱化学分解及びガス化させつつ下流側へ搬送する反応部と、
前記第2の筒状シリンダ内部に不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と、
前記反応部全体を覆う気密チェンバーよりなり、前記第2の筒状シリンダの分解ガス放出孔を通じて外側に放出される分解ガスを回収するガス回収手段と、
を備えることを特徴とするバイオマス熱化学分解ガス化装置。
【請求項2】
前記攪拌スクリューコンベアが、無軸スクリューコンベアの軸方向に隣接するスクリューパドルのピッチ間に攪拌部材を渡設してなる請求項1記載のバイオマス熱化学分解ガス化装置。
【請求項3】
前記分解ガス放出孔が前記第2の筒状シリンダ外周部の上面側にのみ設けられ、該分解ガス放出孔の外側に、二酸化炭素を選択的に吸着する目的を有する活性炭フィルター層又は固体触媒層を設けてなる請求項1又は2記載のバイオマス熱化学分解ガス化装置。
【請求項4】
前記第2の筒状シリンダ内の温度及び圧力をセンシングするセンサーを設けてなる請求項1〜3の何れか1項に記載のバイオマス熱化学分解ガス化装置。
【請求項5】
前記第1の筒状シリンダの下流側端部と第2の筒状シリンダの上流側端部とが、第2のシリンダから第1のシリンダへの熱伝導を遮断する連結部を介して接続された一体型の装置であり、反応部の軸を混錬部の軸よりも下方に位置させた請求項1〜4の何れか1項に記載のバイオマス熱化学分解ガス化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−178859(P2011−178859A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43345(P2010−43345)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(508214352)日本バイオエナジー株式会社 (3)