説明

バイオマス発電システム、資源分配輸送量算出装置および方法

【課題】バイオマス資源の発生量が変動しても、各バイオマス発電設備において、安定して高い発電効率を得る。
【解決手段】資源発生ポイント11〜14ごとに、当該資源発生ポイントで発生したバイオマス資源を一時的に貯蔵する資源貯蔵庫51〜54を設けるとともに、これら資源貯蔵庫51〜54に貯蔵されているバイオマス資源を各バイオマス発電設備21〜23へ分配輸送する輸送経路31をそれぞれ設け、これら資源貯蔵庫51〜54に貯蔵されているバイオマス資源の貯蔵量と、予め設定されている各バイオマス発電設備21〜23の稼働条件とに基づいて、資源分配輸送量算出装置60で、資源貯蔵庫51〜54から各バイオマス発電設備21〜23へ分配輸送するバイオマス資源の輸送量をそれぞれ算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス発電技術に関し、特にバイオマス発電設備に輸送するバイオマス資源の分配制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新エネルギーとしてバイオマス資源の導入普及が期待されている(例えば、非特許文献1など参照)。バイオマス資源は、動植物に由来する有機物(化石燃料を除く)であって、エネルギー源として利用可能なものである。
これらバイオマス資源の具体例としては、木質バイオマス、食品加工廃棄物、家畜糞尿、固形有機物など、様々な種類があり、これらバイオマス資源が発生する資源発生ポイントは、それぞれ異なる位置に存在する。
【0003】
また、このようなバイオマス資源を用いて発電を行うバイオマス発電方式についても、バイオマス資源の種類に応じて、燃料電池発電、ガスエンジン発電、タービン発電など、様々な種類があり、これらバイオマス発電設備も、それぞれ異なる位置に存在する。
このため、バイオマス発電システムでは、これら資源発生ポイントで発生したバイオマス資源を、対応する各バイオマス発電設備に対して、輸送する必要がある。また、バイオマス資源の発生状況と発電効率とを考慮して、バイオマス資源を適切に分配する必要がある。
【0004】
木質バイオマスとは、間伐材や、製材残材、建築廃材などである。また、食品加工廃棄物とは、食品加工工場などから発生する、廃棄物である。家畜糞尿とは、主に牛、豚、鶏などの糞尿である。そして、固形有機物とは、主に生ゴミや剪定枝などである。
炭素を含む有機化合物を加熱すると分解し、固体・液体・気体に分かれる。固体・液体・気体の生成比率は、温度が低いと固体の割合が多く、温度が高くなるにつれて液体の割合が増え、高温になると気体の割合が多くなる。この原理より、例えば木質バイオマスを高温で加熱すれば、可燃性のガスを作ること(ガス化)ができる。
【0005】
ガス化は酸素が無い状態あるいは完全燃焼する状態よりも酸素の量を減らした状態で行う。酸素が無い状態でガス化するためには、外部から熱を与える必要がある。酸素の量を減らした状態で行うというのは、原料の一部を燃焼させて生じた熱を使って行う場合で、部分酸化ガス化と呼ばれる。部分酸化ガス化では、炭素の量1に対して、酸素の量を0.2〜0.3に減らして行う場合が多い。ガス化は家畜糞尿にも適用することが可能である。
【0006】
ガス化で生成した可燃性のガスは、例えば、燃料電池やガスエンジンで用いることができる。燃料電池やガスエンジンは、定格の出力で発電すれば想定した発電効率を得ることができるが、部分負荷で発電を行う場合は、発電効率が低下するという特徴がある。
【0007】
直接燃焼によるエネルギー利用は、木質系バイオマスのエネルギー技術において主たるものである。しかしながら、他にも、牛や鶏の糞といった家畜糞尿や、コーヒーかす等の食品加工廃棄物、固形有機物なども、直接燃焼してエネルギー利用することができる。直接燃焼したエネルギーを用いて、水を沸騰させ、蒸気のエネルギーでタービンを回せば、発電を行うことができる。基本的には、火力発電の仕組みと等しい。従って、部分負荷発電を行う場合は、やはり、発電効率が低下する。
【0008】
メタン発酵は、微生物による嫌気性発酵により有機物を分解し、その過程で発生するメタン等をエネルギー利用する技術である。具体的には、以下の三段階の反応を経て進行する。第一段階:加水分解・酸生成(液化)過程、第二段階:酢酸生成・脱水素過程、第三段階:メタン生成過程。メタン発酵の適用バイオマス資源としては、下水汚泥、し尿、有機性廃液、家畜糞尿、固形有機物、食品加工廃棄物などがある。
メタンは、燃料電池やガスエンジンで用いることができる。前述したように、燃料電池やガスエンジンは、部分負荷で発電を行う場合は発電効率が低下する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】バイオマスエネルギー導入ガイドブック(第3版)、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図6は、従来のバイオマス発電システムの構成例である。資源発生ポイント11〜14は、バイオマス資源が発生するポイントであり、バイオマス発電設備21〜23は、資源発生ポイント11〜14から輸送経路30を介して輸送されたバイオマス資源に基づいて発電を行う設備である。
例えば、資源発生ポイント11は、木質バイオマスを発生する発生源であり、資源発生ポイント12は、食品加工廃棄物バイオマスを発生する発生源であり、資源発生ポイント13は、家畜糞尿を発生する発生源であり、資源発生ポイント14は、固形有機物を発生する発生源である。
【0011】
一方、バイオマス発電設備21は、ガス化処理−燃料電池発電方式であり、資源発生ポイント11から輸送される木質バイオマスを用いて発電する。バイオマス発電設備22は、直接燃焼処理−タービン発電方式であり、資源発生ポイント12から輸送される食品加工廃棄物バイオマスと、資源発生ポイント13から輸送される家畜糞尿とを用いて発電する。バイオマス発電設備23は、メタン発酵処理−ガスエンジン発電方式であり、資源発生ポイント14から輸送される固形有機物を用いて発電する。
【0012】
このようなバイオマス発電システムでは、バイオマス資源の輸送経路は固定されており、その利用方法は固定されているため、バイオマス資源の発生量の変動に対して、柔軟に対応することができず、各バイオマス発電設備において安定して高い発電効率を得ることができないという問題点があった。
【0013】
例えば、ある木質バイオマス発生源の木質バイオマスは、あるバイオマス発電設備において、ガス化処理され、燃料電池発電システムの発電に利用される。または、ある食品加工廃棄物発生源の食品加工廃棄物と、ある家畜糞尿発生源の家畜糞尿は、あるバイオマス発電設備において、直接燃焼され、タービン発電に利用される。もしくは、ある固形有機物発生源の固形有機物は、あるバイオマス発電設備において、メタン発酵処理され、ガスエンジン発電に利用される。このように、ある発生源のバイオマス資源は、ある固定的な利用しかされていなかった。
【0014】
一方、バイオマス資源の発生量は、一年の内でも季節的に変化する。このため、バイオマス資源が固定的にしか利用されないバイオマス発電システムでは、バイオマス発電設備の規模は、バイオマス資源の発生量が最大となる時期に対応可能な規模とする必要がある。これは、バイオマス発電設備は、廃棄物の処理の意味も持っており、入力されたバイオマス資源のすべてを適切に処理する必要があるためである。しかしながら、バイオマス資源の発生量が最大となる期間は比較的短い。
【0015】
したがって、バイオマス発電設備では、入力されるバイオマス資源量が設備規模より少ないため、部分負荷運転を行うことになり、必然的に、稼働率の低い期間の割合が増大する。ここで、前述したように、バイオマス発電設備が、燃料電池発電方式、タービン発電方式、ガスエンジン発電方式のいずれであっても、基本的に部分負荷運転では発電効率が低下する。このため、各バイオマス発電設備では、その最高性能を殆ど発揮することができず、安定して高い発電効率を得ることができない。
【0016】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、バイオマス資源の発生量が変動しても、各バイオマス発電設備において、安定して高い発電効率を得ることができるバイオマス資源分配制御技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このような目的を達成するために、本発明にかかるバイオマス発電システムは、それぞれ所定種別のバイオマス資源を発生する複数の資源発生ポイントと、これら資源発生ポイントで発生したバイオマス資源を用いて発電を行う複数のバイオマス発電設備と、資源発生ポイントごとに、当該資源発生ポイントで発生したバイオマス資源を一時的に貯蔵する資源貯蔵庫と、これら資源貯蔵庫に貯蔵されているバイオマス資源を各バイオマス発電設備へ分配輸送する輸送経路と、各資源貯蔵庫に貯蔵されているバイオマス資源の貯蔵量と、予め設定されている各バイオマス発電設備の稼働条件とに基づいて、資源貯蔵庫ごとに、当該資源貯蔵庫から各バイオマス発電設備へ分配輸送するバイオマス資源の輸送量をそれぞれ算出する資源分配輸送量算出装置とを備えている。
【0018】
この際、各バイオマス発電設備の処理可能量の総和が、各資源発生ポイントで発生するバイオマス資源量の総和において想定される最大値と等しくなるようにしてもよい。
【0019】
また、資源分配輸送量算出装置で、各輸送量を算出する際、資源貯蔵庫ごとに、当該資源貯蔵庫における貯蔵量が当該資源貯蔵庫から各バイオマス発電設備へ分配輸送するバイオマス資源の輸送量の総和と等しいという第1の条件と、バイオマス発電設備ごとに、当該バイオマス発電設備へ各資源貯蔵庫から分配輸送されるバイオマス資源の輸送量の総和が、当該バイオマス発電設備の稼働条件である、当該バイオマス発電設備で所定の発電効率を得るのに必要なバイオマス資源量以上であって、かつ当該バイオマス発電設備で処理可能な最大バイオマス資源量以下であるという第2の条件とを満す、各輸送量の組合せを選択するようにしてもよい。
【0020】
また、資源分配輸送量算出装置で、第1および第2の条件を満たす各輸送量の組合せのうちから、当該組合せを適用した場合に、各バイオマス発電設備で発電される発電エネルギーの総量から、各資源貯蔵庫から各バイオマス発電設備へバイオマス資源を分配輸送するのに必要な輸送エネルギーの総量を減算して得られる評価値が最大となる組合せを選択するようにしてもよい。
【0021】
また、資源分配輸送量算出装置で、第1および第2の条件を満たす各輸送量の組合せのうちから、当該組合せを適用した場合に、各バイオマス発電設備で削減できるコストの総和から、各資源貯蔵庫から各バイオマス発電設備へバイオマス資源を分配輸送するのに必要なコストの総和と、各バイオマス発電設備の運用コストの総和との収支を示す総コスト量とを減算して得られる評価値が最大となる組合せを選択するようにしてもよい。
【0022】
また、本発明にかかる資源分配輸送量算出装置は、それぞれ所定種別のバイオマス資源を発生する複数の資源発生ポイントと、これら資源発生ポイントで発生したバイオマス資源を用いて発電を行う複数のバイオマス発電設備と、資源発生ポイントごとに、当該資源発生ポイントで発生したバイオマス資源を一時的に貯蔵する資源貯蔵庫と、これら資源貯蔵庫に貯蔵されているバイオマス資源を各バイオマス発電設備へ分配輸送する輸送経路とを備えるバイオマス発電システムで用いられる資源分配輸送量算出装置であって、各資源貯蔵庫とデータ通信を行うことにより、当該資源貯蔵庫で計測された当該資源貯蔵庫に貯蔵されているバイオマス資源の貯蔵量をそれぞれ取得する貯蔵量取得部と、各資源貯蔵庫の貯蔵量と予め設定されている各バイオマス発電設備の稼働条件とに基づいて、資源貯蔵庫ごとに、当該資源貯蔵庫から各バイオマス発電設備へ分配輸送するバイオマス資源の輸送量をそれぞれ算出する分配輸送量算出部とを備えている。
【0023】
また、本発明にかかる資源分配輸送量算出方法は、それぞれ所定種別のバイオマス資源を発生する複数の資源発生ポイントと、これら資源発生ポイントで発生したバイオマス資源を用いて発電を行う複数のバイオマス発電設備と、資源発生ポイントごとに、当該資源発生ポイントで発生したバイオマス資源を一時的に貯蔵する資源貯蔵庫と、これら資源貯蔵庫に貯蔵されているバイオマス資源を各バイオマス発電設備へ分配輸送する輸送経路とを備えるバイオマス発電システムで用いられる資源分配輸送量算出方法であって、貯蔵量取得部が、各資源貯蔵庫とデータ通信を行うことにより、当該資源貯蔵庫で計測された当該資源貯蔵庫に貯蔵されているバイオマス資源の貯蔵量をそれぞれ取得する貯蔵量取得ステップと、分配輸送量算出部が、各資源貯蔵庫の貯蔵量と予め設定されている各バイオマス発電設備稼働条件とに基づいて、資源貯蔵庫ごとに、当該資源貯蔵庫から各バイオマス発電設備へ分配輸送するバイオマス資源の輸送量をそれぞれ算出する分配輸送量算出ステップとを備えている。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、従来のように、資源発生ポイントで発生したバイオマス資源が、予め固定的に対応付けられたバイオマス発電設備でしか利用していない固定的なバイオマス発電システムと比較して、バイオマス資源の発生量の変動に応じて、各バイオマス発電設備へ分配輸送するバイオマス資源を適切な量だけ融通することができる。このため、各バイオマス発電設備で部分負荷運転を行う期間を大幅に短縮でき、結果として、各バイオマス発電設備において、安定して高い発電効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施の形態にかかるバイオマス発電システムの構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態にかかる資源分配輸送量算出装置の構成を示すブロック図である。
【図3】発電効率・量算出用DBの構成例である。
【図4】輸送量算出判定処理を示すフローチャートである。
【図5】第2の実施の形態にかかる資源分配輸送量算出装置の構成を示すブロック図である。
【図6】従来のバイオマス発電システムの構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[本発明の原理]
本発明は、1種類のバイオマス資源であっても、様々なエネルギー利用方法があるという点に着目したものである。例えば、木質バイオマスは、前述した利用例の中ではガス化と直接燃焼に適用できる。また、食品加工廃棄物は、前述した利用例の中では直接燃焼とメタン発酵に適用できる。そして、家畜糞尿は、前述した全ての適用例、すなわち、ガス化、直接燃焼、及びメタン発酵に適用可能である。さらに、固形有機物は、直接燃焼とメタン発酵に適用可能である。すなわち、1種類のバイオマス資源の使い方は、フレキシブルに変更することが可能である。
【0027】
本発明のバイオマス発電システムでは、各バイオマス発生ポイントに、貯蔵量を把握可能な資源貯蔵庫を設け、資源分配輸送量算出装置で全ての資源貯蔵庫での貯蔵量を管理した上で、任意の資源貯蔵庫から任意のバイオマス発電設備に任意の量のバイオマス資源を輸送するための輸送経路を設け、これら輸送経路でのバイオマス資源の輸送量を算出するようにしたものである。
【0028】
このため、本発明のバイオマス発電システムでは、その構成要素であるバイオマス発電設備のそれぞれを、ある特定のバイオマス資源の発生量が最大となる時期に対応させる必要がなくなる。
したがって、システムの構成要素のバイオマスの処理可能量の総和が、システムにおける資源発生ポイントで発生する資源の量の総和において想定される最大値となるように、バイオマス発電設備の規模を設計すればよくなる。
【0029】
例えば、木質バイオマスは、通常はガス化の設備で利用しているが、特に発生量が大きくなったときには、直接燃焼の設備で利用するなどとすれば、ガス化用の発電装置の規模を小さく抑えることができるようになる。また、例えば、家畜糞尿は、通常は直接燃焼設備で利用するが、ガス化設備やメタン発酵設備の稼動が下がった場合にはそちらに家畜糞尿をまわし、その代わりに食品廃棄物を直接燃焼設備で利用するなどとすれば、全体の処理能力を落とさないまま、全ての処理設備の規模を小さく抑えることができるようになる。
【0030】
このように、バイオマス発電システムにおける全てのバイオマス発電設備の規模を決定すれば、常に定格出力に近い状態で発電できるようになるため、システム全体の発電効率が向上する。
【0031】
各輸送量については、定性的にバイオマス資源の輸送場所と輸送量を決定してもよいが、バイオマス資源の分配輸送量の決定には最適化手法を適用することが望ましい。評価関数としては、各バイオマス発電設備で発電される発電エネルギーの総量から、各資源貯蔵庫から各バイオマス発電設備へバイオマス資源を分配輸送するのに必要な輸送エネルギーの総量を減算して得られる評価値や、各バイオマス発電設備で削減できるコストの総和から、各資源貯蔵庫から各バイオマス発電設備へバイオマス資源を分配輸送するのに必要なコストの総和と、各バイオマス発電設備の運用コストの総和との収支を示す総コスト量とを減算して得られる評価値などを算出する関数が有効である。また、最適化手法としては、遺伝的アルゴリズムや、ニューラルネットワーク、タブサーチ、線形計画法などが有効である。
【0032】
[第1の実施の形態]
次に、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかるバイオマス発電システム1について説明する。図1は、第1の実施の形態にかかるバイオマス発電システムの構成を示すブロック図である。
このバイオマス発電システム1は、複数の資源発生ポイント11〜14で発生した各種のバイオマス資源を、複数のバイオマス発電設備21〜23に輸送して発電を行うシステムである。
【0033】
資源発生ポイント11〜14は、木質バイオマス、食品加工廃棄物バイオマス、固形有機物などの各種のバイオマス資源を発生する発生源である。
バイオマス発電設備21〜23は、ガス化処理−燃料電池発電方式、直接燃焼処理−タービン発電方式、メタン発光処理−ガスエンジン発電方式などの各種発電方式に基づいて発電を行う設備である。この際、資源発生ポイント11〜14で発生した各種バイオマス資源は、発電方式が異なる複数のバイオマス発電設備21〜23で利用可能である。
【0034】
輸送経路31は、トラックなどの輸送手段により実現されて、バイオマス資源を定期的にバイオマス発電設備21〜23へ輸送する。
本実施の形態では、資源発生ポイントが4つで、バイオマス発電設備が3つの場合を例として説明するが、これら資源発生ポイントおよびバイオマス発電設備の数を限定するものではなく、他の数であっても同様にして本実施の形態を適用可能である。
【0035】
本実施の形態では、資源発生ポイント11〜14ごとに、当該資源発生ポイントで発生したバイオマス資源を一時的に貯蔵する資源貯蔵庫51〜54を設けるとともに、これら資源貯蔵庫51〜54に貯蔵されているバイオマス資源を各バイオマス発電設備21〜23へ分配輸送する輸送経路31をそれぞれ設け、これら資源貯蔵庫51〜54に貯蔵されているバイオマス資源の貯蔵量と、予め設定されている各バイオマス発電設備21〜23の稼働条件とに基づいて、資源分配輸送量算出装置60で、資源貯蔵庫51〜54から各バイオマス発電設備21〜23へ分配輸送するバイオマス資源の輸送量をそれぞれ算出するようにしたものである。
【0036】
[資源分配輸送量算出装置]
次に、図2を参照して、本実施の形態にかかる資源分配輸送量算出装置60について詳細に説明する。図2は、第1の実施の形態にかかる資源分配輸送量算出装置の構成を示すブロック図である。
資源分配輸送量算出装置60は、全体としてサーバ装置などのコンピュータからなり、主な機能部として、貯蔵量取得部61、発電設備稼働条件入力部62、発電効率・量算出用DB63A、輸送エネルギー算出用DB63B、分配輸送量算出部64、分配状況判定部65、および分配輸送量出力部66が設けられている。
【0037】
貯蔵量取得部61は、各資源貯蔵庫51〜54とデータ通信を行うことにより、当該資源貯蔵庫で計測された当該資源貯蔵庫に貯蔵されているバイオマス資源の貯蔵量をそれぞれ取得する機能を有している。
発電設備稼働状況入力部62は、各バイオマス発電設備21〜23の稼働状況を入力する機能を有している。稼働状況としては、各バイオマス発電設備21〜23での発電量や発電効率がある。
【0038】
発電効率・量算出用DB63Aは、バイオマス発電設備nにおける、資源発生ポイントmからのバイオマスによる発電量Emn(J/kg)を格納するデータベースである。
図3は、発電効率・量算出用DBの構成例である。ここでは、資源発生ポイント(資源貯蔵庫)m=1〜M(Mは2以上の整数)と、バイオマス発電設備n=1〜N(Nは2以上の整数)との組合せmnごとに、当該資源発生ポイントmからのバイオマス資源により、当該バイオマス発電設備nで発電される発電量Emnが格納されている。
【0039】
輸送エネルギー算出用DB63Bは、資源発生ポイントmからバイオマス発電設備nへのバイオマス輸送にかかる輸送エネルギーemn(J/kg)を格納するデータベースである。ここでは、各輸送経路31を実現している構成に応じて、予め輸送エネルギーemnが格納されている。
【0040】
分配輸送量算出部64は、資源貯蔵庫51〜54ごとに、当該資源貯蔵庫における貯蔵量が当該資源貯蔵庫から各バイオマス発電設備21〜23へ分配輸送するバイオマス資源の輸送量の総和と等しいという第1の条件と、バイオマス発電設備21〜23ごとに、当該バイオマス発電設備へ各資源貯蔵庫51〜54から分配輸送されるバイオマス資源の輸送量の総和が、当該バイオマス発電設備の稼働条件である、当該バイオマス発電設備で所定の発電効率を得るのに必要なバイオマス資源量以上であって、かつ当該バイオマス発電設備で処理可能な最大バイオマス資源量以下であるという第2の条件とを満す、各輸送量の組合せを選択する機能と、第1および第2の条件を満たす各輸送量の組合せのうちから、当該組合せを適用した場合に、各バイオマス発電設備21〜23で発電される発電エネルギーの総量から、各資源貯蔵庫51〜54から各バイオマス発電設備21〜23へバイオマス資源を分配輸送するのに必要な輸送エネルギーの総量を減算して得られる評価値が最大となる組合せを選択する機能とを有している。
【0041】
分配状況判定部65は、各資源貯蔵庫51〜54の貯蔵量や各バイオマス発電設備21〜23での発電効率に基づいて、資源貯蔵庫51〜54から各バイオマス発電設備21〜23へ分配輸送するバイオマス資源の輸送量に関する再計算の要否を判定する機能と、再計算が必要な場合には、分配輸送量算出部64に対して各輸送量の再計算を指示する機能と、再計算の指示に応じて分配輸送量算出部64から得られた新たな各輸送量を取得して、分配輸送量出力部66へ通知する機能とを有している。
【0042】
分配輸送量出力部66は、分配状況判定部65から通知された新たな各輸送量を、表示部(図示せず)で画面表示することにより、オペレータへ通知する機能を有している。各資源貯蔵庫51〜54は、オペレータから指示された新たな輸送量に基づいて、輸送経路31を介して各バイオマス発電設備21〜23へバイオマス資源を輸送する。この際、分配輸送量出力部66において、新たな各輸送量を、通信I/F部(図示せず)を介して各資源貯蔵庫51〜54、さらにはバイオマス発電システム1を管理する管理装置(図示せず)へ通知するようにしてもよい。
【0043】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図4を参照して、本実施の形態にかかるバイオマス発電システム1の動作について説明する。図4は、輸送量算出判定処理を示すフローチャートである。
バイオマス発電システム1の資源分配輸送量算出装置60は、バイオマス資源の輸送タイミングに合わせて、図4の輸送量算出判定処理を実行する。
【0044】
まず、貯蔵量取得部61は、各資源貯蔵庫51〜54とデータ通信を行うことにより、当該資源貯蔵庫mで計測された当該資源貯蔵庫mに貯蔵されているバイオマス資源の貯蔵量Amをそれぞれ取得する(ステップ100)。
【0045】
続いて、分配状況判定部65は、貯蔵量取得部61で取得した各資源貯蔵庫51〜54の貯蔵量Amについて、当該貯蔵量Amに対応するしきい値範囲Azm内に含まれるか否か確認することにより、分配輸送量の再計算の要否を判定する(ステップ101)。しきい値範囲Azmは、当該資源貯蔵庫mからバイオマス資源が輸送される輸送先となるすべてのバイオマス発電設備nの稼働条件によって決定される。すなわち、しきい値範囲Azmの上限値は、各輸送先バイオマス発電設備nで処理可能な最大資源量の総和からなり、しきい値範囲Azmの下限値は、各輸送先バイオマス発電設備nに予め設定されている所定の発電効率を得るために必要な最低資源量の総和からなる。
【0046】
ここで、各資源貯蔵庫51〜54の貯蔵量Amのいずれかが、当該貯蔵量Amに対応するしきい値範囲Azm外となり、分配輸送量の再計算が必要と判定された場合(ステップ101:NO)、分配状況判定部65は、分配輸送量算出部64に対して各輸送量の再計算を指示する。
【0047】
これに応じて、分配輸送量算出部64は、各資源貯蔵庫51〜54から各バイオマス発電設備21〜23へ分配輸送すべきバイオマス資源の新たな各輸送量amnを算出し(ステップ104)、分配状況判定部65へ通知する。
分配状況判定部65は、分配輸送量算出部64から得られた新たな各輸送量amnを取得して、分配輸送量出力部66へ通知し、分配輸送量出力部66は、分配状況判定部65から通知された新たな各輸送量amnを、表示部(図示せず)で画面表示し(ステップ105)、一連の輸送量算出判定処理を終了する。
【0048】
一方、ステップ101において、各資源貯蔵庫51〜54の貯蔵量Amのすべてが、当該貯蔵量Amに対応するしきい値範囲Azm内となった場合(ステップ101:YES)、分配状況判定部65は、各バイオマス発電設備21〜23の発電効率Gnを取得し(ステップ102)、当該発電効率Gnに対応するしきい値Gthn以上であるか否か確認することにより、分配輸送量の再計算の要否を判定する(ステップ103)。しきい値Gthnは、各輸送先バイオマス発電設備nに予め設定されている発電効率であり、システム運用面から決定される。
【0049】
発電効率Gnは、発電効率・量算出用DB63Aに格納されている発電量Emnと各バイオマス発電設備nでの実際の発電量との比から算出できる。この際、バイオマス発電設備nでの実際の発電量は、当該バイオマス発電設備nからデータ通信により取得してもよく、各資源貯蔵庫51〜54から当該バイオマス発電設備nへ輸送されるバイオマス資源の輸送量の総和から算出してもよい。
【0050】
ここで、各バイオマス発電設備21〜23の発電効率Gnのいずれかが、当該発電効率Gnに対応するしきい値Gthnより小さく、分配輸送量の再計算が必要と判定された場合(ステップ103:NO)、分配状況判定部65は、分配輸送量算出部64に対して各輸送量の再計算を指示する。これにより、前述したステップ104へ処理が移行する。
【0051】
一方、各バイオマス発電設備21〜23の発電効率Gnのすべてが、当該発電効率Gnに対応するしきい値Gthn以上であり、分配輸送量の再計算が不要と判定された場合(ステップ103:YES)、分配輸送量の再計算を行わず、一連の輸送量算出判定処理を終了する。
【0052】
[分配輸送量算出処理]
次に、本実施の形態にかかる資源分配輸送量算出装置60での分配輸送量算出処理について説明する。
資源分配輸送量算出装置60の分配輸送量算出部64は、図4のステップ104において、各資源貯蔵庫51〜54から各バイオマス発電設備21〜23へ分配輸送すべきバイオマス資源の各輸送量amnを、次のようにして算出する。
【0053】
M、Nを正の整数として、資源貯蔵庫1〜M、資源発電設備1〜Nが存在するとする。m=1,2,…,M、n=1,2,…,Nとして、資源貯蔵庫mにおけるバイオマスの貯蔵量をAm、資源発電設備nへ入力されるバイオマスの総量をAn、資源発電設備nにおける、資源貯蔵庫mからのバイオマス資源による発電量をEmn(J/kg)、資源貯蔵庫mから資源発電設備nへのバイオマス資源の輸送量をamn(kg)、資源貯蔵庫mから資源発電設備nへのバイオマス資源の輸送にかかる輸送エネルギーをemn(J/kg)とする。
【0054】
まず、バイオマス資源の持つエネルギーは、時間とともに減少する傾向がある。このため、各資源貯蔵庫mにおけるバイオマス資源は、輸送タイミングごとに在庫をゼロとすることを条件とする。したがって、次の式(1)に示すように、資源貯蔵庫mにおけるバイオマス資源の貯蔵量Amは、当該資源貯蔵庫mから輸送されるバイオマス資源の輸送量amnの総和と等しい。これが第1の条件となる。
【数1】

【0055】
また、資源発電設備nでの発電効率を適正に維持するためには、適切な輸送量amnを各資源貯蔵庫mから当該資源発電設備nへ輸送する必要がある。このため、各資源貯蔵庫mから資源発電設備nへ入力されるバイオマス資源の総量Anを、次の式(2)で求める。
【数2】

【0056】
次に、この総量Anに対して、資源発電設備nでの発電効率を適正に維持するため、次の式(3)で示されるような適正範囲Ajnを定める。これが第2の条件である。この際、適正範囲Ajnの下限Anminは、当該資源発電設備nで所定の発電効率を得るのに必要なバイオマス資源量に相当する。また、適正範囲Ajnの上限Anmaxは、当該資源発電設備nで処理可能な最大バイオマス資源量に相当する。
【数3】

【0057】
したがって、これら第1の条件と第2の条件を満たす輸送量amnを、資源貯蔵庫mと資源発電設備nとの組合せごとに、すなわち輸送経路31ごとに算出すればよい。
ここで、各輸送量amnの組合せは、複数存在する。このため、これら組合せを評価する評価関数を設け、最適化手法を用いて、複数の組合せのうちから、最も高い評価値が得られた組合せを新たな輸送量として選択する。最適化手法としては、遺伝的アルゴリズムや、ニューラルネットワーク、タブサーチ、線形計画法などが有効である。
【0058】
本実施の形態では、評価関数として、各バイオマス発電設備21〜23で発電される発電エネルギーの総量から、各資源貯蔵庫51〜54から各バイオマス発電設備21〜23へバイオマス資源を分配輸送するのに必要な輸送エネルギーの総量を減算して得られる評価値Eallを算出する関数として、次の式(4)に示される評価関数を用いる。
【数4】

【0059】
したがって、分配輸送量算出部64は、第1および第2の条件を満たす各輸送量の組合せのうちから、当該組合せを適用した場合に、式(4)の評価関数で求まる評価値Eallが最大となる組合せを選択する。
これにより、所望の発電効率が得られるだけでなく、バイオマス発電システム1全体で、エネルギー効率が最も高くなるような各輸送量amnが選択される。
【0060】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、資源発生ポイント11〜14ごとに、当該資源発生ポイントで発生したバイオマス資源を一時的に貯蔵する資源貯蔵庫51〜54を設けるとともに、これら資源貯蔵庫51〜54に貯蔵されているバイオマス資源を各バイオマス発電設備21〜23へ分配輸送する輸送経路31をそれぞれ設け、これら資源貯蔵庫51〜54に貯蔵されているバイオマス資源の貯蔵量と、予め設定されている各バイオマス発電設備21〜23の稼働条件とに基づいて、資源分配輸送量算出装置60で、資源貯蔵庫51〜54から各バイオマス発電設備21〜23へ分配輸送するバイオマス資源の輸送量をそれぞれ算出するようにしたものである。
【0061】
これにより、従来のように、資源発生ポイントで発生したバイオマス資源が、予め固定的に対応付けられたバイオマス発電設備でしか利用していない固定的なバイオマス発電システムと比較して、バイオマス資源の発生量の変動に応じて、各バイオマス発電設備21〜23へ分配輸送するバイオマス資源を適切な量だけ融通することができる。このため、各バイオマス発電設備21〜23で部分負荷運転を行う期間を大幅に短縮でき、結果として、各バイオマス発電設備21〜23において、安定して高い発電効率を得ることができる。
【0062】
また、本実施の形態では、各バイオマス発電設備21〜23の処理可能量の総和が、各資源発生ポイント11〜14で発生するバイオマス資源量の総和において想定される最大値と等しくなるように、各バイオマス発電設備21〜23の規模を調整することにより、最低限の規模で、安定して高い発電効率を得ることができる。
【0063】
また、本実施の形態では、資源分配輸送量算出装置60で、各輸送量を算出する際、資源貯蔵庫mごとに、当該資源貯蔵庫mにおける貯蔵量Amが当該資源貯蔵庫mから各バイオマス発電設備nへ分配輸送するバイオマス資源の輸送量amnの総和と等しいという第1の条件と、バイオマス発電設備nごとに、当該バイオマス発電設備nへ各資源貯蔵庫mから分配輸送されるバイオマス資源の輸送量Anの総和が、当該バイオマス発電設備nの稼働条件である、当該バイオマス発電設備で所定の発電効率を得るのに必要なバイオマス資源量Anmin以上であって、かつ当該バイオマス発電設備で処理可能な最大バイオマス資源量Anmax以下であるという第2の条件とを満す、各輸送量の組合せを選択するようにしたので、所望の発電効率を得るための適切な輸送量amnを算出することができる。これにより、常に定格出力に近い状態で発電することが可能となる。
【0064】
また、本実施の形態では、資源分配輸送量算出装置60で、第1および第2の条件を満たす各輸送量の組合せのうちから、当該組合せを適用した場合に、各バイオマス発電設備nで発電される発電エネルギーの総量から、各資源貯蔵庫から各バイオマス発電設備へバイオマス資源を分配輸送するのに必要な輸送エネルギーの総量を減算して得られる評価値Eallが最大となる組合せを選択するようにしたので、所望の発電効率が得られるだけでなく、バイオマス発電システム1全体で、エネルギー効率が最も高くなるような各輸送量amnを選択できる。
【0065】
[第2の実施の形態]
次に、図5を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかるバイオマス発電システムについて説明する。図5は、第2の実施の形態にかかる資源分配輸送量算出装置の構成を示すブロック図である。
第1の実施の形態では、資源分配輸送量算出装置60において、各輸送量の組合せを評価する評価関数として、バイオマス発電システム1全体でエネルギー効率を評価する評価関数を用いた場合を例として説明した。本実施の形態では、評価関数として、バイオマス発電システム1全体で運用コストを評価する評価関数を用いた場合について説明する。
【0066】
本実施の形態にかかる資源分配輸送量算出装置60には、輸送エネルギー算出用DB63Bに代えて、発電コスト算出用DB63Cおよび輸送費算出用DB63Dが設けられている。
発電コスト算出用DB63Cは、資源発電設備nにおける発電量En(J)により削減できるコストcgn(Yen/J)と、資源発電設備nにおける運用費con(Yen)とを格納するデータベースである。
輸送費算出用DB63Dは、バイオマス資源発生ポイントmから資源発電設備nへのバイオマス輸送にかかる輸送費用clmn(Yen/kg)を格納するデータベースである。
【0067】
また、分配輸送量算出部64は、第1および第2の条件を満たす各輸送量の組合せのうちから、当該組合せを適用した場合に、各バイオマス発電設備21〜23で削減できるコストの総和から、各資源貯蔵庫51〜54から各バイオマス発電設備21〜23へバイオマス資源を分配輸送するのに必要なコストの総和と、各バイオマス発電設備21〜23の運用コストの総和との収支を示す総コスト量とを減算して得られる評価値が最大となる組合せを選択する機能を有している。
なお、本実施の形態にかかる資源分配輸送量算出装置60さらにはバイオマス発電システム1におけるこれら他の構成については、第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0068】
[第2の実施の形態の動作]
次に、本実施の形態にかかる資源分配輸送量算出装置60での分配輸送量算出処理について説明する。
資源分配輸送量算出装置60の分配輸送量算出部64は、前述した図4のステップ104において、各資源貯蔵庫51〜54から各バイオマス発電設備21〜23へ分配輸送すべきバイオマス資源の各輸送量amnを、次のようにして算出する。
【0069】
M、Nを正の整数として、資源貯蔵庫1〜M、資源発電設備1〜Nが存在するとする。m=1,2,…,M、n=1,2,…,Nとして、資源貯蔵庫mにおけるバイオマスの貯蔵量をAm、資源発電設備nに入力されるバイオマスの総量をAn、資源発電設備nにおける、資源貯蔵庫mからのバイオマス資源による発電量をEmn(J/kg)、資源貯蔵庫mから資源発電設備nへのバイオマス資源の輸送量をamn(kg)、資源発電設備nにおける発電量En(J)により削減できるコストをcgn(Yen/J)、資源発電設備nにおける運用費をcon(Yen)、資源貯蔵庫mから資源発電設備nへのバイオマス輸送にかかる輸送費用をclmn(Yen/kg)とする。
【0070】
輸送量amnを算出するために用いる第1の条件と第2の条件は、第1の実施の形態と同様である。
ここで、第1および第2の条件を満たす各輸送量の組合せを適用した場合、各バイオマス発電設備nの発電により削減できるコストの総和Cgは、次の式(5)で求められる。
【数5】

【0071】
また、資源貯蔵庫mから資源発電設備nへのバイオマス資源を輸送するにかかる費用の総和Clは、次の式(6)で求められる。
【数6】

【0072】
また、バイオマス発電設備nの運用費の総和Coは、次の式(7)で求められる。
【数7】

【0073】
本実施の形態では、第1および第2の条件を満たす各輸送量の組合せを評価するための評価関数として、各バイオマス発電設備21〜23で削減できるコストの総和Cgから、各資源貯蔵庫51〜54から各バイオマス発電設備21〜23へバイオマス資源を分配輸送するのに必要なコストの総和Clと、各バイオマス発電設備21〜23の運用コストの総和との収支を示す総コスト量Coとを減算して得られる評価値Callを算出する関数として、次の式(8)に示される評価関数を用いる。
【数8】

【0074】
したがって、分配輸送量算出部64は、第1および第2の条件を満たす各輸送量の組合せのうちから、当該組合せを適用した場合に、式(8)の評価関数で求まる評価値Callが最大となる組合せを選択する。
これにより、所望の発電効率が得られるだけでなく、バイオマス発電システム1全体で、コスト効率が最も高くなるような各輸送量amnが選択される。
【0075】
[第2の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、資源分配輸送量算出装置60で、資源分配輸送量算出装置60で、第1および第2の条件を満たす各輸送量の組合せのうちから、当該組合せを適用した場合に、各バイオマス発電設備nで削減できるコストの総和から、各資源貯蔵庫mから各バイオマス発電設備nへバイオマス資源を分配輸送するのに必要なコストの総和と、各バイオマス発電設備nの運用コストの総和との収支を示す総コスト量とを減算して得られる評価値Callが最大となる組合せを選択するようにしたので、所望の発電効率が得られるだけでなく、バイオマス発電システム1全体で、コスト効率が最も高くなるような各輸送量amnを選択できる。
【0076】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0077】
1…バイオマス発電システム、11〜14…資源発生ポイント、21〜23…バイオマス発電システム、31…輸送経路、51〜54…資源貯蔵庫、60…資源分配輸送量算出装置、61…貯蔵量取得部、62…発電設備稼働状況入力部、63A…発電効率・量算出用DB、63B…輸送エネルギー算出用DB、63C…発電コスト算出用DB、63D…輸送費算出用DB、64…分配輸送量算出部、65…分配状況判定部、66…分配輸送量出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ所定種別のバイオマス資源を発生する複数の資源発生ポイントと、
これら資源発生ポイントで発生したバイオマス資源を用いて発電を行う複数のバイオマス発電設備と、
前記資源発生ポイントごとに、当該資源発生ポイントで発生したバイオマス資源を一時的に貯蔵する資源貯蔵庫と、
これら資源貯蔵庫に貯蔵されているバイオマス資源を前記各バイオマス発電設備へ分配輸送する輸送経路と、
前記各資源貯蔵庫に貯蔵されているバイオマス資源の貯蔵量と、予め設定されている前記各バイオマス発電設備の稼働条件とに基づいて、前記資源貯蔵庫ごとに、当該資源貯蔵庫から前記各バイオマス発電設備へ分配輸送するバイオマス資源の輸送量をそれぞれ算出する資源分配輸送量算出装置と
を備えることを特徴とするバイオマス発電システム。
【請求項2】
請求項1に記載のバイオマス発電システムにおいて、
前記各バイオマス発電設備の処理可能量の総和が、前記各資源発生ポイントで発生するバイオマス資源量の総和において想定される最大値と等しいことを特徴とするバイオマス発電システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のバイオマス発電システムにおいて、
前記資源分配輸送量算出装置は、前記各輸送量を算出する際、前記資源貯蔵庫ごとに、当該資源貯蔵庫における前記貯蔵量が当該資源貯蔵庫から前記各バイオマス発電設備へ分配輸送するバイオマス資源の輸送量の総和と等しいという第1の条件と、前記バイオマス発電設備ごとに、当該バイオマス発電設備へ前記各資源貯蔵庫から分配輸送されるバイオマス資源の輸送量の総和が、当該バイオマス発電設備の稼働条件である、当該バイオマス発電設備で所定の発電効率を得るのに必要なバイオマス資源量以上であって、かつ当該バイオマス発電設備で処理可能な最大バイオマス資源量以下であるという第2の条件とを満す、前記各輸送量の組合せを選択することを特徴とするバイオマス発電システム。
【請求項4】
請求項3に記載のバイオマス発電システムにおいて、
前記資源分配輸送量算出装置は、前記第1および第2の条件を満たす前記各輸送量の組合せのうちから、当該組合せを適用した場合に、前記各バイオマス発電設備で発電される発電エネルギーの総量から、前記各資源貯蔵庫から前記各バイオマス発電設備へ前記バイオマス資源を分配輸送するのに必要な輸送エネルギーの総量を減算して得られる評価値が最大となる組合せを選択することを特徴とするバイオマス発電システム。
【請求項5】
請求項3に記載のバイオマス発電システムにおいて、
前記資源分配輸送量算出装置は、前記第1および第2の条件を満たす前記各輸送量の組合せのうちから、当該組合せを適用した場合に、前記各バイオマス発電設備で削減できるコストの総和から、前記各資源貯蔵庫から前記各バイオマス発電設備へ前記バイオマス資源を分配輸送するのに必要なコストの総和と、前記各バイオマス発電設備の運用コストの総和との収支を示す総コスト量とを減算して得られる評価値が最大となる組合せを選択することを特徴とするバイオマス発電システム。
【請求項6】
それぞれ所定種別のバイオマス資源を発生する複数の資源発生ポイントと、これら資源発生ポイントで発生したバイオマス資源を用いて発電を行う複数のバイオマス発電設備と、前記資源発生ポイントごとに、当該資源発生ポイントで発生したバイオマス資源を一時的に貯蔵する資源貯蔵庫と、これら資源貯蔵庫に貯蔵されているバイオマス資源を前記各バイオマス発電設備へ分配輸送する輸送経路とを備えるバイオマス発電システムで用いられる資源分配輸送量算出装置であって、
前記各資源貯蔵庫とデータ通信を行うことにより、当該資源貯蔵庫で計測された当該資源貯蔵庫に貯蔵されているバイオマス資源の貯蔵量をそれぞれ取得する貯蔵量取得部と、
前記各資源貯蔵庫の貯蔵量と予め設定されている前記各バイオマス発電設備の稼働条件とに基づいて、前記資源貯蔵庫ごとに、当該資源貯蔵庫から前記各バイオマス発電設備へ分配輸送するバイオマス資源の輸送量をそれぞれ算出する分配輸送量算出部と
を備えることを特徴とする資源分配輸送量算出装置。
【請求項7】
それぞれ所定種別のバイオマス資源を発生する複数の資源発生ポイントと、これら資源発生ポイントで発生したバイオマス資源を用いて発電を行う複数のバイオマス発電設備と、前記資源発生ポイントごとに、当該資源発生ポイントで発生したバイオマス資源を一時的に貯蔵する資源貯蔵庫と、これら資源貯蔵庫に貯蔵されているバイオマス資源を前記各バイオマス発電設備へ分配輸送する輸送経路とを備えるバイオマス発電システムで用いられる資源分配輸送量算出方法であって、
貯蔵量取得部が、前記各資源貯蔵庫とデータ通信を行うことにより、当該資源貯蔵庫で計測された当該資源貯蔵庫に貯蔵されているバイオマス資源の貯蔵量をそれぞれ取得する貯蔵量取得ステップと、
分配輸送量算出部が、前記各資源貯蔵庫の貯蔵量と予め設定されている前記各バイオマス発電設備稼働条件とに基づいて、前記資源貯蔵庫ごとに、当該資源貯蔵庫から前記各バイオマス発電設備へ分配輸送するバイオマス資源の輸送量をそれぞれ算出する分配輸送量算出ステップと
を備えることを特徴とする資源分配輸送量算出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−252436(P2012−252436A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123181(P2011−123181)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】