バイオマーカーとしてのケモカインCCL18
本発明は、診断ツール、たとえば個体の体液試料におけるバイオマーカーとしてのケモカインCCL18、および様々な方法におけるその使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は診断ツール、たとえばバイオマーカーとして使用するためのケモカインCCL18、および様々な方法におけるその使用に関する。
【0002】
恒常性応答および病理学的応答での白血球移動の制御は、大部分がケモカインによって達成される。ケモカインは、細胞表面7重らせんGタンパク質共役受容体と相互作用することによってそれらの生物学的効果を示す、同種タンパク質の巨大グループを含む。DC−CK1、PARC、AMAC−1およびMIP−4とも示されるCCL18は、CCL3と構造的に関連したヒトケモカインである。これまでのところ、CCL18はマウス相同物を有さず、そのレセプターは知られていなかった。CCL18は、胚中心および扁桃腺において、樹状細胞(DC)によって構成的に発現され、そして主に無傷なT細胞、CD38−マントル領域Bリンパ球およびDCを引きつけることが示された。抗原提示細胞(APC)によるCCL18の生産は、IL−4、IL−13のようなTh2サイトカインによって亢進され、そしてIFN−γによって抑制される。
【0003】
アトピー性皮膚炎(AD)は、湿疹性皮膚病変によって特徴付けられるTヘルパー2(Th2)介在性、慢性炎症性皮膚疾患であり、これはたとえば表皮細胞間浮腫と関連する激しい掻痒性紅斑性丘疹によって特徴付けられる。病理組織学的には、ADの皮膚病変は、マクロファージ、増加した数のIgE生産ランゲルハンス細胞(LC)、炎症性樹状表皮細胞、好酸球およびCD4+Th細胞から成る、単核細胞浸潤を示す(たとえば、Leung DY., J. Allergy Clin.Immunol. 2000, 105:860-76参照)。急性病変において、これらのTh細胞は主にIL−4、IL−5およびIL−13のようなTh2サイトカインを生産する一方、慢性ADにおいて、IFN−γ分泌Th細胞も存在する。Th細胞のAD皮膚への帰巣を介在することが提唱されているケモカインには、CCR4リガンドCCL17、ならびにCCL22およびCCR10リガンドCCL27が含まれる。しかし、さらなる走化性シグナルが、特殊化したT細胞亜集団の特異的動員のためには必要であり得る。
【0004】
今まで、ADに対する信頼できる実験マーカーは存在しなかったが、AD患者はしばしば上昇したIgEレベル、食物に対する、そして花粉、かびおよび昆虫のような他の一般的なアレルゲンに対するアレルギー性反応を有する。アレルゲンの種類に関係なく、AD患者の病態を理解するために、そして疾患に対する処置レジメンを決定するために有用な診断指標が、当該技術分野において大いに必要とされている。患者に対する害が少ないのみならず、診断に必要な情報をすぐに得ることのできるアレルギー性疾患に対するマーカーが大変有用である。
【0005】
我々は、体液における、たとえば血液におけるCCL18のレベルならびにCCL18分泌細胞、たとえばAPC(単球を含む)およびDCが、健常対照と比較して、たとえばAD患者において有意に増加することを見出した。この発見、そして他の発見が、CCL18のバイオマーカーとしての有用性を明らかにする。
【0006】
1つの局面において本発明は、個体の体液試料におけるバイオマーカーとして使用するための、ケモカインCCL18を提供する。
【0007】
本発明において使用されるバイオマーカーは、個体の体液試料におけるCCL18の測定(=検出および/または定量)が障害それ自体の、および/または障害の状態をモニターするための指標であることを意味する。
【0008】
本発明の体液試料は、血液、たとえば単離された単核細胞に、または血液分画、たとえば血漿または血清、たとえば血清に由来し得る。
【0009】
他の局面において、本発明は血液試料、たとえば血清におけるバイオマーカーとしてのCCL18の使用を提供する。
【0010】
本明細書において使用するとき、CCL18は全長CCL18タンパク質、CCL18タンパク質フラグメント、変異CCL18タンパク質、CCL18誘導体、ならびにCCL18分泌(生産)細胞、たとえば単球および樹状細胞(DC)を含む抗原提示細胞(APC)を含む。CCL18のフラグメント、変異体および誘導体は、CCL18のバイオマーカー特性が保持されているものである。
【0011】
本発明のバイオマーカーとしてのCCL18の使用は、CCL18を個体の当該試料において、たとえば、イムノアッセイ、たとえば酵素免疫アッセイ(ELISA);蛍光を利用したアッセイ、たとえば時間分解蛍光免疫アッセイ(DELFIA)または放射性アッセイのようなアッセイの分野において常套のものを含む検出方法で、測定することを意味する。本発明の検出方法には、たとえば特異的にCCL18を認識する分子、たとえば直接または間接的に検出可能な分子が含まれる。本発明の検出方法は、好ましくは抗体(抗体の誘導体またはそのフラグメントを含む)、たとえばCCL18を認識する抗体、たとえば標識を有するCCL18認識抗体を含む。
【0012】
他の局面において、CCL18のレベルはCCL18特異的抗体を使用して測定される。
【0013】
標識は、常套のもの、たとえばビオチンあるいはアルカリホスファターゼ(AP)、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)もしくはペルオキシダーゼ(POD)のような酵素、または蛍光分子、たとえば蛍光染料たとえば蛍光イソチオシアネートであり得る。好ましくは標識はビオチンである。標識を有する分子、たとえば標識を有する抗体は、常套の方法、たとえば蛍光測定または酵素検出方法により、検出することができる。
【0014】
好ましい局面において、CCL18認識抗体は、たとえば蛍光標識化のような標識化形態で、検出手段として使用される。
【0015】
個体の体液の試料、たとえば血液におけるCCL18分泌細胞を、たとえば下記のような常套の方法を使用して測定することができる。
細胞を、試料、たとえば血液から精製、たとえば密度勾配により分離することができ、そして得られる精製された細胞を染色する。抗CCL18抗体、たとえば蛍光標識抗CCL18抗体を、染色された細胞調製物へと、所望により、たとえばインターロイキン4で、細胞を刺激した後に加え、そしてCCL18分泌細胞のレベルを測定する。
【0016】
所望により、試料に含まれるCCL18または検出手段に含まれるCCL18認識、たとえば検出可能な分子を、固相に固定する。適当な固相には、たとえば常套のもの、たとえばポリスチレンまたはポリビニルプレートのようなプラスチックプレート、とりわけマイクロタイタープレートが含まれる。また、マイクロビーズ、たとえば被覆マイクロビーズを固相として使用することができる。固相を、たとえば検出手段に含まれる標識に依存した性質のコーティング物質で被覆することができる。コーティング物質は標識と結合できなければならず、たとえば標識はビオチンであり、そしてコーティング物質には、たとえば固相と共有結合するストレプトアビジンが含まれる。
【0017】
他の局面において本発明は、アレルギー性疾患およびTh2介在性障害からなる群から選択される障害または疾患に対する、個体の体液試料におけるバイオマーカーとして使用するためのケモカインCCL18を提供する。
【0018】
他の局面において本発明は、アトピー性皮膚炎に関連する障害または疾患に対する、個体の体液試料におけるバイオマーカーとして使用するためのケモカインCCL18を提供する。
【0019】
本発明において使用される障害および疾患には、アレルギー性疾患およびTh2介在性障害からなる群から選択される様々な種類および重症度の障害または疾患が含まれる。アレルギー性疾患およびTh2介在性障害には、たとえば過敏性肺炎、春期カタル、接触過敏症および、様々な炎症性皮膚疾患、たとえばアトピー性皮膚炎を含む、アトピー性皮膚炎に関連する障害または疾患が含まれる。
【0020】
他の局面において本発明は、個体におけるアレルギー性疾患およびTh2介在性障害からなる群から選択される障害または疾患のスクリーニングおよび/またはインビトロ診断方法であって、
a)個体の体液試料を得ること、
b)工程a)で得た試料におけるCCL18のレベルを測定すること、
c)工程b)で測定したCCL18のレベルを、健常対照個体の体液試料に由来する参照レベルと比較すること、そして
d)工程b)で測定したCCL18のレベルが参照レベルと有意に異なるか否かを決定して、アレルギー性疾患およびTh2介在性障害からなる群から選択される障害または疾患をスクリーニングおよび/またはインビトロ診断すること
を含んでなる方法を提供する。
【0021】
CCL18の測定を上記のとおり、たとえばバイオマーカーを特異的に認識する分子、たとえば抗体、抗体誘導体、抗体フラグメント、たとえば抗CCL18抗体、たとえば商業的に入手可能なCCL18特異的抗体を使用して、たとえば免疫診断アッセイ法により、行う。
【0022】
他の局面において本発明は、アレルギー性疾患およびTh2介在性障害からなる群から選択される障害または疾患を軽減または治癒する効果を有することが予期される物質での個体の処置の治療効果をモニターする方法であって、当該個体の体液試料におけるCCL18のレベルを測定し、そしてそれを当該物質を投与する前のCCL18のレベルと比較することを含んでなる方法を提供する。
【0023】
他の局面において本発明は、個体の体液試料におけるアレルギー性疾患およびTh2介在性障害からなる群から選択される障害または疾患のスクリーニングおよび/またはインビトロ診断のためのキットであって、
a)CCL18タンパク質またはその一部を認識する、所望により標識形態の分子、
b)使用のための指示書、
c)所望により検出手段、
d)所望により固相
を含んでなるキットを提供する。
【0024】
本発明により提供される当該キットは、さらに、試験される試料の適当な環境を含む実質的な要素およびたとえば試験される試料のCCL18を測定する適当な手段を含み得る。
【0025】
図の説明
図1:ADにおけるCCL18発現。AD、乾癬または健常皮膚由来の病変生検の凍結切片をCCL18について染色する。
図2:ADにおけるCCL18発現。示した抗体で.2重免疫蛍光染色をAD皮膚生検の凍結切片について行った。元の倍率200×(図1)および400×(図2)。
図3:CCL18の血清レベル。AD患者(n=8)および対照(n=13)由来のPBMCをIL−4で刺激する。PBMCにおけるCCL18生産単球およびCCL18分泌CD11c+血液DCの割合をボックスプロットとして示す。分析はADと対照のDC間で(それぞれ平均7.1%および1.3%、p<0.003)、そしてADと対照のDC間で(それぞれ平均5.6%および1.9%、p<0.001)有意な差を示す。
【0026】
図4:CCL18の血清レベル。AD患者由来の血清におけるCCL18レベル(n=36)は、健常対照(n=28)対象のものより有意に高い(それぞれ平均34.9ng/mlおよび10.7ng/ml、p<0.0003)。
図5:CCL18の血清レベル。異なる重症度疾患スコア(IGA)でのAD患者におけるCCL18の血清レベルのグラフ分布。
図6:CCL18の血清レベル。AD患者におけるCCL18とCCL22血清レベル間の相関関係。黒丸は極めて軽度から重症の患者を含む(r=0.6、p<0.003)。極めて重症のスコアを有する患者は、白丸で表し、相関関係分析から除外する。
図7:AD由来記憶T細胞のCCL18結合。AD皮膚におけるCCL18結合(赤)およびCD3発現(暗青)の免疫組織化学分析。HEで対比染色(元の倍率1000×)。
図8:AD由来記憶T細胞のCCL18結合。静止期AD由来T細胞株およびクローンにおける、蛍光(F)標識ケモカインを使用したCCL18またはCCL22結合細胞。CD4+、CCL18結合T細胞の割合を、右上象限に示す。
図9:AD由来記憶T細胞のCCL18結合。CCR3についてのCCL18結合T細胞株NITのFACS染色。
【0027】
図10:AD由来記憶T細胞のCCL18結合。T細胞株NITにおけるCCL18−FおよびCCL22−F結合のFACS。全FACS染色は5〜10複製を代表し、そして異なるT細胞株およびクローンにわたって一致した。
図11:CCL18にインビトロおよびインビボで応答するAD由来記憶T細胞遊走。AD皮膚由来のT細胞は、走化性チャンバーアッセイにおいて、増加した濃度のCCL18(黒丸)およびCCL22(白四角)と有意に反応する(p<0.05)。高い濃度を特異的中和mAbと共にインキュベーションしてブロックする。各点を、4組で評価し、15実験中2つの平均±SEで示す。
図12:CCL18にインビトロおよびインビボで応答するAD由来記憶T細胞遊走。ヒト記憶T細胞の、SCID−hu皮膚マウスにおけるヒト皮膚移植片に対する遊走。CCL18(n=8)、CCL22(n=8)またはPBS(n=9)をヒト皮膚移植片へと注射し、そしてT細胞の皮膚帰巣をFACS分析により評価する。CCL18はT細胞株NITおよびT細胞クローン98016T.02の有意な遊走を誘導した(p<0.05)。4つの独立した実験のうち2つを示す。
【0028】
下記実施例において、温度は摂氏度(℃)であり、そして補正はしていない。
下記略語を使用する:
【表1】
【実施例】
【0029】
方法:
患者
血液試料をADを有する36名の患者から、そして28名のアトピーのない健常対象から得る。臨床的重症度をEASIおよびIGAにより記録する(たとえばHanifin, J.M., et al, Exp.Dermatol. 2001, 10:11-18参照)。IGAスコアによる患者群の構成:ほぼ無傷:n=3、軽度の疾患:n=0、中程度の疾患:n=15、重度の疾患:n=10、極めて重度の疾患:n=4。患者は免疫抑制剤でのあらゆる全身または局所処置を、血液試料および皮膚生検の採取前少なくとも4週間は、受けなかった。
【0030】
細胞の精製および培養
ヒト血液由来のPBMCを、Ficoll-Paque(商標)Plus(Amersham Biosciences)での密度勾配分離によって製造する。皮膚リンパ球抗原(CLA)、CCR4を発現し、そして活性化後にTh2/Th0サイトカイン分泌パターンを示す、AD由来T細胞株(NIT、SVT、DK2−JOT)およびクローン(98016T.02、98016T.24)を病変パンチ生検から、たとえば
-Carballido, J.M., et al, J.Immunol. 1997, 159:4316-4321、
-Biedermann, T., et al,. Eur.J.Immunol. 2002, 32:3171-3180
に記載のとおりに製造する。
T細胞を組み換えヒトIL−2(20ng/ml)を補ったX−Vivo15培地(BioWitthaker)中で培養する。
【0031】
フローサイトメトリー
細胞を30分間、FACS緩衝液を使用した氷上で染色する。下記mAbおよび対応するアイソタイプを使用する:CD3−Pe、CD3−Percp、CD4−Pe、CD4−Percp、CD8−Percp、CD14−FITC、CD19−FITC、CD20−FITC、CD62−Pe、CD56−FITC、HLADR−Cychrome、CCR4−Pe(BD Pharmingen)、CD3−APC、CD3−FITC、CD4−APC、CD11a−Pe、CD11c−APC、CD19−APC、(Caltag)、CCR3−Pe、CCR5−Pe、CCR7−Pe、CXCR3−Pe、CXCR4、CXCR6−Pe(R&D Systems)。CCL22−Alexa647をDictageneから得る。CCL18(Peprotech)をFITCまたはビオチン(Molecular Probes)で、製造業者の指示に従って、標識化する。分析をFACSCalibur(商標)(BD)で、BD CELL(商標)Quest Softwareを使用して行う。
【0032】
IL−4刺激後の単球および樹状細胞中の、細胞内CCL18の検出
AD患者(n=8)および対照(n=13)由来のPBMCを、10ng/mlの組み換えヒトIL−4あり、またはなしで、48時間刺激し(5×105細胞/ml)、そしてBrefeldin-A(10μg/ml、Sigma)で少なくとも3時間処理する。単球はCD14染色により認識され、そして脊髄DCをHLA−DR+のCD11c+分画、lin(CD3,14,19,20,56)− PBMCとして同定する。CCL18の細胞内染色のために、表面染色細胞を4%パラホムルアルデヒド(Sigma)で固定し、0.5%サポニン(saponin)(Sigma)で透過させ、そしてヤギ抗ヒトCCL18mAbで、その後ロバ抗ヤギ−Pe(DPC Biermann)染色する。ヤギ血清(Sigma)をアイソタイプ対照として使用する。
【0033】
ELISA
血清CCL18およびCCL22レベルをDuoset ELISAアッセイを使用して測定する。
【0034】
走化性アッセイ
ケモカインまたは対照培地(0.5%BSAを含むRPMI1640)を30μl、96ウェル走化性チャンバー(Neuro Probe)の下側のウェルへと加える。Calcein-AM(1μM、Molecular Probes)標識化細胞を上側のチャンバーに3×106細胞/mlで播種し、そして下側のチャンバーのウェルを選択して100%遊走値を得る。2個のチャンバー区画を孔径3μmのポリカーボネートフィルター(Neuro Probe)で分離させる。37℃にて2.5時間インキュベート後、フィルターを取り外し、プレートを遠心分離して、上清を廃棄する。20μlの0.4%Triton−X100(Sigma)を各ウェルに加える。遊走の程度を、Victor II(Wallac)マルチウェルプレートリーダーを使用して蛍光を測定し、定量化する。
【0035】
SCID−hu皮膚マウスにおけるインビボ遊走アッセイ
SCID(C.B-17/GbmsTac-Prkdcscid Lystbg)マウス(Taconic M&B)を、Carballido, J.M., et al, J.Immunol.Methods 2003, 273:125-135に記載のとおりに、WHRTB、Petz Aladar County Hospital Gyoer, Hungary由来のヒト皮膚片で、施設および国の倫理ガイドラインにしたがって、移植する。ヒトT細胞のケモカイン誘導性皮膚帰巣を、Biedermann, T., et al,. Eur.J.Immunol. 2002, 2:3171-3180に記載の方法の変法を使用して行う。AD皮膚誘導性T細胞をCFSE(Molecular Probes、PBS中1μM、5分間RTにて)で標識化し、そして5×107細胞/マウスをヒト皮膚を移植されたSCIDマウス(SCID−hu皮膚マウス)へと静脈注射する。その直後に、CCL18またはCCL22(30μlのPBS中300ng、R&D)またはPBSのみを、ヒト皮膚移植片へと経皮的に注射する。24時間後、皮膚移植片を外植し、一種類の細胞懸濁液へと処理し、染色し、そしてFACS中で、CD3+、CFSE+細胞の割合を定量することによって、分析する。
【0036】
免疫組織学
健常対照(n=3)の通常皮膚の、およびAD(n=10)または乾癬(n=3)を有する患者由来の病変皮膚の、アセトン固定化5μm凍結切片をヤギ抗CCL18mAb(R&D)、またはヤギ血清およびビオチニル化ウマ抗ヤギIgG(Vector)で、その後アビジン接合アルカリホスファターゼ(AP)およびナフトールASホスファターゼ/Fast Red TR 物質(Sigma)で染色する。AD試料中のCCL18結合細胞を、CCL18ビオチン、その後アビジンAPおよびFast Redを使用して検出する。試料を抗CD3mAb(BD)、次いで抗マウスビオチン(Vector)、アビジンAPおよびFast Blue(Sigma)で共に染色し、ヘマトキシリンエオシン(HE、Merck)で対比染色する。免疫蛍光分析のために、凍結切片をヤギ抗CCL18およびマウス抗HLA−DRまたは抗CD3(BD)、抗CD1a(Caltag)、抗CD207(Baxter)で、次いでウサギ抗ヤギTxRdおよびウマ抗マウスFITC(Vector)で、それぞれ染色する。スライドをDAPI含有マウント培地(Vector)と共にカバーガラスで覆う。
【0037】
統計分析
データを平均±SEまたはボックスプロット(平均、中央値、25%〜75%の百分率およびSDを示す)として示す。統計上の有意性を、対応なしスチューデントt検定を使用して決定する。臨床データを単純な相関関係について、ピアソンの相関係数を測定することにより、および未補正可能性値について、試験する。P<0.05を有意とする。
【0038】
実施例1:
ADは、アレルゲンに対する皮膚過敏性および高いIL−4生産に関連した炎症性皮膚疾患である。したがって、ADはCCL18上方制御に好適な環境を提供することができる。このことを証明するため、AD患者(n=10)の皮膚試料を、正常(n=3)および乾癬(n=3)皮膚と比較して、CCL18発現の免疫組織化学評価を行う。CCL18発現は全てのAD皮膚で検出されるが、健常または乾癬個体由来の皮膚では検出されない(たとえば図1参照)。AD皮膚において、CCL18は上皮膚血管叢において、単核細胞浸潤と密接に関連して、強く発現される。免疫蛍光染色は、CCL18発現がHLA−DR+APCに限定されることを示す(たとえば図2参照)。とりわけ、表皮における全CCL18発現細胞はCD1a+である。CD207での続く染色は、CCL18発現細胞のほとんどがLCであるが、残りの集団が炎症性樹状上皮細胞からなることを示す。LCによるCCL18の生産は、正常または乾癬皮膚がこのケモカインを生産しないため、ADと関連したTh2サイトカイン環境の結果であると思われる。ケラチン生成細胞、繊維芽細胞およびCD3陽性T細胞はCCL18を発現しない(たとえば図2参照)。
【0039】
実施例2:
さらなる研究により、CCL18およびCCL18分泌APCがAD患者の血液中で増加することが示される。AD患者および健常対照のAPCによるCCL18発現を、細胞内免疫蛍光染色とその後のIL−4刺激により評価する。我々は、AD患者の血液中のCCL18分泌単球(CD14+)の割合が健常個体において観察されるものよりも有意に高い(>5倍、p<0.003)ことを発見した(たとえば図3参照)。同様に、CCL18生産DCにおけるCD11c+、HLA−DR+の割合も、AD患者の血液において増加する(3倍、p<0.001)(たとえば図3参照)。両方の群において、CCL18発現細胞はIL−4刺激後にのみ検出される。CCL18生産は、刺激なしまたはIL−4刺激したPBMCのCD3+T細胞およびCD19+B細胞分画において検出することができない。AD患者の循環中に存在する多数のCCL18分泌細胞がCCL18の上昇した血清レベルと相関する(たとえば図4参照)。CCL18の血清値は、AD患者において(平均34.9ng/ml±5.3SE)、健常、非アレルギー、年齢および性別の合致した対照よりも(平均10.7ng/ml±0.9SE)3倍高い(p<0.0003)。中程度および重度のAD段階におけるCCL18の発現レベル(臨床スコアIGAおよびEASIによって評価する)は、軽度の疾患徴候におけるよりも高い(たとえば図5参照)。しかし、CCL18の血清レベルは極めて重度の疾患スコアを有する患者において減少する(たとえば図5参照)。多くのIFN−γ生産Th細胞がこれらの皮膚病変において検出されるため、ADの極めて重度/慢性徴候は、IL−4生産のみを含まない(たとえばGrewe,M., et al, Immunol.Today 19:359-361, 1998参照)。重度/慢性状況において、環境がIL−4について豊富でないとき、少量のCCL18が生産されることが予期される。これは最高の臨床性疾患スコアを有する患者の血清において観察されるCCL18発現の減少のためであり得る。我々の患者集団において、我々はまた、EASIおよび血清CCL22レベルの間の相関関係を見出した(r=0.4、p<0.05、図示せず)。さらに、我々は軽度〜重度の疾患を有する患者においてCCL18とCCL22発現の間に強い相関関係を見出した(r=0.6、p<0.003、図6黒丸)。しかし、最高のCCL22血清レベルを有し、最高の疾患スコアも有する患者は中程度のCCL18発現しか示さなかった(たとえば図6参照、白丸)。したがって、AD発症中のCCL18発現の選択的増加および最高の臨床疾患スコアを有する患者におけるその後の減少は、CCL18制御の特徴的なパターンを示唆している。
【0040】
実施例3:
我々はまた、CCL18がADにおける記憶Th細胞と結合することを見出した。CCL18によって標的化される細胞集団の検出は、CCL18レセプターが未知であるという事実により妨げられる。この問題を解決するために、我々はFITCおよびビオチン標識化CCL18を、それらの生物学的特性を変化させることなく生産した。CCL18はAD患者の生検におけるCD3+皮膚浸潤T細胞の分画と結合する(たとえば図7参照)。加えて、CCL18はリンパ管と結合し、これはこのケモカインがこれらの管を通るリンパ球移動に関連し得ることを示唆する(たとえば図7参照)。CCL18はまた、記憶T細胞株およびAD皮膚由来のクローンの5%までと結合する(たとえば図8参照)。T細胞株において、CCL18発現はCD4+分画において優勢に観察される(たとえば図8参照)。CCL18がPBMCにおけるヒトCD45RA+、CCR7high、CD62Lhigh、CD25−、CD4+またはCD8+T細胞の特異的な集団と結合し、これはCCL18の無傷なT細胞に対する報告された効果と一致するため、当該結合は特異的である(たとえばAdema, G.J., et al, Nature 387:713-717 (1997)参照)。また、CCL18結合は標識なしのCCL18と競合し得るが、CCL11を含む他のケモカインとはなく、このレセプター(CCR3)はCCL18のアンタゴニスト作用を媒介することが記載されている(たとえばNibbs, R.J., et al, J.Immunol. 2000, 164:1488-1497参照)。さらに、特異的mAbを使用して、CCL18結合T細胞集団におけるCCR3発現を排除する(たとえば図9参照)。異なるT細胞株およびクローンにおけるCCL22結合細胞の割合は、CCL18結合細胞の割合よりも高い(たとえば図3B参照)。一方、全CCL18結合細胞もCCL22と結合し(たとえば図10参照)、それらがCCR4+Th細胞の亜集団を示し得ることを示唆する。
【0041】
実施例4:
記憶Th細胞とのCCL18結合の機能的関連性を、機能的インビトロおよびインビボ遊走アッセイにおいて評価する。インビトロで、試験した全てのAD由来T細胞株およびクローンは、顕著に、そしてCCL18に応答した用量依存方法において移動する。CCL18誘導性遊走の程度はCCL22により誘導されたものと比較可能である(図11参照)。CCL18およびCCL22誘導性遊走の両方を、特異的中和mAbを使用してブロックすることができ、これは応答の特異性を示す(たとえば図11参照)。インビボでのCCL18の役割を、既出のSCID−hu皮膚マウスモデル(Biederman T. et al, Eur.J.Immunol. 2002, 32, 3171-3180)の変法を使用して調査する。AD由来の記憶T細胞株およびクローンはSCIDマウスに移植されたヒト皮膚移植片へと、CCL18に応答して顕著に移動する(たとえば図12参照)。CCL18誘導性皮膚帰巣はCCL22により媒介される遊走の程度と同等である(たとえば図12参照)。
【0042】
結論として、全てのこれらの結果は、CCL18タンパク質発現がADと関連するという証拠、そして記憶Th細胞集団をヒト皮膚へとインビボで動員するというCCL18の新規な能力についての説明を提供する。患者の試料、たとえば血液試料において決定することができるCCLレベルの調節、たとえば上昇は、したがって、ADの指標として使用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】ADにおけるCCL18発現。AD、乾癬または健常皮膚由来の病変生検の凍結切片をCCL18発現について染色する。
【図2】ADにおけるCCL18発現。示した抗体で、2重免疫蛍光染色をAD皮膚生検の凍結切片について行った。元の倍率200×(図1)および400×(図2)。
【図3】CCL18の血清レベル。AD患者(n=8)および対照(n=13)由来のPBMCをIL−4で刺激する。PBMCにおけるCCL18生産単球およびCCL18分泌CD11c+血液DCの割合をボックスプロットとして示す。分析はADと対照のDC間で(それぞれ平均7.1%および1.3%、p<0.003)、そしてADと対照のDC間で(それぞれ平均5.6%および1.9%、p<0.001)有意な差を示す。
【図4】CCL18の血清レベル。AD患者由来の血清におけるCCL18レベル(n=36)は、健常対照(n=28)対象のものより有意に高い(それぞれ平均34.9ng/mlおよび10.7ng/ml、p<0.0003)。
【図5】CCL18の血清レベル。ことなる重症度疾患スコアでのAD患者におけるCCL18の血清レベルのグラフ分布(IGA)。
【図6】CCL18の血清レベル。AD患者におけるCCL18とCCL22血清レベル間の相関関係。黒丸は極めて軽度から重症の患者を含む(r=0.6、p<0.003)。極めて重症のスコアを有する患者は、白丸で表し、相関関係分析から除外する。
【図7】AD由来記憶T細胞のCCL18結合。AD皮膚におけるCCL18結合(赤)およびCD3発現(暗青)の免疫組織化学分析。HEで対比染色(元の倍率1000×)。
【図8】AD由来記憶T細胞のCCL18結合。静止期AD由来T細胞株およびクローンにおける、蛍光(F)標識ケモカインを使用したCCL18またはCCL22結合細胞。CD4+、CCL18結合T細胞の割合を、右上象限に示す。
【図9】AD由来記憶T細胞のCCL18結合。CCR3についてのCCL18結合T細胞株NITのFACS染色。
【図10】AD由来記憶T細胞のCCL18結合。T細胞株NITにおけるCCL18−FおよびCCL22−F結合のFACS。全FACS染色は5〜10複製を代表し、そして異なるT細胞株およびクローンにわたって一致した。
【図11】CCL18にインビトロおよびインビボで応答するAD由来記憶T細胞遊走。AD皮膚由来のT細胞は、走化性チャンバーアッセイにおいて、増加した濃度のCCL18(黒丸)およびCCL22(白四角)と有意に反応する(p<0.05)。高い濃度を特異的中和mAbと共にインキュベーションしてブロックする。各点を、4組で評価し、15実験中2つの平均±SEを示す。
【図12】CCL18にインビトロおよびインビボで応答するAD由来記憶T細胞遊走。ヒト記憶T細胞の、SCID−hu皮膚マウスにおけるヒト皮膚移植片に対する遊走。CCL18(n=8)、CCL22(n=8)またはPBS(n=9)をヒト皮膚移植片へと注射し、そしてT細胞の皮膚帰巣をFACS分析により評価する。CCL18はT細胞株NITおよびT細胞クローン98016T.02の有意な遊走を誘導した(p<0.05)。4つの独立した実験のうち2つを示す。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は診断ツール、たとえばバイオマーカーとして使用するためのケモカインCCL18、および様々な方法におけるその使用に関する。
【0002】
恒常性応答および病理学的応答での白血球移動の制御は、大部分がケモカインによって達成される。ケモカインは、細胞表面7重らせんGタンパク質共役受容体と相互作用することによってそれらの生物学的効果を示す、同種タンパク質の巨大グループを含む。DC−CK1、PARC、AMAC−1およびMIP−4とも示されるCCL18は、CCL3と構造的に関連したヒトケモカインである。これまでのところ、CCL18はマウス相同物を有さず、そのレセプターは知られていなかった。CCL18は、胚中心および扁桃腺において、樹状細胞(DC)によって構成的に発現され、そして主に無傷なT細胞、CD38−マントル領域Bリンパ球およびDCを引きつけることが示された。抗原提示細胞(APC)によるCCL18の生産は、IL−4、IL−13のようなTh2サイトカインによって亢進され、そしてIFN−γによって抑制される。
【0003】
アトピー性皮膚炎(AD)は、湿疹性皮膚病変によって特徴付けられるTヘルパー2(Th2)介在性、慢性炎症性皮膚疾患であり、これはたとえば表皮細胞間浮腫と関連する激しい掻痒性紅斑性丘疹によって特徴付けられる。病理組織学的には、ADの皮膚病変は、マクロファージ、増加した数のIgE生産ランゲルハンス細胞(LC)、炎症性樹状表皮細胞、好酸球およびCD4+Th細胞から成る、単核細胞浸潤を示す(たとえば、Leung DY., J. Allergy Clin.Immunol. 2000, 105:860-76参照)。急性病変において、これらのTh細胞は主にIL−4、IL−5およびIL−13のようなTh2サイトカインを生産する一方、慢性ADにおいて、IFN−γ分泌Th細胞も存在する。Th細胞のAD皮膚への帰巣を介在することが提唱されているケモカインには、CCR4リガンドCCL17、ならびにCCL22およびCCR10リガンドCCL27が含まれる。しかし、さらなる走化性シグナルが、特殊化したT細胞亜集団の特異的動員のためには必要であり得る。
【0004】
今まで、ADに対する信頼できる実験マーカーは存在しなかったが、AD患者はしばしば上昇したIgEレベル、食物に対する、そして花粉、かびおよび昆虫のような他の一般的なアレルゲンに対するアレルギー性反応を有する。アレルゲンの種類に関係なく、AD患者の病態を理解するために、そして疾患に対する処置レジメンを決定するために有用な診断指標が、当該技術分野において大いに必要とされている。患者に対する害が少ないのみならず、診断に必要な情報をすぐに得ることのできるアレルギー性疾患に対するマーカーが大変有用である。
【0005】
我々は、体液における、たとえば血液におけるCCL18のレベルならびにCCL18分泌細胞、たとえばAPC(単球を含む)およびDCが、健常対照と比較して、たとえばAD患者において有意に増加することを見出した。この発見、そして他の発見が、CCL18のバイオマーカーとしての有用性を明らかにする。
【0006】
1つの局面において本発明は、個体の体液試料におけるバイオマーカーとして使用するための、ケモカインCCL18を提供する。
【0007】
本発明において使用されるバイオマーカーは、個体の体液試料におけるCCL18の測定(=検出および/または定量)が障害それ自体の、および/または障害の状態をモニターするための指標であることを意味する。
【0008】
本発明の体液試料は、血液、たとえば単離された単核細胞に、または血液分画、たとえば血漿または血清、たとえば血清に由来し得る。
【0009】
他の局面において、本発明は血液試料、たとえば血清におけるバイオマーカーとしてのCCL18の使用を提供する。
【0010】
本明細書において使用するとき、CCL18は全長CCL18タンパク質、CCL18タンパク質フラグメント、変異CCL18タンパク質、CCL18誘導体、ならびにCCL18分泌(生産)細胞、たとえば単球および樹状細胞(DC)を含む抗原提示細胞(APC)を含む。CCL18のフラグメント、変異体および誘導体は、CCL18のバイオマーカー特性が保持されているものである。
【0011】
本発明のバイオマーカーとしてのCCL18の使用は、CCL18を個体の当該試料において、たとえば、イムノアッセイ、たとえば酵素免疫アッセイ(ELISA);蛍光を利用したアッセイ、たとえば時間分解蛍光免疫アッセイ(DELFIA)または放射性アッセイのようなアッセイの分野において常套のものを含む検出方法で、測定することを意味する。本発明の検出方法には、たとえば特異的にCCL18を認識する分子、たとえば直接または間接的に検出可能な分子が含まれる。本発明の検出方法は、好ましくは抗体(抗体の誘導体またはそのフラグメントを含む)、たとえばCCL18を認識する抗体、たとえば標識を有するCCL18認識抗体を含む。
【0012】
他の局面において、CCL18のレベルはCCL18特異的抗体を使用して測定される。
【0013】
標識は、常套のもの、たとえばビオチンあるいはアルカリホスファターゼ(AP)、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)もしくはペルオキシダーゼ(POD)のような酵素、または蛍光分子、たとえば蛍光染料たとえば蛍光イソチオシアネートであり得る。好ましくは標識はビオチンである。標識を有する分子、たとえば標識を有する抗体は、常套の方法、たとえば蛍光測定または酵素検出方法により、検出することができる。
【0014】
好ましい局面において、CCL18認識抗体は、たとえば蛍光標識化のような標識化形態で、検出手段として使用される。
【0015】
個体の体液の試料、たとえば血液におけるCCL18分泌細胞を、たとえば下記のような常套の方法を使用して測定することができる。
細胞を、試料、たとえば血液から精製、たとえば密度勾配により分離することができ、そして得られる精製された細胞を染色する。抗CCL18抗体、たとえば蛍光標識抗CCL18抗体を、染色された細胞調製物へと、所望により、たとえばインターロイキン4で、細胞を刺激した後に加え、そしてCCL18分泌細胞のレベルを測定する。
【0016】
所望により、試料に含まれるCCL18または検出手段に含まれるCCL18認識、たとえば検出可能な分子を、固相に固定する。適当な固相には、たとえば常套のもの、たとえばポリスチレンまたはポリビニルプレートのようなプラスチックプレート、とりわけマイクロタイタープレートが含まれる。また、マイクロビーズ、たとえば被覆マイクロビーズを固相として使用することができる。固相を、たとえば検出手段に含まれる標識に依存した性質のコーティング物質で被覆することができる。コーティング物質は標識と結合できなければならず、たとえば標識はビオチンであり、そしてコーティング物質には、たとえば固相と共有結合するストレプトアビジンが含まれる。
【0017】
他の局面において本発明は、アレルギー性疾患およびTh2介在性障害からなる群から選択される障害または疾患に対する、個体の体液試料におけるバイオマーカーとして使用するためのケモカインCCL18を提供する。
【0018】
他の局面において本発明は、アトピー性皮膚炎に関連する障害または疾患に対する、個体の体液試料におけるバイオマーカーとして使用するためのケモカインCCL18を提供する。
【0019】
本発明において使用される障害および疾患には、アレルギー性疾患およびTh2介在性障害からなる群から選択される様々な種類および重症度の障害または疾患が含まれる。アレルギー性疾患およびTh2介在性障害には、たとえば過敏性肺炎、春期カタル、接触過敏症および、様々な炎症性皮膚疾患、たとえばアトピー性皮膚炎を含む、アトピー性皮膚炎に関連する障害または疾患が含まれる。
【0020】
他の局面において本発明は、個体におけるアレルギー性疾患およびTh2介在性障害からなる群から選択される障害または疾患のスクリーニングおよび/またはインビトロ診断方法であって、
a)個体の体液試料を得ること、
b)工程a)で得た試料におけるCCL18のレベルを測定すること、
c)工程b)で測定したCCL18のレベルを、健常対照個体の体液試料に由来する参照レベルと比較すること、そして
d)工程b)で測定したCCL18のレベルが参照レベルと有意に異なるか否かを決定して、アレルギー性疾患およびTh2介在性障害からなる群から選択される障害または疾患をスクリーニングおよび/またはインビトロ診断すること
を含んでなる方法を提供する。
【0021】
CCL18の測定を上記のとおり、たとえばバイオマーカーを特異的に認識する分子、たとえば抗体、抗体誘導体、抗体フラグメント、たとえば抗CCL18抗体、たとえば商業的に入手可能なCCL18特異的抗体を使用して、たとえば免疫診断アッセイ法により、行う。
【0022】
他の局面において本発明は、アレルギー性疾患およびTh2介在性障害からなる群から選択される障害または疾患を軽減または治癒する効果を有することが予期される物質での個体の処置の治療効果をモニターする方法であって、当該個体の体液試料におけるCCL18のレベルを測定し、そしてそれを当該物質を投与する前のCCL18のレベルと比較することを含んでなる方法を提供する。
【0023】
他の局面において本発明は、個体の体液試料におけるアレルギー性疾患およびTh2介在性障害からなる群から選択される障害または疾患のスクリーニングおよび/またはインビトロ診断のためのキットであって、
a)CCL18タンパク質またはその一部を認識する、所望により標識形態の分子、
b)使用のための指示書、
c)所望により検出手段、
d)所望により固相
を含んでなるキットを提供する。
【0024】
本発明により提供される当該キットは、さらに、試験される試料の適当な環境を含む実質的な要素およびたとえば試験される試料のCCL18を測定する適当な手段を含み得る。
【0025】
図の説明
図1:ADにおけるCCL18発現。AD、乾癬または健常皮膚由来の病変生検の凍結切片をCCL18について染色する。
図2:ADにおけるCCL18発現。示した抗体で.2重免疫蛍光染色をAD皮膚生検の凍結切片について行った。元の倍率200×(図1)および400×(図2)。
図3:CCL18の血清レベル。AD患者(n=8)および対照(n=13)由来のPBMCをIL−4で刺激する。PBMCにおけるCCL18生産単球およびCCL18分泌CD11c+血液DCの割合をボックスプロットとして示す。分析はADと対照のDC間で(それぞれ平均7.1%および1.3%、p<0.003)、そしてADと対照のDC間で(それぞれ平均5.6%および1.9%、p<0.001)有意な差を示す。
【0026】
図4:CCL18の血清レベル。AD患者由来の血清におけるCCL18レベル(n=36)は、健常対照(n=28)対象のものより有意に高い(それぞれ平均34.9ng/mlおよび10.7ng/ml、p<0.0003)。
図5:CCL18の血清レベル。異なる重症度疾患スコア(IGA)でのAD患者におけるCCL18の血清レベルのグラフ分布。
図6:CCL18の血清レベル。AD患者におけるCCL18とCCL22血清レベル間の相関関係。黒丸は極めて軽度から重症の患者を含む(r=0.6、p<0.003)。極めて重症のスコアを有する患者は、白丸で表し、相関関係分析から除外する。
図7:AD由来記憶T細胞のCCL18結合。AD皮膚におけるCCL18結合(赤)およびCD3発現(暗青)の免疫組織化学分析。HEで対比染色(元の倍率1000×)。
図8:AD由来記憶T細胞のCCL18結合。静止期AD由来T細胞株およびクローンにおける、蛍光(F)標識ケモカインを使用したCCL18またはCCL22結合細胞。CD4+、CCL18結合T細胞の割合を、右上象限に示す。
図9:AD由来記憶T細胞のCCL18結合。CCR3についてのCCL18結合T細胞株NITのFACS染色。
【0027】
図10:AD由来記憶T細胞のCCL18結合。T細胞株NITにおけるCCL18−FおよびCCL22−F結合のFACS。全FACS染色は5〜10複製を代表し、そして異なるT細胞株およびクローンにわたって一致した。
図11:CCL18にインビトロおよびインビボで応答するAD由来記憶T細胞遊走。AD皮膚由来のT細胞は、走化性チャンバーアッセイにおいて、増加した濃度のCCL18(黒丸)およびCCL22(白四角)と有意に反応する(p<0.05)。高い濃度を特異的中和mAbと共にインキュベーションしてブロックする。各点を、4組で評価し、15実験中2つの平均±SEで示す。
図12:CCL18にインビトロおよびインビボで応答するAD由来記憶T細胞遊走。ヒト記憶T細胞の、SCID−hu皮膚マウスにおけるヒト皮膚移植片に対する遊走。CCL18(n=8)、CCL22(n=8)またはPBS(n=9)をヒト皮膚移植片へと注射し、そしてT細胞の皮膚帰巣をFACS分析により評価する。CCL18はT細胞株NITおよびT細胞クローン98016T.02の有意な遊走を誘導した(p<0.05)。4つの独立した実験のうち2つを示す。
【0028】
下記実施例において、温度は摂氏度(℃)であり、そして補正はしていない。
下記略語を使用する:
【表1】
【実施例】
【0029】
方法:
患者
血液試料をADを有する36名の患者から、そして28名のアトピーのない健常対象から得る。臨床的重症度をEASIおよびIGAにより記録する(たとえばHanifin, J.M., et al, Exp.Dermatol. 2001, 10:11-18参照)。IGAスコアによる患者群の構成:ほぼ無傷:n=3、軽度の疾患:n=0、中程度の疾患:n=15、重度の疾患:n=10、極めて重度の疾患:n=4。患者は免疫抑制剤でのあらゆる全身または局所処置を、血液試料および皮膚生検の採取前少なくとも4週間は、受けなかった。
【0030】
細胞の精製および培養
ヒト血液由来のPBMCを、Ficoll-Paque(商標)Plus(Amersham Biosciences)での密度勾配分離によって製造する。皮膚リンパ球抗原(CLA)、CCR4を発現し、そして活性化後にTh2/Th0サイトカイン分泌パターンを示す、AD由来T細胞株(NIT、SVT、DK2−JOT)およびクローン(98016T.02、98016T.24)を病変パンチ生検から、たとえば
-Carballido, J.M., et al, J.Immunol. 1997, 159:4316-4321、
-Biedermann, T., et al,. Eur.J.Immunol. 2002, 32:3171-3180
に記載のとおりに製造する。
T細胞を組み換えヒトIL−2(20ng/ml)を補ったX−Vivo15培地(BioWitthaker)中で培養する。
【0031】
フローサイトメトリー
細胞を30分間、FACS緩衝液を使用した氷上で染色する。下記mAbおよび対応するアイソタイプを使用する:CD3−Pe、CD3−Percp、CD4−Pe、CD4−Percp、CD8−Percp、CD14−FITC、CD19−FITC、CD20−FITC、CD62−Pe、CD56−FITC、HLADR−Cychrome、CCR4−Pe(BD Pharmingen)、CD3−APC、CD3−FITC、CD4−APC、CD11a−Pe、CD11c−APC、CD19−APC、(Caltag)、CCR3−Pe、CCR5−Pe、CCR7−Pe、CXCR3−Pe、CXCR4、CXCR6−Pe(R&D Systems)。CCL22−Alexa647をDictageneから得る。CCL18(Peprotech)をFITCまたはビオチン(Molecular Probes)で、製造業者の指示に従って、標識化する。分析をFACSCalibur(商標)(BD)で、BD CELL(商標)Quest Softwareを使用して行う。
【0032】
IL−4刺激後の単球および樹状細胞中の、細胞内CCL18の検出
AD患者(n=8)および対照(n=13)由来のPBMCを、10ng/mlの組み換えヒトIL−4あり、またはなしで、48時間刺激し(5×105細胞/ml)、そしてBrefeldin-A(10μg/ml、Sigma)で少なくとも3時間処理する。単球はCD14染色により認識され、そして脊髄DCをHLA−DR+のCD11c+分画、lin(CD3,14,19,20,56)− PBMCとして同定する。CCL18の細胞内染色のために、表面染色細胞を4%パラホムルアルデヒド(Sigma)で固定し、0.5%サポニン(saponin)(Sigma)で透過させ、そしてヤギ抗ヒトCCL18mAbで、その後ロバ抗ヤギ−Pe(DPC Biermann)染色する。ヤギ血清(Sigma)をアイソタイプ対照として使用する。
【0033】
ELISA
血清CCL18およびCCL22レベルをDuoset ELISAアッセイを使用して測定する。
【0034】
走化性アッセイ
ケモカインまたは対照培地(0.5%BSAを含むRPMI1640)を30μl、96ウェル走化性チャンバー(Neuro Probe)の下側のウェルへと加える。Calcein-AM(1μM、Molecular Probes)標識化細胞を上側のチャンバーに3×106細胞/mlで播種し、そして下側のチャンバーのウェルを選択して100%遊走値を得る。2個のチャンバー区画を孔径3μmのポリカーボネートフィルター(Neuro Probe)で分離させる。37℃にて2.5時間インキュベート後、フィルターを取り外し、プレートを遠心分離して、上清を廃棄する。20μlの0.4%Triton−X100(Sigma)を各ウェルに加える。遊走の程度を、Victor II(Wallac)マルチウェルプレートリーダーを使用して蛍光を測定し、定量化する。
【0035】
SCID−hu皮膚マウスにおけるインビボ遊走アッセイ
SCID(C.B-17/GbmsTac-Prkdcscid Lystbg)マウス(Taconic M&B)を、Carballido, J.M., et al, J.Immunol.Methods 2003, 273:125-135に記載のとおりに、WHRTB、Petz Aladar County Hospital Gyoer, Hungary由来のヒト皮膚片で、施設および国の倫理ガイドラインにしたがって、移植する。ヒトT細胞のケモカイン誘導性皮膚帰巣を、Biedermann, T., et al,. Eur.J.Immunol. 2002, 2:3171-3180に記載の方法の変法を使用して行う。AD皮膚誘導性T細胞をCFSE(Molecular Probes、PBS中1μM、5分間RTにて)で標識化し、そして5×107細胞/マウスをヒト皮膚を移植されたSCIDマウス(SCID−hu皮膚マウス)へと静脈注射する。その直後に、CCL18またはCCL22(30μlのPBS中300ng、R&D)またはPBSのみを、ヒト皮膚移植片へと経皮的に注射する。24時間後、皮膚移植片を外植し、一種類の細胞懸濁液へと処理し、染色し、そしてFACS中で、CD3+、CFSE+細胞の割合を定量することによって、分析する。
【0036】
免疫組織学
健常対照(n=3)の通常皮膚の、およびAD(n=10)または乾癬(n=3)を有する患者由来の病変皮膚の、アセトン固定化5μm凍結切片をヤギ抗CCL18mAb(R&D)、またはヤギ血清およびビオチニル化ウマ抗ヤギIgG(Vector)で、その後アビジン接合アルカリホスファターゼ(AP)およびナフトールASホスファターゼ/Fast Red TR 物質(Sigma)で染色する。AD試料中のCCL18結合細胞を、CCL18ビオチン、その後アビジンAPおよびFast Redを使用して検出する。試料を抗CD3mAb(BD)、次いで抗マウスビオチン(Vector)、アビジンAPおよびFast Blue(Sigma)で共に染色し、ヘマトキシリンエオシン(HE、Merck)で対比染色する。免疫蛍光分析のために、凍結切片をヤギ抗CCL18およびマウス抗HLA−DRまたは抗CD3(BD)、抗CD1a(Caltag)、抗CD207(Baxter)で、次いでウサギ抗ヤギTxRdおよびウマ抗マウスFITC(Vector)で、それぞれ染色する。スライドをDAPI含有マウント培地(Vector)と共にカバーガラスで覆う。
【0037】
統計分析
データを平均±SEまたはボックスプロット(平均、中央値、25%〜75%の百分率およびSDを示す)として示す。統計上の有意性を、対応なしスチューデントt検定を使用して決定する。臨床データを単純な相関関係について、ピアソンの相関係数を測定することにより、および未補正可能性値について、試験する。P<0.05を有意とする。
【0038】
実施例1:
ADは、アレルゲンに対する皮膚過敏性および高いIL−4生産に関連した炎症性皮膚疾患である。したがって、ADはCCL18上方制御に好適な環境を提供することができる。このことを証明するため、AD患者(n=10)の皮膚試料を、正常(n=3)および乾癬(n=3)皮膚と比較して、CCL18発現の免疫組織化学評価を行う。CCL18発現は全てのAD皮膚で検出されるが、健常または乾癬個体由来の皮膚では検出されない(たとえば図1参照)。AD皮膚において、CCL18は上皮膚血管叢において、単核細胞浸潤と密接に関連して、強く発現される。免疫蛍光染色は、CCL18発現がHLA−DR+APCに限定されることを示す(たとえば図2参照)。とりわけ、表皮における全CCL18発現細胞はCD1a+である。CD207での続く染色は、CCL18発現細胞のほとんどがLCであるが、残りの集団が炎症性樹状上皮細胞からなることを示す。LCによるCCL18の生産は、正常または乾癬皮膚がこのケモカインを生産しないため、ADと関連したTh2サイトカイン環境の結果であると思われる。ケラチン生成細胞、繊維芽細胞およびCD3陽性T細胞はCCL18を発現しない(たとえば図2参照)。
【0039】
実施例2:
さらなる研究により、CCL18およびCCL18分泌APCがAD患者の血液中で増加することが示される。AD患者および健常対照のAPCによるCCL18発現を、細胞内免疫蛍光染色とその後のIL−4刺激により評価する。我々は、AD患者の血液中のCCL18分泌単球(CD14+)の割合が健常個体において観察されるものよりも有意に高い(>5倍、p<0.003)ことを発見した(たとえば図3参照)。同様に、CCL18生産DCにおけるCD11c+、HLA−DR+の割合も、AD患者の血液において増加する(3倍、p<0.001)(たとえば図3参照)。両方の群において、CCL18発現細胞はIL−4刺激後にのみ検出される。CCL18生産は、刺激なしまたはIL−4刺激したPBMCのCD3+T細胞およびCD19+B細胞分画において検出することができない。AD患者の循環中に存在する多数のCCL18分泌細胞がCCL18の上昇した血清レベルと相関する(たとえば図4参照)。CCL18の血清値は、AD患者において(平均34.9ng/ml±5.3SE)、健常、非アレルギー、年齢および性別の合致した対照よりも(平均10.7ng/ml±0.9SE)3倍高い(p<0.0003)。中程度および重度のAD段階におけるCCL18の発現レベル(臨床スコアIGAおよびEASIによって評価する)は、軽度の疾患徴候におけるよりも高い(たとえば図5参照)。しかし、CCL18の血清レベルは極めて重度の疾患スコアを有する患者において減少する(たとえば図5参照)。多くのIFN−γ生産Th細胞がこれらの皮膚病変において検出されるため、ADの極めて重度/慢性徴候は、IL−4生産のみを含まない(たとえばGrewe,M., et al, Immunol.Today 19:359-361, 1998参照)。重度/慢性状況において、環境がIL−4について豊富でないとき、少量のCCL18が生産されることが予期される。これは最高の臨床性疾患スコアを有する患者の血清において観察されるCCL18発現の減少のためであり得る。我々の患者集団において、我々はまた、EASIおよび血清CCL22レベルの間の相関関係を見出した(r=0.4、p<0.05、図示せず)。さらに、我々は軽度〜重度の疾患を有する患者においてCCL18とCCL22発現の間に強い相関関係を見出した(r=0.6、p<0.003、図6黒丸)。しかし、最高のCCL22血清レベルを有し、最高の疾患スコアも有する患者は中程度のCCL18発現しか示さなかった(たとえば図6参照、白丸)。したがって、AD発症中のCCL18発現の選択的増加および最高の臨床疾患スコアを有する患者におけるその後の減少は、CCL18制御の特徴的なパターンを示唆している。
【0040】
実施例3:
我々はまた、CCL18がADにおける記憶Th細胞と結合することを見出した。CCL18によって標的化される細胞集団の検出は、CCL18レセプターが未知であるという事実により妨げられる。この問題を解決するために、我々はFITCおよびビオチン標識化CCL18を、それらの生物学的特性を変化させることなく生産した。CCL18はAD患者の生検におけるCD3+皮膚浸潤T細胞の分画と結合する(たとえば図7参照)。加えて、CCL18はリンパ管と結合し、これはこのケモカインがこれらの管を通るリンパ球移動に関連し得ることを示唆する(たとえば図7参照)。CCL18はまた、記憶T細胞株およびAD皮膚由来のクローンの5%までと結合する(たとえば図8参照)。T細胞株において、CCL18発現はCD4+分画において優勢に観察される(たとえば図8参照)。CCL18がPBMCにおけるヒトCD45RA+、CCR7high、CD62Lhigh、CD25−、CD4+またはCD8+T細胞の特異的な集団と結合し、これはCCL18の無傷なT細胞に対する報告された効果と一致するため、当該結合は特異的である(たとえばAdema, G.J., et al, Nature 387:713-717 (1997)参照)。また、CCL18結合は標識なしのCCL18と競合し得るが、CCL11を含む他のケモカインとはなく、このレセプター(CCR3)はCCL18のアンタゴニスト作用を媒介することが記載されている(たとえばNibbs, R.J., et al, J.Immunol. 2000, 164:1488-1497参照)。さらに、特異的mAbを使用して、CCL18結合T細胞集団におけるCCR3発現を排除する(たとえば図9参照)。異なるT細胞株およびクローンにおけるCCL22結合細胞の割合は、CCL18結合細胞の割合よりも高い(たとえば図3B参照)。一方、全CCL18結合細胞もCCL22と結合し(たとえば図10参照)、それらがCCR4+Th細胞の亜集団を示し得ることを示唆する。
【0041】
実施例4:
記憶Th細胞とのCCL18結合の機能的関連性を、機能的インビトロおよびインビボ遊走アッセイにおいて評価する。インビトロで、試験した全てのAD由来T細胞株およびクローンは、顕著に、そしてCCL18に応答した用量依存方法において移動する。CCL18誘導性遊走の程度はCCL22により誘導されたものと比較可能である(図11参照)。CCL18およびCCL22誘導性遊走の両方を、特異的中和mAbを使用してブロックすることができ、これは応答の特異性を示す(たとえば図11参照)。インビボでのCCL18の役割を、既出のSCID−hu皮膚マウスモデル(Biederman T. et al, Eur.J.Immunol. 2002, 32, 3171-3180)の変法を使用して調査する。AD由来の記憶T細胞株およびクローンはSCIDマウスに移植されたヒト皮膚移植片へと、CCL18に応答して顕著に移動する(たとえば図12参照)。CCL18誘導性皮膚帰巣はCCL22により媒介される遊走の程度と同等である(たとえば図12参照)。
【0042】
結論として、全てのこれらの結果は、CCL18タンパク質発現がADと関連するという証拠、そして記憶Th細胞集団をヒト皮膚へとインビボで動員するというCCL18の新規な能力についての説明を提供する。患者の試料、たとえば血液試料において決定することができるCCLレベルの調節、たとえば上昇は、したがって、ADの指標として使用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】ADにおけるCCL18発現。AD、乾癬または健常皮膚由来の病変生検の凍結切片をCCL18発現について染色する。
【図2】ADにおけるCCL18発現。示した抗体で、2重免疫蛍光染色をAD皮膚生検の凍結切片について行った。元の倍率200×(図1)および400×(図2)。
【図3】CCL18の血清レベル。AD患者(n=8)および対照(n=13)由来のPBMCをIL−4で刺激する。PBMCにおけるCCL18生産単球およびCCL18分泌CD11c+血液DCの割合をボックスプロットとして示す。分析はADと対照のDC間で(それぞれ平均7.1%および1.3%、p<0.003)、そしてADと対照のDC間で(それぞれ平均5.6%および1.9%、p<0.001)有意な差を示す。
【図4】CCL18の血清レベル。AD患者由来の血清におけるCCL18レベル(n=36)は、健常対照(n=28)対象のものより有意に高い(それぞれ平均34.9ng/mlおよび10.7ng/ml、p<0.0003)。
【図5】CCL18の血清レベル。ことなる重症度疾患スコアでのAD患者におけるCCL18の血清レベルのグラフ分布(IGA)。
【図6】CCL18の血清レベル。AD患者におけるCCL18とCCL22血清レベル間の相関関係。黒丸は極めて軽度から重症の患者を含む(r=0.6、p<0.003)。極めて重症のスコアを有する患者は、白丸で表し、相関関係分析から除外する。
【図7】AD由来記憶T細胞のCCL18結合。AD皮膚におけるCCL18結合(赤)およびCD3発現(暗青)の免疫組織化学分析。HEで対比染色(元の倍率1000×)。
【図8】AD由来記憶T細胞のCCL18結合。静止期AD由来T細胞株およびクローンにおける、蛍光(F)標識ケモカインを使用したCCL18またはCCL22結合細胞。CD4+、CCL18結合T細胞の割合を、右上象限に示す。
【図9】AD由来記憶T細胞のCCL18結合。CCR3についてのCCL18結合T細胞株NITのFACS染色。
【図10】AD由来記憶T細胞のCCL18結合。T細胞株NITにおけるCCL18−FおよびCCL22−F結合のFACS。全FACS染色は5〜10複製を代表し、そして異なるT細胞株およびクローンにわたって一致した。
【図11】CCL18にインビトロおよびインビボで応答するAD由来記憶T細胞遊走。AD皮膚由来のT細胞は、走化性チャンバーアッセイにおいて、増加した濃度のCCL18(黒丸)およびCCL22(白四角)と有意に反応する(p<0.05)。高い濃度を特異的中和mAbと共にインキュベーションしてブロックする。各点を、4組で評価し、15実験中2つの平均±SEを示す。
【図12】CCL18にインビトロおよびインビボで応答するAD由来記憶T細胞遊走。ヒト記憶T細胞の、SCID−hu皮膚マウスにおけるヒト皮膚移植片に対する遊走。CCL18(n=8)、CCL22(n=8)またはPBS(n=9)をヒト皮膚移植片へと注射し、そしてT細胞の皮膚帰巣をFACS分析により評価する。CCL18はT細胞株NITおよびT細胞クローン98016T.02の有意な遊走を誘導した(p<0.05)。4つの独立した実験のうち2つを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体の体液試料におけるバイオマーカーとして使用するための、ケモカインCCL18。
【請求項2】
アレルギー性疾患およびTh2介在性障害からなる群から選択される障害または疾患のための、個体の体液試料におけるバイオマーカーとして使用するための、請求項1に記載のケモカイン。
【請求項3】
障害または疾患がアトピー性皮膚炎と関係する、請求項1または2に記載のケモカイン。
【請求項4】
個体におけるアレルギー性疾患およびTh2介在性障害からなる群から選択される障害または疾患のスクリーニングおよび/またはインビトロ診断方法であって、
a)個体の体液試料を得ること、
b)工程a)で得た試料におけるCCL18のレベルを測定すること、
c)工程b)で測定したCCL18のレベルを、健常対照個体の体液試料に由来する参照レベルと比較すること、そして
d)工程b)で測定したCCL18のレベルが参照レベルと有意に異なるか否かを決定して、アレルギー性疾患およびTh2介在性障害からなる群から選択される障害または疾患をスクリーニングおよび/またはインビトロ診断すること
を含んでなる方法。
【請求項5】
CCL18のレベルをCCL18特異的抗体を使用して測定する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
アレルギー性疾患およびTh2介在性障害からなる群から選択される障害または疾患を軽減または治癒する効果を有することが予期される物質での個体の処置の治療効果をモニターする方法であって、当該個体の体液試料におけるCCL18のレベルを測定し、そしてそれを当該物質を投与する前のCCL18のレベルと比較することを含んでなる、方法。
【請求項7】
個体の体液試料におけるアレルギー性疾患およびTh2介在性障害からなる群から選択される障害または疾患のスクリーニングおよび/またはインビトロ診断のためのキットであって、
a)CCL18タンパク質またはその一部を認識する、所望により標識形態の分子、
b)使用のための指示書、
c)所望により検出手段、
d)所望により固相
を含んでなる、キット。
【請求項1】
個体の体液試料におけるバイオマーカーとして使用するための、ケモカインCCL18。
【請求項2】
アレルギー性疾患およびTh2介在性障害からなる群から選択される障害または疾患のための、個体の体液試料におけるバイオマーカーとして使用するための、請求項1に記載のケモカイン。
【請求項3】
障害または疾患がアトピー性皮膚炎と関係する、請求項1または2に記載のケモカイン。
【請求項4】
個体におけるアレルギー性疾患およびTh2介在性障害からなる群から選択される障害または疾患のスクリーニングおよび/またはインビトロ診断方法であって、
a)個体の体液試料を得ること、
b)工程a)で得た試料におけるCCL18のレベルを測定すること、
c)工程b)で測定したCCL18のレベルを、健常対照個体の体液試料に由来する参照レベルと比較すること、そして
d)工程b)で測定したCCL18のレベルが参照レベルと有意に異なるか否かを決定して、アレルギー性疾患およびTh2介在性障害からなる群から選択される障害または疾患をスクリーニングおよび/またはインビトロ診断すること
を含んでなる方法。
【請求項5】
CCL18のレベルをCCL18特異的抗体を使用して測定する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
アレルギー性疾患およびTh2介在性障害からなる群から選択される障害または疾患を軽減または治癒する効果を有することが予期される物質での個体の処置の治療効果をモニターする方法であって、当該個体の体液試料におけるCCL18のレベルを測定し、そしてそれを当該物質を投与する前のCCL18のレベルと比較することを含んでなる、方法。
【請求項7】
個体の体液試料におけるアレルギー性疾患およびTh2介在性障害からなる群から選択される障害または疾患のスクリーニングおよび/またはインビトロ診断のためのキットであって、
a)CCL18タンパク質またはその一部を認識する、所望により標識形態の分子、
b)使用のための指示書、
c)所望により検出手段、
d)所望により固相
を含んでなる、キット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2007−529759(P2007−529759A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504332(P2007−504332)
【出願日】平成17年3月21日(2005.3.21)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002986
【国際公開番号】WO2005/093428
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月21日(2005.3.21)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002986
【国際公開番号】WO2005/093428
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】
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