説明

バイト取付装置

【課題】異常事態発生時に、工作機械の各種機器を、破壊等から保護する。
【解決手段】刃物台11の被取付面21およびバイトホルダ12の取付面31が、互いに接触させられてい。被取付面21に、これと直交状に取付ロッド22が突設されている。取付ロッド22の先端部外面に雄ねじが23が形成されている。取付面31に、取付ロッド22をバイトホルダ12の、取付ロッド周りの回転を自在とするようにはめ入れかつ雄ねじ23を突出させたたロッド孔33が形成されている。雄ねじ23に締付ナット71がねじはめられている。バイトBに加えられる外力によって作用させられるバイトホルダ12の、取付ロッド周りの回転トルクを、締付ナット71の締付力の大小によって、許容値以下に規制しうるようになされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、旋削時において、バイトに加えられる外力によって工作機械の各種機器が破壊されることを防止するためのバイト取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置としては、ホルダにバイトがその先端を含む一部を突出させるように取付られており、バイトの突出部がセラミックで形成されており、異常事態発生時に、バイトに衝撃等の大きい外力が作用させられると、バイトのセラミックによって形成した部分を破断させることによって、工作機械の各種機器を、破壊等から保護するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この装置では、バイトの破断した部分が落下してしまい、これを別途取り除く作業が生じる。また、その落下部分がワーク等によって飛ばされると、機械やワークを傷つけることがある。
【0004】
また、別の従来装置では、ホルダに過負荷保護部材を介してツール回転具が取付らけれており、上記の装置と同様に、異常事態発生時に、過負荷保護部材を破断させることによって、工作機械の各種機器を保護するようにしているものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
この別の従来装置においても、ツール回転具そのものが落下してしまい、再利用のために回収する作業が生じるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−162006号公報
【特許文献2】特開平8−118126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の目的は、異常事態発生時に、工作機械の各種機器を、破壊等から保護するとともに、バイトの落下を防止することのできるバイト取付装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明によるバイト取付装置は、刃物台の被取付面およびバイトホルダの取付面が、互いに接触させられており、被取付面に、これと直交状に取付ロッドが突設されており、取付ロッドの先端部外面に雄ねじが形成されており、取付面に、取付ロッドをバイトホルダの、取付ロッド周りの回転を自在としかつ雄ねじを突出させるようにはめ入れたロッド孔が形成されており、雄ねじに締付ナットがねじはめられており、バイトに加えられる外力によって作用させられるバイトホルダの、取付ロッド周りの回転トルクを、締付ナットの締付力の大小によって、許容値以下に規制しうるようになされているものである。
【0009】
この発明によるバイト取付装置では、バイトに加えられる外力によって作用させられるバイトホルダの、取付ロッド周りの回転トルクは、締付ナットの締付力によって規制される。したがって、工作機械の各種機器を、破壊等から保護することができる。しかも、異常事態発生時に、上記回転トルクが規制値を超えて、バイトホルダが回転させられたとしても、バイトは、バイトホルダとともに刃物台に取付けられたままである。
【0010】
さらに、安全ピンおよびこれをはめ入れたピン孔の一方が被取付面に、その他方が取付面にそれぞれ設けられていると、締付ナットの締付力と共同して、安全ピンの破壊強度によっても、バイトホルダの回転を規制することができる。
【0011】
また、バイトホルダに、取付面と反対方向に向けられかつ取付面と平行に拡がるバイト保持面が形成されており、バイト保持面に、バイト溝が形成されており、バイト溝の底面にロッド孔の一端が開口されられており、ロッド孔の開口縁部に段付拡径部が設けられており、拡径部内に締付ナットが収容されて、拡径部の段上に締付ナットの座面が押圧されていると、取付ロッドおよびナットを、バイトと干渉させることなく、バイトホルダに収容することができる。
【0012】
さらに、刃物台の被取付面側略中央に、取付ロッドを有するブロックが刃物台に対し被取付面に直交する方向に移動可能に設けられ、ブロックに雌ねじ孔が形成されており、刃物台のこの雌ねじ孔の軸方向延長線上に貫通孔が形成されており、ボルトが刃物台の反被取付面側から貫通孔を介して雌ねじ孔にねじはめられており、ボルトを雌ねじ孔にねじ入れることにより締付ナットの締付力を調整可能になされていると、締付ナットによる締付力を増大させることが可能であり、また、締付力の調整が容易となる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、工作機械の各種機器を、破壊等から保護するとともに、バイトの飛散を防止することのできるバイト取付装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明によるバイト取付装置の正面図である。
【図2】図1のII−II線にそう垂直横断面図である。
【図3】図1のIII−III線にそう水平縦断面図である。
【図4】同バイト取付装置の分解斜視図である。
【図5】この発明の他の実施の形態による図3相当の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明において、前後とは、図1を基準として、図1の紙面と直交してその手前側を前、これと反対側を後といい、左右とは、前方から見て、その左右の側を左右(図1の左右)というものとする。
【0016】
図4を参照すると、刃物台11と、バイトBを保持したバイトホルダ12とが、分解された状態で示されている。
【0017】
刃物台11は、前向きの垂直平坦状被取付面21を有している。被取付面21にはこれと直交状に水平前方突出状取付ロッド22が固定されている。取付ロッド22の先端部外面には雄ねじ23が形成されている。被取付面21の取付ロッド22軸線の右斜め上に安全ピン24が前方突出状に固定されている。
【0018】
バイトホルダ12は、略立方体ブロック状のもので、被取付面21に接触させられた後向きの垂直平坦状取付面31と、取付面31と平行に拡がる前向きのバイト保持面32とを有している。
【0019】
取付面31には、取付ロッド22をはめ入れたロッド孔33と、安全ピン24をはめ入れたピン孔34とがそれぞれ形成されている。
【0020】
バイト保持面32には左右方向にのびたバイト溝41が前向きに形成されている。バイト溝41にはバイトBがその先端部を右方に突出させるように挿入されている。バイト溝41の下側面の長さの中程にはガイド溝42が上向きに形成されている。ガイド溝42には押圧片43が上下動自在にはめ入れられている。
【0021】
ガイド溝42の前端は、前方に開放され、その後端は、バイト溝41底面の下方延長面51で終わっている。
【0022】
バイト溝41底面から延長面51にかけての領域に、ロッド孔33の前端が開口されている。ロッド孔33の前端開口縁部に拡径部61が設けられている。ロッド孔33の拡径部61と、これ以外の部分との境界には段62が生じている。拡径部61内に雄ねじ23が突出させられている。雄ねじ23には締付ナット71がねじはめられている。拡径部61の軸方向長さは、締付ナット71の高さよりも大である。拡径部61内に締付ナット71の全体が収容されている。締付ナット71は、所定の回転トルクで締付られており、これにより、締付ナット71の座面は、同転トルクに相当の締付力で、段62上に押圧されている。締付ナット71には回止め(図示略)が施されている。
【0023】
バイトホルダ12の底面には、上端をそれぞれガイド溝42に連通された3つの押圧片固定用ねじ孔81が形成されるとともに、これらのねじ孔81を挟んでその左右両側に2つのバイト固定用ねじ孔82が形成されている。
【0024】
締付ナット71の締付により、その締付力に対応する摩擦力が被取付面21および取付面31間に発生する。この摩擦力によって、バイトホルダ12の、取付ロッド22周りの回転トルクが許容値以下に規制される。さらに、同回転トルクは、安全ピン24の破壊強度によっても、規制される。締付ナット71の締付力を超えてバイトホルダ12が回転しようとして、その回転力が安全ピン24の破壊強度を超えると、摩擦力に打勝ちかつ安全ピン24を破壊して、バイトホルダ12は、取付ロッド22周りに回転させられることになる。この場合においても、バイトホルダ12にバイトBは取付られたままである。
【0025】
図5に、この発明の他の実施の形態が示されている。図1〜図4に示す実施の形態では、取付ロッド22は刃物台11に固定されていたが、この実施の形態では、刃物台11に設けられた凹部91内を、取付ロッド22を有するブロック92が、取付ロッド22の軸方向に移動可能に設けられると共に、刃物台11の貫通孔93を介してボルト94がブロック92に設けられた雌ねじ孔95にねじはめられたものとなっている。
【0026】
この他の実施の形態においては、ボルト94を回転させて雌ねじ孔95にねじはめるられるようにすることで、ブロック92が刃物台11側に引き込まれ、締付ナット71による締付力を増大させることが可能であり、また、締付力の調整が容易となっている。
【産業上の利用可能性】
【0027】
この発明によるバイト取付装置は、旋削時において、バイトに加えられる外力によって工作機械の各種機器が破壊されることを防止するためのことを達成するのに適している。
【符号の説明】
【0028】
11 刃物台
12 バイトホルダ
21 被取付面
22 取付ロッド
23 雄ねじが
31 取付面
33 ロッド孔
71 締付ナット
B バイト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃物台の被取付面およびバイトホルダの取付面が、互いに接触させられており、被取付面に、これと直交状に取付ロッドが突設されており、取付ロッドの先端部外面に雄ねじが形成されており、取付面に、取付ロッドをバイトホルダの、取付ロッド周りの回転を自在としかつ雄ねじを突出させるようにはめ入れたロッド孔が形成されており、雄ねじに締付ナットがねじはめられており、バイトに加えられる外力によって作用させられるバイトホルダの、取付ロッド周りの回転トルクを、締付ナットの締付力の大小によって、許容値以下に規制しうるようになされているバイト取付装置。
【請求項2】
安全ピンおよびこれをはめ入れたピン孔の一方が被取付面に、その他方が取付面にそれぞれ設けられている請求項1に記載のバイト取付装置。
【請求項3】
バイトホルダに、取付面と反対方向に向けられかつ取付面と平行に拡がるバイト保持面が形成されており、バイト保持面に、バイト溝が形成されており、バイト溝の底面にロッド孔の一端が開口されられており、ロッド孔の開口縁部に段付拡径部が設けられており、拡径部内に締付ナットが収容されて、拡径部の段上に締付ナットの座面が押圧されている請求項1または2に記載のバイト取付装置。
【請求項4】
刃物台の被取付面側略中央に、取付ロッドを有するブロックが刃物台に対し被取付面に直交する方向に移動可能に設けられ、ブロックに雌ねじ孔が形成されており、刃物台のこの雌ねじ孔の軸方向延長線上に貫通孔が形成されており、ボルトが刃物台の反被取付面側から貫通孔を介して雌ねじ孔にねじはめられており、ボルトを雌ねじ孔にねじ入れることにより締付ナットの締付力を調整可能になされている請求項1〜3のいずれか1つに記載のバイト取付装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate