説明

バイメタルシール部品及びバイメタルシール部品を用いたタービンのシール構造

【課題】タービンの車室の水平フランジに口開きが発生しても、内部流体の流出を防止する。
【解決手段】タービンの車室10の水平フランジ21,31には、ボルト孔22,32が形成され、特定のボルト孔22,32にはスリット23,33が連通して形成されている。第1の金属板55と複数枚の第2の金属板56とにより形成したバイメタルシール部品50は、横断面形状がC形となっており、周方向の1箇所に軸方向に伸びる切れ目51を有している。切れ目51がスリット23,33に向く状態で、バイメタルシール部品50をボルト孔22,32に挿入すると、バイメタルシール部品50によりシールができ、内部流体の外部への流出を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイメタルシール部品及びバイメタルシール部品を用いたタービンのシール構造に関し、熱膨張・熱収縮する部分に適用しても確実なシール効果を確保することができるように工夫したものである。
【背景技術】
【0002】
産業用ガスタービンの車室ケーシングや、蒸気タービンの車室ケーシングは、円筒状をなしており、これら車室ケーシングは水平分割面で上半ケーシングと下半ケーシングとに二分割されている。
そして、上半ケーシングに備えた水平フランジと、下半ケーシングに備えた水平フランジとを接触させ、上下の水平フランジに位置合わせして形成されたボルト孔に、ボルトを挿入して締結することにより、円筒状の車室ケーシングが構成されている。
このような構成にすることにより、組立・分解や、ロータの搬入・搬出を容易にしている。
【0003】
車室ケーシングは、起動時には常温から高温に温度上昇し、停止時には高温から常温に温度下降するため、起動・停止時に車室ケーシングの内周側と外周側とで温度分布に偏差が生じる。
また車室ケーシングは、軸方向(流体の流れ方向)に沿い径が異なっている部分があること、及び、起動・停止時のみならず定常時においても軸方向に沿い流体の温度が異なっている部分があることから、車室ケーシングの軸方向に沿い温度分布に偏差が生じる。
【0004】
このような車室ケーシングの内外周(径方向)の温度分布の偏差や軸方向の温度分布の偏差に起因して、水平フランジに過渡的な熱応力が発生することがあるため、かかる熱応力を低減するために、水平フランジの一部にスリットを形成している。
このスリットは、水平フランジに多数形成されたボルト孔のうち、熱偏差に起因する熱応力が発生する位置に形成された特定のボルト孔に連通しており、車室内の軸中心から見て、ボルト孔の形成位置から径方向外側(車室外側)に向かって形成されている。
水平フランジに熱応力が作用した場合には、スリットの開度が変化し、この開度変化により熱応力を緩和している。
【0005】
なお特許文献1(特表2002―544431)には、バイメタルを用いたパッキンが開示されているが、このパッキンは、湾曲した外周側の帯板状の第1金属板の内周面に、湾曲した内周側の帯板状の第2金属板をろう付けした、横断面形状がC形の構造になっている。
この特許文献1には、ボルト孔とボルトとの隙間に設置するシール構造に関する工夫は何ら示されておらず、しかも、特許文献1に示すバイメタル型のパッキンは、同面積の2枚の板材を接合したものを、湾曲させた形状になっているだけであり、軸方向の反り(詳細は後述)が発生しないような工夫は何らされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2002―544431
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図14は、車室ケーシングの上半ケーシングに形成された水平フランジ21を抽出して示しており、水平フランジ21には、ボルト孔22や、スリット23が形成されている。またCは車室の軸中心である。
上半ケーシングの水平フランジ21は、下半ケーシングの水平フランジ(図示されていない)上に接触しており、ボルト孔に挿入されたボルト(図示省略)により上下の水平フランジが締結されている。
【0008】
図14において、車室内側の水平フランジ面(点線で四角に囲った領域)に、熱応力等により、上下の水平フランジの間に隙間が開く、いわゆる「口開き」が発生した場合には、この口開き、ボルト孔22及びスリット23を通して、車室内の高温・高圧流体がリークする可能性がある。
【0009】
高温・高圧流体(ガスや蒸気)がリークすると、タービンの性能が低下すると共に、車室外の装備(配管や計装品など)を損傷する可能性がある。
なお、スリットが連通していないボルト孔については、従来対策として、袋ナット等によるリーク対策が有効であるが、スリットが連通しているボルト孔の位置での効果的なリーク対策は従来では存在していなかった。
更に、大型のボルトでは、袋ナットを使用できない場合もあった。
【0010】
本発明では、上述の問題を解決するため、タービン車室の水平フランジや、タービンの他の部分でのリークを効果的に防止することができる、バイメタルシール部品及びバイメタルシール部品を用いたタービンのシール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明のバイメタルシール部品に係る構成は、
横断面形状がC形となっている円筒状をなし、周方向の1箇所に軸方向に伸びる切れ目を有している第1の金属板と、
前記切れ目の部分を外して、前記第1の金属板の内周面に周方向に沿い延びて前記第1の金属板の内周面に接合されると共に、軸方向に関して相互に離間して配置されており、しかも前記第1の金属板よりも熱膨張率の大きい複数の第2の金属板と、
を有することを特徴とする。
【0012】
また本発明のタービンのシール構造に関する構成は、
周方向の両端に水平フランジを有し、更に、前記水平フランジに複数のボルト孔が形成されると共に前記ボルト孔のうちの予め決めた特定のボルト孔に連通して当該ボルト孔から車室外側に向かったスリットが形成された上半フランジと、
周方向の両端に水平フランジを有し、更に、前記水平フランジに複数のボルト孔が形成されると共に前記ボルト孔のうちの予め決めた特定のボルト孔に連通して当該ボルト孔から車室外側に向かったスリットが形成された下半フランジとを備え、
前記上半フランジのボルト孔及びスリットと、前記下半フランジのボルト孔及びスリットとを位置合わせし、位置合わせした前記ボルト孔にボルトを挿入して前記上半フランジと前記下半フランジとを締結したタービンの車室において、
請求項1の前記バイメタルシール部品が、前記ボルトを囲繞する状態で、前記スリットが連通したボルト孔に挿入されており、しかも、前記バイメタルシール部品の前記切れ目が前記スリットに向く状態に配置されていることを特徴とする。
【0013】
また本発明のタービンのシール構造に関する構成は、
周方向の両端に水平フランジを有し、更に、前記水平フランジに複数のボルト孔が形成されると共に前記ボルト孔のうちの予め決めた特定のボルト孔に連通して当該ボルト孔から車室外側に向かったスリットが形成された上半フランジと、
周方向の両端に水平フランジを有し、更に、前記水平フランジに複数のボルト孔が形成されると共に前記ボルト孔のうちの予め決めた特定のボルト孔に連通して当該ボルト孔から車室外側に向かったスリットが形成された下半フランジとを備え、
前記上半フランジのボルト孔及びスリットと、前記下半フランジのボルト孔及びスリットとを位置合わせし、位置合わせした前記ボルト孔にボルトを挿入して前記上半フランジと前記下半フランジとを締結したタービンの車室において、
請求項1の前記バイメタルシール部品が、前記ボルトを囲繞する状態で、前記スリットが連通したボルト孔に挿入されており、しかも、前記バイメタルシール部品の前記切れ目が前記スリットの形成位置とは反対側に向く状態に配置されており、
前記ボルトに螺合するナットが袋ナットであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のバイメタルシール部品によれば、シール部分が熱膨張・熱収縮しても、確実にシールをすることができる。
また、本発明のバイメタルシール部品を、タービンの車室の水平フランジのシール構造に適用した場合には、車室内側に口開きが発生したとしても、車室内の流体が車室外に漏れることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】車室ケーシングを示す平面図。
【図2】車室ケーシングを示す斜視図。
【図3】バイメタルシール部品を示す斜視図。
【図4】バイメタルシール部品を示す平面図。
【図5】図4のV−V断面図。
【図6】バイメタルシール部品を平面に展開して内周面側を示す展開図。
【図7】参考例であるバイメタルシール部品を示す斜視図。
【図8】図7のVIII−VIII断面図。
【図9】参考例であるバイメタルシール部品の反り状態を示す斜視図。
【図10】スリットが連通しているボルト孔にバイメタルシール部品を挿入した状態を示す実施例1の平面図。
【図11】本発明の実施例1のシール構造を示す断面図。
【図12】スリットが連通しているボルト孔にバイメタルシール部品を挿入した状態を示す実施例2の平面図。
【図13】本発明の実施例2のシール構造を示す断面図。
【図14】水平フランジを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
実施例1は、バイメタルシール部品を用いて、タービン車室の水平フランジを確実にシールするシール構造である。
【0018】
[車室ケーシングの説明]
まず、平面図である図1及び斜視図である図2を参照して、実施例1を適用する車室ケーシングの一例を先に説明する。なお両図では、締結用のボルト及びナット等、ならびにバイメタルシール部品は図示省略している。
【0019】
図1及び図2に示すように、車室ケーシング10は、軸方向(流体の流れ方向)に沿い径が異なっている。この車室ケーシング10は、水平分割面で上半ケーシング20と下半ケーシング30に分割されている。
【0020】
上半ケーシング20の両端部(周方向の両端部)には水平フランジ21が形成され、この水平フランジ21は、車室ケーシング10の軸方向に沿い延在している。水平フランジ21には、多数のボルト孔22が形成されている。
さらに、車室ケーシング10の内外周(径方向)の温度分布の偏差や軸方向の温度分布の偏差に起因して水平フランジ21に作用する熱応力を緩和するため、水平フランジ21の一部にスリット23を形成している。
このスリット23は、水平フランジ21に多数形成されたボルト孔22のうち、熱偏差に起因する熱応力が作用する部分に形成された特定のボルト孔22に連通しており、車室内の軸中心Cから見て、ボルト孔22の形成位置から径方向外側(車室外側)に向かって形成されている。
【0021】
下半ケーシング30の両端部(周方向の両端部)には水平フランジ31が形成され、この水平フランジ31は、車室ケーシング10の軸方向に沿い延在している。水平フランジ31には、多数のボルト孔32(図1、図2ではボルト孔32は隠れていて見えていない)が形成されている。
さらに、車室ケーシング10の内外周(径方向)の温度分布の偏差や軸方向の温度分布の偏差に起因して水平フランジ31に作用する熱応力を緩和するため、水平フランジ31の一部にスリット33を形成している。
このスリット33は、水平フランジ31に多数形成されたボルト孔32のうち、熱偏差に起因する熱応力が作用する部分に形成された特定のボルト孔32に連通しており、車室内の軸中心Cから見て、ボルト孔32の形成位置から径方向外側(車室外側)に向かって形成されている。
【0022】
なお、スリット23とスリット33は、熱偏差に起因する熱応力が作用する部分に配置されているため、両スリット23,33は連通したスリット空間を形成している。
水平フランジ21,31に熱応力が作用した場合には、スリット23,33の開度が変化し、この開度変化により熱応力を緩和することができる。
【0023】
上半ケーシング20に備えた水平フランジ21と、下半ケーシング30に備えた水平フランジ31とを接触させ、上下の水平フランジ21,31に位置合わせして形成されたボルト孔22,32に、ボルトを挿入しボルトとナットで締結することにより、円筒状の車室ケーシング10が構成されている。
【0024】
[バイメタルシール部品の説明]
次に実施例1で用いるバイメタルシール部品50について説明する。
図3はバイメタルシール部品を示す斜視図、図4はバイメタルシール部品を示す平面図、図5は図4のV−V断面図、図6はバイメタルシール部品を平面に展開して内周面側を示す展開図である。
【0025】
図3〜図6に示すバイメタルシール部品50は、横断面形状がC形となっている円筒状の部材であり、周方向の1箇所に軸方向に伸びる切れ目51を有している。
このバイメタルシール部品50は、外周側の第1の金属板55と、第1の金属板55の内周面に接合され、しかも、第1の金属板55よりも熱膨張率の大きい内周側の複数の第2の金属板56とで構成されている。
【0026】
第1の金属板55は、横断面形状がC形となっている円筒状の部材であり、周方向の1箇所に軸方向に伸びる切れ目51を有している。第1の金属板55は、第2の金属板よりも熱膨張率が小さく、高温(タービン運転時の流体の温度と同程度の温度)であっても焼き付きしにくい金属材で構成されている。
具体的には、第1の金属板55は、タングステンで形成したり、タングステンの表面にテフロン(登録商標)コーティングをしたものにより形成したりすることができる。第1の金属板55の材料としては、その他に、純鉄、炭素鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、Cr鋼等の鉄合金などを使用することができる。
【0027】
第2の金属板56は、本例では4枚あり、各金属板56は、切れ目51の部分を外して第1の金属板55の内周面に周方向に沿い延びた状態で配置されて、金属板55の内周面に接合されている。しかも、各金属板56は軸方向(上下方向)に離間して配置されており、軸方向に関して隣接する金属板56の相互間には、隙間(金属材が存在しない空間)がある。
第2の金属板56は、熱膨張係数の大きなオーステナイト系ステンレス鋼(SUS)により形成することができる。第2の金属板56の材料としては、その他に、インコネル、ハステロイ等のNi基合金などを使用することができる。
【0028】
なお、第2の金属板56としては、予め分離している帯状の4枚の金属板56を、軸方向(上下方向)に離間して配置して、第1の金属板55の内周面に接合してもよいが、他の製法によりこの構成を実現してもよい。
例えば、第1の金属板55の内周面の全面に、金属板55と同面積の1枚のSUSなどを接合し、さらに、軸方向の離間した複数位置で、SUSに対して周方向に切れ込みを入れて切除することにより、軸方向(上下方向)に離間して配置した複数枚の第2の金属板56を構成するようにしてもよい。
【0029】
このバイメタルシール部品50では、温度上昇していくとC字の形状が広がって切れ目51の間隔が広くなる。このとき、バイメタルシール部品50が軸方向に沿い反ることはない。
これは、第2の各金属板56が周方向に沿い配置されていて、しかも、複数の第2の金属板56が軸方向に離間して配置されて相互間に隙間があるからである。
【0030】
一方、参考例である図7及び図7のVIII−VIII断面図である図8に示すバイメタルシール部品150は、横断面形状がC形となっている円筒状の第1の金属板155の内周面の全面に、金属板155と同面積で、しかも、横断面形状がC形となっている円筒状の第2の金属板156を接合したものである。この場合、第2の金属板156は第1の金属板155に対して、熱膨張率が大きくなっている。
【0031】
この参考例であるバイメタルシール部品150では、温度上昇していくとC字の形状が広がって切れ目151の間隔が広くなるが、同時に、図9に示すように、軸方向に沿い反りかえってしまうという、不具合がある。
しかし、本実施例で用いるバイメタルシール部品50では、温度上昇していっても、軸方向に沿い反りかえることはない。
【0032】
[タービン車室の水平フランジのシール構造の説明]
実施例1では、スリット23,33が連通しているボルト孔22,32の位置に対向する、車室内側の水平フランジ面(図1において点線で四角に囲った領域)に、熱応力等により「口開き」が発生した場合であっても、車室内の高温・高圧流体がリークすることを防止するシール構造であり、その構造を以下に説明する。
【0033】
図10は、スリット23,33が連通しているボルト孔22,32にバイメタルシール部品50を挿入した状態を示す平面図であり、図11は、スリット23,33が連通しているボルト孔22,32にバイメタルシール部品50を挿入してシール構造を構成した状態を示す断面図(図10のXI−XI断面図)である。
なお、図11は、車室内側の水平フランジ面に、熱応力等による「口開き」が発生した状態を示しているが、理解を容易にするため、口開きの状態を誇張して図示している。
【0034】
図10及び図11に示すように、スリット23,33が連通しているボルト孔22,32には、バイメタルシール部品50が挿入されている。このとき、バイメタルシール部品50の切れ目51が、スリット23,33が形成されている方向を向くように、つまり、車室外側を向くように挿入配置している。
【0035】
スリット23,33が連通しているボルト孔22,32には、ボルト40が挿入され、ボルト孔22の上側座面に座金42を配置し、ボルト孔32の下側座面に座金43を配置して、ボルト40及びナット41によりボルト締めすることにより、上下の水平フランジ21,31が締結されている。
このとき、円筒状のバイメタルシール部品50が、ボルト40を囲繞する状態になっている。また、バイメタルシール部品50の外周面が、ボルト孔22,32の内壁面に接触している。
【0036】
タービンが起動して車室温度が上昇していくと、バイメタルシール部品50は、温度上昇していきC字の形状が広がって切れ目51の間隔が広くなる。このため、バイメタルシール部品50の外周面(第1の金属板55の外周面)が、ボルト孔22,32の内壁面のうちスリット23,33が形成されている部分を除く面に密着してシール効果を発揮する。しかも、バイメタルシール部品50が軸方向に沿い反る(図9に示すような状態で反る)ことはないため、バイメタルシール部品50の外周面とボルト孔22,32の内壁面との密着性が高くシール効果を確実に発揮する。
【0037】
このため、図11に示すように、車室内側の水平フランジ面に熱応力等による「口開き」が発生したとしても、図11中に点線の矢印で示すように、車室内の高温・高圧流体は口開き部分には侵入するがバイメタルシール部品50によりシールされる。この結果、車室の内部の高温・高圧流体が外部にリークすることを確実に防止することができる。
よって、タービンの性能を向上でき、且つ、流体リークによる車室外装備品の損傷を防止することができる。
【0038】
また、車室ケーシング10の内外周(径方向)の温度分布の偏差や軸方向の温度分布の偏差に起因して水平フランジ21,31に熱応力が作用して、スリット23,33が開閉しても、これに追従して、バイメタルシール部品50は切れ目51の間隔が変化してC字の形状が広がったり狭まったりしていく。よって、バイメタルシール部品50をボルト孔23,33に備えていても、スリット23,33による熱応力緩和の効果を阻害することはない。
【0039】
さらに、バイメタルシール部品50の第1の金属板55は、焼き付きしにくい材料であるため、修理や交換の際に、バイメタルシール部品50をボルト孔22,32から容易に取り出すことができる。
【実施例2】
【0040】
次に本発明の実施例2に係る、タービン車室のシール構造を、図12及び図13を参照して説明する。
【0041】
図12は、スリット23,33が連通しているボルト孔22,32にバイメタルシール部品50を挿入した状態を示す平面図であり、図13は、スリット23,33が連通しているボルト孔22,32にバイメタルシール部品50を挿入してシール構造を構成した状態を示す断面図(図12のXIII−XIII断面図)である。
なお、図13は、車室内側の水平フランジ面に、熱応力等による「口開き」が発生した状態を示しているが、理解を容易にするため、口開きの状態を誇張して図示している。
【0042】
図12に示すように、スリット23,33が連通しているボルト孔22,32には、バイメタルシール部品50が挿入されている。このとき、バイメタルシール部品50の切れ目51が、スリット23,33の形成方向と反対方向を向くように、つまり、車室内側を向くように挿入配置している。
【0043】
スリット23,33が連通しているボルト孔22,32には、ボルト40が挿入され、ボルト孔22の上側座面に座金42を配置し、ボルト孔32の下側座面に座金43を配置して、ボルト40及び袋ナット44によりボルト締めすることにより、上下の水平フランジ21,31が締結されている。なお図示はしないが、ボルト孔22の上側座面と座金42との間にシールパッキンを介装し、ボルト孔32の下側座面と座金43との間にシールパッキンを介装している。
このとき、円筒状のバイメタルシール部品50が、ボルト40を囲繞する状態になっている。また、バイメタルシール部品50の外周面が、ボルト孔22,32の内壁面に接触している。
【0044】
タービンが起動して車室温度が上昇していくと、バイメタルシール部品50は、温度上昇していきC字の形状が広がって切れ目51の間隔が広くなる。このため、バイメタルシール部品50の外周面(第1の金属板55の外周面)が、ボルト孔22,32の内壁面に密着して、スリット23,33を閉塞するような(スリット23,33とボルト孔22,32とを隔絶するような)シール効果を発揮する。しかも、バイメタルシール部品50が軸方向に沿い反る(図9に示すような状態で反る)ことはないため、バイメタルシール部品50の外周面とボルト孔22,32の内壁面との密着性が高くシール効果を確実に発揮する。
【0045】
さらに、ボルト50を、袋ナット44にねじ込んで締結をしているため、ボルト50と袋ナット44との間のネジ溝を介してのリークは無い。
【0046】
この結果、ボルト孔22,32の内部空間は、スリット23,33を閉塞するバイメタルシール部品50と、ボルト50とねじ留めされる袋ナット44と、座金42,43及び図示しないシールパッキンとにより、車室外空間との間では遮蔽された空間となる。
【0047】
このため、図13に示すように、車室内側の水平フランジ面に熱応力等による「口開き」が発生したとしても、図13中に点線の矢印で示すように、車室内の高温・高圧流体は、口開き部分を介してボルト孔22,32の内部空間には侵入するが、バイメタルシール部品50と袋ナット44と座金42,43及び図示しないシールパッキンによりシールされる。この結果、車室の内部の高温・高圧流体が外部にリークすることを確実に防止することができる。
よって、タービンの性能を向上でき、且つ、流体リークによる車室外装備品の損傷を防止することができる。
【0048】
また、車室ケーシング10の内外周(径方向)の温度分布の偏差や軸方向の温度分布の偏差に起因して水平フランジ21,31に熱応力が作用して、スリット23,33が開閉しても、これに追従して、バイメタルシール部品50は切れ目51の間隔が変化してC字の形状が広がったり狭まったりしていく。よって、バイメタルシール部品50をボルト孔23,33に備えていても、スリット23,33による熱応力緩和の効果を阻害することはない。
【0049】
さらに、バイメタルシール部品50の第1の金属板55は、焼き付きしにくい材料であるため、修理や交換の際に、バイメタルシール部品50をボルト孔22,32から容易に取り出すことができる。
【0050】
なおボルト孔22,32の径が小さい場合には、ボルト孔22,23の内壁面にバイメタルシール部品50が張り付きにくいことがあるが、そのような場合であっても、実施例2では、バイメタルシール部品50によりスリット23,33を閉塞しているので、確実なシール効果を発揮することができる。
【実施例3】
【0051】
なお、上述したバイメタルシール部品50を用いた実施例1のシール構造は、スリット23,33と連通していないボルト穴22,32に適用することができ、これによりスリット23,33と連通していないボルト穴22,32のシール効果を確保することもできる。
【0052】
更に、上述したバイメタルシール部品50は、ガスタービンや蒸気タービンの車室のみならず、タービンの各部分のシール部に適用することができる。
例えば、燃焼器のサイドシール部や、燃焼器のスプリングクリップ部や、遮熱環(翼環)、タービンの互いに隣接する翼列間の隙間、車室水平フランジ面のシール部などに適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 車室ケーシング
20 上半ケーシング
21 水平フランジ
22 ボルト孔
23 スリット
30 下半ケーシング
31 水平フランジ
32 ボルト孔
33 スリット
40 ボルト
41 ナット
42,43 座金
44 袋ナット
50 バイメタルシール部品
51 切れ目
55 第1の金属板
56 第2の金属板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面形状がC形となっている円筒状をなし、周方向の1箇所に軸方向に伸びる切れ目を有している第1の金属板と、
前記切れ目の部分を外して、前記第1の金属板の内周面に周方向に沿い延びて前記第1の金属板の内周面に接合されると共に、軸方向に関して相互に離間して配置されており、しかも前記第1の金属板よりも熱膨張率の大きい複数の第2の金属板と、
を有することを特徴とするバイメタルシール部品。
【請求項2】
周方向の両端に水平フランジを有し、更に、前記水平フランジに複数のボルト孔が形成されると共に前記ボルト孔のうちの予め決めた特定のボルト孔に連通して当該ボルト孔から車室外側に向かったスリットが形成された上半フランジと、
周方向の両端に水平フランジを有し、更に、前記水平フランジに複数のボルト孔が形成されると共に前記ボルト孔のうちの予め決めた特定のボルト孔に連通して当該ボルト孔から車室外側に向かったスリットが形成された下半フランジとを備え、
前記上半フランジのボルト孔及びスリットと、前記下半フランジのボルト孔及びスリットとを位置合わせし、位置合わせした前記ボルト孔にボルトを挿入して前記上半フランジと前記下半フランジとを締結したタービンの車室において、
請求項1の前記バイメタルシール部品が、前記ボルトを囲繞する状態で、前記スリットが連通したボルト孔に挿入されており、しかも、前記バイメタルシール部品の前記切れ目が前記スリットに向く状態に配置されていることを特徴とするタービンのシール構造。
【請求項3】
周方向の両端に水平フランジを有し、更に、前記水平フランジに複数のボルト孔が形成されると共に前記ボルト孔のうちの予め決めた特定のボルト孔に連通して当該ボルト孔から車室外側に向かったスリットが形成された上半フランジと、
周方向の両端に水平フランジを有し、更に、前記水平フランジに複数のボルト孔が形成されると共に前記ボルト孔のうちの予め決めた特定のボルト孔に連通して当該ボルト孔から車室外側に向かったスリットが形成された下半フランジとを備え、
前記上半フランジのボルト孔及びスリットと、前記下半フランジのボルト孔及びスリットとを位置合わせし、位置合わせした前記ボルト孔にボルトを挿入して前記上半フランジと前記下半フランジとを締結したタービンの車室において、
請求項1の前記バイメタルシール部品が、前記ボルトを囲繞する状態で、前記スリットが連通したボルト孔に挿入されており、しかも、前記バイメタルシール部品の前記切れ目が前記スリットの形成位置とは反対側に向く状態に配置されており、
前記ボルトに螺合するナットが袋ナットであることを特徴とするタービンのシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−57282(P2013−57282A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195622(P2011−195622)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】